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中国茶文化と茶館-中国漸江省杭州市の事例-

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Academic year: 2022

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(1)人間科学研究 Vol. 19, Supplement (2006) 博士論文要旨. 中国茶文化と茶館‑中国漸江省杭州市の事例‑ Chinese Tea Culture and Tea House : The case of Hangzhou in Zhejiang, China. 宍戸. 佳織(KaoriShishido). 指導:蔵持. 不三也教授. 本論文は中国漸江省杭州市を事例として、茶館の存在意. 代における杭州市の中国茶館の経営者従業員の再教育機関. 義を考察し、それが茶菓貿易や中国茶文化に与えた影響に. である評茶師・茶芸師培訓班の盛んな活動、中国茶館と観. ついて述べ、さらに茶文化のグローバリゼーションとの関. 光や茶葉貿易の関連性、そして中国茶の世界的な普及と中. 係を検討したものである。. 国や漸江の茶葉貿易量の推移について述べ、新江省杭州市. 論文は次のような構成になっている。. がなぜ中国茶文化の中心地となりえたかを考察した。. 序論 問題の所在. 次に私が注目したのは、杭州市の歴史と観光戦略である。. 0‑1. 茶の風景. 杭州市の中国茶菓博物館内に置かれた中国国際茶文化研究. 0‑2. 本論の構成. 会や漸江省内の茶館などを調査したところ、観光業界で働. 第1章 中国における茶の起源と分類. いた経験を持つ人物も多く、杭州市の観光局や茶芸の関係. 1‑1. 中国における茶の起源. 者も茶文化は観光の一部分を担っていると認識している。. 1‑2. 中国茶の六大分類. また杭州は、中国茶文化の基本が完成した南宋時代の古都. 調査地概況. であり、中国緑茶の銘東西湖竜井茶が生産され、清朝の乾. 第2章. ‑. 杭州市の歴史と現況. 第3章 末代の杭州における茶文化 3‑1. 宋代の茶をめぐる背景. 3‑2. 宋代茶文化. 3‑3. ‑. 隆帝や毛沢東など中国を代表する古今の為政者・政治家達 が西湖竜井茶を愛し、たびたび訪問した都市である。これ らの歴史的事実を、漸江大学農学部茶学系の設立、中国茶. 茶館と闘茶. 菓研究所の福建からの移転、国家的規模の初めての茶の博. 宋代茶文化の伝播 ‑. 宣化遼墓壁画からの分析. 物館である中国茶菓博物館の建設などによって人々に再認. 第4章 現代中国における茶文化. 識させ、著者が高級茶芸師の国家資格を取得した同博物館. 4‑ 1 19世紀末期から20世紀中葉までの茶館. 内の茶芸師培訓班も、杭州の観光シンボルのひとつとして. 4‑2. 現代における中国茶文化と茶芸. の中国茶文化を実際面で担う人材を養成し、 「茶の都」杭州. 4‑3. 現代中国の茶館・茶芸館の類型. としての地位を確立させた。. 第5章中国茶菓貿易の傾向. 杭州市は、面積1万6596k戊、人口は643万である(2003年)0. 5‑1. 中国の茶葉貿易. 中国第一の経済都市上海からほぼ140kmの近隣に位置す. 5‑2. 漸江省の茶菓貿易. る、中国茶文化の中心地である。この杭州市に多く存在し. 第6章 現代の杭州市の茶文化. ている茶館は、中国茶文化が自国の伝統を内外に表示する. 6‑1 杭州市における茶に関連する諸機関. ためのシンボルであることを端的に示すものといえよう。. 6‑2. 杭州市における評茶師培訓班活動. もとより、茶は食生活と不可分の関係があるが、中国の. 6‑3. 杭州市における茶芸師培訓班活動. 茶文化は唐代から宋代への時代の流れのなかで徐々に普及. 6‑4 杭州市における茶館と茶文化の意義. していった。その普及の中核を担ったのが、本論で取り上. 終章 中国茶文化における杭州の茶館の担う役割と、中. げた茶館にはかならないと推測される。この茶館自体はす. 国茶文化のグローバリゼーションとの関係. でに唐代から存在していた。だが、当初皇帝を中心とする. 結論茶文化とグローバリゼーション. 上層階級の独占物であった茶は、末代に入ってその生産量. これらを総括して、本論文の要旨を記述すると次のよう. が増大し、市民生活も何ほどか発展したこともあって、一. になる。. 般民衆にも好んで飲まれるようになったが、彼らにその重. はじめに歴史的な観点からみて、唐代から末代、清代、. 要な場を提供したのが、まさに茶館なのである。以後、茶. そして現代、茶館を中心とする茶文化が連綿として継承さ. 館は中国茶文化の展開につねに重要な一翼を担い続け、連. れてきたことや、杭州市を中心にして栄えた宋代の茶文化、. 綿たる中国文化史のなかに、茶の意味と存在とを過不足な. とりわけ闘茶が同時代の周辺民族に伝播した足跡、一方規. く‑刻み付けてきた。. ‑109‑.

(2) 人間科学研究 Vol. 19, Supplement (2006). 1970年代末期からの改革解放による経済発展の中で、東. ④余暇機能(将棋や囲碁の場). アジア全体を巻き込んだ中国茶芸復興運動は、中国大陸も. ⑤栄養機能(食事や水分補給). 舞台となった。さらに1970年代末期、茶葉貿易が盛んになっ. 筆者はこうした茶館の今日的な機能が、中国茶文化のグ. たことも拍車をかけ、杭州市は中国大陸の茶芸振興の中心. ローバリゼーションに重要な役割を果たしたと考えている。. 地となり、茶芸館もまた日まLに増えていった。これらの. 中国および漸江省の茶菓生産量とその対日・米両国への. 状況に加えて、 2000年前後中国にも観光ブームがおとずれ、. 輸出量の伸びを可能にした要因は、むろん中国自体の改革. 杭州市への外国人観光客も増加したために、中国文化のPR. 開放経済政策のみならず、両国の今日的な需要が決定的な. 施設としての茶芸館の需要が急増した。. 役割を担っていると考えられが日本の状況から眺めると、. 一方、茶芸館は、中国茶文化を目に見える形で、外国人. ①規在日本において、糖分を忌避し身体によいものを摂取. 観光客を含めた一般の人々に啓蒙するための舞台であり、. するという健康志向が、食事のときにウ‑ロン茶などの. そこで働く茶芸師は茶を滝れる行為を通して、自国の誇る. 中国茶を選択する理由として上昇している。過度の砂糖. べき伝統文化を再確認する場である。それを実践するため. 摂取が、健康維持にとって好ましくない状態を生み出す. の都市として、南宋の古都であり、歴史上の施政者たちが 愛した、銘茶西湖竜井茶の産地でもある杭州市が選ばれた. ということが、教育やメディアによって一般の人たちの 共通認識となっている事実がある。唐代の陸羽によって. のは、けだし当然といえるだろう。杭州市、とりわけ西湖. 書かれた『茶経』にも茶の効用について記述されている. 周辺の観光地に林立する茶芸館は、そうした中国茶文化を. が、現代でもこの数年来、日常飲料の緑茶の疾病予防効. 広く国内外に発信する基地ともいえる。. 果がクローズアップされてきている。. 杭州市に中国の茶文化における、これらの特権的な地位. ②1979年前後に日本で缶ウ‑ロン茶が普及し、その後、缶. を与えた要因とは何か。それには同市が持つ以下の特徴的. よりさらに簡便性が高いペットボトルが、他の飲料と共. な条件があげられる。. に中国茶の消費量増大を加速化させた。これに加えて、. (彰自然条件が茶の生産にとって好適であるので、杭州市で. 飲食にかける労力と時間を省きたいという新しい食文化. は高品質の茶を生産することができる。. の要請や、周囲と同じ種類の飲料を消費してそのことに. ②かなりの人口規模を有し、しかも芸術・文化都市である. よって現代の流行を共有し、社会の中での自己の孤立化. ために、茶の消費量が多い。. を阻止しようとする社会的表象が、さらなる茶飲料消費. ③生活水準が高く、杭州市内での経済活動が盛んである。 ④中国第一の経済都市上海に近く、物流が活発である。. の増加を生んだといえる。. ⑤国家的な茶関連の諸組織が発達しており、学術方面から. ③歴史的な背景としては、 1972年からの日中国交正常化に より、中国という隣国が、日本人にとってよりなじみの. の手厚い支援がみられる(漸江大学農学部・研究所・中. 深い関係になったという事実がある。また、経済的な貨. 国茶葉博物館など)。それら諸組織は、外国人にも茶文化. 幣価値の相違により輸入品の増大をもたらし、より日本. 啓蒙活動を行っている。. 人にとって消費しやすい中国産物を受け入れる社会的要. ⑥例年、恒例的な茶に関する行事・学会・展示即売品評会. 因が生まれていることも、中国茶文化を受け入れやすく. などの開催が、杭州市の後援をうけて盛んであり、外国 人との交流も多い。. している。 ④近年日本では、対中国間の交通事情の好転により、中国. ⑦茶文化に造詣の深い人物を輩出しているため、茶の商品. への観光旅行がより容易になり、中国茶文化に親近感を. 価値が高くなっている。. 持つ人が多くなりつつある。(日本から杭州市への観光客. ⑧そして、何よりも杭州市周辺で生産される西湖竜井茶が、. も増加している。)結果として、中国茶は日本人にとって. 古来から銘茶としての名声を得ている。. ありふれたものとなり、日常生活において「中国」とい. 以上の諸条件が、茶菓の産業・文化を発達させると同時. う表象を打ち出している。. に茶館文化を活発化させたと考えられる。では、茶館の歴. こうした現象が、たとえばアメリカにどれほど当てはま. 史的な位相ではなく、それが今日担っている機能は何か。. るかは、詳細な検討を必要とする。だが、少なくとも中国. これには以下の点が考えられるだろう。. 茶文化のグローバリゼーションが今日ほど隆盛をみている. ①宣伝機能(国内外の観光客に中国茶文化や中国茶の特徴. 時代はかつてなかったと言ってよいだろう。そして、その. などを教授する). グローバリゼーションの過程で、茶館が果たした役割もま た看過できない。. ②社交機能(友人との交際・クラブなど) ③芸術鑑賞機能(茶館の建築や庭園・インテリア・茶・茶 具・茶芸・古典音楽など). ‑110‑.

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