団体観光一括旅行契約法の概観--西独旅行契約法え
の展望
著者
中村 武
著者別名
T. Nakamura
雑誌名
東洋法学
巻
24
号
2
ページ
p1-34
発行年
1981-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00006035/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja団体観光一括旅行契約法の概観
ー西独旅行契約法えの展望ー
目 次 一、はじめに 二、団体観光旅行者の保護 − 団体観光一括旅行 夏 改正の試み 皿 旅行法立法えの動き 三、西独旅行契約法の内容 四、旅行契約法の解説 工 総 説 ∬ 各個の規定にっいての解説 五、むすび 東 洋 法 学中
村
一武
団体観光一括旅行契約法の概観 二 ㎜.はじめに 今朝の朝藤新聞の記事によると、雑誌にのった売春ツアーの紹介記事を利用して、台湾・マィリピン、バン識クえの 三つの旅を計画し、団体旅行客を募集したかどで、藏本ツアー・ツーリスト会社の責任者が運輸省観光部から呼出き れ.厳重なゴ告をうけた蔦とが報ぜられた、 ︵昭五六二・二三鷺朝臓新聞︶ 戦後a本の経済が高度に強ま藤に従い.また円相場の高値に伴い.駁近では盛に.観光旅行が比較的廉価で行われ る、団体観光一括旅行が企てられ.毎年三十万人以上の人がこれに応じ.東南アジア・アメリカをはじめ.欧州諸国 えの旅に加わ参.諸国の観光・文化・人情・風俗に親しく接して.購本人の国際性をたかめている、そうした団体観 光一括旅行︵評鶴魯瓢鼠器︶の目的は、右の新聞記事のように.時に売春旅行を目差すものもあって、国際的の非難 をうける間題をひきおこす例もあり、旅行業者が、運輸省の厳重な取締をうけることにもつながる。 通常の旅行業者は.そうしたみにくい問題をひきおこさないが.旅客との契約上、いろいろ法律上の間題をひきお こすことがあり得る。旅客と旅行業者間の契約は単に仲立契約か.代理商としての契約か、あるいは一種の請負契約 類似の契約か、その回答如何によって旅客にたいする航空会社糸テ孕旅行業者の責任は変ってくる。旅客の不満苦 情︵航空機の発着遅延・適当の空席なきこと・ホテルのスト・旅館の客室満杯・食事・サービスの拙悪.居室の粗悪 等︶は.何れの業者に向って申出でられるべきか、問題となる。旅行業者と旅客との契約取消料.旅行業者にたいす る旅客の賠償請求権の行使.業者の責任の範囲、契行不履行.暇疵ある履行の修理.旅行業者の救済義務、その救済
義務不履行の場合の旅客の自力救済の効果、契約解約、消滅時効の問題等、数多くの法律上の闘題が旅行業者と旅客 とのあいだに発生する。 これらの問題の解決には、専ら業者が一方的に作成した普通業務約款によって、多くは業者側の有利に解決される よう、業務約款がさだめている。判例は契約の趣旨、約款の当否を判断して、旅客の保護に努めるが、残念ながら拠る べき法律の規定がないため、十分の保護を旅客に与えることはできない。旅客の利益保護のため、強行的な特別旅行契 約法の立法を望む声が内国的にも国際的にも起った。︵一九七〇年ブリッセルに於ける﹁旅行契約に関する国際協定﹂︶ この要望に応えた西独法が一九七八年十二月十三日の旅行契約法︵U霧短幕話葺謎お霧①訂︶として発布され た。絃ではこの法律の制定されるまでの経過を述べるとともに、右法成立までの学説・判例の傾向とともに、同法の 条文を翻訳し、かつその解説をのべて、わが国の判例・立法の参考に供したいとの考えから、この一文を草した次第 ︵註周︶ である。 ︵註一︶ 東 <αq一専穴欝霧↓s審弩U禽菊o猷Φ︿醇簿恥αq畢麟o霞ま旨錠蒙㈱①望キパじ ごOじ o陰窯象鉱a。おお事 国び①法ρU醇即鼠器<g撃馨ゆ穿箏αqω<爾鐸品●霞露魯の⇒ お刈G 。 固譲︿8震題①ポく禽ぴ犀磐①霧畠暮斜醤窯鑛這お ○ぎ訟Φ開>毎計U醇菊風零く巽鎧ω琶叶餐αq零o答鐘αq“這謡 切oαq魯p↓箏く鉱>αq讐昌営08も震象等①き亀汐一く象oH馨震一一讐一〇鐘回簿ヨお養● カ①ぴ箏弩pぎ3箏銭窪巴9巳冨三蕉6菊①σqΦぼ鐸αq留ω即①38ω留ω労蝕器く①旨孟αqg“ぼU醇じ oo鼠oげ”ご諺︸欝ちお︸ ー88 洋 法 学 三
膨体観光一括旅行契約法の概観 閥 悶鉱羅種団ぴ亀辞窯象韓品①営華α⇔儀霧短奮犠。一誘α霞鼻鼠。 。カΦ一の①毒鋒品ω鴨ω①葺ぼ⇔禽ご ご①鼠Φダ 鷺勲館q鞘ぴ亀“類簿毯σ議儀霧矯¢駿o藩建霧黛9声 貯O象o ごo鼠oダお鐸じ ご匙勉鱗窯残も 。\蕊讐凝ぐ窪駿S ぴ噌鎌鶏一零も ○● じ ご藁翻賊纂愁鷺αq窪≦鼠騰簿○ ○紳磐傷儀霧浮ぎ漆魯黄2︸≦。一零c 。●謡。卑 蒙壕Φ\欝紘ぐ象≦ぐ 疹も ・ゼ簿捲謬\嘩甑嘗蓉び麟o欝導膿馨霧碧鷺欝霧薦鱒筒図Φ鴨ξ轟臨霧簿。ぼ喚 心籍霧 の瀞聡籔職欝ぴ鑑菅讐雛鴨欝麟⑦緯甑ぼ薦お謡傷 おお”G o鳶卑 <○欝⑩も Q男Φ 鷹蒔⑳鯵⑱汐8 皿.団体観光旅行者の保護 翼 団体観光一括旅行.経済上の発展・民衆の生活の安定・高噸の所得.収入、くわえ襲に長期にわたる膚由・休 暇の集中は.昔し思いも及ばなかった団体観光旅行の流行を生んだ。これはβ本ばかりでなく、酋独においても激し い大衆の観光旅行趣味を誘発した。そして一九七一年度には.三千万入の人口の約半数の邸%の大衆が、外国に観光 の休暇旅行をしたといわれる。 こうした旅行趣昧の流行は.旅行業者の宣伝とともにその推進する団体一括旅行︵評蕊魯働常冨︶ 制度の流行で ある。この団体総括旅行では総額の料金をさだめ、これにより総ての旅行上の諸掛り︵簿駐畢韓馨漁︶ ︵主として運 送・ホテル宿泊食事・通訳・案内等︶をまかない給付することを一括約束されるものだ。 かような方法による旅行が可能になったことは、淘に悦ばしいことではあるが、他面多くの法律問題をも生じた。 というのは旅行業者の誇大な広告は旅行に興昧をもつ者をして、誤った感念・希望を抱かせる倶もあり.また多くの
旅行業者が利用する普通業務約款︵≧一αq・糞鉱器O①8漂富びaぎ繋轟窪鶴︾○ω︶は、一方的に旅行業者の利益保護に 陥り、契約後の一方的料金の値上げ、旅行給付の変更を容易ならしめるとか、旅行業者の一方的契約解除を容易なら しめる。これに反し、旅行者にたいしては、重大な事由を理由とする解約の場合でも、高額な取消料の支払を命ず る。のみならず、旅行業者の旅行給付の不履行の責任を、極度に制限しようとする。旅行者の正当な個々の苦情も、 旅行業者は容易に取上げようとしない。旅行業者にたいする不満・請求が極めて敏速に処理されねばならぬ時でも、 旅行業者はこれを怠り、不満苦情に答えようともしない。 かような普通業務約款は専ら企業者が一方的に制定し、国内的問題の処理にあてられていたが、旅行契約は国際的 にも行わられるので、その国際的協調のためにも、遵守が必要である。そのために、かつて一九七〇年にテヘランに於 て開かれた第九回国際比較法会議︵ヌ﹂簿Φ欝鶏ご欝σ丙8α窺触霧ω漆騰箒畠富お色o一魯§αq︶に於ても、旅行契約に関 する問題がとりあげられた。 豆 改正の試み。従来からこうした旅行法の欠点を改正しようとする企ては、西独連邦国でも屡々なされ、若干の 部分的効果をあげたことはみとめられるが、根本的な改善は行われなかった。 まづ判例により可成りの改良・保護が行われた。判例は旅行契約の性質を、請負契約として認めた。専ら旅行者 ︵↓o霞霞窪︶の地位の保全・保護を計った訳である。旅客は蝦疵ある旅行業者の給付にたいして、その交換変更、値 引きを求め、旅行業者に過失あるときは、損害賠償をもとめることができるものとし、また特記すべきは、判例は旅 客にたいする損害賠償として、契約された給付と履行された給付との間の価値の比較調整を命ずる外、重大な霰疵あ 東 洋 法学 五
団体観光一括旅行契約法の概観 六 る場合には、無駄に過ごした休暇の時間にたいしても、損害賠償請求ができることを認めた。そればかりでなく判例 ぱ、旅行業者が旅客にたいする賠償責任を、出来るだけ広く免れようとする試みを封じたのみならず、業務約款にお ける仲立約款をみとめることを拒んだ。この仲立約款とは.旅行業者は単に個々の旅行給付者︵主として運送業者、 ホテル業者︶を旅行者に紹介・伸立するものであり、旅客は紹介された個々の旅行給付者レ㍍、直接交渉し.契約した 上その旅行給付︵運送または宿泊・食事等の︶を請求するというにある、だが旅客は. ・ホテル業者の選択は できず.殊に外国における旅行給付業者と.直接交渉・.副求するが如き困難な仕事は実際上不可能に近い.旅行者は 沖介約款により.全く無能力者の地位に陥るであろう。 多くの判例により.こうした不都合を生ずる仲立約款ぱ無効とされたので、この条款はその賦は旅行業者の業務約款 申から除かれるに至った。だが業者はたくみに他の方法により.その責任負担の危険を免れようとはかった。そのた め旅客の損害賠償講求を、一定の場合には全く免脱きれるよう取計られ.或はこれが最高額を、旅行料金の額までと定 めた。判例は.旅行業者のそうした責任免除は通常これを許さずとしたが、多くの裁判所は.損害賠償の額を旅行料 金額までとする制限約款を原則として許した。勿論こうした責任制限は.普通業務約款法第十一条7号︵重大な過失 の場合の責任の規定︶により.損害が旅行業者又はその使用人の故意または重大な過失により生じたものである場合 には無効である。しかのみならず、普通業務約款法第九条にしたがい︵信義則に反した条款は無効とする︶、極めて重 大な損害︵殊に生命・身体に対する損害︶が生じた場合には、その条款を無効とする。 旅行業者達のあいだに於ける自己規制の努力は.永年にわたり極めて微力であり、本来の目的達成の効果はみられ
なかった。その間に西独旅行業者協会は、立法者の不断の警告もあるため、遂に一九七六年に、模範的な普通業務約 款を作成し、これを各旅行業者に配付推薦した。それは旅行業者が一般に用いた普通業務約款よりも、注意深く規定 されたものであった。しかしながらこの約款も、多くの点において、必しも十分なものとは言われない。例えば、旅 客に特に重大な意味をもつ、旅行業者の負担する責任の範囲に関する規定であるが、旅行業者は自身︵旅行給付を業 とする者を含め︶の重大な過失による損害に対する責任範囲としては原則的に旅行料金の二倍までの賠償を、また身 体えの賠償としては、旅行料金の四倍額まで負担するとしているが、同時に責任免除の規定として、旅客えの損害発 生が旅行給付者の単なる軽過失による場合には、その責任を免除するとした。その他旅行者に生じた損害について は、所詮何等の保護がみとめちれていない。 独乙旅行業者協会の配慮の欠けている点は、旅行者が、旅行業者にたいする請求の貫徹を、簡易にする手段が欠け ていることである。例えば英国の例のように旅客の苦情満足のために、簡易な調停・仲裁の手段を構ずべきだ。 消費者団体による監督についてみるに、まづ第一にあげられるのは、バーデン・ユルテンベルヒ消費者センタ⋮が、 一九七一年十月に発表した、 ﹁休暇旅行に対する黒書﹂である。この書は、旅行者の苦情を減少しようとして試みら れたものであるが、消費者センターが、一九七一年の夏に、大衆によびかけた、その休暇旅行につきついての報告の 結果をまとめたものがある。尤もこの苦情報告には、旅行業者の名称は特にあげられてはいないが、集められた報告 に基き、広く旅客の苦情不満を明かにしたものである。 消費者による監督が重大な功績をあげた例は、伯林に於ける商品テスト法人の、旅行相談所の働きである。岡法人 東洋法学 七
団体観光一括旅行契約法の概観 八 は、今までただ唯一の団体として、旅行業者の彪大な宣伝に対抗して.活動をはじめたものである。この商晶テスト 法人が.旅行者相手の相談の仕事をはじめたのは、一九七〇年であるが、読者アンケートによって休暇旅行者の%の 人々が.その集団一括旅行に不満足をとなえ、あるいは、全くその期待に反して帰国したことが知られた。 一九七三年の始め、旅行相談所は.約一五〇〇以上のホテルに対する苦情報告をうけた。商品テスト法人の旅行相 談事業が.一層改善され.鳳の癖テルに対する苦情報告以外に.旅行に関する苦情のデーターが報告される鵯とが望 ましい.かくてこそ旅行業者の取ひき市聡の明瞭さが.期待される. 臓 旅行法立法えの動蓉。 旅行者保護は判例によむ.普通業務約款法によむ、きらにまた.独乙旅業者団体の作成した模範業務約款により、 改善されたと言っても、なお多くの不満・希望がそのままに残きれている。模範業務約款においても.消費者保護の 見地からも、多くの部分において.なお不満足の点がみられるのみならず.右の模範約款も業者にたいし.拘束性を もたないので.実際上統一的に遵守きれていない。一九七七年から一九七八年の冬季に於ける.報告にすれば.中小 の旅行業者は.旅行業者協会の推薦を全く無視し、大企業の旅行業者は.推薦の全部に服従しようとしもない。強 行法的な法律の確立が望ましい。それらの規定により、適当な責任を旅行業者が荷うことを.確保すべきである。こ の希望を国際的に答えたものは、一九七〇年四月ブリュッセルに於て成立した.旅行契約に関する国際協定であった が.西独連邦政府はこれに加入しなかった。そして独特に﹁旅行挙行契約法案﹂︵潟簿毒焦蝕器のOΦ器滋霧菩R山露 沁⑱謎⑦畜謎霧鼠欝お鶏 。話葺品︶を作成し、 ついに一九七八年二一月二二日法として成立するに至った。その法律は、
独立の特別法とはせず、民法第六五一条の一部とし、第六五一条a−kとして民法典のなかに取入れられ、一九七九 年一〇月一日から施行された。 同法によれば、不完全な理疵ある旅行給付に付ては、旅行者は旅行業者に対し、必要な救済をもとめることができ るが、緊急な場合には、旅客は自ら救済手段を講じ、その費用の賠償を請求することができる。給付の理疵がつづい て存している時間に応じ、旅行料金は減額される。 鍛疵の結果、旅行が著しく妨害されたに拘わらず、旅行業者が、何等救済の手段をとらない時には、旅客は契約の 解除をすることができる。こうした場合、旅客は既に履行された給付、あるいは旅行終息のために果すべき旅行給付 に対しては、料金を支払わねばならぬ。但し右旅行給付が、契約解除の結果旅行者にとり何等の利益をもたらさなく なった場合には、右支払義務は消滅する。 旅行業者が、旅行給付の鍛疵につき責任ある場合には、旅客は料金の減額を求め、解約を為し、或は契約不履行を 原因として、損害賠償の請求をすることができる。 旅行が失敗中止し、あるいは著しく妨害されたときは、旅行者は無為に徒過した休暇にたいし、相当の金銭賠償を 求めることができる。 旅行業者は、その賠償責任につき、一定の条件の下で、旅行料金の三倍の額まで負担する旨を契約することができ る。但しその為には、その損害が旅行業者の故意または重大な過失に基ずかないことを要し、あるいは旅行業のみが 旅客に対し、旅行給付業者の過失につき、専ら責任を負担する場合なることを要する。 東洋 法学 九
腿体観光一括旅行契約法の概観 一〇 旅行の始まる以前に限り、旅客は何時でも契約を取消すことができる。但し旅行業者は.これに対し、相当の損害 賠償を請求することができる。 旅客を.不正な旅行業者から保護するため、きらにこの上にも多くの諸外国の先例にならい、旅行業者の営業認可 の手続を導入し.認可条件として、一定の最少条件の履行にかからせるべきであろう︵例えば一定の資本金.保証金 の.頓立・・拝げ艇約の締結、従業員の資格試験︶ 三.欝独旅行契約法の内容 前記のように西独でぱ、一九七八年ご一月二二隣旅行契約法︵⇔霧鱒鰍糧毒葺薦薦齢認欝︶ が発布きれ.一九七九 年一〇月一縫から、施行きれた。そしてその法律の条文は民法典に取り入れられ、ての第六五一条鼠⋮kとして組み いれられることとなった。ここではその条文を訳出してみよう。 周知のように西独民法第六五一条は製造物供給契約︵≦ぐ 鼻噌賦陣獣⑱讐轟も 霞く糞窪薦︶ に関する規定であり.当事者の一 方︵請負人ご簿⑳簿警羅ぐ塗層︶がその調達に係る材料で製作物を作製する義務を負担する契約であり.請負契約の一種 である。売買に関する規定が準用される。旅行契約が講負契約の性質をもつものとされる為め、この規定を申民法に 取入れられた訳である。 ① 民法脇条の3 ω 旅行契約によって、旅行業者︵罐幕話鏡器芭酔鶏︶は旅行者︵寄募&窪︶にたいし、旅行給付︵菊Φ陣匂 D亀の翼猛鵬︶
の総体を給付する義務を負担する。これにたいし、旅行者は合意した旅行料金︵勾①一ω①嘆o芭を支払う義務がある。 ② ある意思の表示が、 ﹁この契約は、個々の旅行給付を給付すべき者︵給付行為者︶︵い蝕ωζ茜玲謬角︶のため に、仲介をするものである﹂と言明しても、一切の事実から判断すれば、表意者が自ら予定した旅行給付を、自己の 責任においてこれを実現する旨の意思表示とみられる以上、右言明は顧みられない。 ② 民法第鰍条b ω 旅行のはじまる迄に、旅行者は旅行業者に対し、自己に代り、第三者が旅行に参加することを請求することが できる。旅行業者はこれに対し、その第三者が特に旅行の必需を有せず、あるいはその参加が、法律の規定に違反 し、または公官庁の命令に違反する場合には、参加を拒絶することができる。 ②旅行業者は旅行者にたいし、第三者の参加により、生じた余分の費用を請求することができる。
③第薗条c
ω旅行業者は、旅行が契約上保証された特性をもち、且つ旅行の価値または適性︵凝誌浮葬霞︶が通常具うべき、 あるいは契約上有すべき有用性︵2暮N窪︶ を害し、またはこれを減少する蝦疵のなきょう、心がける義務がある。 ②旅行が以上の品質︵ω89鳳霧訂ε を備えないときは、旅行者は救済手段を請求することができる。旅行業 者は、その救済が不相当の費用を必要とするときは、これを拒絶することができる。 ⑥旅行業者が、旅行者の要求する救済を定められた相当の期日内に給付しなかったときは、旅行者は、自ら救済 ︵︸窪葭①︶手段を講じ、そのための必要とした支出にたいする賠償を求めることができる。 東洋法学 二団体観光一括旅行契約法の概観 一二 右救済請求が、旅行業者によって拒絶され、あるいは、旅行者において即時救済につき特別の利益関係ある場合に は、救済期間を指定する必要はない。
④第磯条d
ω旅行が第六五一条c第一項の意味において.蝦疵ある場合においては.その蝦疵の続く期間に応じ.旅行料金 は民法第四七二条に従い.減額される。 ω旅行者が.過失により右蝦疵の通告を怠ったときは.有減額は行われない. ⑤ 第灘条融 ω旅行が.第六五一条cに於て規定する如き蝦疵により.著しく妨害きれた場合には、旅行者は.契約を解約す ることができる。蝦疵が重大にして且つ旅行業者の見きわめ得ぬ事情によって生じ、旅行業者にその旅行の続行を求 め得られない場合には.右規定に従う。 ω 旅行業者が.救済の手段を講ずることなく、旅行者により定められた救済の為めの相当期間を徒過したとき は.解約は許きれる。但し救済が不可能であるとき、あるいは旅行業者が救済を拒絶した場合.または旅行者が即時 解約につき特別の利害関係をもつものと認められる場合には.救済期間の定めをする必要はない。 ⑥ 契約が解約された以上、旅行業者は.合意された旅行料金の請求権を失う。但し旅行業者が.既に履行した旅 行給付にたいし、あるいは旅行終了のため尚ほ依然為すべき旅行給付に対しては、民法第四七一条の規定に従い、旅 行業者は相当の賠償請求権を有する。但し右為すべき給付が、契約解約のため旅行者にたいして、何等の利益をももたらさない以上、この限りでない。 @旅行業者は、契約解約から生ずる必要な措置を講ずる義務がある。殊に旅行契約が旅行者の送還︵舛蓼浮亀警 身お︶をも含んでいた場合には、これが送還をなすべき義務がある。これによる増加費用は、業者の負担とされる。 ⑥第㎝条f。 ω旅行の理疵が旅行業者の責に帰すべき事情によって生じたときは、旅行者は、旅行料金の減額請求、または解 約とともに、債務不履行による損害賠償を請求することができる。 ②旅行が中止され、あるいは著しく妨害された場合には、旅行者は空費した休暇時間にたいし、相当の損害賠償 金を請求することができる。 ⑦ 第傲条g ω 本法第六五一条cー第六五一条︷による請求権については、旅行者は、契約上定められた旅行の終了後一ケ月 以内に、旅行業者にたいし、請求をしなければならぬ。此期間の終了後では、旅行者は、期間確守が自己の過失に依 らない場合に限り、右の請求ができる。 ② 本法第六五一条c乃至第六五一条fによる旅行者の請求権は、六ヶ月の時効によって、消滅する。右時効の進 行は、旅行が契約上終了すべき日から始まる。 旅行者が右様の請求権を行使したのに対し、旅行業者が、書面によりその請求を拒絶したときは、その日に時効は その進行を申断きれる。
東洋法学
ニニ団体観光一括旅行契約法の概観 一畷 ⑧ 第線条h ω 旅行業者は旅行者との合意により、次の場合には、自己の貢任を.旅行料金の三倍までの額に限定することが できる。 夏.旅行者の損害が.旅行業者の故意または重大な過失によらずして生じた場合。 聾.旅行業者が.旅行給付、繋の逼失によ拳て生じた損害につき、自己だけが加汀言にたいし一身的、、頁任を負擾する 髭合、 ω 旅行薯付者が績付すべき旅行給付に関しての揖論鶏盲謹求は.一定の去件を必要レ弧し、或は制限を必妄とする 旨の渋雑の規定がある場合に於てぱ、旅行業者は.旅行.、翼に対しても.・曳の規定の適用を主.献する轡織、島ができる. ⑨ 第灘条︷ ω旅行の開始以前には旅行者は.何時にても、契約を取消すことができる。 ω旅行者が契約を取消したときは、旅行業者は、合意された旅行料金の請求権を失う。但し業者は.相当の賠償 金の請求ができる。賠繧金の額は、旅行業者が旅行料金額から、彼が節約した金額、ならびに彼が予定した旅行給付 を他に利用することにより得べかりし価額を差引いた金額とする。 ⑥ 旅行業者が.契約の取消しによって通常節約した支出、及び予定した旅行給付を他に利用して得べかりし金額 を考慮し、賠償金は旅行料の何割りとする旨の合意をすることができる。 ⑳ 第戯条j
ω 旅行が、契約の際予見し得なかった不可抗力により、著しく困難に陥り、危険となり、あるいは妨害きれた場 合には、旅行業者も旅行者においても、契約を解約することができる。 ② 契約が、本条第一項の規定に従い解約された場合は、本法第六五一条c第三項第一段、第二段、並びに第四項 第一段の規定が適用される。戻り運送︵菊琴菩①叡a磨αQ︶による余分の費用は、当事者において各半額を負担する。 その他の余分の費用は、旅行者がこれを負担する。 @ 第磯条k 本法第六五一条aー第六五一条﹂の規定は、旅行者の不利益に変更することを得ない。 以上 四、旅行契約法の解説 − 序説。 西独連邦法務省は、一九七〇年代の初め頃から、団体の観光を目的とした一括旅行︵評霧。汀ざ冨︶ に於ける旅 行者︵菊o冨&①︶ の法的保護を計ることに努力していたが、その努力はついに報いられ、一九七八年一二月二二β の旅行契約法となった。 この法律の成立については、議会の意見は必しも満場一致ではなく、様々の意見があったが、その正当性には疑が ない。旅行業者が、多年の過去に強く反対した諸点を改正し、ここに従来の判例を集積した立法として歓迎される。 東 洋 法 学 一五
団体観光一括旅行契約法の概観 嚇六 但し全面に満足できぬ点も少くない︵例えば登録したホテルの室が充満していた場合、或はホテルのストが行われた 場合の措置︶。従って従来と同様に、諸学説や判例の集積にまつものが多い。 本法の成立にさきだち. 一九七三年四月ブリュッセルに成立した、旅行契約に関する国際協定︵回纂讐難ε鶏8 αげ禽魚鉱ε繕欝窪静韓蜘繋濁塾Φ謬葺品︶に対して.西独政府は批準を行わず.一九七三年八月に ﹁旅行挙行契約 に関する仮法案﹂ 飾諏櫛捲舞欝難艸護鑑漁器靱蒙綜轡騰醗警欝蜘灘鱒蔚題驚鵬繋難艸簾織慧講欝護︶を、赴致した。 法案の韓的は.一括旅行に際しての.旅行者の法的地位を改善するにあッた.団体一括旅行に利用される業欝の作 成した普通業諾約款では.業者の責任を軽減.あるいは免除し.旅行者の利益は正当にまもられていない.からだ。 法案ぱ.一切の旅行契約に関するものではなく.いわゆる団体一括旅行についてだけを規制するものである.だから 業者は.主として旅行者の運送およびホテルの宿泊、食事.案内等、一切の旅行給付は︵惣⑫叢駕㈹欝§㈹︶を自らの責 任で給付させ.旅行の目的を完成きせる.いわば請負契約に関するものだ。だから交通業者、ホテル業者.あるいは 他の旅行業者などを紹介し、旅行者が直接これらの人々と.その旅行上の給付︵欝縛固跨霞薦︶につき交渉契約する のを伸立する場合を規定するものではない。仮法案を修正成立した本法は一九七九年一〇月一日から実施された。し かもこれを独立の特別法とはしないで前述のように民法第六五一条3−kとして民法典の中に取入れたのだ。 法律の名称については.当初考えられた名称﹁旅行挙行契約﹂ ︵菊鯨。 。磐巽露。 弩鑓ぼ轟む ・︿醇嘗薦︶とあったものを.新 法では、単にこれを﹁旅行契約﹂ ︵O禽襯冨毒暴お︶とよんだが、その内容事実が変更された訳ではない。という 訳は、本法は単なる個人の単独旅行に関するものではなく、専らいわゆる集団一括旅行︵評霧9聾戴器︶につき.旅
行者︵圃①凶ω窪号︶と旅行業者︵罐幕奉獲霧芭§︶とのあいだで締結される一種の請負契約に関するものだから、当 初の名称がより正確である。新法の名称は、短いがしかし不正確である。 新法における欠点というべきものは、履行における困難な問題︵例・全部不履行と一部不履行の問題︶につき適当 な規定を欠いていることだ。民法によれば蝦疵ある履行︵例・ホテルに空室はあったが、サービス・食事は劣悪︶と 不履行︵例・ホテルは全滞在旅行期間中・あるいはその滞在期間中数日、従業員のストのため宿泊不能、あるいは宿 泊注文登録が不正確で十分の空室なく宿泊不能︶とは区別される筈だ。ところが集団一括旅行契約は従来判例にする も、新法にするも、請負契約に属するので、その理疵ある履行については、従来は民法第六三三条︵製造物供給契約 における請負人の担保責任に関する規定︶以下の規定が適用された。これに反して不履行の場合︵ただに一部の不履 行ある場合にも︶には民法第三二三条︵双務契約の場合の債務者危険負担主義の規定︶以下の規定の適用をみた。こ の不当さは従来見逃されてきた。この二個の平行線的不当性は新法によって改正も変更もされていない。 不履行と理疵ある履行との眼界は、理論上の問題だけに止らず、法律上の結果においても異なる。だから新法第六 五一条9によれば鍛疵ある履行を原因とする賠償請求権は、六ヶ月の時効によって消減するが、これに反して不履行 による賠償請求権は三十ケ年の消減時効にかかる。そればかりでなく民法第六五一条によれば、第六五一条a−jの 規定は、旅客の不利益のために、これを変更することを得ない。だが不履行にょる請求権には、この規定の適用がな いので、旅行業者は異った、旅客に不利益な不当の約款を、設けることもできる。だから毅疵ある履行を理由として、 損害賠償をもとめる者は旅行料金の三倍までの金額を請求することができる。が旅客が不履行を理由として損害賠償 東洋法学 一七
団体観光一括旅行契約法の概観 一八 を請求した場合、旅行業者はこれを旅行料金の金額だけに制限することができる。また少くも旅客の請求権が民法第 三壬二条による場合、その請求権に対しては、本法の民法第六五一条kの禁止規定による保護がないので、しかも、 第三二三条の規定は、当事者の合意によって変更が可能なので、旅行業者がその責任を免れようとすればそれも可能 である。 聾 各個々の規定についての解説 ① 棚条縫.旅行契約・仲立契約 擁六五︸条畿第一項は、旅行契約当事者の漁務を規定してい灘が.同項の規定はまず第一にいわゆ悉集購の観光譲 的の一括の旅行︵噂盤鶏 覆魯聾魚器︶の契約に関するものであって、これ導・軌蔭旅行業者︵鱒臨露繕鯵塁鷺韓︶ぱ旅行者 ︵鱒魚器膿階︶にたいし旅行給付の総体を給付し.旅行者は旅行業者にたいし.合意した旅行料金︵欝蝕器縫蕩︶を支 払うべき義務を負担するのだ.そして第二項によれば旅行業者は総括旅行給付につき、臼ら責任があるのであって. 個々の旅行給付業者を、紹介伸立する者ではないことを明かにされた。このことは.判例によっても認められた処で あり.伸立とすれば旅客は、指示された旅業者と自ら交渉し︵主として運送業者、ホテル業者.等︶. ・宿泊料 ・食事・待遇等︶を約定する外ない。が.そうした事務処理を旅行者自らの個々の責任にゆだねることは、外国旅行 の場合には殆ど不可能にちかい。 旅行の完成に必要なこれら個々の旅行給付︵菊Φぎ窯ω露お︶の履行は、旅行業者が自己の責任において旅業給付業 者︵主として運送業者、ホテル業者、旅行案内業者等︶にその調達を命ずるものだ。
② ㎝条b、旅客が自己に代り第三者を交替すること、 理由書によれば、実際にこの規定の成立には、多くの努力が払われたことが知られる。がこうした事件は実際にお いては、こうした法律の定めなくとも、従来は何等の間題も生ぜず行われた所である。 旅行業者にとっては、実際に旅行に参加する人が契約をしたA氏であろうが、第三者であるB氏であろうかは、全 く問題はないのだ。余分の料金︵通常きわめて低い登録者替えの費用︶が支払われる限り、利害関係はない筈だ。同 法にいうところの特別の旅行に、たえる必要性とは熱帯に堪える体力とか、特別の知識、あるいは能力をいう。 交替性︵勾39讐譲菩亀轟鐵。 。︶は旅行開始の時までに生ずれば足りるが、第三者の交替は法の規定に違反し、ある いは公官庁の指令に反し、または旅行業者の意思に反することはできない。交替によって、第三者は契約に加入する ものでなく、旅行者の契約当事者としての地位︵註文者︶は、依然として存続する。註文者にたいし旅行業者は契約 上の請求権をもち、旅行者は旅行料金支払の義務をもつ。第三者につき生じた損害は、通例註文者に対して賠償を請 求することができる。但し旅行業者と旅行者が特段の合意をなし、その損害に対し自ら旅行業者に請求権を与える か、旅行業者が第三者に対し直接に、旅行料金の請求権をもつかを定めることができる。 初めの註文者が契約の当事者として残存することの法律構成はまことに実際生活に反する。だから交替によって、 登録替えが行われたものと見倣すべきであり、これにより当初の注文者は契約関係から離れ、第三者が新にこれに代 り契約関係に立入り契約当事者となったものとみるべきである。これに反する解決はかえって法的複雑をきたし、法 律の意図しない所となる。救済の請求︵︾び猛獄お詩お窪︶と期限の指定︵第六五一条c︶あるいは解約の申入れ
東洋法学 ﹃ 一九
団体観光一括旅行契約法の概観 二〇 ︵第六五一条e︶について考えるに、何人がこの権利をもちこれを行使すべきか不明である。が解約申入れはたしか に契約当事者だけに限られ.法律上の構想によれば、当初の註文者である訳だが.その者は旅行に参加しないので諸 種の事情の発生を直接知らない。それは旅行者と交替した人︵め駿勲総箏慧拶︶に於て初めて知りうるところであり.こ れに解約権がみとめられねばならぬ筈だ。そうした解決方法こそ外国旅行の場合に実際的だ。そうでないとすれば若 しも当初の注文農と交替者とが解細原因の存在について異る惹見をもつとすれば、全く解決不可能の結果になるであ ろう。 第六五一条蔽による解約申入れは.騨練の旅行者だけがたとえ契約者でなくとも欝らもつものだと解される。 ︵こ れは同条の文旬を類推︶正当な結果をみるためには.登録換えによ参当初の契約を取やめこれに交替した者が新に契 約を締結したものとみるべきだ。 第三者の交替にたいし、法律の規定.または官公庁の指令が、第三者の旅行参加を許さない場合には.第三者の交 替可能性はない。問題となるのは総合的ビザ︵6 絵髄鷺鷺魯羅︶が発行された場合であり.この場合旅行許可申講人は他 人を交替参加せしめ得ない。 旅行業者と旅行給付者との閥の合意だけによって、交替可能性を拒否するには足りない。そうでないと本条の規定 は容易に潜脱される。 ③④ 第磯条c旅行者の救済請求、自救。 本法第六五一条cー︷の規定は、主として民従第六三三条ーさ二五条の規定に対応するものであるが. ︵尤も差異
はあるがこれは後にのべる︶専ら民法における注文者とか、請負人とかいう言葉も、旅行者とか旅行業者とかにおき かえたに過ぎない。のみならず、民法第六三二条︵請負人の蝦疵担保義務の規定︶における使用性︵○①ぼ鐘魯︶とい う言葉を置換えて利用性︵2暮器欝︶としたが、内容的事実の変更はない。言語上の適合性を考えただけに止まる。個 々の場合における鍛疵とは、どういう事実をいうか、法は明かにしていないし、これを明言することはできない。だ から、従来裁判上用いられた解決方法に従うほか仕方がない。 一地方の慣行は旅行業者の給付義務についての理疵判定の唯一の基準とはなり得ない。他面、一国の国民的慣行は 顧みねばならぬ、独乙式の尺度だけで、判断評価してはならね。単なる、不愉快であるということは、団体旅行の行 われる時代︵竃器器導勉鶏一弩諾︶においては、忍ぶべき事柄だ。だがその忍耐の限界は流動的だ。 鍛疵聞題にたいする決定点は、旅行給付の総体にわたりみるべきものだ、だが個々の旅行給付の理疵も、原則とし て全旅行の鍛疵となり得る。 本条第二項によれば、旅行者は救済を求めることができるが、これにより旅行業者は必要な救済とし、同価値的な 代替給付をせねばならぬ。この場合問題になるのは、代替宿泊所の聞題だ。こうした場合ある学者は言う。旅客はこ うした代用宿泊所を原則として甘受する必要はない。しかしこれに反し、フランクフルト区裁判所は、旅客に対して 提供された宿泊所は受入れねばならぬと言った。がこれに反して、フランクフルト高等裁判所は、この問題にたいし ては解答を与えていないが、旅行業者は、旅客に対し提供したホテルは、当初約束登録したホテルに比較しても劣る ところはない旨、抗弁し得られるか否か疑わしいと言った。という訳は、旅客が当初一定のホテルを指示したのは、 東洋法学 一二
団体観光一括旅行契約法の概観 二二 種々の理由に基くであろう。提供された代用ホテルはそれらの個々の事惰をみたすものではあるまい。例えば共に一 緒に旅行を楽しまんと約束した友人から別れて、別のホテルに収容される結果を生ずる場合もあろう。 また疑問となることは、代用宿泊所︵潤鵠鶏弩簿亀矯5εが、より高級ホテルであった場合、その余分の高額料金 は.何人がこれを負担するかは明かでない。だが裁判所は判決で言った。料金の同様な宿泊所を用意するのは旅行業 者の義務である故、高額料金は旅行業者が負担すべきものだと. 本条第三項に規定された旅行者の自救権は.民濠第六三三条第三項に於けるような.業者の遅滞や過失の存在審麟 提としない。ただ必要なのは、救済請求の時瞬が徒過した、とい肇だけである.糖客が藏賛盤を行庚した論育でも、 その救済に、、じた費用の償還は、無限ではない、例えば旅客は旅行業者の負挺で.認︶らかじめ予定もしないような、ノ 華な高級ホテルを利用したり、或は予定登録した航空機が満員のため、他に特別機をチアターして極めて高額の航空 料を支払った場合、その全額の賠償を請求することは許きれない。 ⑤ 第鰻条d。蝦疵ある旅行の料金減頬.責問義務。 本条第︸項で定められた。旅行給付の暇疵ある場合における減額請求は.法律の規定により発生する.直接効果で あり、その請求権は.民法弟六三四条第一項の場合と異り.何等補修の期嬢の指定や拒絶の警告のあること、を前提 とするものではない。その請求は、旅行給付が理疵ある間の損害について為されるものだ。後日旅行業者が鍛疵を除 去修正したとしても、既に存じた理疵に対する請求権を、遡及的に消滅せしめるものではない。 第六五ハ条d第二項によれば、旅行者が蝦疵の存在を旅行業者に通告すること怠った場合は.料金の減額請求をす
ることはできない。だからこの責問は、減額請求の前提のみならず、契約解約の前提要件でもある。この事は、本法 第六五一条e第二項前段によっても明らかであり、即ち旅行者は救済のための期間を定めねばならぬ。この救済講求 の申には、当然に責問が含まれている。また本法第六五一条︷の規定による損害賠償請求にも、理疵通告が、前提と なるか否かに付ては後述する。 瑠疵の通告は、その地の支店に為すべきであり、これなきときは、旅行業者の本店に対しこれを為すべきである。 責問は決してホテル業者や、あるいはその他の旅行給付者に対し、為さるべきものではない。 鍛疵通告は、旅行案内社にたいし為さるべきではない。旅行案内社︵カ①一。 。①菖8︶ は、単に団体観光旅行業者を仲 介するだけであって、自ら集団観光旅行を計画し、団体旅行を請負う者ではないからだ。 責問のためにする特別の形成は、必要ではない。これを、口頭をもってするも足りる。旅行者と旅行業者間の事を 記録する、いわゆる故障簿︵瀬窪馨彗α琶αq巷8琶εεえの書入れは、必要でない。その必要さを、業者の定める普 通約款中にうたったとしても。またその書入れを理疵担保の条件としては、信義の原則に違反する。 暇疵通告の必要は、旅行業者に、救済手段を構ずるための機会をあたえるためである。だから、理疵の修補が不可 能な場合には、通告の必要はない。この事はケル、∠局等裁判所も認めた所だ。琿疵が旅行終了の直前に生じたような 場合に、しかもその地に業者の支店も存しない場合には、通告の必要はあるまい。 ⑥第㎝条e。鍛疵ある旅行の解約。 旅行に獺疵あるときは、旅行者は、旅行契約の解約をすることができる。但し旅行が著しく障害されたことを前提
東洋法学
壬二団体観光一括旅行契約法の概観 二四 とする。 料金減額請求の場合には、著しい障害のあることは要求されないが、その場合でも、鍛疵は重要なものでなければ ならない。単なる不愉快という感情の限度を超えたものだけでは足りない。だから、解約にはより以上の強度の蝦疵 あることを、要件とする。通常の請負契約の場合︵民法第六三四条︶と異り.旅行者は契約解除権をもつものでな く.解約権をもつだけだ.解約権9繋鱒糞即醜欝猟欝職戯蔭℃は遡及効をもつ解除︵欝讐塾窯窟︶や転換︵≦欝瓢 欝薦︶に比べて.轄い程度の効力をもつに過ぎない.が殊に旅行者が旅行中に契約の解融をした勤合には特殊な混乱 が生ずる。 この事は.旅行者が一部絋行︵ホテルの宿泊が次週間欝には空室がなくなった︶を撃け.或は全部不履行された場 合.本来契約は解除される得る筈なのに︵民法第左二四条によって︶旅行者は第六五一条eにより、解約しかできな い。こうしたことは、新法における総合的規定︵の鵠餌馨欝⑱鴨欝轟︶が欠けた結果である、 解約権行使のためには.救済の論求、ならびに鍛疵通告のあることが前提とされるのみならず、一定の救済期問が 指定されねばならぬ︵料金減燐のためには、単に蝦疵の通告だけで足りる︶。 民法第六三四条第一項の場合と異り、 拒否の警告は必要ではない。この事は正当というべきである。という訳は.期間を指定することは、期間を徒過した 後は、重大な結果が生ずべきこと︵契約の解約の如き︶を告げる意思表示だからだ。これに反して不履行の場合、旅 客が民法第三二六条の規定に従ったときは、受領拒否の警告は必要となる。 期日指定の例外は、本条第六五一条e第二項によって規定されている。即ち獺疵の除却が不可能な場合には.旅行
業者は救済不能なため期間の指定は、無用である。こうした場合、旅客は鍛疵通告をする必要もない。しかし実際に は、総ての場合、その通告をすることが望ましい。旅客が、即時解約につき特別の利害関係をもつ場合には、期間の 指定は必要となる。 ︵例・旅客が休暇中の旅行先きで、手携げカバンを紛失した場合。あるいは鍛疵の数が多数に亘 り、休暇終了前に、これを修補することの見込みなきとき。︶ 契約は解約されたが、個々の旅行給付にたいする一部履行ありし場合、旅行者がこれにより利益をうけた場合、例 えば解約原因が旅行行程の最後の%時に始めて発生した場合には、旅客は相当の賠償をせねばならぬ。この場合は、 民法第四七一条の趣旨に照すも明かなように、個々の旅行給付︵ホテルの宿泊・食事・運送等︶につき、独立的にそ の編値を考え計算すべきではなく、総体価値︵9鋸霞8鼠8︶と合わせ賠償額を考慮すべきだ。 ︵第六五一条e第三 項︶。 解約が為された場合でも、旅客の返送運送も契約の内容とされていた場合は、旅行業者は、旅客を帰還運送せねば ならぬ。そのための余分な費用は、旅行業者の負担となる。それはそもそも契約解約は、旅行業者の責任範囲に生じ た契約違反から発生行われたものだから、業者が負担するのが当然だ。 ︵第六五一条e第四項︶。 ⑦第腸条∼。理疵ある旅行の賠償、休暇の喜びの消失 旅行業者が旅行の鍛疵につき責任がある場合は、その損害賠償の義務がある。 旅行業のさだめた旅行計画書︵汐・馨魯号霧畠邑9爵σq︶の記載が、真実に反した場合︵特に型録の宣伝性に注意︶ には、旅行業者自身の責任あるものとされる。
東洋法学 二五
団体観光一括旅行契約法の概観 二六 許される宣伝と詐欺とは、巧みな説明、絵画、写真、放送によって見分けられるが、その限界は、流動的である。 旅行業者の責任とみるべきは、旅行業者が、契約の際にも現存する騒音︵隣家の騒音・建築上の騒音︶を指摘せず、 契約した場合の如きものであり、この場合業者は旅客にたいし、こうしたホテルを提供約定させるべきでなく、ある いはホテルの騒音を予め旅行者に告げるべきだ。 更らに旅行業者の過失とみられる場禽煮は.例えばあるホテル、あるいは運送業者ぱ.常に過失をおかす者である のに.これを旅行給付者として使用した塔合であむ、然れらの旅行給付者は.旅行業者の履行補助者であり、その行 為については.旅行業者は民法第二七八条の規定に従い.責任がある。 新法において疑間となる一事は.加客の損害賠償擁求権の行使にぱ.予め蝦疵の通告をすることが、前提要件とな るか否かである。だが蝦疵ある場合.減額請求あるいは解約が可能としても.賠償請求権も行使できる。これらの権 利は、予め蝦疵通告がなければ認められないと解される。 同様な事情につき規定した、民法第六三五条の場合には.解釈上損害賠償請求のためには、予め責問がなきれたこ とを前提とする。同様な解釈が、本条の場合にも考えられねばならぬ. これに反して.責問することは損害賠償請求の前提ではないと定めるのは、業者の作成した普通業務約款の多くも ちいる例であり、その正当性を民法第六四〇条第二項の規定に求めている。旅客が瑠疵ある旅行給付を帰還旅行の終 るまで甘受忍耐した︵少くも受領は行われた︶場合は、彼は民法第六三三条、第六三四条の規定する権利を失うが. 民法第六三五条規定の損害賠償請求権は、失われない。だから.旅客が何等の留保もせず、旅行給付を甘受して受取
った場合も、その損害賠償請求権は失われない。民法第六四〇条の規定によるも、損害賠償請求権は、何等責閥権の 行使を前提としていない。 旅行業者は、その作成する普通業務約款の申で、蝦疵の通告を、蝦疵担保請求権、ならびに損害賠償請求権行使の 前提要件として規定しているのが常だ。がそうした規定は、第六五一条kの禁止規定上原則として許されない。 立法者には、旅行業者の作成する普通業務約款中には、一般的に責問義務の問題が含まれていることは、知られて いる筈だ。そこで立法者の考えでは、第六五一条f第一項の定めた規定︵料金の減額または解約に拘らわすに︶申に は損害賠償請求の場合にも、瑠疵通告の必要がある旨が含まれている筈だという。少くも立法者は、断固として主張 するものではない。 ﹁損害賠償請求には何等予めの責問は必要に非ず﹂と、断言する者ではあるまい。立法者は第六 五一条dの規定中に、減額の場合のみでなく、一般的に鍛疵担保権につき、明かな規定をおけばよろしかったであろ うo 疑問となることは、損害賠償の請求については、予め救済のための期間指定があることを必要とするか否かの問題 である。契約解約の場合には肯定されるが、減額請求の場合には否定される問題である。 第六五一条第一項fには右の二権と損害賠償請求権とを一様に取扱っているが、新法はこれに解答を与えていな い。民法第六四〇条はこの点に関して、期限付きの救済請求には、必要とされていない。業者の作成する普通約款中 にも、これと同様、その必要を認めていない。 ⑧第鋤条9、旅行権の責問義務、時効 東洋法学 二七
団体観光一括旅行契約法の概観 二八 本条の規定は旅行終了後の旅行者の行為について定めたものだ。旅行者は旅行業者に対し、本法第六五一条c!f に掲げられた請求権を.契約上定められた旅行終了日より一ヶ月以内に、旅行業にたいし行使せねばならぬ。 この規定は、証拠確保のためである。一ケ月経過後には旅行業者において蝦疵の申出の正当性を検討しようとして も、通常困難であるからだ。それのみならず.一ヶ月以上の長期を過ぎては、旅行業者は、旅行給付者にたいして求 償権を行使するにも困難を感ずるし、その求償擁行使のための立証も困難におちいるおそれもあるからだ。裁判所の 判例においても.そうした期間を定める普遍業務約款の条項を正当と認めた、 この旅行終了後に行使されゑ頁間義務は.旅行中の蝦疵ある履行にたいしてのみでなく、不履行にたいしても︵全 部または一部不履︶為される、嬬れらの責闘義務の範囲・期間は.直接法律の規定によって生ずるばかりでなく.旅 行業者作成の一般業務約款によっても生ずる、 休暇旅行終了後の責問は休暇旅行申の鍛疵通告︵鍛疵責間︶とは関係はない。両者は各別の目的をもっているの で.これは分離して取扱われる。蝦疵通告の目的は、旅行業者をして.救済の可能性をもたせることであり.旅行終 了後の責問義務は、賠償請求権行使に役立つのだ。 責間権は.旅行業者にたいし行使されねばならぬ。業者は各種の旅行給付につき、その鍛疵担保につき責任がある からだ。旅行案内社︵響落9δ︶に対する責閥だけでは、十分でない。という訳は、単なる旅行案内社は、自身一括 旅行を計画・引受ける者ではなく、たんに旅行業者を仲介するだけだからだ。だから損害賠償請求の本訴訟において は、旅行業者を本来の被告とすべきであって、旅行案内社を本訴の被告とすべきではない。
責問のための、通知形式は定められていないが、書面によることが、望ましい。損害賠償請求権を、各別に分ち請 求する必要はない。要するに各旅行給付の理疵を基礎とし、旅行料金の全額または一部の返還を求めるか賠償を求め るかの旨を旅行業者に知らしめれば足りる。 時効期聞の始めは、契約上旅行が終るべき日からである。この契約日は、たとえ旅行者がその以前に旅行をやめた 場合でも、遵守されるべきだ。 第六五一条c−fの規定による旅行者の請求権は、六ヶ月の時効によって消滅する。がその請求権は理疵ある履行 を原因とする請求権だけに限られる。だから不履行を原因とする賠償請求権についての時効期間は、三十年である。 だが旅行業者はその業務約款により、この種の請求権につき、より短時の時効によって消減するよう定める。こうし た約款の規定は、不当とはいえないので許容きれる。という訳は、当事者の利益の比較や請求権の基礎指定が、流動 的であるからだ。何れの場合でも、消減時効進行の期日は、契約上予定された旅行終了日の翌日からである。 第六五一条9第二項第三段の規定は民法第六三九条第二項の規定に似ている。この民法の規定が、従来は旅行契約 法に援用きれていた。新法の規定は、従来の解釈よりも、その不明な点を正したが、尚ほ不明な点は、請求書の発送 だけで時効中断の効果発生に十分か、あるいはその到達によって初めてその効果を発生するものか疑がある。前説が 正しいであろう。たとえば旅客は、時効期間終了直前に、叢疵による賠償諸求の書面を発送したが、時効期間の終了 後、始めて旅行業者に到達したような場合に争となる。問題解決の正当きがとわれるのだ。 ⑨第磯条h、旅行業者の責任制限。 東洋法学 二九
団体観光一括旅行契約法の概観 三〇 この規定は旅行者の利益のために、実際的に極めて適切な効果をもつ規定である。 判例においても旅行業者が、その自ら作成した普通業務約款によりて、その責任額を.旅行料金の額だけに限らう とする規定を.有効とみとめた。責任の最も重大な場合.例えば全く不履行の場合.または全旅行を無価値にした重 大な蝦疵ある場合でも、この規定あるために旅行業者の責任が著しく制限されることになる。そこで蕩丸のため支払っ た旅行料金の返還が請求きれるし、その他の支出.例えば値上げ鞠れた遊卸費用、、冨信し話料.および無為楼厚した 休断の喜びに対する賠償金をも担保される訳である、 蔦の規定は.旅行業者と旅瀞とのあいだの.適当な危険分担をさだめたものであるが.特別な嚇合は含まれていな い.例えば身体侵害のように旅客に重大な利害関係を及ぼすレ憾㌘な場合は除かれる. 本法第六五一条難第一項第一号の規定は.専ら免責事項としては、旅行業者および自己の履行補助者の過失につい ての責任だけについて.免責されるだけであり、旅行給付者またはその従業員たる履行補助者の責任免責に関するも のではない。 旅行給付業者には、第六五一条践第一項第二号が適用される。この規定は極めて実際的に有意義のものである。旅 行業者は、旅行給付業者の行為から生ずる自己の責任を回避しようと極力つとめる。第六五一条h第一項第2号及び 第二項の規定により、そうした試みは、その基盤を失った。 新法によれば、旅行業者が旅行給付者の行為に責任を負うのは、旅行業者自身が法律によって責任を負う場合︵第 六五一条難第二項︶だけに限られる。しかも旅行業者の責任は.旅行料金の三借だけに限られる。
本法第六五一条h第二項による旅行業者の附加的責任制限の根拠は、旅行業者の責任は旅行給付者の過失によって 生じた以上、旅行給付者の責任よりも重くする必要なしとの考慮に、基づいたものだ。例えば外国の交通規則が運送 業者の責任を制限している場合に、旅行業者に運送業者の過失にたいし、無制限な責任を負担きせるのは正当でない。 但しそれは本条により、法律上の責任制限だけにすぎないので、旅行業者と旅行者との当事者の私的合意により、旅 行者の権利を拡張することは妨げない。 旅行業者の責任が、旅行料金額の三倍に限られることは、不十分である場合には、旅行者は旅行給付者にたいし追 加請求することを妨げない。殊に人的損害については、ワルシャワの協定にょり、航空運送については高額な責任限 度が定められている。旅行給付業者にたいする契約上の請求権を行使するためには、予めそうした契約関係がなけれ ばならぬ。そうした契約があったか否かは事実問題だ。 故意または重大な過失による損害賠償責任については、制限の規定はない。 休暇申の貸住宅の仲介の場合には、独立の旅客が自ら住宅の所有者と交渉するのであって、そうした契約について は、本法は関係がない。 ⑩第腸条i。旅行開始前の旅行者の解約。解約料。 旅行者の契約解約については、第六五一条iがこれを規定している。その旅行者による解約は、何時でもこれをな すことができる。その解約の効果については、第六五一条i、第二項、第三項がこれを規定している。第二項は解約 に基く具体的計算方法を示しているが、旅行業者は約定の旅行料金を失うけれども、相当の報酬金を請求すること
東洋法学 三一
団体観光一括旅行契約法の概観 三二 ができる。相当の報酬の額は、旅行料金を顧慮して定められるが、解約によって節約きれた出費、ならびに旅行業者 が.旅行給付を他に転用して得た利益をも計算に入るべきである。が、解約された旅行を直ちに他に売りつける機会 も得たか否かおも考慮されよう。 本法第六五一条i第三項の規定は.実際上たいした役目を占めないので.寧ろ余けいな規定だ。 旅行業者が黛求し儲られる報酬の相当額は.裁判所によって判定きれるが.未だ統︸的な相当額についての残定は なされていない.フランクフルト区裁判所は肯て、旅行開始前四縫前に急性の心臓病を理瞬に.解約した旅行者にた いし.約定の旅行料金の渉 ○%に相当する報酬の支払を命じた、 立法者は立法の際に.個々の旅行方法︵航空旅行・列車旅行・航海旅行またはそれらの交叉旅行︶如何にしたがい 旅行業者に支払うべき報償額の割合を最高幾割りと定め、無益の争を避くべきであった。徒らに漫然と裁判所の判定 に委すべきではなかった。 ⑪第縦条﹂。不可抗力による解約。 本条の規定は、不可抗力の概念を何等例示するところなく、この語を用いた。その沢は、旅行業者はその作成使 用する普通業務約款の中で、不可抗力の意義を極めてひろく定め、これにより.広く自己の責任を免れようとする傾 向があるからだ。 立法者が、ここに不可抗力というのは.非常な事例、例えば戦争、内乱、または自然の災害などをいうものと理解 きれる。だから本条の規定の適用範囲は、限定されているのだ。明白に不可抗力とみとめられないのは旅行先きの国
におけるストライクである。だから旅行先きの国におけるスト︵例、ホテル従業者のスト、交通業者のスト︶の場合 には、本条の適用はみられない。 解約原因としては、旅行の遂行が著しく困難であれば足りる。必しも不可能であることを要しない。だから、旅行 業者が旅行遂行を断念するためには、空港が開かれていないとか、あるいは目的地における戦争行為は未だ勃発して いないがその惧があるというだけで十分だ。 契約諦結の際に、己に非常緊急の事情がわかっていた場合には、不可抗力を援用することはできない。 不可抗力を援用して当事者は、旅行開始の以前および以後においても解約ができる。有効な解約が為きれたとき は、旅客は相当の賠償金を支払はねばならぬ。 旅客の帰還運送に関する特別費用は、当事者において折半してこれを負担する。その他の余分の費用は、 ︵例・契 約に予定以外の宿泊料金︶旅客自身の負担となる。 ⑫第磯条k。本法規定の不変性。 本条の新規定は、旅行者保護のためにする不可変規定である。但し本法に掲げる個々の事例の範囲は必しも明確で はないので、種々の難問が生ずるおそれがある。したがって本条のいう不可変性の範囲も固く確定明瞭でもない。 五、む す び 旅行契約法の新らしい規定を新説する必要があったか否か、争われるところであろう。成立した法律が正当にその
東洋法学
三三団体観光一括旅行契約法の概観 三四 役目をはたしたか否かも疑われる。旅行契約の全部不履または一部不履行の観念が法律によっても十分明確に規制さ れていない。ただ暇疵ある履行に重点がおかれているという訳で、総合的規定に欠けている。その為めに各個々の間 題につき難閥が生れる。︵例・時効の問題︶。第六五一条f第一項の規定する損害賠償請求の前提として.如何に予め の蝦疵通告をするか、その救済期間を如何に定むべきか.規定されていない。第六五一条ぞ第二項及び第六五一条難 の規定は不履行の場合に適用きれるか否かも不明である、嬬れを肯定する蔦撫は系統に違反する鵯とになる.鳳れら 規定は本来蝦疵ある履行に関する規定なのだ、 ス勤フ4クによる休暇旅行にたいす添ノ﹄についても法は何等のこたえをしていない。 要するに現在の旅行契約に関する法律状態の総体にたいして.これを洩れなく新法が解決規定しているとはいわれ ない。その補修のためには.これからの適当な法修正と.たゆまない正しい判例の解釈・発展が必要とされる。 ー一九八一・一・二五・稿ー