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こぺる No.105(2001)

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'25日(毎月1回25日発行)ISSN凹19-4剖3

1 2

2

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1

こぺる刊行会

NO. 105

部落のいまを考える⑩

同和地区住民の流出入に関する分析

の 2)

一大阪 「二

000

年部落問題調査」結果を読む一

奥田

気になること②

部落史の起源の見直しと現在の部落問題

山本尚友 ひろば⑪ 恐牛 病

山城弘

ヒロの楽書き帳

多田ヒロミ

(2)
(3)

部落のいまを考え る ⑮

同和地区住民の流出入に関する分析

2

︶ ー大阪﹁二

000

年部落問題調査﹂結果を読む

均 ︵ 大 学 教 員 ︶ 五 定住意識から見た流出予備軍像 生活実態調査票では、﹁あなたは、これからもこの地 区に住みつづけたいと思いますか﹂という質問︵問

F

一 一 ︶ に よ り 、 地 区 住 民 の 定 住 意 識 を 問 う て い る 。 回 答 結 果は表ロのとおりであるが、このうち﹁できれば地区外 に引っ越したい﹂との選択肢を選んだ七九七人の回答者 を流出予備軍として受け止め、これらの人々の特徴を明 らかにする中で、流出者層推定の補完デlタとしたい。 表日は、年齢・学歴・年間世帯総収入の各階層別に見 た定住意識の状況である。網掛けをした欄が流出予備軍 であるが、年齢階層では﹁二Ol二九歳﹂の一七・六% を ピ

1

ク に 、 ﹁ 三 O l 三 九 歳 ﹂ ﹁ 一 五 l 一 九 歳 ﹂ ﹁ 四

01

四 九 歳 ﹂ の 順 に 高 く な っ て い る 。 逆 に 、 ﹁ 住 み 続 け た い ﹂ と し た 定 住 志 向 層 は 、 ﹁ 五 O i 五 九 歳 ﹂ 六 一 ・ O % 、 ﹁ 六 O I 六 九歳﹂七七・六%、 ﹁ 七

O

歳 以 上 ﹂ 四・四%と、高齢者層で極めて高くなっ ている。学歴階層では、学歴が高いほど 転出希望率は高くなっている。逆に﹁住 み続けたい﹂とした定住志向層は、﹁中 学校まで﹂の階層が六八・九%と他の学 歴 階 層 が コ 一 O % 台 に あ る こ と に 比 べ て 飛 びぬけて高い。﹁若年層および高学歴層 の流出﹂という流出者像の推定と同様の 結果が示されており、こうした傾向が今 後 も 続 く こ と を 示 唆 し て い る 。 人 1 117 1.5也 できれば地区外|今はまだ吾亦司ぞ百億二不萌 に引っ越したい!ない 4,128I 797 52.9弘I 10.2弘 2,763 35.4首 定住意識 .住み続けたい 総 数 こぺる 表12

(4)

表13年齢・学歴・年間世帯総収入階層別定住意識 総数 住み続けたい 総数(人) 7 805 4128 2,763 117 100.0目 52.9% 35.4% 1.5也 15

19歳 497 105 315 9 100.0% 21.1% 63.4目 1.8% 20

29歳 1142 676 14 100.0% 59.2百 .1.2% 年30

39歳 1,122 370 563 15 100.0% 33.0也 50.2唱 1.3% 齢 40

49 歳 1 116 534 427 22 階 層 100.0% 47.8目 38.3弘 2.0%

50

59歳 1 504 917 434 22 100.0% 61.0首 28.9% 1.5% 60

69歳 1 403 1 089 228 22 100.0弘 77.6% 16.3% 1.6出 70歳以上 1 021 120 13 100.0% 11.8弘 1.3% 中学校ま 4,014 2 766 942 40 学 で 100.0目 68.9出 23.5% 1.0% 2,383 926 1,095 26 高校まで 100.0% 38.9百 46.0% 1.1% 短大以上 875 311 417 15 歴 100.0% 47.7% 1.7百 在学中・不 533 125 309 36 明 100.0百 23.5首 58.0% 6.8百 200万円未 2482 1 661 637 27 満 100.0判 66.9% 25.7% 1.1% 200

400 2,010 1 016 744 31 年 万 円 未 満 100.0出 50.5% 37.0百 1.5% 間 400

600 1,320 555 566 15 世 万 円 未 満 100.0出 42.0% 42.9時 1.1時 帯 600

800 716 311 291 7 総 万 円 未 満 100.0% 43.4% 40.6略 1.0首 収 800

1000 465 216 200 5 万円未満 100.0% 46.5也 43.0百' 1.1唱 入 1000万円 484 230 202 2 以上 100.0% 47.5% 41.7百 0.4% 不明 328 139 123 30 100.0% 42.4% 37.5% 9.1%

(5)

また年間世帯総収入においては、﹁六001八OO万 円未満﹂で一四・九%、﹁四OOI六OO万円未満﹂で 一三・九%と高くなっており、中堅所得階層において転 出希望が高いことがわかる。逆に、﹁四OO万円未満﹂ の 階 層 に お い て は 定 住 志 向 が 五 割 を 超 え て い る 。 ..J.『 ,\ 公営住宅法の改正と流出入問題 一 九 九 六 年 に 公 営 住 宅 法 が 改 正 さ れ た 。 こ れ に よ り 、 第一種・第二種の区分が廃止され、借り上げ公営住宅や 買い上げ公営住宅が可能となるとともに、グループホー ムとして公営住宅が活用できるようになるなど、多様な 形 態 の 公 営 住 宅 が 供 給 可 能 と な っ た 。 しかし他方で、応能応益家賃制度が導入され、入居資 格も原則として収入分位︵世帯別の収入ランク︶二五% . 以 下 の 住 宅 困 窮 者 で あ る こ と が 徹 底 さ れ は じ め て い る 。 これは年収約五一O万円︵一九九七年度大阪府、給与所 得者が一人で同居者が三人の世帯の場合︶にあたる。た だし五O歳以上の高齢者や障害者世帯等の裁量世帯にお いては収入分位四O%以下までが入居資格として認めら れるが、これらの基準収入を超え、収入分位五O%超で 近傍同種の民間住宅並みの家賃となっていく。なお同和 地区の公営住宅においては、現在﹁建設省住宅局長通達 ︵ 一 九 九 六 年 八 月 三 O 日 ︶ ﹂ に よ り 、 負 担 調 整 期 間 の 設 定 が行なわれているが、早晩この基準どおりの家賃水準と なっていく。都市型部落である大阪においては、住宅対 策 の 多 く が 公 営 住 宅 の 建 設 に よ っ て 担 わ れ て き て お り 、 公営住宅法の改正はじわりじわりと大きな影響を与える こ と が 予 想 さ れ る 。 今、公営住宅の入居基準である﹁収入分位

W

︵ 二 0 ・ 01二五・O%︶﹂とその周辺所得層﹁収入分位

E

︵ 一 五 ・ 0 1 二 0 ・ 0 % ︶ ﹂ ﹁ 収 入 分 位

V

︵ 二 五 ・

o

l

一 一 一 一 一 ・ 五%とを﹁移行ボーダー層﹂とし、それ以下の﹁収入 分 位

I

︵ 0 ・ 0 1 一 0 ・ 0 % ︶ ﹂ ﹁ 収 入 分 位

E

︵ 一 0 ・ 0 1一五・O%とを﹁公営住宅基準対象層﹂、それ以上の ﹁ 収 入 分 位 羽 以 上 ︵ 三 二 ・ 五 % 以 上 ︶ ﹂ を ﹁ 市 場 並 家 賃 移 行対象層﹂と設定する。これらの階層が、現在の入居世 帯の年間世帯総収入および年齢階層別に見たとき、どの ように分布しているのかを図示したのが図

2

で あ る 。 こべる これによると、現入居者における﹁四五

l

五 四 歳 ﹂ の 3

(6)

図2 年齢階層別年間世帯総収入別に見た収入分位類型分布 . 収 入 分 位I・ II @収入分位R ・ IV•V 。 収 入 分 間 以 上 ・ 公営基準対象層 移行ボーダー層 \ノ市桶並家賃移行対象贋 800万円∼ 600∼800万円 400∼600万円 100∼200万円 100万円朱満 年齢階層および﹁凹

001

OO万円﹂の年間世帯総収 入階層を中心に、家賃上昇の影響を受ける世帯が多く発 生し、これまでの同和向け公営住宅における低家賃のメ リットが失われていくことが推測される。既に見た通り、 300∼400万円 これらの階層は定住意識においても﹁できれば地区外に ∼34歳以下35∼44歳45∼54鎗55∼64歳 65歳以上 (注)円内の数字は世帯手数 引っ越したい﹂意識を持っている階層であり、若 年・中年で中堅所得階層の流出に拍車がかかるこ と が 予 測 さ れ る 。 他方、それによって生じる空家には、収入分位 二五%以下の低所得階層が政策的に誘導され、同 和地区における極めて高い公営住宅比率を勘案す れば、地区全体が低所得世帯郡化していく可能性 が高い。公営住宅が、﹁安定層﹂を排出し、﹁不安 定層﹂を吸引するという﹁ポンプの役割﹂を果た し、これまでの流出入傾向を加速させかねないと い え る 。 七 流 出 入 実 態 が 提 起 す る も の ①同和地区住民は激しく入れ替わっている。大 阪における現在の同和地区住民のうち、原住者︵生まれ てからこのかたずっと現住地区に住んでいる人︶は三 二・O%である。また、来住者の二二・一二%は現住地区 生まれの

U

l

ンであるが、五四・二%は現住地区に来 るまで同和地区と関わりを持っていなかった人々である。

(7)

現在の同和地区住民は、このような人々によって構成さ れている。同和地区人口の推移を見れば、こうした来住 者に相当する以上の同和地区住民が流出していることが わ か る 。 ②来住者にあっては、原住者に比べて﹁高齢者単独世 帯﹂や﹁高齢夫婦世帯﹂、﹁母子世帯﹂の比率が高い。ま た、学歴構成や世帯収入も相対的に低く、就労において もより不安定な状況に置かれている。同和地区の生活実 態はなお多くへの困難を抱えているが、来住者はその中で もより厳しい階層を形成している。 ③これに対して同和地区からは、年齢的に若く、しか も学歴においては﹁中等教育修了﹂以上の相対的に高い 学歴階層の者が多く流出していることが推測される。こ の傾向は、定住意識から見た流出予備軍においても同様 の結果を示しており、同じ傾向が継続することを示唆し ている。同和地区における公営住宅の比率の高さを考え る時、公営住宅法の改正がこうした事態に拍車をかける こ と が 懸 念 さ れ る 。 ④若年層および高学歴層の流出現象は過疎地にも見ら れる社会現象である。しかし同和地区の場合これと異な るのは、社会的な困難を持つ人々が、これらの階層と入 れ替わるように流入している点である。まさに同和地区 は、厳しい生活実態の市民を吸収し、安定層を排出する という﹁漉過機能﹂的役割を果たしているといえよう。 ⑤歴史的に蓄積されてきた同和地区の厳しい生活実態 の上に、社会の諸困難が来住者とともに流れ込み続けて いる。こうした事態に対して、これまで行政は同和対策 事業をもって、また、地区住民は自らの自助努力を積み 重ねる中で、生活実態の改善を進めてきた。しかし、固 定的な住環境改善の課題などとは異なり、教育や就労と いった属人的なソフトの課題は、流出入という﹁横の変 化﹂の中にあって、その成果を不安定なものにしている。 ⑥同和地区に見られる地区住民のこうした流出入構造 は、﹁実態的差別﹂を根本的に解消するための取り組み に、次の基本課題を提起している。第一は、個人給付的 な施策によって対症療法的・応急的に生活実態の改善を 図る手法は、一時的にその成果を表すといえども、問題 の根本的な解決にはならないということである。同和地 区の生活実態に一定の改善が進展してきた今日、むしろ 求められるのは、このような住民の移動により社会的な こべる 5

(8)

困難を持つ人々が新たに同和地区に流入してきても、そ れに柔軟に対応し得る﹁自立支援のしくみづくり﹂とい う課題であろう。生活相談活動の充実、就労や生活の支 援策、ケアマネジメント機能の強化、サポートネット ワークの形成など、地域生活安定化のシステム構築が求 められる。第二は、同和地区住民に表現されている様々 な生活課題を、同和地区内外に広く共通する人権行政の 課題として受け止め、それを社会的に改善、解決してい くために、現行施策の改革や必要な新規施策の導入に建 設的に取り組むことである。部落の生活実態に市民の人 権の課題を発見し、これを人権行政の具体的取り組みへ と高めていく施策展開が求められる。第三は、同和地区 における公営住宅の運用のあり方を﹁まちづくり﹂とい う観点から検討を進める課題である。同和地区の公営住 宅は﹁部落解放のまちづくり﹂の中心的課題として建設 されてきた。その社会的意味を踏まえ、新たな公営住宅 法のもとで、多様な住民が住み続けることのできる、そ んなまちづくりを如何に進めていくのか。総合的な﹁ま ちづくり﹂の視点からの、公営住宅の運用が求められる。 ⑦こうした基本課題を一つ一つ前進させていくとき、 はじめて﹁実態的差別﹂の根本的解決の展望が開かれて くることを地区住民の流出入の実態は教えている。なお 流出入問題は、ここで取り上げた生活実態面からだけで はなく、意識やニ

l

ズなど心理的側面からも探求される 必要がある。また大阪以外の状況との比較検討も必要で ある。後日の課題としたい。 ︵ お わ り ︶ 参 考 一 大 板 府 ﹁ 二 000 年部落問題調査﹂報告書等一覧 ︵ い ず れ も 二 OO 一 年 三 月 ︶ − 報 告 書 関 係 ・ ﹁ 向 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 報 告 書 ︵ 生 活 実 態 調 査 ︶ ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 委 員 会 委 員 分 析 報 告 書 ︵ 生 活 実 態 調 査 ︶ ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 報 告 書 ︵ 同 和 地 区 内 意 識 調 査 ︶ ﹂ ・﹁同和問題の解決に向けた実態等調査委員会委員分析報 告書︵同和地区内意識調査こ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 報 告 書 ︵ 府 民 意 識 調 査 ︶ ﹂

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告 書 ︵ 府 民 意 識 調 査 ︶ ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 委 員 会 委 員 分 析 報 ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 報 告 書 ︵ 差 別 事 象 調 査 ︶ ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 委 員 会 委 員 分 析 報 告 書 ︵ 差 別 事 象 調 査 ︶ ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 報 告 書 ︵ 被 差 別 体 験 調 査 V ﹂ 概 況 調 査 ︶ ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 報 告 書 ︵ 同 和 地 区 ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 報 告 書 ︵ 事 業 実 績 調 査 ︶ ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 と め ﹂ − 統 計 表 関 係 既存報告書のま ・﹁同和問題の解決に向けた実態等調査生活実態調査 統 計 表 ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 調査統計表﹂ ・﹁同和問題の解決に向けた実態等調査 同和地区内意識 府民意識調査 統 計 表 ﹂ ・ ﹁ 同 和 問 題 の 解 決 に 向 け た 実 態 等 調 査 生活実態・同和 地 区 内 意 識 ・ 府 民 意 識 調 査 統 計 表 ︵ 補 表 ︶ ﹂ こペる 7

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気になること②

部落史の起源の見直しと

現在の部落問題

山本尚友︵世界人権問題研究センター研究員︶ 昨年の二月から一一一月にかけて、京都市は﹁人権問 題に関する市民意識調査﹂をおこなった。京都市は一九 八

O

年︵昭和五五︶から五年ごとに﹁同和問題意識調 査﹂をおこなってきたが、今回は﹁人権問題意識調査﹂ に調査内容を切り替えたことになる。調査の本報告はま だ発表されていないが、今年の春に発表された﹁中間報 告 ﹂ は 興 味 深 い 内 容 と な っ て い る 。 ﹁次にあげた人権問題について、どの程度関心があり ますか﹂という問いに対して、﹁女性の人権問題﹂以下 一 一 一 の 項 目 に つ い て ﹁ 関 心 が あ る ﹂ ﹁ 少 し 関 心 が あ る ﹂ ﹁関心がない﹂のいずれかを答えるという質問が用意さ れていたが、その結果を見るとひとくちに人権問題とい っても、大きく二つあるいは三つの群れに分れているこ と が 了 解 さ れ る の で あ る 。 ﹁関心がある﹂という回答を見ると、女性・子ども・ 高齢者・障害者の人権問題は四二

i

五 一 一 一 % 、 同 和 問 題 お よび在日韓国朝鮮人・外国人労働者・アイヌ・刑を終え て出所した人・婚外子の人権問題は一九

l

二 五 % 、

HI

V

感染者はその中間の三二%という結果になっている。 一 一 一 項 目 目 は ﹁ そ の 他 の 人 権 問 題 ﹂ と な っ て い る の で 、 こ こ で は 検 討 対 象 か ら は は ず し て お く 。 女性の人権問題以下の四項目と同和問題以下の六項目 との聞に、関心度において倍ほどの聞きが見られるので ある。わたしは寡聞にして知らなかったのだが、人権問 題の調査にたずさわっている人には、このことは以前よ り衆知の事実であったようで、たまたま最近眼にした福 岡安則氏の﹁人権啓発のターゲット﹃人権問題に関す る 住 民 意 識 調 査 ﹄ か ら | ﹂ ︵ ﹃ 季 節 よ め ぐ れ ﹂ 一 六 二 号 、 二

OO

一年七月、京都解放教育研究会︶でも同様のこと が 指 摘 さ れ て い た 。 この論考は一九九九年に千葉県君津市・関宿町・佐倉 市で実施された、﹁人権問題に関する住民意識調査﹂を 紹介したもので、千葉での調査においても種々の人権問 題に対する住民の関心度ははっきりと二つに別れていた。

(11)

ひとつは福岡氏が﹁身近に感じられやすい人権問題﹂と 名づけたもので女性・子ども・高齢者・障害者などから なっており、もうひとつは﹁ひとごとと感じられやすい 人権問題﹂で同和・アイヌ・在日韓国朝鮮人・外国人労 働者などであった。この調査でも

HIV

感染者の人権問 題は両者の中間に位置していた。 わたしがこのような意識調査の結果に注目するのは、 実はかねがね同和問題と在日韓国・朝鮮人問題を混同す る傾向が日本人には強くあるなと感じていたからである。 かくいうわたし自身、高校時代の生徒会活動のなかで朝 鮮 高 校 と 一 一 一 年 間 定 期 的 に 交 流 し 、 そ の 後 は 友 人 を 通 じ て 部落問題を知って、両者が社会集団として異なる存在だ ということを知ったのちも、イメージの中では長いこと 両者は同じ色合いのものとして、わたしの頭の中に存在 し つ づ け て い た 。 また、大学で同和問題や人権問題を教えるようになっ ほ ほ 一

O

年近くに渡って講義を受けた生徒に、 れ ∼ シ ﹂ 義 口 、 ﹁部落問題についてあなたの思うところをかいてくださ い﹂というテ

l

マで試験をおこなってきた。すると毎年 ほほ一割から三割近い生徒が、部落と在日韓国・朝鮮人 を頭から混同して答案を書いてくるのである。同和問題 の講義であっても、同和問題と在日韓国・朝鮮人の問題 がどのような点で共通し、どのような点で異なっている のかということを、最低一時間は話しての結果がこうで あ っ た 。 当初は話し方がまずいのかと思い、様々に工夫をして みたが結果は変らなかった?そして結局、生徒たちの頭 のなかで部落と在日韓国・朝鮮人は、同じ箱にしまわれ ているのだと考えることにしたのである。それを、ひと つやふたつの知識が増えたぐらいでは、別々の箱を作ら せることは難しいのだと。 このような経験は、外国人に部落問題の説明をすると 十人が十人とも少数民族の問題と同一視するという、人 からも聞き自分で J も何度も体験したことが、新しい意味 をもって蘇ってくるのである。最近はめっきり少なくな っ た が 、 七

0

年代から八

0

年代にかけて狭山闘争が激し く闘われていた頃、外国から部落問題を知りたいという 研究者や社会運動家がよく訪れていた 彼らに一、二時間の時間で部落問題の説明をするわけ だが、通訳が入るため実質的には半時聞から一時間ほど こぺる 9

(12)

の時間しかなく、かなり端折った話にならざるを得ない ということも関係しているだろうが、話し終わって出る 質問の多くは、なぜ部落民が同じ民族であるにもかかわ らず、差別されるのかというものであった。これは彼ら が部落問題の中に、自分たちの社会にあり彼らにとって も理解しやすい、少数民族に対する差別と同質のものを 感じとったということだろう。 このような被差別部落の社会的地位について明治初期 の人びとは、﹁社会外﹂﹁人外﹂という言葉で表現してい たということは、すでに別のところで述べておいたが ︵﹁差別という言葉の意味をめぐって﹂﹃同和はこわい考 通信﹄四一・四二号一九九

O

年 一 一 ・ 一 一 一 月 ︶ 、 そ の 時この人外視が近代社会の発明品ではなく、近世さらに 中世にまで遡って確認される、非人に対する異種観に距 胎するものであると思われることにもふれておいた。 近年の部落史研究において、近世政治起源説の見直し がすすめられ、中世あるいは古代末期から姿をあらわす 非人身分に、被差別部落の直接の淵源を求める見解が広 く支持されるようになっている。そして、非人身分が生 まれてくる直接的なきっかけについてわたし自身は、延 長五年︵九二七︶に制定された延喜式のなかに見える、一 穣れが二疋期間人間の体に存続するとともに、他者にも一 伝染するという規定に求められると考えている︵﹁古代一 末期における非人身分の生成﹂﹃被差別部落史の研究﹄一 岩 田 書 院 、 一 九 九 九 年 ︶ 。 綴れが他者に伝染するという考えが生まれたことによ一 って、有力貴族や神官・僧侶など当時の政治宗教観念に一 よ り 、 被 れ に 触 れ て は な ら な い と 考 え ら れ て い た 人 々 は 、 − 数日以上残存すると見なされた動物の死骸などの撮れ除一 去に、日常的に仕えている人とは別の人を頼む必要にせ一 まられ、その求めに応じたのが都にいた乞食たちであっ一 た と 考 え る の で あ る 。 しかし、これは直接のきっかけであって、乞食が非人 と呼ばれるほどに極度の疎外視を、つけた要因は別のとこ ろに求められなければならない。この時、わたしがかね がね注目しているのは、平安末期という非人身分が生ま れた時代が一種の浮遊感を漂わせた社会状態にあったこ と で あ る 。 ひとつの社会は、その社会の中にいる他者によって自 らを知ることができる、ということは古くはマルクスの

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﹁ユダヤ人問題によせて﹂、近くは文化人類学の山口昌男 氏によって説かれてきたテーゼであり、これが部落問題 を理解する上で重要なカギとなることは、すでに多くの 論者が説かれている。わたしは、平安末期というのは、 この他者に該当する存在を欠いた社会ではなかったかと 思 う の で あ る 。 延暦二二年︵七九四︶の坂上田村麻呂の征夷により、 隼人・蝦夷などの周辺所属が大和朝廷に帰順し同化して いたこと。また、律令体制の導入にともなって制度化さ れた奴蝉制度も、八世紀に入ると良民との通婚や逃亡に よって解体がはじまり、九世紀半ばには制度としては解 体しており、社会の周縁を形成する明確な指標を欠いた 状 態 に 一

O

世紀以降の日本はあったと見られるのである。 また、これに寛平六年︵八九四︶菅原道真の建言によ って遣唐使が廃止されて以降、正式な外交関係が途絶さ れ、日本のなかに対外国家・社会への意識が希薄化され、 その意識が極度に内攻していった事情も加えなくてはな らないだろう。このような諸情勢のもとに、平安末期に 物を乞うという行為によってすでに差別的な視線にさら されていた乞食たちが、穣れというものと結びつくこと によって、極度の疎外視を受けるようになり、社会の中 の他者と見なされるようになったのではないかと考える の で あ る 。 言うまでもなく、まだこれは仮説に過ぎないが、もし これが事実をいくらかでも反映していたとすると、被差 別部落の社会的位置はその出発点から現在まで、基本的 には変更を受けることなく存続していたという見方が有 力となってくるのであるが、これは同時に部落差別の理 解にも影響を与えざるをえない。というのは、これまで 多くの論者は部落差別の原因について、種々の社会的そ して時代的要因をあげてきたが、それらの要因はまった く関係ないとは言えないものの、従属的なものにならざ るをえないからである。 新しい時期に入ったと言われる部落問題を理解するう えで、歴史が教えてくれるものは、まだまだ少なくない と い え る だ ろ 、 っ 。 こぺる 11

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ひろば⑪

恐牛病

山城弘敬︵児童厚生員︶ 九月十日千葉県で発見された狂牛病は、じわじわと日 本全体をパニックに巻き込んだ。イギリスで発病した牛 の画像と、﹁脳が溶ける﹂という解説は、人々を怯えさ せ、食卓などから牛肉の姿が消えた。 日本で発見されたのは、たった一頭の牛にすぎない。 ス ク レ

l

ピーや炭症病・口蹄疫など、すでに日本で発生 している家畜の伝染病とは、比較できないパニックが広 がった。この人々の反応を、恐牛病と呼びたい。

狂牛病の危険性 狂牛病が人に感染し、新型ヤコブ病として発症する可 能性は、きわめて低い。イギリスでは、牛一八一二五五 頭 の 発 病 と 一

O

七人の死者である。この人数は、現在の 数であって、潜伏期間の長さを考え合わせれば、さらに 拡大することが予測される。それを数万の単位と予測す る向きもあるが、発症数の増加傾向から、せいぜい千人 でとどまるという予測が現実的だろう。 今回の千葉での一頭に、この後どれほどの数が加えら れるか不明だが、その数はイギリスのそれと比べれば極 めて少ない数だろう。毎年一万人近くもの人命を奪う交 通事故と比べれば、狂午病の脅威は小さいものといえる。 しかし危険性がゼロでない限り、これを回避しようと するのは、当然のい心理である。問題は、この回避のため に必要な情報が、正確に伝わっていないことだ。 まず狂牛病のリスクを計算するための式を考えてみよ う。これには、四つの要素が存在する。この四つの掛け 算の結果が、狂牛病のリスクとなる。 第一の要素は、その牛の産地である。

EU

は、世界各 国を四分類している。狂牛病の発生の危険性がほとんど ない因。発生の可能性があるが、発生が確認されていな い因。少数の発生が確認されている因。そしてイギリス のように多数の発生が確認されている国である。 こ の 分 類 は 、

EU

圏に対して牛肉を輸出する国の安全 度の審査だ。各国の申請に基づく。したがって、未申請 の ・ 国 も 発 生 の 危 険 性 が あ る 固 と 思 っ た ほ う が よ い 。 第二の要素は、牛の部位別の危険性である。同じく

E

U

は、感染性について部位別に、高度・中度・低度・な しの四分類をしている。日本の政府が﹁特定危険部位﹂ としているのは、高度感染性部位の全部と、中度感染性

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部位の一部である。他の部位が安全であるわけではない。 第三の要素は、処理方法である。これには、少なくと も三つの意味がある。一つは、プリオン不活性化のため の処理方法。もう一つは、話題となっている牛の枝肉の 背割りなど、加工に当たって危険部位が他の部位に付着 する可能性のある処理の問題。最後の一つは、同じく加 工によってプリオンが濃縮・もしくは希釈されるという 処理の問題である。 第四の要素は、摂取方法とその量である。且一について は、摂取量と潜伏期聞が反比例することがわかっている。 また、摂取方法で思いつくのが、経口摂取である。だ がこれ以外に、体内に埋め込まれて摂取されるものもあ る。こちらの方が、はるかに多く摂取され危険だ。生分 解性の手術糸や手術に用いられる器具感染が問題となる。 これらの要素によって推定される狂牛病の危険性は、 当然ながら確率の問題として扱われる。すなわち危険/ 安全に二分されるわけではなく、様々な値をとる危険性 として表現されるにすぎない。

混乱する危険性の判断 だがこの間の経緯を見てみると、これら四つの要素を 冷静に分析するという姿勢がほとんど見られなかった。 危険/安全の境界線を引くにあたって、矛盾する基準が 入り乱れ、より混乱に拍車をかけた。 これを、プリオン不活性化の方法で見てみよう。農水 省は、肉骨粉などの危険性を判断するのに、千度以上の 加熱を基準とし、これに満たぬものの流通・使用を禁じ て い る 。 環境省は、肉骨粉などの焼却処分に、当初八百度・四 時間加熱を条件とした。もっとも数日でこれを十五分に 短縮した。これは温度・時間ともに、焼却炉の能力から 逆算したにすぎないが、それにしても一つの基準、だろう。 厚労省には、二つの基準がある。一つは食品などに関 す る 基 準 で 、 一 三 一 一 一 度 、 三 気 圧 、 二 十 分 加 熱 と い う

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の基準を準用している。もう一つは、医原性のヤコブ病 対策で使われている基準だ。これは、一一一二度、一・二 気圧、二十分加熱で、医療器具の消毒を行っている。 国の各部署が、同じ問題について、異なる基準で対応 することは珍しくもない。しかし、人間の食料に適用さ れる基準が、牛の飼料に適用される基準より低いなど、 明らかに矛盾した基準がまかり通っている。 ちなみに、肉骨粉と表現されているものには、これ以 外に蒸製骨、焼成骨、骨炭などがある。蒸製骨は百七十 こぺる 13

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度、五気圧、二時間加熱を行っている。焼成骨・骨炭は 七百度以上の加熱だ。どれも現在も流通・使用が禁じら れ て い る 。 このような矛盾は、処理方法の違いなどについても現 れる。再開の方向であるとはいえ、学校給食で牛肉の使 用が中止されていた。だがその一方で、ピ

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フエキスな どは使用されつづけていたケ

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ス も 多 い 。 牛肉はそもそも、感染性のない部位である。背割りな どの処理によって、二疋のリスクが加えられるものの、 牛の産地をオーストラリアなど安全な固に限定すれば、 ニれも回避できる。そもそも学校などでは、輸入肉を使 っ て い た の だ か ら 。 他方ビ

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フエキスは、低度感染性の骨髄などから作ら れる。しかも、骨の主成分である燐酸カルシウムなどを 除去する処理を行うから、。フリオンは百倍以上に濃縮さ れる。肉に比べて、極めてリスクが高い。 この危険性が指摘されるようになってから、各食品 メーカーは、安全性の

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に努めている。しかしその論 拠は、﹁安全な国の材料を使っている﹂にすぎない。あ げられた国の中には、アメリカなど狂牛病の発生は確認 されていないが、発生の可能性のある国も含まれている。 何よりも不思議なことは、どのメーカーも国内産のエキ スを使用していないと主張していることだ。日本で生産 されたエキスは、どこへいったのだろうか?

混乱の推移

恐牛病は最初、牛肉に対して向けられた。学校給食な どでの牛肉の不使用の動きが、これに拍車をかけた。次 いで、ビーフエキスなどの食品添加物に対象が広がりか けたが、牛肉ほどにはなっていない。 十月に入って、医薬品や化粧品に対象が広がった。二 日付の厚生労働省医薬局長通達に基づいて、各メーカー などが当該製品の回収を﹁自主的﹂に開始した。十一日 から二五日までの間仁回収対象となったものは、四三六 品種である。正確にカウントマきないが、数千品目、数 千万点以上が対象となっている。 厚労省もさすがに、二九日になり﹁未発生国の牛原料 の化粧品、在庫は売ってよい﹂と方針転換した。国別・ 部位別・処理別の危険度を加味するようになったといえ る。だがその裏では、非常に深刻な事態の存在が判明し ている。回収品の中には、手術糸も数多く含まれており、 フランスやドイツ・イタリアといった狂牛病がそれなり の数発生している固からの輸入原料による製品である。

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材料には、﹁特定危険部位﹂指定の回腸などが含まれる。 対象が架空の脅威から、現実の脅威に移行しながら、 パニックは継続していく可能性がある。

化製業

おそらく今回の騒動を通じて、はじめて牛が単に食料 となっているだけではないことを知った人も多いだろう。 牛由来・家畜由来の素材は、医薬品・化粧品に限らず、 極めて幅広く利用されている。この事実の一部に光が当 た る こ と と な っ た 。 だが、この要にある化製業者は、﹁悪名高い肉骨粉の 製造業者﹂との認知にとどまっている。これは、農水省 。の失政の尻拭いを押し付けられている形だ。農水省は今 年一月まで、ヨーロッパからの肉骨粉の輸入を認めてい た。その量は十万トン近くであり、危険性は明白であっ た 。 この責任逃れのためか、九月以降まったく正反対の姿 勢に転じ、異様に厳しい基準で政策を行い始めた。 その結果、安全と思われる圏内産の肉骨粉、さらに安 全であると断言できる蒸製骨などを製造する業界全体が、 存亡の危機に直面している︵現時点でいえば、同じ材料 を飼料・肥料用に加工することは禁じられているが、人 間の食用への加工は続行している。大きな矛盾ではある が、後者への利用比は、極めて低く、業界にとっての困 難 性 は 大 き い ︶ 。 日本の化製業の多くは、江戸時代の死牛馬の処理に源 を発している。食肉産業の初期にはその成長を支え、産 業技術の発展の中でも、様々な技術革新を取り入れるこ と で 生 き 残 っ て き た 。 ﹁食肉産業における完全なリサイクル﹂を実現してき たにもかかわらず、その実態としては産業廃棄物業者と して扱われてきた。今回千葉で、狂牛病の可能性があっ たにもかかわらず、その事実も告げられず、﹁敗血症の 牛﹂として処理を押し付けられたのも、化製業者である。 そうした実態が明らかにされず、逆に本当の産業廃棄 物業に追いやられようとしている姿を見ていると、かつ てその産業に従事したものとして、心が痛む。関連する 産業の歴史や役割・実態、そして相互の結びつきをトー タルに把握さえしていれば、今回のごとき混乱は回避さ れたものとの思いもあり、残念だ。さらに、この問題に 注 目 し て い き た い 。 詳しくは左記アドレスをご参照ください。

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ヒ口の楽書き帳 子どものころ思いを馳せていた新しい世紀を迎え て最近よく考えるのは、﹁伝達手段と人﹂というこ と。たとえば昔は町内に一台といわれた電話が一軒 一台になり、それが今では一人一台になろうとして いる。子機にときめいたのがウソのよう。少し前、 街で三人ならんで歩いている男の子たちがそれぞれ 携帯電話でしゃべっている姿を見たことがあります。 あたり前になりつつある光景、だけど、なんだか異様 な感じでした。たしかに常識は時代や環境によって 移り変わっていくものでしょう。でも善し悪し、便 不便じゃなくて、︿使い方﹀を考えてしまいます。 ﹃罪と罰﹄を読んだときに、登場人物たちが予告 なしに直接家に訪ねていく場面で、﹁えっ?なん で つ 失 礼 じ ゃ な い の 円 一 ﹂ と 思 っ た こ と が あ り ま す 。 大正時代の版画家田中恭古展で、﹁

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月×日伺い申 し候﹂とか﹁

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月×日の折有難うござゐました﹂と いったハガキを観たときも電話がなかった時代を再 確認させられるとともに、なんでもかんでも電話で 伝えなければならないと思い込んでいる自分に気づ か さ れ た 感 じ で し た 。 ハ ガ キ で も

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で も

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ルでも、大切なのは﹁ありがとう﹂とか先方を思い やる心であって、そういう心を伝えることなんだろ う と 思 い ま し た 。 私は携帯電話やパソコンは持っていないから、伝 ぇ、伝えられる手段は限られているけれど、現時点 では十分、事足りています。現在の伝達手段を造り 出した人たちは、遠方へ長時聞かけて出向かなくて も身近に距離を感じないで触れあえるようにと考え てくれたのかもしれない。としたら古くからある札 節とあたり前になりつつある常識とを見つめなおし 問いただして統合していくべきじゃないかなあと思 う ん で す 。 ︵ 多 田 ヒ ロ ミ ︶

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鴨水記 マ先日、ある人から曽野綾子﹃私日記 1 な ら 運命は均される﹄︵海竜社、

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・ 1 ︶ の一節について感想を聞かれました。曽 野さんは﹃サンデー毎日﹄に連載してい た﹁私日記﹂の﹁九八年五月十九日の部 分は、どうしても載せられない、という ことで、連載は中止された。私は一九五 四年から小説を書いてきているのだが、 戦後の新聞が言論の自由を守ったなどと いうのは嘘だということを体験として言 うことができる。今またひとつ、ここに 実例ができただけのことだ﹂と書いてい る 。 マそして九八年五月十九日の部分には ﹁私は東京生まれ、東京育ち。その個人 的な暮らしの中で、被差別部落に関して 話題が出た記憶がない。︵略︶東京の日 常的な暮らしでは、交遊、就職、結婚な どあらゆる面で、部落問題が意識や話題 に上ることがない。学校や、女性同士の 通俗的な場での、陰口、噂話にも出ない。 しかしなぜか東京には部落問題がない、 と一言、っと機嫌が悪い人がいる。喜んでく れでもいいのではないか。︵略︶今まで、 私が東京には部落問題は︵問題になるほ ど︶ない、と一百うと、﹁ないということ はない﹄と言葉尻を捕らえられる。現に どこそこには、どういう町があって、そ こに住んでいる人はどういう職業につい ていて、それがすなわちその証拠である。 曽野綾子は知識がないだけで、部落問題 がないわけではない、というわけだ。ど うして差別問題を是正しようとする人は、 こうも差別を知らせること、教え込むこ とに熱心なのだけ。それは東京の住人に 対するこの上ない非礼で、私はそれをず っと我慢し続けてきた。彼らこそ、差別 の急先鋒、差別を知らない人にも差別の 仕組みと感覚を教え込む元凶だろう。 ︵略︶知らない人に、同和教育だけはし てほしくない﹂とある。一読、﹁典型的 な﹃寝た子を起こすな論﹂だ﹂と怒りだ す人がいるはずです。 マしかし曽野さんのような意見は教育・ 啓発が進んだとされる現在でも潜在化し てるだけでけつこう多いのではないでし ょうか。これまでの取り組みはこうした ホンネの抑え込みに成功はしたものの、 ﹁知らないことは存在しない﹂という考 えの厚い壁にまで風穴を開けたとはいえ ないのではないか。曽野さんの意見に反 発するだけではすまない問題がここには 含まれているように思いますが、どうで し ょ う か 。 ︵ 藤 田 敬 一 ︶ ﹁人間と差別﹂研究会のお知らせ 吃月日日︵土︶午後 3 時より 藤田敬一さん、柚岡正禎さん ﹁こぺる﹄邸号に掲載された山城・ 住回論文について ‘京都府部落解放センター り 、 方第二会議室 EO 七五|四一五|一 O 三 0 0 ﹃こぺる﹄忘年会のお知らせ 研究会のあと左記のとおり、忘年会 を開きます。ぜひご出席ください。 ロ月日日︵土︶午後 5 時半より 於酒処双味亭︵京阪出町柳駅、今出 川 通 川 端 交 差 点 を 束 へ す ぐ 。 南 側 ︶ mO 七五七五二 l 人 O 五 O 会 費 四 000 円 ※ご出席の方は、ロ月 7 日︵金︶ま でに事務局あてにお申込みください。 こぺる刊行会事務局︵阿件社気付︶ 肌 O 七五|四一四 i 八 九 五 一 編集・発行者 こぺる刊行会(編集責任藤田敬一) 発行所京都市上京区衣棚通上御霊前下lレ上木ノ下町73-9 阿昨社 Tel. 075 414 8951 Fax. 075 414 8952 E mail: koperu@par.odn.ne.jp 定価300円(税込)・年間4000円郵便振替 01010-7-6141 第105号 2001年12月25日発行

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五 号 二 OO 一 年十 二 月 二 十 五 日 発 行 ︵ 毎月 一 回 二 十 五 日 発 行 ︶ 一 九九 三 年 五 月 二 十七日第 三 種郵 便 物 認 可 定価 三 百円 ︵ 本 体 二 八 六 円 ︶

表 1 3 年齢・学歴・年間世帯総収入階層別定住意識 総数 住み続けたい 総数(人) 7  8 0 5 4128  2 , 7 6 3 1 1 7 1 0 0 . 0 目 5 2
図 2 年齢階層別年間世帯総収入別に見た収入分位類型分布 . 収 入 分 位 I ・ I I @収入分位R ・ IV•V 。 収 入 分 間 以 上 ・ 公営基準対象層 移行ボーダー層 \ノ市桶並家賃移行対象贋 8 0 0 万円∼ 6 0 0 ∼ 8 0 0 万円 4 0 0 ∼ 6 0 0 万円 1 0 0 ∼ 2 0 0 万円 1 0 0 万円朱満年齢階層および﹁凹001六OO万円﹂の年間世帯総収入階層を中心に、家賃上昇の影響を受ける世帯が多く発生し、これまでの同和向け公営住宅における低家賃のメリットが

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