Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
愛知県臨床検査標準化協議会
AiCCLS :
Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
細胞診アトラス
Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
発刊によせて
愛知県臨床検査標準化協議会
会 長 柵木 充明
細胞診の方法と技術は 1928 年に医学者である、ゲオルギオス・パパニコロウ
(George Nicolaus Papanicolaou,1883 年‐1962 年)により提唱され、1950
年代より婦人科系腫瘍の子宮頸癌の早期発見を目的に大規模な臨床試験パップテストが
開始された。後に子宮頸癌による死亡者の減少に貢献することが実証され、世界的に子
宮癌のスクリーニング法として普及している。その後半世紀以上を経て、現在では婦人
科領域に限らず呼吸器・泌尿器など多分野で細胞診が行われるようになり、その検査技
術は飛躍的な進化を遂げた。
2008 年 4 月の診療報酬改訂で細胞診は第 3 部検査から第 13 部病理診断に移り、
2010 年の診療報酬改訂では第 2 節病理診断として細胞診断料が新設された。医療支払
い時に受け取る医療費明細書や領収書では、細胞診の料金は検査の項ではなく病理診断
の欄に記載されるようになった。つまり、細胞診は細胞検査士が行うため、あくまで細
胞診検査ではあるが、極めて医行為に近い細胞診断へとその価値を確立してきた。
「安心・安全な医療」が求められる現代において、病理専門医・細胞診専門医と細胞検
査士との連携を強化し、細胞診における検査の質的向上を図り診断の精度を高める努力
が今後更に必要とされる。
この度の「細胞診アトラス」は、これから細胞診を学ぶ若者から経験を積んだベテラ
ンまで幅広く活用できるように編集し、細胞画像も多数取り入れた。座右の書として日
常業務のなかで活用して頂けることを願っている。
2012 年 3 月
Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
炎症性背景(著明な好中球浸潤)
患者年齢 70 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(エンドサイト) 臨床所見:閉経 【鑑別すべき所見】壊死性背景 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】 好中球の著明な浸潤を背景にシート状の内膜腺上皮細胞集団をみる。上皮細胞の細胞質はやや広く厚みが あり、核は類円形、核縁円滑、クロマチンは細顆粒状で好中球と比べて増量はなく、稀に小型核小体をみる。 著明な好中球浸潤をみるが明らかな壊死を認めず、好中球内に細菌を確認できるため細菌性子宮内膜炎と診 断した。内膜腺上皮細胞は炎症性変化として好酸性化生を起こしていると思われる。組織標本でも間質部分 に著明な白血球の浸潤をみとめ、内膜腺上皮細胞の細胞質はやや広く肥厚しており、好酸性化生を伴い、細 胞診標本と矛盾しない所見である。 【細胞診断のポイント】 壊死には必ず炎症反応を伴うことから、炎症性背景と壊死性背景は鑑別しにくい場合がある。出現細胞を よく観察し、壊死を疑う核変化(核濃縮、核融解、核崩壊)や核変化を示す細胞の細胞質変化(細胞質の膨 化、好酸性化および均質化、空胞形成など)を確認した上で判断する。 写真(細胞像・組織像) 著明な白血球の浸潤をみる 内膜腺上皮細胞の好酸性化生 写真1:Papanicolaou 染色 ×10 写真2:Papanicolaou 染色 ×20 好中球内に貪食された細菌をみる 著明な白血球の浸潤と内膜腺上皮細胞の好酸性化生を みる 写真3:Papanicolaou 染色 ×100 写真4:H・E 染色 ×20AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(1)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
壊死性背景
患者年齢 90 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(エンドサイト) 臨床所見:閉経、不正性器出血、子宮内膜 10~20mm 【鑑別すべき所見】炎症性背景 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】 好中球の著明な浸潤とともに多数の壊死細胞を認める。壊死細胞の核変化は融解状が主体で、核濃縮、核 崩壊の所見は乏しい。また、蛋白滴と思われる無構造物質もみる。壊死性背景とする所見である。内膜腺上 皮細胞は少数で、核腫大や小型核小体などの炎症性変化と思われる細胞異型をみるが、構造異型はない。 Giemsa 染色で好中球内に細菌を確認でき、細菌性子宮内膜炎と診断した。 【細胞診断のポイント】 壊死には必ず炎症反応を伴うことから、炎症性背景と壊死性背景は鑑別しにくい場合がある。出現細胞を よく観察し壊死を疑う核変化(核濃縮、核融解、核崩壊)や核変化を示す細胞の細胞質変化(細胞質の膨化、 好酸性化および均質化、空胞形成など)を確認した上で判断する。また、壊死の原因について検索する必要 がある。 写真(細胞像・組織像) 写真1:Papanicolaou 染色 ×10 写真2:Papanicolaou 染色 ×40 核が不明瞭な(融解状)細胞をみる 好中球内に貪食された細菌(桿菌)をみる 写真3:Papanicolaou 染色 ×40 写真4:Giemsa 染色 ×100 2012.3 Ver1AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(2)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
内膜の老人性変化
患者年齢 60 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(エンドサイト) 臨床所見:閉経 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】 背景には白血球、macrophage などの炎症細胞は少なく、散在性にシート状の内膜腺上皮細胞の集団と少数 の内膜間質細胞をみる。内膜腺上皮細胞は細胞質がやや広めのものと核密度が高いものをみる。核は類円形 で、核縁不整はなく、クロマチンは細顆粒状均等分布で小型核小体をみる。核小体は認めるものの、その他 の構造異型、細胞異型は乏しいため正常ないし良性と判断した。 【細胞診断のポイント】 内膜の老人性変化は内膜腺上皮細胞の丈が低くなり、間質が線維状となり、内膜も菲薄化する。内膜腺の 閉塞により内膜腺が嚢胞状に拡張することがあり、その場合の嚢胞壁細胞(内膜腺上皮細胞)は単純型子宮 内膜増殖症のそれと違い、圧迫により扁平状に萎縮することが多い。閉経後の内膜細胞所見はホルモン環境 により多彩な場合があるが、一般的に炎症細胞や間質細胞に乏しく、内膜腺上皮細胞の出現数も少なくなる。 特に土管状集団の出現は少なく、シート状集団が主体を占める。また、時に萎縮に伴う macrophage を多数 みることもある。閉経後にこれらの所見を著しく逸脱する場合は、その原因(ホルモン環境、増殖性病変な ど)を検索する必要がある。 写真(細胞像・組織像) 背景には炎症細胞が少ない シート状に内膜腺上皮細胞の集団をみる 写真1:Papanicolaou 染色 ×10 写真2:Papanicolaou 染色 ×40 閉経により菲薄化した内膜 内膜腺上皮細胞が扁平化した内膜腺の嚢胞性変化 写真3:H・E 染色 ×10 写真4:H・E 染色 ×40AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(3)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
子宮内膜増殖期
患者年齢 20 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(ブラシ) 臨床所見:月経開始後 12 日、不正性器出血 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】 少数の白血球と内膜間質細胞を背景に、軽度の重積性を示す内膜腺上皮細胞集団をみる。細胞はN/C比 が高く核優勢で、同一集団内に核の大小不同をみる。内膜細胞の増生を疑う所見で核クロマチンは軽度増量 しており分裂像も散見するが、構造異型や核縁不整に乏しく核小体も目立たない。出現する細胞集団の主体 は増殖期の内膜腺細胞集団と考える。一部の土管状の内膜線上皮細胞集団で核下空胞様にみえる部分がある が、腺管が細く、集塊内の核密度が高いため増殖期内膜と推測するのが妥当であろう。 【細胞診断のポイント】 同一集団内における核の大小不同や分裂像はその細胞集団の細胞増殖を示唆する所見であるが、増殖期内 膜ではその他の細胞異型や構造異型を認めない。子宮内膜増殖症以上の病変については構造異型の有無およ びその出現数や出現率、細胞異型の有無、細胞異型が弱い場合は核クロマチンが充満し張りのある核におけ る核縁不整の有無などの所見を参考にして判断する必要がある。 写真(細胞像・組織像) N/C比が高く、核密度の高い細胞集団 写真1:Papanicolaou 染色 ×10 写真2:Papanicolaou 染色 ×20 同一集団内に核の大小不同や分裂像をみる 同一集団内に核の大小不同をみる 写真3:Papanicolaou 染色 ×40 写真4:Papanicolaou 染色 ×40 2012.3 Ver1AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(4)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
子宮内膜腺分泌期(初期)
患者年齢 30 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(ブラシ) 臨床所見:月経開始後 16 日目、子宮内膜ポリープ、子宮内膜 20mm 【鑑別すべき所見】頸管腺上皮細胞 【細胞判定】 陰性 Ⅰ 【細胞診断】 散在性に少量の白血球と表層扁平上皮細胞、内膜間質細胞を背景にシート状もしくは土管状の腺上皮細胞 集団をみる。薄桃色~紫色の粘液をもち、その粘液に圧排されて核形不整を示す細胞の集団は標本内に扁平 上皮細胞を散見するため頸管腺上皮細胞とした(写真1・2)。この集団は土管状にもみえるが、シート状 集団が折れ曲がった可能性が高い。明らかな土管状の細胞集団の細胞は高円柱状で内腔側に核があり、細胞 質は空胞様にみえる核下空胞をもち核形は類円形で不整はない。分泌期初期(排卵直後)の内膜腺上皮細胞 と推測した(写真3・4)。 【細胞診断のポイント】 内膜腺管は分泌期初期に分泌空胞をもつ。排卵後 2~3 日中に核は基底膜側から内腔側に移動し、その下 (基底膜側)に分泌空胞をみる。これを核下空胞という。その後核下空胞は排卵後 5 日までに内腔側に移動 し、腺腔に内容を分泌する。 写真(細胞像・組織像) 周囲に扁平上皮を認め、頸管腺上皮細胞の混入を考える 薄桃色~紫色の粘液をもち、その粘液に圧排されて核 形不整を示す頸管腺上皮細胞 写真1:Papanicolaou 染色 ×20 写真2:Papanicolaou 染色 ×40 土管状の内膜腺上皮細胞集団 高円柱状で内腔側に核があり、細胞質は空胞様 (核下空胞) 写真3:Papanicolaou 染色 ×20 写真4:Papanicolaou 染色 ×40AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(5)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
子宮内膜分泌期(中期以降)
患者年齢 50 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(エンドサイト) 臨床所見:月経開始後 20 日目 【鑑別すべき所見】頸管腺上皮細胞 【細胞判定】 陰性 Ⅰ 【細胞診断】 散在性に白血球と内膜間質細胞を背景に頸管腺上皮細胞集団ならび内膜腺上皮細胞集団をみる。頸管腺上 皮細胞は薄桃色~紫色の粘液をもち、一部その粘液に圧排されて核形不整を示す(写真1・2)。 内膜腺上皮細胞はシート状で、細胞質が広く泡沫状であるが、明らかな粘液様物質は認めない。核形は類 円形で不整はない。分泌期中期以降の内膜と推測した(写真3・4)。 【細胞診断のポイント】 内膜腺管は分泌期初期に分泌空胞をもつ。排卵後 2~3 日中に核は基底膜側から内腔側に移動し、その下 (基底膜側)に分泌空胞をみる。これを核下空胞という。その後核下空胞は排卵後 5 日までに内腔側に移動 し、腺腔に内容を分泌する。分泌期中期、末期、月経期には内膜腺上皮細胞は低円柱状で分泌空胞をもたな い。 写真(細胞像・組織像) 標本中には少数ながら扁平上皮を認め、粘液上皮化生 でなく頸管腺上皮の混入と考える 薄桃色~紫色の粘液をもち、一部その粘液に圧排され て核形不整を示す(頸管腺上皮) 写真1:Papanicolaou 染色 ×20 写真2:Papanicolaou 染色 ×40 シート状の内膜腺上皮細胞集団 細胞質は広く泡沫状であるが、明らかな分泌物を認めな い(内膜腺上皮) 写真3:Papanicolaou 染色 ×20 写真4:Papanicolaou 染色 ×40 2012.3 Ver1AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(6)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
脱落膜様変化
患者年齢 40 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(エンドサーチ) 臨床所見:不正出血 【鑑別すべき所見】内膜腺上皮、乳頭状集塊 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】 内膜間質細胞(写真1・2)の細胞質は広く、上皮細胞様に変化している。細胞間結合は不明瞭である。 核異型は認めない。長期のホルモン剤投与による変化。共存する内膜腺上皮細胞は小型で増殖期内膜の像を 示し、単純型内膜増殖症を示唆する細胞集団も認める(写真3)。 【細胞診断のポイント】 妊娠期には内膜間質細胞が明るく広い細胞質をもつN/C比小の多辺形の細胞に変化し、この細胞層が分 娩の際に剥離、排出されるため脱落膜と呼ばれる。月経周期の分泌期後期にも内膜間質細胞に同様な変化が 起こる(脱落膜様変化)。このため出現する細胞も脱落膜細胞と類似しており、細胞質は明るく広くなり上 皮細胞様であるが細胞同士の結合は不明瞭である。核異型はない。月経周期やホルモン投与など臨床情報を よく把握する必要がある。 写真(細胞像・組織像) 乳頭状様の細胞集団 最外層は内膜線上皮細胞であるが、内部は広い細胞質を 持つ脱落膜様細胞 写真1:Papanicolaou 染色 X20 写真2:Papanicolaou 染色 X40 のう胞状内膜腺上皮集団もみられた セルブロック標本:間質の脱落膜変化 写真3:Papanicolaou 染色 X10 写真4:H・E染色 X10AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(7)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
内膜間質細胞と
内膜腺上皮細胞の鑑別
患者年齢 40 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(エンドサーチ) 臨床所見:不正出血 【細胞判定】陰性 Ⅰ 【細胞診断】 内膜腺上皮細胞(写真1)は核が類円形、細胞質が明瞭に認められる。内膜間質細胞(写真2・3)は核 が不整形、細胞質は不明瞭で、裸核状に認めることが多い。 【細胞診断のポイント】 標本上に内膜腺上皮細胞集団と内膜間質細胞集団の 2 種類が多数存在し、それぞれの異型が乏しい場合は 良性疾患の可能性が高い。逆に単一の細胞しか認めない場合は癌が存在することがあるので出現細胞の由来 をしっかり鑑別する必要がある。内膜間質細胞は細胞間の結合性はないが、集簇すると上皮細胞様にみえる ことがある。その際一定の配列を示さず、細胞質は不明瞭なことが多く、核は卵円形~紡錘形であるが核縁 に張りがなく、核形不整をみることが多い。 *核縁不整は核の形に影響がない程度の核のふちどりの細かな突起やギザギザであり、核の長軸や短軸に 対して左右対称でない核形不整とは区別することが望ましい。 写真(細胞像・組織像) 内膜腺上皮細胞 内膜間質細胞集団(右) 写真1:Papanicolaou 染色 X40 写真2:Papanicolaou 染色 X40 螺旋血管にまとわりついた間質 セルブロック標本 写真3:Papanicolaou 染色 X10 写真4:H・E染色 X20 2012.3 Ver1AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(8)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
内膜間質細胞と内膜間質細胞
集簇内の血管
患者年齢 40 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(ブラシ) 臨床所見:不正性器出血 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】 中等度の白血球浸潤を伴って細胞質境界不明瞭もしくは細胞質自体が不明瞭な紡錘形~類円形の核をも つ内膜間質細胞が散在性や集簇としてみられる。その細胞集簇内を血管が走行している。内膜腺上皮細胞は シート状ないし土管状で数ヶ所に分岐や拡張をみるが、出現数が少ない。また細胞異型も乏しい。内膜腺上 皮細胞、内膜間質細胞を認め、細胞異型も乏しいことから正常ないし良性とした。 【細胞診断のポイント】 標本上に内膜腺上皮細胞集団と内膜間質細胞集団の 2 種類が多数存在し、それぞれの異型が乏しい場合は 良性疾患の可能性が高い。逆に単一の細胞しか認めない場合は癌が存在することがあるので出現細胞の由来 をしっかり同定する必要がある。内膜間質細胞は細胞間の結合性はないが、集簇すると上皮細胞様にみえる ことがある。その際一定の配列を示さず、細胞質は不明瞭なことが多く、核は卵円形~紡錘形であるが核縁 に張りがなく、核形不整をみることが多い。*核縁不整は核の形に影響がない程度の核のふちどりの細かな 突起やギザギザであり、核の長軸や短軸に対して左右対称でない核形不整とは区別することが望ましい。 写真(細胞像・組織像) 血管周囲に配列の不規則な間質細胞の集簇をみる 写真1:Papanicolaou 染色 ×10 写真2:Papanicolaou 染色 ×20 間質細胞が重積して集簇する。細胞質が不明瞭な場合 は核縁不整や核形不整をみることが多い 分岐した内膜腺管(左)と内膜間質細胞集簇内を走行 する血管(右)を見る 写真3:Papanicolaou 染色 ×40 写真4:Papanicolaou 染色 ×10AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(9)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
小型裸核様異型細胞
患者年齢 60 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(ブラシ) 臨床所見:閉経、半年前から少量の性器出血持続 【鑑別すべき所見】内膜間質細胞集簇 【細胞判定】 疑陽性 Ⅲ 【細胞診断】 一部に核濃縮、核融解、核崩壊とそれに伴う細胞質変化を認め、壊死の存在を疑う背景に裸核もしくは裸 核様に散在性または重積性集塊として上皮性か非上皮性か、はっきりしない小型異型細胞を単一的に認める。 核の大小不同著明、核は細顆粒状クロマチンが充満して核縁に張りがあるが、核縁不整も少なからずみる。 核小体は小型のものをみる程度である。疑陽性として要生検が望ましい。 【細胞診断のポイント】 この症例の異型細胞は正常の内膜間質細胞と比べると核が細顆粒状クロマチンで充満していて核縁に張 りがある。それでいて核縁の不整(突起や切れ込み)を少なからず認める。また、同一集団内で核の大小不 同はもちろん、核クロマチンのパターンの違いがみられる。生検では小型ながら充実性増殖を主体とする類 内膜腺癌G3であった。 写真(細胞像・組織像) 核縁に張りがありながら核縁不整(突起や切れ込み)を みる 同一集団内での核の大小不同、核クロマチンパターンに 差がみられる 写真1:Papanicolaou 染色 X40 写真2:Papanicolaou 染色 X40 組織では類内膜腺癌G3 写真3:Papanicolaou 染色 X40 写真4:H・E染色 X20 2012.3 Ver1AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(10)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
stromal breakdown
患者年齢 50 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(ブラシ) 臨床所見:閉経 2 年前、子宮筋腫、不正出血あり 【鑑別すべき所見】子宮体癌、異型内膜増殖症、内膜増殖症、機能性出血 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】無排卵性子宮出血 Endometorial glandular and stromal breakdown (以下 BD) 【細胞診断のポイント】 増殖期内膜が主体で、背景は出血性、ばらばらの間質細胞および間質細胞の集簇を認める。一部に写真の ような集塊を散見する。クロマチンの明らかな増量は認めないが、大小不同がみられ、上皮細胞は不規則な いし乳頭状の集塊を示す点が問題となる。 集塊内部は間質細胞の集簇であり表層上皮は化生性変化(乳頭状、表層合胞化生)を伴っており、このよ うな集塊は則松らの言う「化生性不整形突出集塊」に分類されるもので、真の乳頭状集塊には分類されない。 腺増生や拡張腺はみられず、背景に間質細胞集塊と化生性変化が多いことや断片化した内膜腺が多いこと から BD と考えられる。化生性変化を過剰診断しないことが重要である。 写真(細胞像・組織像) 断片化した内膜腺と間質細胞の集簇がみられる 大型化生性不整形突出集塊 写真1:Papanicolaou 染色 ×10 写真2:Papanicolaou 染色 ×10 間質細胞の集簇を取り囲む化生性上皮集塊 写真3の拡大像 写真3:Papanicolaou 染色 ×10 写真4:Papanicolaou 染色 ×40
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愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(11)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
内膜腺管の拡張
患者年齢 30 歳代 性別 女性 検体種類:子宮内膜擦過(ブラシ) 臨床所見:月経開始後 6 日、月経延長 【鑑別すべき所見】シート状の内膜腺細胞集団の折れ曲がりなどの偽腺管拡張 【細胞判定】 陰性 Ⅱ 【細胞診断】 背景に壊死細胞や極端な炎症細胞の浸潤は見られず内膜腺上皮細胞は集団で出現し、数ヶ所に土管状の腺 管全体が拡張しているものや嚢胞状になっているものをみる。後者は嚢胞部分が破れたようになっていると ころがあるが、腺管の分岐なのかあるいは塗抹時のアーチファクトかはわからない。明らかな細胞異型は認 めない。この症例は土管状や直線状の腺管が主体であり拡張腺管の数は多くはないが、極端な拡張があるこ とは明らかなため単純型子宮内膜増殖症疑いと診断した。 【細胞診断のポイント】 内膜腺上皮は単純管状腺であるため生理的変動はあるものの、それぞれの時期ごとに太さはほぼ一定であ る。つまり嚢胞状や同一腺管における最大幅/最小幅比の増大は構造異型として認識する。これらの腺管拡張 の判定指標は、最大拡張腺管直径線上核数が 40 個以上や腺管の最大幅が最小幅の 2 倍以上などがある。し かし実際は少数なら正常ないし良性でも出現することがあるため出現数や出現率を考慮する必要がある。出 現数や出現率は検体採取法や検体処理法に左右されるので自施設で最適な基準を決めなければならない。 写真(細胞像・組織像) 極端な拡張(嚢胞状)を示す内膜腺管 極端な拡張(嚢胞状)を示す内膜腺管 写真1:Papanicolaou 染色 ×4 写真2:Papanicolaou 染色 ×4 写真3:Papanicolaou 染色 ×10 写真4:Papanicolaou 染色 ×10 愛知県臨床検査標準化協議会 “細胞診・子宮体部内膜シリーズ”(12) 2012.3 Ver1AiCCLS
愛知県臨床検査標準化協議会 細胞診アトラス“子宮体部内膜シリーズ”(12)Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization 参考文献 1)加来恒壽ほか:女性性器の正常組織像と生理的形態変化,図説産婦人科 VIEW25 臨床病理学,32-51,メジカルビュー社,東京,1996 2)加来恒壽ほか:子宮内膜・卵管,図説産婦人科 VIEW25 臨床病理学,108-129, メジカルビュー社,東京,1996 3)杉下匡ほか:現代の婦人科細胞診,44-49,116-119,158-177,金原出版, 東京,1990 4)宮地徹ほか:子宮内膜,改訂産婦人科病理学診断図譜,150-228,杏林書院, 東京,1987 5)柴田偉雄:扁平上皮系細胞の見方,鑑別を主体とした細胞診断学,41-51, 名古屋大学出版,愛知,1989 6)則松良明ほか:子宮内膜増殖症および類内膜腺癌 G1 の細胞像に関する検討, 日臨細胞誌 1998;Vol37:650-659. 7)蒲貞行ほか:女性ホルモン補充療法における子宮内膜細胞診,日臨細胞誌 1996; Vol35:538-548.
Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization 謝辞 この細胞診アトラスを作成するにあたり、愛知県立大学看護学部 教授 越川 卓先生に 多大なご協力を頂きましたことをこの場で深く感謝いたします。 ガイドライン作成委員会(病理細胞検査) -子宮体部内膜シリーズ(1)~(12)- 監修 越川 卓 (愛知県立大学 看護学部) 作成委員長 角屋 雅路 (知多市民病院) 作成委員 佐藤 初代 (豊川市民病院) 作成委員 今井 律子 (東海市民病院) 作成委員 田中 浩一 (厚生連 豊田厚生病院) 協力 日本細胞診断学推進協会細胞検査士会愛知県支部 愛知県臨床検査標準化協議会 愛知県臨床検査標準化ガイドライン 細胞診アトラス -子宮体部内膜シリーズ(1)~(12)- 発行 平成 24 年 3 月 発行所 愛知県臨床検査標準化協議会 発行者 柵木 充明 編集者 岸 孝彦・鈴木 博子・田中 浩一
Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization