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和歌山県沿岸部における津波の砕波とその流体力

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Academic year: 2022

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和歌山県沿岸部における津波の砕波とその流体力

和歌山工業高等専門学校 環境都市工学科 正会員 ○小池 信昭

1.はじめに

2004 年 12 月に発生したインドネシア・スマトラ島沖地震津波は、インド洋の沿岸諸国に甚大な被害を及ぼ した。津波の砕波が破壊力をより大きくしたと言われている。津波が砕波する位置は津波が来襲する場所まで の海底勾配によって決まる。和歌山県沿岸部は、この海底勾配がインド洋で被災した国々よりも急勾配である ため、より危険度が高い可能性がある。つまり、津波は岸に近い位置で砕波するほど破壊力が増すが、和歌山 県沿岸部ではそのようになる可能性が高いのである。そこで、和歌山県沿岸部の海底地形データから海底勾配 を調べ、津波の砕波位置を求めることは、和歌山県沿岸部の津波防災対策にとって極めて有効であると考えら れる。

2.研究目的・方法

解析解によって津波の砕波位置を求める方法1) は確立されているので、この方法を用いて、和歌山県の沿 岸部からどのくらいの位置で津波が砕波するのかを求める。解析解は、いわゆる数値解析の解(近似解)とは 違って、厳密解であるため誤差がない。あるとすれば、解析解を数値的に求めるときに用いる数値積分の誤差 くらいであるが、この数値積分も極めて信頼性の高いサブルーチンを用いるため、ほとんど誤差がないと言っ てよい。そして、砕波の判定には、解析解に出てくるヤコビアンを用いて判定している。したがって、ここで 用いる方法は、一般によく行われているような数値解析によって砕波の判定も近似的に求める方法とは違い、

津波自体の計算も厳密解であるし、砕波の判定も理論的であるので、極めて精度が高いと言える。

この方法では、該当場所の海底勾配、入射する津波の波高、波長などによっても結果が異なってくるので、

解析解を数値的に解けるようにしたプログラムを用いて、さまざまな条件のもとでの、和歌山県沿岸部におけ る砕波位置を求めた。ここでは紙面の都合から田辺市沿岸部のみを例にとって示すことにする。また、砕波し た場合、流速が速くなり流体力も増すので、砕波した場合の津波の流体力の分布図も作成した。

3.結果と考察

田辺湾の平均海底勾配は 50m メッシュの海底水深データから測定すると 1/62 になった。田辺市ハザードマ ップの想定地震は、東海・東南海・南海地震の3つの地震が同時に発生した M8.6 の場合であるが、その際発 生する津波の大きさを入射波津波の条件の一例とした。

この条件で解析解を用いて砕波位置を求めると、岸から 0m、すなわちちょうど海岸線の直前で砕波を起こ すことがわかった。そして砕波直後の流速は 4.51m/s となり、これから津波の流体力を計算すると 1m2当たり 5.3 トンの衝撃が加わることがわかった。

この解析解の方法は直線的な1次元の方法であるが、これとは別に、従来から行われている2次元の非線形 津波数値計算から流速を求め、田辺市沿岸部では先程の想定地震で発生した津波の場合には海岸線の直前で砕 波することを考慮に入れて、流速を 2 倍にして2) 津波の流体力を計算した値を分布図にしたものを図2に示 す。この図の津波の流体力の値の単位は先程の解析解の場合と同じで、1m2当たりのトン数で示してある。ま た比較として、砕波しないとしてそのまま計算した流速で計算した流体力の分布図も図1に示してある。

図2を見ると、1m2当たり 5-6 トンを示す緑色で塗られた部分が沿岸部にも広く存在し、数値計算から求め た値も解析解の値と大きく違わないことがわかる。もちろん、1次元と2次元計算の違いはあるので、単純な 比較はできないが、数値計算による数値解(近似解)がまったく見当違いの値を出しているわけではないと言 える。

キーワード 津波,砕波,流体力,解析解,数値解

連絡先 〒644-0023 和歌山県御坊市名田町77 和歌山工業高等専門学校 TEL0738-29-2301 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

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Ⅱ‑214

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図1 和歌山県田辺市における津波の流体力(砕波しない場合)

図2 和歌山県田辺市における津波の流体力(砕波して流速を2倍とした場合)

参考文献

1) G. F. Carrier et al., Tsunami run-up and draw-down on a plane beach, J. Fluid Mech. 2003, 475, pp.79-99.

2) 例えば、大滝 嘉一:津波による建築物の脆弱性に関する調査研究、http://www.kushiro-ct.ac.jp/

archi/sotuken/2007/PDF/ohtaki.pdf.

謝辞

本研究は、著者がオレゴン州立大学・Harry Yeh 教授のもとで在外研究員として滞在中に共同研究として行 った研究に基づいています。ここに記して謝意を表します。

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

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Ⅱ‑214

参照

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