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著者

寺畑 正英

雑誌名

経営論集

82

ページ

137-150

発行年

2013-11

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006351/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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新しい人事制度の普及と変容

The Process of diffusion and Transformation New Human Resource

Management Practice

寺 畑 正 英 1. はじめに 2. 360 度評価の普及プロセス 3. 目標管理の普及プロセス 4. 職務給と職能資格制度 5. 新しい人事制度の受容 6. 新しい人事制度の変容 1. はじめに 本論文は、企業が人事制度を変革する際に、新しい人事制度を導入するプロセスを 観察する。特に、マクロレベルで新しい人事制度の普及状況を分析し、そこから考え られるミクロレベルでの新しい人事制度の変容に注目する。具体的には、360 度評価 と目標管理、職能資格制度の三つの制度について、その普及プロセスを分析する。 企業は環境の変化に対応して組織や制度を変革すると考えられている。官僚制組織 の伝統的な議論では、組織は合理性や効率性を追求するため、理念型が最も望ましい 形態であると考えられてきた。しかしながら、コンティンジェンシー理論の主張は、 全ての環境に対して適応可能な組織形態を見いだすことは困難であり、環境に応じて 望ましい組織形態が異なることを提示した(Burns and Stalker, 1961; Lawrence and Lorsch, 1967)。つまり、組織形態が一つの方向に収斂していくというよりは、多様性 を認める主張が、コンティンジェンシー理論以降強まったと思われる。しかしながら、 環境に応じた組織形態の多様性という議論にもいくつか反論があり得る。その代表的 なものとしては、明らかに異なった環境に直面している組織が、類似した組織形態を 採用している場合である。つまり、コンティンジェンシー理論が提示しているような 1 つの環境とその環境にとって合理的な 1 つの組織形態が対応関係にあるわけではな いということである。 コンティンジェンシー理論において、多様な環境に適応する為に多様な組織構造が 発生すると考えているのは、直面する外部環境により処理するべき情報が異なるから である(Galbraith, 1973)。企業は、情報を効率的に処理するために、最適な組織形 態をとる。いわゆる情報処理パラダイムに基づくこの結論は、企業の組織形態におけ る多様性を適切に説明しているように思われるが、環境が異なるにも関わらず、類似 の組織形態を採用するのはなぜか、という問題に答えていない。つまり、多様な環境 に対して、多様な組織形態が対応するというロジックは極めて整合的に思われるが、 一方で多様な環境に対して類似した組織形態が採用されるのはなぜかという問いに答 えていない。

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このような問いに対して、答えを提供する可能性があるのが新制度派の組織論であ る(DiMaggio and Powell, 1983; Meyer and Rowan, 1977)。彼らは同型化という概 念を用いて、組織が類似の形態をとる理由についての論理を提供している。新しい制 度は合理性や効率性といった基準だけで採用されるわけではなく、正統性の高い制度 を採用する可能性があるという論理である。組織は、その組織が遂行している活動と 関連性のある他の組織との間の複雑なネットワークに組み込まれ、調整や統制を受け ている。したがって、組織を取り巻くネットワークから要求されている慣習や手続き を受け入れなければならない。しかしながら、このような慣習や手続きは、組織にと っては煩雑で必ずしも合理的ではないことがある。すなわち、組織の活動にとっては 非合理的であったとしても、その組織を取り巻く環境で生き残っていくという目的に とって合理的である。 新制度派の組織論は、上記のような形で、組織は新しい慣習や手続き、つまり新し い制度を導入し、同型化すると捉えている。しかし、実際の企業活動では、組織毎に かなりの多様性があり、他の組織と同様の制度を導入することは困難である場合も多 い。対外的な正統性を確保するために新しい制度を導入するが、それらの制度をどの ように組織の中に取り込むかという問題を抱えている。そこで、場合によっては、対 外的に表明している公式的組織構造や政策と実際の企業の活動が切り離されていると いうことがある。この状況を脱連結と呼んでいる(Meyer and Rowan, 1977)。 このように、新しい制度を導入すると言うことは、必ずしも技術的な合理性のみで 判断されるものではない。人事制度においても、同様の事がいえるであろう。組織が 新しく採用する制度の中でも、人事制度は技術的合理性の要求が高い制度のように思 われる。人事制度の設計次第で、企業内で働く従業員のモチベーションが左右される からである。つまり、法規制といった類の制度を除けば、組織をコントロールすると いう内向きの論理で決まる制度だと考えられる。各企業の人事制度は、その企業固有 の経路依存的な形成プロセスがあり、他の企業が導入したからといって、流行に乗る ように、新しい制度を導入することは困難なはずである。しかしながら、実際には新 しい人事制度の採用や導入は、他の企業に足並みを揃えるように行われ、他の企業が 導入していない人事制度に関しては導入に慎重になるといった現象が見られることが ある。たとえば、360 度評価や目標管理、職能資格制度、成果主義、コンピテンシー など、様々な新しい手法や人事管理の思想が生み出され、それらを多くの企業が採用 する場合もあれば、あまり採用されないものもある。また、一見すると同様の制度を 導入しているように見えても、その運用に差違がある場合もある。そこで、本論文で は、いくつかの人事制度について、その普及がどのように進んでいったかを概観する。 本論文では、360 度評価(多面観察評価)と目標管理、職能資格制度について検討 する。その当時、新しい人事制度と言われていたもので、定義が明確な人事制度とし てこの三つを検討する事が妥当であると判断した。新しい人事制度として認識されて いるものの中には、成果主義のような、必ずしも明確な定義がなく、共通の認識を確 定することが難しいものもある。それらも検討に値する現象であるが、本論文での検 討課題から外し、最も定義が明確なものを選んで検討する。

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2. 360 度 360 度評 村,2005)。 し、被評定 定と関係者 法である。 るというこ 定項目を明 確にされて 数の評定者 価をする場 ことにより しかしなが ールが数多 れる。人材 定者の職務 は、その結 360 度評 スキルや行 が、実際に 性や評定傾 が指摘され ィードバッ するために 出 度評価の普及プ 評価は、多面観察 。職務を遂行す 定者自身の自己評 者の評定平均との つまり、重要な ことであり、もう 明確にして比較可 ていないが、評定 者とは、被評定者 場合は、上司のみ 、ある特定の関 がら、そのために 多く開発されてい 材育成に関しては 務遂行の改善や能 結果を処遇などに 評価は、理論的に 行動特性の個人差 には評定者の主観 傾向、職務や職場 れている。あくま ックされることに にはいくつかの条 図1 出所:労政時報各年 プロセス 察評価とも呼ば する上で鍵となっ 評定と職場で関係 の対比をもって な点は二つあり う一つは複数の 可能になってい 定は被評定者に 者自身と上司、 みが行うことが 関係者からの偏っ には、比較可能 いる 1360 度 は、多様な評価 能力開発が促進 に利用するとい には様々な問題が 差が数値であら 観に基づく観察 場の性質、職務 まで個々の評定者 によって、人材 条件を満たす必 360 度評価と関 年版を基に筆者が ばれ、その定義は っている職務行 関係のある複数名 職務行動能力・ 、一つはある被 評定者の評定を いるということで にフィードバック 部下、顧客など 多かったが、多 った評価を排除 能な評価基準が必 度評価の目的は、 価をフィードバッ 進されるというも いうものである。 が検討されてい わされるため、 察が基になってい 務の進捗状況など 定者の主観的な評 材育成に有効性が 必要がある2。評 関連する人事制度 が作成。 は以下のように 行動を行動評定項 名による評定を収 ・スキルを把握 被評定者を複数の を比較するために である。さらに クされることも特 どが考えられる。 多様な利害関係者 除出来る手法とし 必要であり、その 人材育成と人事 ックされることに ものである。人事 いる。二村(2005 客観性がある いるため、評定値 どの影響から逃れ 評価が相殺されて があるものであ 評定者が上司な 度の実施率 されている(二 項目として抽出 収集し、自己評 しようとする手 の人間で評定す に、具体的な評 この定義では明 特徴である。複 。通常、人事評 者が評価をする して開発された。 の助けとなるツ 事考課が考えら によって、被評 事考課に関して 5)では、能力 ように思われる 値は評定者の特 れられないこと て被評定者にフ り、処遇に利用 どの責任のある 二 出 評 手 す 評 明 複 評 る 。 ツ ら 評 て ・ る 特 と フ 用 る

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立場ではな この問題に ものの、こ 主張が支配 標としての 析した研究 に利用する このよう メリカや日 法のツール よると、自 は65.0%に の61.7%に 加傾向にあ たって一貫 価はあまり である。 3. 目標管 目標管理 を対応させ の経営的要 普及した制 いる(Dru ない場合、評定ス に対しては考課者 の点から言って 配的である。その の意義を考える研 究などがある。そ る場合は様々な条 に運用に慎重さ 本でも360 度評 ルが開発され、徐 己評価に関して になっている(図 に増加している。 あることがわかる 貫して採用状況が 普及していない 管理の普及プロ 理(Managemen せる人事管理制度 要請とモチベーシ 制度である。195 cker, 1954)。目 出所:『労政時報』 スキルを持って 者訓練などのプ ても360 度評価 の他にも、360 研究や(二村, その結果、360 条件が必要であ さが求められて 評価に関する言 徐々に普及して ては1981 年の 2 図1)。また、考 。また、フィー る。しかしなが が低迷している いと言える。実 セス nt by Objectiv 度の中核的なも ション理論の成 50 年代に Druc 目標管理制度に 図2 目標 』各年版より筆者が いないために評 プログラムを提供 価の結果を人事考 度評価と適性検 1998)、他者評 度評価を能力開 ると議論されて いる360 度評価 言説が広まり、1 いった。たとえ 25.4%から徐々 考課者訓練も19 ードバックとなる ら、360 度評価 。このように、 実際に、360 度評 ves)は、成果主 のである。目標 成果の両方の影響 cker などに取り に関しては様々な 標管理の実施率 が作成。 評価が歪むとい 供することによっ 考課に利用する 検査との関連性 評価と人事考課 開発に利用する場 ている。 価であるが、19 1970 年代に入っ えば、労務行政研 々に増加傾向にあ 983 年の 33.1% る人事考課の公開 価に関してはこ 日本企業におい 評価の活用事例は 主義、つまり仕事 標管理は、成果主 響を受けて、企業 り上げられ、広ま な定義があるが、 う問題もある。 って改善される ことに批判的な を検討して、指 との関連性を分 場合や人事評価 960 年代からア ってから評価手 研究所の調査に あり、2013 年に %から、2013 年 開なども年々増 の20 年間にわ いて、360 度評 は極めて限定的 事の成果に賃金 主義をとる企業 業に導入され、 まったとされて 、いずれにして る な 指 分 価 ア 手 に に 年 増 わ 評 的 金 業 て て

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も次の5 つ に与えられ 計画がある とが挙げら しかしな から変遷し めに、個々 「今日必要 彼らのビジ ジメントの メントの原 の目標管理 高まること このよう における目 産性の向上 定理論によ よってモチ せ、どのよ 像させ、自 また、この と考えられ のほとんど を示した。 出 つの要素、つまり れる目標が組織目 ること、上司が目 られている(Odi ながら、目標管理 している(丹生谷 々の仕事が組織目 要とされているも ジョンと行動に共 の原理、すなわち 原理である3」と 理であり、目標を に焦点をおいた な目標管理の有 標設定理論では 上に寄与する可能 よると、組織成員 チベーションが高 ように努力すれば 己効力感を醸成 の目標は他人から れている。Rodge どの研究で、目標 目標を設定する 出所:『労政時報』 り、上司と部下 目標と整合的で 目標設定をもと iorne, 1967; M 理を導入するこ 谷,2007)。Dr 目標に整合的で ものは、一人ひ 共通の方向性を ち一人ひとりの とDrucker は主 を設定すること た議論は、目標管 有効性は、理論 は、目標設定の 能性が提示され 員に目標が受容 高まる。目標設 ば良いか、その 成することによ ら与えられたも er and Hunter 標管理の導入が ることが生産性の 図3 目標管 各年版より筆者が 下が話し合って目 であること、目標 に評価を行うこ McConkie, 1979) との焦点は、D rucker は、組織 でなければならな ひとりの人の強み 与え、チームワ 目標と全体の利 主張している。そ によって、個々 管理の制度が洗練 論的にも支持され あり方がモチベ れている(Locke 容されていれば、 設定に向かって努 方向や手順を理 ってモチベーシ のではなく、本 r(1991)では 生産性の向上に の向上につなが 管理と人事考課 が作成。 目標を設定する 標を達成するた こと、フィードバ )。 Drucker が当初考 織として事業が成 ないという点を みと責任を最大限 ワークを発揮させ 利益を調和させ それは、組織の編 々の従業員のモチ 洗練化するプロセ れている。モチベ ベーションを高 e and Latham, その目標の困難 努力しなければな 理解させ、達成で ションが高まる 本人も参加してい は、70 の先行研究 につながると主張 がるといった研究 課 こと、ある個人 めに必要な行動 バックを行うこ 考えていたもの 成果をあげるた を強調している。 限に発揮させ、 せるためのマネ るためのマネジ 編成原理として チベーションが セスで発生した。 ベーション理論 め、さらには生 1990)。目標設 難度と明瞭性に ならないと思わ できた状態を想 と考えられる。 いる必要がある 究を検討し、そ 張していること 究(Guzzo, Jette 人 動 こ の た 。 ネ ジ て が 。 論 生 設 に わ 想 る そ と e

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and Katzell, 1985)や、目標設定という意思決定への参加が生産性の向上につながる といった研究が紹介されている(Miller and Monge, 1986)。これらの研究成果から、 目標管理を導入することにより、目標設定をした効果と従業員への意思決定への参加 意識の二つの効果から生産性が向上すると捉えられていると考えられる。 このような背景をもとに、日本企業でも急速に、目標管理制度は普及している。図 2によれば、目標管理の実施状況は1987年から2013年まで一貫して上昇傾向にある。 また、目標管理を導入する目的に関しても、1989 年段階では、人事考課に間接的に反 映させるという回答が半数以上を占めているのに対して、1997 年には直接的に反映さ せるという回答が逆転し、2013年現在は6割を超えるという状況になっている(図3)。 しかしながら、目標管理の運用状況に関しては、問題が指摘されている。たとえば、 奥野(2004)においては、階層や部門の違いによって、職務特性が異なり、組織内で 一律に目標管理を導入することの問題を指摘している。また、目標管理を人事考課に 直接的に反映させる企業は増加したものの4 割弱は直接反映させていないともいえる。 4. 職務給と職能資格制度 職能資格制度は日本独自の制度である。この制度は比較的長期にわたって形成され たが、その形成プロセスに影響を及ぼしたのが職務給の存在である。アメリカの企業 における典型的な給与体系である職務給は、戦後、GHQ の手によって日本企業に導 入されようとしたが、普及することはなかった。年功的な給与体系が支配的だった日 本企業には、職務給ではなく、職能資格制度とそれに基づく職能給が時間をかけて普 及した。つまり、職務給を日本企業に導入しようと試みるプロセスで、その普及が進 まず、職能資格制度と職能給が給与と人事評価の体系として普及した異質な事例であ るといえる。したがって、なぜ、職務給が浸透しなかったのかという問いが残される。 もちろん、職務給は日本企業の人事制度とあまりにも異質であったというのが最も原 初的な答えであるが、新しい人事制度は多かれ少なかれ異質であり、疑問が残される と言える。 職務給とは職務内容に対応する形で作られた賃金制度である。アメリカの人事制度 において、賃金を決定するプロセスは、職務を基本としている(笹島、2001;笹島, 2008)。職務分析から職務記述書を作成し、職務評価によって従業員の職務等級が決 定され、その等級に応じて賃金が支払われる。職務給の基本的な形態を日本企業に導 入する試みが戦後に行われている。このような取り組みに積極的に関わった人物とし て、楠田丘が挙げられる。彼は労働省で労働統計などの作成に関わりながら新しい人 事制度の研究や企業に対するコンサルティングを行い、戦後の日本企業の新しい人事 制度を策定する上で、大きな役割を果たしている。 楠田(2004)によると、昭和 20 年以降に職務給を導入しようとする試みは GHQ による指令から始まった。彼の回想によると、図4 に示されているように、欧米型の 給与体系は、労働に対する対価として支払われる給与体系であり、いわゆる成果主義 的に賃金を決める事が容易であった。定型労働にたいしてはその職務と職責に応じた 給与が決められ、創造労働にたいしては、その役割と業績、成果に応じて給与が決定 される。このように、仕事に対応して給与を決定するというやり方が欧米型の給与体

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系であるの 応じた賃金 まったいわ の職能給の 形である。 を導入する どのような めるという ていた。日 れていたが このよう ったが、戦 ように促さ 賃金体系が しかしなが ないといわ がることは に述べてい しかし も電力も だったわ です。そ 出 のに対して、日本 金体系であると楠 わゆる人間基準の のような労働者の 日本企業におい ることは困難であ な職務をするのか やり方であり、 本企業の場合は が、この当時に職 に、それまでの 戦後、GHQ より されることによっ が人間の価値で決 がら、この当時、 われており、これ はなかった。この いる。 し、アメリカは労働 も職務給を入れろ わけです。しかし、 それはどういう意味 出所:楠田(2004 本型の賃金決定 楠田は主張して の賃金システム の生活能力や経 いて、職務を基 あると、戦後の か明確でない状 職務に対して は、その従業員 職能給という発想 の日本において りアメリカの職 って、賃金は何 決められている 労働省内でも れらの議論に関 のような職務給 働の値段です。GH ということで、昭和 、昭和30 年代の終 味かというと、や 図4 賃金 4),p.50. 定は労働力対価で いる。日本型と で、具体的には 経験、保有能力な 基準として賃金や 労働省内で認識 状態で従業員の採 賃金を決めると 員の価値で賃金を 想がなかったた 賃金は職務に対 職務給という制度 何に対して支払わ という認識が生 企業の賃金決定 関して認識はあり 給導入を試みた経 HQ は労働対価です 和30 年代の日本企 終わりに職務給はほ やはり組織が硬直化 金体系の種別 であり、個々の従 とは、1901 年に八 は、年齢給や年功 などに対して給与 や配置転換を行 識されていた。 採用を行い、入社 というのは困難で を決めなければな め、当面の課題 対して支払うとい 度を提示され、そ われるべきか、そ 生まれたと楠田は 定に労働省は口 りながら実際に政 経緯について楠 すからね。でも、経 企業は職務給と生活 ほとんど消えてな 化する、異動が出来 従業員の能力に 八幡製鉄から始 功給、そして後 与を払うという うというやり方 日本企業では、 社後に仕事を決 であろうと捉え ならいと考えら とされていた。 いう発想がなか それを導入する そして、日本の は述べている。 を出してはなら 政策発動につな 田は以下のよう 経営側は鉄鋼 活給の併存型 くなったわけ 来ない。それ に 始 後 う 方 決 え ら か る の ら な う

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から、日本は人が仕事をクリエイトする、創造と工夫が日本の経営の持ち味であり強さで ある、それをマニュアルどおりにやれと言うのでは日本の経済の発展はないではないかと。 アメリカは全部マニュアル通りで職務の標準化ですからね。そういったことで昭和30 年の 終わりごろから昭和40年ころには職務給はほとんど消えてなくなっていくわけですけれど も、昭和30 年代は経営側は職務給論、労働組合は生活給論、私などはどちらかというと年 功給論の支持者であったわけです。(楠田,2004,p65) このように、職務給を導入することに限界を感じた楠田は、1960 年ころから職能資 格制度と職能給の構想をはじめ、1975 年頃に完成したと回想している。1970 年代に 入ってから、職能資格制度と職能給が徐々に企業に広まり始めた。この職能資格制度 の構想に多大なる影響を与えたのは、実は職務給並びにアメリカの賃金人事制度であ った。 例えば今の職能給でも、私が提案した職能要件書というのはGHQ で学んだ職務評価の 技術ですからね。つまりこんな仕事をやる人にはどんな能力が必要かということを分析し ていかなければなりません。そのためには職務分析をやらないとどんな能力が必要である かが出てこないんですね。(楠田,2004,p74) 職能資格制度とは、職務遂行能力に応じて従業員を格付けする制度である(日経連, 1969;日経連,1989)。したがって、各資格の要件が明確でなければならない。職務 給を決定する場合にも、職務分析は必要であったが、職能給を決める場合にも各資格 の要件を明確にするために職務分析が必要であった。さらに、それらを運用する場合 には、各従業員を格付けするという作業が必要であった。つまり、職能資格制度は従 業員の職務遂行能力を格付けするものであり、職務給のように職務の内容に対して賃 金を支払うのではなく、従業員の職務遂行能力に対して賃金を支払う仕組みであった。 このように職能資格制度は、職務給という新しい賃金制度が日本に入って来たこと によって、それに対抗するような形で、日本企業における賃金や人事管理のあり方を 考え直すことで生み出された制度である。この制度は職務給などに比べると日本企業 にとって導入しやすい制度であり、実際に現在の日本企業でもかなりの企業が採用し ている(図5)。しかしながら、この制度にも問題があった。制度としては、職能要件 が明確で、各従業員の評価が厳格に行われれば機能する。しかしながら、職能資格制 度は実際の職場で機能していないという議論はかなりあった。その運用が年功的に行 われているというものである(社会経済生産性本部,2000)4。それに対して、楠田 の反論は職能要件を明確に捉えず、年齢と勤続で評価しているために職能資格が機能 しないというものであった。つまり、職能資格制度を運用する専門家の必要性を主張 したのである 5。これは職能資格制度に限定された問題ではなく、職務や職能、役割 などをどのよう明確化するか、または従業員の評価をどのように行うのかという問題 である。職能資格制度は日本の企業のあり方に適合性が高かったかもしれないが、そ れは逆の言い方をすれば、その制度を導入することによって、日本の企業の人事管理 のあり方を変えることなく、導入することが出来たともいえる。

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5. 新しい ここまで い人事制度 企業で次々 じられるこ 実際に、成 2004;石田 を成果主義 されていな リカの人事 として設計 働基準法に 困難度、責 評価の両方 成果主義と かる。この りとあらゆ 果主義」と 経主要紙に は、他の3 ために、あ 良い言葉で 成果主義 るように思 出 い人事制度の受 で、3 つの人事制 度が企業に導入さ 々と新しい人事制 ことがある(平野 成果主義に関して 田・樋口、2009 義と捉えていると ない。石田・樋口 事制度に関する検 計されており、職 に基づいて階層化 責任の大きさ、必 方の側面で評価さ 呼んでおり、成 のような実態や定 ゆる新しい人事制 いう言葉と「3 に出現した件数を つの言葉よりも ありとあらゆる文 であり、流行とい 義は定義がはっき 思われる人事制度 図5 出所:『労政時報』 実 施 率 受容 制度に関して、 されていくプロ 制度が採用され 野、2006)。た ては、そもそも 9)。人事制度の と考えられるが 口(2009)では 検討がなされて 職務等級制度と 化されており、 必要とされる知 されている。こ 成果主義を導入 定義が明確でな 制度に成果主義 360 度評価」、「 を各年毎に検索 も出現頻度が高 文脈で使われる いうことが出来 きりしない制度 度でも、実態を 職能資格制度 各年版より筆者が その特徴と採用 セスをマクロレ れていくプロセス とえば、成果主 成果主義の定義 背景にある理念 、成果主義を体 は、日本の成果主 いる。アメリカ 呼ばれる制度が 組織内における 知識・技能水準の のような広範囲 入するということ いものは、その 義というラベリン 「目標管理」、「職 索し図にしたもの 高い。成果主義と 。成果主義は革 来るかもしれない 度の例であるが、 検討すると、そ と関連する制度 が作成。 年 用状況について概 レベルで観察した スは、あたかも流 主義が典型的な事 義でさえ明確では 念や態度、考え方 体現した人事制度 主義のモデルとな カの人事制度は職 が採られている。 る職務の価値、つ の評価と外部労働 囲にわたる環境 とは実態が明確で の言葉だけがひ ングがなされる。 職能資格制度」 のである。成果主 という言葉は定義 革新的な人事制度 い。 一見、定義がは その厳格な定義は 度の実施率 概観した。新し たとき、多くの 流行のように感 事例であろう。 はない(高橋、 方のようなもの 度は明確に提示 なっているアメ 職務を基本単位 。職掌や公正労 つまり、職務の 働市場における を全て含めて、 でないことがわ とり歩きし、あ 。図 6 は、「成 という言葉が日 主義という言葉 義が明確でない 度を表す都合の はっきりしてい は困難で、全て し の 感 の 示 メ 位 労 の る わ あ 成 日 葉 い の い て

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の企業が同 360 度評価 る。しかし 称を持ちな 360 度評 員の自己評 れまでのよ 価をすると 本人に対す 制度の一部 目標管理 事考課へ直 しているも 標管理の場 全社一律で ある。無理 職能資格 割等級制度 をはらんで 前から続く めて能力主 が出来るの このよう も解釈の余 出 同様の制度を導入 価と目標管理、職 しながら、それぞ なが内実の異なる 評価に関しては、 評価制度や人事考 ように上司が評価 いう制度である するフィードバッ 部分に関してはか 理に関しては、近 直接的に反映させ ものの、間接的な 場合に最も問題に で目標管理を導入 理に導入すれば、 格制度に関しても 度にとってかわら でいる。つまり、 年功制の影響で 主義的だが、年功 のである。 にいずれの制度 余地がないわけで 図 出所:日経テレコ 入したというこ 職能資格制度は ぞれの詳細な定 る制度が導入さ 360 度評価自 考課の公開など 価するだけでな るが、それ以外 ックを必要とす かなりの企業が 近年では8 割近 せるかどうかに な反映や反映し になるのは、目標 入して、人事考 制度の趣旨を も、採用率は高 られつつある。 従業員の能力 である。つまり 功的に運用する 度に関しても、 ではない。その 図6 各人事制度 ン21 の検索結果か とは難しい場合 は比較的定義がは 定義や導入プロセ れている状況が 体を導入してい どを実施している く、被評定者自 外にも明確で比較 する。そのように 導入していると 近くの企業が採用 に関しては、直接 ないと回答して 標管理を導入す 考課に反映させる 歪めたような運 高い制度であった しかしながら、 をどのように評 、職能資格制度 ことによって能 厳格な定義があ ような状況の中 度の新聞記事出現 から筆者が作成。 合がある。本論文 はっきりしてい セス等を観察す がわかる。 いる企業は少数で る企業は多い。3 自身やその他の関 較可能な評定基準 に考えると、36 と解釈すること 用している。しか 接的反映をする企 ている企業も4 割 することが困難な ることができない 運用が行われう たが、近年、職務 これらの制度は 評価するのかとい 度自体は厳格に運 能力主義的な側面 あるように思われ 中で、「360 度評 現件数 文で取り上げた るように思われ ると、同様の名 であるが、従業 360 度評価はこ 関係者からの評 準を持つことと 0 度評価という もできる。 かしながら、人 企業は年々増加 割程度ある。目 な職場があり、 いということで る。 務等級制度や役 は根本的な問題 いう問題と、戦 運用されれば極 面を弱めること れるが、必ずし 評価」、あるいは た れ 名 業 こ 評 と う 人 加 目 で 役 題 戦 極 と し は

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「目標管理」、「職能資格制度」といわれる制度が、何らかの同型化圧力によって、各 企業に導入することが試みられると、それらの制度の趣旨を歪めた形で運用する、い わゆる脱連結が生じる余地があるといえる。 6. 新しい人事制度の変容 本論文は、新しい人事制度が企業に普及し、変容するプロセスを概観した。多様な 制度が複数の企業間に普及していくプロセスと同様に、新しい人事制度もまた日本企 業に徐々に普及していった。ここで考えられる人事制度には二つの種類がある。一つ は比較的明確に定義が可能だと思われる人事制度である。しかし、それらは明確であ るがゆえに、企業によってはそれらの人事制度を採用することが必ずしも合理的でな いものも含まれている。もう一つは、既存の人事制度に影響を及ぼすような人事管理 の思想である。前者の例としては、目標管理や360 度評価、職能資格制度などが挙げ られる。また、後者の例としては、成果主義や能力主義などと言われる人事管理思想 などが挙げられる。例えば成果主義はある特定の人事制度を指すものではなく、出来 るだけ客観的に従業員の働く成果を計測し、それに連動するような賃金体系で動機付 けを測ろうとする試みを指している。このような思想が普及するプロセスは本論文で は取り上げなかった。定義が明らかに見える人事制度に関して、その普及プロセスを 観察することを試みる。もっとも、一見すると定義が明らかにみえる人事制度も解釈 の余地があるが、それでもある程度合意が得られている人事制度として、360 度評価 と目標管理、職能資格制度が考えられる。これらの人事制度に関して観察した。これ らの制度でさえも、かならずしも同一の制度が全ての企業で導入されているわけでは ないことが明らかになった。それぞれの企業の実情に合わせて、新しい人事制度の一 部分が採用されているか、制度の趣旨が歪められるような形で採用されている可能性 があることが確認された。 このような新しい制度や思想などが企業間に普及するプロセスを分析する枠組みと して、新制度派の組織論では、同型化という枠組みを主張している。彼らの主張は、 新しい制度はその合理性や効率性から普及するのではなく、外的な正統性によって普 及するというものである。このような同型化は組織を取り巻く環境との相互作用の中 で発生する。組織の外部で保証されている正統性に基づいた要素を組織の中に取り込 み、外部環境における組織の安定性を高めるのである。この安定性は政府や顧客、株 主といった外部環境のコミットメントを高めるだけでなく、組織の内部に参加してい る従業員のような人々のコミットメントも高める可能性があると主張している。 しかし、日本企業において、人事制度に関して外的な正統性を担保することは意味 があると言えるだろうか。外部労働市場が極めて貧弱な環境にある日本企業が人事制 度の同型化から得られる利益はそう大きくないと思われる。一方で、アメリカの企業 は労働力の流動性が高い為、人事制度が類似していることによって、新しい労働力を 獲得することが容易になるという合理性はある。さらにアメリカでは、企業内での人 事管理上の処遇も、外部労働市場における賃金水準を参考にして決定されるため、人 事制度の同型化をするインセンティブは極めて強い。人材の流動性が極めて低い日本 企業の場合、同型化の合理性に関する根拠を求めることは困難である。なぜ、日本企

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業は同様の人事制度を採用しようとするか、という本質的な問いは、今後の研究課題 である。 【付記】 本論文は平成21 年度〜平成 24 年度科学研究費(若手研究 B 課題番号 21730317) の研究成果の一部である。 【注】 (1) たとえば、リクルートマネジメントソルーションズの複数観察者評価システム(MOA)やリ ーダーシップサーベイ、PDI のProfilor、JMAM のSkill Scope などが挙げられる。

(2) たとえば、以下のような条件が挙げられている。 ① 評価処遇に適用することを対象者の4 分の3 以上が納得している。 ② 評定者の匿名性が保証されている。 ③ スコアがある程度ばらつき、それが職務遂行能力を反映していることが確認されている。 ④ 業績との相関があることが確認されている。 ⑤ 毎年の費用と労力が実務的に許容される範囲にある。 ⑥ 無責任な評定が5%未満であることが確認されている。 ⑦ 差別的な評定が行われていないことが確認されている。 ⑧ 評定者、被評定者がともに訓練され、趣旨が徹底できている。 ⑨ 尺度化にあたって公平性が確保されている。 (3) 上田訳(2006),p187. (4) この調査では、職能資格制度の問題点として、以下の点が挙げられている。 ① 運用が年功的になっている。 ② 発揮能力に応じた昇降格が柔軟に出来ない。 ③ 高資格化が進み、人件費が高騰している。 ④ 職能要件書のメンテナンスに手間がかかる。 ⑤ 資格等級の基準が実態に合わなくなっている。 ⑥ 職能資格が市場横断的に通用しない。 ⑦ 職能資格はスペシャリスト養成には使えない。 (5) 楠田(2004),p145. 【参考文献】 石田光男・樋口純平(2009)『人事制度の日米比較』ミネルヴァ書房。 大沢武志・芝祐順・二村英幸(2000)『人事アセスメントハンドブック』金子書房。 奥野明子(2004)、『目標管理のコンティンジェンシー・アプローチ』白桃書房。 遠藤公嗣(1999)『日本の人事査定』ミネルヴァ書房。 楠田丘・平井征雄(1986)『人事スタッフが推進する職能資格制度』中央経済社。 楠田丘(2002)『日本型成果主義』生産性出版。 楠田丘(2004)『賃金とは何か』中央経済社。 小池和男(2002)『仕事の経済学(第2 版)』東洋経済新報社。

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参照

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