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TVRSJ Vol.23 No.3 pp , 2018 基礎論文 HMD を用いた 360 度動画視聴時の 座面の回転がユーザ体験に及ぼす影響 伴地芳啓 *1 吉川佳祐 *1 河合隆史 *1 Effects of Chair swiveling on User experience D

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(1)

基礎論文

HMD を用いた 360 度動画視聴時の

座面の回転がユーザ体験に及ぼす影響

伴地芳啓

*1

吉川佳祐

*1

河合隆史

*1

Effects of Chair swiveling on User experience

During Viewing 360-Degree Images Using a Head-mounted Display

Yoshihiro Banchi

*1

, Keisuke Yoshikawa

*1

and Takashi Kawai

*1

Abstract --- The authors examined the effects of chair swiveling with the psycho-physiological

effects of viewing short segments of 360° videos using a head-mounted display (HMD) in terms of

the type of content. Twenty participants viewed 360° videos with varying features using an

eye-tracking HMD consisting of a smartphone fitted in a case containing optics. Ten participants

were seated on a swivel chair and the others on a fixed one. Objective indexes on gaze and body

rotation and subjective indexes on simulator sickness, emotional reaction and immersion were

measured. It was found that the features of content, especially camera motion, affect

psychological effects like discomfort and observation behavior, and chair swiveling affects the

behavior looking around, the reception of visual information and emotional response. It turns

out that the rotating chair, which is easy to think that it supports the action the user sees, does

not necessarily contribute to the user experience.

Keywords: Head-mounted display, virtual reality, 360-degree video

1 はじめに

近年、バーチャルリアリティ(VR)が急速に発展・普及

してきている。ゲームやエンターテインメント分野での活

用が多く見られるなか、動画配信サイト等で

VR 対応の

360 度動画が視聴できるようになった。スマートフォンを

用いたヘッド・マウント・ディスプレイ(

HMD)も相まってコ

ンシューマレベルでの

360 度映像の視聴が容易となり、

より一層の普及が考えらえる。

一方、

HMD を用いた 360 度映像では、視聴に伴

う不快感も懸念されている。これまでの関連研究で

は、フレームレートや視野角といった

HMD の性能

や解像度や遅延といった描画制度に注目したものが

中心であった[1-4]。また、HMD 使用時の姿勢や平

衡機能に与える影響に着目した研究もある

[5-6]。特

に近年では、

HMD の性能の向上が著しいためそれ

に伴った研究が必要となっている。例えば、

Singla

らは市販されている

2 種類の HMD を用いた 360 度

映像の視聴に関して実験を行なった[7]。結果より、

映像コンテンツの内容や、HMD の品質が視聴行動

や映像酔いに関係することがわかっている。また、

Palmisano らは映像酔いの程度についてしばしば問

題とされるベクションに基づいて実験を行なった

[8]。結果より、頭部運動とその知覚の不一致が映像

酔いに大きく関わるが、ベクションと映像酔いの関

係は他の影響を強く受けていることが示唆された。

多くの実験は、ハイスペックな

PC を要求する HMD

を用いた高品質な環境下で行われている。しかしな

がら、コンシューマレベルでの

HMD の普及は、多

様な視聴環境下での利活用が想定される。

筆者らは、これまでに

HMD を用いた 360 度映像の観

察による生理・心理的影響について研究を行ってきた

[9]。結果から、HMD を用いた 360 度映像の観察におい

て、参加者の各身体部位の動作に特徴的な傾向がみ

られた。また、コンテンツによる影響の差異も示唆された。

さらに、身体動作が視聴環境の影響を受けることがわか

った。そこで本研究では、視聴環境として参加者が座る

座面の回転の有無を設定し、コンテンツの種類を要因

に、短時間での

360 度映像観察時の行動・心理特性か

ら検討を行った。

2 研究の目的

本研究では、現状に即した環境下で

360 度動画視

聴時における座面の回転の効果を検討することを目

的とした。具体的には、環境条件として座面の回転

の有無を設定し、各条件下で異なる特徴を持った

360 度動画を視聴した際のユーザの視聴・行動特性

および心理反応の測定・解析を行った。

*1 早稲田大学 *1 Waseda University

TVRSJ Vol.23 No.3 pp.217-227, 2018

(2)

3 実験方法

3.1 実験刺激

5 種類の 360 度動画を実験刺激として選定した。実験

刺激は

YouTube より再生回数の多いものを抽出し

[10-14]、異なる特徴を有するものを条件に設定した。異

なる特徴として、視点移動の大きさ・両眼視差・空間の

広がり・被写体の数・実写

/CG を設定した。また、コンテ

ンツの特徴を表

1 に示す。これらの特徴は、筆者らの研

究や動画としての特徴を考慮して設定した。刺激は全

てエクイレクタングラ形式であり、解像度は

A・B・E は

2560×1440pixel であり、C・D は 2880×1440pixel であ

った。また、フレームレートは

30fps、音量は平均音圧を

89db、時間を 85 秒に統一した。各刺激観察前に 5 秒間

の注視点を呈示し、視聴開始位置を統一した。

3.2 実験環境

HMD に は 視 線 計 測 が 可 能 な SMI Mobile Eye

Tracking HMD(Samsung Gear VR、Samsung Galaxy

S7)を使用した[15]。HMD の装着は付属のバンドを使

用した。また、Bluetooth イヤホン(SoundPEATS Q12)に

より音声を呈示した。映像の呈示には、Unity により環境

を作成した。具体的には、カメラを

2 つ作成しそれぞれ

に球体内にテクスチャとして貼り付けられた刺激をレン

ダリングし、左右眼に呈示するようにした。椅子は座面

の回転を切り替えられる背もたれのないものを使用し、

椅子を固定するためにキャスタのストッパを止めた状態

とした。また、身体行動を記録するためにマーカー付き

の上着の着用を求めた。実験環境の様子を図

1 に示

す。

3.3 客観指標

3.3.1

視線

SMI Mobile Eye Tracking HMD を使用して視線を計

測した。測定可能視野角は水平・垂直方向に

90 度であ

り、測定周波数は

60Hz であった。HMD では視線として

仮想スクリーン上(

2560×1440pixel)のものと VR 空間

上のものが考えられる。仮想スクリーン上の視線とは

HMD の光学系を通して呈示されるスクリーン上にあるも

のを意味している。つまり、頭部運動を含まない眼球の

動きについて検討することができる指標である。また、機

図1 実験環境 Fig.1 Environment setup

図2 VR 空間上の視線イメージ Fig.2 Gaze point on the VR space

器で取得されるデータはこの仮想スクリーン上の座標系

で計測される。一方、

VR 空間上の視線とは、360 度に

呈示される映像上にあるものを意味している。つまり、頭

部運動と眼球運動の連動による視聴者が見ている対象

について検討することができる指標である。仮想スクリー

ン上と

VR 空間上の視線のイメージを図 2 に示す。

3.3.2

体動

360 度動画の観察に関する主な身体部位の動きとし

て、足の動きに伴う椅子の回転、腰の捻りに伴う肩の

Yaw 角回転、首振りに伴う頭部 Yaw 角回転・Pitch 角回

転を使用した。椅子および肩の回転については、観察

行動中の映像を記録し(

GoPro Hero4, 30fps)、画像解

析ソフト(

Kinovea)を用いて 1 秒ごとの回転量(度)を求

めた。頭部運動については、

Unity で作成したヘッドトラ

ッキングに追従するカメラの動きを記録し、1 秒ごとの回

転量(度)を求めた。

表1 コンテンツの特徴 Table 1 Stimulus Features

刺激 視点移動 両眼視差 空間の広がり 注視対象 映像種別 A [10] 多い なし 閉鎖 全周 CG B [11] 少ない あり 開放 全周 CG C [12] 少ない なし 開放 なし 実写 D [13] 多い なし 開放 前方 実写 E [14] 少ない あり 閉鎖 前方 実写

(3)

3.4 主観指標

3.4.1

SSQ (Simulator Sickness Questionnaire)[16]

映像酔いの程度を評価するために

SSQ を用いた。

SSQ では、気持ち悪さ、目の疲れ、めまい・ふらつきの 3

因子から構成され、それぞれ得点化される。それらの因

子に係数を掛け合わせることで総合得点の算出が可能

である。

3.4.2

SAM (Self-Assessment Manikin)[17]

感情に関する評価をするために

SAM を用いた。

SAM では、情動価、覚醒度の 2 因子から構成され、そ

れぞれ快・不快状態、興奮・リラックス状態を

9 段階で評

価することが可能である。被験者には情動価は中央を、

覚醒度は右端を標準状態として記入するように指示し

た。

3.4.3

IPQ (Igroup Presence Questionnaire)[18]

臨場感を評価するために

IPQ を用いた。IPQ では、

総合的な臨場感、仮想空間に対する臨場感、外界への

意識、現実感の

4 つの因子から構成され、それぞれ得

点化される。本実験では、実験に適さないもしくは日本

語化した際に他の質問と同義である質問項目を除いた

10 の項目を採用した。

3.4.4

インタビュー

各試行終了後に、刺激に対する最も印象に残った点、

良かった点、悪かった点について、口頭にて自由回答

を求めた。また、全試行終了後には、実験全体を通した

質問を行なった。質問項目は、最も印象に残ったコンテ

ンツ、立体視のある刺激に気づいたか、全体を通して疲

労や飽きはあったか、であった。

3.5 手続き

実験参加者は、

20 代の大学生 20 名(男性 17 名、女

3 名)であり、事前に実験の趣旨や方法を説明し、同

意書への記入をお願いした。環境条件の座面の回転の

有無に関しては、被験者間実験を行なった(回転あり

10

名、回転なし

10 名)。各被験者が映像をはっきりと視聴

できるよう、HMD の光学系のピントを調節してもらい、そ

れを練習試行とした。1 試行は、観察前の SAM 及び

SSQ への回答後、5 秒間のブランク映像と 85 秒間の刺

激映像の観察、観察後の

SAM、SSQ、IPQ への回答及

びインタビューという流れで行われた。ブランク映像は、

刺激観察開始時の視線を統制するために、黒背景の中

央に白色の十字を呈示した。また、実験参加者には集

中力を維持してもらうために、刺激内の印象に残ったシ

ーンを記憶する課題を与えた。実験は、各刺激の観察

をする

5 試行が実施され、刺激の呈示順序はランダマイ

ズした。また、各試行間には十分な休憩を設けた。

4 結果

4.1 客観指標

視線に関するデータに関して、データの欠損やトラッ

キングレートの低い被験者のデータを除いた

14 名分の

データを使用した。また、本研究では、注視の定義を

「眼球速度が

5deg/s 以下の状態が 150ms 以上続いた

状態[19]」とし解析を行った。

4.1.1

仮想スクリーン上の視線

各刺激の視線の移動量(

pixel)の合計の結果を表 2

に示す。刺激番号及び環境条件を要因とする二元配置

分散分析を行った。いずれの条件にも有意差は認めら

れなかった(刺激:

F(4,48)=2.244、p=.078、ηp

2

=.158、

環境:

F(1,12)=0.311、p=.587、ηp

2

=.025、刺激×環境:

F(4,48)=0.501、p=.735、ηp

2

=.040)。

4.1.2

VR 空間上の視線

各刺激の視線の移動量の合計の結果を表

3 に示す。

ここでの移動量は視線を半径

1 の球面にプロットし

た際の空間上の距離を意味している。刺激番号及び

環境条件を要因とする二元配置分散分析を行った。

いずれの条件にも有意差は認められなかった(刺

激 :

F(4,48)=1.833 、 p=.133 、 η

p2

=.133 、 環 境 :

F(1,12)=.117 、 p=.738 、 η

p2

=.010 、 刺 激 × 環 境 :

F(4,48)=0.675、p=.613、ηp

2

=.053)。また、水平及

び垂直方向の注視範囲(度)の平均および標準偏差

を表

4 に示す。ここでの注視範囲は注視点を抽出し、

各軸での最大値から最小値を減算することで算出し

た。注視範囲についてそれぞれ二元配置分散分析を

表2 仮想ディスプレイ上の視線移動量(kpixel) Table 2 Sum of gaze movement on HMD screen (kpixel)

座面 A B C D E

回転あり 96.07 ± 15.20 83.40 ± 12.08 115.42 ± 27.78 95.84 ± 24.16 104.44 ± 23.21

回転なし 97.24 ± 12.64 99.31 ± 17.91 111.87 ± 18.81 94.78 ± 29.75 122.29 ± 66.18

表3 VR 空間上の視線移動量 Table 3 Sum of gaze movement on VR space

座面 A B C D E

回転あり 101.07 ± 18.07 85.04 ± 15.07 110.29 ± 30.57 96.98 ± 26.90 106.36 ± 24.14

(4)

行った。また、主効果に有意差が認められた場合に

Shaffer 法による多重比較を行なった。垂直方向に

関して、刺激番号と観察条件に有意差が認められた

(刺激:

F(4,48)=6.514、p<.001、ηp

2

=0.352、環境:

F(1,12)=5.499 、 p=.037 、 ηp

2

=.314 、 刺 激× 環 境:

F(4,48)=0.289、p=.884、ηp

2

=.024)。多重比較の結

果、刺激

AE(t(12)=3.644、p=.020、d=1.498)、BE

(t(12)=5.339、p=.001、d=1.416)、CE(t(12)=4.149、

p=.008、d=1.602)、DE(t(12)=6.422、p<.001、d=1.970)

間に有意差が認められた。水平方向に関して、刺激

番号に有意差が認められた(刺激:F(4,48)=12.575、

p<.001、ηp

2

=.512、環境:F(1,12)=0.012、p=.915、η

p2

=.001、刺激×環境:F(4,48)=0.724、p=.580、ηp

2

=.057)。

多重比較の結果、刺激

AB(t(12)=5.608、p<.001、

d=1.553)、AC(t(12)=6.551、p<.001、d=1.549)、

BD(t(12)=4.242、p=.007、d=1.430)、BE(t(12)=3.815、

p=.015、d=.916)、CD(t(12)=5.113、p=.002、d=1.437)、

CE(t(12)=3.097、p=.037、d=.945)間に有意差が認

められた。

4.1.3

体動

椅子、肩、頭部

Pitch 角、頭部 Yaw 角の総回転量

(度)の平均および標準偏差を表

5 に示す。総回転量は

1 秒ごとの各身体部位の角度から変位量を算出し加算

することで算出した。総回転量について刺激番号及び

環境条件を要因とする二元配置分散分析を行なった。

また、主効果・交互作用に有意差が認められた場合に

Shaffer 法による多重比較または単純主効果検定を

行なった。椅子に関して、刺激番号に有意差が認めら

れた(刺激:F(4,36)=4.192、p=.007、ηp

2

=.318)。多重比

較の結果、刺激

BD(t(9)=3.792、p=.043、d=.930)、BE

図3 10 秒区間の総回転量(刺激 B) Fig.3 10 Sec Compartment (Stimulus B)

t(9)=3.426、p=.045、d=.694)間に有意差が認められた。

頭部

Pitch 角に関して、刺激番号に有意差が認められ

た (刺 激:

F(4,72)=22.737、 p<.001、η

p2

=.558、環 境:

F(1,18)=0.255 、 p=.620 、 η

p2

=.014 、 刺 激 × 環 境 :

F(4,72)=0.750、p=.040、ηp

2

=.040))。多重比較の結果、

刺 激

AE ( t(18)=6.671 、 p<.001 、 d=1.585 ) 、 BE

t(18)=9.988 、 p<.001 、 d=2.280 ) 、 CE ( t(18)=6.782 、

p<.001、d=2.222)、DE(t(18)=8.865、p<.001、d=2.115)

間に有意差が認められた。頭部

Yaw 角に関して、刺激

番号に有意差が認められた(刺激:F(4,72)=10.469、

p<.001 、 η

p2

=.368 、 環境 : F(1,18)=1.012、 p=.328 、η

p2

=.053 、 刺 激 × 環 境 : F(4,72)=0.736 、 p=.571 、 η

p2

=.039))。多重比較の結果、刺激 AB(t(18)=3.400、

p=.019、d=.836)、AC(t(18)=6.104、p<.001、d=1.393)、

BE(t(18)=3.057、p=.041、d=.610)、CD(t(18)=4.237、

p=.003、d=1.048)、CE(t(18)=4.262、p=.003、d=1.153)

間に有意差が認められた。肩について環境条件、交互

作用に有意差が認められた(刺激:

F(4,72)=1.548、

0 200 400 600 800 1,000 1,200 椅子 肩 頭部 (Yaw) 頭部 (Pitch) 総回転量(度) 0~10(秒) 11~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~85 表4 注視範囲(度)の平均と標準偏差 Table 4 Mean and SD of Width of steady gaze (degrees)

方向 座面 A B C D E 垂直 回転あり 38.22 ± 19.61 24.61 ± 8.70 40.30 ± 22.52 32.31 ± 14.11 15.38 ± 8.23 回転なし 43.86 ± 21.72 35.52 ± 9.09 54.74 ± 25.62 44.87 ± 8.15 17.75 ± 7.04 水平 回転あり 84.05 ± 66.65 146.26 ± 70.23 173.67 ± 77.04 72.26 ± 62.03 120.18 ± 49.13 回転なし 66.00 ± 25.45 177.17 ± 30.13 158.64 ± 39.34 79.27 ± 56.88 103.07 ± 47.17 表5 体動の総回転量(度)の平均と標準偏差 Table 5 Mean and SD of Amount of Body movement (degrees)

部位 座面 A B C D E 椅子 − 771.06 ± 348.71 1098.58 ± 477.18 1305.58 ± 745.84 659.92 ± 415.71 778.93 ± 392.45 肩 回転あり 201.99 ± 115.92 149.24 ± 63.70 58.57 ± 248.80 171.22 ± 101.21 124.21 ± 48.57 回転なし 221.74 ± 171.54 260.27 ± 144.81 481.86 ± 190.18 249.43 ± 222.56 204.88 ± 97.20 頭部 回転あり 440.91 ± 211.33 385.25 ± 112.83 496.93 ± 228.16 437.41 ± 173.24 162.74 ± 59.94 Pitch 角 回転なし 337.91 ± 139.90 403.04 ± 126.67 491.93 ± 152.96 406.21 ± 129.96 150.95 ± 92.62 頭部 回転あり 873.06 ± 437.90 1300.43 ± 740.36 1563.43 ± 742.68 1175.71 ± 491.75 975.81 ± 478.34 Yaw 角 回転なし 786.22 ± 344.11 1181.04 ± 223.97 1475.72 ± 250.77 748.10 ± 353.62 887.18 ± 369.95

(5)

p=.198 、 η

p2

=.079 、 環境 : F(1,18)=8.709、 p=.009 、η

p2

=.326 、 刺 激 × 環 境 : F(4,72)=6.987 、 p<.001 、 η

p2

=.280 ) 。 単 純 主 効 果 検 定 の 結 果 、 刺 激 B

F(1,18)=4.433、p=.050、ηp

2

=.198)、C(F(1,18)=16.443、

p=.001 、 η

p2

=.477 ) 、 E ( F(1,18)=4.961 、 p=.039 、 η

p2

=.216)において環境条件に有意差が、回転無し条件

において刺激

AC(t(9)=3.780、p=.044、d=2.520)、BC

(t(9)=3.626、p=.044、d=2.417)、CE(t(9)=3.767、p=.044、

d=2.511)に有意差が認められた。

次に、総回転量を刺激呈示開始から

10 秒間隔で加

算平均した結果について刺激

B の結果を図 3 に示し、

その他の刺激に関しては「A 付録」に掲載する。縦軸を

加算平均値、横軸を時間と身体部位としエラーバーは

標準誤差である。

81 秒〜85 秒の値は他と時間が異なる

ので

2 倍して示している。刺激番号により程度・継続時

間は異なるが、回転量の上昇と減少が起こっている。特

に、椅子・肩が

0〜30 秒の間に大きく上昇するところが

見られる。

4.2 主観指標

4.2.1

SSQ

観察前後の変化量に関して、実験参加者のスコアの

加算平均を平均変化量として算出した。

SSQ での気持

ち悪さ、目の疲れ、めまい・ふらつき、総合得点の結果

を図

4 に示す。縦軸を平均変化量、横軸を刺激番号と

しエラーバーは各平均変化量の標準誤差である。平均

変化量について刺激番号及び環境条件を要因とする

二元配置分散分析を行なった。また、主効果・交互作

用に有意差が認められた場合には

Shaffer 法による多

重比較を行なった。気持ち悪さに関して、刺激番号に

有意差が認められた(刺激:F(4,72)=2.897、p=.028、η

p2

=.139、環境:F(1,18)=2.748、p=.115、ηp

2

=.132、刺激

×環境:F(4,72)=0.554、p=.697、ηp

2

=.030)。多重比較

の結果、いずれの間にも有意差が認められなかった。

目の疲れに関して、刺激番号に有意差が環境条件

図5 SAM(覚醒度) Fig.5 SAM Score (Arousal)

図6 SAM(情動価) Fig.6 SAM Score (Affective valence)

に有意傾向が認められた(刺激:

F(4,72)=5.288、p=.001、

ηp

2

=.227、環境:F(1,18)=3.030、p=.099、ηp

2

=.144、刺

激×環境:

F(4,72)=1.963、p=.109、ηp

2

=.098)。多重比

較の結果、刺激

AC(t(18)=3.948、p=.001、d=.009)間に

有意差が認められた。めまい・ふらつきに関して、刺激

番 号 に有 意 傾向 が見 ら れ た (刺 激 :F(4,72)=2.355、

p=.062 、 η

p2

=.112 、 環 境 : F(1,18)=0.373 、 p=.549 、η

p2

=.020 、 刺 激 × 環 境 : F(4,72)=0.429 、 p=.787 、 η

p2

=.023)。多重比較の結果、いずれの間にも有意差が

認められなかった。総合得点に関して、刺激番号に有

-2 0 2 4 6 8 A B C D E 平均変化量 刺激番号 回転有り 回転無し -2 -1 0 1 2 A B C D E 平均変化量 刺激番号 回転有り 回転無し 図4 SSQ の結果 Fig.4 Results of SSQ -5 0 5 10 15 20 25 A B C D E A B C D E A B C D E A B C D E 気持ち悪さ ⽬の疲れ めまい・ふらつき 総合得点 平均変化量 刺激番号 回転有り 回転無し

(6)

意差が認められた(刺激:

F(4,72)=5.631、p=.001、η

p2

=.238、環境:F(1,18)=2.254、p=.151、ηp

2

=.111、刺激

×環境:

F(4,72)=1.482、p=.217、ηp

2

=.076)。多重比較

の結果、刺激

AC(t(18)=3.672、p=.017、d=.822)、BC

t(18)=3.014、p=.045、d=.468)間に有意差が認められ

た。

4.2.2

SAM

観察前後の変化量に関して、実験参加者のスコアの

加算平均を平均変化量として算出した。SAM での覚醒

度、情動価の結果を図

5、6 に示す。縦軸を平均変化量、

横軸を刺激番号としエラーバーは各平均変化量の標準

誤差である。SSQ と同様に二元配置分散分析及び多重

比較を行なった。覚醒度に関して、刺激番号と環境条

件 の 主 効 果 に 有 意 差 が 認 め ら れ た ( 刺 激 :

F(4,72)=15.680 、 p<.001 、 η

p2

=.466 、 環 境 :

F(1,18)=9.537 、 p=.007 、 η

p2

=.342 、 刺 激 × 環 境 :

F(4,72)= 2.002、p=.103、ηp

2

=.100)。多重比較の結果、

刺 激

AC ( t(18)=4.862 、 p=.001 、 d=1.119 ) 、 BC

t(18)=5.840 、 p<.001 、 d=1.319 ) 、 BD ( t(18)=3.093 、

p=.025、d=.650)、CD(t(18)=6.926、p<.001、d=1.706)、

CE(t(18)=3.992、p=.005、d=.982)、DE(t(18)=3.733、

p=.009、d=.886)間に有意差が認められた。情動価に関

して、いずれにも有意差が認められなかった(刺激:

F(4,72)=1.767、p=.121、ηp

2

=.089、環境:F(1,18)=2.644、

p=.121、ηp

2

=.128、刺激×環境:F(4,72)=0.653、p=.627、

ηp

2

=.035)。

4.2.3

IPQ

観察後の得点を実験参加者のスコアとし、平均値を

算出した。IPQ での総合的な臨場感、仮想空間に対す

る臨場感、外界への意識、現実感の平均および標準偏

差を表

6 に示す。SSQ と同様に二元配置分散分析及び

多重比較を行なった。総合的な臨場感に関して、刺激

番 号 に 有 意差 が 認め ら れ た ( 刺 激 :

F(4,72)=2.517、

p=.049 、 η

p2

=.123 、 環境 : F(1,18)=0.233、 p=.635 、η

p2

=.013 、 刺 激 × 環 境 : F(4,72)=0.704 、 p=.592 、 η

p2

=.038)。多重比較の結果、いずれの間にも有意差が

認められなかった。仮想空間に対する臨場感に関して、

刺激番号に有意差が認められた(刺激:

F(4,72)=3.590、

p=.010 、 η

p2

=.166 、 環境 : F(1,18)=0.180、 p=.677 、η

p2

=.010 、 刺 激 × 環 境 : F(4,72)=1.025 、 p=.400 、 η

p2

=.054)。多重比較の結果、刺激 AE(t(18)=3.235、

p=.046、d=.787)、BE(t(18)=3.197、p=.046、d=.775)間

に有意差が認められた。現実感に関して、刺激番号に

有意差が認められた(刺激:F(4,72)=2.800、p=.032、η

p2

=.135、環境:F(1,18)=0.075、p=.787、ηp

2

=.004、刺激

×環境:

F(4,72)=1.810、p=.136、ηp

2

=.091)。多重比較

の結果、刺激

BC 間に有意差が認められた(t(18)=4.554、

p=.003、d=.853)。外界への意識に関しては、いずれに

も有意差が認められなかった(刺激:

F(4,72)=1.491、

p=.214 、 η

p2

=.077 、 環境 : F(1,18)=0.248、 p=.624 、η

p2

=.014 、 刺 激 × 環 境 : F(4,72)=0.706 、 p=.590 、 η

p2

=.038)。

4.3 重回帰分析

各客観・主観指標を従属変数、座面の回転の有無と

刺激の特徴をダミー変数に変換し独立変数として重回

帰分析を行う。独立変数およびタミー変数の設定を表

7

に示す。独立変数の選定には

AIC の値を用いた。重回

帰分析の結果を表

8 に示し、分散分析の結果を表 9 に

示す。

表6 IPQ の平均と標準偏差 Table 6 Mean and SE of IPQ

座面 A B C D E 総合的な 回転あり 4.40 ± 0.92 4.10 ± 0.83 4.10 ± 1.22 3.70 ± 1.62 3.20 ± 1.08 臨場感 回転なし 4.20 ± 1.08 4.10 ± 1.04 4.10 ± 0.83 4.40 ± 1.50 3.60 ± 1.02 仮想空間 回転あり 3.63 ± 1.39 3.60 ± 1.06 3.27 ± 1.01 3.30 ± 1.23 2.63 ± 1.27 の臨場感 回転なし 3.67 ± 0.91 3.33 ± 0.91 2.80 ± 1.01 3.73 ± 0.88 3.10 ± 0.84 外界への 回転あり 3.57 ± 0.45 3.83 ± 0.37 3.40 ± 0.63 3.50 ± 0.72 3.60 ± 0.65 意識 回転なし 3.43 ± 0.50 3.63 ± 0.31 3.27 ± 0.42 3.93 ± 0.66 3.40 ± 0.36 現実感 回転あり 1.97 ± 0.41 2.20 ± 0.60 2.10 ± 0.45 2.30 ± 0.57 2.07 ± 0.51 回転なし 2.17 ± 0.40 2.37 ± 0.41 2.63 ± 0.41 2.43 ± 0.52 2.50 ± 0.34 表7 重回帰分析の独立変数 Table 7 Independent Variable

ダミー変数 0 1 視点移動 少ない 多い 両眼視差 なし あり 空間の広がり 閉鎖 開放 注視対象 前方 なし 前方 全周 なし 全周 映像種別 実写 CG 座面の回転 なし あり

(7)

表8 重回帰分析の結果 Table 8 Multiple Regression Equation

Estimate Std.Error t- value p- value 95%tile (lower) (heigher) 95%tile R- squared F- value (df) p- value Adjusted

注視範囲 (垂直) 定数項 45.870 4.648 9.870 0.000 36.588 55.152 0.300 8.4(4,65) 0.000 両眼視差 -16.740 4.193 -3.992 0.000 -25.114 -8.366 空間の広がり 5.766 4.193 1.375 0.174 -2.608 14.140 前方 -8.214 4.193 -1.959 0.054 -16.588 0.160 座面の回転 -9.184 4.009 -2.291 0.025 -17.191 -1.177 注視範囲 (水平) 定数項 137.410 14.350 9.574 0.000 108.753 166.065 0.307 11.17(3,66) 0.000 視点移動 -62.380 14.350 -4.346 0.000 -91.038 -33.725 空間の広がり 26.520 14.350 1.848 0.069 -2.131 55.181 前方 -25.790 14.350 -1.797 0.077 -54.442 2.870 椅子 定数項 1157.500 108.100 10.707 0.000 940.027 1374.987 0.123 4.419(2,47) 0.017 視点移動 -297.300 152.900 -1.945 0.058 -604.865 10.262 前方 -289.400 152.900 -1.893 0.065 -596.995 18.132 肩 定数項 283.640 24.760 11.456 0.000 234.503 332.769 0.136 16.58(1,98) 0.000 座面の回転 -142.590 35.010 -4.072 0.000 -212.074 -73.105 頭部 (Pitch) 定数項 381.950 32.690 11.685 0.000 317.070 446.839 0.333 17.5(3,96) 0.000 両眼視差 -122.660 32.690 -3.752 0.000 -187.541 -57.772 空間の広がり 127.390 32.690 3.897 0.000 62.509 192.278 前方 -94.990 32.690 -2.906 0.005 -159.878 -30.109 頭部 (Yaw) 定数項 1217.800 163.740 7.437 0.000 892.731 1542.874 0.195 7.002(4,95) 0.000 座面の回転 162.040 98.740 1.641 0.104 -33.988 358.063 視点移動 -513.420 146.040 -3.516 0.001 -803.349 -223.498 両眼視差 -323.080 146.040 -2.212 0.029 -613.008 -33.157 空間の広がり 220.750 110.400 2.000 0.048 1.588 439.914 気持ち悪さ 定数項 -1.485 1.497 -0.992 0.324 -4.455 1.486 0.097 4.714(3,101) 0.004 座面の回転 2.463 1.665 1.479 0.142 -0.840 5.766 視点移動 4.673 1.721 2.714 0.008 1.258 8.087 前方 2.856 1.721 1.659 0.100 -0.559 6.270 目の疲れ 定数項 0.063 1.900 0.033 0.974 -3.705 3.831 0.136 9.181(2,102) 0.000 座面の回転 5.623 2.287 2.459 0.016 1.087 10.159 視点移動 8.182 2.331 3.509 0.001 3.557 12.806 めまい・ 定数項 5.082 1.646 3.088 0.003 1.818 8.346 0.028 3.981(1,103) 0.049 ふらつき 視点移動 5.192 2.602 1.995 0.049 0.031 10.354 総合得点 定数項 0.910 1.696 0.536 0.593 2.455 4.274 0.127 8.594(2,102) 0.000 座面の回転 4.270 2.042 2.092 0.039 0.221 8.320 視点移動 7.450 2.081 3.579 0.001 3.322 1.579 覚醒度 定数項 0.150 0.623 0.240 0.811 -1.087 1.386 0.322 13.35(4,100) 0.000 座面の回転 -1.513 0.375 -4.039 0.000 -2.256 -0.770 視点移動 3.369 0.553 6.089 0.000 2.271 4.467 両眼視差 2.393 0.553 4.324 0.000 1.295 3.491 空間の広がり 0.976 0.418 2.334 0.022 0.146 1.806 情動価 定数項 0.968 0.203 4.773 0.000 0.566 1.371 0.051 6.621(1,103) 0.012 視点移動 -0.825 0.321 -2.573 0.012 -1.462 -0.189 総合的な 定数項 4.036 0.173 23.395 0.000 3.693 4.378 0.039 2.982(2,97) 0.055 臨場感 視点移動 0.393 0.244 1.610 0.111 -0.091 0.877 前方 -0.507 0.244 -2.079 0.040 -0.991 -0.023 仮想空間 定数項 3.125 0.144 21.653 0.000 0.839 3.411 0.030 4.02(1,98) 0.048 の臨場感 視点移動 0.458 0.228 2.005 0.048 0.005 0.910 外界への 定数項 3.118 0.174 17.904 0.000 2.772 3.463 0.042 2.433(3,96) 0.070 意識 視点移動 0.386 0.163 2.371 0.020 0.063 0.710 両眼視差 0.394 0.163 2.417 0.018 0.070 0.717 空間の広がり 0.218 0.123 1.766 0.081 0.027 0.462 現実感 定数項 2.328 0.092 25.274 0.000 2.145 2.511 0.087 5.733(2,97) 0.004 座面の回転 -0.296 0.098 -3.006 0.003 -0.491 -0.101 空間の広がり 0.157 0.101 1.559 0.122 -0.043 0.356

(8)

表9 重回帰分析に関する分散分析の結果 Table 9 Analysis of Variance in multiple regression

df sum square mean square F- value p- value decision

注視範囲 両眼視差 1 6109.400 6109.400 21.718 0.000 *** (垂直) 空間の広がり 1 786.500 786.500 2.796 0.099 . 前方 1 1079.600 1079.600 3.838 0.054 . 座面の回転 1 1476.000 1476.000 5.247 0.025 * 残差 65 18285.100 281.300 注視範囲 視点移動 1 84927.000 84927.000 25.767 0.000 *** (水平) 空間の広がり 1 14905.000 14905.000 4.522 0.037 * 前方 1 10639.000 10639.000 3.228 0.077 . 残差 66 217536.000 3296.000 椅子 視点移動 1 1432775.000 1432775.000 5.254 0.026 * 前方 1 977323.000 977323.000 3.584 0.065 . 残差 47 12816501.000 272692.000 肩 座面の回転 1 508295.000 508295.000 16.584 0.000 *** 残差 98 3003682.000 30650.000 頭部 両眼視差 1 612262.000 612262.000 25.070 0.000 *** (Pitch) 空間の広がり 1 463654.000 463654.000 18.985 0.000 *** 前方 1 206258.000 206258.000 8.445 0.005 ** 残差 96 2344556.000 24422.000 頭部 座面の回転 1 656402.000 656402.000 2.693 0.104 (Yaw) 視点移動 1 2690620.000 2690620.000 11.039 0.001 ** 両眼視差 1 2505144.000 2505144.000 10.278 0.002 ** 空間の広がり 1 974618.000 974618.000 3.999 0.048 * 残差 95 23155690.000 243744.000 気持ち悪さ 座面の回転 1 158.900 158.890 2.189 0.142 視点移動 1 668.000 668.000 9.201 0.003 ** 前方 1 199.800 199.770 2.752 0.100 残差 101 7332.500 72.600 目の疲れ 座面の回転 1 828.100 828.090 6.046 0.016 * 視点移動 1 1686.800 1686.850 12.316 0.001 *** 残差 102 13970.100 136.960 めまい・ 視点移動 1 679.400 679.410 3.981 0.049 * ふらつき 残差 103 17578.900 170.670 総合得点 座面の回転 1 477.600 477.620 4.375 0.039 * 視点移動 1 1398.800 1398.780 12.813 0.001 *** 残差 102 11135.500 109.170 覚醒度 座面の回転 1 59.930 59.933 16.312 0.000 *** 視点移動 1 65.410 65.411 17.803 0.000 *** 両眼視差 1 50.790 50.794 13.825 0.000 *** 空間の広がり 1 20.010 20.012 5.447 0.022 * 残差 100 367.410 3.674 情動価 視点移動 1 17.168 17.168 6.621 0.012 * 残差 103 267.079 2.593 総合的な 視点移動 1 2.282 2.282 1.643 0.203 臨場感 前方 1 6.001 6.001 4.321 0.040 * 残差 97 134.707 1.389 仮想空間 視点移動 1 5.023 5.023 4.020 0.048 * の臨場感 残差 98 122.470 1.250 外界への 視点移動 1 0.184 0.184 0.606 0.438 意識 両眼視差 1 1.083 1.083 3.572 0.062 . 空間の広がり 1 0.946 0.946 3.121 0.080 . 残差 96 29.107 0.303 現実感 座面の回転 1 2.190 2.190 9.036 0.003 ** 空間の広がり 1 0.589 0.589 2.430 0.122 残差 97 23.513 0.242

(9)

5 考察

5.1 客観指標

まず、視線の移動量に関して刺激と環境条件に有意

差が認められなかったが、仮想スクリーン上と

VR 空間

上のものが類似していることがわかる(相関係数:

0.935、

t(68)=21.75、p<.001)。このことから、眼球と頭部の運動

が同調していることが示唆される。注視範囲からは、コン

テンツにより視聴する範囲が異なることがわかった。コン

テンツの内容から、ストーリの展開に従うように観察して

いることがわかった。垂直方向の注視範囲からは、座面

の回転により範囲が狭まることがわかった。また、頭部

Pitch 角の回転量の環境条件間に差がないことから、座

面の回転が垂直方向の視覚情報の受容に影響すること

が示唆される。重回帰分析の結果から、コンテンツの特

徴として空間が開放的である場合、頭部運動および注

視範囲が大きくなることがわかった。つまり、開けた空間

では見回し行動が大きくなると考えられる。一方、前方

に注視対象がある場合は注視範囲が減少すること、頭

Pitch 角が減少することがわかった。このことから、前

方に視線が集中すること、特に垂直方向の動きが減少

することが示唆される。また、両眼視差により頭部運動

が減少すること、垂直方向の注視範囲が減少することが

わかった。両眼視差情報が付加されることにより、一部

分に対する興味が増加したことにより頭部運動が減少し

たと考えられる。また、コンテンツとして、画像の水平円

周上に注視対象が多くあり、視線が誘引されたと考えら

れる。視点移動が多いことにより、水平方向の頭部運動

および注視範囲が減少することがわかった。視点移動

によるベクションにより、視線がカメラの進行方向に誘導

されたと考えられる。

肩の回転量の環境条件に有意差が認められたことか

ら、座面の回転が大きく水平方向の視覚情報の受容に

影響することが示唆される。重回帰分析の結果から、座

面が回転する場合は椅子を動かし身体的負担を軽減し

ていることが示唆される。視点移動および前方に注視対

象がある場合に座面の回転が減少することは、注視範

囲の結果と一致している。

また、視覚情報の受容に大きく関わる身体行動が生

じるまでに一定の時間を要することがわかった。このこと

は、筆者らの以前の研究結果とも一致しており

[9]、静止

画・動画問わず観察行動に一種の準備期間があること

が示唆される。

5.2 主観指標

映像酔いに関して刺激間に差異が認められた。重回

帰分析の結果から、視点移動が多いことにより酔いが増

加したことがわかった。原因として、視点移動によりベク

ションが発生したことが考えられる。また、座面の回転の

影響も考慮すると、視点移動が特にめまい・ふらつきに

影響することが示唆される。座面の回転により目の疲れ

が増加したことが認められた。座面の回転の影響は、体

の回転がユーザの想定以上に増幅され、感覚の不一

致がむしろ増大したことが要因だと考えられる。

覚醒度に関して刺激間・環境条件に差異が認められ

た。重回帰分析の結果から、視点移動が多いこと、空間

が開けていること、両眼視差により覚醒度が上昇するこ

とが分かった。空間が開けていることによる見回し行動

の増大および視点移動により、視覚情報の受容が増加

することで覚醒度が上昇したことが考えられる。また、両

眼視差による覚醒度の上昇は筆者らの先行研究の結

果とも一致する

[20]。特に、コンテンツから、刺激 C は自

然の景色のコンテンツであり、リラックス効果が引き起こ

され覚醒度が低下する傾向に、刺激

D はジェットコース

ターのコンテンツであり、座面が回転しない条件では現

実に即しているため覚醒度が上昇する傾向にあったと

考えられる。座面の回転により覚醒度が抑制されること

が示唆される。

臨場感・現実感に関して刺激間に差異が認められた。

重回帰分析の結果から、視点移動により仮想空間への

臨場感が増加することが、注視対象が前方にあることに

より総合的な臨場感が低下すること、座面の回転により

現実感が低下することがわかった。しかし、偏回帰係数

から、大きく得点に影響しないと考えられる。本研究の

結果からはコンテンツの特性以外の要因(画質やストー

リー性など)が臨場感や現実感に影響すると考えられ

る。

しかしながら、重回帰分析の自由度調整済み決定係

数から、コンテンツの特性により十分な説明がされてい

ないことが示唆される。特に、臨場感や現実感に関して

は決定係数が非常に小さいため、十分な説明でない可

能性が高いと考えられる。座面の回転やコンテンツの特

性だけでなく、その他の要因によって心理・行動特性が

変化する可能性が考えられる。

6 おわりに

本研究では、360 度動画視聴中の心理・行動特性か

ら座面の回転の効果およびコンテンツの特徴に関する

検討を行った。結果から以下のことがわかった。

360 度動画視聴中の座面の回転は、

1) 身体行動および視覚情報の受容に影響する。

(2) ユーザの想定以上の体の動きを増幅し、感覚の

不一致が引き起こすことで目の疲れの上昇およ

び覚醒度の低下を誘発する。

また、コンテンツの特徴として

(3) 視点移動によりベクションが発生することで視線

が誘導されること、酔いやめまい・ふらつき、覚

醒度の上昇を誘発する。

4) 両眼視差・空間の広がりが見回し行動や覚醒度

(10)

に影響する。

5) 前方に注視対象があることで見回し行動が制限

される。

本研究では、一般にユーザの見回し行動の補助と考

えやすい回転椅子により視聴行動の変化が見られたが、

目の疲れや覚醒度といったユーザ体験に必ずしも貢献

する訳ではないということがわかった。これらの知見から、

コンテンツの内容だけでなく、コンテンツを体験する環

境も考慮した総合的な配慮が必要であると考えられる。

今後の課題として、インタラクティブ性の高いコンテンツ

や様々な環境を考慮した検討が必要である。

謝辞

本研究は、一般財団法人機械システム振興協会の

事業の一環として実施された。実験を実施するにあたり

塚田将太氏(当時早稲田大学)に助力を得た。ここに謝

意を表す。

参考文献

[1] M. J. Meehan: “Physiological Reaction as an Objective Measure of Presence in Virtual Environments”, Doctoral Dissertation, Computer Science, University of North Carolina, Chapel Hill, NC, USA, pp.1-142, 2001. [2] J. J-W. Lin, H. B. L. Duh, D. E. Parker, H. Abi-Rached, T.

A. Furness: “Effects of Field of View on Presence, Enjoyment, Memory, and Simulator Sickness in a Virtual Environment”, Proceedings of the IEEE Virtual Reality, pp.164-171, 2002.

[3] Paul Zimmons, Abigail Panter: “The Influence of Rendering Quality on Presence And Task Performance in a Virtual Environment”, Proceedings of the IEEE Virtual Reality, 2003.

[4] Jason D. Moss, Jon Austin Salley, Julie Coats, Krysten Williams, Eric R. Muth : “The effects of display delay on simulator sickness”, Displays, 32, pp.159-168, 2011. [5] 岩瀬弘和, 村田厚生:“長時間の HMD 装着作業が平衡

機能に及ぼす影響”, 電子情報通信学会論文誌, Vol. J-85 A, No. 9, pp.1005-1013, 2002.

[6] James F. Knight, Chris Baber: “Effect of Head-Mounted Display Posture”, HUMAN FACTORS, Vol. 49, No. 5, 2007.

[7] Ashutosh Singla, Stephan Fremerey, Werner Robitza, Alexander Raake : “Measuring and Comparing QoW and Simulator Sickness of Omnidirectional Videos in Different Head Mounted Displays”, QoMEX, 2017. [8] Stephen Palmisano, Rebecca Mursic, Juno Kim : “Vection

and cybersickness generated by head-and-display motion in the Oculus Rift”, Displays, 46, pp.1-8, 2017.

[9] 塚田将太, 長谷川雄祐, 伴地芳啓, 盛川浩志, 河合隆 史:” 簡易型 HMD を用いた 360 度映像観察中のユー ザの身体行動特性の分析”, 日本バーチャルリアリティ 学会, 21, 4, pp.595-603, 2016. [10] https://www.youtube.com/watch?v=6uG9vtckp1U, 2018/07/27. [11] https://www.youtube.com/watch?v=HNOT_feL27Y, 2018/07/27. [12] https://www.youtube.com/watch?v=gzJMqCVftKk, 2018/07/27. [13] https://www.youtube.com/watch?v=HU6B237RaIo, 2018/07/27. [14] https://www.youtube.com/watch?v=edcJ_JNeyhg, 2018/07/27.

[15] SMI Mobile Eye Tracking HMD based on Samsung Gear VR,

https://www.smivision.com/eye-tracking/product/mobile-eye-tracking-hmd-samsung-gearvr/, 2016/08/30.

[16] R.S. Kennedy, et al. : “Simulator Sickness Questionnaire: An enhanced method for quantifying simulator sickness,” The International Journal of Aviation Psychology, 3(3), pp.203-220, 1993.

[17] M.M. Bradley & P.J. Lang : “Measuring Emotion : The Self-Assessment Manikin and the semantic differential,” Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 25(1), pp.49-59, 1994.

[18] igroup presence questionnaire(IPQ) overview,

http://www.igroup.org/pq/ipq/, 2017/02/01.

[19] 福田亮子, 佐久間美能留, 中村悦夫, 福田忠彦:“注視 点 の定 義に 関す る実 験的検 討”, 人間工学, 32, 4, pp.197-204, 1996.

[20] Takashi Kawai, et al.: “Disparity modifications and the emotional effects of stereoscopic images”, SPIE, Vol.9011, pp.901115-1-8, 2014.

A 付録

10 秒区間の総回転量

A.1 刺激 A

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 椅子 肩 頭部 (Yaw) 頭部 (Pitch) 総回転量(度) 0~10(秒) 11~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~85

(11)

A.2 刺激 C

A.3 刺激 D

A.4 刺激 E

(2018 年 4 月 19 日受付)

[著者紹介]

伴地 芳啓 (非会員)

2018 年早稲田大学基幹理工学研究科修士 課程修了。現在、同大学博士後期課程在学中、 同大学基幹理工学部助手。HMD を用いた VR 映像に関する人間工学研究に従事。

吉川

佳祐 (非会員)

2018 年早稲田大学基幹理工学部表現工学 科卒業。現在、同大学基幹理工学研究科修士 課程在学中。HMD を用いた 360 度映像に関 する研究に従事。

河合 隆史 (会員)

早稲田大学基幹理工学部表現工学科教授。 1998 年早稲田大学人間科学研究科博士後期 課程修了後、同大学助手等を経て 2008 年度 より現職、現在に至る。立体映像(3D)や VR、ユビキタスコンピュータなど、次世代のメディアと ヒトのインタラクションに関する研究に従事。博士(人間 科学)。 0 200 400 600 800 1,000 1,200 椅子 肩 頭部 (Yaw) 頭部 (Pitch) 総回転量(度) 0~10(秒) 11~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~85 0 100 200 300 400 500 600 椅子 肩 頭部 (Yaw) 頭部 (Pitch) 総回転量(度) 0~10(秒) 11~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~85 0 100 200 300 400 500 600 700 800 椅子 肩 頭部 (Yaw) 頭部 (Pitch) 総回転量(度) 0~10(秒) 11~20 21~30 31~40 41~50 51~60 61~70 71~80 81~85

参照

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