紀伊半島の北部にある紀ノ川と雲出川の下流に伴う
水質変化
著者名(日)
西山 勉
雑誌名
東洋大学紀要. 自然科学篇
号
50
ページ
163-173
発行年
2006-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002518/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja紀伊半島の北部にある紀ノ川と
雲出川の下流に伴う水質変化
西 山 勉★ Variation of water quality in the flow direction of theRiver Kinokawa and the River I(umozugawa in the north
Kii peninsula of Japan.Tsutomu Nishiyama
Abstract The River Kinokawa is a river running from east to west along the central tectonic line in the north Kii peninsula, and it is the largest river in the Kii peninsula, which flows into the Pachic Ocean at Wakayama City. The r iver Kumozugawa runs in the north side of the central tectonic line. The upstream basin of the River Kinokawa is the Oodaigahara mountains famous as one of the heavy rainfall areas in Japan, and the Mver Kinokawa flows down through a steep mountain landform made of schist and shale. Water sampling was carried皿t from the upstream through downstream of the River Kinokawa. The ratio of forestland in the basin of each sampHng poi lt decreases in the order of 95.2%,83.1%,79.8% and 71.7%. To the contrary, the ratio of farmland increases in the order of O.2%,4.7%,6.7%and 10.5%,and population density increases in the order of O.14,1.18,1.63 and 2.09 persons/ha. Under such circumstances and the effect of sea water by the wind from sea side, the concentrations of anions and cations(Na+, NH,+, K+, Mg2+, Ca2+, Cl-, NO,一, SO42-)in the water of the River Kinokawa increased in order of 28.02,29.98,39.08 and 47.99ppm in March and 38.07,43.62,51.23 and 75.73ppm in July as the stream went down. The upstream basin of the River Kumozugawa is the land mainly made of granite, and its elution components and the effect of sea water by the wind from sea side increased as the stream went down. The branch stream River Hatematagawa, whose wide range of basin is the land made of granite, joins the midstream of the rUver Kumozugawa. In the downstre㎜ ★東洋大学経済学部社会経済システム学科,〒112-8606東京都文京区白山52820 Department of Social Economic Systems、 Faculty of Economics, Toyo University 52&20,Hakusan, Bunkyo-ku,Tokyo 112・・8606, Japanof the junction, the components of water of the r iver Kumozugawa decreased, which showed that the concentrations of anions and cations in the water of the River Hatematagawa were lower than those of the -ver Kumozugawa. 1.はじめに 河川水の下流に伴い主要陰陽イオンの濃度が変化する様子について,これまでに本州 の多くの河川について調査をし,平均順位数から整理すると基本的には9つのパターンに 分類・整理できることについて筆者は既に発表した(西山,2004).ここでは紀伊半島の 河川について,半島の北部で中央構造線に沿ってその南側を東より西方に流れる紀ノ川 とその中央構造線の東部北側を西から東方に流れる雲出川について,それら河川の河川 水が下流に伴い主要陰陽イオンの濃度がどのように変化しているかについて調査し,そ れら河川が平均順位数からどのようなタイプの河川として分類・整理できるか検討した. 2.採水地点,採水時期,採水方法と分析方法 今回調査した紀ノ川と雲出川の流域,流路と採水地点は図1に示した.両河川は紀伊半 島の北部に位置し,ほぼ中央構造線沿いに流れ,特に紀ノ川は中央構造線の南側を西に 流れて和歌山市の河口から太平洋に流出する紀伊半島最大の河川である.紀ノ川では上 流より奈良県吉野郡吉野町上市・上市橋(1),奈良県五條市五條・大川橋(2),和歌山 県伊都郡かつらぎ町妙寺・三谷橋(3),和歌山県那珂郡岩出町船戸・岩出橋(4)の4ヶ 所にて採水した. 雲出川は中央構造線の北側を東に流れ,松坂市の北の一志郡香良州町と三雲町の境を 河口として伊勢湾に流出する河川である.雲出川での採水は上流より三重県一志郡美杉 村奥津・宮城橋(5),美杉村八知・八知橋(6),白山町家城・両国橋(7),そして一志 町大仰・片山橋(8)の4ヶ所である.それらの地点の番号は図1中の地点番号と一致し, また表2中の番号と一致する. 採水日は紀ノ川では2005年3月18日,2005年7月24日,雲出川では2005年3月19日, 2005年7月24日のいずれも2回である. 採水は各地点の橋の上から流水のほぼ中央あるいは最流速部で行った.採水は2回行い 試料を平均化した.水温とpHの測定はその場で行った.採水試料は実験室に持ち帰り, 濾紙とメンブランフィルター(0.2μm)による濾過後,イオンクロマトグラフにて陽・陰 イオンの分析を行った.分析した陽イオンはLi+, Na+, NH、+, K+, Mg2+, Ca2+,陰イオンは F-,Cl-, NO,一, SO、2一である.なお,詳しくは西山(1992)に示した.また以降のイオン種 の表記はイオン電荷を省略した.
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図1 紀ノ川と雲出川の流域,流路と採水地点 3.結果と考察 3. 1 紀ノ川 今回採水した紀ノ川の最上流地点上市は奈良県にあり,紀ノ川は奈良県より上流で吉 野川ともいわれる流長約135㎞,流域面積1660㎞2の河川である. 紀ノ川最上流域の採水地点から順次下流へと区切りながら地形・地質をみてみる. 上市(上市橋)より上流の紀ノ川(吉野川)水系は北側を高取山(584m)一竜門岳 (904m) 高見山(1248m),東側を高見山一国見山(1248m)一池木屋山(1396m)一大 台ヶ原山(経ヶ峰(1529m)),そしと南西を大台ヶ原山一大普賢岳(1780m) 山上ヶ岳 (1719m) 大天井ヶ岳(1439m)一四寸岩山(1236m)一吉野山(858m)にて囲まれて いる.高見山(1248m)の南を東西に中央構造線が走っており吉野川水系の流域はほぼ中 央構造線の南側にあるといえる. この流域の地質は中世界の地層となる四万十類帯が広く分布している. 国見山から白屋岳(1177m)と四寸岩山(1236m)を結ぶ北側の吉野川流域は中央構造 線の南1~2㎞の幅で三波川帯に対比される香束層,色生層の黒色泥質片岩が鷲家以西に 分布するがt広くは四万十累帯に対比される麦谷層,東川層の泥質・凝灰岩質千枚岩, 破断された砂岩・千枚岩の分布となり,支流の高見川が分岐する辺たりに1km2ほど玄武 岩がある(竹内,1996). 吉野川の白屋岳一四寸岩山より上流域は秩父累帯が分布する,この地域の秩父累帯は 中世界の地層で0,B, C, Dの4層に区分され,0層は四万十層群に秩父累帯が衝上したと きに巻き込んだ泥岩で,B層は緑色岩類・石灰岩・泥岩・チャートで, C層はチャートと砂岩,そしてD層は層内礫岩を伴う砂岩とチャートでそれぞれ主になるようだ(大和大 峯研究グループ,1987,p87 一 90). 上市橋から下流の採水地点五條・大川橋までは直線距離で16kmほどで,上市橋から 2㎞下流で南から吉野山北麓流域の水を,さらに4.5㎞下流の下市の蛇行部で南から吉野 山西麓流域の水をそれぞれ流入する,それら支流の流域はいずれも狭い. 五條から河口となる和歌山市まで紀ノ川はほぼ中央構造線に沿って流れ,その北側流 域は東西に走る和泉山脈の南麓になり和泉層群が分布する. 五條からかつらぎ町・妙寺までの南側流域は四万十類帯の地層が分布する.五條・大 川橋から1.5㎞ほど下流の南側力1・ら吉野山南麓を水源とする丹生川(1こゆうがわ)が流入 する.妙寺・三谷橋の上流4kmで南から流入する河川も同名の丹生川で揚柳山(1009m) の西麓を流域とする. かつらぎ町妙寺から今回採水した最も下流の岩出町船戸・岩出橋までの南側流域は三 波川結晶片岩で曹長石斑状変晶が肉眼的に見られるいわゆる点班帯の地域であり,その 中にキースラーガー型鉱床,超塩基性岩もある. 船戸・岩出橋の上流1.5kmで紀ノ川に流入する貴志川は紀ノ川の南にある有田川と長峰 山脈を境とする流域を持ち,西に向け流れてさらに北北西に10kmほど流れて紀ノ川に合 流する.長峰山脈は紀ノ川の河口の南15㎞カ・らほぼ東西に走り尖峰山(862m)から北東 に向きを変え天狗岳(968m)を経て高野山(揚柳山)まで延長できる. 次に,紀ノ川の各採水地点より上流域の総土地面積と総土地面積に対する林野面積と 耕地面積の割合(%)および流域における総人口と人口密度を表1に示した.上市よりも 上流域は奈良県東吉野村と川上村が,五條の上流は奈良県吉野町,大淀町,下市町と五 條市が入り,妙寺より上流は奈良県黒滝村,西吉野町,和歌山県橋本市,高野口町と九 度山町が,そして船戸より上流では和歌山県美里町,打田町,粉河町,那賀町,桃山町, 貴志川町,岩出町とかつらぎ町が更に加わる.それら流域を上流より順にみると総土地 面積に対する林野面積の割合は95.2%,83.1%,79.8%,71.7%と下流で減少し,また耕地の占 める割合は上流より0.2%,4.7%,6.7%,10.5%と下流で増加し,そして人口密度は上流より 0.14,1.18,1.63,2.09人/haと下流で高くなる.すなわち紀ノ川は上市より上流においては 表1 紀ノ川流域の面積と人口 上 上流 五條上流 兜 上流 戸上流 面 ’土地面 (ha) 40,076 68,552 99954 146,032 可 地面 1,907 1t614 20,200 41266 地面 87 3,218 6719 15297 面 38,169 56,938 79,754 104,766 ’土地に する 地(% 0.2 47 6.7 10.5 ’土地に する (% 95.2 83.1 79.8 71.7 人 口 ’人ロ(人) 5,467 81,036 162,683 305,307 人ロ密度(人/ha) 0.14 1」8 1.63 2.09 http://www.toukei.maff.g。jp/shity。s。n/index.html(わがマチ・わがムラー市町 村の姿→2005、10.22検索を参考にして作成
ほぼ林野地帯であり耕作・生活に伴う人為的な影響は極めて少なく,下流に向かい人為 的影響が加わることが分かる. 表2に紀ノ川の各採水地点における河川水中の陰陽イオンの組成を上流より下流に向け て示し,またその結果を横軸に採水地点を上流側から取り,縦軸に各成分の濃度を取っ て折れ線グラフとして図2に示した. 表2 紀ノ川と雲出川の河川水の水質 表中の番号は図1中の地点番号と一致する。また試料Noは採水年月日と採水順番を示す。たとえば 05031804は2005年3月18日採水順番4番目となる。 ノll ヒ ( m) 番号 試料No 採水地点 Li
Na NH4 K Mg Ca F Cl NO2 NO3 SO4 Total pH Tomp 〔℃〕
1 05031804 上市 0.00 329 0.03 034 1.26 11.26 000 4.10 0.00 1.86 5.87 28.02 7.69 8.1 2 05031803 五條 0.01 4.12 0.05 058 1.57 8.98 0.00 5.22 0.00 2.59 6.87 29.98 7.43 9.0 3 05031802 妙寺 0.01 5.05 0.09 079 1.86 10.57 0.00 621 0.00 3.74 10.77 39.10 743 88 4 05031801 一 0.02 6.43 0.09 1.02 2.42 9.89 0.00 7.01 0.00 471 16.43 48.01 743 9.4 1 05072404 上市 一 4.87 0.03 0.59 1.57 17.65 006 5.42 0.00 1.32 6.62 38.13 816 25.2 2 05072403 五條 一 5.66 0.04 0.82 2.00 18.93 0.06 6.67 000 1.14 8.36 43.68 862 28.4 3 05072402 妙寺 一 7.88 0.03 128 2.31 1503 0.07 8.40 0.00 |.82 14.49 51.30 873 293 4 05072401 、一 一 1212 0.24 2.06 3.40 18.00 σ05 10.36 000 1.47 28.08 7578 928 29.3 川 ヒ 成 ( m) 番号 試料No 採水地点 Li
Na NH4 K Mg Ca F C1 NO2 NO3 SO4 Total pH T8mpl℃) 5 05031902 〉 一 3.19 0.05 0.45 1.50 6.50 0.00 3.54 0.00 241 5.10 22.74 7.38 5.8 6 05031903 八和 一 354 0.07 0.65 1.68 7.85 0.00 397 0.00 2.42 5.97 26.16 7.42 7.4 7 05031904 家城 一 375 0.04 101 1.69 8.25 0.00 4.29 0.00 2.26 586 27.15 7.33 8.5 8 05031901 大仰 一 524 0.04 1.08 L80 8.93 0.00 5.12 0.00 273 10.65 35.59 7.25 77 5 05072401 津 一 4.31 0.04 0.89 2.12 13.84 005 4.02 0.00 3.09 6.39 34.76 7.51 226 6 05072402 八和 一 4.61 0.03 1.27 2.22 13.58 0.00 4.15 0.00 2.04 6.75 34.64 8.15 24.2 7 05072403 家城 一 4.45 α05 1.60 2.21 12.44 0.00 4.55 0.00 044 6.82 32.57 742 25.3 8 05072404 大 一 6.29 0.07 1.82 2.28 14.54 0.06 6.31 0.00 126 1f.91 4452 8.01 27.0 紀ノ川2005.3.18 紀ノ川2005723 12 ?10 一●-Ct -→-NO3 -SO4 30 1 25 @ 20 i£153 10 5 0 一←-Na {NH4〈x10) @ K(x5) @ Mg
{Ca
{Cl
|+-NO3 @ SO4 i .. @ ・一L ・ @ 「」・ 上市 五條 妙寺 船戸 雲出」11 2005.3.19 雲出川2005.7.24 12 10 8(04. (∈oe 20 pt
奥津 八和 家城 大仰 一◆-Na →牛NH4(x10) K(x5) Mg i+Ca …+Cl -←-NO3 :-SO4 図2 紀ノ川と雲出川の下流に伴う主要陰陽イオンの濃度変化測定した陰陽イオン種中の8陰陽イオン種(Na+, NH、+, K+, Mg2+, Ca2+, Cl-, NO,一, SO、2-) について,その総和濃度(以降総イオン濃度という)を表2にTota1として示した.紀ノ 川の3月,7月の両月とも総イオン濃度は下流で増し,かつ全ての地点で3月より7月で高 い.すなわち3月では上市から下流に28.02,29.98,39.08そして47.99ppmと増加し、かつ7 月ではいずれの地点でも38.07,43.62,51.23そして75.73ppmと高くなった.3月より7月で 総イオン濃度が高いことは基本的には季節の違いによる.3月中旬の早春と7月下旬の夏 期との温度差は,採水時の水温において3月8.1 一一・9.4℃に対し7月25.3 一一・29.3℃(表2) としてあり,7月の高い温度は大地からの河川水への無機イオンの溶出を高めた.また採 水時の写真を比較すると紀ノ川は7月より3月で水量が多く,降水による希釈が7月より3 月で大きく働いたことが分かる.さらに理科年表によると7月の和歌山は南西の風が最多 となり,海水による影響を和歌山平野に及ぼし,下流域でその影響は大きいだろう. 各イオン種別に下流に伴う濃度変化を図2に示した.3月試料についてみるとCaは上流 から下流まで10ppm前後とほぼ変わらないが, SO、は下流に伴い濃度を増し,上流の 5.8ppmが最下流の船戸で16ppmとなった. Mgの場合上市1.50ppm→船戸1.80ppmとその 変化は小さい.他の成分も下流に伴い濃度を増すが各地点での各成分の濃度はSO、> Cl>Na>NO,>Mg>K>NH、の関係が保たれた. 7月の試料でもNO、を除いて3月同様に下流で濃度が増加する傾向が認められた.3月 と比べ7月の濃度は全体的に高く,かつ下流での増加率が高くなるようだ.NO,は7月で 3月より低くしかも下流での増加が認められなかった. 下流に伴う濃度変化を分かりやすくするために,上流の上市での濃度を基準にして各 成分の下流での濃度との比を取り数値化して図3に示した.3月で下流に伴う増加率(増 加比)が最も高かったのはNH、で,つづいてK>SO、, NO,>Na, Mg, Clの順に下流に て増加したが,Caは1より小さく下流での増加はしていない. 紀ノ川〔3月) 紀ノJ|1(7月) 匹 +Na 齣闊鼈黷mH4 @ K |・一一一lg ィ…-Ca {C|
{NO3
@ SO4 45 S.0 R.5 R.0 Q.5 Q.0 P5 P0 O5 O.0 一◆-Na {NH4(xO 5) @ K |一一’.・lg ィ←Ca{Cl
ィ-NO3 @ SO4 4.0 R.5 R.0 Q5 Q.O 狽T P.0 O.5 O.0 ゴ方 ・ @’ S,「’ 一/ L! F 上市 五條 妙寺 船戸 上市 五條 妙寺 船戸 雲出川(3月) 雲出川(7月) } 一◆-Na 鼡ァトNH4 @ K @ Mg ィ←Ca{Cl
|+-NO3 @ SO4 30 Q5 Q.0 P.5 P.0 O.5 O.0 +Na{NH4
@ K @ Mg ィξ一Ca |●-CI |+一一NO3 @ SO4 2,5 @ 20 @ 1.5 @ 1.0 @ 0.5 @ 0,0 c ・ @ 一 .L、・ 駈\/ i
奥津 八和 家城 大仰 奥津 八和 家城 大仰 @ 1 図3 紀ノ川と雲出川の最上流地点の濃度に対する下流での陰陽イオン濃度の比7月の様子はNH、で3月と大きく異なり,妙寺までほとんど変らないが船戸で8倍もの 増加となる.またNO、はほぼ1で下流での増加はない.他の成分では3月と同様に下流で 増加するが,7月は五條で増加率が小さく船戸で増加率が高くなったことが分かる. 次に各地点で3月と7月の組成濃度がどう変化したかを,3月に対する7月の各地点にお ける成分毎の濃度比として取り図4に示し,さらにそれら値が最上流の上市に対し下流地 点でどう変わるかを比として取り図5に示した. 紀ノ川 雲出川 紀ノ川 戸 〆 」 i 一←N8 齣k一NH4 @ K @--Mg
{C8
|◆-Cl |←-NO3|SO4
2.5 i2,0W\1.5㎎巳±{1.0髄輿 0.5 0.0 .『, ・・ @ ・」 『 ”T→一ぷ 一・一 +Na{NH4
@ K E一・ lg{Ca
{C| 黶ゥNO3|SO4
3.0 @2.5 ル02.0ル卜1.5亘題10鰻 0.5 0.0 ゴ @ .@一・
/ \舗 1 上市 五條 妙寺 船戸 奥津 八和 家城 大仰 図4 紀ノ川と雲出川の各採水地点における7月の3月に対する陰陽イオン濃度の比 紀ノ川 雲出川 +Na {NH4(xO.5) @ K 齔辷黷lg ィ←C8 |●-Cl |+-NO3 @ SO4 1.4 P.2 P.0 O8 ソ6 O4 O2 O.0 一◆-N8 {NH4(xO.5) @ K|Mg
{C8
{C| 黶ィ-NO3 @ SO4 W6 P.4 狽Q P.0 O.8 O.6 O.4 O.2 O.0 上市 五條 妙寺 船戸 奥津 八和 家城 大仰 1 図5 紀ノ川と雲出川の各採水地点における7月の3月に対する陰陽イオン濃度の比の最上流地点との比 図4からCa, NH、,NO、を除く各成分は1.0から2.0の間にあり,7月で濃度が高いことが わかる.五條でその値は1.22・一・1.40に収敏し,その後下流に伴い値を高める.K, Na, Cl は五條で若干下がる.Caは逆に五條で2.0と高くなる. NH、は五條,妙寺と0.79,0.29と低 くなるが船戸で2.80と急激に高くなる.NO、は全地点でほぼO.5となり,7月で濃度が低 い. 図5をみると,SO、は3月に対する7月の濃度比は下流に伴い高まり,船戸で1,51となる. 逆にNO,は下流に伴い小さくなり,船戸で0.44となる. CaとNH、を除く他の成分はその 両成分の変化の間にある.Caは五條でL34と高くなる. NH、は妙寺までO.26と低めるが 船戸で2.5と高くなった. 上市より上流は林野面積が占める割合が95.2%と高く,耕地の影響は低い.上市での成 分濃度を各下流での濃度から差し引き,その値を各地点での耕地の増加割合で除して得 た各成分の値について下流に伴う変化を図6に示した.3月ではKとMgは五條から船戸までO.1以下となるが若干増加する.NaとClそしてNO、は0.2からO.3に増加する. SO、は 0.1から1.0とその増加が大きく,その値は7月でさらに大きくなる.Caはマイナスの値と なるが一〇.5から一〇.1へと変化した.マイナスは上市より上流域での影響が強いことを示し ている.7月ではNO3がゼロに近くなり,Caの挙動は大きく変わる.他の成分は3月より 値が高い.成分濃度が耕地に起因する場合はこの値は一定となろう.またゼロの場合は 林野に起因する成分であろう.したがってKとMgは林野に起因する成分であり,SO、, Na, Clは海水による影響として捉えられよう.人口密度と耕地の割合は下流につれて増 加し,耕地に対する組成変化は人口に対する組成変化と類似する.海水による影響が7月 で高いことは7月の和歌山の最多風向が南西からであり,それは紀伊水道の海を吹く風が 和歌山平野にもたらしたと考えられる.なお今回測定した表2に示した紀ノ川と雲出川の 全測定結果から相関関係を求めるとNa-SO、0.96, Na-Cl O.95, Cl-SO、092と関係が高い. また因子分析を行うとNa, C1, SO、をマイナスとして特徴付けられる因子が7月の河口で両 河川ともマイナスが最も大きくなる.このことも紀ノ川と雲出川において海水の影響が あることを示している.また妙寺から船戸までの南側流域は三波川結晶片岩中にはキー スラーガー型鉱床もあり硫化物の存在量が多く,風化作用により分解生成したSO、イオン が地下水や河床から特に気温の高い夏に多く河川に供給されることも考えられる, さて,紀ノ川の河川水中のTota1量(総イオン量)について先に議論したが,総イオン 量はともすると濃度の高いイオン種があるとそのイオン種の影響が大きく出る.そこで 測定した全てのイオン種の量的関係が同等に寄与するように,イオン種毎に場所による 濃度の順位を使いて計算する平均順位数(西山,2004)によって紀ノ川の河川水の下流 に伴う変化をグラフ化した. 結果は図7に示しが,上流の上市から下流の船戸にほぼ直線的に3,7月の両月とも平 均順位数(a㎜)は増した.紀ノ川は下流に伴い成分濃度が増す典型的なパターン3Mに 分類整理できた.すなわち紀ノ川は吉野川として上流域の日本有数の降水地域である大 台ヶ原に降った降水が,急峻な山岳地形でかつ片岩,頁岩などから溶存無機成分が溶出 しその濃度を下流側で増し,下流に伴い農業活動や生活にかかわる人為的な成分関与が 増し,また海からの海水組成の影響が河口側から及び,また下流域での硫化物からの風 化成分も加わり,上流から下流側に向かい成分濃度を増しながら和歌山市にて太平洋に 流れ出る河川である. 3月 7月 1+Na h+Kl 1.2 @ 1 O.8 O.6 O.4 O.2
@0
|0.2 |0.4 |0.6 | P 2.5 @ 2 狽T @ 1 O.5 @ 0 |0.5 @-1+Na
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ィ-SO4 Mg E×@Ca ィ←-Cl l+NO3 ィ-SO4 〉 一一1 ’〉一 @ 一、ぞ
@ ,「 @ / _ !「 ! 図6 紀ノ川の上市下流地点における各成分濃度の増加に対する耕地割合増加の比紀ノ川 雲出川 記ノ川 1 7 7 @6 iE5 T頚4 _警3 o時2 @1 @0 一←2 5318 {2 5723 6 kε55掻4章聾3扱酔2 1 0 +2 5319 齒争黷Q 5724 上市 五條 妙寺 船戸 ← 奥津 八和 家城 大仰 図7紀ノ川と雲出川での下流に伴う平均順位数の変化 3.2 雲出川 雲出川は南北に伸びた三重県のほぼ中央を西に流れ,一志郡香良州町と三雲町の境に て伊勢湾に注ぐ,流長55km流域面積550km2の一級河川である.最上流部は高見山地に あり,水源となる三峰山(1035m)から東側の庄司峠(879m)にかけて中央構造線の北 側に当たる.雲出川の奥津より上流流域は古期領家花闇岩類・領家変成岩類・塩基性岩 類の変輝緑岩などが分布する. 奥津から八知にかけては川の東側が巾数十kmと広く新期領家花闇岩地帯となり,西側 は第三系・第四系の地層が分布する. 八知から家城にかけては川を挟んで東西とも10kmに亙り古期領家花闇岩類が分布す る. 八手俣川は八知一家城間の竹原で君ヶ野ダムを経て雲出川に流入する雲出川の最大支 流であるが,その流域は雨乞山(699m)を取り巻いてほぼ全体が花商岩地帯となる.ま た八手俣川流域は集落も少なく人為的影響も低いようだ. 家城から下流の大仰まで,雲出川の東側は第三系・第四系の地層が,そして西側は領 家変成岩類が分布する. 雲出川流域の面積と人口についてみると表3に示したように家城より上流での総土地面 積に対する林野面積の割合は87.5%であり,その下流の大仰ではその値が79.6%と減少す る.耕地面積の割合は家城より上流の2.9%が大仰では4.7%となる.紀ノ川の場合,上市 で林野の割合が95.2%で耕地の割合がO.2%であり,船戸で野林の割合が71.7%で耕地の割 合が10.5%であるので,雲出川の林野と耕地の割合は紀ノ川の調査地域内の値に収まる. さて,雲出川での各採水地点での総イオン濃度を表2に示したが,3月,7月両試料と も下流でその量は増し,かつ各地点でその値は3月より7月で高い.奥津において3月は 23ppmだが7月では35ppm ,大仰では3月の36ppmが7月で44ppmとそれぞれ増加した. このことは紀ノ川と同様,3月と7月の異なる季節による特に温度差,すなわち採水時の 水温は3月5.8~8.5℃,7月22.6~27.0℃(表2)と7月で高く溶出を促し,また採水時に 撮った写真による河川水位の比較から3月で7月よりも水量が多かったことが分かり,3 月で降水による希釈効果が大きく働いた. 7月での総イオン濃度は奥津34.76ppm,八知34.64,家城32.57,そして大仰で44.52と 家城で最低となる.この要因は八知一家城間で花商岩地帯を流域とする八手俣川からの
家城上流 井 上流 面 総土地面 (ha) 20,670 31,856 可 地面 2,592 6,487 地面 606 1,488 林 面 18078 25369 辻地に・する耕地(% 2.9 4.7 総土地に対する (% 87.5 79.6 人 口 総人ロ(人) 7,158 20,553 人ロ 度(人/ha) 0.35 0.65 http://www.toukei.maff.gojp/sh比yoson/index.html (わがマチ・わがムラー市町村の姿一)2005.10.22検索 を参考にして作成 表3 雲出川流域の面積と人口 流入による希釈と考えられる.支流による希釈効果が3月より7月で強く働いたようだ. 花嵩岩地帯での溶出量は低く,八手俣川・君ヶ野ダムのダム水中のイオン濃度が低いこ とが考えられる. イオン種別に下流に伴う濃度変化を示した図2をみると,NO,は3,7月とも家城で最小 となる.特に7月では奥津で3.09ppmであるが家城では0.44ppmと極めて低い.このこと と7月の家城でSO、が低いことが家城の総イオン濃度を7月で低くしている.河川水中の NO、成分は人為的要因に多くよることを考えると,八手俣川は自然味豊かな支流であるこ とが指摘できよう.NH、成分は3月で家城,大仰で減少する. Mgは3,7月とも下流に伴 う濃度変化はないようだ.Caは7月に奥津,八知,家城と下流に伴い減少し,大仰にて 増加した.他の成分はほぼ3,7月とも下流につれて濃度が増加し,特にSO、は両月とも 大仰で倍ほどの濃度となる.先の紀ノ川の項にて述べたが雲出川でも海水の影響が考え られる.雲出川の場合は理科年表を見ると河口近くの津の気象観測で7月の最多風向は南 東からであり,伊勢湾から海の影響を受けるようだ. 7月のイオン濃度を3月のそれで除した値の下流に伴う変化を図4に示した.NH、とNO, の様子を除くといずれのイオンでも1.0以上となり7月でイオン濃度が高い.無機陽イオ ンの7月で高いことは7月の気温・地温・水温が3月より高いこと,また採水時に撮った写 真から判断すると採水地点の全てで水量は7月で3月より少ないことから,7月では大地 から無機成分の溶解速度が増し,また降水による希釈が弱くなり,濃度が高くなったと 先に述べたが,このことは紀ノ川においてと同様であった. 下流に伴う濃度変化は紀ノ川では下流部で高まる傾向が認められたが,逆に雲出川で は下流で濃度を下げる傾向があり特K,Caでその傾向が強い. NO,は下流に伴う減少が大きく,家城と大仰で0.5以下となったが, NH、は逆に上流の 奥津と八知で0.5となるが,下流の大仰では1.69と大きくなり,両イオンの挙動は異なっ た.NH、が下流部の7月で高いことは紀ノ川でも認められた.最上流地点の濃度比(7月 /3月)に対する下流地点における比として図5に示し,この関係を見やすくした. NO,が7月で減少する現象は先の紀ノ川でも認められ,植物による消費が7月で高いこ とによろう、東北地方の河川についての調査で,岩木川,能代川,雄物川で8月と10月
の5月に対する比率が1以下となったこととも一致する(西山,2005).ただし最上川で はそのような結果を示さなかった.中部地方の九頭竜川と長良川の5月に対する11月濃 度の比の値が1以下の0.5に近い値となっていた(西山,2003). さて,8成分の平均順位数(西山,2004)によって雲出川の河川水の下流に伴う変化を グラフ化し図7に示した.結果は上流の奥津から下流の大仰に平均順位(arm)が増加す る変化を3,7月共に示し,雲出川は紀ノ川と同様にパターン3Mに分類整理することが 分かった. 少し詳しく見ると平均順位数は奥津から八知にかけてやや増加し,八知から家城では 変化がなく,大仰において高くなった.一般的に水は上流から下流するにつれて周囲と の接触時間が長くなる.また下流流域は上流流域よりも高度は低い.このことは流域の 地質・地勢が同じであれば,下流ほど河川水への溶出量が増すことであり,下流にてイオ ン濃度が高くなる.そのことからいえば雲出川の水質は大筋そのような傾向を示してい る.だが,家城でその傾向が弱まったことは支流八手俣川の影響、すなわちこの場合は 花闇岩地帯による溶出イオンの減少と人為的影響の少さによるイオン濃度の希釈効果が はたらいていると指摘できる.家城を過ぎ関宮から大仰にかけて小盆地上に川筋に沿っ て平地が開け田・畑が見られる.また雲出川の東側は第三系・第四系の地層となる.こ れらのことは大地からの溶出と人為的影響,さらに伊勢湾からの海の影響も受けて,河 川水中のイオン濃度が増加し,大仰において平均順位数が高くなっている. このように雲出川は上流域の主として花闇岩からなる地帯から流れ下った河川水が中 流域にて花商岩上を流れてくる支流の八手俣川の清水によって希釈されるが,一方伊勢 湾からの海の影響を下流域にて受ける河川であると要約できよう. 4.文献 竹内 誠(1996)紀伊半島三波川帯・秩父帯・四万十帯の地質一奈良県吉野地域及び三 重県櫛田川地域一.地質調査所月報,47(4):223~244. 西山 勉(1992)河川水の化学組成についてのクラスター分析と因子分析.東洋大学紀 要教養課程篇(自然科学)(36):39・一・51. 西山勉(2003)河川水中の化学組成の比較検討,中部地方を流れる九頭竜川と長良川に ついて.東洋大学紀要 自然科学篇,(47):109・一・126. 西山勉(2004)日本の本州を流れる河川の下流に伴う河川水の陰陽イオン濃度の変化 と整理分類について.東洋大学紀要 自然科学篇,(48):151・’一・186 西山 勉(2005)東北地方を流れる岩木川,能代川,雄物川,最上川での季節と河川水 中の陰陽イオン濃度の関係,東洋大学紀要 自然科学篇(49):153~166. 大和大峯研究グループ(1987) 紀伊山地中央部地域 日本の地質6 近畿地方,日本の地 質『近畿地方』編集委員会編,共立出版:87~90.