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リニューアル工事騒音・振動簡易予測システムの開発 ―発生騒音・振動の実態とシステム概要―

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大林組技術研究所報 No.68 2004 1

リニューアル工事騒音・振動簡易予測システムの開発

―発生騒音・振動の実態とシステム概要―

藤 沢 康 仁 木 村 耕 三 井 上 文 宏 栗 田 康 平 縄 岡 好 人

Simple System for Evaluating Renewal Work Noise and Vibration

― Measured Noise and Vibration and Outline of the System ―

Yasuhito Fujisawa Kohzo Kimura Fumihiro Inoue Kohei Kurita Yoshihito Nawaoka

Abstract

Renewal work such as chipping and punching on structural members cause a lot o f noise and vibration in

a building. However, the level area of noise and vibration effects are not clear at present. An experiment was

conducted to compare the noise and vibration in a real building caused by various tools, and a database of

renewal work noise and vibration in a building was fixed. An empirical formula that expresses vibration

propagation in a building was created from the database, and a simple system for predicting renewal work

noise and vibration was developed. With this system, renewal work noise and vibration are simply predicted

and evaluated, so practical use is possible as a support tool for effective and economical construction planning.

概 要 建物内で行われるリニューアル工事により発生する騒音・振動は,躯体を直接加振する斫り・穿孔などの作 業時に大きいことは容易に予想されるが,どの範囲にどの程度の影響を及ぼすかは,現状で明確ではない。ま た各種低騒音・低振動型工具による騒音・振動低減効果についても,整備されていない。本研究では,まず実 建物において各種工具作業時に発生する騒音・振動の比較実験を行い,過去の実測事例と併せて建物内での工 事騒音・振動のデータベースを整備した。次にデータベースから建物内の振動伝搬に関する実験式を作成し, リニューアル工事騒音・振動簡易予測システムを開発した。本システムでは専門家以外でも簡易に工事騒音・ 振動を予測・評価できるため,効果的・経済的な施工計画立案の支援ツールとして活用できる。

1. まえがき

最近のリニューアル工事では,使用者が入居した状態 のままで施工することが主流となっており,周辺居室へ の騒音・振動に配慮した施工計画が必要となる。特に斫 り・穿孔などの躯体を直接加振する工事では,工事箇所 近傍で大きな騒音・振動が発生するだけでなく,振動が 建物の躯体中を伝搬し,工事箇所と離れた階の居室にお いても騒音が発生する。このような騒音は固体音と呼ば れ,遮音シートのような空気音に対する遮音対策では低 減効果は得られず,発生源もしくは伝搬過程での振動対 策が必要となる。本報では各種工具作業時に建物内で発 生する騒音・振動の伝搬特性の実態について示し,それ らの実測結果を基に開発したリニューアル工事騒音・振 動簡易予測システムの概要について紹介する。

2. 各種工具による発生騒音・振動の実測

2.1 固体音領域振動と騒音について 斫り・穿孔等に用いられるチッパー・振動ドリルなど の各種工具と低騒音・低振動型のコアビット式ドリルで の作業により発生する固体音を把握することを目的とし て実建物における騒音・振動伝搬に関する実験を行った。 作業位置と測定点をFig. 1に示す。両建物ともに3階で作 業を行い,A建物は2Fから5F,B建物は2Fから6Fで室内 Fig. 1 穿孔位置と測定点 Working Point and Measuring Point

6,000 A建物(7F建てSRC造) 柱穿孔 大梁上穿孔 6, 5 0 0 柱穿孔 大梁穿孔 6, 0 3 0 B建物(6F建てRC造) 振動測定点 騒音測定点(FL+1.2m) 4,855 穿孔位置 中央穿孔 (小梁上) 中央穿孔

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大林組技術研究所報 No.68 リニューアル工事騒音・振動簡易予測システムの開発 2 20 30 40 50 60 70 80 90 100 2F 3F 4F 5F 6F 騒 音 レ ベ ル (dBA) 20 30 40 50 60 70 80 90 100 2F 3F 4F 5F 6F 騒音レベル (dBA ) 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 2F 3F 4F 5F 6F 騒音レベル( d B A ) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 31.5 63 125 250 500 1k 2k 4k 8k dBA 1/1オクターブバンド中心周波数(Hz) 音圧レベ ル(d B ) NC-20 NC-30 NC-40 NC-50 NC-60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 16 31.5 63 125 250 500 1k 2k AP 1/1オクターブバンド中心周波数(Hz) 振動加 速度レベ ル(d B ) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 31.5 63 125 250 500 1k 2k 4k 8k dBA 1/1オクターブバンド中心周波数(Hz) 音圧レ ベル( dB ) NC-20 NC-30 NC-40 NC-50 NC-60 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 16 31.5 63 125 250 500 1k 2k AP 1/1オクターブバンド中心周波数(Hz) 振動 加速度レベ ル( dB ) 暗騒音 3F(作業階)-騒音 5F-騒音 3F(作業階)-振動 5F-振動 従来型-暗振動 柱穿孔 大梁穿孔 スラブ中央穿孔 B建物 アンカー打設 B建物 振動ドリル 低騒音型・カッター-暗振動 Fig. 2 各種工具の騒音・振動実測結果(柱作業時) Noise and Vibration (Working on Column)

Fig. 3 各階の発生騒音レベル

A-Weighted Sound Pressure Level at Each Floor

20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 オクターブバンド中心周波数(Hz) 動 加速 度 レ ベ ル(dB) 振動ドリル28φ 電動チッパー 電動カッター エアチッパー アンカー打ち 低騒音ドリル1-28φ 低騒音ドリル2-28φ 低騒音ドリル3-28φ 暗振動・暗騒音 ※Fig. 2,Fig 3共通 音圧レベルとスラブ鉛直方向振動加速度レベルの測定を 行った。なお測定値は作業時間内のエネルギー平均値で, アンカー打設のみは継続時間が短いため,打設開始から 終了までの最大値を測定した。 Fig. 2はA建物で各工具によるスラブ中央作業時の作 業階と2階上での振動加速度レベルと音圧レベルを実測 した結果である。なお図中のAPはオールパス,dBAは騒音 レベルを表す。作業階である3Fの発生振動は,各工具と も高周波数ほど大きい周波数特性で,低騒音型ドリルの 発生振動は従来型ドリルよりも各周波数で20dB程度小さ くなっている。発生騒音は従来型工具とアンカー打設で9 1∼98dBA,低騒音型ドリルは3種ともほぼ80dBAである。 電動カッターの発生振動は低騒音型ドリルと同程度であ るが,工具自体から発生する騒音が大きいため,発生騒 音は従来型ドリルなどと同程度となっている。5Fではア ンカー打設・従来型ドリルとチッパーの発生騒音が大き く,騒音レベルは48∼57dBAで,騒音の主成分は500Hz帯 域前後である。低騒音型ドリルと電動カッターの発生騒 音は30dBA前後で,他の工具よりも15∼20dB小さい数値で ある。この差はほぼ発生振動の差に対応しており,作業 階と異なる階では,躯体中を振動が伝搬することで発生 する固体音が支配的であることがわかる。 Fig. 3にA・B建物の各階における騒音レベル測定結果 を示す。作業階よりも上階では,B建物の方が騒音が大き く,3階上でも約60dBAの騒音レベルである。A建物のスラ ブは145mmに対してB建物では120mmと振動しやすいこと, またB建物の方が階高が低いことで距離減衰が小さいこ と,などが原因に考えられる。作業階直上では柱作業時 の騒音が大きいが,その他の階では作業位置による差は 顕著には見られない。 A・B建物での従来型振動ドリル作業時の振動測定結果 を作業位置からの伝搬距離によりまとめ、点加振時の建 物内の振動伝搬特性に関する実験式1)と併せてFig. 4に 示す。なお振動測定値には測定スラブの剛性の差が含ま

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大林組技術研究所報 No.68 リニューアル工事騒音・振動簡易予測システムの開発 3 れるため,スラブの動剛性実測値による補正を行った。 また実験式に必要な定数は実測結果から最小2乗法によ り算出した。建物や作業位置による区別は行っていない が,実験式により固体音領域の振動の距離減衰性状を概 ね表せることがわかる。 2.2 体感領域振動について 本節では100Hz以下の周波数領域における体感領域の 振動を対象とした鉛直振動測定事例を示す。水平振動に ついては,斫りなどの作業の場合には過去の事例では鉛 直振動と同等以下の数値であった。またリニューアル工 事により発生する振動は高い周波数ほど大きいが,水平 振動に対する人体感覚は高い周波数領域では鉛直方向よ りも鈍い。これらの事由よリニューアル工事の発生振動 は鉛直振動の方が人体感覚への影響が大きいと考えられ, 以下では鉛直振動のみについて記述する。 Fig. 5はチッパーと振動ドリルによるスラブ上作業時 の同一階と直下階での振動レベルの距離減衰実測値であ る。なお以下の実測値は全て作業時間内の最大値である。 作業階では隣接スパンまでは有感限界下限値の55dBを越 えるが,2スパン離れると大きく減衰し45dB以下となって いる。また直下階では,隣接スパンで50dB以下の数値と なっている。Fig. 6に発生振動の周波数特性を1/3オクタ ーブバンド帯域幅で示す。 Fig. 7は2.1節で示したA建物について,スラブ中央部 穿孔時の上下階と水平方向への振動レベル伝搬状況を示 した結果である。なお3Fでの測定結果には,測定機器系 統の暗振動の影響も含まれている。 作業直下階では振動ドリル・エアチッパー・アンカー 打設が55dB前後であり,上階では全て50dB以下となって いる。また低騒音型ドリルとカッターは作業階において も,50dB以下である。水平方向では,発生振動の大きい 工具で2スパン隣の位置で55dB前後となっている。Fig. 5の結果と比較すると約10dB 大きい値であるが,スラブ の1次固有振動数での増幅がFig. 5の事例よりも大きく 現れた結果と考えられる。 以上の実測事例より,体感領域振動の影響範囲は発生 振動が大きい工具でも,上下方向へは作業階の直上階と 直下階まで,水平方向へは概ね2スパンまでと言え,騒音 の影響範囲よりも狭いことがわかる。また低騒音型工具 では,同一スパン内でも有感限界下限値以下となる。 30 40 50 60 70 80 90 2F 3F 4F 5F 振動レベル (dB) 30 40 50 60 70 80 90 1 水平距離(m) 10 100 振動レベル (dB) アンカー打ち エアチッパー 電動カッター 振動ドリル28φ 低騒音型1-28φ 低騒音型2-28φ 低騒音型3-28φ Fig. 7 振動レベルの上下と水平方向への伝搬(事例2) Propagation to a Vertical and Horizontal Direction

上下方向 水平方向 有感限界 下限値55dB 有感限界 下限値55dB 大梁 大梁 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 1 加振源からの距離(m) 10 30 Fig. 4 振動の距離減衰実測結果と実験式推定値 Measured and Empirically Formulated

Vibration Attenuation in Distance 63Hz帯域

1kHz帯域

Fig. 6 発生振動周波数特性(事例1) Frequency Characteristics of Vibration

1/3オクターブバンド中心周波数(Hz) 1 100 1 10 100 振 動 速 度( 0-P, cm /s ec ) 10 -4 10 -3 10 -2 10 -1 10 -3 gal 10 -2 gal 10 -1 gal 10 0 gal 10 1 gal 10 -6 cm 10 -5 cm 10 -4 cm 10 -3cm 10 -2cm 穿孔-チッパー(同一階) チッパー(直下階) 振動ドリル(同一階) 振動ドリル(直下階) 30 40 50 60 70 1 水平距離(m)10 100 振 動レベル( d B ) Fig. 5 振動レベルの距離減衰実測結果(事例1) Vibration Level Attenuation in Distance

チッパー(同一階) チッパー(直下階) 振動ドリル(同一階) 振動ドリル(直下階) 有感限界下限値55dB 作業位置 測定点 大梁 大梁

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3. 騒音・振動簡易予測システム

3.1 概要 本予測システムの特長を以下にまとめる。 1)各種工具・工法の発生騒音・振動をデータベースとし て保有する 2)専門家以外でも簡易に予測・評価できる 3)発生騒音・振動の分布状況を視覚的に確認できる なお本予測システムは,施工計画段階において工事騒 音・振動の建物内分布状況の概略を予測することを目的 としており,精密機器のように厳密な振動許容値が規定 されているケースでは,別途詳細検討を行う必要がある。 3.2 予測手法 騒音については,振動に起因する固体音の影響が支配 的である。従ってまず距離減衰実験式により躯体の振動 応答を求め,スラブ厚による影響も考慮する。居室内の 発生騒音は,振動板の音響放射予測式から求め,内装材 の影響と空気音の影響も考慮して,最終的な騒音予測値 を算出する。体感領域の振動については,影響範囲が作 業位置付近に限定されるため,データベースでの数値に 実測から求めた鉛直・水平方向の距離減衰特性を補正し た数値を表示する。但しスパンが大きく,1次固有振動数 が10Hz程度以下となるケースでは,人体感覚が最も敏感 となる周波数領域で共振による振動の増幅が発生するた め,このようなケースでは共振による増幅を周波数軸上 で補正する。以上の予測フローをFig. 8に示す。 3.3 入出力 入出力はExcelを用いて行う。予測システムの入出力イ メージをFig. 9に示す。図の出力事例は,建物内の騒音 レベル分布図と指定した居室内の音圧レベル周波数特性 である。従来型と低騒音型の2種類の工具を入力すること で,それぞれの影響範囲と目標値との関係を視覚的に比 較検討を行うことができる。

4. まとめ

各種工具作業時に建物内で発生する騒音・振動の伝搬 特性の実態について示し,それらの実測結果を基に開発 したリニューアル工事騒音・振動簡易予測システムの概 要を示した。

謝 辞

小出忠男氏には貴重なご助言とご協力を頂きましたこ とに感謝いたします。 参考文献 1) 松田他:建物構造体中における固体音の伝搬性状,日 本音響学会誌Vol.35,No.11,pp.609∼615(1979) Fig. 8 騒音・振動予測フロー

Flow of Noise and Vibration Simulation

空気音の予測 固体音の予測 空気音 遮音性能予測 居室内 空気音算出 居室内 振動応答算出 内装材 影響考慮 居室内 固体音算出 居室内騒音算出 (固体音+空気音) スラブ振動特性考慮 建物内振動 距離減衰予測 居室内 振動応答算出 居室内固体音 放射予測 発生騒音 データベース 工具発生振動 データベース 建物内振動 距離減衰予測 騒音予測 体感領域振動予測 Fig. 9 予測システム入出力イメージ Image of System Input and Output

40dBA 作業位置 作業位置 40dBA 予測結果(比較グラフ) 出力項目 工具A 工具B 予測結果(分布図) 10 20 30 40 50 60 70 80 63 125 250 500 1k 2k 4k dBA 1/1オクターブバンド中心周波数(Hz) 音 圧 レベ ル( d B ) 工具A 工具B NC-20 NC-30 NC-40 NC-50 NC-60 入力項目 工具入力 建屋入力 使用工具 構造 スラブ厚 壁構造 スパン、階高 内装仕上げ材 工種 作業位置 居室の振動・騒音許容値

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