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入眠困難における認知情報処理モデルの構築と

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Academic year: 2022

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早稲田大学審査学位論文 博士(人間科学) 概要書

入眠困難における認知情報処理モデルの構築と 注意バイアスに対する実験的介入

A Model of Cognitive Information Processing on Sleep Onset Insomnia

and an Experimental Intervention to Attention Bias

2010年1月

早稲田大学大学院 人間科学研究科

山本 隆一郎

Yamamoto, Ryuichiro

研究指導教員: 野村 忍 教授

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本博士論文の目的は,入眠困難に対する認知行動論からの理解と援助の現状を踏まえ,

入眠困難の維持・増悪に関する認知情報処理モデルの構築と検証,またモデルに基づい た新たな認知的介入技法の提案と検討を行うことであった。

本博士論文は,全7章から構成され,第1章では,本邦における睡眠に関する問題を 整理し,大学生における入眠困難の早期対応の重要性を論じた。また ,その援助方略と して認知行動論からの理解と援助の有用性を指摘し,その理解と援助を時系列的に概観 した。そして今後の展望として,(1)入眠困難における認知的変数の整理と査定法の開 発,(2)認知的変数間の影響関係に関する新たなモデルの構築と検証,(3)検証されたモ デルの影響関係に基づく認知的介入方略の提案の必要性を指摘した。

第2章では,第1章での先行研究の概観と展望を踏まえ,本博士論文の目的と構成・

意義をまとめた。

第3章では,入眠困難に影響を及ぼす認知的変数として“睡眠に関する信念”・“入眠 時選択的注意”に着目し,それらを査定する心理尺度の開発と信頼性・妥当性の検討を 行った。研究1では,“睡眠に関する信念(不眠の影響性に対する懸念)”に着目し,“睡 眠に関する信念尺度(Beliefs about Sleep Scale)”を開発した。研究2では,“入眠時 選択的注意(睡眠と関連した刺激への注意の占有傾向)”を取り上げ,“入眠時選択的注 意尺度(Pre-Sleep Selective Attention Scale)”を開発した。

第4章では,入眠困難に影響を及ぼす認知的変数として“入眠潜時評価の歪み”に着 目し,先行研究や第3章で検討された認知的変数と“客観的な入眠潜時評価と主観的評 価との乖離”との関連性を実験的調査により検討した(研究3)。本研究により,入眠 困難の訴えの維持・増悪は認知的覚醒(就寝場面での眠れないことに対する過度な心 配・反芻)の直接的な結果である可能性が見出された。また先行研究と研究1から研究 3を踏まえた入眠困難の認知的変数間の影響関係に関する仮説モデルが構築された。

第5章では,共分散構造分析を用いて研究1から3より構築された入眠困難の認知情 報モデルの検証を行った(研究4)。その結果,モデルの高い適合度が示され,“睡眠に 関する信念を有する者は,就寝場面における認知的情報処理の歪み(入眠時選択的注意)

が生じ,認知的覚醒が増強される”といった影響経路が示唆された。また,認知的覚醒 は,直接的に入眠困難の訴えを維持・増悪している可能性が示唆された。さらに,認知 的要因の入眠困難に対する影響経路・各変数の影響力の検討から,入眠時選択的注意が 重要な変数であると考えられた。このことから,就寝場面における注意統制を行うこと で,認知的覚醒の低減,ひいては入眠困難の改善が期待された。

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第6章では,入眠困難者を対象に実際の就寝場面における注意統制の認知的覚醒・入 眠困難に対する有効性を実験的介入デザインにより検討した(研究5)。本研究では注 意統制の方法として数息観を用いた。数息観とは,自らの呼吸に意識を集中させる修業 法である安般念の初歩段階においてとられる“自らの呼吸の数を勘定する手法”である。

数息観により,胸部に注意を集中させ,その状態を観察することで睡眠に関連した脅威 刺激に対して注意資源の配分量が相対的に減る(入眠時選択的注意が低減する)と考え られた。介入の結果,数息観による注意統制を行った群では,ベースライン期と比較し て実験期における認知的覚醒の低減,入眠潜時の主観的評価の短縮が確認された。

第7章では,第6章までの研究成果を整理し,本論文の意義と限界・展望を論じた。

本論文では入眠困難の苦悩に認知的変数が大きく寄与していることが示唆され,特に 就寝場面における入眠時選択的注意の査定と介入が肝要であることが示された。また,

構築されたモデルの妥当性・想定された影響関係での入眠困難の分散説明率の高さが確 認された。さらに,提案された具体的な入眠時選択的注意への介入法(数息観)の効果 を実証したことは,入眠困難に対する認知行動論からの査定・援助に大きく寄与すると 考えられた。

一方,本博士論文全体の限界と展望として,注意統制の効果の個人差に影響する要因 の検討・適応範囲の明確化の必要性が考えられた。最後に,本研究の臨床的展望として,

注意統制を既存の援助介入方略(各種の行動論的技法や睡眠に関する信念の変容を狙っ た認知的介入)と併用した際の効果増大や,数息観を応用した新たな認知的介入の開発 への期待を論じた。

参照

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