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日衛誌 (Jpn. J. Hyg.),73, (2018) 日本衛生学会 原 著 紙巻きタバコから加熱式タバコへの移行に伴う健康影響 : ニコチン依存, ニコチン禁断症状と喫煙行動の変化について 川村晃右, 山田和子, 森岡郁晴 和歌山県立医科大学大学院保健看護学研究科 Health E

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Academic year: 2021

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Ⅰ.緒   言

2004 年に中国において,ニコチンを含む electronic nicotine delivery systems という電子タバコが紙巻きタバ

コの代用として販売された (1)。電子タバコは,紙巻き タバコに比べ有害物質が約100 分の 1 になることから, 喫煙者への安全な選択肢の提供,恒久的な代替手段の提 供などの視点で有用である (2, 3)。さらに,ニコチンを 含有する電子タバコは,紙巻きタバコから替えても体内 のコチニン濃度が維持されるため,紙巻きタバコの代替 として有用である (4, 5)。米国では電子タバコが 2011 年から2015 年で 900% の増加率を示し (6),多くは禁 煙を動機に使用していた (7)。日本では,医薬品医療機 器等法の規制を受け,ニコチンを含まないとする電子タ

紙巻きタバコから加熱式タバコへの移行に伴う健康影響:

ニコチン依存,ニコチン禁断症状と喫煙行動の変化について

川村 晃右,山田 和子,森岡 郁晴

和歌山県立医科大学大学院保健看護学研究科

Health Effects Accompanying the Transition from Cigarettes to Heat-not-burn

Tobacco: Nicotine Dependence, Nicotine Withdrawal Symptoms,

and Changes in Smoking Behaviors

Kosuke KAWAMURA, Kazuko YAMADA and Ikuharu MORIOKA

Graduate School of Health and Nursing Science, Wakayama Medical University

Abstract

Objectives: The purposes of this research were to investigate the hazardous effects of heat-not-burn tobacco and to clarify the health effects accompanying the transition from cigarettes to heat-not-burn tobacco.

Methods: The concentrations of carbon monoxide, ammonia, formaldehyde, acetaldehyde, and dust (hazardous substances) were measured in the smoke of heat-not-burn tobacco. Twenty-nine smokers were used as the subjects. The concentrations of hazardous substances were measured in exhalation of heat-not-burn tobacco. The concentration of cotinine in saliva was also measured after the transition. A questionnaire survey was performed before and after the transition to evaluate nicotine dependence, nicotine withdrawal symptoms, and smoking behaviors.

Results: In the mainstream smoke, all hazardous substances investigated were detected. Carbon monox-ide and dust were detected in the exhalation of heat-not-burn tobacco. The concentration of cotinine in the saliva of heat-not-burn tobacco users corresponded to that of cigarette smokers. Cigarette smoking was sig-nificantly positively related to the score of Fagerström Test for Nicotine Dependence (FTND). Heat-not-burn tobacco was significantly positively related to FTND and Minnesota Nicotine Withdrawal Scale (MNWS) scores. The group in which the number of heat-not-burn tobacco sticks consumed increased after transition showed a smaller number of cigarettes consumed and a higher MNWS score before transition than the group in which it decreased after transition. These two factors were significantly related to the difference between the numbers of cigarettes and heat-not-burn tobacco sticks in multiple linear regression analysis.

Conclusions: The mainstream smoke of heat-not-burn tobacco contains harmful substances. There were the possibilities that nicotine dependence and nicotine withdrawal symptoms appear after transition and that the number of heat-not-burn tobacco sticks consumed increases.

Key words: heat-not-burn tobacco(加熱式タバコ),health effects(健康影響),nicotine dependence(ニコ チン依存),nicotine withdrawal symptoms(ニコチン禁断症状),smoking behaviors(喫煙行動)

受付2017 年 12 月 20 日,受理 2018 年 6 月 8 日 Reprint requests to: Kosuke KAWAMURA

Graduate School of Health and Nursing Science, Wakayama Medical University, 580 Mikazura, Wakayama 641-0011, Japan

FAX: +81(774)51-6211

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バコが流通した (8)。 一方,2013 年にタバコ葉を使用し,ニコチンを含有 す る 加 熱 式 タ バ コ の「Ploom」 が,2014 年 に「iQOS」 が 販 売 さ れ た。2015 年には既に,15 ~ 69 歳の 48.0% が電子タバコと加熱式タバコを認知し,6.6% はいずれ かの使用経験があった (9)。また,約 7 割の者が自身へ の害が少なく,周囲への害がない安全な製品であると, 約4 割の者が禁煙に役立つと認識しているため (10), 今後,紙巻きタバコから加熱式タバコ等へ移行する者が 増加することが予測できる。 電子タバコに関する調査では,ニコチンを含有しない とする電子タバコにおいても,ニコチンの含有,ホルム アルデヒドやアセトアルデヒドなどの発がん性物質の発 散が確認され (11),使用 1 週間後に咽頭部の被刺激感 や咳や痰を自覚したとする報告がある (12)。加熱式タ バコに関する調査では,「Ploom」は最大で約 75°C の温 度を示す部分があり,水蒸気中にアルデヒド類が検出さ れたことが報告され (13),「iQOS」は多環芳香族炭化水 素類などを含有し (14),紙巻きタバコと同等量のニコ チンやタールが発散されていることが報告されている (15)。しかし,有害性に関する調査は少なく,紙巻きタ バコから加熱式タバコへの移行に伴う健康への影響につ いて明らかにした報告はみられない。 そこで本研究は,加熱式タバコの有害物の発散状況を 確認するとともに,紙巻きタバコから加熱式タバコへの 移行に伴う健康影響について検討し,今後の喫煙対策に 向けた資料を得ることを目的とする。 Ⅱ.研 究 方 法 1.研究Ⅰ:加熱式タバコの有害物の発散状況 1)対象器具 「Ploom」使用者は 7.8% で,「iQOS」使用者は 8.4% で あったことから (9),使用者の多かった「iQOS 2.4(Philip Morris International)」(以下,加熱式タバコ)と「Marlboro ヒートスティックレギュラー(Philip Morris International)」 (以下,ヒートスティック)を用いた。 2)調査手順 2016 年 8 月に調査を実施した。勝又らの調査 (13, 16) を参考に,2 L ペットボトルを切断し,切断部に 2 L 以 上の空気が入るポリエチレン製の袋(以下,容器)を空 気漏れがないように接続した(図1)。容器にシリンジ を用いて2 L 分の空気を注入し,使用可能となった状態 の加熱式タバコを留置した。加熱式タバコにはシリコン チューブと100 ml シリンジをつなげた。有害物の濃度 は,勝又らの調査(13)を参考に検知管法により測定す ることにした。そのため,5 秒に 1 回の頻度で,測定に 必要な100 ml を吸引し,ヒートスティック 1 本あたり, 1 回の本体の充電で使用可能な 14 回の吸引をおこなっ た(主流煙)。14 回の主流煙吸引後に,容器上部にシリ コンチューブを接続し,容器内部の空気100 ml を捕集 した(副流煙)。 喫煙時に発散される有害物である一酸化炭素,アンモ ニア,粉じんとともに,「Ploom」で発散が確認されて いるホルムアルデヒドとアセトアルデヒド (13) を測定 した。一酸化炭素(主流煙は106UH,光明理化学工業, 副流煙は106SC,光明理化学工業),アンモニア(105SD, 光明理化学工業),ホルムアルデヒド(171SC,光明理 化学工業),アセトアルデヒド(133SB,光明理化学工 業)の濃度の測定には検知管を用い,粉じん濃度の測定 にはデジタル粉じん計(LD-3B 型,柴田化学:1 cpm= 0.0008 mg/m3)を用いた。本研究ではヒートスティック を3 本用いて測定した。 また,調査中の加熱式タバコの温度を,2次元放射温度 計(ii-1064A,HORIBA),放射温度計(IT-340,HORIBA) を用いて測定した。 2.研究Ⅱ:紙巻きタバコから加熱式タバコへの移行に 伴う健康影響 1)対象者 本研究では,機縁法により対象者を募集した。医療(4 施設),教育(3 施設),製造関係(1 施設)に勤務する 協力者に対して,研究の趣旨や方法などを口頭で説明し, 承諾を得た後に,紙巻きタバコの喫煙習慣があり,加熱 式タバコを使用していない者に自主的な参加を呼びかけ てもらった。喫煙者は男性が女性の約3.8 倍であること から (17),参加者は 20 歳以上の男性としたが,心疾患 や呼吸器疾患の既往歴がある者,アレルギー体質や慢性 皮膚炎を有する者など医師が本調査の対象者として不適 当と判断した者を除外するとともに,60 歳前後から呼 吸機能の低下が認められるため (18),60 歳以上の者も 除外した。その結果,研究の趣旨や方法などに賛同する 者29 名を対象者とした。 対象者29 名のうち,呼気・呼出煙中の有害物の調査 (ID:1-11),呼気一酸化炭素濃度と唾液中コチニン濃度 の調査(ID:8-18)にはいずれも 11 名が参加し,ニコチ 図1 主流煙・副流煙の捕集容器

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ン依存,ニコチン禁断症状,健康影響に関する質問紙調 査(ID:5-29)には 25 名が参加した。それぞれの調査には, 重複して参加した対象者がいた。 2)調査方法 2017 年 2 月から 2017 年 3 月に調査を実施した。 (1)呼気・呼出煙中の有害物の調査 対象者11 名で,加熱式タバコの使用前の呼気と 7 回・ 14 回吸引時の呼出煙をそれぞれポリエチレン製の袋(ポ リ規格袋,JAN コード:4535164056779)で捕集した。 本研究ではヒートスティックを3 本用いて測定した。 袋内の空気100 ml を捕集し,有害物の濃度は研究Ⅰ における有害物の発散状況と同様に測定した。 (2)呼気一酸化炭素濃度と唾液中コチニン濃度の調査 対象者11 名で,呼気一酸化炭素濃度と唾液中コチニ ン濃度を測定した。これらは,喫煙状況を確認する指標 として用いられ,消失半減期は,一酸化炭素ヘモグロビ ンが3 ~ 4 時間程度で (19),コチニンが約 20 時間であ る (20)。対象者には翌日から紙巻きタバコを加熱式タ バコに移行してもらった。紙巻きタバコの影響を除くた め,加熱式タバコに移行後3 日目以降の 5 日間を測定期 間とし,食事の影響を除くため食後30 分以降の時間帯 に測定した。使用時刻や使用本数についての指示はおこ なわず,各人の判断で使用しても良いことを伝え,測定 24 時間前からの加熱式タバコの使用本数(以下,使用 本数)を尋ねた。 呼気一酸化炭素濃度はマイクロスモーカーライザー (原田産業)の測定値を報告してもらい,唾液中コチニ ン濃度はNicAlert Saliva Test(Nymox)の試験紙を撮影 してもらい,調査者が判定した。 (3)健康影響に関する質問紙調査 対象者25 名に,加熱式タバコを渡す際に自記式質問 紙に回答してもらった(以下,開始時)。 紙巻きタバコでは,禁煙2 週間後にニコチン禁断症状 の出現を確認していること (21),ニコチン依存状況に ついても変化を確認していることから (22),加熱式タ バコ移行2 週間後に,再度同様の調査を実施した(以下, 終了時)。 質問紙の内容は,ニコチン依存,ニコチン禁断症状, 自覚症状とした。

ニコチン依存には,Tobacco Dependence Screener(以下, TDS)(23),Fagerström Test for Nicotine Dependence(以下, FTND)(24) を用いた。TDS は,精神的なニコチン依存 (以下,精神的依存)の状態を調査する尺度で,10 項目 で構成されている。「はい」(1 点),「いいえ」(0 点)の 2 件法で回答し,その合計点数が高いほど依存度が高い と評価される。FTND は,生理的なニコチン依存(以下, 生理的依存)の状態を調査する尺度で,6 項目で構成さ れている。回答毎に配点されており,その合計点数が高 いほど依存度が高いと評価される。 ニコチン禁断症状には,ミネソタ式ニコチン禁断症状 調査票日本語版(以下,MNWS)(25) を用いた。MNWS は,9 項目で構成されている。「ぜんぜんあてはまらな い」(0 点)から「非常にあてはまる」(4 点)の 5 件法 で回答し,その合計点数が高いほど症状が強いと評価さ れる。 自覚症状は,電子タバコ使用時に呼吸器症状が出現し た と い う 報 告 (12) か ら, 呼 吸 器 症 状 質 問 紙 で あ る British Medical Research Council questionnaire(BMRC) の自己記入方式 (26) の項目,調査Ⅰにおいて許容濃度 を超える発散が確認された有害物(一酸化炭素,ホルム アルデヒド)による自覚症状から,咳,痰,息切れ,頭 痛,疲労,口腔内の潰瘍を選定し,「ある」または「ない」 の回答で尋ねた。 その他に,年齢,喫煙年数,一日当たりの紙巻きタバ コの平均的な喫煙本数(以下,喫煙本数)について尋ね た。終了時の質問紙には,使用本数,熱傷などの有害事 象,紙巻きタバコから加熱式タバコへの移行に伴う印象 (自由記述)について尋ねた。 3)分析方法 量的変数の中央値の比較にはMann-Whitney の U 検定, Wilcoxon の符号付順位検定,あるいは Kruskal-Wallis 検 定をおこなった。多重比較検定には,Bonferroni 補正を 用いた。 変数間の相関の検討には,Spearman の順位相関係数 (rs)を求めた。 喫煙本数と使用本数の差に影響する要因の確認には, そ の 差 を 従 属 変 数 と し, 喫 煙 本 数, 開 始 時 のTDS・ FTND・MNWS を独立変数とした重回帰分析(強制投入 法)を用いた。 統計解析にはIBM SPSS Statistics 24 を用い,統計学的 有意水準は5% とした。 4)倫理的配慮 対象者には,調査の初回に研究の趣旨や方法,本調査 への参加は自発的意思でおこなわれ,同意しない場合で も不利益を受けないこと,調査の途中でも辞退できるこ と,結果は学術集会での発表や論文投稿により公表する ことなどを文書と口頭で説明した。同意が得られた場合, 同意書に署名を求めた。 本研究は,和歌山県立医科大学倫理審査委員会(受付 番号1917)の承認後に開始した。 Ⅳ.結   果 1.研究Ⅰ:加熱式タバコの有害物の発散状況 本研究では,ヒートスティック3 本で測定した加熱式 タバコの有害物の発散状況は同様に減衰した。しかし, 加熱式タバコを使用する際は14 回の吸引をおこなうこ とが多いため,1 本 14 回の測定値をそのまま用いるこ ととした。主流煙の場合,3 本分(全 42 回)の算術平 均値でみると,一酸化炭素は2,262 ppm,アンモニアは 2.30 ppm,ホルムアルデヒドは 2.52 ppm,アセトアルデ ヒドは43.1 ppm,粉じんは 3.28 mg/m3が検出された(表

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1)。この検出された濃度と分子量からヒートスティック 1 本あたりの量を算出すると(粉じんを除く),一酸化 炭素3.96 mg,アンモニア 2.44 μg,ホルムアルデヒド 4.73 μg,アセトアルデヒド 118 μg であった。 副流煙の場合(全3 回),一酸化炭素,アセトアルデ ヒド,アンモニアは検出されなかった。ホルムアルデヒ ドと,粉じんが検出された(表1)。 調査時,加熱式タバコの加熱ブレードが内蔵された部 分から口にくわえる部分までの温度上昇がみられ,最高 部は62.1°C(測定時室温 27°C)を示した。 2.研究Ⅱ:紙巻きタバコから加熱式タバコへの移行に 伴う健康影響 1)呼気・呼出煙中の有害物の調査 対象者11 人の年齢は 32.9±10.6(平均±標準偏差)歳, 加熱式タバコ移行前の喫煙年数は11.3±10.0 年,一日当 たりの喫煙本数は11.6±4.3 本 / 日であった。 加熱式タバコ使用前の呼気の場合,各回,各人の測定 値の平均に有意差を認めなかったため,一人当たり3 本 分(全33 回)の算術平均値でみると,一酸化炭素は 4.86 ppm,粉じんは 0.0027 mg/m3が検出された。加熱式 タバコ使用中の呼出煙の場合,7 回目,14 回目の各回の 測定値の平均にも,各人の測定値の平均にも有意な差を 認めなかったため,3 本分(全 66 回)の算術平均でみ ると,一酸化炭素は5.59 ppm,粉じんは 1.079 mg/m3 検出された(表2)。アンモニア,ホルムアルデヒド,ア セトアルデヒドは呼気や呼出煙中に検出されなかった。 なお,測定時の室温の平均は22°C であった。 2)呼気一酸化炭素濃度と唾液中コチニン濃度の調査 対象者11 人の年齢は 36.4±12.8 歳,加熱式タバコ移 行前の喫煙年数は14.8±12.0 年,喫煙本数は 21.5±12.6 本/ 日であった。 5 日間の使用本数は 3–35 本であった。呼気一酸化炭 素濃度は1–14 ppm で,55 回中 6 回(10.9%)で喫煙者 に該当した(表3)。唾液中コチニン濃度はレベル 2–6 で, 55 回中すべてで喫煙者に該当した(表 4)。1 日目の呼 気一酸化炭素濃度(rs=0.181,p=0.595),唾液中コチ ニン濃度(rs=0.027,p=0.938)は喫煙本数との間に有 意な相関はみられなかった。 3)健康影響に関する質問紙調査 対象者25 名の年齢は 36.4±10.4 歳,加熱式タバコ移 行前の喫煙年数は14.4±9.5 年,喫煙本数は 16.4±10.9 本/ 日であった。 (1)開始時と終了時の喫煙本数・使用本数,TDS, FTND,MNWS 終了時の使用本数の中央値は15 本で,開始時の喫煙 本数の中央値は13 本であったが,有意な差はみられな かった(表5)。終了時の TDS は,開始時と比較して有 意に低かった。終了時のFTND・MNWS は,開始時と 有意な差はみられなかった。 喫煙本数は,開始時のFTND とは有意な正の相関が 表1 主流煙・副流煙中の有害物の含有状況 主流煙(n=42) 副流煙(n=3) 平均 標準偏差 許容濃度を 上回った回数* 平均 標準偏差 許容濃度を 上回った回数* 一酸化炭素(ppm) 2,262 1,061 42 0 0 0 アンモニア(ppm) 2.30 2.13 0 0 0 0 ホルムアルデヒド(ppm) 2.52 0.63 42 0.27 0.25 2 アセトアルデヒド(ppm) 43.1 41.8 10 0 0 0 粉じん(mg/m3 3.28 1.70 29 0.007 0.002 0 * 許容濃度(日本産業衛生学会,2017) 表2 呼気・呼出煙中の物質濃度 呼気(n=33) 呼出煙(n=66) 平均 標準偏差 平均 標準偏差 一酸化炭素(ppm) 4.86 3.69 5.59 4.00 アンモニア(ppm) 0 0 0 0 ホルムアルデヒド(ppm) 0 0 0 0 アセトアルデヒド(ppm) 0 0 0 0 粉じん(mg/m3 0.0027 0.0009 1.079 1.1733 呼気一酸化炭素濃度 濃度(ppm) 該当 出現回数 0–3 非喫煙者 34 4–7 非喫煙者 15 8–11 喫煙者 4 12–15 喫煙者 2 計 55 表4 唾液中コチニン濃度 レベル(ng/ml) 該当 出現回数 0(0–10) 非喫煙者 0 1(10–30) 喫煙者 0 2(30–100) 喫煙者 4 3(100–200) 喫煙者 1 4(200–500) 喫煙者 5 5(500–1,000) 喫煙者 19 6(>1,000) 喫煙者 26 計 55

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みられ,TDS,MNWS とは相関はみられなかった(表 6)。 使用本数は,終了時のFTND,MNWS とは有意な正の 相関がみられ,TDS とは有意な相関ではなかった。 (2)喫煙本数と使用本数の差と開始時 TDS・FTND・ MNWS の比較 加熱式タバコに移行前の喫煙本数の平均は16.4 本 / 日 であり,加熱式タバコに移行後の2 週間の使用本数の平 均は17.5 本 / 日であった。平均は 1.1 本 / 日の増加であっ たが,個別にみると20 本 / 日の減少から 22 本 / 日の増 加まで,個人差が大きかった。そこで,対象者を1 本で も減少した9 名(減少群),変わらなかった 6 名(不変群), 1 本でも増加した 10 名(増加群)に分類した。3 群間で 喫煙本数と使用本数,開始時のTDS・FTND・MNWS を比較した場合,増加群では減少群より,喫煙本数が有 意に少なく,MNWS が有意に高かった(表 7)。 重回帰分析により喫煙本数と使用本数の差に関連する 要因として,喫煙本数が負の,MNWS が正の影響を示す 変数であった(表8)。なお,独立変数間で rs>0.7 となる

ような強相関はなく,Variance Inflation Factor も 10 を超 えるような値はなく,多重共線性の問題はなかった。標 準化残差の正規確率はほぼ直線上に右上がりに並んでい たことから,残差は正規分布に従っていると判断できた。 (3)加熱式タバコへの移行による自覚症状の変化と印象 自覚症状をみると,減少群9 名では,開始時にみられ た咳,痰,息切れ,頭痛,疲労,口腔内の潰瘍のいずれ かの自覚症状が消失した者が6 名(67%),出現した者 はいなかった。不変群6 名では,自覚症状が消失した者 が2 名(33%),出現したものはいなかった。増加群 10 名では,自覚症状が消失した者が1 名(10%),出現し た者が2 名(20%)みられた。自覚症状が出現した 2 名 は,開始時のTDS が 4 点,FTND が 0 点の者と TDS が 3 点,FTND が 4 点の者であった。 加熱式タバコへの移行に伴う印象をみると,減少群は, 「脱力感や疲労感が少なくなった」「咳や痰が出なくなっ た」「体調が良くなった」「起床時の口腔内の不快感がなく なった」「顔色が良くなった」「当初咽るような感じがし たため,タバコをやめようかとも思った」という記述が あった。不変群では,「紙巻きタバコの臭いをくさいと感 じるようになった」「チェーンスモークができなくなった」 という記述があった。増加群では,「紙巻きタバコに慣れ ているため,吸った感覚が足りない」「1 回の使用では満 足しない」「衣服等へのタバコの臭いが気にならなくなっ た」「周りに気を使わなくなった」という記述があった。 なお,使用に伴う熱傷を経験した者はいなかった。 表5 開始時と終了時の喫煙本数・使用本数,TDS,FTND, MNWS の比較 開始時 終了時 p 中央値 四分位 範囲 中央値 四分位 範囲 喫煙本数・使用本数 13 10–20 15 10–20 TDS 7 6–7 5 3–7 * FTND 4 2–5 4 3–5 MNWS 8 4–14 6 4–15 n=55,*p<0.05(Wilcoxon の符号付順位検定) 表6 開始時と終了時の喫煙本数・使用本数と TDS,FTND, MNWS との関連 開始時(喫煙本数) 終了時(使用本数) rs p rs p TDS -0.137 0.52 0.240 0.25 FTND 0.636 <0.01 0.6810.01 MNWS -0.025 0.91 0.410 0.04 n=55,rs:Spearman の順位相関係数 表7 喫煙本数と使用本数の差と開始時の TDS・FTND・MNWS の比較 減少群(n=9) 不変群(n=6) 増加群(n=10) p 中央値 四分位範囲 中央値 四分位範囲 中央値 四分位範囲 喫煙本数 15 12–25 14 10.8–18.8 10 8.5–14.5 * 使用本数 13 7–18 14 10.8–18.8 19 15–26 開始時TDS 6 6–7 6.5 6–7 7 5.3–8 開始時FTND 3 3–5 5 4–6 3.5 1–4 開始時MNWS 5 4–6 8 4.8–12.8 16 8.8–20.3 * ♯ *p<0.05(Kruskal-Wallis 検定),♯ p<0.05(Mann-Whitney の U 検定,Bonferroni 補正)

表8 喫煙本数と使用本数の差に関連する要因 B 標準誤差 β t 値 p VIF (定数) 15.895 7.231 2.198 .040 喫煙本数 -.415 .181 -.461 -2.292 .033 1.870 開始時TDS -1.908 .988 -.287 -1.932 .068 1.023 開始時FTND -.676 1.025 -.147 -.660 .517 2.283 開始時MNWS .670 .255 .476 2.627 .016 1.516 重回帰分析(強制投入法) ANOVA p<0.01,R20.568,自由度調整済み R20.481

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Ⅴ.考   察

1.加熱式タバコの有害性

研究Ⅰでは,主流煙,副流煙に含まれる有害物の測定 には検知管法を用いた。その結果から得られたヒートス ティック1 本あたりの量を Philip Morris International(27) がHealth Canada Intense smoking method(以下,HCI 法) で 測 定 し た 結 果( 一 酸 化 炭 素0.531 mg,アンモニア 14.2 μg,ホルムアルデヒド 5.53 μg,アセトアルデヒド 219 μg)と比較すると,今回の測定結果は,一酸化炭素 は多く,アンモニアは少なく,ホルムアルデヒド,アセ トアルデヒドはほぼ同様であった。一酸化炭素の目盛り が1,000 ~ 2,000 ppm 間隔,アンモニアの目盛りが 1 ~ 2 ppm 間隔で精度が不十分であったことを考慮すると, 今回検知管を用いて測定した濃度はHCI 法と大差がな かったと考えられた。 主流煙,副流煙の有害物の濃度に対する基準値はない ため,許容濃度 (28) と比較することにした(表 1)。許 容濃度は,労働者が1 日 8 時間,週 40 時間程度,肉体 的に激しくない労働強度で有害物に曝露される場合を想 定し,健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度 である。そのため,間欠的な吸引をおこなう加熱式タバ コの濃度と直接的に比較できないが,主流煙の場合(全 42 回),一酸化炭素(許容濃度:50 ppm),ホルムアル デヒド(0.1 ppm)は 42 回すべて,アセトアルデヒド (50 ppm)は 10 回,粉じん(吸引性粉じん:2 mg/m3 は29 回,許容濃度を超えていた。ホルムアルデヒドは, 副流煙(全3 回)においても 2 回で許容濃度を超えてい た。この結果については,勝又らの研究結果 (13) と符 合し,有害物が少ないといわれる加熱式タバコであって も,有害物を発散していることが示された。 紙巻きタバコ喫煙時の呼出煙中の有害物を測定した先 行研究はみられないが,研究Ⅱの呼出煙の有害物の状況 をみると,一酸化炭素,粉じんは主流煙中より濃度が低 いこと,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アンモ ニアが検出されなかったことから,吸引または経口から 体内に取り込まれていることが推察された。一酸化炭素 は,ヘモグロビンの酸素運搬機能を低下させ組織内酸素 欠乏状態を誘起する危険性がある (29)。ホルムアルデ ヒドはInternational Agency for Research on Cancer(以下, IARC)Group1(ヒトに対する発がん性が認められる)に, アセトアルデヒドはIARC Group2B(ヒトに対する発が ん性が疑われる)に分類されており,悪性新生物への罹 患の危険性が考えられる。 紙巻きタバコの場合,主流煙中の一酸化炭素濃度は約 30,000 ~ 40,000 ppm であり (30),呼気一酸化炭素濃度 は平均20.8 ppm である (31)。加熱式タバコの場合,喫 煙者と考えられる8 ppm 以上の者が 10.9% であったこ とは,主流煙中の一酸化炭素濃度が約10 分の 1 である ことが影響していると考えられた。なお,一般的に喫煙 本数が多いほど,呼気一酸化炭素濃度が高くなるが,1 日目の喫煙本数との相関がみられなかったことから,5 日間の測定値は加熱式タバコによる影響を示していると 考えられた。 唾液中コチニン濃度は,すべて喫煙者に相当する濃度 であったことは,加熱式タバコのニコチン含有量は紙巻 きタバコと同様であったとする報告 (15, 32) と符合して いた。1 日目の測定値と喫煙本数との相関がみられな かったことは,打ち切りデータによる可能性も考えられ るが,測定値は加熱式タバコによる影響を示していると 推察された。 2.加熱式タバコによるニコチン依存,ニコチン禁断症 状への影響 終了時にTDS が有意に低下したが,FTND,MNWS に変化はみられなかった。TDS の低下は,電子タバコ への移行によりタバコへの渇望が低下したという報告 (33, 34) と符合する。しかし,研究Ⅱにおいて,唾液中 コチニン濃度は,喫煙者に相当する濃度であったこと, FTND,MNWS の変化がみられなかったことから,加熱 式タバコに替えても生理的依存,ニコチン禁断症状が変 わらないことが推察された。 喫煙本数は,開始時のFTND のみに正の相関がみら れた。これは,FTND が喫煙本数などの客観的な指標と 相関するといわれていること (35) と符合する。TDS は ニコチンに対する耐性や喫煙渇望などを測定しているた め (36),喫煙本数との関係が不明瞭となったと考えら れた。 使用本数は,終了時のFTND,MNWS において正の 相関がみられた。このことは,唾液中コチニン濃度が紙 巻きタバコ喫煙者と同様であったことを考え合わせる と,加熱式タバコに移行すると,使用本数に応じてニコ チン依存に加え,ニコチン禁断症状が出現する可能性が 高いことが示唆された。 3.禁煙補助の可能性と使用本数増加の危険性 加 熱 式 タ バ コ へ の 移 行 に よ り, 喫 煙 本 数 が 多 く, MNWS が低かった 9 名で使用本数が減少した(減少群)。 ニコチン禁断症状を軽減し,ニコチン依存を減らしてい くことは,禁煙に向けて大切な要素であり (37),喫煙 本数が多く,ニコチン禁断症状が低い者には,ニコチン パッチと同様に禁煙補助としての活用できる可能性 (38) が示唆された。 一方,使用本数が増加した10 名(増加群)は,喫煙 本数が少なかったが,MNWS が高かった。これは,喫 煙習慣のあった紙巻きタバコのニコチン含有量が関係し ていることが推察される。ニコチン禁断症状のため,加 熱式タバコ等に移行しても72% の者が紙巻きタバコも 併用していたこと (39) に符合している可能性があり, 本研究のように「1 回の喫煙では満足できない」という 印象につながる恐れがある。 さらに,本研究では主流煙では不快感につながる刺激

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臭をもつアンモニア (40, 41) が検出されたが,紙巻きタ バコと比較して約4 割軽減しているため (27),許容濃 度よりも低値であった。また,副流煙からアンモニアは 検出されなかったことや,電子タバコによる受動喫煙は ないという認識をもつ者が多いこと (10) が合わさり, 周囲の人々への配慮が低下することが使用本数の増加に つながる可能性がある。 海外においては,電子タバコの使用率と禁煙の成功率 は正の相関を示し (42),電子タバコ使用者の方が,非 使用者より禁煙施行率や成功率が高かった (43)。本研 究結果と考え合わせると,加熱式タバコに移行すること で禁煙につながる可能性はあるが,ニコチン禁断症状が 強い者やこれまでは臭気などの理由で喫煙していなかっ た場所での使用が習慣化した者は,禁煙機会を逃す恐れ があると考えられた。 減少群では約7 割の者で自覚症状が消失したが,増加 群では自覚症状が出現した者が約2 割みられた。使用本 数が少なくなっても,のどへの刺激症状を訴えた者もい ることから,三浦らの報告 (12) と同様に,主流煙に含 有される有害物が少なくても健康影響があることは留意 しておく必要がある。 紙巻きタバコの習慣的な喫煙者が年々減少傾向にある 一方で (44),加熱式タバコの使用者が増加していく可 能性がある。電子タバコや加熱式タバコは,紙巻きタバ コと比較し発がん性が低いとされる (45)。しかし,本 研究により,特にニコチン禁断症状が強い者は,加熱式 タバコによる一酸化炭素,ホルムアルデヒド,アセトア ルデヒド,粉じんによる健康影響に留意が必要であるこ とが示された。 Ⅵ.本研究の限界 本研究では,男性のみを対象とした。そのため,女性 でも同様の結果が得られるとは限らない。また,副流煙, 呼気・呼出煙中の有害物の捕集にポリエチレン製の袋を 用いたため,有害物が袋に吸着され,測定値に影響した 可能性がある。 電子タバコの使用による血液学的・血液生化学的検査 値は僅かな変化で,生理的な変動範囲内であったという 報告から (12),本研究では血液検査をおこなわなかっ た。 開始前の習慣的に喫煙していた時に,紙巻きタバコに 含有されるニコチン量と唾液中コチニン濃度を確認して いなかったことが今後の課題である。さらに,測定用具 の感度から加熱式タバコによるニコチン摂取の効率を把 握できなかった。 本研究は,ニコチン禁断症状が顕著にみられる2 週間 に焦点を当てている。ニコチン依存も長期的に推移する 可能性があり,健康影響に関しては追跡調査など今後の さらなる調査が必要である。 Ⅶ.結   語 加熱式タバコの有害物の発散状況,紙巻きタバコから の移行に伴うニコチン依存,ニコチン禁断症状,喫煙行 動について検討した結果,以下のことが明らかになった。 加熱式タバコの使用では,主流煙に一酸化炭素,アン モニア,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,粉じん が,副流煙にホルムアルデヒド,粉じんが発散されてい た。これらの有害物は呼出煙中にほとんど検出されな かった。 喫 煙 本 数 は,FTND とは有意な正の相関がみられ, TDS,MNWS とは相関はみられなかった。しかし,使 用本数は,FTND,MNWS と有意な正の相関がみられた。 喫煙本数と使用本数でみると,増加群で喫煙本数が減 少群より有意に少なく,開始時のMNWS が有意に高かっ た。また,喫煙本数と使用本数の差に関連する要因とし て,喫煙本数が負の,MNWS が正の影響を示す変数で あった。 これらのことから,紙巻きタバコから加熱式タバコに 移行しても,主流煙には有害物が含有されており,ニコ チン依存やニコチン禁断症状の出現,さらに,使用本数 が増加する可能性が示された。 謝   辞 本研究にご理解,ご協力くださった皆さまに深く感謝 いたします。 本研究を実施するにあたり,ご支援くださった皆さま に深く感謝いたします。 なお,本研究の一部は,平成28 年度和歌山県立医科 大学保健看護学部共同研究助成事業を受け実施した。 本研究に関連し,利益相反はない。 文   献

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表 8 喫煙本数と使用本数の差に関連する要因 B 標準誤差 β t 値 p VIF (定数) 15.895 7.231 2.198 .040 喫煙本数 - .415 .181 - .461 - 2.292 .033 1.870 開始時 TDS - 1.908 .988 - .287 - 1.932 .068 1.023 開始時 FTND - .676 1.025 - .147 - .660 .517 2.283 開始時 MNWS .670 .255 .476 2.627 .016 1.516 重回帰分析(強

参照

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