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実験社会心理学研究第 xx 巻第 x 号 Bushman and Baumeister(1998) でも, 自己本位性脅威モデルにおける好ましい自己表象を自己愛で測定し, 攻撃性との関連を検討している 自己愛とは 自己像がまとまりと安定性を保ち, 肯定的情緒で彩られるように維持する機能 であり, 自

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実験社会心理学研究 第 xx 巻 第 x 号 受 稿 日:2015 年  7 月 3 日 受 理 日:2017 年  8 月 4 日 早期公開日:2017 年 10 月 1 日 xxxx, xx–xx DOI: 10.2130/jjesp.1512

〔原   著〕

自己愛タイプ別に見た労働者の自我脅威の知覚が

対処方略に及ぼす影響

1)

仙 波 亮 一

*

広島大学 要   約 本研究の目的は,どのような要因が労働者の自我脅威の知覚に影響を及ぼし,その後どのような対処方略 に結びつくのかを自己愛タイプ別に明らかにすることである。本稿では,まず分析1 として,自己本位性脅 威モデルに基づいて,どのような要因が労働者の自我脅威の知覚に影響を及ぼし,その後どのような対処方 略に結びつくのかを複数のモデルを設定し,共分散構造分析により検討した。その結果,相対的自己評価と 自己概念の明確性を要因として含むモデルは,それを含めないモデルよりも適合度が低く,自我脅威が対人 恐怖心性および組織機能阻害行動に影響を及ぼすことを仮定したモデルが採用された。次に分析2 では,分 析1 で採用されたモデルについて,労働者を自己愛タイプ(自己主張性タイプ,注目・賞賛欲求タイプ,優 越感・有能感タイプ)に分類し,自我脅威がどのような対処方略と結びつくのかを複数の母集団に対して共 分散構造分析を用いて検討した。その結果,すべての自己愛タイプにおいて自我脅威は対人恐怖心性へ正の 影響を及ぼしており,自己主張性タイプでは,組織機能阻害行動へ正の影響を及ぼしていた。 キーワード: 自我脅威,自己愛,対人恐怖心性,組織機能阻害行動 1.はじめに 本研究の目的は,どのような要因が労働者の自我脅威 の知覚に影響を及ぼし,その後どのような対処方略に結 びつくのかを自己愛タイプ別に明らかにすることである。 近年,我が国組織では職場の人間関係の問題が大きな 課題となっている。「平成24 年労働者健康状況調査」(厚 生労働省,2013)では,仕事や職業生活にストレスを感 じている労働者の割合が60.9% と高い割合を示し,そ の原因として「職場の人間関係」と回答した人が1 番多 かった。労働現場では,上司から教育・指導を受ける中 で自分ができていると考えている職務について上司から 認められず,自分の能力に対する自己評価が低下したり, 同じことをやっても同僚は注意されず,自分だけが注意 をされ,人格が否定されたと感じたりすることがある。 そのような場合,労働者の自我が脅かされること(自我 脅威)が推測される。自我脅威とは,高揚された自己評 価と他者評価のズレによって生じるものであり,自己評 価を脅かす体験と同義である(中山,2011)。 自我脅威が対人関係に与える影響を扱ったモデルとし ては,自己本位性脅威モデル(Baumeister, Smart, & Boden, 1996)が有名である。このモデルでは,好ましい自己表 象を有する者が周囲から否定的評価を受け,自分自身の 評価と周囲からの評価のズレが生じ,自我脅威を知覚 した結果,自衛する反応として対人関係から撤退し,あ るいは攻撃や暴力を表出するというプロセスが示され ている。このモデルにおいて扱われる「好ましい自己表 象」の特徴は,自己愛とよく対応しており(中山,2011), 1)本論文については,日本グループ・ダイナミックス学会匿名審査員の方々に有益なご助言をいただくととも に,本論文の細部にわたりご指導いただいた。ここに深謝の意を表する。 * 現所属は仙波行政労務管理事務所 著者連絡先 e-mail: [email protected]

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Bushman and Baumeister(1998)でも,自己本位性脅威 モデルにおける好ましい自己表象を自己愛で測定し,攻 撃性との関連を検討している。 自己愛とは「自己像がまとまりと安定性を保ち,肯定 的情緒で彩られるように維持する機能」であり,自己評 価の不安定さを打ち消し,肯定的な自己評価を維持しよ うとする心理的な機能である(Stolorow, 1975)。つまり, 自己本位性脅威モデルは,個人が他者から否定的な評 価を受けた時に,自我が脅かされ,自己愛による自衛 的な反応として対人関係から撤退する,あるいは,攻撃 や暴力を表出するというプロセスを示していると考えら れる。 小塩(1998)では,自己愛傾向と自尊感情(自尊心; self-esteem)の関連について検討した結果,自己愛の 3 つの下位因子(自己主張性,注目・賞賛欲求,優越感・ 有能感)が自尊感情尺度の下位尺度にそれぞれ異なる影 響を及ぼしていた。このことから,肯定的な自己評価を 維持するために,自己愛の3 因子がそれぞれ異なる機能 を果たしている可能性が考えられ,自己評価を維持する ための対処方略も自己愛の因子の強さによって異なるこ とが予測される。

さらにStucke and Sporer(2002)は,自己愛だけでな く,自己概念の明確性に着目し,個人の攻撃行動を説明 している。自己概念の明確性とは,自己概念が明確に定 義され,内的に整合しており,安定しているかどうかの 程度を指している概念である。阿部(2011)は,自己概 念の明瞭性(self-concept clarity;自己概念の明確性と同 義)が,自己本位性脅威モデルの論拠となっている自己 評価の不安定性を表しており,自己愛そのものではなく, その不安定さを支えることが重要だと主張し,自己概念 の明確性に注目したStucke and Sporer(2002)の考えを 支持している。 仙波(2016)では,自己本位性脅威モデルに基づき労 働者を自己概念の明確性の高低と自己愛因子の強さで分 類した上で半構造化面接を行い,自我脅威状況における 行動選択プロセスを探索した。その結果,自己概念の明 確性と自分自身の評価と上司からの評価のズレが自我脅 威に影響を及ぼし,自己愛タイプによってその後選択す る対処方略が異なる可能性が示唆された。しかし,仙波 (2016)は,労働者 17 名による半構造化面接であったた め,この結果を一般化するには困難であった。そこで, 本稿において,仙波(2016)を量的アプローチによって 検証することにした。 本研究では自我脅威への対処方略として対人恐怖心 性,組織機能阻害行動に注目する。対人恐怖心性とは, 主に恐怖や不安のために対人関係の在り方に関して困難 を抱える状態(北山,2002)について一般の人々に見ら れる傾向(堀井,2011)である。上司から否定され自我 脅威を知覚した労働者は恐怖や不安に駆られ対人関係が 困難になり,対人恐怖心性を強め,その結果対人関係か ら撤退することが予測される。またその一方で,上司か ら否定され,自我脅威を知覚した労働者は自己評価の不 安定さを打ち消すために組織機能阻害行動を選択する人 もいる(仙波,2016)。組織機能阻害行動とは,「労働者 の自発的かつ意図的な行動で,組織内の個人や集団ある いは組織自体に対して直接的・間接的に良くない結果を もたらす行為」であり,我が国組織における労働者が 行いやすい対人関係上の逸脱行動である(仙波・原口, 2014)。労働者が自我脅威を知覚し,その後どのような 対処方略を選択するのかを知ることは,組織機能阻害行 動への介入や対人恐怖心性の軽減についての詳細な議論 を可能にすると考えられる。 以上のことから,本稿では,対処方略を対人恐怖心性, 組織機能阻害行動とし,自分自身の評価と上司からの評 価のズレを相対的自己評価として,この相対的自己評価 と自己概念の明確性がどのように労働者の自我脅威に影 響を与え,その後どのような対処方略を選択するのかを 自己愛タイプ別に検討することにする。 その際,相対的自己評価および自己概念の明確性につ いては,人によって自我脅威への影響が異なる可能性が あった。本稿では,場面によって個人の自己概念(自己 評価)は異なる(榎本,2002)ことから職場での対人関 係を想定し,なかでも我が国組織では部下の育成が上 司の役割として一般的に求められている(毛呂・松井, 2009)ことから,上司から否定された経験により自分自 身の評価と上司からの評価との間にズレが生じているこ とを想定した。また,自我脅威はネガティブな評価を受 けた場合に必ず認識されるという性質のものではなく, 重要な自己の側面に対するネガティブな評価に導かれる ものであり,脅威を感じるか否かには個人差があるとい う指摘(中山,2008)もある。これらのことから,相対 的自己評価が自我脅威に有意な影響を及ぼさない可能性 も考えられたため相対的自己評価を省いたモデルも考慮 する。さらに,自己概念の明確性が高いゆえに他者評価 に影響を受けない人が存在する一方で,自己概念が明確 ゆえに受容と拒絶の判断基準が明確であることが推測さ れ(源氏田,2008),他者から否定されると自我脅威を 高める人がいる可能性が考えられた。そのため,自己概 念の明確性が自我脅威に有意な影響を及ぼしていない可 能性もあり,自己概念の明確性を省いたモデルおよび相

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対的自己評価と自己概念の明確性の両変数を省いたモデ ルも考慮する。 その上で,まず分析1 において,これらのモデルを検 証し,最も適合度の高いモデルを採用し,続いて分析2 では,採用されたモデルにしたがって,自己愛タイプ別 に労働者の自我脅威の知覚がどのような対処方略に結び つくのかを検討する。 2.方法 調査対象者 我が国の企業や団体に勤務する労働者を対象とした。 2014 年 8 月にインターネット調査会社 A 社にリサーチ・ モニターとして登録している上記対象者に対し調査への 協力依頼を実施し,協力に同意した714 名がウェブサイ ト上でアンケートに回答した。回答者の平均年齢は42 歳 (M=42.34 歳,SD=13.22)で,性別の構成は男性 325 名, 女性389 名である。 調査票の構成 調査では,以下の自由記述と尺度を用いた。 否定された経験(1 項目):1 年以内に上司から否定さ れた経験を自由に記述してもらった。 自己愛(9 項目):自己愛人格目録短縮版(Narcissistic Personality Inventory-Short version;以下 NPI-S)(小塩, 1998)全 30 項目中「自己主張性」「注目・賞賛欲求」「優 越感・有能感」の各下位尺度を構成する項目のうちから 因子負荷量が高い3 項目(項目例:私は,自己主張が強 いほうだと思う)を,「あてはまる」から「あてはまら ない」の5 件法で回答してもらった。得点が高いほど, 自己愛が強いことを表している。 相対的自己評価(22 項目):自分自身の評価の合計得 点から上司からの評価の合計得点を減算した値を相対的 自己評価の指標とした。得点が高いほど,相対的自己評 価が高いことを表している。「あてはまる」から「あて はまらない」の5 件法で回答してもらった。 自分自身の評価(11 項目): 自己認知(6 項目):自己認知の諸側面尺度(山本・ 松井・山成,1982)全 32 項目中,「社交」「まじめ さ」「知性」の各下位尺度を構成する項目のうちか ら因子負荷量が高い2 項目(項目例:社交能力に 自信がある)を抽出した。 自尊感情(5 項目):自尊感情尺度の邦訳版(山本・ 松井・山成,1982)のうち因子負荷量が高い 5 項 目(項目例:少なくとも人並みには,価値のある 人間である)を抽出した。 上司からの評価(11 項目):上記の自分自身の評価 と同じ項目について,各項目の語尾を「~と思わ れている」にワーディングし直したもの(項目例: 社交能力に自信があると思われている)を上司か らの評価とした。その際,「あなたの職場の上司 を思い浮かべてください。」と提示した上で,回 答してもらった。 自己概念の明確性(8 項目):邦訳版自己概念の明確性 尺度(徳永・堀内,2012)(項目例:私は自分の性格のい ろいろな側面の間に矛盾を感じることはめったにない) を,「あてはまる」から「あてはまらない」の5 件法で 回答してもらった。得点が高いほど,自己概念の明確性 が高いことを表している。

自我脅威(8 項目):Heatherton and Polivy(1991)の 状態自尊心尺度(State Self-Esteem Scale)全 20 項目中 「performance」「social」の各因子から田端・池上(2011) により邦訳された8 項目(項目例:自分は何も理解でき ていないような気がする)を使用した。状態自尊心尺度 は,現時点の自己評価を測定する尺度であり(阿部・今 野,2007),自我脅威を測定する尺度として,先行研究 においても用いられている(例えば,田端・池上,2011; 渡辺・唐沢,2012)。本研究においても先行研究にならい, 測定時の感情状態について限定的に測定するために「こ ちらの質問は,あなたが『いま』この瞬間に考えている ことを測るためのものです。普段ではなく『いま』の自 分が考えていることとして,近いものをそれぞれひとつ ずつお選びください。」と提示し,「あてはまる」から「あ てはまらない」の5 件法で回答してもらった。分析には 各項目の合計得点を用いた。得点が高いほど自我脅威を 知覚していることを表している。 対人恐怖心性(18 項目):対人恐怖心性尺度(堀井・ 小川,1997)全 30 項目中「自分や他人が気になる悩み」 「集団に溶け込めない悩み」「社会的場面で当惑する悩み」 「目が気になる悩み」「自分が統制できない悩み」「生きる ことに疲れている悩み」の各下位尺度を構成する項目の うちから因子負荷量が高い3 項目(項目例:他人が自分 をどのように思っているのかとても気になる)を,「非常 にあてはまる」から「全然あてはまらない」の7 件法で 回答してもらった。得点が高いほど対人恐怖心性が強い ことを表している。 組織機能阻害行動(10 項目):組織機能阻害行動尺度 (仙波・原口,2014)を用いた。この測定尺度は 10 項目 (項目例:職場で,同僚と口論になったことがある)から なり「攻撃的な自己主張」「他者への批判」「反抗的態度」 の3 つの下位尺度から構成されている。本調査では,職

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場での様子を振り返って該当する行為を行っていたかど うかについて「非常にあてはまる」から「全くあてはま らない」の5 件法で回答してもらった。得点が高いほど 組織機能阻害行動をとることを表している。 自我脅威の知覚経験による分析対象者の選定 1 年以内に上司から否定された経験を自由記述してもら い,経験が有った人を脅威経験群とし,無かった人を脅 威未経験群とした。その結果,脅威経験群361 名,脅威未 経験群353 名に分けることができた。自我脅威の経験によ る分類の確認を行うため,脅威経験群と脅威未経験群の 状態自尊心尺度8 項目の合計得点の平均値をt 検定で分析 した。その結果,脅威経験群(M=23.86;SD=6.186)は, 脅威未経験群(M=22.95;SD=5.721)よりも状態自尊心 尺度得点が高い傾向が見られた(t(712)=2.033, p<.05)。 これは,脅威経験群が自我脅威を強く知覚していること を表しているので,自我脅威の経験による分類の効果は ある程度認められたと解釈できた。 3.分析 1 自我脅威が対処方略に結びつくモデルの分析 分析方法 本研究で第一に明らかにしようとしているのは,どの ような要因が労働者の自我脅威の知覚に影響を与え,そ の知覚がどのような対処方略に結びつくのかである。そ こで,相対的自己評価,自己概念の明確性を独立変数, 自我脅威を媒介変数,対人恐怖心性,組織機能阻害行動 を従属変数とし,共分散構造分析を用いてモデルを検証 することにした。まず,自己本位性脅威モデルに基づい て相対的自己評価および自己概念の明確性が自我脅威に 影響を及ぼし,自我脅威が対人恐怖心性および組織機能 阻害行動へ影響を及ぼすことを仮定した基本モデルを設 定し(図1),脅威経験群を対象に共分散構造分析を用 いてモデルの検証を行った。 基本モデルを改良し新たに設定した3 つのモデル(修 正モデル1 ~ 3)は以下の通りである。 修正モデル1:自己概念の明確性が自我脅威に影響を 及ぼし,自我脅威が対人恐怖心性および組織機能阻害行 動へ影響を及ぼすことを仮定したモデルである(図2)。 修正モデル2:相対的自己評価が自我脅威に影響を及 ぼし,自我脅威が対人恐怖心性および組織機能阻害行動 へ影響を及ぼすことを仮定したモデルである(図3)。 修正モデル3:自我脅威が対人恐怖心性および組織機 能阻害行動へ影響を及ぼすことを仮定したモデルである (図4)。 基本モデル,修正モデル1,修正モデル 2 では,自我 脅威,対人恐怖心性,組織機能阻害行動に,修正モデル 3 では,対人恐怖心性,組織機能阻害行動にそれぞれ誤 差変数をつけた。誤差変数についてはパス係数を1 に固 定した。

モ デ ル 適 合 度 判 定 は,GFI(Good Fit Index),AGFI (Adjust Good Fit Index),CFI(Comparative Fit Index),

RMSEA(Root Means Square Error of Approximation)を用 いた。また,モデル採択基準としては,複数モデルの比 較に有効な基準であるAIC(Akaike’s Information Criterion)

図1 基本モデル

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とBCC(Browne-Cudeck Criterion)を用いた。AIC と BCC は複数モデルを比較する場合,より小さい値を示すモデ ルの適合度が高いと判断される(豊田,1992)。 結果 表1 において投入された基本統計量(平均,標準偏差, a 係数)および相関係数を示す。そして,表 2 において 基本モデルおよび修正モデルの各適合度を示す。 各観測変数の記述統計量を求め,天井効果および床効 果がないことを確認し,主因子法,プロマックス回転を 用いた因子分析を行った。その結果,調査票を構成する すべての尺度において,既存尺度と同じ因子構造が確認 された。また,a 係数を求めたところ,十分な内的一貫性 が示された(表1)。AIC および BCC の 2 つの基準で 4 つ のモデルを比較検討したところ,修正モデル3 が最も低い 値を示した(AIC=35.74,BCC=37.31)。また,基本モデ ルでは適合度が高くなかったのに対し(Browne & Cudeck, 1993; GFI=.89, AGFI=.74, CFI=.81, RMSEA=.11),修正 モデル3 では,おおむね高かった(GFI=.99, AGFI=.91, CFI=.99, RMSEA=.06)(表 2)。そこで,本研究では修 正モデル3 を採用することにした。 図3 相対的自己評価が自我脅威に影響を及ぼすモデル(修正モデル 2) 図4 自我脅威が対処方略に影響を及ぼすモデル(修正 モデル3) 表1 分析に用いた変数の平均,標準偏差およびa 係数と変数間の相関(N=361) 変数 M SD a 1 2 3 4 5 6 1 組織機能阻害行動 2.79 .87 .89 ― 2 対人恐怖心性 3.57 1.16 .94 .19** ― 3 相対的自己評価 –0.08 .44 .91 –.09 –.08 ― 4 自己概念の明確性 3.09 .66 .70 –.28*** –.54*** .14* ― 5 自我脅威 2.23 .77 .79 .03 .48*** –.13* –.51*** ― 6 自己愛 2.86 .77 .85 .24*** –.28*** .12 .11 –.20** ― ***p<.001, **p<.01, *p<.05 表2 各モデルの適合指標

GFI AGFI CFI RMSEA AIC BCC 基本モデル .89 .74 .81 .11 127.63 131.99 修正モデル1 .91 .69 .86 .14 91.97 94.76 修正モデル2 .96 .88 .95 .07 60.79 63.58 修正モデル3 .99 .91 .99 .06 35.74 37.31

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4.分析 2 自己愛タイプ別に見た対処方略の分析 仮説の設定 分析1 で採用されたモデルにしたがって,自己愛タイ プ別に労働者の自我脅威の知覚がどのような対処方略に 結びつくのかを検討するために,以下の6 つの仮説を設 定した。それぞれの仮説の背景にあるロジックを順に説 明する。 仮説1 自己主張性タイプにおいて,自我脅威は対人 恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼす。 仮説2 自己主張性タイプにおいて,自我脅威は組織 機能阻害行動へ有意な正の影響を及ぼす。 仮説3 注目・賞賛欲求タイプにおいて,自我脅威か ら対人恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼす。 仮説4 注目・賞賛欲求タイプにおいて,自我脅威か ら組織機能阻害行動へ有意な正の影響を及 ぼす。 仮説5 優越感・有能感タイプにおいて,自我脅威か ら対人恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼす。 仮説6 優越感・有能感タイプにおいて,自我脅威か ら組織機能阻害行動へ有意な影響を及ぼさ ない。 仙波(2016)は,半構造化面接で得た逐語データに自 己本位性脅威モデルを適用し,自我脅威を知覚した労働 者の行動選択プロセスを自己愛タイプ別に検討した。仙 波(2016)では,小塩(2006)にならい NPI-S の下位尺 度得点により,被面接者を,他者よりも優れているといっ た強い自己肯定感を意味する優越感・有能感タイプ,他 者から注目や賞賛をされたいという強い欲求を意味する 注目・賞賛欲求タイプ,自分の考えを他者に主張すると いう,やや自己中心的な行動を意味する自己主張性タイ プの3 つの自己愛タイプに分類し,行動選択のプロセス を検討した。その結果,自己愛タイプによって行動選択 に違いがあることがわかった。このことから自己愛タイ プによって対処方略に違いがあることが予測されたため, 本研究において量的アプローチによって労働者を自己愛 タイプに分類して自我脅威がどのような対処方略に結び つくのかを検討することにした。 仙波(2016)では,すべての自己愛タイプにおいて自 我脅威を知覚した後,対人関係からの撤退を選択する傾 向が示された。これは,自分を否定した上司の評価を受 け入れ,自己評価が低下した結果,自己に対する否定的 感情を抱くようになり,対人恐怖心性を強めたものと推 測される。したがって,すべての自己愛タイプにおいて 自我脅威は対人恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼすこと が予測された(仮説1,仮説 3,仮説 5)。 田中(2008)では,組織における反社会的行動の規定 要因を階層的重回帰分析によって検討した。その結果, 自己愛的傾向(自己主張性)が,「言語的暴力」「言語的 嫌がらせ」に有意な正の影響を及ぼしていた。また,日 比野・湯川・小玉・吉田(2005)では,個人内要因,感 情,認知,抑制要因が怒り表出行動にどのように影響し ているかを検討した結果,自己主張性が終息化の認知を 介して攻撃行動や物への転嫁を促進していた。これにつ いて日比野ら(2005)は,自分なりの理由をつけて納得 する強引な終息化が,適切な怒りの経験の沈静化をもた らさず,結果的に攻撃行動や物への転嫁といった怒り表 出行動を促進すると考察している。これらのことから, 自己主張性が高い人は組織機能阻害行動を選択しやすい ことが示唆される。さらに,仙波(2016)では,このタ イプは,自我脅威を知覚し,自己評価を維持するために 脅威の出所である上司に対して否定的感情を抱いた結果, 組織機能阻害行動を選択していた。これは,調和的な対 人関係を必要としない自己主張性タイプ(小塩,2006) が,自己評価を脅かす上司を攻撃することにより肯定的 な自己評価の維持を可能にする対処方略を選択した結果 だと考えられた。そのため,自己主張性タイプにおいて, 自我脅威は組織機能阻害行動へ有意な正の影響を及ぼす ことが予測された(仮説2)。 次に,日比野ら(2005)では,注目・賞賛欲求が,怒 り感情を介して,攻撃行動を促進していた。また仙波 (2016)においても,注目・賞賛欲求タイプは自我脅威 を知覚した後に上司からの否定的評価を受け入れられ ず,組織機能阻害行動を選択するケースがいくつか報告 されている。このタイプにおいては自己評価が他者評価 に強く影響を受けることから(小塩,2004;小塩,2006), 否定的な評価を受けると自己評価が不安定になり,その 不安定さを打ち消すために組織機能阻害行動を選択する と推測される。したがって,自我脅威を知覚すると組織 機能阻害行動へ有意な正の影響を及ぼすと考えられる (仮説4)。 最後に,優越感・有能感は,他者よりも優れているとい う強い自己肯定感を意味している(小塩,2006)。Brown and Smart(1991)は,自己評価の高い個人は,知的能力 の自己評価が脅威にさらされたときに知的能力とは異な る優しさや思いやりなどの側面で自己評価を高め,向社 会的行動をとる傾向にあることを報告している。また, 相良・相良(2006)は,優越感・有能感と攻撃性は有意 な関連はあるが,相関係数は非常に小さく(r=.10),大 学生までの間に加齢とともに優越感・有能感が攻撃性と

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結びつかなくなることを示唆している。仙波(2016)に おいても,自我脅威状況において組織機能阻害行動を選 択した回答者は確認されなかった。強い自己肯定感を持 つこのタイプは,他者評価の影響をあまり受けないため 自我脅威を知覚しても防衛的な対処方略を選択する必要 がなかったと考えられる。これらのことから優越感・有 能感タイプにおいて,自我脅威は組織機能阻害行動へ有 意な影響を及ぼさないことが予測された(仮説6)。 分析方法 労働者を自己愛タイプ別に分類した上で,回答者およ び各自己愛タイプにおいて共分散構造分析を用いてモデ ルの検証を行った。その結果,十分な適合度が得られた ならば,労働者の自我脅威が対人恐怖心性,組織機能阻 害行動へ及ぼす影響を自己愛タイプ別に検討するため に,対人恐怖心性,組織機能阻害行動を従属変数,自我 脅威を独立変数とし,3 つの自己愛タイプの母集団に対 して共分散構造分析を行い,仮説1 ~ 6 を検証すること にした。 結果 自己愛タイプの分類 分析を行う前に,労働者を自己 愛タイプ別に分類した。まず,「自己主張性」「注目・賞 賛欲求」「優越感・有能感」の項目平均値を標準化した 値と因子得点係数の積を合計することによって因子得点 を算出した。次に,因子得点の最も高いものを自己愛タ イプとして分類した。その結果,自己主張性タイプ148 名(男性70 名,女性 78 名,M=42.59 歳,SD=12.67), 注目・賞賛欲求タイプ100 名(男性 48 名,女性 52 名, M=39.50 歳,SD=13.82),優越感・有能感タイプ 113 名 (男性61 名,女性 52 名,M=44.08 歳,SD=12.98)に分 類された。 自己愛タイプ別に見た自我脅威が対処方略へ及ぼす影 響 労働者の自我脅威が対人恐怖心性,組織機能阻害行 動へ及ぼす影響を自己愛タイプ別に検討するために,共 分散構造分析を用いたモデルの検証を行った。その結果, 回答者全体および各自己愛タイプにおいておおむね十分 な適合度が得られた(表3)。 自我脅威から対人恐怖心性へのパスについては,すべ ての自己愛タイプにおいて有意な正の影響がそれぞれ 認められた(自己主張性タイプ;b=.51,p<.001,注目・ 賞賛欲求タイプ;b=.59,p<.001,優越感・有能感タイ プ;b=.39,p<.001)。また,自我脅威から組織機能阻 害行動については,自己主張性タイプのみが有意な正の 影響を及ぼしており(b=.23,p<.05),注目・賞賛欲求 タイプにおいては,有意な影響を及ぼしていなかった。 また,図5 ~ 7 のモデルにおいて,自我脅威から対処 方略へのパスについて,パス係数の差異を標準正規分布 に変換した時の値を求めた。その結果,自我脅威から組 織機能阻害行動へのパスについて,自己主張性タイプと 他の自己愛タイプとの間に5% 水準の有意差が確認され た(表4)。 5.考察 本研究の目的は,どのような要因が労働者の自我脅威 の知覚に影響を及ぼし,その後どのような対処方略に結 びつくのかを自己愛タイプ別に明らかにすることであっ た。この目的を達成するために,分析1 では,どのよう な要因が労働者の自我脅威の知覚に影響を与え,その知 覚がどのような対処方略に結びつくのかを検討するため 表3 各自己愛タイプにおけるモデルの適合指標 GFI AGFI CFI RMSEA 回答者全体 .99 .91 .99 .06 自己主張性タイプ .97 .82 .95 .08 注目・賞賛欲求タイプ 1.00 .97 1.00 .00 優越感・有能感タイプ 1.00 .98 1.00 .00 図5 自己主張性タイプにおける自我脅威が対処方略に及ぼす影響 Note.実線は係数が有意であることを示している。 ***p<.001, *p<.05

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に複数のモデルを設定し,検証した。その結果,自我脅 威が対人恐怖心性および組織機能阻害行動へ影響を及ぼ すことを仮定したモデルが採用された。次に,分析2 で は分析1 で採用されたモデルに基づいて,自己愛タイプ 別に自我脅威が対人恐怖心性および組織機能阻害行動へ 及ぼす影響について共分散構造分析を用いて検証を行っ た。その結果,全自己愛タイプにおいて,自我脅威の知 覚は労働者の対人恐怖心性を強め,自己主張性タイプに おいて,組織機能阻害行動を選択する可能性が示唆さ れた。 以上の結果について,考察する。まず分析1 について, 自己概念の明確性が自我脅威に影響を及ぼすことを仮定 したモデルは採用されなかった。自己概念の明確性が高 い人は他者からの評価にあまり影響されないため,自我 脅威が低いと考えられる。しかしその一方で,判断基準 も明確で,他者から提供された行動に応じて,受容と拒 絶の認知を明白に変えやすい(源氏田,2008)ことから, 上司から否定されると,拒絶されたと即断し自我脅威を 高める可能性も考えられた。つまり,自己概念の明確性 が高い人は,自我脅威が高いことも低いこともあるの で,自己概念の明確性は自我脅威に有意な影響を及ぼさ なかったと考えられる。また,相対的自己評価が自我脅 威に影響を及ぼすことを仮定したモデルでは,相対的自 己評価が自我脅威に影響を及ぼしていることが推測され 図6 注目・賞賛欲求タイプにおける自我脅威が対処方略に及ぼす影響 Note.実線は係数が有意,点線は非有意であることを示している。 ***p<.001 図7 優越感・有能感タイプにおける自我脅威が対処方略に及ぼす影響 ***p<.001 表4 自己愛タイプ別のパス係数の一対比較 1 2 3 4 5 6 1 自己主張性タイプ1 ― 2 自己主張性タイプ2 3.965 ― 3 注目・賞賛欲求タイプ1 –0.052 4.696 ― 4 注目・賞賛欲求タイプ2 –5.278 –2.196 6.234 ― 5 優越感・有能感タイプ1 –0.051 –3.244 –0.099 –4.322 ― 6 優越感・有能感タイプ2 5.199 2.198 6.036 0.212 4.319 ― Note.数値は,2 つのパス係数の差異を標準正規分布に変換した時の値 各自己愛タイプ1 は自我脅威から対人恐怖心性,各自己愛タイプ 2 は自我脅威から組織機能阻害行 動へのパスを示す。

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たが,本稿では自我脅威が対処方略へ影響を及ぼすモデ ルがより適したモデルであると判断されたため,採用さ れなかった。 なお,本研究では,相対的自己評価と自我脅威との間 に負の相関が見られたが,これは相対的自己評価が低い ほど,自我脅威の知覚が高いことを意味している。これ は,自分自身の評価が上司からの評価よりも上回ってい る場合,相対的自己評価が高くなり,自我脅威の知覚も 強くなるという事前の想定と逆の結果であった。これを 解釈するに,相対的自己評価が低い,すなわち自分自身 の評価が上司からの評価を下回っている場合において も,上司の期待に応えられない等の理由で自我脅威を知 覚することが推測される。翻ってみると,相対的自己評 価は自分自身の評価と上司からの評価のズレであり,正 負を持たない概念ととらえるべきであったのかもしれ ない。 分析2 では,分析 1 で採用されたモデルに基づいて, 自我脅威が対処方略へ及ぼす影響について3 つの自己愛 タイプの母集団に対して共分散構造分析を用いて検証を 行った。その結果,自己主張性タイプにおいて,自我脅 威は対人恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼしていた。し たがって,仮説1 は支持された。このタイプは誇大な自 己評価を有しているために,自我脅威を知覚しやすく, 通常は上司からの評価を受け入れ難いが,その上司が組 織の上層に位置する場合は,自分に否定的な評価であっ ても組織の自分に対する期待と考え受け入れる可能性が ある。そして,上司からの評価を受け入れた結果,対人 恐怖心性を強めたと考えられる。また,自我脅威は組 織機能阻害行動へ有意な正の影響を及ぼしており,仙波 (2016)を支持する結果となった。したがって,仮説 2 は支持された。このタイプは,上司からの否定的な評価 を受け入れられず,自我脅威にさらされ不安定になった 自己評価を打ち消そうとし,組織機能阻害行動を選択し たと考えられる。 次に,注目・賞賛欲求タイプにおいて,自我脅威は対 人恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼしていた。したがっ て,仮説3 は支持された。このタイプは,他者からの評価 に自己評価が規定されるため(小塩,2004;小塩,2006), 自我脅威を知覚すると,自分自身に対して否定的な感情 を持ち,その結果対人恐怖心性を強めたと考えられる。 一方で,自我脅威は組織機能阻害行動へ有意な影響を及 ぼしていなかった。したがって,仮説4 は支持されなかっ た。組織機能阻害行動を選択することは他者からの評価 を低下させる危険性を孕んでいる。例えば,怒りの表出 を相手に不当とみなされてしまうと否定的な対人関係が 生じる(阿部,2011)ため,それゆえ自我脅威を知覚し ても組織機能阻害行動に影響を及ぼさなかった可能性が 考えられる。また,注目・賞賛欲求の高い人は,怒りを 感じやすいにもかかわらず,怒りの表出を不当だと評価 するため,怒りを表出しない可能性を示唆する先行研究 (阿部・高木,2006)もあり,仙波(2016)における自 我脅威を知覚した注目・賞賛欲求タイプが組織機能阻害 行動を選択したケースについても,それらは行動ではな く態度として表出された可能性が考えられるだろう。 最後に,優越感・有能感タイプにおいて,自我脅威は 対人恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼしていた。した がって,仮説5 は支持された。強い自己肯定感を持つ(小 塩,2006)このタイプは,上司から否定的な評価を受け た場合,自分自身でその評価について考え,上司の評価 が正しいと判断すると自らの能力への自信を喪失し,そ の結果対人恐怖心性を強めたと考えられる。また,自我 脅威は組織機能阻害行動に有意な影響を及ぼさず,した がって仮説6 も支持された。自己評価が高く,他者から の評価にあまり影響を受けないため,自我脅威を知覚し ても防衛的な対処方略を選択する必要がなく,組織機能 阻害行動へ影響を及ぼさなかったと推測される。 先行研究では,質的研究によって労働者の自己愛タイ プによる自我脅威状況での行動選択の相違が示唆されて いた。しかしながら,定量的に検討されていなかったた めに一般化するまでに至っていなかった。本研究におい て,自己愛タイプによる自我脅威状況での対処方略の相 違を量的アプローチによって示したことは学術的な意義 があるだろう。またその中で,自己本位性脅威モデルに 基づくモデルよりも適したモデルを提示したことは重要 である。本稿で示されたモデルは,障害レベルの自己愛 と一般の自己愛傾向を示す労働者間での比較をも可能に する。今後はこのモデルを用い,それぞれの個人特性に よる自我脅威の知覚への対処方略の相違を知ることに よって,組織の中でより個人に即したサポートを検討す ることが可能になると考えられる。 さらに,自己愛や対人恐怖心性の研究領域では,その 多くが思春期,青年期を対象とした研究であり,本稿に おいて,一般的な労働者を対象に自己愛概念を用いて自 我脅威が対人恐怖心性へ有意な正の影響を及ぼしていた ことを示した点も有意義である。今後は両研究領域にお いて労働者を対象にした研究の蓄積が望まれる。くわえ て,組織機能阻害行動の研究では,これまで規定要因と して自己愛が重要な要因である(田中,2008)ことは突 き止められていたが,自己愛の強さが問題とされていた ため,以降発展的な議論はなされていない。本稿で一般

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の労働者対象に自己愛因子の強さによって自己愛タイプ に分類し検討した結果,自己主張性タイプのみで自我脅 威から組織機能阻害行動へ有意な正の影響が認められた ことは,この研究領域において,新たな研究の切り口を 提供していると考えられる。 また経営実務の側面では,組織において労働者の自我 脅威の知覚程度を軽減する,もしくは知覚したとしても それを緩衝できれば,労働者の対人恐怖心性の軽減が期 待できるだろう。特に,自己主張性タイプにおいては, 自我脅威の知覚は組織機能阻害行動を選択する可能性を も孕んでおり,早期の介入が必要だろう。今後は,自我 脅威が対処方略へ及ぼす影響について,自己愛タイプに 応じた有効なサポートを検討することが望まれる。 最後に,本研究の限界と課題を3 点示しておく。まず, 1 点目は,分析精度の問題である。本研究では実務的観 点から自己愛を因子得点により3 つのタイプに分けて分 析した。しかし,このような分類では他因子とのわずか な得点の差で他のタイプに分類されてしまい,分析の精 度を損なう可能性がある。(例えば,自己主張性得点が x 点,注目・賞賛欲求得点 x 点,優越感・有能感得点が x + 1 点の場合,優越感・有能感タイプに,自己主張性得 点がx + 1 点で,他の 2 因子得点が共に x 点である場合, 自己主張性タイプに分類される。)この問題に対処する ためには,さらに分析精度を高めることが重要である。 そこで,自己愛タイプを,NPI-S の 3 因子を合計点の高 低で7 タイプ(「自己主張性高群」「注目・賞賛欲求高群」 「優越感・有能感高群」「自己主張性,注目・賞賛欲求高 群」「注目・賞賛欲求,優越感・有能感高群」「自己主張 性,優越感・有能感高群」「自己主張性,注目・賞賛欲求, 優越感・有能感高群」)に分け,NPI-S の因子得点の高群 を分析対象とすることで,分析精度を高めることが求め られる。 2 点目は,同僚や部下の評価に対する影響である。本 稿では,上司からの評価のみに注目して相対的自己評価 を計測した。しかしながら,組織において評価の授受は 上司との間だけに存在するものではない。大野(2005) は,日本的経営において,互いに協力し合うことは,仲 間に受け入れられないことを恐れての行動であり,互い に牽制しあい,監視しあう側面につながっていると論じ, 労働者は上司のまなざしよりも,日常的に作業をともに する仲間や同僚の目を常に意識していると述べている。 このことから我が国組織における労働者は,仲間や同僚 による評価により影響を受けやすい可能性が考えられ る。仲間や同僚による評価とのズレで分析すると自己本 位性脅威モデルに近いモデルが採用された可能性があ る。今後は上司だけでなく,同僚や部下との評価のズレ も考慮して検討することが望まれる。 3 点目は,自我脅威の質の問題である。我が国組織で は一般に部下を育成することが上司の役割として求めら れていることから(毛呂・松井,2009),本稿では上司 から否定された経験に基づいた自我脅威を想起するとい う調査手法を用いた。しかしながら,上司から否定され た経験には,課題達成に関する能力次元への脅威や上司 との良好な関係維持に関する社会性次元への脅威があり (Tafarodi & Milne, 2002; Wojciszke, 2005),本稿ではこれ らの脅威の原因となった刺激を統制できていない。イ メージ場面提示による質問紙調査を行うなど,脅威の原 因となる刺激を統制することが課題として残された。 引用文献 阿部美帆・今野裕之(2007).状態自尊感情尺度の開発  パーソナリティ研究,16, 36–46. 阿部晋吾(2011).第 11 章 自己愛と攻撃・対人葛藤 小 塩真司・川崎直樹(編)自己愛の心理学 概念・測定・ パーソナリティ・対人関係 金子書房 pp. 167–183. 阿部晋吾・高木 修(2006).自己愛傾向が怒り表出の 正当性評価に及ぼす影響 心理学研究,77, 170–176.

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validation of a scale for measuring state self-esteem.

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Effects of workers’ perceptions of threatened egotism on coping strategies in

various types of narcissism

Ryoichi Semba (Hiroshima University)

The objective of this study is to clarify the factors affecting workers’ perceptions of threatened egotism, and the relationships between such perceptions and coping strategies in various types of narcissism. In analysis 1, several models based on the threatened egotism model were used to examine the factors affecting workers’ perceptions of threatened egotism, and the relationships between such perceptions and coping strategies. Then, these models were verified via covariance structure analysis using data gathered in Japan. As a result, it was found that models including relative self-evaluation and/or self-concept clarity exhibited lower goodness of fit than a model including none of them, and the model in which threatened egotism affected anthrophobic tendency and organizational dysfunctional behavior was adopted. Next, in analysis 2 the model was used to examine the relationships between threatened egotism and coping strategies in three types of narcissism (the self-assertion type, need for attention and praise type, and sense of superiority and competence type) via multiple group covariance structure analysis. The results showed that threatened egotism positively affected anthrophobic tendency in all types of narcissism and organizational dysfunctional behavior in the self-assertion type.

図 1 基本モデル

参照

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