札幌法学23巻2号(2012)
田中穂積先生への謝辞
法学部長 前 原 宏 一
「顔は履歴書である」という言葉がある。確かに歳を重ねた方々 の顔には、その方々の人格が表れるようだ。そうした人格が、基本 的な素質とそれまでの経験によって形成されてくるのだとすると、 顔にはそうした人格形成の歴史が現れてくるといえるのかもしれな い。田中穂積先生の柔和な笑顔を拝見していると、特にそう思われ てくる。 田中穂積先生は国際法の担当で、私が刑事法の担当であったこと から、国際人権B規約の理解をめぐってお話しをする機会があっ た。田中穂積先生は、遥かに後輩の私の意見にも丁寧に耳を傾け、 私の意見を十分に尊重する態度をとってくださった。学問に対する 真筆な姿勢とともに、大らかで優しいお人柄によるものであろう。 学者としても優れていて、教育者としても人格者であるという人物 はそうそういるものではない。こうした田中穂積先生の人格を学生 は敏感に感じ取っていたようで、先生のゼミには学生が集まってい たし、国際法の講義も評判が良かった。 今回、田中穂積先生が御定年で退職される。これは教授会等で定 期的に顔を合わせられなくなるということで、同じ教員として一抹 の寂しさを感じるが、田中先生の菜陶を受けられなくなるというこ とでは、学生にとってとても残念なことであろう。しかし、いつま でも田中穂積先生に頼ってばかりではいられないし、先生との繋が りが無くなるわけでもない。また祈を見てお話しを伺いたいし、そ うした機会も持てるだろう。先生には、何より、これまでの仕事の −1−札幌法学23巻2号(2012) 疲れをしっかりとっていただきたいし、衷心から感謝したい。田中 穂積先生の業績を称え、お礼の意を表すためにも札幌大学から名誉 教授号が授与されると思われるが、それでは言い尽くせない貢献を 受けているのは間違いないだろう。むしろ田中穂積先生のような学 問においても人格においても優れた人物にこうした称号を授与でき るということこそ、名誉なことなのである。 ともあれ、田中穂積先生には心より「ありがとうございました」 と伝えたい。きっとまたあの優しい笑顔で微笑んでくれるだろう。 −2−