-1-航空機設計におけるCFDの
現状と将来展望
山本一臣
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 航空プログラムグループ 国産旅客機チーム 2006. 2006.8.8.2929 SS SS研研HPCHPCフォーラムフォーラム20062006 次世代 次世代HPCHPC技術が拓く大規模科学技術計算技術が拓く大規模科学技術計算 -2-内 内 容容 航空機の空力設計 風洞試験とCFDの特徴と役割 現状のCFD設計の状況 環境適応型高性能小型航空機研究開発 Navier-Stokes方程式を用いた解析の変遷 空気抵抗の予測 高揚力装置設計への適用へ向けて 構造設計との多分野融合設計 将来展望と課題のまとめ-3-内 内 容容 航空機の空力設計 風洞試験とCFDの特徴と役割 現状のCFD設計の状況 環境適応型高性能小型航空機研究開発 Navier-Stokes方程式を用いた解析の変遷 空気抵抗の予測 高揚力装置設計への適用へ向けて 構造設計との多分野融合設計 将来展望と課題のまとめ 航空機の空力設計 航空機の空力設計 1. 航空機空力形状の設計 重量・構造、コスト・製造技術、エアラインからの要求等の制約条件 の下で、ミッションを実現できる空力形状を設計 高速線図(巡航速度) 高揚力線図(離着陸速度) 2. 航空機の空力性能、安定性・操縦性のためのデータベース作成 広範な飛行条件における空力荷重データ 飛行制御のための飛行性能、荷重変化のデータ Î 航空機開発全体に必要な空気力学シミュレーション(風洞試験、 計算の両者を含む)のケース数は2,500,000 とも Î 計算流体力学CFDと風洞試験それぞれの特徴を生かした利用 CFDを本格的に利用して 設計が行なわれたと言わ れてるBoeing社の旅客機 B777 (ボーイング社のHPより)
-5-風洞試験 風洞試験 ライト兄弟の時代から空力設計に利用されてきた技術 広範な飛行条件における空力データの取得ではCFDより効率が 良い 高速(巡航)形状設計Î 遷音速風洞 低速(高揚力)形状設計Î 低速風洞 風洞壁干渉、支持装置の影響、模型製作精度の問題 試験可能なレイノルズ数(スケール効果)の問題
European Transonic Wind tunnel は実機レイノルズ数を実現するために
極低温窒素ガス(-163℃)の高圧ガスを用いる 送風機 測定部 測定部内部の風洞模型 JAXA 2mx2m 遷音速風洞 空気の流れ -6-計算流体力学
計算流体力学CFDCFD((ComputationalComputationalFluid Dynamics)Fluid Dynamics)
設計に必要な知識の獲得に向いている 風洞試験よりも初期コストがずっと少ない 航空機の周りの空気の流れを詳細に把握することができる 最適化との組み合わせで威力を発揮 Î理論解析や風洞試験では難しい、精密な空力形状設計が可能 近似した物理モデルや数値誤差により計算精度、信頼性に限界 数値風洞=風洞の代わりは? 空力荷重、安定性、操縦性のデータ ベース作成は、風洞試験の方がずっと 効率が良い 当面は風洞とCFDの役割分担 風洞試験の壁補正精度向上への利用など CFDと風洞試験のそれぞれの特徴を 活かした設計により、魅力的で市場 競争力のある機体をタイミング良く 開発することが重要 E. N. Tinoco AIAA 98-2512
-7-衝撃波 翼周囲のマッハ数分布 M∞=0.75, Re=6.5x106 衝撃波 境界層 旅客機周囲の空気の流れ: レイノルズ数*=107∼108, 巡航マッハ数∼0.8, 離着陸マッハ数∼0.15 巡航飛行中の主翼まわりの流れは遷音速流 機体表面には非常に薄い「境界層」が存在 境界層流れは空力性能に大きな影響を与える 場合がある 機体全体の計算で解像しなければならない 長さスケールは、翼弦長Cに対して、 1/300,000C < L < 50C しかも境界層の内部は乱流状態 旅客機まわりの流れの特徴 旅客機まわりの流れの特徴 煙で可視化した乱流境界層 (写真集 流れ 日本機械学会編より) 0.02% C 前縁近傍の境界層 衝撃波位置の境界層 2% C *レイノルズ数Re = (代表密度)(代表速度)(代表長さ)/(代表粘性係数) = (対流の性質)/(粘性拡散の性質)
Navier
Navier
-
-
Stokes
Stokes
方程式
方程式
まともに計算をするのであればNavier-Stokes方程式を使う 5変数、移流と粘性拡散を表す 非線形2階微分方程式 0 H G F Q = ∂ ∂ + ∂ ∂ + ∂ ∂ + ∂ ∂ z y x t 境界層内の一番小さなスケールの乱流と、航空機全体のスケー ルを一緒に計算することは、当分の間は難しい 設計で必要な物理のレベルと計算コストから、モデル化を行なう ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ ⎡ ∂ ∂ − ⋅ − − + − − = ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ ⎡ ∂ ∂ − ⋅ − − − + − = ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ ⎡ ∂ ∂ − ⋅ − − − − + = ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎥ ⎦ ⎤ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎢ ⎣ ⎡ = z T k Hw p w vw uw w y T k Hv wv p v uv v x T k Hu wu vu p u u E w v u z zz yz xz y yz yy xy x zx xy xx ) ( , ) ( , ) ( , 2 2 2 u τ H u τ G u τ F Q ρ τ ρ τ ρ τ ρ ρ ρ τ ρ τ ρ τ ρ ρ ρ τ ρ τ ρ τ ρ ρ ρ ρ ρ ρ 質量保存 運動量保存 エネルギー 保存
-9-旅客機の空力設計で用いられる流体のモデル化 旅客機の空力設計で用いられる流体のモデル化
Reynolds平均Navier-Stokes(RANS)方程式
アンサンブル平均により乱流を分離 乱流の生成-消滅-移流-拡散 を表現する非線形2階微分方程式(乱流モデ ル)が加わる。1変数か2変数が一般的。Î合計 6∼7変数 Euler方程式
乱流および粘性項を無視 単純な境界層方程式によって粘性効果を追加 5変数の非線形1階微分方程式 ポテンシャル方程式
渦なし流れ近似により、1変数の非線形2階微分方程式 Euler方程式と同様に境界層方程式と組み合わせる 弱い衝撃波流れの仮定 Î 最適化された機体形状設計を想定 パネル法
非圧縮流近似とPrandtl-Glauretの法則により線形ラプラス方程式へ 一種の境界要素法。表面積分だけになる 遷音速流以外で適用可能 モデルの単純化 現在、設計技術者のルーチンワークで 利用しているレベル -10-航空機設計で要求される計算時間 航空機設計で要求される計算時間 空力設計での要求 限られた時間内に、設計のためにどれだけ学ぶことができるか 設計サイクルで利用するには、時間から日のオーダーで 1ケースを計算できる必要がある Î 設計作業の中で、数百から数千ケース以上の計算が必要 TRANAIR(1989):Boeing社における90年代のCFD設計を支える 非線形ポテンシャル方程式による計算時間短縮 直交格子法による格子生成の自動化 設計技術者が容易に全機空力解析を用いて設計作業を実施 TRANAIRの直交格子法-11-現状の 現状のCFDCFDを利用した設計で実現できていることを利用した設計で実現できていること 高速形状設計ではCFDが本格的に利用 されている 境界層はく離がない(小さい)飛行条件 主翼の空力設計 風洞試験の中での設計からCFD による最適化設計へ 風洞試験は、設計検証の位置づけに エンジンと主翼の空力干渉設計 エンジンのバイパス比向上による エンジン直径の大型化で、重要に 風洞におけるパワー試験のコスト 機首の設計 主翼-胴体フェアリング設計など E. N. Tinoco AIAA 98-2512
F. T. Johnson et. al AIAA 2003-3439 より
大きな境界層はく離を伴う飛行条件での設計には限界 CFDの定量的な信頼性が確立できていないことによる Î高揚力装置の設計 Î空力荷重データの評価 Î 構造・装備設計 Î機体の安定性や操縦性の評価 Î 飛行運動解析 Navier-Stokes方程式を用いた解析技術の発展が必要 格子生成の自動化、高速化 =ボトルネック! 計算速度の高速化 =アルゴリズム、計算機の進歩が必要 定量性 =計算精度、乱流モデル、遷移モデルの進歩が必要 定量的な信頼性確立と計算時間の短縮化を実現すると。。。 構造、飛行制御との多分野統合設計に本格的な適用 航空機設計の変革が期待される 現状の 現状のCFDCFDを利用した設計の限界と可能性を利用した設計の限界と可能性 風洞試験による データベース作成
-13-内 内 容容 航空機の空力設計 風洞試験とCFDの特徴と役割 現状のCFD設計の状況 環境適応型高性能小型航空機研究開発 Navier-Stokes方程式を用いた解析の変遷 空気抵抗の予測 高揚力装置設計への適用へ向けて 構造設計との多分野融合設計 将来展望と課題のまとめ -14-Navier
Navier--StokesStokes方程式を用いた解析方程式を用いた解析::1515年前の状況年前の状況
1992年6月 第10回航空機計算空気力学シンポジウム 特別企画 CFDワークショップの課題 ONERA M5 模型まわりの流れの解析 3航空機メーカーと航技研2グループが参加 航技研の共用計算機はVP2600, VP400 計算格子点数は43∼523万点 5つのケースをこなすには100万点程度の 格子点数で計算を実施する必要があった 15年前は航空機全機形態のCFDはまだ Capability Computingの時代 ONERA M5 風洞模型 高梨らの計算格子と結果
-15-5 5年前の状況(航技研計算機システム入替え直前)年前の状況(航技研計算機システム入替え直前) -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 CD CL UPACS UPACS(遷移指定) NAL TM-616 航空宇宙数値シミュレーション技術 シンポジウム2001 (2001. 6) ONERA M5 を再び計算 650万点、マルチブロック構造格子 (98ブロック)
SGI Onix3400の 14CPUを使用 1ケース約2日 11ケースを計算して、全機形態の空 力特性予測精度についての議論も 可能なる 機体表面の圧力分布 ONERA M5まわりの計算格子 揚力-抵抗特性の比較 現在(航技研 現在(航技研NSIIINSIII導入以降):抵抗値の予測精度の評価へ導入以降):抵抗値の予測精度の評価へ CL-CD DLR-F6 (M=0.75 Re=3.0e+6) -0.20 -0.10 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 CL Exp. WB Exp. WBNP UPACS WB (w. trans.) UPACS WBNP (w. trans.) エンジンナセル抵抗
AIAA Drag Prediction Workshop II (2003)
旅客機モデルDLR-F6まわりの 抵抗予測の信頼性評価 Î設計では1%から0.5%の精度が 求められる エンジンナセル干渉による抵抗 増分予測 Fujitsu PRIMEPOWER2500の 100CPUを利用 格子点数800万点∼1300万点で 数10ケースを計算 1ケースの計算時間 1∼2日 10年前には困難だった、抵抗値の 格子依存とアルゴリズム依存性評価 予測精度は10%から5%程度 構造格子の格子生成時間が問題 1ヵ月Î機体設計での利用は無理 DLR-F6機体表面の圧力分布
-17-抵抗値の格子依存性
抵抗値の格子依存性
AIAA Drag Prediction Workshop 3 (2006)
フェアリング有り無しの効果 第2回の格子依存性評価をさらに進める JAXAは格子生成の時間が短い非構造格子法の評価も実施 1000万点の格子でも、格子生成からはじめて計算結果を得るまでに 1週間以内 設計で活用可能な作業時間に入ってくる 構造格子法と非構造格子法の抵抗予測精度の格子依存性を評価 格子点数は 300万点∼3000万点 それぞれ3種類の解像度 フェアリング無し フェアリング有り -18-構造格子法と非構造格子法 構造格子法と非構造格子法 マルチブロック構造格子 高い計算精度(信頼性)。高次精度スキームの利用 手作業による非常に長い作業時間。格子生成の自動化は絶望的 四面体要素を基礎にした非構造格子 高い形状適合性、柔軟な解適合格子法 かなり自動化が可能 計算精度にやや難、計算時間で不利 アスペクト比の高い格子要素が使えない(翼後縁厚み、後流など) マルチブロック構造格子 四面体要素を基礎にした非構造格子
-19-0.0255 0.0260 0.0265 0.0270 0.0275 0.0280 0.0285 0.0290 0.0295
0.0E+00 1.0E-05 2.0E-05 3.0E-05 4.0E-05 5.0E-05 6.0E-05 1/N^(2/3) CD UPACS WB UPACS FX2B TAS WB TAS FX2B (格子点数N)^(-2/3) 抵抗 係 数 CD 0.0255 0.0260 0.0265 0.0270 0.0275 0.0280 0.0285 0.0290 0.0295
0.0E+00 1.0E-05 2.0E-05 3.0E-05 4.0E-05 5.0E-05 6.0E-05 1/N^(2/3) CD UPACS WB UPACS FX2B TAS WB TAS FX2B (格子点数N)^(-2/3) 抵抗 係 数 CD 格子点数無限大 構造格子 非構造格子 フェアリング無し フェアリング有り 5カウント 抵抗値の格子収束の比較と必要な格子点数 抵抗値の格子収束の比較と必要な格子点数 ? ? ? フェアリング有りでは、構造格子、非構造格子どちらも同じ抵抗値に収束 非構造格子法は格子点の利用効率が悪い 抵抗予測精度0.5%を直接実現するために必要な格子点数 構造格子法では1億点弱、非構造格子法では1兆点! Î 当分の間、Capability Computingのレベル??? 格子収束が得られれば少ない 格子点数の結果から推算が可能 いずれにせよ抵抗値を定量 的に評価するには1000万点 程度の計算が必要 年間に数1000ケース以上の 計算を実施するには計算法 の改良と計算機の進歩がまだ まだ必要 内 内 容容 航空機の空力設計 風洞試験とCFDの特徴と役割 現状のCFD設計の状況 環境適応型高性能小型航空機研究開発 Navier-Stokes方程式を用いた解析の変遷 空気抵抗の予測 高揚力装置設計への適用へ向けて 構造設計との多分野融合設計 将来展望と課題のまとめ
-21-高揚力装置 高揚力装置CFDCFDへの挑戦への挑戦 CFDの設計適用範囲の拡大 3次元RANSは空力設計には本格的に利用されてきていない 形状の複雑さ、流れの複雑さから計算の信頼性が不明 現状のRANSでは難しい最大揚力とレイノルズ数効果の予測を期待 されている 環境適応型高性能小型航空機プロジェクト において設計への適用 現状の解析技術では、確実に信頼できる 結果を出すためには5000万点程度の 計算格子点数は必要になりそう 将来の計算機装置へ期待 それまでに解析法の精度 評価と技術改良を進める B747の高揚力装置(ボーイング社のホームページより) Airbus A300 -22-複雑な高揚力装置まわりの流れ 複雑な高揚力装置まわりの流れ 複雑な形状と、剥離、遷移、せん断層の合流を含む複雑な流れ CFDの信頼性・精度については、国際的にも十分な知見が得られていな い。空力設計で利用するためには、最大揚力, 抵抗, レイノルズ数依存性 の予測の信頼性向上は最重要課題 従来は風洞試験による設計が中心 3次元はく離流れ 3次元はく離流れ 境界層遷移 スラットの後流 はく離流れ はく離流れ 衝撃波・境界層干渉 はく離泡による遷移 スラットの後流 境界層と後流の干渉 母翼の後流 2次元流れの構造(マッハ数分布) 境界層遷移
-23-Trapezoidal wing models AIAA 2004-767
JAXA wind tunnel model 高揚力装置 高揚力装置CFDCFDの検証と改良のためにの検証と改良のために
European EUROLIFT プロジェクト
2次元、3次元単純形態、3次元実機形態の風洞試 験データを使った系統的なコード比較 データは公開されていない NASA Langley
CFD検証データをWebで公開、提供 3次元単純形態の翼模型に関するシリーズ JAXA航空プログラムグループ
3次元実機形態の詳細なCFD検証用風洞試験 データの取得と提供 100人乗りの機体を想定して設計した高揚力装置 模型。高揚力装置およびエンジンナセルUnstructured hybrid mesh
Upper Surface Lower Surface JAXA
JAXA高揚力装置風洞模型まわりの高揚力装置風洞模型まわりのCFDCFD解析解析
計算手法
Code : TAS (Tohoku Univ. Aerodynamic Simulation Code)
非構造格子 600万点 (高揚力装置では粗めの格子) 乱流モデル Spalart-Allmaras 1方程式モデル 計算条件 60m/s (Re=2.1x106) 着陸形態 (FTFおよびHLD支持金具は無し) 全面乱流および遷移点指定 実験での遷移点可視化結果を使用 JAXA NSIIIを利用 (富士通PRIMEPOWER HPC2500)
-25-揚力特性 揚力特性((CCLL--
α
α
))の比較の比較 失速の前までは、CFDと実験の比較は良い 失速角の予測精度も満足できる差 揚力カーブの傾きに若干のずれ。ピッチングモーメントのずれ。 失速後の変化は全く異なる 本格的な精度評価はこれから 1.5 2 2.5 3 0 5 10 15 20 Angle of attack CL Exp. (Corrected) Comp. (Fully Turb.)機体表面の圧力分布と後流 の全圧分布 -26-ナセル干渉による 翼面上のはく離 表面流れ(オイルフロー)の比較 表面流れ(オイルフロー)の比較 Exp. α=10.55° Comp.(w/oFTF) α=10° Exp. α=15.54° Comp.(w/oFTF) α=15° ナセル上面での はく離 スラット支持金具 によるはく離
-27-内 内 容容 航空機の空力設計 風洞試験とCFDの特徴と役割 現状のCFD設計の状況 環境適応型高性能小型航空機研究開発 Navier-Stokes方程式を用いた解析の変遷 空気抵抗の予測 高揚力装置設計への適用へ向けて 構造設計との多分野融合設計 将来展望と課題のまとめ 多分野融合設計 多分野融合設計 空力設計Î構造設計、飛行制御 という逐次的な設計の流れを 同時に進めることで設計の効率化、洗練な設計の実現 風洞試験におけるデータベース作成に依存している設計作業を変 える可能性 課題 はく離を伴う流れの解析における定量性の問題 計算時間の問題: 単純にデータベー ス作成を置き換えるだけでは、膨大な パラメトリックスタディが必要 Î遺伝的アルゴリズムなどの最適化法や データマイニングの利用により、効率的 な設計知識の獲得へ 風洞試験におけるデータベース作成 10,000回のオーダーのシミュレーション
-29-遺伝的アルゴリズムを用いた最適化 遺伝的アルゴリズムを用いた最適化 パラメトリックスタディ vs 遺伝的アルゴリズムによる最適化 設計の知識を得るという意味では類似 設計変数と目的関数が増えた場合には、パラメトリックスタディで は膨大なケースを調べる必要が出てくる 生物の進化を模倣した最適化アルゴリズム(遺伝的アルゴリズム) を利用する場合、最適化を進めたい方向の情報を効率よく得るこ とができる 初期集団 評価 選択 交叉 突然変異 最適解 -30-多目的最適化におけるデータマイニングの必要性 多目的最適化におけるデータマイニングの必要性 多目的最適化 トレードオフが有る場合、得られる 結果は最適解の集合(非劣解集合) 設計者には最適解を選択をする ための情報が必要 最適化の後処理として、データマイニングによる 設計知識の獲得が重要 設計探査 = 最適化 + データマイニング 遺伝的アルゴリズム、Kriging応答曲面法
ANOVA (analysis of variance)、
-31-Structural Model (Wing box: Shell elements) Aerodynamic Model (Unstructured mesh) 多分野融合多目的最適化の例 多分野融合多目的最適化の例 多分野融合最適化の主翼の空力・構造最適化へのCFDの適用 遷音速リージョナルジェット主翼形状の多分野融合多目的最適化
(千葉他、AIAA Applied Aerodynamics Conf. 2005) 構造 MSC. NASTRAN 構造最適化(強度/フラッター解析) 静的空力弾性解析 空力 非構造格子Navier-Stokes solver(TAS) 静的空力弾性解析のための表面圧力計算 構造最適形状に対する空力性能値算出 目的関数 Block Fuel 最小化 最大離陸重量の最小化 亜音速Ù遷音速抵抗差の最小化(抵抗発散の最小化) 最適化法
Adaptive Range Multi-Objective Genetic Algorithm
設計変数
設計変数
翼断面
: 9 design variables * 3 cross sections
ねじり
: 6 spanwise locations
上半角
: 2 positions at kink and tip
1個体あたり
35変数
-33-ARMOGA ARMOGA
Aerodynamic Model Structural Model
Euler comp. @α=Const.
Static Analysis
Displacement Converge? No
Yes
Euler comp. @α=Const.
Static Analysis
Displacement
Converge? No
Yes Euler comp. @α=Const.
Static Analysis Displacement Converge? No Yes Transonic @ 5conditions Subsonic
@ 3conditions Off-design@ 3conditions
N
N--S Comps.S Comps.
- Evaluation of Three Objective Functions
・ Block Fuel ・ Max Takeoff Weight
・ CDdivergence (MDD)
-Check of Constraints ・ MLD
・ Fuel Quantity Block Fuel ModuleBlock Fuel Module Off
Off--designdesign Transonic Transonic ite=1 Subsonic Subsonic ite =it e + 1 Individual # i Individual # i Individual # 1
Individual # 1 Individual # 8Individual # 8
if (ite=1) then Strength/Flutter Optimization endif St a tic A er o el a st ic A n al ys is M o d u le ARMOGA ARMOGA
Aerodynamic Model Structural Model
Euler comp. @α=Const.
Static Analysis
Displacement Converge? No
Yes
Euler comp. @α=Const.
Static Analysis
Displacement
Converge? No
Yes Euler comp. @α=Const.
Static Analysis Displacement Converge? No Yes Transonic @ 5conditions Subsonic
@ 3conditions Off-design@ 3conditions
N
N--S Comps.S Comps.
- Evaluation of Three Objective Functions
・ Block Fuel ・ Max Takeoff Weight
・ CDdivergence (MDD)
-Check of Constraints ・ MLD
・ Fuel Quantity Block Fuel ModuleBlock Fuel Module Off
Off--designdesign Transonic Transonic ite=1 Subsonic Subsonic ite =it e + 1 Individual # i Individual # i Individual # 1
Individual # 1 Individual # 8Individual # 8
if (ite=1) then Strength/Flutter Optimization endif St a tic A er o el a st ic A n al ys is M o d u le 最適化の手順 最適化の手順 8個体x19世代 1個体あたり Euler eq.による評価 9ケース N-S eq.による評価 11ケース 3000ケース程度のCFD解析 -34-解空間の 解空間の33次元プロット次元プロット 130 個の解から 9つの非劣解を得る 個体数が少なく、最適化は まだ収束していない 一般的には遺伝アルゴリズム による最適化ではもっと多くの 個体数と世代数が必要 すべての目的関数に対して最 適な方向に解が見つかる 50kg CD d iv e rg en ce Max Tak eoff Weig ht [k g] Block Fu el [kg] 4counts 10kg : Nondominated solution
initial solution
-35-目的関数の自己組織化マップ 目的関数の自己組織化マップSOMSOM 大量の計算結果から効率よく設計に必要な知識を獲得するため の手段 Block Fuel
Max Takeoff Weight CDDivergence
N N--SS方程式を使った多分野融合最適化を空力設計で利用できるために方程式を使った多分野融合最適化を空力設計で利用できるために 想定される飛行条件全体にわたる解析精度 はく離をともなう流れの計算精度の向上 乱流遷移の予測精度の向上 設計サイクルの中で利用できるために 数千から数万ケースのN-S方程式による計算を例えば1ヶ月以内に 実施する必要がある N-S方程式の数100倍の計算速度の向上 ÎCFDの計算アルゴリズムの改良 Î計算機速度の向上 完全自動化が必須 Î計算格子の自動生成ÍÎ 新しい計算手法 Î形状モデル、構造モデルの自動生成と格子生成との連携 ボトルネック!!
-37-将来展望と課題のまとめ 将来展望と課題のまとめ
経済産業省/NEDOプロジェクト「環境適応型高性能小型航空
機研究開発」など、航空機設計にNavier-Stokes方程式による
CFD解析が設計に利用され始めている
現状の10倍規模の計算機への期待 より精度の良い抵抗推算 RANSを用いたCFDが設計のルーチンワークへ 高揚力設計でのCFDの定量性の明確化、設計での本格的利用 現状の100倍規模の計算機への期待 RANSを用いた構造、飛行制御との多分野融合最適化の本格利用 設計手順に新たな変革Large Eddy Simulationによる設計最適化? このような計算機の進歩の有効利用のために
格子生成の自動化、流体計算の高速化、精度向上、乱流モデル、遷
移モデルの改良、並列計算技術の改良などを精力的に進めていく必 要がある