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Vol.47 , No.2(1999)064藤丸 智雄「曇鸞の光明観の淵源 -康僧鎧訳『無量寿経』との比較-」

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Academic year: 2021

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(204) 印度 學佛 教學研 究 第47巻 第2号 平 成11年3月

曇鷺 の光 明観 の淵源

―康僧鎧訳 『

無量寿経』 との比較―

は じ め に 本 論 は,藤 丸[1998a]・ 藤 丸[1998b]を も とに して行 う考 蔡 で あ る.先 行 の二 研 究 で は,曇 鷺 の著 作 『無 量 寿 経 優 婆 提 舎 願 生 偈 註 』(以下 『論註』),『讀 阿 弥 陀 仏 偈 』 を 対 象 と して,曇 鷺 の 光 明 観 に お け る独 自性 を考 蔡 した.ま ず,世 親 作 とされ る 『無 量 寿 経 優 婆 提 舎 願 生 偈 』(以下r論 』)か ら光 明 に関 す る記 述 を抜 出 し,『 論 註 』 に お け る曇 鷺 の光 明 に関 す る記 述 と を比 較 し,曇 鷺 の 光 明 観 の独 自性 を導 き 出 し た.こ れ に 対 し,本 論 文 で は曇 驚 が 著 作 中 で 多 く引用 す る康 僧 鎧 訳 『無 量 寿 経 』 に 説 示 され る浄 土 の 光 明 の 諸 相 を検 討 した上 で,曇 鷺 との 間 に如 何 な る連 続 と断 絶 が あ るか を明 らか に し,曇 鷲 の 思 想 的 特 徴 を検 討 す る. 1『 無 量 寿 経 』 と 『論 註 』の 光 明 観 1-1分 析 の方 法 『無 量 寿経 』諸 訳 中,康 僧 鎧 訳 を対 象 とす るの は,曇 鷺 の 引用 が 支婁 迦識 訳 『仏 説 無 量 清 浄 平 等 覚 経 』 の 一例 を除 き,康 僧 鎧 訳 か らの もの だ か らで あ る.以 下 に 『無 量 寿 経 』中 の光 明 につ い て の分 析 を行 うが,先 ず何 を 指標 と して 分 析 す るの か 提 示 す る.曇 鷲 の 光 明 理 解 との 比較 を行 う上 で,以 下 の文 を用 い 『無 量 寿 経 』 中 の 光 明 を分 析 す る.即 ち,「 ④ 誰 の 《光 明 》 が,⑤ どの よ うで あ り,◎ 何 を もた らす か ・意 味 す るの か 」 とい うセ ンテ ンス を設 定 し,『 無 量 寿 経 』 に説 か れ る光 明 の 内容 を④ 一 ◎ 三 つ の 範 疇 に分 類 す る.例 え ば 「太 陽 の光 が 部 屋 を隅 々 ま で 明 る く し,私 の心 も明 る くな った 」 とい う場 合,「 太 陽 の 」 は④ に 「部 屋 を 隅々 まで 明 る く し」 た こ とは⑤ に,「 私 の 心 も 明 る くな った 」 は ◎ に分 類 す る.⑤ は光 明 が 直 接 的 に もた らす と考 え られ る もの,即 ち 「部 屋 を明 る くす る」 こ とや,光 明 そ の もの の状 態,例 え ば 「光 が 赤 い 」 とい っ た もの で あ り,こ こ に分 類 され る もの を以 下 で は光 明 の様 態 と表 現 す る.一 方,◎ は光 明 の もた らす 二 次 的 な効 果 で あ

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曇鶯 の光 明観 の淵 源(藤 丸) (205) る.即 ち,心 が 明 る くな る こ とは光 明 が 差 す こ と と直 接 的 に は つ な が らな い た め ◎ に分 類 す る. 本 考 蔡 で は④ ∼ ◎ の 内,⑤ に関 す るr無 量 寿 経 』 の説 に 着 目す る.r無 量 寿 経 』 中 に説 か れ る光 明 の様 態 を 抽 出 し,そ の 内 容 が 『論 』 と 『讃 阿 弥 陀 仏 偈 』 に 見 ら れ る の か,ま た それ に 対 して どの よ うな 注 釈 を行 うの か,を 検 討 す る.比 較 を容 易 にす るた め,ま ず 『無 量 寿 経 』 中 の例 を挙 げ,次 に 『論 註 』 の 用 例 を挙 げ 比 較 し,そ こに見 られ る曇 鷺 の 独 自性 を検 討 す る. 1-2-1.超 越 性 『無 量 寿経 』 中 の 光 明 の超 越 性 に 関 す る用 例 を幾 つ か例 示 す る. ①無量寿仏,威 神 光明,最 尊第一,諸 仏 光明,所 不能及. ②功詐成滿足,威 曜朗十方,日 月俄重輝,天 光隠不現. ③即時無量寿仏放大 光明,普 照一切 諸仏世界,金 剛園 山,須 弥 山王,大 小諸 山,一 切所 有 皆同一色.讐 如劫水,彌 満世界,其 中万物,沈 没不現,滉 漬 浩汗,唯 見大 水.彼 仏光 明, 亦復 如是.聲 聞菩薩,一 切光明,皆 悉 隠蔽,唯 見仏 光,明 曜顯赫.爾 時阿難.即 見無量 寿 仏.威 徳魏魏.如 須 弥山王.高 出一切.諸 世界 上.相 好光 明.靡 不照曜 ① の よ う に,阿 弥 陀 仏 の 光 明 の 超 越 性 につ い て 『無 量 寿 経 』 中 に 数 々 言 及 さ れ る.② ③ も同 じ く超 越 性 につ い て の 説 だ が,こ れ ら は表 現 上 の 共 通 性 を有 して い る.即 ち,下 線 部 に見 られ る よ うに,阿 弥 陀 の 光 明 に よ り他 の 光 明 が 輝 きを 失 う, 現 れ な い こ とで,そ の 超 越 性 を表 現 して い るの で あ る.こ の 点 が 以下 で 行 う曇 鷺 との 比較 の 上 で 重 要 な点 で あ る. 1-2-2.超 越 と平 等 『論 註 』 『讃 阿弥 陀仏 偈 』共 に,阿 弥 陀 仏 の 光 明 の超 越 性 に つ い て の言 及 は 多 い. 『無 量 寿 経 』 に お け る表 現 様 式 との 比較 か ら着 目 され るの は 次 の 箇 所 で あ る. ④ 見有国土,優 劣不 同.以 不 同故,高 下以形,高 下既形,是 非以起,長 論三有.是 故興大 悲心,起 平 等願,願 我国土光炎熾盛,第 一無比,不 如 人天金色,能 有奪者.若 為相奪,如 明鏡在金邊則不現,… 他化 自在天金,比 安楽 国中光明則不現. こ こで は,阿 弥 陀 仏 の 光 明 の強 さ を 「第 ―無 比 」 と表 現 し,光 明 の序 列 の 頂 点 に 置 くこ とで その 超 越 性 を表 現 す る.特 に,そ の他 の 光 明 が 輝 き を失 う,「 不 現 」 で あ る こ とに よ り超 越 性 が表 現 され て お り,② ③ に見 た 表 現 様 式 を 踏 襲 して い る こ とが 指 摘 し う る.こ の 両 者 の共 通 性 が 注 意 す べ き第 一 点 で あ る.更 に,こ の箇 所 に は 曇 鷺 独 自 の理 解 も組 み込 まれ て い る.藤 丸[1997],[1998]で 既 に 指 摘 した 点 で あ るが,こ の箇 所 は 阿弥 陀 仏 の 光 明 の超 越 性 を説 くの み に止 ま らず,そ の光 明 の 超 越 性 が 浄 土 内 に平 等 を もた らす と曇 鷺 は 意 味 付 け る.即 ち,「 平 等 願 」 に よ

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(206) 曇 鷺 の光明 観 の淵源(藤 丸) りもた らされ る光 明 の超 越 は,「 優 劣 」 「高 下!「 是 非1を 性 格 とす る国 土 の対 とな る,均 質 を特 質 とす る国 土 を成 就 して い るの で あ る.こ う した 内容 を 『無 量 寿 経 』 中 に見 い だ す こ とは で きな い.ま た,先 行 二 研 究 か ら,『論 』 に も 同 内容 の記 述 を 見 る こ とは で きな い.こ の こ とか ら,光 明 の超 越 性 が 平 等 を もた らす とす る点 に つ い て は,『 論 』 『無 量 寿 経 』 に見 られ な い 曇 驚 の 独 自 の理 解 で あ る こ とが分 か る. 1-3-1.『 無 量 寿 経 』 に お け る無 量 ・普 遍 『無 量 寿経 』 に は,阿 弥 陀 仏 の光 明 の持 つ 無 量 ・普 遍 とい う様 態 につ い て の言 及 が あ る.以 下 に,そ の 幾 つ か を例 示 す る. ⑤無量寿仏,光 明威神,魏 魏殊妙,昼 夜一劫,尚 未 能蓋. ⑥即見無量 寿仏(中 略)相 好光 明,靡 不 照羅. ⑦設我得仏,光 明有能 限量,下 至不照百千憶那 由他 諸仏国,不 取正覚. これ らが,光 明 の 無 量 ・普 遍 を 説 く用 例 で あ る.無 量 と普 遍 とは 厳 密 に言 え ば 異 な る もの の,⑦ の 例 に見 られ る よ うに,光 明 の 量 が 限 定 さ れ る こ とは光 明 の及 ぶ 範 囲 に よ つ て測 られ て い る こ とか ら,両 者 を括 っ て考 えて よい だ ろ う.こ の ⑦ は, 四 十 八 願 中 の 第 十 二 願 に 相 当 し,浄 影 寺 慧 遠 に よ り 「光 明 無 量 願 」 と名 づ られ, 光 明 の無 量 自体 が 誓 願 の 主 眼 とな っ て い る. 1―3-2.『論 註 』 にお け る無 量 ・普 遍 理 解 曇 鷺 も,同 様 に阿 弥 陀 仏 の光 明 の無 量 ・普 遍 につ い て 説 く. ⑧彼 仏光明無量,照 十方国,無 所 障碍,是 故号阿弥陀 この よ うに 『無 量 寿 経 』 との連 続 性 に就 い て は確 認 し うる. 以下 に 示 す 用 例 は,無 量 ・普 遍 とい う性 格 に関 す る もの で あ る と同時 に,曇 鷺 の独 自の理 解 を も示 して い る. 曇 鷺 は,阿 弥 陀 仏 の 光 明 が 以 下 の よ うな効 果 を もた らす と説 く. ⑨如上種種 身業 意業 繋 縛,皆 得 解 脱,入 如 来 家,畢 寛 得 平 等 身業 意業 身 体 と意 は,と もに平 等 な 身 業 ・意 業 を得 る,と 表 現 され る.そ れ で は,こ れ ら 平 等 身業 ・平 等 意 業 とは何 か.そ れ ぞ れ につ いて 以 下 の記 述 が あ る. ⑩ 能一処一念一時遍十方世界,種 種供 養一切諸仏及諸仏大会衆海.能 於無 量世界無仏法僧 処,種 種示現,種 種教化,度 脱 一切衆生,常 作仏事. 平 等 身 業 につ い て は この よ うに記 述 され る.具 体 的 に会 座 の供 養 と教 化 ・救 済 と い う二 つ の 方 向性 が 示 さ れ る も の の,両 者 に共 通 して 説 か れ るの は,「 遍 十 方 世 界 」 「於 無 量 世 界 」 とい う表 現 で 示 され る あ らゆ る場 所 に 対 して 同 時 に はた らきか

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曇鷺 の光 明観 の淵 源(藤 丸) (207) け う る能 力 で あ り,こ れ が 身 業 にお け る平 等 の 意 味 で あ る. 平 等 な 意 業 につ い て は,以 下 の よ うに説 明 す る. ⑪凡心有知,則 有所不 知.聖 心無知,故 無所 不知.無 知而知,知 而無知也. こ う した 曇 鷺 の説 に関 して は これ まで 考 蔡 が あ り(藤 堂[1956]藤 丸[1996])こ こ で は 詳 説 しな いが,こ れ は僧 肇 の 聖 心 思 想 の影 響 下 に あ り,「無 知 」で あ る こ とに よ り無 限 定 に はた らきか け得 る一切 知 を意 味 して い る.こ こ まで 身 ・意 の二 つ の 平 等 につ い て個 別 に見 たが,両 者 を比 較 す れ ば,光 明 に よ りも た ら され る身 ・意 の平 等 は無 限定 に(=あ らゆ る場所 に)は た ら き か け る普 遍 性 と関 連 して 説 か れ る こ とが 明 らか で あ る.こ の身 ・意 二 業 の共 通 性 か ら,阿 弥 陀 仏 の平 等 な 光 照 に よ り獲 得 され る平 等 な 身 ・意 業 は,は た らき が 限 定 され ず普 遍 で あ る こ とに よ り成 就 され る平 等 な は た らき の こ とで あ る と分 か る.よ り具 体 的 に は 「一 切 に 等 し く」 は た ら きか け 「一 切 を等 し く」 知 る こ とを 「平 等 」 と表 現 す る.ま た,こ う した 二 つ の 業 は,阿 弥 陀 仏 の 同 じ:く平 等 な光 明 に よ りも た ら され る こ とか ら,阿 弥 陀 仏 の 光 明 そ の もの が 平 等 で あ り,そ れ を受 け る も の もは た ら きが 平 等 とな り,共 に 普 遍 性 を前 提 とす る構 図 が成 立 して い るの で あ る. 以 上 の 考 察 か ら阿 弥 陀 仏 の光 明 の 無 量 ・普 遍 とい う性 格 は,曇 鷺 の 注 釈 中 に も 説 か れ,両 者 の 問 に連 続 性 を見 い だ し う る.一 方,阿 弥 陀 仏 の 「平 等 」 な 光 明 が, そ れ を蒙 る もの に 同様 に平 等 な はた ら き を もた らす と曇 鷺 は理 解 す る.そ の 「平 等 」 は,無 量 ・普 遍 を前 提 と して 「一 切 に 等 し く」 は た ら きか け る こ と を表 現 し て い る.こ の よ う に曇 鷺 は,光 明 の 無 量 ・普 遍 とい う性 格 を超 越 性 と同 様 に 「平 等 」 とい う概 念 と関 連 させ て 理 解 す る の で あ る. お わ り に 本 論 で は,『 無 量 寿 経 』 に説 か れ る,阿 弥 陀 仏 の持 つ 光 明 の 超 越 性 と無 量 ・普 遍 性 とい う二 つ の様 態 を軸 と し,考 蔡 を行 っ た.そ の結 果,超 越 性 に 関 して は,類 似 の表 現形 態 が 用 い られ,両 者 の連 続 性 を確 認 しえた.一 方,光 明 の超 越 性 が 「平 等 」 を もた らす とい う曇 鷺独 自の 理 解 も明 らか とな った. また,無 量 ・普 遍 とい う点 に 関 して も両 者 の 連 続 性 は確 認 しえ た.一 方,阿 弥 陀 仏 の 「平 等 」 な は た ら き と,そ れ を蒙 っ た もの の 「平 等 」 な は た ら きの 二 つ の 「平 等 」 が,無 量 ・普 遍 を欠 くべ か らざ る前 提 と して い る こ とが 明 らか に な っ た. 阿 弥 陀 仏 の光 明 の 二 つ の様 態 と 「平 等 」 との 関 連 は,以 下 の よ うに表 現 す る こ とで 一 つ に ま とめ る こ とが で き る.

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(208) 曇 鷺の光 明観 の淵 源(藤 丸) 「一 切 を 等 し く知 り,一 切 に 等 し く は た ら き か け る 阿 弥 陀 仏 の 光 明 は,そ れ を 蒙 っ た も の を 全 て 等 し く輝 か せ,一 切 を 等 し く知 り,一 切 に 等 し くは た ら き か け る も の と す る 」 こ の よ う に,最 初 に 見 た 光 明 の 超 越 性 は 光 明 を 蒙 る も の の 身 体 の 輝 き に 結 び つ き,無 量 ・普 遍 と い う様 態 は,阿 弥 陀 仏 と光 明 を 蒙 っ た も の の は た ら き と結 び つ く.こ の 文 章 に 表 さ れ た よ う な 理 解 に 基 き,阿 弥 陀 仏 の は た ら き で あ る 光 明 は 「平 等 」 とい う 語 を 用 い て 解 釈 さ れ て い っ た の で あ る. (参考 文献) 藤 堂 恭 俊[1956],僧 肇 と曇 鷺,『 印度 学 仏 教 学 研 究 』4-2,64-72, 藤 丸 智 雄[1998a],曇 鷺 の光 明観,『 印 度 学 仏 教 学 研 究 』46-2,875-872 藤 丸 智 雄[1998b],曇 鷺 の 光 明 観 に関 す る考 察,『 イ ン ド哲 学 仏 教 学 研 究 』5,58-70 藤 丸 智 雄[1996],曇 鷺 と僧 肇― 不 思議 の 語 を め ぐって ―,『 印 度 学 仏 教 学 研 究 』44-2,74-76 幡 谷 明[1989],『 曇 鷺 教 学 の 研 究― 親 鷺 教 学 の 思 想 的 基 盤 ― 』 同朋 舎 出版 〈キ ー ワ ー ド〉 『論 註 』,光 明,平 等 (東京 大 学 大学 院)

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