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〈講演録〉震災復興・インフラ劣化危機に対する高耐久性化の必要性

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 高耐久化推進機構事務局長を務めております 筒井公平です。まず私の方から,東日大震災以 降の国土強靭化政策のもとで繰り広げられてい る復興事業や耐震事業のなかで,どのような問 題点が発生しているのかについて簡単に説明 し,その後,代表を務める丹野政志氏の方から, それを克服するためのいかなる技術が存在する のかを歴史的な教訓等も踏まえながら包括的に 語っていただきます。  さて去る5月20日に「防災・減災等に資する 国土強靭化基本法案」が国会に提出されました。 10年間で200兆円の事業規模を打ち出しており, 土木・建設業界の方々に限らず,国民全体として, どのように実行され,どのように資金 =税金 が使われていくのか,国民生活に直結するもの として高い関心が持たれるものです。  社会資本の高齢化時代の到来が俄かに注目を 集めて来ましたが,耐久性の限界の目安とされ る建築後50年以上経過する社会資本の割合は, 現在(平成22年)と20年後で比較すると,例えば, 道路橋(8%→53%),河川管理施設(約23%→ 約60%),湾岸岸壁(約8%→約53%)と急増し ます。今後は下手をすると,「突然橋が落ちる。 トンネルが崩落する。」という事態が日本中, 日常茶飯事に発生するという状況に陥ることも 十分予想されます。  一方に於いて,世界最速の高齢化と人口の急 減により,生産年齢人口(15歳以上65歳未満は 2006年10月の65.8%から2040年には53.7%へと減 少,逆に後期高齢者の数は57%も増加します。 また現在の時点でも75歳以上の3人に一人が要 介護,5人に一人が認知症となっている訳です から,今後20年先と言えば,社会資本の老朽化 と併せて,人間の方も超高齢化し,さらにそれ に対する社会福祉対策費用の膨大な増加が予想 されます。  このような環境下,国土強靭化の200兆円が どのように使われるのか,必要性の疑わしいダ ムや道路の新設に使われるのか,それとも今に も落ちそうな橋や崩落しそうなトンネルの補修 に充てるのか ? は全ての国民の気になるとこ ろです。  元々,手抜き工事をせずに規格通り造られて いるならば,その後の補修さえしっかりなされ ていれば,鋼材でできた橋梁やコンクリート構 造物のトンネル等は50年と言わず100年以上持 たせることも不可能ではありません。しかるに, 現実はろくなメンテナンスもされていないため に急速な腐食が進んでます。  限られた財源下,一度落ちた橋を再び掛け直 す資金的な余裕がどこにあるでしょうか。  「一度落ちたら,2度と隣町に行く橋も繋が らない」,そういう切羽詰まった時代がすぐそ こにあるのだと思います。  さて,「防災・減災等に資する国土強靭化基 本法案」の内容を見てみましょう。第九条一に 「既存の社会資本の有効活用等により,施策の 実施に要する費用の縮減を図ること。」,二「施 設又は設備の効率的かつ効果的な維持管理に資 すること。」三「地域の特性に応じて,自然と

< 講 演 録 >

震災復興・インフラ劣化危機に対する高耐久性化の必要性

丹 野 政 志

筒 井 公 平

───────────────────────────────── *この論稿は,平成25年7月5日㈮の講演「震災復興国土強靱化のための秘策─インフラ危機を救う高耐久化技術」 をもとに,講演者が若干の加筆を行い,さらに充実した内容としたものである。

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の共生及び環境との調和に配慮すること。」と 明記されています。  そして,この実行に当たっては,政府が「国 土強靭化基本計画」を策定し,それと調和させ る形で都道府県または市町村は「国土強靭化地 域計画」を策定することになっています。 その際に,「大規模災害等に対する脆弱性の評 価を行い,その結果に基づいて案の作成をしな ければならない」とされています。  ところで,翻って,社会資本の現実の保守管 理,メンテナンスの状況を見てみましょう。高 速道路の保守管理では,一般的には最高のレベ ルと認識され,安心しきっていた中日本ネクス コの笹子トンネル事故。稚拙な工法と実質的な ノーメンテナンスで崩落当たり前の状態になっ ていたことが判明しました。  しかしながら,これはまだましな方かもしれ ません。実は,各都道府県のほとんどに於いて, 社会インフラの点検,保守管理,修繕等をする 専門部署がなく,実務を遂行できる人材さえも いないというのが,実態なのです。  折しも,今回の滋賀大学での講演の後,8月 4日の NHKスペシャルで「日本のインフラが 危ない」というタイトルの番組が報道され,浜 松市での実例が採り上げられました。  そこには,如何に自治体にインフラのメンテ ナンスに対する体制,ノウハウが欠如している のか,如何に認識が甘いのかが赤裸々になりま した。浜松市という人口80万人,静岡県で最大 の自治体で起こっていることは,財政が逼迫し ているそれ以下の市町村では,ましていわんや ほぼ全てに見られるのではないでしょうか。  ということは,いざ,国土強靭化の法律が施 行された時に,誰が計画して誰が実行するのか も疑問です。恐らく県単位で言えば,第九条一 に「既存の社会資本の有効活用等により,施策 の実施に要する費用の縮減を図ること。」二「施 設又は設備の効率的かつ効果的な維持管理に資 すること。」でいうところの趣旨に於いて,「や る部署も,やる人もいない」のではないかと危 惧されます。  以上のように,実は社会インフラを維持管理 するための人的,組織的なインフラさえもない。 200兆円の予算は,やれる人も組織もないのに どこに入れて,どうやって実行して行くのか ? 使った税金は,年寄りばかりの国でどうやって 払っていくのか ?との素朴な疑問が涌いてくる ばかりです。  悲観的なことばかり申し上げていますが,そ れが現実ではないでしょうか。  そこで本日の本題に移りますと「今ある社会 インフラを如何に安く,長くもたせるか。」=「高 耐久化」という発想が,ここで必要になってき ます。  至る所の橋が老朽化し,一度落ちた橋は,次 に掛ける程の資金的余裕もない。こんな状況で は,どんなに古く痛んだ橋でも,修理修繕して 使い続けるしかないというのが,我々が実際に 置かれている現実ではないでしょうか。  さて,話を技術,ノウハウの世界に移します。 本日の本命でもあります。日本は,世界に冠た る技術立国であり,土木・建築の分野でも「嘗 ては世界一の土木立国」と言われた訳ですから, 素晴らしい技術,ノウハウが沢山あります。  しかしながら,「いいものほど世に出ない。」 というのが,また日本社会の特徴でもあるよう です。特に,建築,医薬品の分野等で顕著に見 られます。開発費償却がとっくに終わり既に時 代遅れで技術レベルの低い商品でも市場シェア さえ高ければ,莫大な利益が現に発生していま すので,既存企業にとっては敢えていい商品を 出す必要性もないのです。  例えば,一例ですが今回紹介する「水性無機 塗料」を大手マンション管理会社に持込みまし たところ,「そんないい商品使ったら,出入り の塗装会社が困ってしまうからダメだよ。すぐ 剥げてまた塗るから仕事になるのだから。」と 言われました。  日本にあるマンションも,社会インフラと全 く同じでやはり2040年になると,例えば都内の

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マンションの約半数が築50年を超えてきます。 そのうち管理組合も機能してなく,修繕積立さ え十分なされてないものが山のようにあり,や はり2040年頃には建替えもできずにゴーストタ ウンのようになったマンションが続出するで しょう(既に,地方のリゾートマンションでは 始まっています)。  このような状況にも関わらず,目先の既得利 益に固執して,「いいものでも使わない。」と いう事態が蔓延しています。こういう悪しき 日本の慣行を打破して,高速道路,本四連絡 橋,電力会社の送電鉄塔,こういう大きなイン フラには是非,「安くて,長持ちする」ものを, NETIS等の客観的な性能評価に基づいて門戸 を開放して欲しいものです。  本州四国連絡高速道路,東京電力等,国民の 税金が投入されている企業には,より率先して 欲しいと願います。  高知県では,南海トラフ地震対策として津波 避難タワーを72基造る計画があると聞きます。 また,東北の被災地と同様に高台移転の計画も あります。しかし,一方で,漁業関係者は,仕 事をする時は浜に降りてきて,仕事が終わった ら山に帰るのでしょうか。鉄塔も海に近い所で は10 ~ 20年もすれば錆びが出てきて,いざ地 震が来るころにはボロボロになっている可能性 があります。本来は50 ~ 100年持つ防錆性能が 必要です。200兆円で造ったインフラについては, 数年後には,それらのメンテナンスコストが更 に乗っかってきます。防災,減災投資は,直接 的には産業振興にはならないので,後にはメン テナンスコストのみが重く伸し掛かってきます。 ですから,威勢のいい話の一方で,維持管理等 の緻密な技術やノウハウ等の検討が必要です。  高台移転も,もし職住接近で,津波が来たら 上層階に逃げればいいという構造の建物になっ ていれば,普段は1階で魚市場や加工工場を営 み,いざとなれば3~4階以上に避難すればい い訳です。こういう技術・ノウハウも実はある のですが,やはり「いいものは世に出づらい」 のか,今回の震災復興の計画の中にも活かされ ておりません。  今回我々がご紹介する技術・ノウハウは京都 大学,大阪大学等の専門の先生方が先鞭をつけ て長年に亘って研究開発し,実績も積み上げて こられましたが,先生の方のご退官等により, またゼネコン不況の中の統廃合の過程で特許も 使われずに埋もれてしまった等の事情により, 「眠ったお宝」になってしまっているものであ ります。大変残念なことです。  東北の震災復興,国土強靭化,社会インフラ の高耐久化にこの「眠っているお宝」は大変な 実力を発揮できます。そこで,我々はこの場で これらをご披露し,皆様にこの事実を知って頂 き,その上で是非,「国土強靭化の在り方」「高 耐久化の必要性」「眠ったお宝の利用法」につ いて一緒に考え,活動できればと期待しており ます。  本日は,この後,高耐久化のために必要な様々 な技術,ノウハウについて,これらを実際に開発, 商品化してこられました丹野政志氏から,具体 的な事例に即したお話をさせて頂きます。 (以上 筒井公平)  ただ今ご紹介いただきました,高耐久化推進 機構代表の丹野政志でございます。  現在日本は,震災復興とともに全国的に劣化 が著しいインフラ施設を復旧して,国土を強靭 化⇒高耐久性化しなければいけないという課題 に直面しております。この課題は,さきに筒井 氏が述べられましたように大変困難な問題を孕 んでおりますが,逆にこの危機的状況をチャン スとしていくために,昭和後期から平成にかけ て準備されながらも未だ広く普及されず,一般 に知られていない「新素材・新技術・新工法」 等の実践例の経過を報告させていただきます。 そのうえでこれらの情報を共有化して,ぜひ震 災復興と国土強靭化策のために活用していただ きたく願いまして,今日はここ彦根にやって参 りました。

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 本日は,現時点で,地震対策として最も有効 と期待されているPC工法1)等の例を紹介して, それらが来るべき津波対策や原発事故復旧策に も活用が可能であることを示します。併せてイ ンフラ施設の劣化対策に役立つ,NETIS2) の防錆対策例や今後のトンネル天井板落下防止 策案等も紹介させていただきます。 Ⅰ 世界遺産に学ぶ昭和~平成の取り組み例  ここで現在の高耐久化技術の紹介に入る前に, 歴史に学び,世界遺産の建造物に共通して見ら れる高耐久性・安全性の知恵を振り返り,今後 の継続的可能性を探ってみましょう。それは, 近代の石油合成化学の反省も含め,自然観察に 学んだ古の無機物質応用時代における素材の物 理的・化学的安定性等の再発見を歴史的な教訓 として,より素直に受け入れて,将来の遺産造 りに努める必要があると思うからです。  例えば現代社会では塗料と言えば,すなわち 石油合成化学から作られた有機樹脂塗料3) みを指すと言っても過言ではありません。しか しながら,石油を使いこなせない太古の世界で は,どのような塗料が使われていたのでしょう か? 不思議なことに,現代の先端的な有機樹 脂塗料以上に優れた性質の無機塗料,即ち,水 性無機顔料等を原料とした水性無機塗料が実際 には使われていたのです。水性無機塗料は,石 油合成化学由来の有機樹脂塗料とは異なり C (炭素)を含まず,原料が自然界にそのまま存 在するカルシウム成分等の無機質原料をバイン ダーとし無機顔料等で構成された塗料ですか ら,有機塗料の欠点としてあげられる耐熱・耐 候性に対する弱点,有害性等の問題も無かった 訳です。VOC4)の発生もなく,人体・環境へ の悪影響も発生しない塗料です。しかも,現在 ならインフラの高耐久化に不可欠な「鋼材類の 防錆」と「コンクリートの保護塗膜材」として も格段に優れた性質が発揮できます。しかしな がら,石油化学万能神話の誤った認識の下,現 代の土木,建築界では全くと言っていい程認知 されておりませんで(黙殺されていて),有害 で低性能の有機樹脂塗料だけが優先して流通し ているのです。おかしなことに,国交省が「価格, 性能面における推奨品」として NETISに登録 してあるにも関わらず現況はこの様です。ここ に,日本の土木建築業界の閉鎖性,非効率性が 現れていると思います。  ギリシャのベスピオ火山の灼熱の溶岩流の下 でも,美しい壁画を侵されずに守ったポンペイ の遺跡の水性無機質塗料(図─1)は,現在に 至り,我々メンバーの手で水性シリケート塗料 として再生して蘇ってきたのです。さらに,鉄 構造物でさえも,防錆剤としての水性ジンク リッチ塗料5)の開発により高耐久性化が可能 な時代となりました。またローマの水道橋や地 下貯水施設等に見られる石積構造物の安定性か らヒントを得たアーチ技術の発展的応用など, 世界遺産には現在に活かすべき技術のエッセ ンスが詰まっているのです(図─2)。それは, 世界遺産から工業化時代への賜物として,「アー チ技術の発想を球体構造に発展させた」スー ───────────────────────────────── 1) PC 工法;ピアノ線の緊張力により,ひび割れ易いコンクリート構造物の耐力向上を図るプレストレストコン クリート技術の各種工法。 2) NETIS;国土交通省新技術登録情報の略称。 3) 有機樹脂塗料;石油合成化学技術の応用により製造される,炭素をバインダーとする塗料。可燃性で紫外線の 影響で劣化しやすい。 4) VOC;揮発性有機溶剤は有機塗装には一般にシンナーとして広く活用されている。人体への悪影響や温暖化 防止策として抑制の傾向。 5) 水性ジンクリッチ塗料;水性シリケートの硬化剤と亜鉛微粉末を混合して塗装する水性無機防錆塗料。従来品 より経済的で高耐候性。

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パーポカラ6)等の軽量盛土工法へと引き継が れ,今後の土木分野への革新的な活用へと,一 層の広がりが期待されます。諸外国に先駆けた 我が国発の抗菌光触媒技術7)等も,無機塗料 との複合化塗装で世界遺産の汚染の抑止等にも 役立ちます。インフラの老朽化という限られた 時間との闘いの中にあっても,世界遺産から学 びつつ,いますぐにもできることがこれから沢 山あると期待されます。 Ⅱ 新技術・新商品・新工法の先駆者紹介  ここでは,いわゆる「隠れたお宝」の先駆者 をご紹介します。これらの技術が,もっと広く, かつ確実に普及していれば,日本のインフラの 傷みも少なからず食い止められたのではないか と悔やまれます。 ⑴ 水性無機塗料8)の開発者  市川好男氏(㈱日板研究所代表取締役)は無 機塗料の先駆者であります。北九州の八幡製鉄 所内の前田橋において実施された,原山直敏(㈲ セラテック代表取締役)の協力による比較検討 複合サイクル試験結果9)に基づいて,従来の有 機樹脂塗装で最も高度な施工方法とされていた 「C系重防食塗装」10)以上の防錆性能を確認し た後に,10年保証契約を付与した VE提案11) 採用されたのが水性ジンクの最初の使用例です。 これにより,有機塗料による頻繁な塗り替えの 抑制が可能となり,11年以上経った現在でも海 岸域でありながら改修塗装の対象外扱いとされ ております(図─3)。 ⑵ 無灌水植生基盤材12)の開拓者  大型淘板13)や発砲セラミックス14)の開発者 ───────────────────────────────── 6) スーパーポカラ;軽量盛り土工法に多用された筒型ポカラの内部突起物を除去した改良版。分割製造連結一体 化の ZPC 工法も併用可能。 7) 抗菌光触媒;佐賀県窯業試験場で開発した塗料を,水性無機塗料のトップコート剤として併用すれば,広範囲 の汚染防止策として活用可能。 8) 水性無機塗料;水性シリケート塗料はシリカをバインダーとした親水性の無機塗料です。NETIS 登録品で大 臣認定の不燃材です。 9) 複合サイクル試験;防錆性能を確認する促進試験方法で,温冷繰り返し・塩水噴霧・乾燥条件の等を繰り返し 変化させ,発錆を促進観察。 10) C系重防食塗装;防錆便覧に公表されている橋梁等に採用されている最高度の防錆塗装システム。無機系ジン ク + 有機樹脂5回塗り等。 11) VE 提案;バリユーエンジニアリングを活用した改善提案手法。従来方法に対して,品質面と経済性の両面で 優位性を提案する合理化案。 12) 無灌水植生基盤材;植生には灌水措置の設置は一般的。但しケイセラパネルは保湿性の発泡セラミックスで, セダム等なら無灌水可能。 13) 大型淘板;タイルとは小片の意味で,大型版は存在しなかった。天然鉱物繊維の混入と鉄の圧延技術を応用し て,薄肉大型板が完成した。 14) 発泡セラミックス;鋳物砂の産業廃棄物に含有したマグネシウム等に着目し,粘土に撹拌混入して焼き上げ, 発泡した新素材を開発した。 (図─2) (図─1)

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である居上英雄氏(㈱クレーバーン技術研究所 代表取締役)(当時)により,無灌水植生基盤 材も実現化しました。この材料は,産業廃棄物 である鋳物砂をリサイクルすべく粘土に含有混 合し,焼成して世界初の「発泡セラミックス」 として発表したものです。その特性を応用した 基盤材は,相反する「保水性と浸透性」を同時 に保持することが可能な不思議な素材で,砂漠 に生育する植物等なら充分に灌水(水遣り)な しで生育させることが実証されています。つま り,この素材を使えば,あれだけ業界全体で苦 労していた屋上緑化や,コンクリートで覆われ て緑化が不可能とされている膨大な土木構築物 等も,土壌と灌水が不要となるため,安全で経 済的な緑化策となり得ます。しかしながらやは りこの技術もまだ一般的には知られておらず, 今後の取り組みが期待されております。 ⑶ スープロストランド15)の開拓者  錆びないPC撚り線を開発した田口保男氏(タ イムスエンジニアリング㈱代表取締役)(当時) の功績により,PC建築や PC土木分野16)でも 新しい取り組みが始まっています。引っ張り強 度に優れたピアノ線でも,鋼材ですから酸化は 確実に進みます。この酸化を抑制するために通 常採られる方法は,ピアノ線が外気に触れない ようにピアノ線にグリース等の油性を塗布・充 填する方法です。これが無くなると一気に酸化 してしまうので,大変な労力をかけて絶えず油 成分が維持できる状態を,特別な方法で継続す る必要があります。これに対して,「スープロ ストランド」は,撚り線の空隙に隙間なくポリ エチレン樹脂を完全充填することに成功し,撚 り線間内での結露現象も防御可能となりまして, 現時点では最高度の防錆システムとして認めら れるに至っております。このため,「スープロ ストランド」はまさに「錆びないピアノ線」と して半永久的にその性能を維持することが可能 となり,今後の普及が期待されます。鉄筋コン クリート構造物の劣化は,主に鉄筋の酸化によ るものですから,この「錆びないピアノ線」を 上手に鉄筋代わりに利用すれば,強度,耐震性, 耐久性ともに大変優れた,革命的な鉄筋コンク リート構造物ができる訳です。高強度の性能を PC技術と併用することで経済設計も可能とな り,また防錆性能を活かして海岸域等の過酷な 環境下でも外ケーブルの耐震補強材等としても 有効に活用ができ,維持費面等からも経済的で す。 Ⅲ 開拓された技術の経過 ⑴ 無機塗料の経過  水性無機ジンクリッチと防錆化粧水性塗料17) の耐久性が,各種の促進試験並びに12年に及ぶ 暴露試験結果等で性能が確認され,過酷な環境 でも既存の有機塗料の塗り重ね工法より格段優 る耐久性が実績と共に蓄積されてきています。 最初の取り組み例としては中部電力の浜岡原発 関連施設の超高圧送電線鉄塔があげられます。 塩分を含んだ強風と砂嵐という過酷な環境下で, 亜鉛メッキの高耐久化を目的として,国内外の 選抜された有機樹脂塗料と共に,我々の水性無 機塗料も促進耐候性の複合サイクル試験に参加 した経緯があります。その結果,我々の水性無 機塗料を塗った亜鉛メッキ材のみが,当該環境 下でも40年間は亜鉛の消費量が極端に抑制され ───────────────────────────────── 15) ス-プロストランド;PC 撚り線のワライと言われる連続性調整空隙に着目し,熱可塑性のポリエチレン樹脂 を完全圧入充填した新素線。 16) PC 建築や PC 土木分野;RC 建築では大スパン架構やブロック工法及びマット基礎等,PC 土木では PC 橋梁 やつり橋,PC タンク等。 17) 防錆化粧塗料;亜鉛表層面の親水性が確認できれば,防錆化粧シリケー塗料は直塗りできます。それだけで亜 鉛消費量が長期間抑制可能。

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ることが実験の結果確認され,素晴らしい実績 とすることが出来た経緯があります。今後,各 電力会社でも送電線鉄塔等の維持管理費の抑制 策は重要課題となる筈ですから,これらの事例 が有効に活用されるように期待するものです。 従来のしがらみにより,各関連会社とも対応し づらいようで将来に向けての動きの遅さが危惧 されております。  最近では,超高層の PC版18)の塗装に於いて, フッ素樹脂以上に耐久性に優れ,しかも汚れ難 い性能と工期短縮効果並びに比較経済性の高さ も理解されました結果,実績も増えてきまして, ようやく普及の時期を迎えつつあります。PC 版に限らず,超高層のアルキャスト17)外装材 等にも,高機能の無機塗料は活用されだしてお ります。 ⑵ スーパーポカラの経過  スーパーポカラ及び ZPC工法20)は,既に実 用化された旧筒型ポカラ工法の改良技術で,今 後軽量人工台地,貯水施設等において安定性能 とコストメリットが評価され,広く普及が期待 されます。近年の集中豪雨対策として東京都は 環状7号線の地下50mの大深度地下に大規模な 貯水施設が巨額の資金で建設されましたが,こ の工法を利用すれば,より身近な施設(例えば, 小中学校の校庭や公共駐車場の直下等)に比較 的少額の予算で遊水地が確保でき,震災時には 逆に飲料水としても活用が可能です。前例とし て,西東京市の小学校の校庭地下貯留槽等を参 照し,集中豪雨対策と震災対策を含めて,この ような工法の普及が望ましいと思います。一方, 移転費用に5,000億円以上の経費がかかると言わ れる築地市場の豊洲への移転ですが(東京オリ ンピックでさえ4,500億円の規模ですが),軟弱 地盤に際限なく大量の杭を設置する工法よりも, スーパーポカラを中子とした「PC技術を応用 したタンク構造の浮き基礎工法」とすれば,は るかに安い金額で構造物の建設も可能となる筈 です(懸案の土壌汚染水対策にも効果的です)。 Ⅳ 様々なコンクリート工法の展開 ⑴ 大型 PC 屋根版の製法の省力化  高度成長時代の取り組みとして交通規制上最 大級(2.5m×24m t=74㎜ w =15t /枚) の PC屋根版の製造機械の改良を紹介する。西 独の製法では硬練りのコンクリートをスコップ で掻き揚げていたが,体力的な無理を軽減する ためバイブレータスクリード21)に改良型ホッ パーを連動追加して省力化が実現し,開発会社 でも利用されています。 ⑵ タイルの落下事故対策としての「大型陶 板」の活用  北九州のビル外壁のタイル落下事故を契機に, 居上社長が開発した大型淘板(1m×2m,厚 さ4㎜)の PC板付複合化技術開発の取組みが 進み,躯体が割れても剥離しないアンカーシス テムを開発して採用された経緯があります。大 型淘半は比較的靭性に富んで割れにくく,か つ,目地が少ないため劣化要因も少ないため, 近年は大型施設の外壁にも多用されております (図─4)。 ───────────────────────────────── 18) PC 版;超高層の外壁は,軽量コンクリート製工場生産品プレキャストが一般的で,無機塗料も工場で塗装し てから現場に届けられる。 17) アルキャスト;アルミの鋳型の特性を超高層の外壁に採用した例も出現。耐候性や防汚性,デザイン性より高 機能無機塗料を塗装した。 20) ZPC 工法;改良型スーパーポカラの分割製造を可能とし,かつ,簡易的な方法で連結一体化を可能ならしめ た新工法。 21) バイブレータスクリード;高周波振動機が装備された,片練りコンクリート用の成型仕上げ機械。

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Ⅴ海外での先端的コンクリート技術に学ぶ ⑴ 海に浮かぶ PC 構造物(石油掘削船)  ノルウエーで実施された FIP22)の国際会議 に参加した際に,京都大学(当時)の六車教授 に同行させていただき北海油田用の PC浮体構 造物の製造現場の見学例です。  海岸部の一部を締め切り,強固な岩盤上で下 部構造の高強度密実コンクリートを打設した後 に PC緊張を施して,遮水性能を付与して浮体 構造物を完成させます。その後は締め切りを開 放して海水を導入して進水し,水深の深い沖合 に移動して上部構造物を更に構築して全体を完 成させる方法が採用されています。その際,函 体には必要に応じてバラスト効果のための海水 を流入し,レベル調整を実施しながら過酷な環 境下でも施工を実施しています。石油基地で掘 削後に原油と海水の出し入れで,浮き沈みのバ ランス調整を繰り返し,移動可能な掘削船とし て活躍しています(図─5)。  日本では,鋼材製の備蓄タンクが当たり前と なっていますが,ヨーロッパに於いては,高い 安全性を問われる海上タンクにも,PC技術に よる浮体構造物が利用されています。これは, 現在放射能汚染水等の対応で,俄か作りのタン クでその場をしのいでいる我が国の惨状に対し ても,今後の解決策及び参考事例として活用で きると思います。 Ⅵ 水性無機塗料の利用の広がり  水性無機塗料の用途は既述のように,鋼構造 物の防錆塗料として利用されているばかりでな く,その用途はコンクリート構造物の保護材・ 化粧材としても広く使用されています。打ち放 しコンクリート23),PC板,押し出しセメント 成型版24),GRC版25)等,各種窯業系基盤の塗 装実績も増加しています。従来の有機樹脂塗装 に比べて,耐用期間が長く,親水性の呼吸膜を 形成するため汚れが少なく,塗装工期も短く(通 常有機塗料が3~5回塗りなのに対し,1~3 回塗り),経済的である等の面で優れています。 また,大臣認定の不燃材料であり,かつ,国土 交通省新技術登録(KT-030044-A)の無機塗料 として,近年になって実績も増加傾向にありま す(図─6),(図─7)。 (図─5) (図─3) (図─4) ───────────────────────────────── 22) FIP;プレストレストレストコンクリート分野の国際会議。4年に1度開催されて,京都会議では六車教授が チエアマンを務めた。 23) 打ち放しコンクリート;型枠に打ち込まれたコンクリートが硬化後に脱型された,素地肌のコンクリート体。 24) 押し出し成型版;押し出しや引き抜き製法のセメント系有孔窯業製品(モルタルやコンクリート)は,一般に 普及の時代を迎えています。 25) GRC 版;ガラス繊維をモルタルやコンクリートに混入し,引っ張り補強材として活用した GRC 製品は外壁板 にも活用されています。

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Ⅶ 発泡セラミックスの可能性  ケイセラパネルは「軽い発泡セラミックス」 の開発を契機に,有志で新市場の商品開発を目 指して実施した,小集団活動の結果として産 みだされた成果品です。居上氏が産業廃棄物の リサイクル化の研究過程で製品化した発泡セラ ミックスは,自然界には存在し得ない世界初の 「完全連続発泡セラミックス」26)で,発泡倍率 や製品形状の自由性から,今後各種の新市場に 拡販可能な差別化新素材です。無機質の高耐久 性に加え,極小連続空間の存在やランダムな形 状により実現化する,相矛盾する「保水性と透 水性」に優れた性能は,それらの特質が可能な らしめる広範囲な新市場,①外断熱市場,②防 水保護市場,③無灌水緑化市場,④ビオトープ 市場,⑤水質浄化市場,⑥水耕栽培基盤新市場 ……等々に有望です(図─8)。 Ⅷ 防錆 PC 鋼撚り線の可能性  スープロストランドは田口保男氏(タイムス エンジニアリング㈱代表取締役)(当時)が考案 した独創的な特許工法で,ヒエン電工㈱の千桐 技師長が製品化を実現した差別化商品です。京 都大学の六車名誉教授(当時)が呼びかけた高 耐久性構造研究会の場で,英国で発生した PC 橋の落橋事故27)をきっかけに,錆びない PC鋼 撚り線の開発に取り組み,商品の普及活動にも 小集団活動で取り組んで市場化できたもので す。RC(鉄筋コンクリート)構造ではコンクリー トがひび割れても,鋼材が錆びて切断しなけれ ば構造体の寿命は延長できます。特に,PC緊 張材によるプレストレストコンクリート構造物 はひび割れ幅も制御可能なため,貯水槽,原子 力容器,PC 橋,人工台地,PCマット基礎28) 等の分野でも世界的に普及拡大しております。 今後は,放射能で汚染された水や汚染物質の (図─6) (図─7) ───────────────────────────────── 26) 完全連続発泡セラミックス;自然界の発泡セラミックとしては軽石があり水に浮きますが,ケイセラパネルは 直ぐに沈み,浮きません。 27) PC 橋の落橋事故;高強度コンクリートと PC 鋼材で構築された橋梁が,凍結防止剤等の浸透により PC 緊張 材が切断した落橋事故。 28) PC マット基礎;コンクリートのベタ基礎に,防錆 PC ワイヤーを配置して集中加重を分散コントロールすれ ば不同沈下が抑制可能。 (図─8)

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最終処分施設にも,幅広い活用が期待されます (図─9)(図─10)。 Ⅸ コン・クリエイト工法の可能性  年号が代わって平成に移行したのを機に,当 時の金子長崎県知事の方針で新しい技術を「平 成の出島構想」として発信するため,最新技術 を発掘すべく訪欧。その際に同行した,大洋技 術開発㈱の黒瀬正行代表取締役(当時)の推薦 により技術導入したものが,この差別化技術で す。  ドーバー海峡の地下トンネルのコンクリート ひび割れ部からの浸水防止策として使用された 材料と機械27)を活用して,更に真空吸引注入 工法等の新技術を追加して,各種の RC構造物 の改修補強策として取り組んできた実績があり ます。大きなひび割れから微細なひび割れまで, 目的に応じた材料と工法を選び,強度性能や硬 化時間も調整できます。他にも,PC部材等の 連結にも使用可能となり,軽微な凹凸管と異型 鉄筋30)を活用した,注入硬化型アンカー方式 も開発されています。これらの工法は経済的で 強度性能が高いため,今後は各方面に広く活用 できます。我が国の老朽化が進み耐用年数に近 づいている我が国の鉄筋コンクリート構造物に よるインフラ施設の補修対策に,力強い味方と なり得ます。トンネルの天井板の落下事故対策 等にも,今後の応用検討が期待されます。 Ⅹ スーパーポカラの可能性  EPS 軽量盛土工法31)の弱点克服策として, 不燃・耐水・経済性等に優る,80%空隙の無筋 コンクリート PC製品が市場化されています。 最初に開発した筒型ポカラの合理化版として, 「スーパーポカラ」「ZPC工法」では形状を修 正し,分割製造・連結一体化も可能となった結果, ひび割れし難く・工期短縮・運送費軽減等の面 でも進化して,経済効果も発揮できます。これ らの製品を活用して,周辺壁の止水壁面や底盤 の浮き基礎工法化等のPC工法と複合化すれば, 他の工法に比べて格段に安くて安定性に優れた 高耐久性の構築物が建設可能となります。軽量 人工地盤・地下貯水槽・暗渠流水施設・緑化 法面基盤・砂防ダム・護岸施設・最終処分向け の地下貯留施設等にも応用できます(図─11) (図─12)。 (図─9) (図─10) ───────────────────────────────── 27) 材料と機械;2液硬化型ポリウレタン樹脂等を注入する材料と機械。主剤と硬化剤の比率は50%ずつに限定さ れ,扱い易い工法。 30) 異型鉄筋;周囲に節状の突起がついている鉄筋。コンクリートとの付着性プラス引っ掛かり効果も追加され, 一体化が強化される。 31) EPS 軽量盛土工法;軟弱地盤の盛土材として土壌より軽量な発泡スチロールが採用されているが,燃性と浮 力性予防策に出費が大きい。

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Ⅺ タフマックスの防錆評価と実績例  旧道路公団が全国の暴露試験場で実施した重 防食塗装の経年変化比較試験では,水性無機塗 料「タフマックス」の防錆塗装システムが,東 京湾横断道路の「海ほたる」の暴露試験場で参 加しています。その結果からは,従来の有機塗 装系では全て塗装面のカット部からは赤錆が著 しく発生すること,錆巾は時間に比例して増幅 傾向であることが確認されております。しかし, タフマックスの防錆塗装膜のみは錆巾が10年以 上経過後も変化していないことが確認されてお ります。代替え促進試験32)として関連性の深い N-CCT試験や温冷・乾湿繰り返し試験からも, 沖縄暴露試験6年に相当する期間以上は耐えら れること,かつ,傷が無い場合には沖縄の海岸 域でも7年以上は塗膜に損傷が発生しないこと 等も確認されております。このため今後橋梁や 水門等の重防食塗装に適するものとして,国土 交通省の新技術情報にも登録公開されています。 Ⅻ 橋梁改修塗装工事の現状  米国での鋼橋落下事故をきっかけとして,わ が国もインフラ設備の高耐久化に対する取り組 みの必要性が指摘されています。当時の具体的 対応策としては,「水性無機ジンクリッチの開発 が急務」と橋梁新聞等が呼びかけましたが,未 だに新たな参画企業は見当たらないというのが 現状です。僅かに,弊社は創立時に水性無機塗 料「タフジンクー 11」を,10年保障の VE提案 として北九州の「前田橋」の新設橋梁から着手し, 爾来12年目を経た現在も予想通りの耐候性が維 持されております。ようやくそのような成果が 認められまして,赤錆が全面に発生した橋梁の 本格的な改修塗装工事例として,山形県の「宮 の下橋」から採用が開始され,秋田県でも2橋 の試験塗装が完了して経過を観察中です。 ───────────────────────────────── 32) 代替え促進試験;暴露試験を屋内で再現して促進する実験方法は,JIS 規格に基づき㈶日塗研や各研究機関で 実施されています。 (図─11) (図─12) (図─13)(改修前) (図─14)(改修後)

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 -1 PC 工法の多様性  土木・建築の分野では,高強度コンクリート の進歩に伴い PCワイヤー等の高強度引っ張り 鋼材を緊張して構築する PC工法が,現状では 最も優れた工法としての正当な評価の下,一層 普及すべき時代が到来しています。使用目的に 応じて比較検討すれば,軽量化,大スパン化, 耐振性の向上化,高耐久性化,材工コストの低 減化等の面で,従来のコンクリート系の RC造 (鉄筋コンクリート造)や SRC造(鉄骨鉄筋コ ンクリート造)と比べても,優位性が発揮でき るようになり始めています。  -2 PC 工法の多様性  京都大学の六車教授(当時)は,昭和37年に 発生した新潟地震で転倒した RC構造の住宅団 地の基礎杭の破壊性状を調査し,杭基礎のコン クリートの圧壊現象が転倒の原因と認定してい ます。対策としては高強度鋼材で横拘束して, 耐久性の向上を図る方法を開発して発表してい ます。㈱タイムスエンジニアリングの田口社長 (当時)と協力して,高一様伸び鋼材による SD パイル33)の補強手段も発表され,今後の耐震 設計に役立ちます。  -3 PC 工法の多様性  ㈱ VSLジャパン34)の協力で発行した PCマッ ト基礎工法の技術資料は,未だ一般的には普及 していないというのが現状である。しかし,そ の有効利用性は高く,海浜地区等の軟弱地盤に おける不同沈下35)対策や浮き基礎工法36)とし ての実績は増加しつつあり,耐久性能も確認さ れて普及の時代を迎えている。特に岩盤までの 深度が深い沿岸部の杭基礎を省略して,土質調 査結果に基づく短長期的圧密性状37)の把握と, 上載荷重と PC緊張力による反発力等による浮 き基礎構造体の FEM解析結果38)で判断基準は 明確化され,パソコンの普及で取り扱い易く なっています。  地震・津波被害と対策案  三陸の津波被災地域では,漁業関係者の住ま いも高台に移転する都市計画になっています。 しかし,仕事をするのに一々,沿岸部まで車で 通勤するのは無理があると思います。また,津 波が来た際に高台まで非難するのも難儀です。 車で避難している時に津波に流されてしまう危 険性も残ります。そう考えると日中仕事をして いる際に,津波が来た時は職場から直ちに確実 に避難できる場所を確保すること,これが人命 ───────────────────────────────── 33) SD パイル;スーパーダクタイル PC パイルの略称。高靭性 PC 杭の意味。曲げ変形に強いため大地震時の水 平力抑止策に有効です。 34) ㈱ VSL ジャパン;PC 緊張システムや定着体供給会社は工法により各社ありますが,VSL 工法の場合の日本 法人の会社例です。 35) 不同沈下;地震時に液状化等で局部沈下が発生します。全体が一様に船のように上下せず,地層や基礎杭も仇 になりがちです。 36) 浮き基礎工法;北海油田の浮体構造物をヒントに,鹿児島県枕崎市漁協の魚市場建設で,海岸部の埋め立て軟 弱地盤(8t/㎡)で,幅30m全長700mのマット基礎工法の VE 提案が実績例としてあげられます。50m級の場 所打ち杭を採用しない浮き基礎工法です。 37) 圧密性状;建設物の安定確認のため,建設に先立ち地盤の試掘(ボーリング)が実施され,荷重と時間に対す る圧密特性を把握します。 38) FEM 解析;ボーリング結果から得た地盤性状を元に,上載荷重と地盤のバネ定数を加味した反力及び PC 緊 張力によるバランス制御力等をコンピューターで弾塑性応答解析すれば,短長期的に局部変形が生じし難い安定 的な浮き基礎構造の設計が可能です。

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確保の現実的な対応策ではないでしょうか。そ のためには,仕事場近辺がそのまま安全な避難 所になるような構造の建造物を地域ごとに準備 すること,これで避難所確保の問題は解決され ると思われます。今回の津波でも4階以上の高 さにいた方は,ほとんど助かっているようです。 そこで,予め3階までは津波が押し寄せてくる のを前提とした建造物の構造にしておけばいい と思います。具体策としては,沿岸部の土地は 軟弱地盤で液状化や不同沈下が起きやすいので, PCマットの浮き基礎工法にすれば経済的で安 全性も確保されます。塩害に強い PC,PRC構 造の高耐久性の立体フレームならば,耐震性も 向上して,しかも柱も耐力壁も少ない構造が可 能となるため,津波に対する抵抗性が減らせま す。避難階の下層部を津波が通過するように工 夫すれば,躯体をほとんど無傷で残すことも可 能です。それにより,災害が去った直後から, その建物を使い業務を再開できるようになるの です。そこで働いていた方は,津波の際には直 ちに4階以上に避難していれば,全員の無事が 確保できる筈です。1階が荷捌き場,2階から 3階が自走式駐車場や作業場並びに事務所や物 置場等に活用が可能です。周辺居住者の避難場 所とするためにも,定期的な避難訓練やコミュ ニティー活動の場所としても長期的な視点から 計画的に整備していく必要があると思います。 南海トラフ地震に際しても,鋼材製の津波避難 塔が計画されていますが,震災が来る前に塩害 でボロボロになってしまわないのか心配です。 錆びない構造体で,職場から上に昇るだけなら ば,安心して日中も働いていられると思います が,狭い鉄塔に多数の人が駆けつけるのは想像 しただけで無理があるように思われます。  原発問題に活路を  原状復帰に対する保証問題は,被害規模が甚 大過ぎて民間電力会社及び関連支援機構だけで は手におえないため,結局国が支援政策として 取り組むことになります。つまり,不足の費用 は全て国民の税金で負担せざるを得ない訳です。 しからば,国民全体の問題として広く叡智を求 めて,無駄な出費が発生しないようにガラス張 りで客観的な説明の下,一番いい方法で解決策 は実施されるべきです。地下から取り出した厄 介なものは,拡散しない手法で地下に戻すべき です。既述してきたように,原子力格納容器に も採用されている PCタンク技術が最も適して います。水とコンクリートとプレストレス力で 解決を図るのが最も経済的で,安心できる解決 策の筈です。PC汚染水も汚染物も同様に対応 が可能です。その前に安全な水蒸気は自然に空 に返しておけば,処分量を大幅に減らすことも できます。 ⅩⅥ 次世代への置き土産  60歳以上のベテランが,全人口の25%を占め る時代が到来しています。実学で経験豊富な元 気な世代にお手伝い頂いて,前代未聞の未解決 課題も運命共同体として取り組み,対応能力の 向上を図る必要があります。団塊の世代は日本 の宝でもあります。私達は,この団塊世代の活 力と技能を日本のインフラの高耐久化に活かす べく取り組んで参ります。 (図─15)(浮き基礎・PC 工法)

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ⅩⅦ 太陽光発電の高耐久化案  原発のトラブル対策の一環として,環境に優 しい太陽光発電装置の全国的展開が急速に進展 しています。その場合の支持架台は,圧倒的に 溶融亜鉛めっき材が多いというのが現状です。 その一方で,新しい太陽光発電施設への高耐久 化策は急務であります。関係者のほとんどがパ ネルの耐用年数には関心がありますが,それを 支える架台の耐久性には無関心で「安ければ安 いほど良い」と大半の方々が考えておられます。 しかし,当面の耐用年数の課題が20年以上では 余りにも短過ぎます。過酷な環境下でも50年~ 100年以上は防錆も保証され,支持架台は安定 的に維持される必要があります。浜岡原発の鉄 塔の実績や根北峠の同様施設の改修塗装実績を 参考に,防錆性能に優れた無機塗料の活用を検 討しないと,他のインフラ施設と同じ維持費増 大の轍を踏む危険性があります。錆びた架台の 補修を誰が行うのか? 投資家にとってはそん な予算は初めから想定外だと思われます。 ⅩⅧ イフドラⅡ 高耐久性化推進策  共産主義から自由主義まで,幅広く歴史的変 遷を観察して世界的に経済学の分野でリードさ れた世界のドラッカー博士に対して,我が国に は国民的なアイドルとして誇れる仮想世界のド ラえもんがいた。…不透明感が漂い出した今か ら将来に向けて,現代に前代未聞の難題が出現 したら,もしドラえもんならどんな打開策で切 イ フ ド ラ Ⅱ(ドラッカー;マネジメント/100分de名著抜粋) 高耐久性化推進の例 1 ・企業の目的の定義は顧客を創造することである。 ・未解決課題に対する VE 提案 2 ・プロならば,「知りながら害をなすな」 ・安全が確保できるローコスト案 3 ・顧客が何を求めているかを知り,それを提供することこそ企業のなすべきこと。 ・社会的基盤の劣化抑止策案 4 ・すでに起こった未来を見て,自分で未来を作り出せ。 ・鋼橋落下事故から防錆改良案 5 ・失敗で終わらずに再挑戦する。 ・過去の太陽光発電架台改良案 6 ・理論は現実に従う。 ・有効な実績例選別の再利用案 7 ・仕事ではワクワクドキドキしたい。 ・安全・安心業務の先駆者案 8 ・本当にやる価値がある事業に専念して,他は他に任すこと。 ・高付加価値差別化業務に特化 7 ・役割分担の明確化と実践が必要不可欠。 ・異業種交流促進で役割分担化 10 ・新たな価値やシステムを構築して社会変化をおこす。 ・高耐久性化推進業務の広域化 11 ・潜在意識の中にある商品やサービスとして形になっていないものを提供する。 ・放射能問題の削減案 12 ・歴史はビジョンをもつ一人一人が作っていくもの。 ・普及前の新技術の拡販化案 13    ・弱み克服して強みを伸ばす ・ポカラ・スーパーポカラ・ZPC 14    ・強み (得意分野の集約と伸長)(成果の上がる組織=仕事自体が喜び) ・高強度・高耐久性・防錆化案 15    ・集中 (極だった成果の追求) ・海浜地区全域の避難施設案 16    ・意思決定 (異なる意見との判別) ・活断層の影響を克服する案等 17    ・NETで距離感削減 (異業種交流・複合化促進) ・高耐久性化の連携にNET活用 18 ・新しい現実に対応するために変化し続ける。 ・放射能・津波・地震情報への対案 17 ・生きた知識,使える知識が求められる。 ・軟弱地の PC 浮き基礎や耐久化案 20 ・強みを伸ばして,生産性と生きがいを高める。 ・平成の遺産構築・次世代活用案 21 ・見て聞いて全体をとらえる。 ・すでに行った行動を基に行動し,解ったものを使う ・福島原発事故の反省と解決案 22 ・補助線として,基本と原則を使う。 ・欠けたものを探して,ニーズをとらえる。  ・世界遺産に学び海浜環境に活用 23 ・自らを陳腐化して,再挑戦。 ・仕掛けをつくる。(達成すべく目標を定める) ・築地移転・八場ダム等の代案 イフドラⅡ・高耐久性化推進策

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り抜けるのか? もしドラッカー博士ならどの ようなヒントを解決策としてアドバイスしてく れるのか? …そんな思いで,インフラの高耐 久化策のキーワードを一覧表にしたものです。 ⅩⅨ 最後に,東京オリンピックに臨んで  東京というよりも日本の底力を日本人自身が 改めて再認識し,暗いことばかり続いていた 時勢にやっと自信を回復する契機を見出したの ではないでしょうか。一方,その経済効果は 3兆円~ 150兆円まで大変アバウトな数字が歩 き出しているものの,費用の方も必要な施設の 建設のみで4,500億円とも言われており,さら に東京駅羽田空港直結の地下鉄新線等のインフ ラ整備まで実行するとなると,到底これでは収 まらないと早くも言われ出しています。こんな 中,半世紀前の東京オリンピックの際に造られ た首都のインフラの耐久年数が限界に来ていま す。首都高速羽田・横浜線の傷み具合は,笹子 トンネルの例を待つばかりでなく,専門家の間 では常に話題になっています。  恐らく大手ゼネコンでも新規施設の建設ばか りに目が行き,どう考えても,業者的にも手間 ばかり掛かって儲かりもしない老朽インフラの 修繕等に真剣に取組む組織,企業がいるとは思 えません。老朽インフラの修繕・メンテをして も誰も社会的な評価は得られないでしょうか ら。ですから,余程行政の方で,老朽インフラ への危機意識を堅持していないと,人・物・金 は,新規施設の費用に回ってしまうと思います。 また,その意識の低下は,「どうせ修繕なんて 従来通りのやり方で,決まった業者に適当にや らしておけばいい。新規施設で目一杯なんだか ら。」となりがちです。  既に,東北復興も労務費と資材費の高騰で入 札流れが続出している中,国土強靭化計画と東 京オリンピックが本格化してきます。資金は, 予算を超えて流れていく可能性が十分あります。 斯様な状況下,是非,経済的にも,性能的にも, 「いいものはいいものとして」採りあげられて いく社会体質に転化していくことを祈念するも のです。 (以上 丹野政志)

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参照

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