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自己概念に関する多面的階層モデルの検討と自己変容過程に及ぼす運動・スポーツの影響 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)自己概念に関する多面的階層モデルの検討と 自己変容過程に及ぼす運動・スポーツの影響―中途身体障碍者を対象に― キーワード:自己,自尊感情,身体的自己知覚,量的・質的アプローチ. 1.はじめに. 所 属. 行動システム専攻. 氏 名. 内田 若希. す運動・スポーツの影響を,量的・質的アプローチから. 身体的自己知覚は,自己の中心的要素であるので,受. 解明することを目的とした.具体的には,① わが国にお. 傷により身体機能や身体の一部を喪失することは,それ. いて研究が遅れている理論モデルとこれに準拠する信頼. までの身体的自己知覚が歪められるだけでなく自己全体. 性および妥当性の高い尺度の開発, ② 作成した尺度を用. (自己概念や自尊感情など) も揺らぐと考えられる.しか. いて,中途身体障碍者における多面的階層モデルの適用. しその一方で,運動・スポーツを通して身体的自己知覚. の検討,③ 質的アプローチを用いた,受傷から現在まで. が再定義されると,自己全体が再構築される可能性があ. の自己の再構築過程に果たす運動・スポーツの役割の検. るのではないだろうか.このことを,Fox & Corbin (1989). 討であった.. の多面的階層モデル (図 1) に準拠して仮説を立てた. 2.日本語版身体的自己知覚プロフィールの開発 (第 1. (図 2).. 章). 従来の運動・スポーツ科学領域における身体障碍者を. 1)目 的. 対象とした研究では,① 理論モデルの不在,② 量的ア. 第 1 章では,Fox &Corbin (1989) の多面的階層モデル. プローチの限界が指摘されている.そこで本研究では,. に準拠した Physical Self-Perception Profile (PSPP) に基づ. 中途身体障碍者を対象として,自己概念の多面的階層モ. く日本語版尺度 (PSPP-Japanese Version: PSPP-J) を作成. デル (Fox & Corbin, 1989) の適用と自己変容過程に及ぼ. することを目的とした. 2)方 法. 自尊感情. (1)対象者 身体的 自己価値 (PSW) スポーツ 有能感 (Sport). 体調管理 (Cond). 尺度の作成においては,大学生 516 名 (19.3±1.27 歳) を対象とした.また,信頼性および判別妥当性の検討に. 魅力的な からだ (Body). おいては,大学生 93 名 (19.0±0.74 歳),外的妥当性の検. 身体的 強さ (Stren). 討では,健常成人 332 名 (36.6±11.41 歳) を用いた. (2)調査項目の日本語訳. 図1. Fox & Corbin (1989) の多面的階層モデル 自己概念/自尊感情の 喪失 (自己の揺らぎ). 自己概念/自尊感情の 獲得 (自己の再構築). 身体的自己価値. 身体的自己価値. ex.) 身体的側面全般に 対する不満足感,障碍 を受容していない. ex.) 障碍受容や自己受 容の促進. スポーツ有能感 受   傷. 否 定 的 な 身 体 的 変 化. 受 傷 前 の 身 体 的 自 己 知 覚 の 喪 失. ex.) 身体能力の制限に 伴う「できない」とい う知覚. 体調管理 ex.) 体力低下の知覚, 二次障碍による体調不 良の知覚. 魅力的なからだ ex.) 機能・形態障碍に 伴う体型や外見の変化 に対する不満足感. 身体的強さ ex.) 機能・形態障碍や 身体能力の制限に伴う 筋力低下の知覚. 運 動 ・ ス ポ ー ツ. 原版の PSPP は,身体的自己知覚の 4 つの下位領域で ある Sports Competence (Sport),Physical Condition (Cond), Attractive Body (Body),Physical Strength (Stren),および包 括的な概念である Physical Self-Worth (PSW) の 5 因子 30 項目で構成される.邦訳された PSPP が原版と内容的に 一致しているかに関しては,長年の留学経験を有し,英. スポーツ有能感. 肯 定 的 な 身 体 的 変 化. 新 た な 身 体 的 自 己 知 覚 の 再 構 築. ex.) 残存機能の可能性 への気づき,新たな動 作の獲得. 語に堪能な研究者が判断を行った. 3)結果および考察. 体調管理 ex.) 体力向上の知覚, 体調のコントロール感. (1)探索的因子分析による因子構造の検討 4 つの下位領域の 24 項目について主因子法エカマック. 魅力的なからだ ex.) 障碍のある身体に 対する不満足感の減少. ス回転 (4 因子解) を行った.この結果,全分散の 47.7%. 身体的強さ. を説明した.各因子に含まれる項目は,因子負荷量が .35. ex.) 筋力向上の知覚, 筋肉の発達への気づき. 受 傷. 以上を示した.第 1 因子は,原版の PSPP の「Sport」の 現 在. 図2. 多面的階層モデルを応用した本研究の仮説モデル. 6 項目と「Cond」の 1 項目を含む 7 項目から構成されて.

(2) おり, 「スポーツ有能感」と命名した.第 2 因子に含まれ. 章で作成された PSPP-J を用いた.. る項目は,PSPP の「Cond」の残り 5 項目から構成され. 3)結果および考察. ており, 「体調管理」と命名した.第 3 因子は,PSPP の. (1)検証的因子分析による測定項目の検討. 「Body」6 項目から成り, 「魅力的なからだ」と命名した.. はじめに,測定尺度の妥当性を示すために,ヌルモデ. 第 4 因子は PSPP の「Stren」6 項目から構成されており,. ル (測定項目間に関連が存在しない 6 つの変数から成る),. 「身体的強さ (Stren)」と命名した.. モデル 1 (すべての測定項目が 1 つの自尊感情の因子に寄. (2)ステップワイズ因子分析による項目分析. 与),モデル 2 (自尊感情尺度と PSPP-J の 5 因子をそれぞ. 作成された PSPP-J 全体の適合度は GFI = .86,AGFI. れ独立した潜在変数として位置づけているが,変数間に. = .84,RMSEA = .06 であり,GFI において十分な値が得. 関連なし),モデル 3 (モデル 2 と同様の構造であるが,. られなかった. そこで, ステップワイズ因子分析を行い,. 潜在変数間に関連あり) の 4 つの検証的因子分析モデル. 不適切な項目を削除した.ステップワイズ因子分析の結. による検討を行った.それぞれのモデルの適合度を算出. 果,20 項目が採択され,尺度全体の適合度は GFI = .91,. したところ,モデル 3 は他のモデルと比較し, GFI,AGFI,. AGFI = .88,RMSEA = .06 を示し,尺度の因子構造の妥. および RMSEA のすべてにおいて統計学的な許容水準を. 当性が確認された.. 満たした.この結果から,Rosenberg の自尊感情尺度と. (3)信頼性および妥当性の検討. PSPP-J の各因子はそれぞれ独立した潜在変数であり,か. PSPP-J の 5 因子それぞれについて Cronbach のα係数 を算出した結果, α = .81―.87 と概ね高い値が得られた.. つ潜在変数間に関連があることが明らかになった. (2)構造方程式モデリングによる検討. さらに,再検査法の結果,2 回の実施間における各因子. つぎに,これらの尺度を用いて Fox & Corbin (1989) の. の相関係数の値は r = .82―.92 (p< .001) であり,有意な. 多面的階層モデルの構造を検証した.モデル 4 (4 つの下. 関連がみられた.これらの結果から, PSPP-J は,高い. 位領域から自尊感情への直接的なパスが含まれる) およ. 信頼性を備えているといえる.. びモデル 5 (「身体的自己価値」が自尊感情と 4 つの下位. また,運動実施者と非実施者における弁別性を測定す. 領域の媒介変数となる) を仮定し検討を行った.. るために,判別分析を実施した.その結果,正準相関係. モデル 4 およびモデル 5 の適合度指標はともに高い値. 数は .51 (p < .001) であった.運動実施/非実施の判別の. を示したが,モデル 5 においてのみ,すべての標準偏回. 正確さは 76.3%であり,分類の正確性は高く,判別妥当. 帰係数で有意な値が得られた.また,モデル 4 とモデル. 性が確認された.さらに,PSPP-J が,その他の母集団に. 5 をカイ二乗検定により比較したところ相違はみられず,. 適用が可能であるかを検証するために,健常成人 332 名. より制約が厳しいにもかかわらず同様の適合度を示し,. を対象とし,検証的因子分析を行った.この結果,適合. またすべての標準偏回帰係数において有意な値を示した. 度指標は GFI = .92,AGFI = .89,RMSEA = .05 を示し,. モデル 5 を採択することは妥当であると判断した.これ. 健常成人への適用性が確認された.. らのことから,Fox & Corbin (1989) が提示した多面的階. 以上のように,5 因子 20 項目から構成される,信頼性・. 層モデルは,好ましいモデルであることが示唆された.. 妥当性を備えた尺度が作成された. 4.中途身体障碍者への多面的階層モデルの適用―量的 3.自己概念に関する多面的階層モデルの検証 (第 2 章). アプローチ― (第 3 章). 1)目 的. 1)目 的. 第 2 章では,PSPP-J を用いて Fox & Corbin (1989) が提. 第 3 章では,健常者を対象に作成された多面的階層モ. 示した多面的階層モデルの妥当性を検証することを目的. デルについて,中途身体障碍者への適用を検討すること. とした.. を目的とした.. 2)方 法. 2)方 法. (1)対象者. (1)対象者. 大学生 516 名 (19.3±1.27 歳) を対象とした. (2)心理学的測度 Rosenberg の自尊感情尺度: Rosenberg (1965) が開発し た自尊感情尺度の日本語版 (星野, 1970) を使用した.. 日本語版身体的自己知覚プロフィール (PSPP-J): 第 1. 中途で身体障碍を受傷した 83 名 (47.9±15.87 歳) を対 象とした. (2)心理学的測度 Rosenberg の自尊感情尺度: Rosenberg (1965) が開発し た自尊感情尺度の日本語版 (星野, 1970) を使用した..

(3) 日本語版身体的自己知覚プロフィール改訂版 (PSPP-J. また, 補足のために約 1 ヵ月後に再度 40 分程度のインタ. 改訂版): 第 3 章では,PSPP-J の回答形式を改訂したもの. ビューを実施した.. を用いた.PSPP-J で用いられた Harter (1985) の方法論に. 3)結果および考察. よる他者描写の回答形式は,対象者にとって難解であっ たため,その回答形式を自己描写に改訂した.改訂版の 信頼性および妥当性は,PSPP-J 同様に高い値を示した. 3)結果および考察. 質的内容分析による結果を表 1 および表 2 にまとめた. (1)受傷により揺らぐ自己 脊髄損傷という事故により,下肢機能全廃,膀胱・直 腸障碍が生じ,これらに伴う体型や筋力の変化が起こる. パス解析の結果,適合度指標の GFI および CFI は水準. ことは,身体機能や身体の一部喪失など身体そのものに. を満たしており,Fox & Corbin (1989) の多面的階層モデ. 変化をきたすものであるため,それまで存在してきた身. ルは,中途身体障碍者においても許容されうるモデルで. 体的自己知覚が喪失していた.そしてこれに伴い,障碍. あることが示唆された.つぎに,標準偏回帰係数をみて. を負った身体を受容することができなくなり, 「障碍者. みると, 「スポーツ有能感」および「体調管理」から「身. になった」 「健常者とは違う世界」 といままでの自分とは. 体的自己価値」へのパスを除くすべてのパスにおいて,. 異なる自己が生じていた.. 統計的に有意な関係が確認された.. また,受傷前の自己を支えるものは,仕事や交友関係. 「スポーツ有能感」から「身体的自己価値」への標準. という社会的側面であり,特に仕事に対する自信が非常. 偏回帰係数が有意な値を示さなかった理由として,本研. に高かった.しかし,身体障碍により仕事ができなくな. 究の対象者は全体的に日常生活において必要最低限レベ. り,対象者の自己は大きく揺らいだ.ともすると対象者. ルの身体活動を行っている者が多く,激しいスポーツを. の受傷前の中心は社会的自己知覚であるようにみえるが,. 行っているものは少ない.このことから,スポーツ場面. さらにそれを下位で支えているものは 「からだ」 であり,. に特化している「スポーツ有能感」の項目は適切ではな. 身体的自己知覚であると考えられる.. い可能性がある.また, 「体調管理」と「身体的自己価値」. (2)運動・スポーツの果たす役割. との関係性が認められなかった原因であるが,中途身体. 一方で,運動・スポーツ (車いす陸上競技) を開始し. 障碍者は,廃用性症候群により身体機能が低下している. たことで,身体的自己知覚が再定義されていた.受傷直. ため体調の維持・管理が難しく, 「身体的自己価値」から. 後は, 「できなくなった」ことへの気づきが強かったが,. 「体調管理」を切り離して捉える可能性があり,身体的. 車いす陸上競技を開始したことで,レーサー (競技用の. 自己知覚のすべての側面が自己概念 (自尊感情) の向上. 車いす) を駆使するという動作獲得による新たな身体的. につながらない可能性がある (Uchida et al., 2005).. 自己知覚が提供されていた.また,運動・スポーツを通. このように,健常者を対象に作成された多面的階層モ デルを中途身体障碍者へそのまま適用することには検討 の余地があり,量的アプローチでは測りきれない実際の. じて,体型や筋肉,筋力などの向上といった身体や身体 機能そのものの変化とそれへの気づきが生じていた. さらに,車いす陸上競技を初めて見たときの衝撃が,. 生きた経験から,中途身体障碍者の自己の本質を探る必. 自己の可能性に挑戦する気持ちを目覚めさせていた.自. 要がある.. 分と同じ脊髄損傷者が,車いす陸上競技を成功裡に行っ ているさまを見ることで代理的経験を獲得し,身体に障. 5.中途脊髄損傷者における自己変容過程に及ぼす運. 碍を有していても自己の可能性は閉ざされていないこと. 動・スポーツの影響―質的アプローチによる事例検. に気づくきっかけになった.本研究の結果は自己の可能. 討― (第 4 章). 性を再発見した一例を示すものであり,受傷により揺ら. 1)目 的 第 4 章では,自己変容過程に及ぼす運動・スポーツの. いだ自己の再構築の一過程を示唆するものであった. また,運動・スポーツを通じて身体的自己知覚が再定. 影響を質的アプローチにより探ることを目的とした.. 義されただけでなく,新しい社会的自己知覚も生じ,車. 2)方 法. いす陸上競技の開始は,仕事や交友関係以外の「競技」. (1)対象者. という新しい世界をもたらした.これにより,受傷前に. 中途脊髄損傷者 1 名を対象とした.対象者は 30 代の. は存在していなかったアスリートとしての自己が構築さ. 男性であり,5 年前にバイク事故により脊髄を損傷した.. れていた.対象者は,一度は自分に「障碍者」というレ. (2)データ収集. ッテルを課したが,アスリートとしての自己の表出によ. 1 時間 30 分程度の半構造化インタビューを実施した.. りこれを取り除くことができたようである.これは,生.

(4) 活の中心が仕事や交友関係から競技に変わったことによ り,価値の捉え方が変化したためと考えられる.価値の 重みが競技に移行し,障碍があるから別の世界になった わけではなく,障碍があってもできる,障碍があるだけ で以前の世界と変わったわけではないと捉えなおすこと ができたのである.. 表1. 受傷に伴う自己の変化 カテゴリー サブカテゴリー <身体的自己知覚の変化 ( からだ) > 身体能力の変化 歩行の制限 走行の制限 足を使う動作の制限 排尿・排便能力の制限 性的能力の制限 スピーディな動きでの時間調節不可 バランス能力の欠如 体調の変化. 健康への意識. 体型の変化. 筋肉の一部欠損 受傷前の体型の喪失 体型の歪み. 筋力の変化. 受傷前の筋力の喪失 身体能力を補うための筋力の必要性. これらのことから,受傷前と現在とで自己の満足度は 同じように高いことが明らかになった.しかしながら, 自己を支えるものには変化が生じており,新しい価値を. <社会的自己知覚の変化 ( 世界) > 日常生活の中心の変化. 提供したのが運動・スポーツであったといえる. つまり, 運動・スポーツは,受傷前の仕事や交友関係といった価 値のあるものを喪失した感情から脱却させ,新しい価値 体系を得る過程を提供するといえる. (3)量的データ (第 3 章) との関連 第 3 章で,中途身体障碍者における多面的階層モデル. 受傷前の仕事への自信喪失. 仕事への自信喪失. 周囲との関係性における意識の変化. 人に迷惑をかけたくない 距離を置かれることへの不安 受傷前の日常への渇望. 今後の生活. 結婚への憂慮 今後の生活への不安. 行動範囲の変化. 行動範囲の制限. <自己の変化> 自己の捉え方の変化. 障碍による制限への気づき 障碍者という認識 自信喪失 健常者との比較 取り残された自分. の構造を検討したところ, 「スポーツ有能感」および「体 調管理」から「身体的自己価値」への標準偏回帰係数は 有意な値を示さなかった. 表 1 にみられるように, 「スポ ーツ有能感」の側面として位置づけられる身体能力の変. 仕事中心の生活を喪失 仕事を非重視 交友関係中心の生活を喪失 交友関係の制限. 表2. 運動・スポーツに伴う自己の変化 カテゴリー サブカテゴリー <身体的自己知覚の変化 ( からだ) > 身体能力の変化 新しい動作の獲得. 化のカテゴリーでは,基本的な動作に関する身体能力の. 体調の変化. 受傷後体調の変化なし. 変化が多くみられ,スポーツ場面というよりも日常生活. 体型の変化. 体型の向上. 筋力の変化. 筋力の向上 筋肉の発達. 動作に特化した要因を位置づける必要性がある. 一方で, 運動・スポーツ開始後の身体能力の変化のカテゴリーを みると,日常生活動作の変化は認められなかった.これ. <社会的自己知覚の変化 ( 世界) > 情報的サポート 重要な他者. 重要な他者との出会い 重要な他者からの容認. 新たな生活の中心. 競技中心の生活へ. 交友関係の再構築. 仲間意識 必要とされている自分. は,対象者の脊髄損傷という特性により日常生活動作の 改善が難しいためといえる. しかし, その他の障碍では, 運動・スポーツによる日常生活動作の改善が期待でき, 障碍の種類によって「スポーツ有能感」の変化が異なる. <自己の変化> 新たな自己. 自己の可能性への気づき 自己の可能性への挑戦 適当だった自分からの脱却. と推察される.このことから, 「スポーツ有能感」の意味 の質は健常者と同質ではなく,また障碍ごとに異なるの で,量的アプローチでは限界があったといえる. さらに,本研究の対象者において,体調面の変化への. 他者からの刺激 周囲からの評価. アスリートとしての自己. 向上心 目標の設定 チームの一員としての自分. 生活の充実. 生活満足感. 受傷前の自己の再現. 謙虚な自分から受傷前の自分へ. 気づきは受傷後および運動・スポーツ開始後で特にみら. 者が増加し,生き方への援助が問題となっている今日,. れず, 「体調管理」の変数は,中途身体障碍者を対象に検. 中途身体障碍者の自己の本質とその変容過程に果たす運. 討する際には重要な変数とはならない可能性があり,多. 動・スポーツの役割に迫る新たな知見が得られたことは,. 面的階層モデルにおいてこれらの変数の位置づけを再検. 非常に意義がある.. 討する必要がある.本研究の対象者においては,体調や 体力の自信というよりも身体的健康を維持する関心が高 かった. これを踏まえると, 中途身体障碍者においては,. 6.主要参考文献 Fox, K. R. & Corbin, C. B. 1989 The physical. 二次障碍や廃用性症候群などの中途身体障碍者に特有の. self-perception. 要因を位置づける必要があるかもしれない.. validation. Journal of Sport and Exercise Psychology, 11,. 本研究では,Fox & Corbin (1989) の多面的階層モデル. profile:. Development. and. preliminary. 408-430.. に準拠しつつも,現実の行動や心理現象を生きている対. Shavelson, R. J., Hubner, J. J., & Stanton, G. C. 1976. 象や状況から切り離さずに捉え,中途脊髄損傷者の自己. Self-concept: Validation of construct interpretations. Review of. 変容過程をより詳細に説明してきた.障碍と共に生きる. Educational Research, 46, 407-441..

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