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【再生可能エネルギー特集】地熱井涵養システム バイナリープラント

欧米の地熱発電の開発状況

米国の地熱エネルギー

米国は依然として地熱発電容量の点で世界首位であるが、新規発電容量を計画している。 2009 年 3 月、地熱エネルギー協会注1Geothermal Energy Association: GEA)は、米国 の地熱発電およびその開発状況についての最新の調査結果を発表した注2。現在の米国西部 8 州注3の総設備容量は3,040MW(メガワット)である。中でもカリフォルニア州は 2,600 MW と群を抜いている。この調査はまた、容量が合計 5,487 MW になる 121 件の新規地 熱発電所プロジェクトが現在 12 の州で進行中であることを明らかにした。これらのプロ ジェクトは、初期開発段階のものから、生産掘削や設備の建設段階にあるものまで様々で ある。米国の商用地熱発電部門は、政府による政策的支援のおかげで盛り返している。連 邦政府が2009 年 2 月に、経済再生法の一環として地熱エネルギーに対する再生可能エネ ルギー生産税額控除を2013 年まで 3 年間延長する決定を下したことが大きな後押しにな っている。地熱エネルギーの潜在的可能性が高い多くの西部州は、再生可能エネルギー使 用基準(renewable portfolio standards)を導入している。

(1)米国の研究開発プログラム

米国は将来、商業開発に至る可能性の高い資源の範囲を拡大するために地熱技術の研究 開発を加速している。

地熱井涵養システム(Enhanced Geothermal Systems: EGS)

EGS とは、人工的な水圧刺激を利用して地熱資源を活用するための一連の技術である。 通常、地下深いところにある高温の地層で岩石を断裂させる技術を指す。EGS は、温水ま たは水蒸気の新規地熱貯留層を創出するか、既存の地熱貯留層を拡大、強化するために利 用される。EGS 技術はまだ成熟しておらず、多くの点で検証を要する。とはいえ、世界中 でいくつかの開発プロジェクトがすでに発電しているか、近く発電を開始する予定である。 デザート・ピークプロジェクト(ネバダ州)は、米国初の EGS 商用施設を確立しようと している。このプロジェクトは計画段階にあり、既存の天然地熱地帯を拡張する。2008 年初頭以降、エネルギー省(Department of Energy: DOE)はこのプロジェクトに 500 万ド ル以上を投資してきた。Ormat Technologies 社(ネバダ州リーノー)および GeothermEx 社 (カリフォルニア州リッチモンド)が研究開発プロジェクトを主導しており、パートナー としてはユタ大学、TerraTek 社、 Pinnacle Technologies 社、米国地質調査所(U.S.

注1 Washington, DC(www.geo-energy.org)

注2 U.S. Geothermal Power Production and Development Update、2009 年 3 月

(http://www.geo-energy.org/publications/reports/Industry_Update_March_Final.pdf)

注3 アラスカ州、カリフォルニア州、ハワイ州、アイダホ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、ユタ州

(2)

ークレー国立研究所およびサンディア国立研究所がプロジェクトに参加している。プロジ ェクトの完成により、Ormat 社のデザート・ピーク商業プラントは少なくとも 5 MW が 追加される可能性がある。2008 年 10 月、DOE はデザート・ピークのある場所から 10 マ イル[16 キロ]ほど離れた Ormat 社の Brady 施設に 340 万ドル投資した。研究開発のパー トナーたちは、Brady の施設で、現在は商業化されていない井戸を生産貯留層とつなげ、 生産を強化できるようにするために、将来的には「岩盤亀裂ネットワーク」ともいうべき ものを開発する目的でEGS 刺激技術を適用する。詳細は Ormat 社のプレスリリース注4 参照されたい。 2008 年 4 月に、DOE の地熱技術プログラムは「地熱井涵養システム技術の評価」注5 称するレポートを発表した。この報告書は、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology: MIT) お よ び 国 立 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 研 究 所 (National Renewable Energy Laboratory: NREL)による研究結果を 8 ヵ月にわたって検討したもの である。このMIT レポート(The Future of Geothermal Energy、地熱エネルギーの未来) は2007 年初頭に発表され、政策決定者の注目を大いに集めた。同レポートは、EGS を利 用した地熱エネルギーは、米国で50 年以内に 100GW の発電容量になる可能性があるが、 そのためには今後15 年にわたり 10 億ドルの研究開発への投資が必要であると結論づけて いた。DOE レポートは、MIT レポートの結論(競争力を獲得するために必要な投資額お よび100GW の発電容量)については支持しなかったものの、前提については概ね妥当な ものであるとの見解を示した。DOE はまた、現在の商業地熱産業や関連産業で開発され た関連技術を評価した。これらの情報は主としてワークショップを通じて展開されたもの である。ワークショップの活動と結果はウェブサイト注6から入手可能である。

・2008 年 10 月、DOE は EGS 研究開発のための資金提供公募(Funding Opportunity Announcement: FOA)の下で 21 のプロジェクトを選定した。同省はこれら 21 のプ ロジェクトに対して 4 年間で最大 4,310 万ドルを提供する計画である。この資金は、 毎年の議会承認の対象になっている。2 つのテーマ領域(①システムの実証、および ②技術の研究開発)に対して、企業や様々な大学が資金の受領者として選ばれた。費 用分担型の資金提供であるため、官民併せて最大7,800 万ドルが投資されることにな る。DOE のプレスリリースについては、ウェブサイト注7を参照されたい。選定され たプロジェクトの詳細についても入手可能である注8 注4 http://www.ormat.com/news.php?did=137&aid=41db8e697f365926c3f669c97c8599f8 注5 An Evaluation of Enhanced Geothermal Systems Technology:Geothermal Technologies

Program、2008年

(http://www1.eere.energy.gov/geothermal/pdfs/evaluation_egs_tech_2008.pdf)

注6 http://www1.eere.energy.gov/geothermal/development_workshops.html 注7 http://www.energy.gov/news/6624.htm

注8 The Geothermal Technology Program:A Renaissance、2008年11月20日

(3)

2009 年 3 月、DOE は EGS 技術の研究開発と実証のための追加的 FOA を 2 度にわたり 公示した。最初のFOA では、構成要素の研究・開発・分析用に 3,500 万ドルが提供され、 20~30 のプロジェクトを支援する。地熱貯留層の開発、管理および利用に関する先端技術 開発が対象となる。二回目のFOA では、5~10 の国内の EGS 実証プロジェクトを支援す るために4,900 万ドルが提供される。DOE は、十分な流体の流れと熱抽出率を 5 ~7 年維 持し、少なくとも5MW を出力できる貯留層開発技術を実証し、有効性を立証する、様々 な地層でのプロジェクトを求めている。DOE のプレスリリースは、ウェブサイト注9から入 手可能である。 炭化水素/地熱副生 地熱エネルギーの研究者たちは、油田・ガス田でしばしばみられる地熱流体を発電に利 用する技術を開発している。サザン・メソジスト大学地熱エネルギープログラムは、地熱 副生はテキサス湾岸平原の7 州だけで 1,000~5,000MW の容量があると推定した。これら の州では、現在地熱からの発電はほとんどない。 ・ジェイ油田(フロリダ):ジェイ油田での実証プロジェクトが2009 年に開始され、通 常油井・ガス井で副生される地熱流体を利用する予定である。プロジェクトの容量は 200kW であるが、1MW に達する可能性もある。同プロジェクトは、バイナリー有機 ランキンサイクル発電プラントであるUTC 社の PureCycle 200 を使用している。 ・ロッキー・マウンテン石油試験センター(ワイオミング):ロッキー・マウンテン石 油試験センター(Rocky Mountain Oil Test Center: RMOTC)は、副生実証プロジェ クトである。2008 年 8 月に Ormat 社の 250kW の有機ランキンサイクル発電ユニッ トが設置され、9 月に運転を開始した。2009 年 1 月の時点で、同ユニットは、2.6 バ レル[413 リットル強]の温水から 485MWh 以上の発電電力量を得ていた。実証プロジ ェクトは2009 年 9 月まで実施される。詳細はウェブサイト注10を参照されたい。

異常高圧地熱資源(Geopressured Geothermal Resources)注11

米国の科学者たちは、異常高圧地熱資源のエネルギーとしての可能性に再び関心を示し ている。最大の異常高圧地熱資源はメキシコ湾北部、特にテキサス州およびルイジアナ州 (海上および陸上)にある。米国地質調査所は、この地熱資源は数千MW の地熱エネルギ ーと採掘可能な千兆立方フィートの天然ガスを擁していると推定している。米国議会は新 注9 http://www.energy.gov/news2009/6961.htm 注10 http://www.rmotc.doe.gov/ 注11 堆積盆地の深部帯水層に賦存する熱水を深層熱水と言い、その貯留層圧力は多くの場合静水圧に 等しいか若干上回る程度である。ところが米国メキシコ湾岸の堆積盆地など静水圧を遥かに超え る貯留層圧力を示す地熱貯留層が堆積盆地に存在している。このような貯留層を異常高圧層と呼 ぶ。(出典:茅陽一監修「新エネルギー大事典」初版474 ページ。(株)工業調査会発行。)

(4)

2007 年に異常高圧貯留層に対して新技術を実証する認可を与えた。 (2)バイナリープラントの研究開発および技術の商業化 バイナリーサイクルプラントは、高温資源よりはるかに多く存在する低温の地熱水(一 般的に 90~150℃)から発電を行うために開発された。バイナリープラントは通常ランキ ンサイクル注12を利用する。ランキンサイクルでは、地熱流体が閉ループの熱交換器を介し て移動し、その熱でブタンなどの低沸点の作動流体を加熱する。地熱流体は作動流体を気 体(ガス)に変換し、そのガスがタービンを回して発電する。

UTC Power 社(コネチカット州イーストハートフォードにある United Technologies 社の一部門)および DOE は、200kW のモジュール式有機ランキンサイクル装置である PureCycle を開発した。これは、74℃(165°F)という低温で地熱資源を電気に変換するこ とができる。2008 年 8 月に、2 つの生産ユニットがニューメキシコ州で運転を開始した注13 2006 年以降、アラスカのチェナ温泉(Chena Hot Springs)リゾートでも 3 台の PureCycle ユニットが運転されてきた(200kW のユニット 2 つおよび 280kW のユニット 1 つで、総 容量680kW)。Raser Technologies 社注14(ユタ州プロボ)は、様々な再生可能エネルギー プロジェクト向けに200 台の PureCycle システムを注文したといわれている。すでに述べ たように、Ormat 社もまた有機ランキンサイクル技術を開発しており、RMOTC の石油・ ガス井で発生した廃温水から発電するために、DOE と協力している。 産業界のプレス発表および2008 年 8 月付けの地熱エネルギー協会のバイナリープラン トのリスト注15に基づき、米国内で稼働中のバイナリープラントの更新情報を以下に示す。 リストには、所有者名(プラント名)、立地点、操業開始日および公称出力が掲載されてい る。 注12 Rankine cycle。熱力学的サイクルの 1 つで今日の火力発電の基礎になるもの。 注13 http://www.utcpower.com/fs/com/Attachments/PR_092508.pdf 注14 http://www.rasertech.com 注15 http://www.geo-energy.org/information/plants.asp

(5)

米国で稼働中のバイナリープラント(2008 年以降の新規/更新情報は太字・紫色)

州 所有者名(プラント名) 立地点 開始年 出 力

(MW)

アラスカ Chena Hot Springs Near Fairbanks 2006 0.68

カリフォル

ニア (AMEDEE) Amedee Geothermal Venture Amadee 1988 1.6

Constellation Power and ORMAT

(MAMMOTH PACIFIC I) Sierra Nevada Mountains/Mono 1984 24

Constellation Power and ORMAT

(MAMMOTH PACIFIC II) Sierra Nevada Mountains/Mono 1990 15

Ormat (GEM RESOURCES II) Imperial 1986 18

Ormat (ORMESA I, IE, IH) Imperial 不明 44

Ormat (ORMESA II) Imperial 1986 18

Ormat (SIGC BINARY) Imperial Valley 1992 42

Ormat North Brawley 2008 50

ハワイ Puna Geothermal Venturea Pahoa 1993 25~ 35

アイダホ U.S. Geothermal (RAFT RIVER UNIT) southern Idaho 2008 13b

ニューメキ

シコ DOCK) Raser Technologies (LIGHTNING Fallon 2009 10

c

ネバダ Ormat Group/Brady Power Partners Churchill 1992 27

Constellation Energy (SODA LAKE I) Fallon 1987 5.1

Constellation Energy (SODA LAKE II) Fallon 1990 18

Ormat (RICHARD BURDETT) Reno 2005 26

Ormat (DESERT PEAK II) Churchhill 2006 11

Ormat (GALENA 2) Reno 2007 15

Ormat (GALENA 3) Reno 2008 20

Home Stretch Geothermal

(WABUSKA) Wabuska 1984 2.2

U.S. Geothermal (SAN EMIDIO) San Emidio 1987 4.8

Steamboat Development Corp.

(STEAMBOAT II) Washoe 1992 29

Steamboat Development Corp.

(STEAMBOAT III) Washoe 1992 24

Ormat (STEAMBOAT I) Washoe 1986 8.4

Ormat (STEAMBOAT IA) Washoe 1988 2.95

ユタ Enel North America (COVE FORT II) Cove Fort 1990 d

a このプラントはシングルフラッシュ方式(地熱蒸気が直接タービンを回して発電する方式)と

バイナリー発電のハイブリッドである

b 29 MW への拡大作業中

c 2008 年に稼動を開始したパイロットプロジェクト(0.24 kW)

(6)

アイスランド、イタリア、トルコ、ポルトガル、およびフランスが今日の欧州の地熱発 電を主導している。ドイツ、フランスおよびルーマニアでも、容量が拡大し始めた。

(1)欧州における研究開発プログラム

欧州地熱エネルギー協会注16(The European Geothermal Energy Council: EGEC)は、地 熱エネルギー利用の分野における研究開発を支援している。2009 年初頭、EGEC は論文 「地熱エネルギーのための研究課題:2008 年~2030 年までの戦略」注17を発表した。この 論文は、EU(European Union、欧州連合)27 ヵ国の地熱発電総設備容量は 1GW レベル に迫りつつあると述べている。他の欧州諸国も加えれば、あと0.5 GW 容量が増える。欧 州全域の地熱発電総設備容量の目標は、2010 年に 1.4 GW、2020 年に 6~10 GW、2030 年に15~30 GW となっている。同論文には、上記目標達成のための、欧州の地熱研究開 発目標(下記参照)に関する詳細が記載されている。 ・地熱資源の拡大を可能にする技術の開発 ・EGS 技術の持続可能性の立証 ・低温水(<120°C)でのマイクロジェネレーションおよびコジェネレーションを可能にす る技術の開発と実証。また、ハイブリッドプラント(バイオマスと地熱、など)にお ける技術開発と実証。 EGS プロジェクトの中には、欧州ですでに発電を開始しているものもある。 ・Soultz-sous-Forêts プロジェクト(フランス)は、すでに 1.5MW の EGS プラントを 稼働させている。 ・Landau プロジェクト(ドイツ)は、3.2MW の稼働プラントである。 欧州の数ヵ国および数社のエネルギー企業は、Soultz-sous-Forêts サイトを開発中であ る。2005 年~2008 年のパイロットプラント開発段階では、現在既に稼動している 5 ~6 MW のパイロットプラントの建設を支援した。開発業者は今後、25MW の商業用プロトタ イプを建設する意向である。詳細については、欧州のHDR プロジェクトのサイト注18を参 照されたい。

Ormat 社の技術はドイツ Landau の商業用 EGS プロジェクトで利用されている。同社 の最近のプレスリリース注19によれば、ここでは1 年以上 3.2MW の EGS 発電プラントが

注16 www.egec.org/

注17 RESEARCH AGENDA FOR GEOTHERMAL ENERGY Strategy 2008 to 2030

(http://www.egec.org/target/EGEC%20RESEARCH%20AGENDA%20-%202009.pdf)

注18 www.soultz.net/version-en.htm (フランス語版では、より最近の情報が掲載されている可能性

がある。http://www.soultz.net/fr/ )

注19 DOE Invests in Ormat Enhanced Geothermal System Research: Brady resource will be

second EGS site for Ormat Technologies, 7 October 2008

(7)

稼働しているとのことである。 EGS の開発企業である Petratherm 社(オーストラリア、ノーウッド)は、スペインの マドリッド近郊で地熱プロジェクトを推進している。同社のウェブサイト注20によれば、 Petratherm 社はスペインで地熱エネルギープロジェクトを正式に開発する最初の企業で あるとのことである。 (2)バイナリープラント技術の商業化

国際地熱協会 (International Geothermal Association)の 2008 年 4~6 月号のニュース レター注21は、世界で稼働中の新規地熱発電プラントの最新情報を提供している。 欧州で稼働しているバイナリープラントの情報を以下に示す。EGEC の出版物「地熱電 力とコジェネレーション」注22もまた、欧州における地熱電力だけでなくバイナリープラン ト技術について概説している。 欧州で稼働中のバイナリープラント(2008 年以降の新規/更新情報は太字・紫色) 国名 概要 オーストリア Altheim(2002 年)1 MWe Blumau(2001 年)0.2 MWe フランス Soultz-sous-Forêts; 1.5 MW ドイツ Neustadt-Glewe(2003 年)0.2MWe のパイロットプラント Landau; 3.8 MW

Bruchsal; 1.0 MW (Binary Kalina) Unterhaching; 3.4 MW (Binary Kalina)

ポルトガル Ribera Grande プラント、サン・ミゲル島。4 基のバイナリーユニットが 1998 年に建設完了、合計13 MWe ルーマニア Oradea、0.2 MW トルコ Kizildere Binary、 5.0 MW Canakkale、7.5 MW Aydin-Salavatli プラント(2007 年) 10 MWe 翻訳:吉野 晴美

出典:SRI Consulting Business Intelligence Explorer Program

注20 http://www.petratherm.com.au/projects/index.htm 注21 IGA New Quarterly No.72 (April-June 2008)

(http://www.geothermal.org/IGA%20News%2072.pdf)

注22 GEOTHERMAL ELECTRICITY AND COMBINED HEAT & POWER

参照

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