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安静時の経胸壁心エコー図の連続 5,191 検査を後ろ向きに解析した. そのうち,53 例 (90 検査 ) が人工心臓弁を有していた. 調査期間中 24 例は 1 回のみの検査であったが, 残る 29 例は複数回の検査を受けていた (25 例が 2 回,2 例が 3 回,1 例が 4 回,1 例が

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はじめに 人工心臓弁を有する症例の心エコー図検査時に, 左室内を移動する高輝度の点状エコーを認めること がある.その本体は血液中に出現した一過性の微小 気泡と考えられ,キャビテーション気泡と呼ばれて いる1〜4).しかしキャビテーション気泡の臨床的特 徴やその意義は十分には検討されていない.本研究 では人工心臓弁に関連したキャビテーション気泡の 臨床的特徴を検討した. 方法 対象 2012 年 3 月から 2013 年 11 月に当院で施行した

Clinical features of cavitation bubbles in patients with prosthetic heart valves

Department of Cardiology, Matsushita Memorial Hospital

Sakiko Honda, Tatsuya Kawasaki, Michiyo Yamano, Yoshimi Sato, Kuniyasu Harimoto, Shigeyuki Miki, Tadaaki KamitaniAbstract》 松下記念病院 循環器内科

本田早潔子

川崎達也

山野倫代

佐藤良美

張本邦泰

三木茂行

神谷匡昭

人工心臓弁に関連するキャビテーション気泡の臨床的特徴

臨床研究

人工心臓弁を有する症例の心エコ−図検査で左室内を移動する高輝度の点状エコーを検出することがある. これは血液中に出現した一過性の微小気泡と考えられ,キャビテーション気泡と呼ばれている.本研究の目的 は人工心臓弁に関連したキャビテーション気泡の臨床的特徴を検討することである.当院で経胸壁心エコー図 検査を施行した人工心臓弁を有する連続 50 例中 11 例(22%)にキャビテーション気泡を認めた.年齢と性別で 補正したロジスティック回帰分析では,低肥満指数(カイ 2 乗=0.65,95%信頼区間=0.43-0.98,p=0.038)と 低年齢(カイ 2 乗=0.90,95%信頼区間=0.81-1.00,p=0.049)がキャビテーション気泡の独立規定因子であっ た.心エコー図検査で評価した左室形態や各種ドプラ波形とキャビテーション気泡の有無は関連しなかった. キャビテーション気泡を呈した症例はすべて機械弁を有し,大動脈弁位(13%)より僧帽弁位(67%)で高頻度で あった(p<0.01).平均 16 カ月の観察期間中 14 例に有害イベントが生じたが,キャビテーション気泡の有無 とは関連しなかった.本研究では,人工心臓弁に関連したキャビテーション気泡は機械弁に限定され僧帽弁位 に高頻度であった.キャビテーション気泡は低肥満指数と低年齢に関連したが有害イベントとは関連しなかっ た. (2014.9.19 原稿受領;2014.11.19 採用) ● キャビテーション ● 気泡 ● 心エコー図 ● 人工心臓弁 ● 機械弁 本田早潔子:松下記念病院循環器内科(〒 570-8540 大阪府守口市外島町 5-55) 責任著者 Key words

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安静時の経胸壁心エコー図の連続 5,191 検査を後ろ 向きに解析した.そのうち,53 例(90 検査)が人工心 臓弁を有していた.調査期間中 24 例は 1 回のみの 検査であったが,残る 29 例は複数回の検査を受け ていた(25 例が 2 回,2 例が 3 回,1 例が 4 回,1 例 が 6 回).複数回の検査を受けていた 29 例では,調 査期間中の最初の検査結果を解析に用いた.画像不 良の 3 例を解析から削除したため,最終的な対象は 50 例(50 検査)であった(平均年齢 69 歳,女性 21 例).人工心臓弁の内訳は,大動脈弁位機械弁 24 例, 大動脈弁位生体弁 17 例,僧帽弁位機械弁 12 例,三 尖弁位機械弁 1 例であった.複数の人工心臓弁を有 する症例は 4 例で,いずれも大動脈弁位機械弁と僧 帽弁位機械弁であった.複数回の検査を受けた 29 例(66 検査)から画像不良であった 1 例(3 検査)を除 外した 28 例(63 検査)でキャビテーション気泡の再 現性を検討した. 方法 全症例,Vivid 9(GE ヘルスケア,ウィスコンシン, 米国)を用いて安静時の経胸壁心エコー図検査を受 けた.標準的な手法5,6)を用いて左室拡張末期径,左 室収縮末期径,左室駆出率,左室心筋重量係数,大 動脈バルサルバ洞径,傍胸骨長軸像における左房前 後径,大動脈弁位ドプラ波形の最高流速,僧帽弁位 流入血流ドプラ波形のE 波と E 波減衰時間,中隔 側の僧帽弁輪部組織ドプラ波形のEʼ 波を算出した. デジタルデータとして保存されているすべての動画 を 1 人の医師が確認し,キャビテーション気泡の有 無を視覚的に評価した.キャビテーション気泡は, 視覚的に複数の断面で心腔内あるいは大動脈内に観 察され心周期に応じて血流とともに移動する高輝度 の点状エコー像と定義した.同一断面で同時に 10 個以上の点状エコーが再現性をもって観察された場 合,多量のキャビテーション気泡と判定した. 経胸壁心エコー図検査後から 2014 年 3 月末まで の間の有害イベントの有無を診療記録および担当医 へのインタービューに基づき後ろ向きに調査した. 有害イベントは,心血管死や非心血管死,突然死, 心血管疾患に関連した入院と定義した. 統計 連続変数は平均±標準偏差で表記し,スチューデ ントt 検定を用いて比較した.カテゴリー変数は総 数(%) で 表 記 し,カ イ 2 乗 検 定 あ る い は フ ィ ッ シャー直接法を用いて比較した.キャビテーション 気泡の独立規定因子を決定するため,単変量解析で p 値が 0.1 以下であった変数に対して,年齢と性別 で補正したロジスティック回帰分析を行った.いず れの解析もp 値が 0.05 未満であった場合を統計学 的有意と判定した. 結果 人工心臓弁を有する 50 例中 11 例(22%)にキャビ テーション気泡を認めた.キャビテーション気泡は, 低年齢や低肥満指数,抗凝固薬の内服と関連したが, 心房細動の存在や抗血小板薬および b 遮断薬の内 服の有無とは関連しなかった(表 1).キャビテー ション気泡は,心エコー図検査で評価した左室形態 や大動脈バルサルバ洞径,左房径,各種ドプラ波形 と関連しなかった.ロジスティック回帰分析では, 低肥満指数と低年齢がキャビテーション気泡の独立 規定因子であった(表 2). キャビテーション気泡を呈した 11 例はすべて大 動脈弁位あるいは僧帽弁位に機械弁を有していた. 大動脈弁位に生体弁を有する 17 例と三尖弁位に機 械弁を有する 1 例ではキャビテーション気泡を検出 しなかった.キャビテーション気泡の出現頻度は僧 帽弁位機械弁 12 例中 8 例(67%)で,大動脈弁位機 械弁 24 例中 3 例(13%)より高頻度であった(図 1). 大動脈弁位と僧帽弁位のいずれにも機械弁を有する 4 例では,3 例の僧帽弁位にキャビテーション気泡 を認めたが大動脈弁位にキャビテーション気泡を呈 した症例はなかった. 心エコー図検査から機械弁は全例,2 葉弁と考え られた.そのうち 12 症例でその種類が判明した. キャビテーション気泡と関連しなかった 8 症例の内 訳は,ATS(メドトロニック ATS メディカル,米国)

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が 4 弁,SJM リージェント(セント・ジュード・メ ディカル,米国)が 4 弁であった.一方,キャビテー ション気泡を認めた 4 症例の内訳は,ATS が 2 弁, SJM リージェントが 1 弁,Grabomedics(日本ライ フライン,日本)が 1 弁であった.機械弁のサイズは キャビテーションを認めなかった症例では 20±2 mm で,キャビテーションを認めた症例では 24±4 mm であった. 期間中に複数回の検査を受けた 28 例(63 検査)の うち,初回の心エコー図検査で 6 例にキャビテー ション気泡を認めた.この 6 例はいずれも機械弁(僧 帽弁位 4 例,大動脈弁位 2 例)を有し,キャビテー ション気泡の出現部位は全例で機械弁置換部位と一 致していた.平均 10 カ月(2 カ月〜12 カ月)の間隔 でいずれも 2 回の心エコー図検査を受けていたが, 1 回目と 2 回目の心エコー図検査でキャビテーショ ン気泡の出現部位に変化はなかった. 50 例中 1 例は整形外科疾患の加療で他院に転院 し予後が追跡できなかったため解析から除外した. 16±5 カ月の観察期間で 14 例に有害イベントを認 めた.その内訳は,心臓死 2 例,非心臓死 1 例(胆管 5.7±1.5 5.3±2.0 Eʼ 波(m/s) 62±7 71±11 年齢(歳) あり(n=11) なし(n=39) キャビテーション気泡 p 表 1 患者背景 僧帽弁輪部組織ドプラ波形(中隔側) <0.01 19±3 23±4 肥満指数(kg/m2 ) 0.10 7(64%) 14(36%) 女性 0.70 0.49 <0.01 平均±標準偏差あるいは症例数(%) 19.4±12.3 21.2±15.9 E/Eʼ 大動脈弁位ドプラ波形(m/s) 僧帽弁位流入血流ドプラ波形 0.65 82±57 73±52 E 波(m/s) 0.46 348±393 258±90 E 波減衰時間(ms) 左室駆出率(%) 0.45 93±24 100±30 左室心筋重量係数(g/m2 ) 0.82 29±7 30±6 大動脈バルサルバ洞径(mm) 0.48 41±12 38±8 左房径(mm) 0.50 1.3±0.4 1.4±0.8 利尿薬 心エコー図 0.36 46±10 43±6 左室拡張末期径(mm) 0.28 31±7 29±6 左室収縮末期径(mm) 0.27 57±5 60±10 内服薬 0.03 11(100%) 27(69%) 抗凝固薬 0.26 3(27%) 18(46%) 抗血小板薬 0.50 6(55%) 19(49%) b 遮断薬 0.68 5(45%) 17(44%) 0.80 2(18%) 6(15%) 心房細動 1.39(0.19-9.80) 0.10 女性 0.45(0.43-0.98) 4.29 肥満指数 オッズ比(95%信頼区間) カイ 2 乗 0.038 p 表 2 キャビテーション気泡の規定因子 0.049 0.96(0.81-1.00) 3.85 年齢 >0.99 0.75 1.00(0.01-100 以上) <0.01 抗凝固薬

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癌),突然死 1 例,心血管疾患に関連した入院 10 例 (間欠性跛行に対する血管内治療 3 例,心不全 1 例, パンヌスの増生による再弁置換術 1 例,感染性心内 膜炎 1 例,脳梗塞 1 例,敗血症 1 例,非閉塞性腸管 虚血による大量下血 1 例,重症虚血肢 1 例)であっ た.キャビテーション気泡の頻度は有害イベントを 認めた群で 14 例中 3 例(21%),有害イベントを認 めなかった群で 35 例中 8 例(23%)と有意差を認め なかった(p=0.62).同様に多量のキャビテーショ ン 気 泡 の 頻 度 と 有 害 イ ベ ン ト も 関 連 し な か っ た (各々 1 例(7%)と 5 例(14%),p=0.44). 症例提示 70 歳の男性で,リウマチ性の連合弁膜症に対して 68 歳時に僧帽弁位への機械弁置換術(ATS mitral 27M,メドトロニック ATS メディカル,米国)と大 動脈弁位への機械弁置換術(ATS AP360 22 mm,メ ドトロニックATS メディカル,米国),三尖弁輪形 成術(MC3 28 mm,エドワーズ・ライフサイエンス, 米国)を受けた.投薬内容はワルファリン 3 mg/日, ビソプロロール 5mg/日,ファモチジン 20 mg/日, フロセミド 20mg/日,スピロノラクトン 50 mg/日, レボチロキシン 25 mg/日,アロプリノール 100 mg/ 日,ツロブテロール貼付剤 2mg/日であった.心電 図は心拍数 62 回/分の心房細動で,異常Q 波や ST-T 変 化 は な か っ た.血 液 検 査 で は ヘ モ グ ロ ビ ン 13.7g/dL,血小板数 20.9×104 /mL,C 反応性蛋白 0.64mg/dL,乳酸脱水素酵素 288 U/L,プロトロン ビン時間国際標準比 2.50,脳性ナトリウム利尿ペプ チド 83.2pg/mL,推算糸球体濾過量 40.6 mL/min/ 1.73m2 であった. 経胸壁心エコー図検査:左室拡張末期径/収縮末 期径は 38/25mm,左室駆出率は 64%,左房径は 45 mm であった.僧帽弁および大動脈弁に機能性逆流 を認めるのみで,人工心臓弁の機能不全を示唆する 所見はなかった.拡張早期に一致して僧帽弁位から 左室内腔に向かって移動する一過性の高輝度の点状 エコーを認めた(図 2A・B).その直径は 1 mm 程度 で,出現個数は各心拍 10 個以上であったため多量 のキャビテーション気泡と診断した.拡張中期から 後期にほとんどのキャビテーション気泡は消散した が,一部は残存し収縮期に大動脈弁位へ移動した(図 2C〜F).左房内および大動脈弁上にはキャビテー ション気泡を認めなかった. 12 カ月後に行った心エコー図検査でも同様に左 室内腔に多量のキャビテーション気泡を認めた.術 後 2 年以上が経過しているが,血行動態は安定し有 害イベントは生じていない. 考察 当院で経胸壁心エコー図検査を施行した人工心臓 弁を有する連続 50 例中 11 例(22%)にキャビテー ション気泡を認めた.キャビテーション気泡の独立 規定因子は低肥満指数と低年齢であり,左室形態や 各種ドプラ波形とは関連しなかった.キャビテー 症例数 僧帽弁位 大動脈弁位 13% 67% 0 10 20 30 p<0.01 図 1 機械弁におけるキャビテーション気泡の 頻度 大動脈弁位機械弁に比して,僧帽弁位機械弁 でキャビテーション気泡は高頻度である(黒 色部分).

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ション気泡を呈した 11 例はすべて機械弁を有し, 大動脈弁位機械弁より僧帽弁位機械弁で高頻度で あった.平均 10 カ月の間隔で 6 例が 2 回の心エコー 図検査を受けたが,キャビテーション気泡の出現部 位に変化はなかった.平均 16 カ月の観察期間中 14 例に有害イベントが発生したが,キャビテーション 気泡の有無や程度とは関連しなかった.本研究は後 ろ向きではあるが,人工心臓弁に関連したキャビ テーション気泡の臨床的特徴とその意義に関して有 用な情報を提供すると考えられる. キャビテーション気泡は,流体中の局所的圧力が 飽和蒸気圧より低下した際に沸騰することで生じ, その後の圧力の上昇とともに速やかに消失する物理 現象であると考えられている1〜4).人工心臓弁に関 連してキャビテーション気泡が発生する機序とし て,弁閉鎖後に弁葉とハウジングの間隙を流れる血 流 に よ る ス ク イ ー ズ 流 効 果 や 弁 葉 の 閉 鎖 に よ る ウ ォ ー タ ー・ハ ン マ ー 効 果 な ど が 提 案 さ れ て い る7〜9).本研究では低年齢がキャビテーション気泡 の独立した規定因子であった.これは高齢化に伴う 心 拍 出 動 態 の 変 化 が ス ク イ ー ズ 流 効 果 や ウ ォ ー ター・ハンマー効果の減弱に繋がった可能性を示唆 する.もう 1 つのキャビテーション規定因子であっ た低肥満指数は,心エコー画像の良好な描出と関連 することが知られている.本研究では画像不良で あった症例を除外しているが,画質の差異がキャビ テーション気泡の検出に影響した可能性は否定でき ない.キャビテーション気泡が発生する正確な機序 の解明には流体力学やエコー画質に基づく新たな検 討が必要である. A B C D E F 図 2 典型例 拡張早期に僧帽弁位機械弁から左室内腔に拡散する高輝度の点状エコーを認める (A:左室長軸像,B:左室短軸像).拡張期に消散しなかった一部の点状エコーは, 収縮期に心室中隔から左室流出路に移動し(C,D,E:矢印),大動脈弁位(F:矢印) で消失した.

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頭頸部領域の血管エコー検査でもしばしば一過性 に高輝度の点状エコーを検出することが報告されて いる10,11).その機序としてキャビテーション気泡の 関与が推察されるが,人工心臓弁を有さないさまざ まな心疾患(心房細動や拡張型心筋症,心筋梗塞,卵 円 孔 開 存,感 染 性 心 内 膜 炎 な ど) で も 検 出 さ れ る12,13).これらの点状エコーの存在は脳卒中急性期 や症候性頸動脈狭窄,頸動脈内膜剝離術後の有害イ ベント予測因子であることを示唆する報告もある が14),そ の 臨 床 的 意 義 は 必 ず し も 一 致 し て い な い10〜13).人工心臓弁を有する症例を対象とした本研 究では,心腔内あるいは大動脈内に観察されたキャ ビテーション気泡の有無や程度と有害イベントは関 連しなかった. 本研究にはいくつかの問題点がある.単一施設で 行われた研究であるため,人工心臓弁を有するすべ ての症例に今回の結果を一般化することはできな い.人工心臓弁の構造的特性がキャビテーション気 泡の発生に関与する可能性がある.しかし本対象で は人工心臓弁の種類やサイズが不明であった症例が 少なくなかったため統計学的な検討ができなかっ た.本研究は後ろ向きで観察期間も比較的短い.キャ ビテーション気泡と予後の関係は,多施設前向き研 究で確認する必要がある. 文 献

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