実用の
TeX
2001/03/24 版松井 健
て ふ TEXはくみはん組版ソフトです。この種のソフトはDTPソフト∗1とも呼ばれ、一太郎などのワープロソフトとはま た違った性格を持っています。では、具体的にTEXとはどのようなもので、どのように使うものなのか。そ れを以下でお話しすることにしましょう。1 TEX
の特徴
• フリーソフトである。• MS-DOSやWindowsをはじめ、UNIXやMacintoshなど、ほとんどのOSで使うことができる。
• ほぼあらゆるプリンタで高品質な出力が得られる。 • 極めて高い精度で文字位置を決められる。 • TEXの文書はテキストファイルで書かれているので、普通のテキストエディタで読み書きできる。 • 誕生から20年たち、標準化が行き届いているため、どのコンピュータのTEXで処理しても寸分の違いな く出力できる。 • 特に数式の組版には定評∗2があり、数式をテキスト形式で表す事実上の標準となっている。 • 特に何も考えないで文章を書いても、結構奇麗に出力される。 ・・・等々。
2 TEX
のセットアップ
2.1 L
ATEX
のインストール
では、TEXのセットアップを始めましょう。Windows版のLら て ふATEXは角籐先生のページ∗3からダウンロード することができます。ただし、全てのファイルをあわせるとそのサイズは70MBを越えるため、遅い回線でダ ウンロードしようとすると大変です。希望者には私がCDRにてお譲りしますので、それを利用するといいと 思います。
手に入れたファイルは、適当なディレクトリ(たとえばC:Y=tempなど。)にまとめておいてください。そし
∗1市販のものでは Adobe 社の PageMaker などが有名です。
∗2TEX の開発者 Donald E.Knuth はチューリング賞や京都賞を取った優秀な数学者・コンピュータ科学者なのだ! ∗3http://www.fsci.fuk.kindai.ac.jp/~kakuto/win32-ptex/
て、「texinst733.zip」というファイルを、TEXをインストールするディレクトリ∗4(C:Y=TeXなど。)に展開し てください。その方法は割愛しますが、後述のpyxis等を利用すると非常に簡単です。
展開が済んだら、展開先のディレクトリに移動して、そこで「texinst733∗5C:Y=tmp」などとして簡易TEX インストーラ「texinst733.exe」を実行してください。しばらく待てば、無事必要なファイルが展開されるは ずです。最後に定義すべき環境変数が表示されますから、Windows 95/98∗6の場合にはそれをAutoexec.bat の最後に追加し、Windows NT/2000の場合には、コントロールパネルで定義して下さい。必要なのはバイナ リディレクトリ(例の場合はC:Y=TeXY=bin) をPATH に追加することと、TEXMFMAIN、TEXMFCNFを 定義することです。例えば次のようになります。 SETPATH=%PATH%;C:Y=TeXY=bin TEXMFMAIN=C:Y=TeXY=shareY=texmf TEXMFCNF=C:Y=TeXY=shareY=texmfY=web2c
2.2 GhostScript
のインストール
GhostScriptは堀田先生のページ∗7 から手に入れるのが最も簡単です。なおGhostScript日本語化パッチ 「gs650-j-wapi.zip」は先ほど角籐先生のページから手に入れたファイル群の中に含まれているので、再びダウン ロードする必要はありません。「gs650w32.zip」を手に入れたら、適当なディレクトリで展開し、「setupgs.exe」 を実行してGhostScriptをインストールします。どのディレクトリにインストールするか聞かれますが、これ はお好みでかまいません。以下では「C:Y=TeXY=gs」にインストールしたものとしてお話を進めます。 次にGhostScriptの日本語化をしましょう。Windows 98を使っている人は、以下の流れに沿ってやってみ てください。 1. GhostScript をインストールしたディレクトリ (C:Y=TeXY=gs など) をカレントディレクトリとして 「gs650-j-wapi.zip」を展開します。2.「SETPATH= %PATH%;C:Y=TeXY=gsY=gs6.50Y=bin」の一行をAutoexec.batに書き加えます。
3. 同様にAutoexec.batに一行「GS LIB=C:/TeX/gs/gs6.50/lib; C:/TeX/gs/gs6.50/kanji;C:/TeX/gs/fonts」 のように書き加え、環境変数を定義します。 なお、Windows NT/2000をお使いの方は、コントロールパネルから環境変数を変えてください。 次はGsviewのインストールです。「gsv36w32.exe」をダウンロードしてきてください。これを実行すると インストーラが起動するので、指示に従って(というよりインストール先以外ほとんどデフォルトのままで)イ ンストールしてください。ただし、拡張子関連づけの項でPDFファイルに関連づけるかどうか聞かれますが、 これはやめておいた方がいいでしょう。PDFの閲覧に際してはAcrobatReaderの方が高性能だからです。 ここまで終わったら、いったんWindowsを再起動してください。そして、「C:Y=TeXY=gsY=gs6.50Y=kanjiY=article9.ps」 をGsviewerで開いてみましょう。日本国憲法第9条が表示されたでしょうか。もしされていればおめでとう、 ここまでの作業は成功だったということになります。もし失敗したら、ここまでの記事を読み直して、何かや ∗4このとき、ディレクトリ名に空白や日本語などの全角文字を使わないようにしてください。後々エラーの原因になりますので。 ∗5以後半角空白を “” で表します。
∗6Windows Me をお使いの方は、「msconfig.exe」を使って同様に環境変数を設定することができます。ちなみに Autoexec.bat を 直接書き換えようとしても失敗しますので要注意。
り落としたことはないか検討してみてください。指示通り作業した、という方。申し訳ないですが、お近くの 事情通の方に質問をしてください。無責任なようですが、TEXのインストールは期待通りに行かないことが多 く、その原因も多岐に渡るためここで説明し尽くすことはできないのです。
2.3 DVIOUT
のインストール
そろそろ延々と続くインストール作業にしびれを切らした方が出てくる頃だと思います。しかしまあ、書い ている方も疲れてヒイヒイ言いながらやっているので、もうしばらくご辛抱願います。 さて、DVIOUTのインストールです。以前このソフトは大変面倒な設定をしなければ動いてくれない代物 だったのですが、最近は自動設定機能が賢くなってきて、結構お手軽にインストールできます。以下の手順を 踏んでください。 1. ftp://akagi.ms.u-tokyo.ac.jp/pub/TeX/dviout/current in Japanese/ から、番号の最も新しいディレク トリの「tex???w.lzh」をダウンロードします。 2. 手に入れたファイルをインストールしたいディレクトリに展開します。3. 展開されたファイルの中の、「winttf.lzh」をtexmfの親ディレクトリ(C:Y=TeXY=share など)で展開し ます。 4. dviout.exeを実行して、DVIOUTを起動する。初回起動時には色々と設定をさせられるが、基本的には 何もいじらなくて良い。ただし、「guess」「gen:」など自動設定機能のある項目はこれらのボタンを押して 自動設定をさせてください。 5. 展開したファイルの中の、「testw.dvi」を開いてうまく表示されればOKです。 これでLATEXのインストールは一通り終わりました。
3 TEX
の書き方
3.1
プリアンブル
エディタ∗8を使って、とりあえず以下のように書いてみてください。 ——— Y=documentclass{jarticle} Y=begin{document} 明日の天気は晴れ時々曇り所によって一時雨 Y=end{document} ——— ∗8後述の秀丸エディタを推奨します。メモ帳だとただでさえ使いにくい上にファイルサイズ制限があり、不愉快この上ないです。ま た、一太郎や Word などのワープロソフトで書こうとするといろいろ問題が起きるので、これは避けてください(一般に、単にテ キストファイルを編集するのに一太郎や Word は不適といわれています)。これが、全てのTEX文書に共通する、基本的な記述です。お約束的記述とでも言えばいいのでしょうか、と にかくこれだけは書けるようにしてください。なお、言うまでもないことですが、天気云々のくだりは文章本 文となります。つまり、Y=begin{document}とY=end{document}の間に本文を書けばよい、ということにな ります。
3.2
コンパイル
前項で書いた文章をDVIファイルにするには、これをコンパイルしなければなりません。それには次の手 順を踏みましょう。 1. 文章をTEXファイルで保存します。たいていの場合、「ファイル」–「名前を付けて保存」で「????.tex」 のように拡張子を「tex」とし、保存すれば大丈夫です。 2. コマンドプロンプトを開き、上で保存したファイルがあるディレクトリに移動します。そして、 platex????.tex ✂ ✁✄✛ と実行してください。スペルミスなどの間違いがなければ、何事もなく「????.dvi」というファイルがで きているはずです。 3. できてきた「????.dvi」というファイルをDVIOUTで開いて、うまく表示されることを確認してください。3.3 TEX
の基本文法
TEXの文法は簡単です。HTMLファイルなどはタグをいちいち閉じなければなりませんが、TEXではそん なことをする必要もありません。この項では、簡単なTEXの文法を、簡単に説明したいと思います。 3.3.1 文書を書くための文法 段落 空行(何も書いていない行)を一行作ればOK。段落と段落の間は一行開けよう、といえばいいでしょ うか。なお、段落の頭は下げないままにしておいてください。TEXが自動的に下げてくれますから。ちな みに、「Y=par」という命令でも段落をわけることができます∗9。 改行 改行したい位置で、「Y=Y=」と書いてください。普通のエディタやワープロと違って、普通の改行(Enter キーを押して作る改行)は無視されます。逆に、TEXの文書を書いているときは、適宜見やすいように Enterキーによる改行を入れた方がいいと言えます。タイトル 文頭の「Y=begin{document}」の直後に、「Y=title{タイトル}」「Y=author{著者}」「{日付}」と書 き、その後に「Y=maketitle」と書きます。
例:
Y=documentclass{jarticle} Y=begin{document}
∗9空行方式とどう違うのか?と思われることと思います。実は、TEX は空行に出会うとそこに「Y=par」があるものと自動的に解釈す るようになっているのです。だから、普通の文章を書いている文にはどちらも同じです。ただし、独自の命令を定義するときは空 行方式が使えないので、「Y=par」を利用することになります。
Y=title{これは例です} Y=author{Huck} Y=date{} Y=maketitle (本文) Y=end{document} (注:「Y=date{}」のように{}の中に何も書かないと、日付は出力されません。また、「Y=date{today}」と すると、コンパイルしたときの日付が自動的に入ります。) 節の見出し 「Y=section{}」と書いてください。見出しそのものは{}の中に記述します。(例:Y=section{あし たのために})また、小節は「Y=subsection{}」です。 空白 縦に?行の空白を作るには、「Y=vspace{?zh}」と書きます(ページの一番上や一番下に空白を作るとき は、「Y=vspace∗{?zh}」としてください)。横に全角空白?個分の空白を作るのなら、「Y=hspace{?zw}」です (行頭行末なら「Y=hspace∗{?zw}」)。スペースキーを打って作る半角空白()はTEXでは区切りの意味 しかなく、いくら続けて打っても空白は半角空白一つ分しか開きません。 均等な間隔の空白 「Y=vfill」ページの一番上と一番下には使えません。 改ページ 「Y=newpage」 空ページ 「Y=newpageY=hbox{}Y=newpage」ただしページ数とかヘッダ・フッタは入ってしまいます。本当に 白紙のページが欲しければ「Y=newpageY=thispagestyle{empty}Y=hbox{}Y=newpage」。なお、この命令を使 うとページ番号がずれてしまうことがあるので、後述のページ番号変更命令「Y=setcounter{page}{n}」を 利用してください。 脚注 「Y=footnote{}」と書きます。TEXを使ってしばしば感動するのは、この脚注付けの簡単さです。ぜひ一 度は使ってみてください。(例:単位Y=footnote{落とすもの。落ちるもの。}) 書体 ボールド:「Y=textbf{}」イタリック:「Y=textit{}」など。
文字サイズ 小さい方から順に、「Y=tiny」「Y=scriptsize」「Y=footnotesize」「Y=small」「Y=normalsize」「Y=large」 「Y=Large」「Y=LARGE」「Y=huge」「Y=Huge」(例:{Y=tiny極小} 「極小」となる。ほんとにちっちゃい!)
環境 左寄せ:「Y=begin{flushleft}・・・Y=end{flushleft}」 右寄せ:「Y=begin{flushright}・・・Y=end{flushright}」 センタリング:「Y=begin{center}・・・Y=end{center}」(「・・・」は本文) 例: Y=begin{center} この文は、センタリングされます。 Y=end{center} 注釈 % は、その行のそれ以降をTEXに無視させる特殊な命令です。この文字から後は改行記号も含め全て
無視されます∗10ので、コメント(注釈)を書くのに使えます。 (例:ここまでは出力されます%ここは出力されません) ページ番号変更 「Y=setcounter{page}{n}」(ページ番号をnに変える。もちろんnは正の整数。) 特殊文字 以下の文字はそのままでは使えません。注意してください。 # $ % & _ { } < > Y= ^ | ~ これらの文字を使いたいときは、とりあえず全角文字を使うか、 Y=verb/ # $ % & _ { } < > Y= ^ | ~ / のようにしてください∗11。なお「Y=verb/・・・/」は・・・の部分を記述通りに表示せよ、という命令で、 「//」は「||」でもかまいません。 半角カナ いわゆる半角カナは使えません∗12 。全角カナを使うようにしてください。 丸付き数字 「1」のような丸付き数字は機種依存文字の代表です。TEXに限らず、一般に機種依存文字はできる だけ使わないという暗黙の了解事項があるので、こうした文字は使わないように心がけましょう。具体的に は「Y=textcircled{1}」のように書いてください。中の数字が大きいと感じたら、「Y=textcircled{Y=small1}」 と書けば「 1」となります。また、奥村先生のマクロファイルを使うなら、「Y=MARU{1}」などとすれば 「1」と出力されます。一桁の数字ならこちらの方が簡単かつ美しいでしょう。しかし二桁の数字になる とやはりフォントサイズの変更が必要となるので、その場合は「Y=textcircled{Y=scriptsize10}」などとし て対処することになります。 3.3.2 箇条書き 記号つき箇条書き(itemize環境) 頭に「•」などの記号を付けた箇条書きです。今ごらんになっている記事の最初の部分で、TEXの長所を 挙げるときなどに使っています。使い方は、全体を「Y=begin{itemize}・・・Y=end{itemize}」で囲み、そ れぞれの箇条の頭に「Y=item」をつけます。 例: Y=begin{itemize} Y=item数式を扱うことにかけて、TEXの右に出るものはない。 Y=end{itemize} また、同様にして、箇条書きの中にまた箇条書きを書く入れ子構造を作ることもできます。 ✎ 各項 目 の 頭 に付 く「•」な ど の 記 号は ク ラ ス フ ァ イル の 中 で 定 め られ て い ま す 。これ を 変 更 する に は 、 「Y=renewcommand{}」という命令を使います。たとえば第一レベルの「•」を「・」(中黒)に変えたいのなら、 Y=renewcommand{Y=labelitemi}{・}
とします。第二レベル以降の記号を変えたければ、「Y=labelitemi」を「Y=labelitemii」「Y=labelitemiii」などと
∗10たとえば、欧文を 2 行に渡って書くと改行記号で区切られて半角空白が入ってしまいますが、行末に%を書くことでそれを回避で きます。 ∗11この方法を使うとフォントがボールド体になってしまうため、「そんな醜いのは私の美学に反する」と仰る方がおられるか も知れません。そういうときは文字コードを直接指定してあげることで解決できます。たとえば、「~」を出力したいのなら、 「Y=texttt{Y=symbol{”7E}} 」とすれば良いのです。 ∗12一般に、半角カナは機種依存性があるので、どんな文書を書くときも使わない方が無難です。
して同様に記述してください。 番号つき箇条書き(enumerate環境)
頭に番号を付けた箇条書きです。この記事では3-2「コンパイル」の節で使われています。使い方は、全 体を「Y=begin{enumerate}・・・Y=end{enumerate}」で囲み、それぞれの箇条の頭に「Y=item」をつけま す。使用例は「記号つき箇条書き」と同じである(「itemize」を「enumerate」に変えるだけ)ため、ここ では省略します。 ✎ 番号の付け方は、これまたクラスファイルの中で定めています。これも「Y=renewcommand{}」で変更するこ とができます。たとえば第一レベルの番号の後のピリオドを取るには Y=renewcommand{Y=labelenumi}{Y=theenumi} とし、番号に括弧を付けるなら Y=renewcommand{Y=labelenumi}{(Y=theenumi)} とします。一方、番号をローマ数字(i,ii,・・・)にするなら Y=renewcommand{Y=theenumi}{Y=roman{enumi}}
とすればよく、ここで「Y=roman」を「Y=arabic」「Y=alph」「Y=Alph」「Y=Roman」とすればそれぞれ算用数字 (1,2,・・・)、英小文字(a,b,・・・)、英大文字(A,B,・・・)、ローマ数字大文字(I,II,・・・)となります。 見出しつき箇条書き(description環境)
左寄せ太字で見出しを付けた箇条書きです。この「箇条書き」の項自体がこれを使って書かれています。 全体を「Y=begin{description}・・・Y=end{description}」で囲み、それぞれの箇条の頭に「Y=item[見出し]」 をつけて使います。 例: Y=begin{description} Y=item[見出しつき箇条書き]左寄せ太字で・・・ Y=end{description} ✎ 見出しの直後で改行したい場合は、単に強制改行Y=Y=を入れてもうまくいきません。強制改行の前に「Y=mbox{}」 という命令で見えない箱をつくって、それから改行するとうまくいきます。 3.3.3 数式を書くための文法 TEXの本領は数式にあります。けれど私の本領はそこにありません。だから、この項はあくまで簡単に。 もっと複雑な数式を書きたい人は参考文献を調べてください。 以下の命令は全て数式モードの中で使います。つまり、「$・・・$」のように$と$の間に挟んで使うわけです。 累乗 「x^{n}」とすれば、xnとなります。 添字 「a {ij}」とすれば、aijとなります。 和 「Y=displaystyle Y=sum {k=1}^{n-1}」とすれば、 n−1 k=1 となります。・・・ああ、見るのも嫌だ。 積分 「Y=displaystyle Y=int {0}^{1}」とすれば、 1 0 となります。
分数 「Y=displaystyle Y=frac{1+x}{1-x}」とすれば、1 +x 1− x となります。ちなみに文中に分数をそのまま入れ る場合、「$ y=Y=frac{1+x}{1-x}$」と書けばy = 1+x1−x のように小さく表示されますが、しかしこれは $y=(1+x)/(1-x)$と書いてy = (1 + x)/(1 − x)のようにするのが良いとされています。
4
美しい出力のために
以下では、文法的に間違いではないけれども美しい出力が得られない事例を取り上げます。特にレポートを TEXで書く際にはこれらの点に配慮すると良いでしょう。 ページ番号 一枚の紙に収まっているのに、わざわざページ番号「1」をふっている文書をよく見かけます。ちょっ と格好が良くないので、「Y=pagestyle{empty}」と文頭に一行追加してページ番号を消してしまいましょう。 ただ、タイトルなどをつけて「Y=maketitle」命令を使った場合、「Y=pagestyle{empty}」としても1ページ 目だけページ数が出力されてしまいます。この場合は「Y=maketitle」のあとに「Y=thispagestyle{empty}」 という一行を書き加えてください。 文字サイズ レポートを書く際に特に気をつけてください。堀田先生はこのようにおっしゃっています。 「レポート採点のときに感じるのは、 文字の大きさ についてです。手書きのレポートの後に、普通の10 ポイント指定でのLATEX 2εで書かれたレポートを見ると文字の大きさが、とても小さく見えてしまうも のです。ですから、できたら文字の大きさを12ポイント指定で書いていただきたいのです。」 これには、一番上の一行をこのように変えれば良いです。「Y=documentclass[12pt]{jarticle}」 数字など 英数字は全て1バイト文字を使ってください。2バイト文字は奇麗な出力が得られません。ただし、 括弧に関しては2バイト文字を使った方が収まりが良いようです。 新標準クラスファイル 標準クラスファイルjarticleを使っていると、上下左右のマージンが大きすぎると感 じるようになります。レポート作成などでページ数を稼ぎたいとき以外、これはあまり好ましくありませ ん。そこで、奥村先生が新標準クラスファイルとしてjsarticleとjsbookを公開してくださいました。詳 しくは奥村先生のページ∗13を見てください。これを使えば、より奇麗な出力が得られるようになります。 ルビ TEXは標準ではルビを出力するコマンドを備えていません。が、適当なマクロを設定すれば実現できます。 奥村先生の新標準クラスファイルパッケージに先生オリジナルのマクロ集が入っているので、これを利用させ ていただきましょう。しかるべきところ∗14にマクロファイルがあれば、文頭に「Y=usepackage{okumacro}」 の一行を追加するだけで、ルビを振る命令が使えるようになります。(例:Y=ruby{憂鬱}{ゆううつ}: ゆううつ 憂鬱)引用符 欧文のダブルクォート「“Hello”」は「‘‘Hello’’」のように書きます。よく、「"Hello"」のように
して「”Hello”」と出力しているのを見かけますが、これは誤りです。
∗13http://www.matsusaka-u.ac.jp/~okumura/jsclasses/ ∗14jsarticle と同じ場所でよい。
5 TEX
文書の配布
TEXの文書は自分だけのために書いたものならDVIファイルのまま保存しておいてかまいません。しかし、 これを他人に配るとなると話は違います。そもそも、一般に「DVIファイル」とか「DVIOUT」などというコ トバが知られてはいません。他人に渡すファイルは、もっとポピュラーな形式である必要があります。 ではどのようなファイル形式が望ましいのでしょう。TEXの文書を配る場合、ある二つの形式が望ましいと されています。一つは、PostScriptファイル∗15。もう一つは、PDFファイル∗16です。やや乱暴に区分する と、前者はUNIXを使う人に渡す場合、後者はWindowsを使う人に渡す場合に使うと良いでしょう。 言うよりやってみた方が早そうです。先ほど作った「????.dvi」ファイルを使って早速やってみましょう。 まず、PostScriptファイルを作ります。コマンドプロンプト上で「????.dvi」があるディレクトリに移り∗17、 dvipsk???? ✂ ✁✄✛ と実行してみてください。「????.ps」というファイルができたでしょうか。これがPostScriptファイルです。 次にPDFファイルを作りましょう。これには何通りか方法があるのですが、そのうち2種類の方法を紹介し ます。一つ、GhostScript付属の「ps2pdf」を使う方法。「dvipsk」を使ったときと同様に、コマンドプロンプ ト上で「????.ps」があるディレクトリに移り、 ps2pdf????.ps????.pdf ✂ ✁✄✛ と実行すれば、PDFファイルができてくるはずです。もう一つの方法、AcrobatDistillerを使う方法はもっと 簡単です。「????.ps」をAcrobatDistillerに読み込ませれば、自動的に高品質のPDF ファイルができます。 ただし、AcrobatDistillerはAdobe社の製品であるため、懐が寂しい我々学生にはちょっと手を出しにくいか も知れません。6
あると便利なソフトウェア
秀丸エディタ 某市販エディタ製作会社を泣かせたとまで言われる最高のテキストエディタ。TEX文書を書く ときのみならず、普通のテキストやHTML文書、さらにはCやJava等のプログラムを書くときにも大 活躍。初心者から上級者まで、あらゆる階層の人に満足を与えてくれます。Windowsユーザーだったら 黙って導入してください。ちなみに私のWindowsからはメモ帳が追放され、その全機能を秀丸が肩代わ りするように仕掛けが施されています。ブラウザの「ソースを表示」などで見にくいメモ帳が立ち上がる ことも、もうありません。万歳! 秀丸用カラー定義ファイル 秀丸にはもともとHTMLやC言語のソースコードをカラー強調してくれる機 能がありますが、TEXにもそのための定義ファイルがあります。乙部先生のページからダウンロード できるので、是非利用しましょう。(ファイル自体はhttp://ms326.ms.u-tokyo.ac.jp/otobe/tex/files/ util/latex.hilight.zipにあります。)使用方法は同梱のマニュアルを参照してください。 ∗15Windows 上では GhostView で閲覧できます。 ∗16Adobe 社の AcrobatReader で閲覧できます。DTP 界では標準的な形式です。 ∗17C:Y=tmp に移動したければ、コマンドプロンプトから「cdC:Y=tmp ✂ ✁✄✛」とします。Pyxis エクスプローラで、あっちをクリックこっちへドラッグ、面倒くさくありませんか?そんなときは、 キーボードとマウスを組み合わせてきわめて効率的なファイル管理を実現するソフトウェア、Pyxisを利 用すると良いでしょう。http://member.nifty.ne.jp/pyxis/からダウンロードできます∗18。コンパイルを 何度も繰り返すことの多いTEXを扱う際は特に重宝しますし、あちこちにファイルをコピー・展開して回 らなければならないTEXのインストールはこのソフトに頼ればぐっと楽∗19になります。ご利用ご利用。
TeXmac 秀丸用TEX文書作成支援マクロ。WEB上の公開はなく∗20、乙部先生の本についてくるCDから
手に入れるしかありません。その本は4000円強とやや高めで、ちょっと購入しにくいのですが、なんと 駒場の図書館がCD付きで貸してくれます。ここから手に入れるのが一番でしょう。TEX初心者には結 構有り難いマクロなので、秀丸と合わせて導入するのも良いでしょう。
7
よくある質問
— TEXのコンパイルができません。 ・ コンパイル自体がはじまらない。 原因:platex.exeがあるディレクトリ(C:Y=TeXY=binなど)にパスが通っていない。 → Autoexec.batを書き換えて、パスを通し直してください。原因:TEX文書のファイルが「????.tex」という名前で保存されていない。メモ帳やWordを使うと、
「????.tex.txt」などという名前になってしまうことがある。 →ファイルに名前を付けて保存するときに、拡張子「.tex」まできちんと入力してください。このと き、ファイル名や拡張子、ピリオドに全角文字を使わないように気をつけて。 ・ コンパイルが途中で止まる。 原因:TEXの文法エラー。不用意な特殊文字の使用や、命令文のスペルミスがほとんど。 →コンパイルが止まったときに出されるエラー文を参考に、文法エラーを訂正します。 — DVIOUTがうまく動きません。
・Can’t read fontと表示が出て、終了してしまう。
原因:TXフォント導入時などによく出るエラー。以前DVIOUTが作ったフォントファイルが壊れ ていたり、作ること自体に失敗していたりすることが原因。
→ texmf下のディレクトリを全て削除し、改めてTEXのファイルを入れ直すのが簡単かつ手っ取り
早い方法です。自分の作ったスタイルファイルやマクロファイルはあらかじめ退避させておくことを 忘れないように。
・Can’t find fontと出て、DVIファイルが開けない。 原因:フォントの場所をうまく設定できていない。
→ DVIOUTの“option”–“Setup Parameter”–“font”–“Guess” でフォントの場所を自動設定しま す。設定が終わったら、“Save”で情報を保存するのを忘れないこと。
∗18NiftyServe を利用できる方は、FGALTLA の 5 番ライブラリからダウンロードした方がより新しいバージョンのものを手に入れ ることができます。
∗19圧 縮 フ ァ イ ル の 展 開 に は 、そ の 圧 縮 形 式 に 対 応 し た 展 開 用 DLL が 必 要 と な り ま す 。総 合 ア ー カ イ バ プ ロ ジ ェ ク ト (http://www.csdinc.co.jp/archiver/index.html )などから手に入れましょう。
・ フォントの場所が自動的に設定されない。 原因:根本的にフォントが入っていない。 → TEXのインストールに間違いがなかったか検討してください。 原因:前バージョンのDVIOUTのレジストリ情報が残っていることによるエラー。安易な上書きコ ピーでバージョンアップを図ろうとした代償。 → DVIOUTの“option”–“Uninstall”でレジストリ情報をいったん全消去し、改めて設定し直しま す。なお、この作業ではレジストリ情報だけが消え、ファイルは残るので再びファイルのインストー ルからはじめる必要はありません。 — PDF化に失敗してしまいます。 ・PDFWriterを使うとうまくPDF化できない。 原因:ごめんなさい。よくわかりません。仕様なんでしょうか。 → AcrobatDistillerを利用してください。 ・DVIOUTから直接AcrobatDistillerに出力すると、文字がゆがむ。 原因:PDF化時にフォントがBMP化されてしまうことが原因。 →素直にdvipskでpsファイルにして、それからAcrobatDistillerでPDFファイルに変換してく ださい。 →あるいは、欧文TrueTypeフォントをインストール∗21してください。 ・TEX文書に絵を張りつけた。DVIOUTでうまく表示されたのに、psファイルにすると絵がぐちゃぐ ちゃになってしまう。 原因:張りつけた画像の形式が、BMPやJPEG等である。
→ BMPやJPEGといった画像形式は、DVIOUTだけが特に対応∗22しているだけで、TEXの世界
一般では扱えません。DVIファイルをpsファイルにするときは、画像を全てEPS形式に変換してく
ださい。PhotoShopなどを利用すると良いでしょう。フリーソフト派は、NiftyServeのTEXフォー
ラムに「jpeg2ps」というソフトが登録されているので試してみてください。 → AcrobatDistillerが使えるならば、DVIOUTからこれに直接出力するとうまくいきます。ただし その場合、一度psファイルにしてからPDF化した場合に比べ、ファイルサイズが大分大きくなって しまうことに注意してください。 —「jsarticle」などの新標準クラスファイルは、旧来の標準クラスファイルとどう違っているのですか。 →細かい部分も含めると非常に多くの改良点があり、ここでは扱いきれませんので、大きな改良点だけ取 り上げます。 ・ 上下左右のマージン・行送りの間隔・行の長さなど、空きの量の変更。 ・ 和文フォントメトリックの変更。 ・ 扱える文字サイズ・用紙サイズの追加。 ・ 脚注の機能追加。たとえば脚注内でも「Y=verb」命令が使え、「Y=footnote[0]・・・」とすることで番号 も記号もつかない脚注が作れるようになっています。 ∗21http://ms326.ms.u-tokyo.ac.jp/otobe/tex/ttf.html (乙部先生の解説) http://akagi.ms.u-tokyo.ac.jp/tex dvioutw.html (大島先生の解説)を参考にすると良いでしょう。 ∗22DVIOUT は susie プラグインが利用できるので、BMP や JPEG に限らず様々な画像形式に対応できます。
— DVIファイルをPostScript形式やPDF形式に変換すると、英数字がギザギザになってしまいます。
→コマンドプロンプトから
dvipsk-Pbi ????.dvi ✂ ✁✄✛
と、オプションをつけて実行し、変換すれば解決します。見栄えはかなり違ってきますので、是非試して みてください。
— TXフォントとは。
→今まで、TEXの文書はほとんどComputer Modernフォントが使われてきました。しかし、Computer
Modernフォントはデザインがいまいちで好きになれない、という方∗23が世の中にはいらっしゃいま す。そういう方のために、Times系フォントをTEX用に置き換えたフォントが作られました。これが TXフォントです。最新の角籐版TEXにはすでにTXフォントが含まれているので、プリアンブルに Y=usepackage{times} Y=usepackage{txfonts} の2行を追加すればTXフォントが使えます。 — 円記号の形が気に入りません。 →世の中にTEXの解説文はたくさんありますが、たまに「『\(バックスラッシュ)』は『Y=』に読みかえ てください」と一行書いてひたすら「\」を使っているものを見かけます。これはちょっと怠慢ではないで しょうか。たとえば奥村先生のマクロファイル「okumacro」には「Y=yen」という命令があり、これを使 えば「Y=」と記述できる∗24のですから。 ところが、この「Y=」を使っていると、ご質問の通りどうもその形が気に入らなくなってきます。とりあ えず全角の「¥」を使えば少しはましになりますが、いちいち全角文字に頼らなければならないというのは TEXユーザーとして満足できることではありません。そこで、昔から様々な対策が講じられてきました。 今のところ、乙部先生が提供してくださっている「bs2yen」というスタイルを利用すると∗25「Y=ttyen」と いう命令で「Y=」が出力でき、一番スマート∗26なようです。ただ、この方法は専用のスタイルファイルをは じめいくつかのファイルが新たに必要となってしまい、不便です。妥協する心があれば、やや格好悪い方法 ですが奥村先生の「okuverb」パッケージ∗27を使って、「Y=verb/Y=/」などとすれば「Y=」という出力が得られ ます。まあ、この辺は個人の趣味の問題ですが・・・。利用には、文頭に「Y=usepackage[yen]{okuverb}」 の一行を追加してください。 — 中国語や韓国語は使えますか。 →中国語OSで中国語のTEXを利用すれば確実に使えます。韓国語も同じ。日本語OSでこれらを実現 する場合、Windowsに中国語または韓国語のフォントとIME∗28があればDVIファイルまでは作れます。 ただし、これにはやや特殊な方法が必要とされるので、保証はできません。ちなみに、ドイツ語・スペイ ∗23かくいう私も Computer Modern フォントの「@」は嫌いです。 ∗24これは「Y」と「=」を重ね合わることで作られています。 ∗25http://ms326.ms.u-tokyo.ac.jp/otobe/ からダウンロードできます。 ∗26これを利用しても、後述の「okuverb」パッケージを利用する方法と同じく、「Y=verb」環境下で「Y=」が「\」とならずに済みます。 ∗27jsarticle と一緒に公開されているので、「bs2yen」よりはメジャーです。 ∗28高電社の ChineseWriter や KoreanWriter など。
ン語・インド系言語はきっちり扱えるようです。 — おすすめの参考書があれば教えてください。 →参考文献の項にも挙げましたが、「奥村晴彦著 改訂版LATEX 2ε美文書作成入門」が最も優れていると 思います。ただし、付属CDからTEXをインストールしようとすると好みのディレクトリにインストー ルできず、またアンインストールもやりにくくなってしまうので、このCDの利用はおすすめしません。 もったいないですが。 — 情報棟でもTEXを使いたいのですが。 →情報棟でTEXを利用する場合、UNIX上で使うことになります。詳しい使い方は省かせていただきま すが、基本な操作はWindowsのコマンドプロンプト上でTEXを扱うのと同じです。ただ、DVIファイ ルを閲覧する際は xdvi????.dvi ✂ ✁✄✛ とし、psファイルやPDFファイルを閲覧する際は gv????.ps ✂ ✁✄✛ という風にしてください。また、psファイルを印刷するには lpr–Ppr???(プリンタ名。pr001など。)????.ps ✂ ✁✄✛ とすれば指定したプリンタに印刷されてきます。ちなみに情報処理の講義の様子から察するに、東京大学 の情報棟内ではpLATEXよりjLATEXの方が主流のようです。まあ、どちらも文法はほとんど同じなので、 あまり気にする必要はないでしょう。 — Macintoshについても一言くらい触れてください。 →内山先生のMacpTEXのページ∗29 から全ての情報・ソフトが得られます。また、「改訂版LATEX 2ε美 文書作成入門」にはMacintosh用TEXが収録されているので、MacintoshでTEXを使うなら検討して みてください。
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参考文献
• 奥村晴彦著 改訂版LATEX 2ε美文書作成入門
• 乙部厳己・江口庄英共著 pLATEX 2ε for Windows Another Manual Vol.1 Basic Kit 1999
• 奥村晴彦作成HP 日本語TEXについての情報 http://www.matsusaka-u.ac.jp/~okumura/texfaq/
• NiftyServe TEXフォーラム • 木下是雄著 理科系の作文技術 (ホームページはいつ消えてしまうか分からない性質を持っているため、本来「参考文献∗30」として扱ってはいけません∗31。ただ、この ∗29http://uat.thx.inst.keio.ac.jp/~uchiyama/macptex.html ∗30参考文献とは、「この事柄についてもっと詳しく知りたい人は、この本を読んでください」という意味で載せるものであって、「私は この本を参考にしました」という意味ではありません。世の中これを取り違えている人が多くて困ります。まあ、どちらにも当て はまる文献が多いからなのでしょうけどね(たとえば、今回の「LATEX 2ε 美文書作成入門」がそれ)。 ∗31理由は前の注から明らか。レポートなどで参考文献を挙げるときには注意しましょう。