三角関数と指数関数の逆関数
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復習
この節に書いてある命題の詳しい証明は先週説明した. 各自, 自分のノートを参考に復習する こと. 定義 1 (逆関数の定義). 関数 f : X → Y が次の条件 (※) を満たすとする: (※) いかなる y∈ f(X) に対しても, f(xy) = y を満たす xy ∈ X が唯一つ存在する. このとき, 各 y∈ f(X) に対して, 上の xy(つまり f に代入すると y になる定義域の元のこと) を 対応させる写像 g : f (X)→ X (g(y) := xy) を f の逆関数とよび f−1と書く. 備考 2. 逆関数は常に定義できるわけではない. 上の条件 (※) が成立しているときのみ定義す ることができる. 以下, f の逆関数について論じる際は, f が上の (※) を満たしているというこ とを暗黙のうちに前提として話を進めていると考えよ. 逆関数と呼ばれる所以は, お互いに合成すると元に戻るという次の性質にある. 命題 3 (逆関数の性質). 関数 f : X → Y の逆関数を g : f(X) → X とすると次を満たす: (1) いかなる x∈ X についても, g ◦ f(x) = x が成り立つ. (2) いかなる y ∈ f(X) についても, f ◦ g(y) = y が成り立つ. 備考 4. 上の条件 (1) と (2) を満たす g のことを f の逆関数と定義する流儀もある (表現の仕方 は違っても, 得られる逆関数は一致する). なお, 条件 (1) と (2) を満たす g が存在するためには 条件 (※) が成立しなければならない.1 命題 5. X をR の部分集合とし, f : X → R の逆関数を g とする. このとき, f のグラフと g の グラフは, 直線 y = x を軸に線対称である. 復習 6. 同じ形の関数でも定義域の定め方によって (※) が成立するか否かは変わってくるし, また逆関数の形も定義域によって変化する.2 例えば f (x) = x2という形の関数を考えよう. f の定義域をR とすると, f は (※) を満たさないので逆関数は存在しない. 定義域を [0, ∞) とす ると f は (※) を満たし, f−1(y) = √y となる. 定義域を (−∞, 0] とすると f は (※) を満たし, f−1(y) = −√y となる. レポート課題. 上の f (x) = x2において, 定義域を (−∞, 0] とすると f が (※) を満たすこと を示せ. また, g(y) =−√y が命題 3 の (1) および (2) を満たすことを確認せよ. 備考 7. 関数に代入する変数に文字 x を用いるという慣習から, 逆関数に代入する変数も文字 x を用いることが多い. この場合, f : X → Y の逆関数 f−1 : f (X)→ X に代入する x は f(X) の 元であるから, とくに Y の元である. つまり, 集合 Y の元を表す文字に x を用いている点に注 意すること. x と書いたら必ず X の元であると勘違いしてはいけない. 1(※) が成立しない状況を想定してみよう. これは, ある y∈ f(X) について f(x 1) = f (x2) = y を満たす 2 つ の異なる元 x1, x2∈ X が存在するということである. さて, f の逆関数 g を定義しようとするとき, g(y) は x1と 定めるべきだろうか, それとも x2と定めるべきだろうか. 前者を採用すると g◦ f(x2) = g(f (x2)) = g(y) = x1と なり, g は (1) を満たさない. 後者を採用しても g◦ f(x1) = x2となり, やはり (1) が満たされない. この考察から, (1) を満たすように g を定めることは出来ない (つまり逆関数が存在しない) ことが分かる. 2このような理由から, 写像の定義域 X を強調して f : X→ Y と書くのである. もちろん Y も強調する必要が ある. それは代入した値がどんなものであるか明確にするためである. 例えば, f (x) = (0, 1) と書いた場合, f (x) が平面R2の元(つまりベクトル)のことなのか, 開区間 (0, 1) のことなのか定かではない. 我々はこうした混乱 を避ける必要がある. 12
三角関数の逆関数
三角関数 sin x, cos x, tan x は, いずれも定義域をR にとると (※) を満たさない. そこで, (※) を満たすような定義域を考えたい. (※) を満たすような定義域の定め方は無数に考えられるが, 定義域をなるべく広く取ること, また, なるべく原点に近い部分に取ろうと考えれば, 次のよう に定義域を取るのが妥当であろう: • 定義域を[−π 2, π 2 ] とすれば, sin の値域は [−1, 1] であり, (※) を満たす. • 定義域を [0, π] とすれば, cos の値域は [−1, 1] であり, (※) を満たす. • 定義域を(−π 2, π 2 ) とすれば, tan の値域R はであり, (※) を満たす.
そこで, 上の定義域を採用した際の sin, cos, tan の逆関数をそれぞれ sin−1 : [−1, 1] → [ −π 2, π 2 ] , cos−1 : [−1, 1] → [0, π] , tan−1 :R → ( −π 2, π 2 ) , と書き, これらを逆三角関数と言う.. 次の備考で述べるような誤解を避けるために arcsin, arccos, arctan などと書く場合もある.
備考 8. sin−1x および (sin x)−1, sin x−1はすべて違うものであり, 混同しないように注意するこ
と. 一つ目が sin の逆関数に x を代入したものであり, 二つ目は sin x の逆数 (つまり 1 sin x) のこ と, 三つめは sin1 xのことである. 三角関数は角度 (単位はラジアン) を代入すると実数が与えられる関数であったから, 逆三角 関数は実数を代入すると角度が与えられる関数となる. 例題. 次の値を求めよ. (1) sin−1 1 2 (2) cos −1 1 2 (3) tan −11 (4) sin−12 (1) sin に代入すると1 2 になる角度のうちで, sin の定義域 [ −π 2, π 2 ] の元であるものはπ 6 である. したがって sin−1 12 = π6. (2) cos に代入すると 12 になる角度のうちで, cos の定義域 [0, π] の元であるものは π3 である. したがって cos−1 1 2 = π 3. (3) tan に代入すると 1 になる角度のうちで, tan の定義域(−π2,π2)の元であるものはπ4 であ る. したがって tan−11 = π4. (4) sin−1の定義域は [−1, 1] であったから, sin−1に 2 を代入することは出来ない (不適切な問 題).
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指数関数と対数関数
指数関数について述べる前に, 指数法則と平方根について簡単に復習しておく. 実数 x および 自然数 n に対して, x 自身の n 個の積を xnと書く. xnにおける x を底, n を指数 (または冪数) と言う. 公式 xm+n = xn· xmを指数法則と言う. 指数法則は次の計算により直ちに証明される: xm+n = x| × · · · × x{z } m+n 個の積 = x| × · · · × x{z } m 個の積 × x × · · · × x| {z } n 個の積 = xm× xn. 日常生活において指数の世話になる例として, 利子の複利計算がある. 年利 1 %の銀行に X 円を預けると 1 年後の預金額は X× 1.01 円となる. 2 年後の預金額は, 1 年経って X × 1.01 円 2となったものを更に1年間預けるわけだから X× 1.01 × 1.01 円である. 同様の考察を帰納的に 繰り返すことで, n 年後の預金額は X× 1.01n円になる. ところで, 8 年半預けた場合はいくらになるだろうか. X× 1.018.5円になると考えるのが自然 であるかもしれない.3 では, 1.018.5のような数を定めるにはどうすればよいか. ここで, n が自 然数でない場合, anをどの様に定めたかについて復習しよう. 基本理念は, 指数法則が常に成立 するという原則のもとで指数の概念を拡張するということである. 定義 9 (0 乗). a > 0 とする. 指数法則を満たすように a0を定めるとすれば, a = a1 = a1+0 = a1· a0 = a· a0が成り立つ. a ̸= 0 であったから a = a · a0の両辺を a で割ることで a0 = 1 を得 る. 以上の考察より, a > 0 に対して a0 := 1 と定める. 定義 10 (負の数による冪). a > 0, n を自然数とする. 指数法則を満たすように a−nを定める とすれば, 1 = a0 = an+(−n) = an· a−nが成り立つ. したがって, a−nは anの逆数, すなわち a−n:= 1 an と定める. 有理数の冪を考えるために, まずは中学生にもなじみのある根号を導入する. 定義 11. a > 0 とする. 一般に, 2 乗すると a になる数は 2 つ存在することが知られている. こ のうち正数であるものを a の平方根と呼び,√a と書く, また, n 乗すると a になる正数4 を a の n 乗根と呼び, √na と書く. 例 12. √2 は無理数であり, 小数展開すると√2 = 1.41421356· · · となることが知られている. 平方根の小数展開を求めるには, 実際に 2 乗した数と根号の中身の大小を調べればよい. 例え ば, (1.4142)2 = 1.99996164 < 2 < 2.00024449 = (1.4143)2という計算結果から, 1.4142 <√2 < 1.4143 となることが分かる. 同様の方法で n 乗根の小数展開も求められる.5 定義 13 (分数による冪). a > 0 とする. a1 2 · a 1 2 = a 1 2+ 1 2 = a1 = a であるから, a 1 2 も 2 乗すると a になる数である. そこで, a12 :=√a と定める. n を自然数とすれば a 1 n についても同様のこと が考えられ, a1n := √na と定める. 定義 14 (有理数による冪). a > 0 とし, m, n を正の整数とする. 指数法則のもとで a2 m = am1+ 1 m = a 1 m · a 1 m = ( am1 )2 が得られる. 分子が n の場合も同様で, amn := ( am1 )n と定める. 定義 15 (無理数による冪). 正の無理数 x > 0 に対して, 2xがどう定まるかをまず考えよう. x の小数点第 n 位以下を切り捨てた数を xnとおく. 例えば x = π の場合は x1 = 3, x2 = 3.1, x3 = 3.14, x4 = 3.141, · · · , x10= 3.141592653, · · · という具合である. xnは有限小数であるから有理数であり, 2xnは既に定義されている. また, x1 < x2 < x3· · · < 4 ゆえ 2x1 < 2x2 < 2x3 < · · · < 24が成り立つ. したがって, 実数の連続性 により数列 2xnは収束することが分かる. そこで, この極限値でもって 2x := lim n→∞2xn と定 める. 一般の a > 0 についても同様にして ax := lim n→∞axn と定めることができる. (ただし, 0 < a < 1) の場合は数列 axnが減少列 ax1 > ax2 > ax3 >· · · > ax1+1 になることに注意せよ). 負の実数の冪は, 定義 10 と同様に正の実数による冪の逆数と定めればよい. 以上の考察によっ て正数 a > 0 および実数 x に対して axを定めることができた.6 これは指数法則が成立すると いう原則のもとで定めたものであるから, 次の性質を持つ: 3現実にどのように対処されているのか, というのはまた別の問題である. 4実は, 数の世界を複素数にまで広げると, n 乗すると a になる数は全部で n 個あることが知られている. 5任意の桁数まで求められるという意味である. 無理数の小数展開は無限に数が並ぶため, すべての桁について 計算結果を得るには無限の時間が必要となるだろう 6a が負の数や複素数の場合にも axを定められることが知られている. ただし, これを理解するには, テーラー 展開やオイラーの公式に関する知識が必要になるので, この講義では扱わない. 3
(1) ax+y = ax· ay, (2) axy = (ax)y = (ay)x , (3) (ab)x = ax· bx, (4) ax−y = a x ay, (5) ( b a )x = b x ax, (6) a 0 = 1, (7) a−1 = 1 a. なお, (6) および (7) は, 共に (4) の特別な場合であるから挙げる必要はないが, 重要な事実な のであえて記述した. さて, 正数 a > 0 について, f (x) = axなる関数 f :R → R を指数関数と言う. a > 1 のとき単 調増加関数であり, a = 1 のとき定数関数 f (x) = a, 0 < a < 1 のとき単調減少関数となる. f の 値域は a̸= 1 のとき (0, ∞) であり, a = 1 のとき 1 点集合 {1} となる. これらの事実は a = 2 お よび a = 1 2 のグラフを書いて各自確認すること. ここで, 次を満たす関数を単調増加 (減少) 関 数であると言う: • 単調増加. x < y ならば f(x) < f(y). (狭義単調増加とも呼ばれる) • 単調減少. x < y ならば f(x) > f(y). (狭義単調減少とも呼ばれる) • 広義単調増加. x ≤ y ならば f(x) ≤ f(y). (単調非減少とも呼ばれる) • 広義単調減少. x ≤ y ならば f(x) ≥ f(y). (単調非増加とも呼ばれる) x の値が増加すると f (x) の値も増加するとき単調増加であり, x の値が増加すると f (x) の値が 減少するとき単調減少となる 命題 16. X をR の部分集合とし, f : X → R を単調増加 (減少) 関数とすれば, f の逆関数が存 在し, f−1も単調増加 (減少) である. Proof. f が単調増加の場合のみを証明する. まず f が逆関数を持つための条件 (※) を満たすこ とを, 背理法で示そう. 条件 (※) が成立しないと仮定する. つまりそれは, ある y∈ R について f (x) = f (x′) = y を満たす二つの異なる元 x, x′ ∈ X が見つかるということである. x ̸= x′ゆえ, x < x′または x > x′のいずれかが成り立つ. x < x′の場合は f の単調増加性より f (x) < f (x′) となる. これは y < y を意味し, このようなことはありえない. 同様にして x > x′の場合も否定 される. 以上より, f は条件 (※) を満たし, f は逆関数を持つ. 次に f−1が単調増加であることを示そう. y < y′とする. もし f−1(y) > f−1(y′) になるとす ると, f の単調増加性より f (f−1(y)) > f (f−1(y′)) となる. これは y > y′を意味し, y < y′とし たことに反する. ゆえに f−1(y) > f−1(y′) にはならないので f−1(y)≤ f−1(y′) である. ここで, もし f−1(y) = f−1(y′) とすると y = y′となり, これも y < y′としたことに反する. したがって, f−1(y) = f−1(y′) もあり得ない. 以上より f−1(y) < f−1(y′) となる. 上の命題により, a̸= 1 とすれば, axの逆関数が存在する. これを対数関数と呼び, log ax と書く. すなわち logax とは, a を何乗すると x になるか?という数のことである. 例. (1) log28 = 3, (2) log31
9 =−2, (3) logaa = 1, (4) loga1 = 0, (5) loga(a
x) = x,
(6) alogaA = A.
axの定義域がR, 値域が (0, ∞) であったから, その逆関数である対数関数の定義域は (0, ∞),
値域はR となる. 命題 16 より, a > 1 のとき logax は単調増加であり, 0 < a < 1 のとき logax は単調減少である. 対数関数について次が成立する. 証明は教科書 p.30 を参照せよ.
(1) loga(AB) = logaA + logaB, (2) logaA
B = logaA− logaB, (3) loga(A
p) = p log aA.
命題 17 (底の交換公式). logaA = logbA logba.
Proof. logbA = (logaA)· (logba) を示せばよい. つまり b(logaA)·(logba)= A を示せばよい.
(左辺) =(blogba)logaA=(a)logaA= A.