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2. クラブの便益帰着構成表の作成

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Academic year: 2022

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全文

(1)

便益帰着構成表を用いたプロサッカーチームによる地域活性化の社会経済評価

岐阜大学 ○大石希 髙木朗義 北浦康嗣 浅岡朝泰

1. はじめに

試合開催

施設知名度の向上

施設利用者 の増加 ネーミング

ライツ

施設の 改修・維持管理の

負担軽減

公共交通の 需要増加

県・市町村の 赤字補てんの減少

移籍市場 活発化 放映権・マスコミの

取材増加

道路・公共交通 利用者増加

インフラ整備 利便性の

向上 話題の創出 コミュニティ の拡大

店舗の増加

雇用の創出 小売業の増収

住民生活の向上 地域経済の活発化

税収増加 支出の減少

公共サービスの向上 スポーツへの支援拡大 クラブの増収

ファンクラブ会員 グッズの売り上げ

の増加 クラブ・選手・スポーツ

への関心増大

ボランティア参加

試合観戦者 の増加

スタジアム 周辺商店街 などの消費 活動の活発化

卸売業の増収

建設業 の増収

支出の減少 スポンサー

の増加

1993

J

リーグの発足以降,サッカーは試合観戦 やニュースなど人々の生活に溶け込んでいる.また クラブチームの活動に伴い,試合観戦者の消費活動 による商店街の活発化などの経済面だけでなく,健 康福祉の向上などの文化面においても地域が活性化 している.このような状況を踏まえ,行政もクラブ チームに対する支援を実施しているが,クラブチー ムがもたらす様々な効果が定量的に示された事例は ほとんどない.

本研究では便益帰着構成表を用いてクラブチーム の活動によって経済面,文化面に波及する効果を金 銭タームで客観的に評価する.

2. クラブの便益帰着構成表の作成

便益帰着構成表

1)

はプロジェクトの実施によって 各関係主体にどれだけの便益または費用を享受する のかを表に示したものである.

(1) 地域活性化プロセス

スポーツにおいては行動原理の異なった多くの主 体が関与し,かつそれらの社会経済活動が相互に連 関し合っている.主体はクラブ,家計

(

ファン,ホー ムタウン内の住民など

)

,企業

(

スポンサー,ホーム タウン内の企業など),行政(行政だけでなく,サッ カー協会なども含む

)

4

区分して整理する.クラブ 活動は

(a)

試合・練習,

(b)

社会貢献・環境,

(c)

スポー ツ振興・アカデミー・介護予防の

3

つに分類する.

各活動による効果をそれぞれ列挙し,効果の発生か ら帰着に至るプロセスを整理した.図 1に試合開催 によるプロセスを示す.

(2) 便益帰着構造の定性的整理

(1)で示したプロセスにおいてクラブ活動による

効果がどの主体に帰着するかを整理するために,関 係主体が享受する便益の内容を便益帰着構成表の該 当セルに記述する

( 表 1).便益帰着構造を定性的に

整理した表を用いることによりクラブチームの活動 による効果が分析可能となる.

図 1 試合開催による効果の発生から帰着に至るプロセス 表 1 試合開催の定性的便益帰着構成表

スタジアム テレビ

運営 A1 A

試合 B1 B2 B

ボランティア C1 C2 C

施設 D1 D1 D2 D

ファンクラブ E1 E2 E

スポンサー F1 F2 F

グッズ G1 G3 G

ネーミング

ライツ H1 H2 H

放映権 I1 I2 I

地域経済 J1 J1 J2 J

交通 K1 K2 K2 K3 K

労働 L1 L2 L

合計

合計 クラブ

E2 G2

観戦者 住民 企業 行政 メディア

A1;運営費,B1;入場料,B2;観戦することから発生する便益,C1;出資による収入 C2;出資することから発生する便益,D1;施設利用から発生する便益,D2;改修・維持管理費 E1;収入,E2;ファンクラブに所属することから発生する便益,G1;収入,G2;グッズ購入時に発生する便益 G3;グッズ製造によって発生する便益,H1;取得することから発生する便益,H2;収入

I1;テレビ観戦することから発生する便益,I2;放映権限の行使から発生する便益

J1;スタジアム周辺の商店街などへの消費による便益,J2;売り上げの増加,店舗数の増加,K1;交通費 K2;利便性の向上,K3;公共交通の赤字補てんの減少,L1;就職機会の増加,所得の増加,L2;雇用の増加

計測手法で計測する.市場価値をもつ項目はクラブ データや行政データを用いて便益を計測する.一方,

市場価値をもたない項目は旅行費用法や

CVM

を用 いて便益評価する.

3. FC 岐阜と大分トリニータの地域活性化評価

アンケート調査に基づいて,便益帰着構成表に整 理した効果項目を定量的に評価する.

(1) アンケート調査概要

クラブ活動による効果を定量評価するために,

FC

岐阜の主催試合観戦者および会場周辺の住民に対し てアンケート調査を実施した.これを大分トリニー タの主催試合観戦者に対するアンケート調査

2)

と比 較分析する.

2

つのアンケート調査の概要を表 2に 示す.

(3) 帰着便益の定量化

各セルに該当する便益,費用項目をそれぞれ個別

土木学会中部支部研究発表会 (2010.3)

IV-005

-321-

(2)

(2) 試合開催による効果

表 2 アンケート調査概要

表 1

G1,G2,J1,J2

の便益を評価するために主催

試合開催時の1人当たりの消費金額を算出した.図

2

に示すようにスタジアム内外での消費による地域 経済効果がもたらされている.また図 2と年間入場 者数(FC岐阜

107,577

人,大分トリニータ

345,481

人)から地域における消費金額の総額を求めると,ス タジアム内の飲食は岐阜で約

1

億円,大分で約

4

億 円,スタジアムの内のグッズの購入は岐阜で約

1

億 円,大分で約

1.4

億円,スタジアム外での飲食は岐 阜で約

0.6

億円,大分で

1.7

億円,スタジアム外で の飲食以外は岐阜で

0.4

億円,大分はで約

1

億円と なった.

(3) 社会・健康福祉面の効果

クラブがもたらす社会・健康福祉面の効果のうち,

住民や試合観戦者が享受する運動機会の増加,非行 防止,交流機会の増加,共通話題の創出に対する点 数付けの評価結果を図 3に示す.岐阜はトークショ ーや学校の訪問などの地域貢献活動を積極的に展開 しており,選手と住民のふれあいの機会が多く,こ のような結果を生んだと考えられる.

(4) 支払意思額の分布

クラブの地域貢献に対する支払意思額の評価結果 を図 4および図 5に示す.「0円」と回答したのは 非常に少なく,ほとんどの回答者が地域貢献に対し て支払意思がある.岐阜の平均支払意思額は

6,715

円,大分の平均支払意思額は

12,485

円となった.

また大分は図 3の評価が岐阜と同じあるいは下回っ ているが大分の平均支払意思額が高いのはクラブの 存在価値も考慮に入れて評価されていると考えられ る.

4. おわりに

FC 岐阜 大分トリニータ 実施日 2009/12/5 2009/10/18

場所

長良川競技場 岐阜メモリアルセンター公園内

九州石油ドーム

調査方法 聞き取り調査 聞き取り調査

対象者 試合観戦者・公園利用者 試合観戦者

回答者数 372 571

1005  964 

529 

339  1205 

417  492 

284 

0  200  400  600  800  1000  1200  1400 

スタジアム内での 飲食

スタジアム内での グッズの購入

スタジアム外での 飲食(駅周辺などでの飲食)

スタジアム外での飲食以外

(宿泊費,おみやげの購入など)

平均金()

FC岐阜 大分トリニータ

図 2 主催試合開催時の 1 人当たりの消費金額

3.74 

3.35 

3.78  3.93 

3.34  3.51 

3.23 

2.42 

0  1  2  3  4  5 

住民の運動機会の貢献 非行防止教育への貢献 交流機会の増加 家族や友人との会話の増加

平均()

FC岐阜 大分トリニータ

図 3 社会健康福祉面の効果に対する定性的評価

4.0  2.4  0.0  1.9 

8.6  0.3 

24.2 

7.0  8.9  18.8 

0.0  14.0 

0.3  1.1  2.7 

0.0  1.3  0.3  0.0 

5.0  10.0  15.0  20.0  25.0  30.0 

割合(%)

支払意思額(円)

図 4 地域貢献に対する支払意思額(FC 岐阜)

2.3  1.8 

0.2  0.7  2.6  0.0 

18.2 

3.9  13.0 14.9 

0.7  23.8 

0.9  3.2  3.3 

0.0  1.2  0.4  0.0 

5.0  10.0  15.0  20.0  25.0  30.0 

割合(%)

支払意思額(円)

図5 地域貢献に対する支払意思額(大分トリニータ) 本研究ではプロサッカーチームによる地域活性化

効果の発生から帰着に至るプロセスに基づいて,定 性的便益帰着構成表を作成し,クラブチームの活動 による効果を体系化した.

参考文献

1)

高木朗義:便益帰着構成表,公共政策のための政策評 価手法,伊多波良雄,中央経済社,pp.88-102,

2009.

今後,

2

つのアンケート調査から社会的余剰を求 めるとともにクラブデータや行政データから推計す る便益と合わせて,便益帰着構成表を作成して

FC

岐阜,大分トリニータの社会経済評価を行う.

2)

高木朗義,浅岡朝泰,福永渉:便益帰着構成表を用い たプロサッカーチームがホームタウンにもたらす効 果分析,応用地域学会

2008

年研究発表大会,2008.

土木学会中部支部研究発表会 (2010.3)

IV-005

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参照

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