Title
Expression levels of heat shock protein 20 decrease in parallel
with tumor progression in patients with hepatocellular carcinoma(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
野田, 孝浩
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第715号
Issue Date
2007-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23089
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目
審
査 委 員 野 田 孝 浩 (愛知県) 博 士(医学) 甲第 715 号 平成19 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当Expression Levels of heat shock protein20decreasein parallel with tumor progressionin patients with hepatocellular carcinoma
(主査)教授 小 澤 修 (副査)教授 森 脇 久 隆 教授 森 秀 樹 論文内容の要旨 く目的〉 Heat shockprotein(以下,HSP)は,熱や化学物質などのストレスにより誘導される一群のたんば く質の総称で,HSP70,HSP90およびHSPllOなどの高分子量HSPと,HSP20,HSP27およびαB-CryStaト 1inなどの低分子量HSPとに大きく分類される。 HSP20は,HSP27およびαBTCryStallinと多量体を形成し,CryStallin familyの一員として知られ ており,骨格筋,平滑筋,心筋,肝臓に定常的に発現しているが,他の低分子量HSPと異なり,熱や化 学刺激によって誘導されず,その特徴と機能については殆ど解明されていない。 最近,種々のHSPにおいて,その発現レベルが発がんプロセスと相関していることが報告され,特に 高分子量HSPでは種々のがんにおいて,その発現レベルと予後との相関が明らかとなっている。しかし 低分子量HSPとがんとの関連に関する報告は,高分子量HSPのそれに比べて少なく,HSP27に関する報 告は散見されるものの,HSP20とがんとの関連に関する報告は無い。一方,肝細胞がんは予後不良なが んとして世界的に知られており,その予後を予測する新しい因子や,治療法の開発が期待されている。 以前私共は,ヒト肝細胞がんにおいてtotalHSP27発現レベルと腫瘍の進展とは相関しないが,3ケ所 のセリン残基(Ser-15,Ser-78およびSer82)におけるリン酸化HSP27のレベルと,腫瘍病期との間 には負の相関があることを報告した。 今回私共は,ヒト肝細胞がん摘出標本を用いて,腫瘍部およびその周囲の非腫瘍部におけるHSP20の たんばく質発現レベルを解析し,HSP20が腫瘍の進展に関与する可能性を見出したので報告するととも に,リン酸化HSP27のレベルとの相関関係について検討し報告する。 く対象〉 対象は,2002年9月から2005年8月までに大垣市民病院消化器科で肝細胞がんと診断され,肝切除 術を施行した53例(男性46例,女性7例;平均年齢66.9±8.4歳)である。背景肝の内訳は,慢性肝 炎29例,肝硬変24例で,病因の内訳は,B型肝炎ウイルス14例,C型肝炎ウイルス34例,アルコー ル性5例である。全症例,手術前の化学療法は受けておらず,倫理委員会によって承認されたプロトコ ールに従い,十分な説明と同意の上で,切除標本を得た。 く方法〉 肝切除標本の腫瘍部と非腫瘍部におけるHSP20の発現レベルをWesternblot法で解析した。Western blot法の解析には,NIHイメージソフトウェアを使用した。まずX線フイルム上で視覚化したHSP20の バンド強度を測定し,それぞれ同様に測定したβ-aCtinの値で標準化することにより,HSP20の発現レ ベルを数値化し,肝細胞がん患者の性別,背景肝,病因,腫瘍数,腫瘍径,脈管浸潤の有無,被膜浸潤 の有無,TNM分類による腫瘍病期および組織学的分化度とそれぞれ比較し,統計解析を行った。また, 一部の症例で免疫組織化学的解析を行った。
-75-なお,統計解析には,SPSSソフトウェアプログラムを用い,P<0.05,r≧0.400をもって統計学的に有 意とした。 く結果〉 1)Western blot法による解析の結果,HSP20は肝細胞がん患者の全症例において,腫瘍部,非腫瘍部 ともに認められ,その発現レベルは,腫瘍部において非腫瘍部に比し低下していた。 2)腫瘍部におけるHSP20の発現レベルは,腫瘍径,脈管浸潤の有無およびTNM分類による腫瘍病期の 3項目の因子で,それぞれ有意差を認めた(犀0.048,グ0.040,炉0.003)。これらの因子においては, すべて腫瘍の進展に伴いHSP20の発現レベルは低下していた。 3)免疫組織化学的解析では,非腫瘍部に比し腫瘍部においてHSP20の発現レベルの低下が認められた。 また,腫瘍病期Ⅰの症例の腫瘍部に比し,腫瘍病期Ⅳの症例の腫瘍部は,HSP20の発現レベルが著し く低下していた。これは,Western blot法の解析結果と一敦していた。 4)ser-78およびSer-82のリン酸化HSP27のレベルならびにtotalHSP27の発現レベルと,HSP20の発 現レベルとの間には有意な相関を認めなかった(r=0.352,r=0.144,r=0.048)が,Ser-15のリン酸 化HSP27のレベルとHSP20の発現レベルとの間には有意な正の相関(r=0.505)を認めた。 〈考察〉 私共は,肝細胞がん患者の腫瘍部におけるHSP20発現レベルの低下が,腫瘍の進展と相関しているこ とを示した。これは私共の知りうる限り,BSP20発現レベルと肝細胞がんの腫瘍進展との関係について の最初の報告である。 更に今回の検討で,HSP20の発現レベルとSer-15のリン酸化HSP27のレベルに,有意な正の相関関 係を見出した。がん細胞におけるHSP20ならびにリン酸化HSP27の機能は明らかでは無いが,共に crystallin familyに属し,ヘテロ多量体を形成しうる両者は,肝細胞がんの進行に重要な役割を有す る可能性が示唆された。 現在,HSPはがん患者の予後を予測する因子の一つとしてだけではなく,がん治療の標的たんばく質 としての応用が期待されている。特に,種々のHSPの中でHSP90抑制剤は,Phaselトライアル中であ り,臨床応用が期待されている。肝細胞がんにおけるHSP20の役割は未だ解明されていないが,今後, HSP20の機能に関する更なる研究が必要であると考えられる。 く結論〉 HSP20の発現レベルは,肝細胞がんの腫瘍病期の進展に伴い低下した。この知見から,肝細胞がん組 織中におけるHSP20が,腫瘍の進展に対し抑制的な役割を果たす可能性が示唆された。 論文審査の結果の要旨 申請者 野田孝浩は,ヒト肝細胞がんにおいて腫瘍病期の進展に伴い,HSP20の発現レベルが低下す ることを明らかにした。この知見は肝細胞がんにおいてHSP20が,がん細胞の進展に対し抑制的な役割 を果たす可能性を示唆した。本研究は,肝臓病学の発展に少なからず寄与するものと認める。 「主論文公表誌」
Expressionlevels ofheat shock protein20decreaseinparallelwith tumor progressioninpatientswith hepatocellularcarcinoma
OncologyReports17,1309-1314(2007).