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2017 年 6 月号(Vol.11)REIT 実務に関連する近時の法令制定等について
Ⅰ.はじめに Ⅱ.住宅宿泊事業法の制定 Ⅲ.投信協会規則の改正Ⅰ.はじめに
本ニュースレターでは、REIT 実務に関連する近時の法令制定等を取り上げます。 まず、ここ数年、話題になっている民泊サービス(住宅(戸建住宅、共同住宅等)の 全部又は一部を活用して、宿泊サービスを提供するものをいいます1。)に関する法制度 として、平成 29 年 6 月 9 日、住宅宿泊事業法が国会において可決・成立し、同月 16 日に公布されました。 また、平成 29 年 3 月 9 日には海外不動産保有法人の株式又は出資の保有について一 般社団法人投資信託協会の不動産投資信託及び不動産投資法人に関する規則が改正・施 行されました。 本ニュースレターにおいては、これらのうち、REIT 及び資産運用会社に関係する項 目について解説します。なお、制度の詳細をすべて記載しているわけではないことにご 留意ください。Ⅱ.住宅宿泊事業法の制定
1.概要
住宅宿泊事業法は、ここ数年、(i)民泊サービスが我が国でも急速に普及している こと、(ii)急増する訪日外国人観光客のニーズや大都市部での宿泊需給の逼迫状況等 に対応するため、民泊サービスの活用を図ることが重要であること、(iii)民泊サービ スの活用に当たっては、公衆衛生の確保や地域住民等とのトラブル防止に留意したル 1 「民泊サービス」のあり方に関する検討会作成の平成 28 年 6 月 20 日付「『民泊サービス』の制度設 計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書)」1 頁の定義を用いていま す。なお、「民泊サービス」のあり方に関する検討会は、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安 全部長及び観光庁審議官により開催された検討会です。 森・濱田松本法律事務所 弁護士 尾本 太郎 TEL.03 6212 8307 [email protected] 弁護士 江橋 翔 TEL.03 6266 8953 [email protected] 弁護士 芳野 涼 TEL.03 6266 8590 [email protected]
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ールづくり及び無許可で旅館業を営む違法民泊サービスへの対応が急務であること を背景として、平成 29 年 3 月 10 日に国会に提出され、平成 29 年 6 月 9 日、国会に おいて可決・成立し、同月 16 日に公布されたものです。 従来、民泊サービスに関する法制度としては、主として①旅館業法、②国家戦略特 別区域法の特区民泊がありましたが 2 、新たに③住宅宿泊事業法に基づく民泊サービ スが制度化されたことになります。2.従来の法制度
(1)旅館業法 宿泊サービスの提供に関する制度を規律する法令としては、従来より、旅館業法 が存在しており、同法によれば、旅館業(宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業を いい、営業形態によりホテル営業、旅館営業3、簡易宿所営業及び下宿営業に分類さ れます(旅館業法第 2 条)。)を経営しようとする者は、都道府県知事等の許可を受 ける必要があります(旅館業法第 3 条)。民泊サービスを反復継続して有償で提供す る場合、旅館業に該当し、原則として、旅館業法の許可が必要となりますが、民泊 ニーズに対応するため、平成 28 年 4 月 1 日付で旅館業法施行令等が改正され、旅館 業のうち簡易宿所営業(宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする 施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいい ます。)に係る許可要件(客室の延床面積の基準や玄関帳場等の設置義務)が緩和さ れました。もっとも、かかる許可を得るためには、旅館業法施行令等に定められた 施設の設備の基準を満たす必要があるほか、建築基準法の用途規制や消防法の規制 についてホテルや旅館と同様の規制に服します。 (2)国家戦略特別区域法の特区民泊 旅館業法の特例として、国家戦略特別区域法に基づく民泊サービスの制度があり ます。これは、国家戦略特別区域会議が、国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事 業(国家戦略特別区域において、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約等に 基づき一定期間以上使用させるとともに外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する 事業として一定の要件に該当する事業をいいます4。)を定めた区域計画について内 閣総理大臣の認定を申請し、内閣総理大臣の認定を受けたときは、当該国家戦略特 別区域外国人滞在施設経営事業を行おうとする事業者が一定の要件に該当している 旨の都道府県知事等の認定を受けることにより、旅館業法の適用が除外される制度 2 この他にも農山漁村体験民宿業(農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律に基 づくもの)やいわゆるイベント民泊(観光庁観光産業化、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品 安全部生活衛生課による「イベント民泊ガイドラインについて」に基づくもの)があります。 3 なお、ホテル営業及び旅館営業の営業種別を統合すること等を内容とする旅館業法の一部を改正する 法律案が第 193 回国会に提出されておりましたが、同国会では成立には至りませんでした。 4 なお、事業で用いる「施設」が外国人旅客の滞在に適したものであることを求めていますが、施設の 「利用者」を外国人に限定するものではありません。
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です(国家戦略特別区域法第 13 条)(以下、本制度に基づき行われる民泊サービス を「特区民泊」といいます。)。現在のところ、大田区、大阪府、大阪市及び北九州 市に関して区域計画が認定され、特区民泊に関する条例が制定されています。 本制度による都道府県知事等の認定を受けるための要件としては、施設を使用さ せる期間が 3 日から 10 日まで5 の範囲内において条例で定める期間6 以上であるこ と(以下「滞在期間要件」といいます。)、施設の各居室の床面積が 25 ㎡以上である こと、外国人旅客の滞在に必要な役務が提供されることなどがありますが(国家戦 略特別区域法施行令第 12 条)、滞在期間要件があることから、1 泊 2 日のサービス 提供はできないといった問題点が指摘されています。3.住宅宿泊事業法の制定
(1)基本的な考え方 以上の法制度に加え、民泊サービスの提供に関するより一般的な法制度として、 今般、住宅宿泊事業法が制定されることとなりました。 まず、住宅宿泊事業法の基本的な考え方は、住宅を活用した宿泊サービスの提供 であって「一定の要件」の範囲内のものについて、旅館業法とは別の法制度を整備 するものであり、その範囲内において旅館業法の特則を設けるものです(「一定の要 件」を超えるものについては、住宅宿泊事業法の対象外であり、旅館業法に基づく 営業許可が必要となります。)7。 また、住宅宿泊事業法は、民泊サービスに関係する事業者として、住宅宿泊事業 者、住宅宿泊管理業者及び住宅宿泊仲介業者の 3 つを定め、それぞれについて規制 を設けています。 (2)住宅宿泊事業と年間提供日数 住宅宿泊事業法においては、上記「一定の要件」として、既存の旅館、ホテルと は異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要で あると考えられています8。かかる観点から、住宅宿泊事業法は、住宅宿泊事業を「旅 館業法第 3 条の 2 第 1 項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて人を宿泊させ る事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定める ところにより算定した日数が 1 年間で 180 日を超えないもの」と定義しており(第 2 条第 3 項)、これにより、住宅宿泊事業法に基づき行う住宅宿泊事業について 180 日の年間提供日数の上限が設けられています。ただし、地域の実情に応じて、都道 5 当初は「7 日から 10 日まで」とされていましたが、特区民泊の普及の妨げとなっているとされ、現在 の規定に改正されました。 6 各条例により、大田区においては 7 日、大阪府、大阪市及び北九州市においては 3 日とされています。 7 「『民泊サービス』の制度設計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告 書)」4 頁。 8 「『民泊サービス』の制度設計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告 書)」6 頁。
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府県等は、一定の条件のもとで条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿 泊事業を実施する期間を制限することができるとされています(住宅宿泊事業法第 1 8 条)。 (3)住宅宿泊事業の 2 類型 住宅宿泊事業法は、住宅宿泊事業を行おうとする者は、都道府県知事等に届出を 行う必要があることとし(住宅宿泊事業法第 3 条第 1 項。かかる届出をして住宅宿 泊事業を営む者を「住宅宿泊事業者」といいます。)、住宅宿泊事業をいわゆる「家 主居住型」と「家主不在型」に区別した上で、それぞれの性質に応じて、適正な管 理や安全面・衛生面の確保に関する規制を設けています。 まず、「家主居住型」は、住宅提供者が、住宅内に居住しながら(原則として住民 票があること)、当該住宅の一部を利用させるものをいいます 9。家主居住型におい ては、住宅内に居住する住宅提供者による管理が可能となることから、この点を踏 まえ、家主居住型による住宅宿泊事業については、住宅宿泊事業者に対し、住宅宿 泊事業の適正な遂行のための措置(宿泊者の衛生・安全の確保、騒音の防止のため に配慮すべき事項の宿泊者に対する説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付 け、標識の掲示等)に関する義務を課すこととしています(住宅宿泊事業法第 5 条 から第 10 条まで及び第 13 条)が、住宅宿泊管理業者(下記(4)で説明します。) への委託は義務付けられていません。 次に、住宅宿泊事業法では、「家主不在型」として、届出住宅の居室の数が一定の 数を超える場合及び届出住宅に人を宿泊させる間、家主が不在となる場合を規定し ています。家主不在型による住宅宿泊事業については、住宅宿泊事業者に対し、上 記の住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置を住宅宿泊管理業者に委託することを 義務付けています(住宅宿泊事業法第 11 条)。 また、都道府県知事等は、住宅宿泊事業者を監督するものとされています(住宅 宿泊事業法第 15 条から第 17 条まで)。 (4)住宅宿泊管理業者に係る制度 住宅宿泊事業法では、住宅宿泊管理業(上記「家主不在型」の住宅宿泊事業者か ら委託を受けて、報酬を得て、上記の住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(標 識の掲示を除きます。)等を行う事業をいいます。)を営もうとする者は、国土交通 大臣の登録を受ける必要があるとされています(住宅宿泊事業法第 22 条。かかる登 録を受けて住宅宿泊管理業を営む者を「住宅宿泊管理業者」といいます。)。 住宅宿泊事業法では、住宅宿泊管理業者に対し、住宅宿泊管理業の適正な遂行の ための措置(住宅宿泊事業者への契約内容の説明等)及び上記の住宅宿泊事業の適 正な遂行のための措置(標識の掲示を除きます。)の代行に関する規制を設けていま 9 「民泊サービス」のあり方に関する検討会作成の平成 28 年 6 月 20 日付「『民泊サービス』の制度設 計のあり方について(「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書)」4 頁の定義を用いていま す。
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す(住宅宿泊事業法第 29 条から第 40 条まで)。 また、国土交通大臣は、住宅宿泊管理業者を監督するものとされています(住宅 宿泊事業法第 41 条から第 45 条まで)。 (5)住宅宿泊仲介業者に係る制度 住宅宿泊事業法では、住宅宿泊仲介業(報酬を得て、住宅宿泊事業者と宿泊者と の間の宿泊契約の締結の仲介を行う事業をいいます。)を営もうとする者は、観光庁 長官の登録を受ける必要があるとされています(住宅宿泊事業法第 46 条)。 住宅宿泊事業法では、住宅宿泊仲介業者に対し、住宅宿泊仲介業の適正な遂行の ための措置(住宅宿泊仲介業約款の届出、住宅宿泊仲介業務に関する料金の公示、 宿泊者への契約内容の説明等)に関する規制を設けています(住宅宿泊事業法第 53 条から第 60 条まで)。 観光庁長官は、住宅宿泊仲介業者を監督するものとされています(住宅宿泊事業 法第 61 条から第 66 条まで)。 (6)施行までの流れ 住宅宿泊事業法は、公布の日(平成 29 年 6 月 16 日)から起算して 1 年を超えな い範囲内において政令で定める日から施行されます(住宅宿泊事業法附則第 1 条本 文)。ただし、住宅宿泊事業、住宅宿泊管理業又は住宅宿泊仲介業に係る届出又は登 録に係る改正は公布の日(平成 29 年 6 月 16 日)から起算して 9 か月を超えない範 囲内において政令で定める日に施行されるため、これらの届出や登録の申請は、制 度開始前から行うことが可能です(住宅宿泊事業法附則第 1 条但書、第 2 条)。4.REIT 実務への影響
住宅宿泊事業法の制定により、民泊サービスがより一般的なものとなるため、特に 住居用途の物件に投資する投資法人は、投資対象とするマンション等の賃貸住宅にお いて民泊サービスを提供することについてどのような方針を採用するかをあらかじ め検討することが望ましいと思われます。その上で、民泊サービスに関する問題・紛 争等が生じることを防ぐため、民泊サービスの提供を許容する場合又は民泊サービス の提供を禁止する場合のいずれにおいても、区分所有建物の管理規約に民泊サービス の提供に対する対応を記載することが考えられます。Ⅲ
.投信協会規則の改正
投資法人による海外不動産投資については、平成 25 年 6 月の投資信託及び投資法人 に関する法律(以下「投信法」といいます。)の改正(平成 26 年 12 月 1 日施行)によ り、一定の要件を満たす海外不動産を保有する現地法人(以下「海外不動産保有法人」
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といいます。)の株式に係る議決権の過半取得が解禁され(投信法第 194 条第 2 項)、投 資法人による海外不動産保有法人を通じた海外不動産への間接投資が可能となってい ます10。もっとも、投資信託協会の定める不動産投資信託及び不動産投資法人に関する 規則(以下「不動産投信規則」といいます。)により、投資法人が不動産投信規則上の 「不動産投信等」に該当するためには、規約において財産の総額の 2 分の 1 を超える額 を、不動産等及び不動産等を主たる投資対象とする資産対応証券等に対する投資として 運用することを目的とする旨を規定する必要があるところ(不動産投信規則第 3 条第 1 項)、従前は、海外不動産保有法人の株式が「不動産等」に含まれていなかったため、 財産の総額の 2 分の 1 以上を海外不動産保有法人の株式に投資しようとする投資法人は、 不動産投信規則上の「不動産投信等」に該当しないこととなっていました(改正前の不 動産投信規則第 3 条第 2 項)。このため、財産の過半を海外不動産保有法人を通じて海 外不動産に投資しようとする投資法人にとっては実務上の制約となっていました。 しかし、平成 29 年 3 月 9 日に、不動産投信規則において上記の投信法の改正に対応 する改正がなされることとなり、投資法人による海外不動産に対する投資拡大が期待さ れます。改正の主な内容は以下のとおりです。 「不動産等」の定義に、海外不動産保有法人のうち資産のすべてが不動産及び当 該不動産に係る金銭債権等である法人が発行する株式又は出資に係る規定が追 加されました(改正後の不動産投信規則第 3 条第 2 項第 10 号)11。これにより、 財産の総額の 2 分の 1 以上を海外不動産保有法人の株式に投資しようとする投 資法人も「不動産投信等」に該当することとなりました。 「不動産の評価」に、海外不動産保有法人の株式又は出資の評価額に係る規定が 追加されるとともに、外貨建て資産について、外貨建て価額と邦貨換算した価額 を併記することが各規定に追加されました(改正後の不動産投信規則第 6 条第 1 項第 1 号、第 6 号、第 7 号、第 2 項)。10 これに関連する事項として、外国子会社合算税制について当事務所発行の TAX LAW NEWSLETTER 1
月号(Vol.22・23 合併号)及び REIT NEWSLETTER 3 月号(Vol.10)が解説をしておりますので、併 せてご参照ください。
・TAX LAW NEWSLETTER 1 月号(Vol.22・23 合併号)
http://www.mhmjapan.com/ja/newsletters/tax-law-nl/22.html
・REIT NEWSLETTER 3 月号(Vol.10)
http://www.mhmjapan.com/ja/newsletters/reit-nl/13.html 11 なお、東京証券取引所の定める有価証券上場規程における「不動産等」では、海外不動産保有法人の うち「資産の全てが不動産及び流動資産等である法人が発行する株式」が対象とされており(有価証券 上場規程第 1201 条第 12 号、同施行規則第 1201 条第 10 項)、不動産投信規則における文言と差異があ ります。 (当事務所に関するお問い合せ) 森・濱田松本法律事務所 広報担当 [email protected] 03-6212-8330 www.mhmjapan.com