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新生児B群溶連菌感染症の発症予防に関する研究 : 第1編発症例における母児の抗体価

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(1)

34 原

〔書蟻繕27第鞍元葎1言〕

新生児B群溶連菌感染症の発症予防に関する研究

第1編 発症例における母児の抗体価

東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授)

東京女子医科大学 第二病院小児科(部長:草川三治教授)

スズ キ

鈴 木

ヨウ コ

葉 子

(受付 昭和63年10月7日)

AStudy on the Prevention of Neonatal Group B Streptococcal lnfection

Part 1. Antibody正evels in Infected Infants and Their Mothers

Yoko SUZUKI

Department of Pediatrics(Director:Pro五Yukio FUKUYAMA)

Tokyo Women’s Medical College

Department of Pediatrics(Director:Prof. SanjiKUSAKAWA) Tokyo Women’s Medical College Daini HospitaI

The transplacentally obtained antibody to group B streptococcus(GBS)plays an important role in

the prevent量on of neonatal GBS infection. To determine the protective level of the antibody, it is mandatory to know the serum level of antibody in infected patients.

In this study, antibody levels in serum samples from ten infected neonates and their mothers were

measured.

The patients examined were suffering from systemic GBS type III or type IIIR infections,among

which 5 cases being the early−onset type and the other 5 cases being the late−onset type. With regard to

clinical aspects, there were 5 cases of sepsis,3cases of sepsis and meningitis, one case of meningitis

and one case of sepsis and coxitis.

The antibody was measured by the ELISA procedure using sera collected within 3 days after onset

of these diseases.

The antibody levels were 1.3∼7.1μg/ml in mothers and 2.1∼5.3μg/ml in infants,respectively. All of them were far below the cut off point of 12.7μg/ml which has been tentatively set to define the positive antibody.

Though the antibody levels did not clearly correlate with clinical features, the patient who fell ill immediately after birth and died with rapid progress showed the lowest antibody level(2.1μg/ml)and his mother also showed an even more lower level(1.3μg/ml). These observations further suggested that low antibody levels could be one of the risk factors which will contribute to the severity of the CliniCal manifeStatiOn. はじめに

B群溶連菌(以下,GBS)は新生児感染症の原

因菌として主要な位置を占めている.新生児GBS

感染症の発症病型として多い敗血症や髄膜炎の場

合は致命率も高く,後遺症を残す確率も高い.抗

生剤療法が進歩した今日でも,その重篤さには変

わりがない.また,症状が出現してからでは治療

が間に合わない場合も多いため,その予防法が問

題となっている.

新生児GBS感染症では,周産期における垂直

ユ24一

(2)

35

感染が主な感染経路1)であり,母親が膣にGBSを

保菌していること,さらに母体血中のGBSに対

する特異抗体が低いことが発症要因の一つと考え

られる.そこで筆者は,実際に発症した新生児症

例の母児の血中抗体価を測定した.

対 象

GBS III型あるいはIIIR型による新生児感染

症例10例について検:討した.症例はearly onset

type 5例と1ate onset type 5例である.病型とし

ては,敗血症5例,敗血症と髄膜炎の合併3例,

髄膜炎1例,敗血症と股関節炎の合併1例であっ

た.

症例5を除いていずれも発症後3日以内に採取

した血清を用いて,甲州の血中抗体価を測定した.

また,第2編に詳述するが,妊婦検診に来院し

た5,302例についても抗体測定を行った.

方 法

血中抗体は筆者らの確立したELISA法2)(図

1)にて測定した.用いた菌株はGBS III型のみ

の抗原性を持つ野生株で,Lance丘eldら3)のtrich−

loracetic acid法で抗原を抽出した. GBS III型標

準株(6313,0rig. J, Jelinkova)との比較では,

同一の抗原性を持つことを確認したが,野生株の

方が測定上の抗原性および安定性がよく,わずか

に再現性もすぐれていた.Binding bu挽rは0.1M

carbonate buffer pH 9.6, washing bufferは0.01

MPBS−0.1%Tween 20 pH 7.3,基質液は0.2

mg/ml o−phenilendiamine−0.01%H202,血清希

釈液には0.01M PBS−0.1%Tween 20−bovine

albumin pH 7.3を使用した.標識抗体としては,

抗ヒトIgGヤギ血清とhorse raddish peroxidase

結合液(Cooper Biomedical社)を血清希釈液で

200倍に希釈して使用した.

吸光度測定にはイムノリーダーNJ2000(Inter−

med社)を用いて490nmで測定した.

GBS III型抗体の高値だったvolunteerより血

清を集め,先に述べた抗原を用いてa缶nity

chromatographyによりIII型IgG抗体を抽出し,

100μlGBSIII extracted antigen with O.1M bicarbonate buffer pH9.6

4℃over night

washed 3times

5μIserum or standard anti type III IgG 95μldilutillg buf〔er

37℃3hrs

washed 3times

100μlgoat anti−human IgG・HRP(1:200)

37℃90min.

washed 3times lOOμ1 substrate ↓25℃30min.

50μ16NH2SO4

OD 490nm

図1 ELISA procedure

表1Antibdy levels to GBS type III in the cases of neonatal infection

Case Day oflife Diagnosis Ab at onset(μ9/ml) Serotype Style of

Mother Infant of GBS delivery Prognosis

1 3hr* Sepsis 6.3 5.3 III

ND

1ive

2 6hr Sepsis 6.3 4.2 III

ND

live

3 1d*事 Sepsis 2.5 2.3 III

ND

1ive

4 1d Sepsis 1.3 2.1 III C/S died

5 3d Sepsisleningitis 4.0 4.9 IIIR

ND

1ive

6 13d Meningitis 7.1 5.2 III

ND

live

7 16d Sepsis 6.3 4.4 IIIR

ND

1ive

8 16d Sepsisleningitis 4.4 4.7 III

ND

died

9 23d Sepsis

boxitis 5.1 3.8 IIIR

ND

live

10 24d Sepsisleningitis 4.0 4.7 III C/S Iive

*Hours of life

**cays of life

ND:Normal delivery

C/S:Cesarean section

(3)

36

標準曲線を作製して定量化した.

この測定方法における変動係数は,inter−assay

7.8%,intra−assay 5.6%であった.

結 果

表1に抗体測定結果を示した.症例4と症例7

はそれぞれ在胎函数36週,34週の早期産児であっ

たが,その他はすべて満期産児であった.分娩様

式としては,症例4と症例10は帝王切開分娩で,

その他の8例は経膣分娩であった.

母親の血中抗体価は1.3∼7.1μg/ml,患児は,

2.1∼5.3μg/mlであった.中には母親に比して児

の血中抗体価が高い例もみられた.

症例10については妊娠29週の時点で母親の膣培

養と血中抗体測定を行っていたが,培養は陰性で

血中抗体価は5.7μg/mlであった.児発症時の母

親の咽頭培養ではGBS陰性であった.

筆者の経験した症例中,死亡例は症例4の

early onset typeと症例8のlate onset typeで, 仁志田ら4)のいうrapid progress sepsis typeと思

われる例であった.

5,302例の妊婦について血中抗体価を測定した

結果は第2編に詳述するが,平均値±SDをとる

と,4.9±3.9μg/mlであった.

考 察

新生児のGBS感染症は,従来よりその発症時

期によって生後7日までをearly onset type,そ

れ以後をlate onset typeとして分けられている.

前者は母体からの垂直感染が主といわれている.

一方,late onset typeに関しても,中には水平感

染もあるが,多くは垂直感染とされている.

GBS感染症の発症予防には型特異抗体が重要

な役割を果していると考えられており5),この抗

体が母体から胎児に移行して感染を防御する因子

の一つとされている.マウスを用いた実験では,

親に予め死菌によるワクチンを接種した後交配

し,その親から生まれた仔に菌を腹腔内投与する

と,ワクチンに用いた菌と同型菌及び共通抗原を

有する菌による発症を防ぐことがでぎたとの報

告6)もある.またBakerらの報告7)では, GBSに感

染した乳児を出産した7例の母親では血中抗体が

欠如していたが,妊娠中GBSの保菌者でかつ元

気な子を生んだ29例の妊婦の内,22例では血中抗

体が発症予防に充分な濃度であったとしている.

以上のことは,母親の血中抗体が胎盤を通して胎

児に移行すれば,GBS感染症を予防できFることを

示すものである.

新生児GBS感染症の原因菌を血清型別にみる

と,Ia, III, IIIR型が重要と思われるが,本邦に

おける頻度としてはIII型多糖体抗原を有する

III, IIIR型が大半を占めている8)9).また筆者らが

この研究を始めるまでに経験したGBS感染症の

症例は,その大半がIII型によるものであったため,

III型について重点的に検討を開始した.

GBS III型に対する血中抗体価測定は,筆者ら

の確立したELISA法2)により行っているが,この

方法は簡便で再現性という点においてもすぐれて

おり,数多い検体を処理するにも都合の良い方法

と考えられる.

GBS III型あるいはIIIR型による新生児感染

症例10例について母児の血中抗体価を測定した

が,母親についてはL3∼7.1μg/ml,患児について

は2.1∼5,3μg/m1の範囲であった.

GBS感染症の臨床病態は菌の病原性と新生児

の抵抗性によって決まるとされ,発症例の抗体価

とその臨床像との間に何らかの関連が予想される

が,明確ではな:い.しかし,early onset typeの

症例の中に抗体価が母児共にかなり低い2症例が

あり,しかもそれらの内,早期に発症し急激な経

過で死に至った症例4の抗体価が母1.3μg/nll,児

2.1μg/mlと極端に低かったことは,抗体価の低

さが危険因子となり得ることを示すと考えられ

る.

症例8は,日齢16で発症し死亡した例である.

発症時期からみれぽ,いわゆるlate onset typeで

あったが,発症直前まで全身状態良好であった児

が突然に元気がなくなり,ショック状態で入院と

なった例で,仁志田らのいうrapid progress sep−

sis typeと思われた.この症例の抗体価は母4.4

μg/ml,児4.7μg/m1で,症例4の場合よりやや高

かった.症例4も8も類似した急激な経過であっ

たが,この抗体価の差が発症時期の差と関連があ

るのかどうかはわからない.

一126一

(4)

37

この例も含めて,母親の血中抗体価に比して児

の血中抗体価が高くなっている例がみられた.症

例10は,late onset typeで比較的緩徐に発症して

おり,症例5は発症後約10日経過してから採血し

ているため,受動免疫のみならず能動的な抗体産

生が始まっていた可能性も推測される,

第2編で詳しく述べるが,筆者は5,302例の妊婦

血中抗体を測定した結果から,平均値.ト2SDに相

当する12.7μg/mlを抗体陽性の基準値と仮に定

めている.

発症例の母児における抗体価は,最高でも母親

7.1μg/ml,患児5.3μg/mlであり,すべて基準値

を大きく下回っていた.

稿を終るにあたり,御校閲を賜りました福山幸夫教

授,草川三治教授に深謝致します.また,直接御指導

をいただぎました保科清助教授に深謝致しますとと

もに,発症例の検体採取にご協力下さいました諸先生

に感謝致します.

本論文の要旨は,第61回日本感染症学会,第24回日

本新生児学会,第32回未熟児新生児学会において発表

した.

文 献

1)Overall JC Jr: Group B Streptococcus.1勿

Nelson Textbook of Pediatrics(Beh㎜an RE,

Vaugham VC ed)pp430−431, WB Saunders,

Philadelphia(1987)

2)保科 清,鈴木葉子,天野祐治ほか:新生児B群

溶連菌感染症の発症予防のためのスクリーニン

グ.感染症誌 61:561−566,1987

3)1.ance丘eld RC, Freimer EH:Type−specific polysaccharide antigens of group B streptococ− ci. J Hyg 64:191−203,1966

4)仁志田博司,皆川公夫,三原武彦ほか:新生児B 群溶連菌敗血症及び髄膜炎。日小児会誌 82:

498−505, 1978

5)Baker CJ, Edwards MS, Kasper DI.:Role of antibody to native type III polysaccharide of group B streptococcus in infant infection. Pediatrics 68:544−549,1981

6)Itoh T, Yan J・X, Nakano H et al:Protective

ef丑cacy against group B streptococcal infec−

tion in neonatal mice delivered from

preimmunized pregnants. Microbiol Immunol

30:297−305, 1986

7)Baker CJ, Kasper DL=Correlation of mater− nal antibody deficiency with susceptibility to neonatal group B streptococcal infection. N Engl J Med 294:753−756,1976

8)後藤玄夫:新生児のB群溶連菌感染、新生児誌

16:100−106, 1980 9)門井伸暁,仁志田博司:B群レソサ球菌感染症. 小児内科 17:1523−1527,1985

一127一

参照

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