中国茶文化と茶館-中国漸江省杭州市の事例-
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(2) 人間科学研究 Vol. 19, Supplement (2006). 1970年代末期からの改革解放による経済発展の中で、東. ④余暇機能(将棋や囲碁の場). アジア全体を巻き込んだ中国茶芸復興運動は、中国大陸も. ⑤栄養機能(食事や水分補給). 舞台となった。さらに1970年代末期、茶葉貿易が盛んになっ. 筆者はこうした茶館の今日的な機能が、中国茶文化のグ. たことも拍車をかけ、杭州市は中国大陸の茶芸振興の中心. ローバリゼーションに重要な役割を果たしたと考えている。. 地となり、茶芸館もまた日まLに増えていった。これらの. 中国および漸江省の茶菓生産量とその対日・米両国への. 状況に加えて、 2000年前後中国にも観光ブームがおとずれ、. 輸出量の伸びを可能にした要因は、むろん中国自体の改革. 杭州市への外国人観光客も増加したために、中国文化のPR. 開放経済政策のみならず、両国の今日的な需要が決定的な. 施設としての茶芸館の需要が急増した。. 役割を担っていると考えられが日本の状況から眺めると、. 一方、茶芸館は、中国茶文化を目に見える形で、外国人. ①規在日本において、糖分を忌避し身体によいものを摂取. 観光客を含めた一般の人々に啓蒙するための舞台であり、. するという健康志向が、食事のときにウ‑ロン茶などの. そこで働く茶芸師は茶を滝れる行為を通して、自国の誇る. 中国茶を選択する理由として上昇している。過度の砂糖. べき伝統文化を再確認する場である。それを実践するため. 摂取が、健康維持にとって好ましくない状態を生み出す. の都市として、南宋の古都であり、歴史上の施政者たちが 愛した、銘茶西湖竜井茶の産地でもある杭州市が選ばれた. ということが、教育やメディアによって一般の人たちの 共通認識となっている事実がある。唐代の陸羽によって. のは、けだし当然といえるだろう。杭州市、とりわけ西湖. 書かれた『茶経』にも茶の効用について記述されている. 周辺の観光地に林立する茶芸館は、そうした中国茶文化を. が、現代でもこの数年来、日常飲料の緑茶の疾病予防効. 広く国内外に発信する基地ともいえる。. 果がクローズアップされてきている。. 杭州市に中国の茶文化における、これらの特権的な地位. ②1979年前後に日本で缶ウ‑ロン茶が普及し、その後、缶. を与えた要因とは何か。それには同市が持つ以下の特徴的. よりさらに簡便性が高いペットボトルが、他の飲料と共. な条件があげられる。. に中国茶の消費量増大を加速化させた。これに加えて、. (彰自然条件が茶の生産にとって好適であるので、杭州市で. 飲食にかける労力と時間を省きたいという新しい食文化. は高品質の茶を生産することができる。. の要請や、周囲と同じ種類の飲料を消費してそのことに. ②かなりの人口規模を有し、しかも芸術・文化都市である. よって現代の流行を共有し、社会の中での自己の孤立化. ために、茶の消費量が多い。. を阻止しようとする社会的表象が、さらなる茶飲料消費. ③生活水準が高く、杭州市内での経済活動が盛んである。 ④中国第一の経済都市上海に近く、物流が活発である。. の増加を生んだといえる。. ⑤国家的な茶関連の諸組織が発達しており、学術方面から. ③歴史的な背景としては、 1972年からの日中国交正常化に より、中国という隣国が、日本人にとってよりなじみの. の手厚い支援がみられる(漸江大学農学部・研究所・中. 深い関係になったという事実がある。また、経済的な貨. 国茶葉博物館など)。それら諸組織は、外国人にも茶文化. 幣価値の相違により輸入品の増大をもたらし、より日本. 啓蒙活動を行っている。. 人にとって消費しやすい中国産物を受け入れる社会的要. ⑥例年、恒例的な茶に関する行事・学会・展示即売品評会. 因が生まれていることも、中国茶文化を受け入れやすく. などの開催が、杭州市の後援をうけて盛んであり、外国 人との交流も多い。. している。 ④近年日本では、対中国間の交通事情の好転により、中国. ⑦茶文化に造詣の深い人物を輩出しているため、茶の商品. への観光旅行がより容易になり、中国茶文化に親近感を. 価値が高くなっている。. 持つ人が多くなりつつある。(日本から杭州市への観光客. ⑧そして、何よりも杭州市周辺で生産される西湖竜井茶が、. も増加している。)結果として、中国茶は日本人にとって. 古来から銘茶としての名声を得ている。. ありふれたものとなり、日常生活において「中国」とい. 以上の諸条件が、茶菓の産業・文化を発達させると同時. う表象を打ち出している。. に茶館文化を活発化させたと考えられる。では、茶館の歴. こうした現象が、たとえばアメリカにどれほど当てはま. 史的な位相ではなく、それが今日担っている機能は何か。. るかは、詳細な検討を必要とする。だが、少なくとも中国. これには以下の点が考えられるだろう。. 茶文化のグローバリゼーションが今日ほど隆盛をみている. ①宣伝機能(国内外の観光客に中国茶文化や中国茶の特徴. 時代はかつてなかったと言ってよいだろう。そして、その. などを教授する). グローバリゼーションの過程で、茶館が果たした役割もま た看過できない。. ②社交機能(友人との交際・クラブなど) ③芸術鑑賞機能(茶館の建築や庭園・インテリア・茶・茶 具・茶芸・古典音楽など). ‑110‑.
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