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中国と日本における大学生の自己開示と対人ストレスの関連 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)中国と日本における大学生の自己開示と対人ストレスの関連 キーワード:大学生,自己開示,対人ストレス,中国と日本 人間共生システム専攻 顧 佩霊. Ⅰ.問題と目的. の弱点などを避けて語らない特徴があることと示唆され. 青年期における重要な発達課題は,対人関係における. たが,日本人が他者に対して好ましい印象を与えようと. 積極的に他者と関わろうとする傾向を高めることである. する「人あたりのよさ」という概念(堀毛,1994)は中. (八木,2008) 。しかし,情報化の進歩に伴い,青年期に. 国と異なることが予想される。また,日本大学生の「ふ. あたる大学生は,対人関係は「希薄化」 (落合ら,2004). れあい恐怖的心性」 (岡田,1992)の特質と,中国大学生. しており,対人関係のストレス性の不安や対人恐怖など. は人との付き合いにおけるストレスが最も強いというこ. は,時代の精神病理としてごく日常的になってきている。. とが明らかになっている(藍,2008) 。自己開示と対人ス. 彼らの行動化傾向や引きこもりを伴う人格障害などが全. トレスにおいて,中国大学生と日本大学生の行動様式に. 国的に増加傾向にある(佐治,1994) 。そのような状態を. はある程度の類似性が見出されるが,それ以上に違いが. 改善するため,対人関係における他者との関わり方やそ. 目立つとされ,両国の間に行動を律する規則や考え方,. れに関わる自分にどのようなストレスをもたらしている. その背景となる習慣や価値観など,多く異なるであろう。. かについて明らかにすることは大学生への援助をめぐる. 以上の問題意識から,若者を囲む環境の変化において,. 大きなテーマとなっているといえる。. 中国と日本の大学生の自己開示の特徴にはどのような共. 自己開示とは自分の考えや気持ちを他者に伝える行動. 通点あるいは違いが示されるのであるのか,自己開示が. と定義され(安藤,1986),他者との関わり方の一つとして. 対人ストレスに与える影響を明らかにすることが現代大. 対人関係の質を反映する。適切な相手に対する適切な水. 学生の表層的な青年像を改善するため必要だと考えられ. 準の自己開示が不可欠である(Jourard,1974)ことが強. る。さらに,本研究で中日大学生の対人関係上の問題を. 調された一方で,不適切な自己開示が,対人ストレスを. 比較研究することは中日の異文化理解,異文化適応援助. 生起させる要因として影響力も持っているではないだろ. にも意義がより大きいと思われる。. うか。また,自分に関する悩みを開示することは,相手. 本研究では,自己開示のきっかけとなる要因―「自己. との関係性の深まりや情動改善,視野の広がりなどのメ. 開示動機」 ,自己開示の方法となる要因―「適切性・不適. リットがある一方で,相手への悪影響や自己イメージの. 切性」 ,自己開示の内容要因として否定的内容の自己開示. 悪化といったデメリットがあることも指摘されており. という3側面に着目し,中国と日本における大学生の自. (及川・坂本,2005) ,それまで築きあげてきたお互いの. 己開示の特徴と相違を検討する。そして,中日大学生の. 関係にマイナスの質的な変化を生じさせると予測される。. 対人ストレスの様相を明らかにし,自己開示の3つの側. そこで,他者との関係を築いていく上で自己開示を研究. 面が相互作用しながら対人ストレスに影響を与えるとい. する意義は大きく,また逆に対人関係を規定する重要な. う因果モデルを設定し,その検証を行い,中日の類似点. 変数と考えられる。今までの研究で,自己開示量や開示. と差異点を比較・検討することを目的とする。. Ⅱ.研究1. 対象など,個人内の部分的側面と精神的健康の関連は明 1.目的. らかになっているが,自己開示を全体的に捉え,対人関. 自己開示動機,自己開示方法―適切性・不適切性と否. 係において自己開示の果たしている役割を明らかにした. 定的内容の自己開示という 3 つの側面に着目し,中国と. 研究があまり見当たらない。. 日本における大学生の特徴と相違を検討する。. 自己開示の質的な深さは,非西洋的文化圏出身者に特 徴的に見られ(Wheeless,L.R. et al.1986 ) ,中国と日. 2.方法. 本の差異は欧米より大きくないものの,文化背景などの. 1)対象:中国 A 市大学生 350 名(男性 138 名,女性 212. 相違も指摘されている(王ら,2005) 。Butterfield(1991). 名) ;日本 B 市大学生 534 名(男性 260 名,女性 274 名) 。. によれば,中国人は面子を保とうとし,他人の前で自分. 2)手続き:. 1.

(2) ①調査時期:2008 年 9 月∼11 月. 識していると示された。また,t検定の結果から,日本. ②調査内容:ⅰ)自己開示動機尺度(小口,1990)6. 大学生の方が“ネガティビティ” “しつこさ”に関する項. 件法で,12 項目。ⅱ)自己開示方法―適切性・不適切性. 目の得点が高かった。日本大学生が個人的な情報を開示. 尺度(森脇ら,2002)4 件法。 「適切な」自己開示の 12. しないと個人的情報を共有できにくくなり,開示しすぎ. 項目と「不適切な」自己開示の 23 項目。ⅲ)否定的内容. るとプライバシーが保てなくなるという葛藤を起こしや. の自己開示尺度(亀田,2003)5 件法で,大学生に対し. すい傾向がある(和田,1995)という指摘が今回の結果. て不適切な項目(収入が少ない)を削除し,21 項目。開. と一致しているといえる。. 示相手としては「一番親しい相手」を設定した。. 3)否定的内容の自己開示について. ③中国語版質問紙の作成:a)日本語版の各尺度を,筆. 因子分析結果を Table1 に示す。項目数に若干の違いが. 者と中国出身の心理系の大学院生 2 名により中国語に翻. 見られるが,中国と日本ともに“自分の進路に関する悩. 訳を行った。b)その中国語の質問紙を在中の日本人留学. み” “自分の能力に関する悩み” “気分の沈む悩み”とい. 生 2 名に日本語に翻訳してもらい,その日本語について,. う 3 因子構造が得られた。また,t 検定の結果で,中国. 筆者を含む 3 名で,元の日本語の尺度の質問文との差異. の進路問題の得点が高かった。これは中国の一人っ子の. について検討し,問題が見られた質問文について,中国. 親たちは自分の子どもにすべての夢をかけ,将来への期. 語の質問文に変更を行った後に,中国の大学で心理系の. 待が強いので大学生のプレッシャーが強くなるのでない. 先生に中国語質問文の流暢さを確認した。. かと考えられる。日本の自分の能力に関する悩みの得点. ④分析方法:a)各尺度に対して中日それぞれに因子分. が高かった結果から, 「自分に対する自信の無さ」といっ. 析を行った。b)各尺度の項目ごとに中日差を分析した(t. た傾向が一般の日本大学生の特徴(永井,1990)を反映し. 検定) 。. たと考えられた。. 3.結果と考察. Table1 中国と日本の自己開示に関する尺度の因子分析結果(主因子法,プロマックス回転). 1)自己開示動機について. 中国 因子名. 因子分析結果を Table1 に示す。日本では,小口(1990) の研究で得られた 3 因子構造と同様の結果に示したが, 自己開示 動機. 中国では, “規範的意識”因子が抽出されなくなり, “無 意図 C”という新しい因子が抽出された。また,t検定. 因子名. 自己アピールC 感情的発散C. .61. 自分の中にしまっておきたくな いため(3). .53 話題が他にないため(2). た。中国においては,動機として,日本とは,異なる概 念である可能性が示された。また,中国大学生の方が“自 己アピール”に関する項目の得点が高く見られ,中国大 学生の自己表現意欲の高さと自己主張的な傾向があるこ とが明らかになった。. 否定的 内容の 自己開示. 2)自己開示方法−適切性・不適切性について. 項目例と項目数. 自分びイメージを変えたりする .76 ため(3). 感情的発散J. .69. 自分の中にしまっておきたくな いため(3). 規範的意識J. .76. その場の雰囲気に合わせるた め(5). 聞き手に関心があるときを選ん 相手文脈配慮J で個人的な話をする(5). .67. 個人的な話をするときは,その 場の話の流れに気を遣う(5). 場所環境配慮C .67. 周囲に多くの人がいるときに, なるべく個人的話をしない(3). .53. 他人から干渉されない場所を 選んで個人的な話をする(3). .75. 騒がしいところで個人的な話を する(4). 場所等配慮J. 自己開示 相手場所非選択C .65 相手を選ばずに個人的な話を 場所等無配慮J する(3) 方法− 適切性・ 騒がしいところで個人的な話を 相手環境無配慮C .63 しつこさJ 不適切性 する(4). れらが動機として類似する概念とは意識されていなかっ. α係数. 相手文脈配慮C .67. 高かったことから,中国大学生は,日本では規範意識と して捉えられる動機によって頻繁に開示しているが,そ. 日本 項目例と項目数. 自分びイメージを変えたりする .69 自己アピールJ ため(4). 無意図C. の結果で,日本より中国の方が規範意識の項目の得点が. α係数. しつこさC. .80. 一つの事柄について,何度も 話す(4). ネガティビティC. .82. ネガティブな内容に偏っている (3). 自分の能力に 関する悩みC. .80. 効果的なコミュニケーションの 方法が分からない(8). 自分の進路に 関する悩みC. .78. 卒業後の就職や進路に不安や 自分の進路に 悩むがある(5) 関する悩みJ. .88 何度も同じ話をする(5). ネガティビティJ. .92. ネガティブな内容に偏っている (3). 自分の能力に 関する悩みJ. .78. 授業などの際に,人前で話す のが苦手で悩んでいる(6). .81 将来の進路が決まらない(4). 悲しい出来事や泣きたい出来 気分の沈む悩みC .74 気分の沈む悩みJ .81 気分が落ち込んでいる(7) 事がある(5). 因子分析結果を Table1 に示す。日本では, 「適切な」. CはChina:中国版の意;JはJapan:日本版の意. 自己開示が 2 因子と「不適切な」自己開示 3 因子から合. Ⅲ.研究2. 計 5 因子が抽出された結果に対して,中国では,6 因子 1.目的. の構造が得られた。森脇ら(2002)の研究で「不適切な」. 中国と日本における大学生の自己開示と対人ストレス. 項目から抽出された 4 因子の中で, “相手,場所非選択 C” が一つの因子としてまとまったが,因子相関の結果で「適. の関連を検討するため,中国と日本大学生の対人ストレ. 切な」因子と正の相関, 「不適切な」因子と負の相関が示. スの様相を明らかにすることを目的とする。. された。中国人が相手と場所の選択せずに胸中の情動を. 2.方法. 発散する(榎本,1997)手段として適切な開示方法と認. 1)対象:同研究Ⅰ. 2.

(3) 2)手続き:. 切性および否定的内容の自己開示が対人ストレスに与え. ①調査時期:同研究Ⅰ. る影響を検討する。また,自己開示の3つの側面と対人. ②調査内容:対人ストレスイベント尺度:橋本(1997). ストレスに関する因果モデルの作成を行い,そのモデル. 4 件法で,30 項目。教示文を“大学に入ってからこれら. 構造の中日の相違を検討することを目的とする。. の出来事がどのくらいの頻度で起きたか答えてくださ. 2.方法. い”に変更して用いた。. 1)対象:同研究Ⅰ. ③分析方法:a)中日別に因子分析を行った。b)中日デ. 2)手続き:. ータを合わせて因子分析をし,国を要因として分散分析. ①調査時期,調査内容:同研究Ⅰと研究Ⅱ. を行った。. ②分析方法:パス解析と共分散分析. 3.結果と考察. 3.結果と考察. 1)中国と日本それぞれ対人ストレス特徴の検討. 1)自己開示の各側面と対人ストレスの関連の検討. 中日の因子ごとで項目数が若干違うが,橋本(1997). 中国において,自己開示各側面と対人ストレスの関連. と同様に“対人劣等” “対人葛藤” “対人摩耗”という 3. のパス解析図を Figure2 に示す。自己開示動機の“無意. 因子が抽出された(Table2) 。中日ともにこの 3 種類の対. 図 C”と“自分の能力に関する悩み C”と“しつこさ C”. 人ストレスが存在することが明確された。. から対人ストレスへ引いた正のパス係数が示された。は. Table2 中国と日本の自己開示に関する尺度の因子分析結果(主因子法,プロマックス回転). っきりした考え・目的が無い自己開示することが多いほ. 中国 因子名 α 対 ベ 人 対人劣等C .83 ンス ト ト 対人葛藤C .81 尺レ 度ス 対人摩耗C .79 イ. 日本. 項目例と項目数. 因子名. α. ど対人ストレスの生起頻度が高くなるかもしれないこと. 項目例と項目数. 会話中何をしゃべったらい 知人とどのように付き合えば 対人劣等J .88 いのか分からない(7) いいのか分からなくなった(7) 知人から責められた (11). 対人葛藤J .86 人とけんかした(10). 嫌な人と会話した(7). 対人摩耗J .85. が推測された。 自分の能力の悩む. テンポの合わない人と会話し た(8). .25*** 無意図. 2)対人ストレスについて中日差の検討. .42***. 対人ストレスC .32***. 中日のデータを合わせ因子分析し,分散分析の結果を. しつこさ. Figure1に示す。 “対人葛藤”において,中国大学生の方. ***p<.001. が生起頻度が高く, “対人劣等”において,日本大学生の. Figure2 中国の大学生の自己開示各尺度と対人ストレスパス解析図. 方が生起頻度が高いと示唆された。中国人大学生が個人. 各尺度因子間相関と観測変数と誤差項,モデルの適合度は省略した. の欲求,目標などを主張するため社会的規範的にも好ま. 日本において,自己開示各側面と対人ストレスの関連. しくないけんかや対立などの顕在な対人衝突が起こりや. のパス解析図を Figure3 に示す。 “自己アピール J” “感. すい傾向と,日本大学生が他者に対して非常に気を使い,. 情の発散 J” “自分の能力に関する悩み J”と“ネガティ. 自身のコミュニケーション能力,社会スキルの欠如(岡田,. ビティ J” , “しつこさ J” , “相手文脈配慮 J”から対人ス. 2002)などにより,相互作用において劣等感を触発しやす. トレスへ引いた正のパス係数が示された。. い傾向という対人関係の特徴を表れたといえよう。また,. 感情的発散. 自分の能力の悩む .18**. 日常的対人関係を円滑に進めようとすることにより気疲. 対人ストレスJ. 自己アピール. れを引き起こすという“対人摩耗”の生起頻度は両国に. .35***. .27***. 共通していると示唆された。. .26**. .48***. .17** 相手文脈配慮. ***. ネガティビティ. しつこさ. 2.80 ***. 2.60 Figure3 日本の大学生の自己開示各尺度と対人ストレスパス解析図. 中国 2.40. 日本. **p<.01,***p<.001. 各尺度因子間相関と観測変数と誤差項,モデルの適合度は省略した. 2.20. 中国と日本の大学生が,自分の能力に関する悩みを開. 2.00 対人劣等. 対人葛藤. Figure1 対人ストレスの中日差. 対人摩耗. 示することが対人ストレスに直接的な影響を与えること. ***p<.001. が示された。自分の内面の開示において相手の受容はこ. Ⅳ.研究3. の心の緊張緩和をより促進する(榎本,1997)と指摘さ. 1.目的. れたが,逆に相手に自分の弱点などをさらすため相対的. 大学生の自己開示動機,自己開示方法―適切性・不適. 立場が弱くなるなどの社会コントロール喪失不安による. 3.

(4) 対人ストレスの生起頻度が高くなるということは中日で. と対人ストレスとの関連の違いが明らかになり,それら. 共通していると考えられる。また,自己開示方法が対人. の相違による中国と日本の文化差や「個性を主張する」. ストレスに与える影響は中日の差異が大きく見られたこ. 中国大学生と「規範を配慮する」日本大学生の性格特徴. とから,中日の大学生が自己開示方法の捉え方が違うと. が示された。塩見(2000)は青年期の課題である「個性. 推察できる。. 化」と「社会化」の2つの過程で,対人関係上でそのバ. 2)自己開示と対人ストレスの関連について中日モデル. ランスをとることが難しく,自己開示のあり方にも深く. 構造の検討. 関わるという問題が指摘される(平石,1995;飯長,1995) 。. 中国と日本の構造モデルは Figure4 に示す。中国の方. 本研究で,日本人は人とつき合う際,より他者に気を配. が日本より自己開示動機から対人ストレスへ引いたパス. り,感情をあまり表に出さないといったような特徴があ. 係数が大きく,自己開示方法から対人ストレスへ引いた. ることに対して,中国人は,より自らの面子を重視した. パス係数が中日ほぼ同様であり,否定的内容の自己開示. り,自らを中心に物事を考えたり,強烈に自己主張をす. から対人ストレスへ引いたパス係数が日本のみ有意であ. るなどの傾向がある(天児,2003)ということが示され. る結果と示唆された。中国と日本とも,自己開示の3つ. た結果によって,中国人大学生が他者とケンカや対立な. の側面が相互作用しあい,対人ストレスに影響を与える. ど“対人葛藤”のストレスを生じる頻度が多くなり,日. ことが示唆されるが,両国の相違点もあることが明らか. 本大学生が対人不安や引きこもりなど“対人劣等”のス. になった。特に,中国大学生が悩みなどを開示すること. トレスを生じる頻度が多くなる特徴的であると示唆され. が自己開示動機と方法との相互影響をした上で,対人ス. た。このように,中国と日本においては,対人ストレス. トレスに与える影響がなくなることが示された。. に関する概念が類似しているも解釈が異なるものが存在. また,中国大学生の自己開示動機と否定的内容の自己. し,自己開示などの人と関わり方が根本的に異なるもの. 開示との関連が強く,日本大学生の自己開示動機と自己. 存在している。また,本研究で検証されたモデルにおい. 開示方法との関連が相対的に強いという結果が示された。. ても,自己開示3側面が相互作用しあい,対人ストレス. 中国と日本において, 「自己開示動機は対人ストレスの生. に影響することが明らかになったことは,今までの知見. 起頻度に影響を与える」というパスが検証された。この. を一歩進めたものとなるといえる。本研究で得た中国と. 結果を解釈すると,Leary(1983)が「他者に望ましい印象. 日本との異なる点に対する可能な解釈の一つとして,こ. を与えようとする動機づけの強さと,自己呈示がうまく. のような中国と日本の両国の相違点が大きく働いている. いくとする自己効力感の高さという対人不安感と関連す. のではないかと考えられる。. Ⅵ.今後の課題. る2つの要因を指摘したように,自己開示の動機づけが. 中国と日本の大学生の自己開示の相違点が示されたが,. 高く,かつ自己効力感が低いほど,言い換えれば,望ま しい印象を与えようとする動機づけは高いがそれに成功. 今回は日本や西洋に研究を参考にしたため,中国大学生. する見込みが小さい場合ほど,人は強い不安を覚え,対. を対象とする質的調査した上で,中国語版の自己開示動. 人ストレスの生起頻度も高くなることは中日に共通して. 機,自己開示方法尺度を作成し,検討する必要である。 今日顕在化している大学生に対人関係上の諸問題が果. いると推測される。. たして自己開示欠如に基づくのか,そしてそれぞれの問. 自己開示動機. 題の抑制・早期解決にはどのような自己開示が有効なの .44**/.27**. か,残された課題は少なくない。本研究で得られたモデ. .59***/.36***. .23*/.42***. ルは日本の先行研究を根拠にした質問紙調査であり,臨. 対人ストレス. 床場面で結果ではなく,対人関係と関連がある変数とし .08/.20**. .20*/.21** 自己開示方法. .15*/.29***. ても中国と日本それぞれ異なっている。したがって,今 否定的内容の自己開示. 後本研究を土台として,実践場面での実証的なデータを. Figure4 中国/日本の大学生の自己開示と対人ストレスの関連の構造モデル. 得て,より多様な要因との関連について確認することが. モデルの適合度:GFI=.920/.920 ,AGFI=.869/.870 ,RMSEA=.086/.090 観測変数及び各誤差変数は省略した. 必要であると思われる。. *P<.05,**P<.01,***P<.001. Ⅶ.文献. Ⅴ.総合考察. 橋本 剛(2005) .ストレスと対人関係 ナカニシア出版. 本研究では,中国と日本の大学生が自己開示の捉え方. 榎本博明(1997) .自己開示の心理学的研究 北大路書房. 4.

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