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切盛土工におけるICT/3次元データの利用とその効果

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Academic year: 2021

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*1 技術統括本部 土木技術部

1.はじめに

CIM(Construction Information Modeling)とは、計画・ 調査・設計段階から 3 次元モデルを導入し、その後の施工、 維持管理の各段階においても 3 次元モデルに連携・発展さ せ、あわせて事業全体にわたる関係者間で情報を共有する ことにより、一連の建設生産システムの効率化・高度化を 図るものと定義されている(図 1)。i-Construction は、こ うした CIM や ICT(情報化施工技術)をあらゆるプロセス において全面活用し、建設現場の生産性向上を図る取組み である。 切盛土工現場の生産性向上・効率化を目的とした設計モ デルおよび測量結果の 3 次元データの活用方法の例を図 2 に示す。i-Construction では、掘削・敷均し・転圧機械に マシンガイダンス(MG)やマシンコントロール(MC)機能 をもたせた ICT 土工が 3 次元設計モデルの主要な活用方法 となっているが、UAV 空撮やレーザースキャナー(LS)を 用いた地表面の 3 次元測量データと 3 次元設計モデルを組 み合わせることにより、次のような現場生産プロセスおよ び項目での効率化が図れる。 施工計画段階:土量算出や土量配分計画、地表面形状 変化の面的把握など 施工管理段階:出来高数量算出による工程管理、土量 変化率把握による配分計画の見直しなど 検査段階:道路面・法面の出来形把握、出来形帳票作 成など i-Construction の本格導入を見据えて、当社では三浦市 最終処分場建設工事、岡野高架橋下部他工事の土工におい てバックホウ MC による ICT 土工や、3 次元データを利用し た CIM の試行などを行った。本稿では、ゼネコン各社にお

The Effect by Using ICT (Abbreviation of Information and Communication Technology)

and 3-Dimensional Data in Excavation and Embankment

要旨 2016 年、国土交通省は i-Construction のトップランナー施策である「ICT の全面的な活用」を、土工を対象に先行 してスタートさせた。さらに、2017 年 1 月には産官学連携による i-Construction 推進コンソーシアムが設立され、建 設現場の生産性向上を目指す動きが活発化してきた。高齢化による建設従事者不足の問題を抱える建設業界は、この取 り組みに大きな期待を寄せており、当社も土工現場における ICT の活用を開始したところである。三浦市最終処分場建 設工事では、仮設道路取付けにおいて UAV 空撮による起工測量や ICT 土工を適用した。岡野高架橋下部他工事では、切 盛土工での施工計画や施工管理に 3 次元測量結果や 3 次元設計モデル等の 3 次元データを有効活用した CIM を適用した。 ここでは、これらの土工における i-Construction の取組み内容とその効果について検証した結果を報告する。 キーワード:i-Construction ICT CIM 3 次元データ UAV 空撮

江本 浩樹*1 大畑 拓也*1 國富 和眞*1

Hiroki Emoto Takuya Ohata Kazuma Kunitomi

図 1 CIM の概要

(国土交通省ホームページ1)より引用)

図 2 土工における 3 次元データの活用方法 (大阪建設業協会講習会資料2)より引用)

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ける土工現場での CIM 適用の動向を述べると ともに、上記 2 現場での実施内容と実施による 効果検証結果について報告する。

2.土工における施工 CIM の動向

国土交通省は、2012 年に CIM の導入検討と モデル事業における試行を開始し、2014 年か ら施工 CIM へと展開している。日本建設業連合 会はその流れを受けて、会員企業が試行した施 工 CIM の適用効果や課題抽出等の成果を「施工 CIM 事例集3)4)」に取りまとめている。図 3 は 2015 年と 2016 年に発刊された事例集より、土 工現場に適用された事例 20 件について、3 次 元測量方法や 3 次元データの使用方法に関す る件数を集計・分析した結果である。 図 3 より、抽出事例の約 70%の現場で(a)UAV か(b)LS に よる 3 次元測量が行われているのがわかる。また、3 次元 データの使い方では、(d)土量把握、(e)出来高の確認、基 礎面等の(h)形状確認・(i)問題把握等の施工計画・管理へ の利用があげられ、抽出事例の大半(80%)が協議資料とし て有効性があるとしている。土工の現場は比較的広範囲に わたるため、測量手間の軽減や地表面形状の早期確認(問 題点把握)等に 3 次元データの活用メリットがあると考え られる。 一方、今後の課題として、3 次元データを扱う人材の確 保・教育の必要性、CIM を有効活用するためのハード・ソ フトの環境整備の必要性などが挙げられている。

3. 最終処分場建設工事における取組み

3.1 工事概要および取組み内容 本工事は、横須賀市三浦市ごみ処理広域化基本計画に基 づき、クローズド型の廃棄物処分場を建設する工事である。 図 4 に完成予想図、表 1 に工事概要を示す。主な工事内容 としては、仮設工事用道路と沈砂池を施工した後に、現況 の谷状地形を掘削および盛土により造成し、廃棄物処分場 となる貯留構造物を築造するものである。 仮設工事用道路や沈砂池については、背面の市道との干 渉や所定の貯水量を満足するために、現況を考慮した計画 が求められた。そこで、UAV による写真測量を実施して、 現況地形を 3 次元で把握し、上記の仮設土工の計画に反映 した。また、縦・横断測量結果と比較することで UAV によ る写真測量の精度を検証した。さらに、従来の断面による 施工や出来形の管理ではなく、3 次元的な施工かつ高精度 の出来形 図 5 現場平面図および ICT 土工の対象構造物 管理の実現を目指し、バックホウ MC による ICT 土工を導入 した。図 5 に ICT 土工の対象構造物を示す。 25 20 35 30 25 20 15 10 9.46 8.454 T.21 36.824 T.22 36.572 T.23-1 36.317 S.6 11.522 S.7 9.910 S.89.920 S.9 9.848 S.10 11.878 S.11 5.152 S.12 1.547 S.13 1.595 S.14 1.313 S.17 37.680 S.18 36.529 S.1937.128 S.20 37.726 S.21 36.706 S.22 36.362 S.23 36.619 S.6-1 13.886 S.6-2 16.685 S.8-1 S.8-2 6.307 S.12-1 T.23 35.873 35.10 35.70 As 宮  川  湾 5 2.999 S.14-1 6.008 S.14-2 1.943 S.14-3 3.183 S.21-1 31.865 S.21-2 18.774 S.21-3 17.734 37.64 37.04 40.68 36.89 31.54 38.50 36.97 27.73 27.26 13.95 19.31 16.88 13.28 30.68 42.44 20.47 10.19 29.44 10.02 13.18 25.57 29.88 9.73 16.47 1.40 3.22 6.22 6.78 8.83 8.20 12.00 8.25 19.24 28.85 9.95 29.43 9.37 22.13 30.73 36.86 36.79 36.59 37.13 37.18 37.00 37.68 37.36 37.33 39.17 37.39 37.50 37.46 36.27 37.08 36.56 36.55 36.34 36.35 36.91 35.36 33.78 37.57 37.62 37.09 37.63 37.44 37.40 37.34 36.96 36.20 35.23 36.82 37.75 28.12 25.62 33.55 37.30 36.83 37.73 37.99 33.12 34.55 30.36 28.82 31.82 34.79 24.93 20.84 15.42 24.50 20.17 32.12 38.04 40.88 36.58 31.23 36.67 30.94 33.48 27.14 27.25 34.38 33.81 28.86 29.96 21.34 19.54 17.38 21.59 21.92 11.87 18.98 2 3.25 25.65 11.00 10.27 15.55 16.83 25.27 25.67 19.35 15.94 11.61 12.69 9.72 21.04 22.19 2 5.74 32.32 9.60 10.39 9.72 17.54 9.60 26.81 10.84 8.17 10.28 12.00 10.81 6.63 9.20 0.60 1.71 8.62 8.49 1.32 4.97 2.64 16.13 17.38 13.76 11.54 0.55 0.44 3.23 2.19 7.91 9.20 5.71 26.68 31.12 7.42 13.82 7.82 7.80 9.58 8.44 13.97 10.80 9.39 11.88 7.31 7.35 7.06 37.61 32.16 36.65 36.27 34.31 26.42 23.12 31.97 36.80 42.50 34.85 40.29 39.88 40.96 27.12 41.27 41.54 33.77 34.15 34.35 34.72 33.36 南下浦町毘沙門字大乗谷 南下浦町毘沙門字大乗谷 三崎町六合字堂ヶ島 南下浦町毘沙門字石船 As Co As 県漁業無線局 Co As 鉄塔 As 大乗送信所 鉄塔 As As U=300 上 宮 田金 田 三 崎 港 市道25 96号 35 40 30 25 20 15 10 35 30 11.50 S.12-2 0.972 1.78 0.80 0.77 0.67 0.67 1.26 1.20 0.72 1.84 2.57 1.52 A A 33.50 32.00 29 .00 33.50 33.50 1:1 1:0.5 1:1 11 .00 14. 75 13. 25 30.50 27. 50 23 .00 2 1. 50 2 0. 00 1 9.6 25 17 .00 26 .00 24 .50 15 .50 11. 00 11. 75 1 8.1 25 15.11 21.00 20.255 1:0.5 FH=41.00 沈砂池 37.00 FH=10.00 FH=8.00 FH=11.00 V=340m3 図 4 一般廃棄物最終処分場の完成予想図 対象構造物①:北側法面 対象構造物③:沈砂池 対象構造物②:工事用道路 市道 2596 号 工事名称 三浦市一般廃棄物最終処分場建設工事 発注者 神奈川県三浦市 受注者 株式会社 鴻池組 工期 平成28年6月22日~平成32年2月28日 敷地用地造成工 掘削工62,940m3,盛土工61,200m3 地盤改良工 φ1800×480本(深層混合)       3,400m2(浅層混合) 貯留構造物本体工 1式 工事内容 表 1 工事概要 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 5 10 15 20 25 a b c 比 率 件 数 3D測量方法 件数 比率 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 5 10 15 20 25 d e f g h i j k 比 率 件 数 3Dデータの使い方 件数 比率 a UAV b LS c GNSS d 土量把握 e 出来高確認 f 出来形管理 g 維持管理 h 形状等確認 i 問題把握 j 施工手順 k 協議資料 (a) 3 次元測量の種類 (b) 3 次元データの使用方法 (c) 記号凡例 図 3 土工における施工 CIM の動向

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3.2 UAV による起工測量結果の活用とその精度検証 3.2.1 起工測量の概要 現況地形を 3 次元で把握するために、起工測量で UAV に よる 3 次元測量(以下、UAV 測量)を実施した。実施計画 においては、地上画素寸法やラップ率等を ICT の全面的な 活用に向けて平成 28 年 4 月に制定された基準類5)6)に準拠 した。図 6 に UAV の飛行経路を、表 2 に測量実施条件を示 す。 表 2 実施条件 UAV はあらかじめ設定した飛行経路に沿って自動飛行し ながら、搭載されたデジタルカメラによって航空写真を一 定の時間間隔で撮影した。写真 1 に実施状況を示す。 3.2.2 起工測量結果の活用(沈砂池の計画へ反映) UAV により撮影した航空写真からステレオマッチングの 原理により、3 次元の点群データを作成することができる。 図 7 は当該現場の UAV 測量の結果を処理して作成した 3 次 元点群データに、仮設工事用道路や沈砂池といった仮設の 切盛土工の 3 次元設計モデル(緑色)を重ねたものである。 これらを比較することで仮設の切盛土工の位置や高さ等の 計画に活用できる。ここでは、現況地形が当初の想定より 低かったため、沈砂池の貯水量が目標値より少なくなるこ とが予測できた。そこで、当初計画より沈砂池の掘削深さ を 50cm 深くすることで、所定の貯水量を確保した。 3.2.3 起工測量結果の精度検証 トータルステーション(TS)による現況地形の縦・横断 測量を計 17 断面で実施して、3 次元測量データとの比較検 証を実施した。図 8 は、図 6 の縦断面位置での TS と UAV による地表面形状の比較結果である。また、TS による地表 面高さに対する UAV 測量結果の誤差頻度を整理した結果を 図 9 に示す。ここでは、それぞれの測量結果による地表面 36.89 上宮 田 金 田 三 崎港 10.84 20 33.12 36.65 39.17 3 6.27 Co 9.46 8 .454 T.21 36.824 T.22 3 6.572 T.23-1 36.317 S.6 1 1.522 S.79.910 S.89.920 S.9 9.848 S.10 11.878 S.11 5 .152 S.121.547 S.13 1 .595 S.14 1.313 S.17 3 7.680 S.18 36.529 S.1937.128 S.20 37.726 S.21 36.706 S.22 3 6.362 S.23 3 6.619 S.6-1 13.886 S.6-2 1 6.685 S.8-1 S.8-2 6.307 S.12-1 2.999 S.14-1 6.008 S.14-2 1.943 S.14-3 3.183 S.21-1 31.865 S.21-2 1 8.774 S.21-3 17.734 37.64 37.04 40.68 31.54 38.50 36.97 27.73 27.26 13.95 19.31 16.88 13.28 30.68 42.44 20.47 10.19 29.44 1 0.02 13.18 25.57 29.88 9.73 16.47 1.40 3 .22 6 .22 6.78 8.83 8 .20 12.00 8 .25 19.24 2 8.85 9.95 2 9.43 9 .37 22.13 3 0.73 36.79 3 6.59 37.18 3 7.00 37.36 37.33 3 7.39 37.50 37.46 3 6.27 3 7.083 6.56 36.55 3 6.34 36.35 36.91 35.36 3 3.78 37.57 37.62 37.09 37.63 37.44 37.40 37.34 36.96 36.20 35.23 3 6.82 3 7.75 28.12 25.62 33.55 3 7.30 36.83 37.73 37.99 34.55 30.36 28.82 31.82 34.79 24.93 20.84 15.42 24.50 20.17 32.12 38.04 40.88 3 6.58 31.23 36.67 30.94 33.48 27.14 27.25 34.38 33.81 28.86 29.96 2 1.34 19.54 1 7.38 21.59 2 1.92 11.87 1 8.98 23.25 25.65 11.00 10.27 15.55 16.83 2 5.27 2 5.67 19.35 1 5.94 1 1.61 12.69 9.72 21.04 22.19 25.74 32.32 9.60 10.39 9.72 17.54 9.60 26.81 8.17 10.28 12.00 10.81 6.63 9 .20 0 .60 1.71 8.62 8.49 1.32 4.97 2.64 16.13 1 7.38 13.76 11.54 0.55 0.44 3.23 2 .19 7.91 9.20 5.71 26.68 31.12 7.42 13.82 7.82 7.80 9.58 8.44 13.97 10.80 9.39 11.88 7 .31 7.35 7 .06 3 7.61 32.16 34.31 26.42 23.12 31.97 36.80 4 2.50 3 4.85 40.29 39.88 40.96 27.12 4 1.27 41.54 33.77 34.15 3 4.35 34.72 33.36 南下浦町毘沙門字大乗谷 南下浦町毘沙門字大乗谷 三崎町六合字堂ヶ島 南下浦町毘沙門字石船 As Co As 県漁業無線局 As 鉄塔 As 大乗送信所 鉄塔 As As U=300 市道25 96号 35 40 30 25 20 15 10 3 5 30 25 20 35 30 25 15 10 T.2335.873 35.10 35.70 As 宮  川  湾 5 11. 50 0 .972 1 .78 0.80 0 .77 0.67 1.26 1 .20 0.72 1.84 2.57 1.52 A A ① ① ② ② ③ ③ ④ ④ ⑤ ⑤ ⑥ ⑥ ⑦ ⑦ ⑧ ⑨ ⑨ ⑩ ⑩ ⑪ ⑪ ⑫ ⑫ 0 10 25 50m N :UAV飛行航路 縦断面 縦断面 :UAV飛行航路 縦断面 ① ① ② ② ③ ③ ④ ④ ⑤ ⑤ ⑥ ⑦ ⑦ ⑧ ⑨ ⑨ ⑩ ⑩ ⑪ ⑪ ⑫ ⑫ ⑥ カメラ画素数 2470画素 飛行距離 1400m 地上画素寸法 14mm(規格20mm) 写真撮影枚数 279枚 オーバーラップ率 90% サイドラップ率 60% 図 6 飛行計画図 図 7 点群データと 3 次元設計モデル ポリゴン赤線:当初計画 サーフェス(緑): 変更後 (a)使用機体 (b)実施状況 写真 1 UAV 測量の実施状況 ➀北側法面 ➁工事用道路 ➂沈砂池 図 8 UAV と TS による成果の比較 誤差が大きい範囲 比較的平坦な地形 急峻な斜面 DL=-10.00 N O .0 -12 .87 N O .0 N O .0 +1 .8 N O .1 N O .1+ 15 N O .2 N O .2 +9 .3 N O .3 N O .3 +2 .0 5 N O .3+ 13 .8 5 N O .3 +1 7.55 N O .4 N O .4 +1 .1 3 N O .4+ 11 .3 5 N O .4 +1 3.15 N O .5 N O .5 +3 .6 N O .6 N O .7 N O .7+ 18 .8 5 N O .8 N O .8 +3 .1 5 N O .8 + 10 N O .9 凡 例 UAV測量による現況線 TSによる横断測量現況線 0m 10m 20m 0m 10m 20m 0. 7 7 図 9 鉛直誤差の分布 (a)斜面部 データ数 206 平均誤差(m) 0.128 最大誤差(m) 1.275 分散 0.050 標準偏差 0.223 データ数 277 平均誤差(m) 0.233 最大誤差(m) 2.134 分散 0.135 標準偏差 0.367 誤差が大きい範囲 (b)平坦部

(4)

形状の違いを見るために、平坦部と斜面部で誤差を分析し た。誤差のピーク頻度は 0~0.1m にあり、平坦部より斜面 部で誤差が大きくなる結果となった(図 9)。特に斜面部の 凹凸面では、誤差が 0.77m と大きくなる傾向が確認できた (図 8)。この原因は、写真から点群データを生成する現状 のステレオマッチングによる方法では、変曲点の抽出精度 が低いためであると考えられる。 3.3 ICT 土工による情報化施工と施工進捗の可視化 3.3.1 ICT 土工の概要 図 5 に示す①北側法面、②工事用道路、③沈砂池の掘削 工を対象にマシンコントロール(MC)による ICT 土工を実 施した。この技術は、油圧ショベルの位置と切土法面の 3 次元設計モデルを利用して、目標の施工面を自動認識し、 機械側の油圧制御システムとの連動で深掘りを防ぐことが できる。図 10 に MC の概要を、写真 2 に施工状況を示す。 この技術を活用することで、丁張りが不要となり、施工の 効率化が期待できる。 3.3.2 施工進捗の可視化 バックホウに搭載した GPS による位置情報を活用して施 工状況の確認や進捗管理ができる VisionLink®(Trimble 社製)を導入した。このサービスは、随時バケットの位置 と 3 次元設計モデルをクラウド上で比較して施工範囲や出 来形の過不足をリアルタイムに表示するシステムで、イン ターネットで確認できる。図 11 は施工進捗の状況を可視化 したものである。地図上で着色している部分が対象期間の 施工範囲で、コンター色の違いにより設計に対する出来形 の過不足を確認でき、施工計画の検討や打合せ資料として 活用できる。また、このシステムはバケット位置による施 工面データと地表面形状を示す起工測量データとの差分か ら、リアルタイムに施工土量の算出が可能である。一例と して、2017 年 2 月末時点で算出した土量を表 3 に示す。 今後、UAV および TS による出来形測量を実施し、このシ ステムによる出来形や土工数量の精度の検証を行う予定で ある。また、その検証結果に基づき当該システムの効果的 な利用方法について検討を行う所存である。 表 3 VisionLink®による算出土量 (2017 年 2 月末現在) 施工面積(m2)

8,786

切土土量(m3)

19,209

盛土土量(m3)

3,355

余剰土量(m3)

15,854

図 10 マシンコントロールの概要 写真 2 ICT 建機による施工状況 図 11 施工進捗の可視化 GPS アンテナ ガイダンス画面 バケットの位置情報から目標の施工面 を自動認識し、油圧により自動制御 施工目標面 (1) 2016 年 11 月 (2) 2016 年 12 月 (3) 2017 年 2 月

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4. 道路新設工事における取組み

4.1 工事概要および取組み内容 本工事は、切盛土工を主体とする道路新設工事である。 起点側に切土箇所が、終点側に盛土箇所があり、盛土材に 工区内の発生土を利用する計画である。工事概要を表 4 に、 工区平面図を図 12 に示す。 終点側切土部における工事着手時の現況地形を図 13 に 示す。図 13 左側の横断図に示すように、当該工事は各箇所 ともに施工途中からの着手となることが特徴である。その ため、先行する別途工事の工事用道路や構造物掘削等によ って当初の設計図面にない地形改変がみられ、施工土量の 早期把握が土工計画・工程管理の上で重要であった。 そこで、土工における i-Construction および CIM の試行 として、3 次元データ活用による計画・管理を実施した。 起工測量の 3 次元データを用いた土工計画 起工測量の 3 次元データによる地表面形状の照査 出来形測量の 3 次元データによる出来形管理の試行 4.2 起工測量の 3 次元データを用いた土工計画 土工計画における概算土量の算出には、UAV による 3 次 元測量(以下、UAV 測量)のデータを用いた。着手時には 先行工事が残っている状況(図 13)であり、従来の測量が 不可能な状態であったが、UAV 測量の結果、先行工事に支 障なく 3 次元データの取得が可能となった。 また、当該工事では、先行工事の完了後にレーザースキ ャナーによる 3 次元測量(以下、LS 測量)を実施し、UAV 測量による土量算出の精度確認や作業効率の確認に用いた。 4.2.1 3 次元データを用いた土量算出方法 UAV 測量では、搭載デジタルカメラによる航空写真から ステレオマッチングの原理を用いて 3 次元点群データを求 める。一方、LS 測量の場合は、照射レーザーパルスの反射 時間より距離を算出して 3 次元点群データを求めている。3 次元測量の点群データ(図 14 左上)と 3 次元設計モデル(図 14 左下)を重ね合せることで、その体積差分から掘削およ び盛土の土量が算出できる(図 14 右)。 当該工事で使用した UAV 測量と LS 測量の使用機器および 使用ソフトを表 5 に示す。 4.2.2 測量条件に関する留意点 ICT の全面的な活用に向けて平成 28 年 4 月に導入された 基準類 5)~7)に準拠して測量の条件を設定することとした。 UAV 測量に関する基準では地上画素寸法の規定(起工:2cm、 出来形:1cm)がある。当該工事に適用すると起工測量時に は高度 80m で、出来形測量時には高度 40m での飛行を行う 必要があった。しかしながら、工事範囲の境界には樹木が 図 12 工区平面図 図 13 工事着手時の現況地形(例:終点側切土) 図 14 3 次元データによる土量算出方法(模式図) 工事名称 紀北西道路岡野高架橋下部他工事 発注者 国土交通省 近畿地方整備局 受注者 株式会社 鴻池組 工期 平成28年5月17日~平成29年3月15日 工事延長 L=844m 橋梁下部工 鉄筋コンクリート橋台工 4基 道路土工 掘削工56,000m3 , 盛土工47,000m3      法面工(植生工)12,270m2      法面工(鉄筋挿入工)1,084本 橋梁上部工 橋梁付属物工 1式 工事内容 表 4 工事概要 表 5 使用機器・ソフト NO.478 DL=135.0 施工範囲 終点側切土:片切法面

機体 enRoute Zion QC-730 写真解析 Agisoft Photoscan カメラ Sony α6000 点群処理 ISP LandForms LS測量 機材 FARO Focus3D X330 点群処理 Trimble Real Works UAV測量 使用機器 使用ソフト 2 号補強土壁工 岡野第 1 橋 A2 橋台 先行工事が やや残る 境界に樹木が迫る 3 次元点群データ(起工) 3 次元設計モデル 3 次元データの重ね合わせ

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生い茂り(写真 3)、工区終点側の盛土部近傍には鉄塔や送 電線があった(写真 4)ため、規定からやや外れるが、そ れらの障害物を避けるため 60~100m の高度で空撮を実施 することにした。 LS 測量は測定距離が離れるほど測量精度が低下するが、 測定距離に関する規定は特にない。当該工事では、点群処 理ソフトで標定点の認識が可能な測定距離 50m を限度とし てレーザースキャナー(LS)の盛替えを行った。 4.2.3 切盛土量の比較結果 3 次元測量データを用いた土量比較の結果を表 6 に示す。 この結果は、LS 測量による算出土量を基準に、UAV 測量に よる土量を比率で示したものである。 先行工事の残工事量が少ない起点側切土部では、両測量 の誤差は 1%と小さい。一方、終点側切土部では、UAV 測量 時には先行工事の切土が 2.5m 残っており、このことが誤差 の要因と考えられる。起点・終点側盛土部では、先行工事 が少し残っていたが、全体の土量が大きいことから比率に よる誤差は 1.7%程度と小さく算定されている。また、後述 するが、UAV 測量では残存する草木表面を地表面として認 識するため、終点側切土部にある 2 号補強土壁盛土部の土 量誤差は、LS 測量の土量に対して少なく計上された。 UAV 測量による土量算出の結果は、LS 測量と比較して遜 色ない結果となった。よって、概算土量を把握する上では、 十分実用的な測量方法であることが分かった。 4.2.4 測量等の作業効率 測量からデータ処理・作成にかかる実施時間および人工 数を整理して表 7 に示す。UAV 測量は当該工事着手時に実 施した工程を示しており、LS 測量は先行工事完了後に開始 した工程を示している。さらに、TS による従来測量の工程 も見積もり条件に基づいて併記した。 UAV 測量は測量時間が極めて短く、データ処理までを考 えても、LS 測量に対し半分程度の時間・人工数で実施でき ている。一方、LS 測量は、当該工事の現場条件では盛替え が多くなり、測量時間が多くなるとともに、データ処理に も時間がかかるため、従来測量と比較して工程的なメリッ トは少ない結果となった。 UAV 測量は先行工事の残作業に支障することなく実施で き、実用的な精度で手待ち時間なく効率的に作業を進めら れることがわかった。また、従来の手法では人の立入りが 難しい急峻な地形も容易に測量できるメリットがあり、作 業効率や生産性の向上に繋がる手法である。 4.3 起工測量の 3 次元データによる地表面形状の照査 終点側切土部の起工測量による状況を図 15 に示す。岡野 第一橋 A2 橋台の背面に 2 号補強土壁(図中の黄色枠)があ り、谷地形や構造物掘削等の極端な凹地形が認められた。 ここでは、起工測量の 3 次元測量データを利用して補強土 壁計画位置の地表面形状の照査を行った事例を紹介する。 4.3.1 地表面変化の可視化と壁面形状の照査 設計地表面の 3 次元データと起工測量時の現況地表面の 写真 4 鉄塔・送電線の状況(盛土部付近) 写真 3 工区境界部の樹木の状況(起点側切土部) 表 7 測量からデータ処理・作成までの期間 測量手法 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 1 2 3 4 5 6 UAV 基準点測量 3人1日 現地測量  3人3h データ作成 1人4日          計6日 9 LS 基準点測量+ 現地測量  4人3日 データ作成 1人8日          計11日 20 TS 基準点測量 3人2日 現地測量  2人3日 データ作成 1人6日          計11日 18 備考 7月 8月 実働時間 必要人工 現地測量 点群処理 先行工事(残) 現地測量 横断作成 土量算出 土量算出 点群処理 土量算出 概算土量算出は2週間ほど早かった 基準点測量 基準点測量 基準点測量 現地測量 基準点測量 現地測量 表 6 算出土量の比較結果      測量方法  位置 起点側切土 1. 01 0 1 終点側切土 1. 14 1 1 UAV LS 2号補強土壁盛土 0. 90 5 1 起点・終点側盛土 1. 01 7 1

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3 次元データを重ね合わせて差分を求めることで、地表面 形状の変化の程度が確認できる。図 16 はヒートマップを用 いて両者の地表面データの高低差分布を可視化したもので ある。なお、本事例での現況地形の 3 次元データには LS 測量による点群データを使用した。 図 16 の青色の範囲は現況地表面が設計地表面より低い 箇所を示し、黄色の範囲は高い箇所を示している。当該箇 所の現況地表面は設計の地表面より 2~5m 低い箇所があり、 補強土壁の形状変化への対応が必要であると即時に判断で きる。 図 17 は地表面上に現れる補強土壁面を 3 次元モデルで示 したものである。緑色表示面は当初設計に基づいた施工壁 面、ピンク色表示面は 3 次元測量データに基づく現況地表 面に合わせた施工壁面の形状を示している。この図による と、ピンク色が見える範囲(No.475 付近、No.476~477 間) の補強土壁面の形状変更が必要であることがわかる。 当該工事では、3 次元データを基礎地盤高さなどの地表 面形状の照査や協議資料に用いることで、補強土壁工の形 状・構造変更の検討を短期間、かつスムーズに行うことが できた。 4.3.2 2 次元断面での地形照査の問題点 壁面位置および設計断面位置における地表面形状を図 18 に示す。図中の緑色線が当初設計の地表面を、赤色線が LS 測量による現況地表面を表している。 従来は、設計断面(測点)での横断測量より地形照査を 行っていた。当該箇所において従来手法で地形照査を行う と、図 18 の横断図にあるように、No.476 や No.477 付近で は地形変化なしと認識されてしまう。しかしながら、3 次 元データを用いることで、従来手法では確認できない設計 断面間の地形の違いを早い段階で確認できることがわかる。 このような施工計画に適用できる 3 次元データは、対策 検討の早期着手や工程遅延の原因排除を可能にし、建設現 場の生産性向上のためのツールとして有効である。 4.3.3 UAV 測量における留意点 図 19 は、壁面位置での地表面形状を示し、青線は起工測 量の UAV 測量による 3 次元データに、赤線は LS 測量による 3 次元データに、それぞれ基づいている。 UAV と LS の 3 次元測量による地表面形状は概ね一致して いるが、No.476 付近では最大 1.2m もの誤差が生じている。 この範囲には草木が残っており(図 15)、UAV 測量による 3 次元データは、この草木の表面を地表面と誤認した結果で 図 16 設計地表面と現況地表面の高低差の視覚化 図 19 地表面形状の比較(UAV&LS) 図 17 補強土壁の壁面モデル比較 図 15 2 号補強土壁の周辺状況および計画断面 図 18 地表面形状の比較(設計&3 次元測量) DL=130.0 NO.477 補強土壁 DL=130.00 DL CL F4 F4 岡野第一橋 A2橋台 埋め戻し線 岩盤線 MFR4 MFR4 MFR4 MFR4 MHDR2 MFULP4 MFL4 MFL4 MFL4 MFDL4 FD6 F4 F4 FO5 F UP4 HD3 F4 F4 F4 HUP2 FD5 F4 F4 FUP4 HD3 F4 F4 F4 HUP2 HD3 F5 F4 F4 FUP4 FD6 F4 F4 F4 HUP2 HD3 F5 F4 F4 FUP4 FD5 F4 F4 FUP4 HD3 FO4 HU P2 HD3 F5 FUP4 F4 F4 HD3 F6 F4 F4 F4 HUP2 H D3 F6 F4 F4 F4 FUP4 HD3 F6 F5 F4 F4 F4 HUP2 FU P4 HD3 F6 F6 F5 F4 F4 FUP4 HD3 F6 F6 F5 F4 F4 FD6 FO6 F6 F4 F4 F4 HUP2 FUP4 H D3 F6 F6 F5 F4 F4 FD6 F5 F4 F4 F4 HUP2 HD3 F 5 F 4 F 4 F UP4 HD2 F4 F4 FUP4 HD2 HUP2 MHURP2 差が見ら れない 2 号補強土壁 極端な凹地形 当初設計現況地表面 LS 測量現況地表面

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あると考えられる。したがって、UAV による地表面の測量 精度を確保するには、伐採や草木の除去を確実に行ってお く必要がある。なお、LS 測量の場合は一部地盤面に到達す るレーザーが存在するため、この程度の草木であれば地表 面を精度良く測定できる。 4.4 出来形測量の 3 次元データによる出来形管理の試行 新基準6)に準じて UAV 測量による出来形測量を試行した。 当該工事では ICT 土工は採用していないため、効率化の確 認と問題点の把握が主な目的である。なお、UAV 測量は施 工完了直前に行ったため、ごく一部で残施工箇所がある。 4.4.1 出来形計測結果 出来形計測結果の一例として、起点側切土部の出来形の 合否判定結果を図 20 に示す。対象範囲の 3 次元データを利 用することで、平場と法面に区分して合否判定および帳票 作成ができるため、従来作業と比べて効率化が図れる。 当該工事では従来の法丁張りによる掘削であったが、3 次元データによる出来形合否判定においては、標高較差の 平均値は規格値を満足した。また、各点の判定結果も平場 で約 97%、法面で約 95%が規格値内という結果であった。し かしながら、図 20 の黒色で示される箇所(赤色破線の丸枠) において規格値外の値で不合格となる異常値を検出した。 4.4.2 異常値検出の原因と対応 図 21 は、異常値検出箇所の 3 次元設計モデルと 3 次元出 来形データを重ね合わせたものである。3 次元設計モデル はほぼ直線的な法面形状であるのに対し、3 次元点群デー タは現地形に合わせたラウンディングが施されている。今 回検出された異常値は、この現場合わせのラウンディング 施工に起因していると考えられる。 ICT 土工を適用する場合は、3 次元設計モデルに基づく施 工が行われるため異常値は発生しにくいと考えられるが、 ラウンディングのような現地合わせの施工を行うと、出来 形測量データと設計モデルが一致しない。また、事前にラ ウンディング形状を 3 次元設計モデルに反映させることは 可能であるが、モデル作成に手間がかかり効率化に相反す る作業になると考えられる。こうした問題への対応は、し ばらくは発注者との協議を重ねて解決することになるであ ろう。 さらには、異常値発生リスクや植生の部分生育の可能性 がある長大切土法面の出来形検査方法、小段シールコンや ブロック積み擁壁部の土工部の出来形検査方法など、生産 性向上と品質確保を両立させるための出来形管理手法につ いての細部におよぶルール作りが必要になると考えられる。

5. おわりに

ICT 土工や施工計画・管理への 3 次元データの活用は、 建設生産プロセスを変化させ、生産性向上・効率化の実現、 さらには建設業の魅力の構築に不可欠な技術となり得ると 思われる。また、3 次元データの活用方法や活用する場は 今後益々増えると想定されている。本報告で紹介したよう な適用事例を今後も積み重ねていき、現場技術者が是非使 いたいと思う 3 次元データの活用方法の立案やシステム構 築の実現を目指し、開発を進めていく所存である。 参考文献 1) 国土交通省 HP:例えば、http://www.jacic.or.jp/books/ jacicjoho/jac114/p_2.pdf 2) 一般社団法人大阪建設業協会土木委員会:土木工事における 「i-Construction」の取組み及び施工の創意・工夫・改善事 例講習会資料、2017.2 3) 一般社団法人日本建設業連合会:2015 施工 CIM 事例集 4) 一般社団法人日本建設業連合会:2016 施工 CIM 事例集 5) 国土交通省:UAV を用いた公共測量マニュアル(案)、2016.3 6) 国土交通省:空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管 理要領(土工編)(案)、2016.3 7) 国土交通省:レーザースキャナーを用いた出来形管理要領 (土工編)(案)、2016.3 異常値検出 図 20 3 次元データによる出来形合否判定結果 図 21 異常値検出の原因(端部ラウンディング部)

図 1  CIM の概要

参照

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