自発光式道路鋲の設置方法がドライバーの速度感に与える影響
秋田大学 学生会員 ○鈴木 章紘 秋田大学 正会員 浜岡 秀勝 1.はじめに
夜間見通しの悪い道路などで事故防止のために自 発光式道路鋲が導入されてきている。実際に事故多発 地点に自発光式道路鋲を設置し事故を削減したデー タも得られている。特に車線のはみ出し事故、脱輪事 故の減少に効果がある。しかし、自発光式道路鋲の設 置基準はまだ明確になっていない。基準を明確にする ことで新たな効果を得ることができると考えられる。
本研究では、自発光式道路鋲の設置方法(設置間 隔・点滅方法)の変化がドライバーの速度感にどの ような影響を与えるのか分析していき、速度減速を 促すような設置基準の提案を目的とする。
2.実験方法について
自発光式道路鋲を設置した道路がドライバーに与 える影響を見るために映像実験を行った。実験概要 は表 1 に示す。映像実験を行う際に設置方法のパタ ーン決めを行った。設置間隔を 4 パターン(ABC D)、点滅方法を 3 パターン(①②③)考案し、それ ぞれを組み合わせ、合計 12 パターンとした。図 1 は設置間隔のパターン 4 つの設置方法を示す。点滅 方法に関して①は 1 回/s、②は 2 回/s、③は①と② が交互に点滅する。映像は自発光式道路鋲の代用品 を道路に設置して走行している映像を使用した。映 像での走行車の速度は 40km/h、50km/h、60km/h で ある。実験は撮影しておいた映像をプロジェクター でスクリーンに投影し、それを被験者に見せ、映像 終了後にアンケートを実施した。
実験期間 平成 18 年 12 月 14 日〜21 日 被験者数 40 名(男性 30 名、女性 10 名)
※普通自動車免許有 実験方法 映像実験(アンケートによる評価)
アンケート項目(5 段階評価) 設置間隔パターン 点滅パターン 1.速度感 1.見やすさ 2.不快感 2.危険感 3.危険感
表 2 の示したようなアンケートによって被験者に 設置間隔、点滅方法の評価をしていただいた。
3.ドライバーへの影響 (1)速度感から求める体感速度
設置間隔パターンでの速度感の推移を図 2 に示す。
速度感は、50km/h から設置間隔を狭めていくパター ンABCと等間隔のパターンDに差が見られた。等 間隔で設置されているものより設置間隔を狭めて いくものの方がドライバーの速度感に与える影響 は大きいと言える。実際に速度を速く感じるように 60km/h 以上であると考えられる。
速度感の評価(5 段階評価)用いて実際の速度と ドライバーの体感速度の比較を行った。図 2 で示し た。速度感の評価を割合に変換し、それぞれの設置 方法の体感速度を求めることで数値が近いものに なると考えられる。体感速度を求める式は以下に示 す。
感覚の割合とは速度感の割合のことで各設置間 隔パターンの速度ごとの速度感の平均値を最大数 で割り、速いか遅いかを百分率で示したものである。
図
3
は(1.1)、(1.2)式から求めた体感速度を実際の 速度ごとに示したものである。50km/h
を超えてから感覚の割合= 5段階評価の平均
5 −0.5 ×100 感覚の割合= 5段階評価の平均
5 −0.5 ×100 体感速度=速度感の割合×実際の速度+実際の速度 体感速度=速度感の割合×実際の速度+実際の速度 表 1 実験概要
表 2 アンケート概要
図 1 設置間隔のパターン
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65
0 2 4 6.5 9 12 15 18.5 22 26 30 34.5 39 44
0 2 4.5 7.5 11 15 19.5 24.5 29.5 34.5 39.5 44.5 49.5 54.5
0 2 4 7 10 14 18 23 28 33 38 43 48 53
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
カーブまでの距離(m)
設 置 間 隔 パ ター ン
A B C D
1 1.5 2 2.5 3 3.5
40 50 60
速度(km/h) 速
度 感
A B
C D
図 2 速度感の推移
(1.1) (1.2)
IV-41
土木学会東北支部技術研究発表会(平成18年度)パターン
D
と他のパターンに差が生じた。55km/h でパターンD
以外のものが実際の速度よりも体感 速度が上回った。55km/h
以下の速度では実際の速度 よりも遅く感じる傾向が見られた。このことから高 速度で走行する車両は速度が速くなるような錯覚 が起こり、危険を感じ速度減速を行うのではないか と考えられる。(2)危険感と不快感
図
4
のグラフは各設置パターンの危険感と不快感 の感覚で5
段階評価の3
より上の項目の割合の合計 を示したものである。割合は40〜60km/h
までのそ れぞれの感覚を合計し平均値をとった。仮説では設 置間隔の狭まっているパターンと点滅②の組み合 わせが速度抑制効果が高いと考えていた。図3
より パターンA②とB②とC②は不快感と危険感とも に割合が高い。不快感と危険感が高いものはドライ バーへの影響が高く速度抑制効果があるといえる。(3)点滅方法での見やすさと危険感
(2)と同様に見やすさと危険感の感覚で 5 段階評 価の 3 より上の項目の割合の合計で示した。(2)で は各設置パターンの影響を分析した。ここでは、点 滅方法だけでのドライバーへの影響を考慮する。仮 説としては早い点滅である点滅②が最も見やすく、
ドライバーの危険感を強くすると考えた。図 5 は見
やすさと危険感も割合の推移である。点滅①と③は 50km/h〜60km/h のとき、見やすさの割合が低下して いる。それに比べ、点滅②は見やすさの割合が低下 することなくドライバーへ危険を知らせることが 出来る。
早い点滅はドライバーに焦りを生じさせること で、危険を知らせ、速度抑制に繋がるのではないか と考えられる。
4.まとめ
設置間隔を狭めていくことでドライバーの速度 感は変化する。速度感に影響を及ぼす速度は
55km/h
以上となった。設置間隔を狭めたパターンが違って いても大きな変化はなく、狭めることで速度抑制に 繋がると考えられる。早い点滅は走行速度が速くな ることでドライバーに不快感・危険感を与えること ができる。このことから速度抑制を目的とした場合、最も効果的な設置方法はパターンC②が良いと考 えられる。
本研究は映像実験でドライバーへの影響を検証 した。映像実験ではドライバーが実際に運転すると きの速度とは感覚が異なるため、実走行実験を行い、
実際に導入することが可能かどうかの検証が今後 必要となる。
《参考文献》
1)
小沼良一,大口敬: 視覚的な速度抑制対策が運転者の速 度感に与える効果,土木学会第 59 回年次学術講演会 pp.729-730 20042)
松沢勝,伊東靖彦,加治屋安彦,鈴木武彦,永田泰浩:冬期道路の安全走行支援システムに関する研究,第 1 回 ITS シンポジウム pp.367-376 2002
図 4 危険感と不快感のパターン別の割合
図 5 見やすさと危険感の速度別の推移 30
35 40 45 50 55 60 65 70 75
40 50 60
実際の速度(km/h)
体感速度(km/h)
A B C D
図 3 速度感から求めた体感速度 実際の速度
<体感速度 実際の速度
>体感速度
0 10 20 30 40 50 60 70
40 km /h 50 km /h 60 km /h 40 km /h 50 km /h 60 km /h 40 km /h 50 km /h 60 km /h 40 km /h 50 km /h 60 km /h 40 km /h 50 km /h 60 km /h 40 km /h 50 km /h 60 km /h
点滅1 点滅2 点滅3 点滅1 点滅2 点滅3
見やすさ 危険感
割合 ( % )
4 やや見やすい 5 見やすい 4 やや危険 5 危険
0 5 10 15 20 25 30
A① A② A③ B① B② B③ C① C② C③ D① D② D③ A① A② A③ B① B② B③ C① C② C③ D① D② D③
不快感 危険感
割合(%)
4 やや不快 5 不快 4 やや危険 5 危険
土木学会東北支部技術研究発表会(平成18年度)