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ヒステリシス作用素で表現される非線形現象の解析

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Academic year: 2021

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Title ヒステリシス作用素で表現される非線形現象の解析( はしがき ) Author(s) 愛木, 豊彦 Report No. 平成14年度-平成15年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(C)(2) 課題番号14540169) 研究成果報告書 Issue Date 2003 Type 研究報告書 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/671 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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研究成

本初究において,ヒステリ㌢ス作用素で表現される非線形現象の解析を行ってきた0研究の 進め方は次の通りである。'まず,ヒステリシス作用奏そのものの数学的表現とその解析を行っ た。現象の中に現れるヒステリシスは現象によってその性質が異なろ0_従?て,ごそれらを数 学的に表現した。次に,現象に対する数理モデルの碍築であるこそこぞほ,吻痙的な保存則 やヒステリシス作用素などをもとに,非線形方程式からなる偏微分方程式系を導出した0そ してi_、その系の解析を行?た0また,系は非線形方程式からなるので,非線形方程式それ自 身の解析も平行して進めてきた。さらに,微分方程式甲解析には欠かせない関数空間の性質 を考察してきた。 以下,各問題ごとに研究成果をまとめる。

2.11次元形状記憶合金問題

形状記曝合金は医療器異をはじめとし,さ.まざまな製品の加科となっている0羊こでは, 数学的理由によって1次元の領嘩をしめる形状記憶合金について考察した0形状記鹿合金 においては,歪みと応力の関係がヒステリシス作用奏で記述される。従来は,そのヒステリ シス作用素を多項式近似して得られるFhlkmodelとや多価関数を用いて近似したL由emムnd mbdelがある・。本研究で臥そのヒスチリ・シヌを簡略化したgeneralizedstopoわer左上or( こ れはヒステリシス作用素め一穫である)をモデリングの過程で採用し新たな数理モデルを導 出し,そのモデルに対する研究を進めてきた。 2.1.1 モデルの導出と適切性 generalizedstopoperatorは,指示関蓼の劣微分を含む常微分方程式によって完全に書き 換えられることが分かっている。本研究において,このアイデアを用いた新しいモデルを提 案した。それ軋モーメント保存則,内部エネルギー保存則と,応力と歪みの関係を表した 常微分方程式との3本の微分方程草からなるシステムである。このモデリングの過程におい て,応力に対し粘性が働くということを仮定した0まず,第一段階としてモーメント保存則 の方程式においてのみ,応力に対する粘性を仮定し,さらに常微分方程式に拡散項を加えた 放物型方程式で近似した数学モデルを考え,その解の存在と一意性を示した0特に・一意性 の証明方法は,第2段階以降においても適用可能な有効な方法であった0次に,第一段階の

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モデルは物理的に妥当とはいえないものであらたので,第二段階において,応力に対する粘 性をモーメント保存則と内部エネルギー保存則との両方の方程式に加えたモデルについて考 察した0この段階では,常微分方程式は放物型方程式で近似したままである。こ?段階に進 めた最大の理由は,放物型方程式の解に対する〝-評価の古典的な結果を適用拷ことであ る0この古典的な結果により,.解の存在を証明することことができた。一意性の証明は,第

段階のそれと同様である。第三段階において,ヒネテリシス作用琴と同値である常微分方

程草を近似することなくそのままの形でシステムに取り込んだ初期値境界値問題を考え,そ の解の存在と一意性を証明した。その証明の方針は第二段階のものと同じであるが,評価を 精密にすることでこの結果を得ることができた。 2.1.2

時間無限大での解の挙動

上述したように,近似をしていないそのままの問題の適切性を示すことができたので,同 じ問題-の解の時間無限大での挙動を考察することとした0時間無限大でにの挙動の解析払 適切性の解析よりも困難である。、それは,_時間に依存しなヤ、一様評価を得るごとがよ′り簸し いからであるム本間題においても同様の困難さによって,適切性を証明した方程式系におい ては,・時間無限大での挙動に関する結果を得ることができ。なかったので, 方痙式系にいくつ か項を加えた01つは,モ∵メント保存則(運動方程式)において,摩換の効果を付加した。 もう つは内部エネルギー保存則(熱方痙式)に,線形の摂動項を加え温度が0度に漸近的 に収束するようにした0この2つの項の効果に よって、;数学的たは意味わある廃の収束に関 する定理を証明することができた。しかし,この項をカロえキことにより,.物理的には興味の ない結果になってしまった。、それiもここで得た定理では時間無醸木で歪みが空間的に一様 になっていくというものである。これ鱒,形状軍嘩合金問題 において最も興味深い相転移現 象が起きないということを示している。実際の現象で軋勿論,相転移蜂起きるわけで,こ の定理は我々のモデルが,形状記憶合金の力学的変化を正確に表現できていないことを示唆 ▲している-0今後軋・付け加えた2つの項が無い場合に,解の挙動を考察すると共に,我々の モデルにおいても相転移現象が確かに起きるということを,数学的にあるいは,・数値解析的 に示していく必要がある。 2.1.3 数値解析 1次元形状記憶合金問題に対する数値計算を実行したが,形状記憶合金を特徴づけるよう な結果が得られなかった0現在,その原因が数値計算によるものなのか,モデル自身による ものなのかを検討して↓、る0まず,数値計算の方法を方程式の分解を用いずに,凸関数の最 小値問題に書き直し∴新たなプログラムを開発中である。

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2.2

3次元形状記憶合金問題

1次元における形状記憶合金問題は,代表的なモデルであるFhlkmodel,Ftemondmodel とも問題の適切性が証明されている。現時点にいたるまで,3次元問題において適切性が完 全に証明されたモデルは存在しない0そこで,我々が提唱した1次元問題を3次元問題に適 用し,まず,数理モデルを導出した。ただし,歪みと応力の関係はgeneralizedstopoperator で表現されているものとし,さらに,それを拡散方程式で近似している0数学的な結果とし てはこその間題の解の一意性と存在を証明することができ▲たo Fhlkmodelにおいて困難な のは一意性を証明することである。それ軋ヒステリシスを多項式近似しているため,2次 以上の多項式が方程式に存在し,このことにより,解の正則性を示すことが難しいからであ る。我々のモデルにおいては,箪ステリシネを・generalizedstopoperatorで近似している 方で,.応力の取りうる値に上限があることを仮定している。数学的に見ればこの仮定は払1k modelと比較すると非常に強い条件である。しかし,現象論的に見れば応力あ取りうる値iこ 上限が存在するごとは,自然な仮定であり,決して強い仮定とはいえないD存在の革卿ま非 常に標準的であり,新しさはあま'りない0一意性の証明においては・古典的な放物型方程式 に対する初期値境界値間琴の解の最大値評価をわずかではあるが,改良することが最も本質 的な部分であっキ。 今如,gen9ralidstopoperatorを近似していないモデ)レの適切性を琴明する予定セある0 2.3

強磁性体における磁化過程

掛ヒ過程における外部磁場と磁化わ関係は,最も有名なヒス≠リシス・やあるにも関わらず, その数学的表現は確定していない。特に,現象を微分方程式からなる_システムで奉現しよう とすると非常に困難である。そこセ,本研究においては,generali写edDuhemふodelを採用 することにした。その長所iも解析に必要な連続性をもっている土と,近似が容易である土 と!現象からの得たデータをモデルに反映させやすいことなどがある0短所は,ヒステリシ スが,現象に合わないところがある。動きが大域的な場合は概ね再現できるのだが,局所的 に動いた場合,データからのずれが大きくなる。以上で述べたような短所はあるものの,数 学的解析に向いていることから,こここでは,generalizedD血emmodelを用いてモデルを 構築した。具体的に軋タイヤに取り付ける3層の磁性体からなるセンサーに対する数理モ デルの導出である。このセンサーはタイヤの寿命を延ばしたり,走行中の安全性を高めるこ とを目的として,現在,開発が進められている素材である。 3層のうちの最上層と最下層は常磁性体,中間層は強磁性体である0′さらに,中間層は磁 歪効果や圧磁性といっ・た特徴を持っているoこれらの性質をgeneralizedDuhemmodelで表 現し,これとモーメント保存則とを組み合わせた非線形微分方程式からなるシステムを導出 し,その初期値境界値問題の適切性を証明した0証明の鍵となったのは3次元形状記憶合金 問題のときと同様な放物型方程式の解の最大値評価と,レベルセットコンパクトネスがない 発展方程式に対する収束の議論である。

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2」4

ヒステリシス効果を考慮したp壬1年S占一鮎1d方程式.

液体一固体相転移現象の古典的な数理モデルの1つがステファン問題である。ただし,ス テファン問題では,過冷却などの現象が扱えないので,温度と秩序変数の関係をヒステリシ スとしたモデルが考えられてきた0一方で,秩序変数が温度と独立に拡散するという仮定の もとでphase一field方程式という数理モデルがここ20年ぐらい盛んに解析されている。そこ で,本研究においてはphase-Beld方程式にヒステリシス効果を考慮した数理モデルを導出し, その適切性を証明した0そして,ヒステリ.シス効果をあるパラメー■タによって制御し,その パラメータが0に収束したときた,ヘビサイド関数に収束するようにした場合,解も同じく 収束するという解のパラメータに関する漸近安定性も示すことができた。 2・5

生物モデルに現れるヒネテリシえ

生物の生存に関するモデルの1つである捕食者一被食者の関係は多項式を制御噴とする微 分方程式で表され畠ことが多いが,実際にはヒステリシ不の関係になっていること-か衰験な どから分かっている。そこで,形状記憶合金問題や磁化過轟の解癖で培った手法をも、とに, 拡散効果を考慮した描食孝一被食者モデルを導出し_,そゐ問題の解の存在と一意性を証明す ることがセきた0現時点で軋数理モデルがかなり抽象的なものであるため,今後は生物学 的見地からみた結果との摺り合わせをしていく必要がある。 2・6

stlblinearな方程式に対する1相ステフ7:ン問題

±の画題は,・数値奏験によって得られた現象を数学的に証明することを目的として始めた。

次のsublinearな方程式に対する1相ステファン問題を考える。 叫一叫㍑=㌦,0くp<1. p>1のときは,本研究グループのメンバーによって解析が進められてきた。0<p<1の 場合,その項がリプシッツ連続ではないので,解の一意性の証明が簡単ではない。1相ステ ファン問題に限らず,この方程式に対する初期値境界値問題が考察対象となったのはごく最 近ぁことである0本研究では,まず,SⅦ鱒nearな方程式に対する1相ステファン問題の解の 存在と一意性を示した0・一意性を示すにあたって,Gfeen関数を用いた解の表現が本質的な アイデアである0そのため,解が十分に滑らかでなければならず,C2クラスに属するよう な古典解の存在を同時に示す必要があった。 次に,解の時間無限大での挙動に関する`結果を得ることができた。それは,解は時間に関 して大域的に存在し,時間無限大のとき,温度祝と自由境界ご=ゼ(りが

咄諾)→やandg(り→∞舶ま→∞

を満たすということである0ステファン問題と通常の熱方程式とを比較した場合,あまり変 わらない,というのが従来の結果であったosublinearな方程式に対する境界値問題は非自明

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な定常解を一つしか持たないので,時間が無限大になったとき,解は定常解に近づく。それ に対し,1相ステファン問題の場合は上述したように,大きく異なる挙動を示す。これは, 領域が無限区間のとき,Sublinearな方程式に対する定常解が存在しないことに起因する。 これから軋無限大に発散するレートに対す為評価を求める予定であるこ 2.7

非線形偏微分方程式系の解析

・痍序一無秩序構造をもつ2種類の金属で構成される合金の相転移現象 定温下においては大嘘解の一意存在性と時間無限大での挙動について、非定温下において は現象のモデリングとそのモデルに対する大域解の一意存在性について議論をおこなっ七。 ・保存量を持たない放物型一双曲型方程式系で記述される相転移現象 奉る種の非定温下での相転移現象はPeprose-Fifeタイプ申放物型「双典型方程式系で記述 される場合がある。その方程式系に対する大域解の⊥意存在由こついて議森をおこなうとと も,に、三の方程式系がPenrose一隅タイプの放物型一飯物型方程式系の近似になってし、るこ とを証明した。 2.8

微分方程式の爆発解

微分方程茸の解のあるノルネが有限時間で発散するとき、この解を爆発解と」、 ぅ。非線形

項声ゝら痍導される自然な準異性を持つ解を顆eIの爆尭解・といい、この特異性時、療奏す

る・姫相似解と特徴づける指療となっている

。近牢._土のTypeIより強い療異性をもち解

の存在が知られ、「T沖eII.の爆発解」、あるいは、「速い爆発廃」と呼ばれている。矢崎氏と の共同研究により、界面運動方程式の_1つであるクリスタライン連動に現れる恥peiIの特 異性について詳細な結果を得た。特に、空間的な解のプロファイルと解のもつ晦間的な特異 性の対応関係を明らかにした。

2.9・地域経済モデル

モデルの基本的な形が出来上がりつつある。現在,常微分方程式を使って記述し■ているモ デルの数値計算の準備をしている。方程式中の係数を統計データから推定して決定するため, 統計データと推定方法に関する文献の収集中である。 2.10

ベルグマン空間

特にカールソン不等式と呼ばれる積分不等式の性質の解析を行い,申請者が過去に行った 研究結果を含んだより一般的な結果を得た。ここでは,考えるベルグマン空間も調和関数に ょって作られるバナッハ空間とし,そこにおける(Ap)条件に相当する新しい概念を導入し

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た0具体的には,乃一次元ユークリッド空間の上半平面でp一乗可積分な調和ベルグマン空 間を考える0一方の測度の任意の調和関数のp一乗積分が他方の測度の調和関数のp一乗積 分で上から押さえられるための必要十分条件を,他方あ測度が(4)∂条件を満虚するときに 特徴付けた0また,α一ベルグマン空間七いう新たな概念が提示され,一通常のベルグマン空間 を放物型作用素の解空間の一種と見なし,より雛⊥的にべルグマン空間を研究するという方 向が示された。本研究で軋α一ミルグマン空間上のカールソン不等式を考察し,カールソン 不等式が成立するための特徴付けを行った。 この特徴付桝もある種の微分労痙式の基本解

をもとに構成した再生核を用いて行った0享た,その際に必要十分条件を記述するた、_軌α-カールソンボックスという癖念を導入し,再生核の境界挙動や評価を行い,そ町性質を明ら

2・11多価力学系の筆定性二・

一解の一意性が示され七いない非線形現象を解明する目的で、多価力学系に対する安定性理 論構築を行った。 2002年蜃は、多価力学系に対する安定性理論の構築を行っtた。具体的には、可分ヒルベ′レ ト空間上で定義された時間依存する凸関数の劣薇分に支配される非線形発展方程式に対応す る多価力学系に対する安定性理論を構築した0この研究成果により、アトラクターの立場か ら非線形琴展方程式の漸近安定性を解の_「章性なしで議論できるようになった。 2鱒3年度吼申分ヒルベルト空間上で定義された時間周期劣微分作用素に支配されかっ

時間周期な摂動項を持っ非線形発展方程式の周期安定性を解の「意性なしで考察し1席間周

期多価力学系iこ対する安定性理論を構築したこ具体的には、時間周期多価力学系た対する時 間周期アトラクターの存在を示すとともに、その特徴付けを行った。 2年間の研窄成果により、・地域経済成長尚題の琴定性を爽線形発展方程式論の立場から研 究できるようになった0地域経済成長問虚軋解めナ意性が保証されていないこ鱒って、.2 年間で構築した多価力学系に対する安定性理論を用いることで、地域経済成長問題の漸近安 定性・時間周期安定性を解の一意性なしで研究できるようになづた。

参照

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