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先進的事例にみる新たな小学校学級教室の計画課題 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)先進的事例にみる新たな小学校学級教室の計画課題. 岩本 結 1. 研究の背景と目的 小学校における学級教室は、オープンプラン型学校 建築が普及した現在においても、一斉学習の場として 独立して確保される基本的空間である。しかしその空 間は依然として固定化・定型化の流れにある。 わが国では明治初期の近代教育による一斉教授法の 導入に伴い、机や椅子、黒板等の今日にみられる学級 教室の設備が導入された。また、規模においては明治 中・後期に 4 間× 5 間の学級教室が一般化するが、戦 後も約 7m × 9m や約 8m × 8m に置き換えられて定型 化の流れは続き、1970 年代のオープンプラン型学校 建築の登場以降もなお依然として、定型化した学級教. 表 1. 調査概要 調査方法 資料調査①. 期間 2008.9. 調査対象 各建築系雑誌. 調査概要 先進的な小学校の平面プラン の収集 2008.10 資料調査② 各教育委員会または小学 抽出した小学校の学級教室の 校 詳細な平面プランの収集 アンケート調査 2008.11 ESを有する先進的小学校 学級教室の利用実態の把握 14校の学級担任 2008.11 実測調査 ESを有する先進的小学校 学級教室内の家具の把握と平 -2008.12 4校 面図上への配置の記入 ヒアリング調査 2008.11 ESを有する先進的な小学 学級教室およびMSの利用実 -2008.12 校4校の学校長 態に関するヒアリング 資料調査③ 2008.12 施設費負担法施令注)の改 MSに関する制度の改正履歴 の把握 正に関する政令 注)「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行令」. 表 2. 資料調査①概要 書籍・雑誌名(出版社) 新建築(新建築社) 近代建築(近代建築社) 建築設計資料(建築資料研究社) 建築設計資料集成(丸善). 対象号 1970 年 1 月号 -2008 年 9 月号 1970 年 1 月号 -2008 年 9 月号 16、67、105 第 2 版、第 3 版. 学級型. 室の空間計画の流れからの脱却はない。. 事例数 92 校 68 校 計 184 14 校 校 10 校. 学年型. 学級教室に関する研究は青木・竹下らの研究注 1)が ある他に、柳澤ら 注 2)が教室の設え方について言及し. 整形. 部分整形. ている程度であり、学級教室に備えるべき機能の適切 な規模や配置、設備等はほとんど明らかになっていな. 不整形. 隣接. 独立. ※ CS:クラススペース , ES:学級教室内の活動スペース , MS:多目的スペース. 図 1. 活動スペースの分類 表 3. 活動スペース保有校内訳. い。さらに、学級教室内に設けられた多様な学習形態. ES・MS 保有校. に対応した空間の多くは、多目的スペース補助制度を. 全体. 活用せず、共用部の面積の一部を充てて計画されてお. -1983. り、さらなる法的な整備も必要とされる。一方、建築. 1984-1996. 家サイドより宇土市立宇土小学校(設計:小嶋一浩+. 1997-2000. 赤松佳珠子/ CAt)等にみられるように新たな学級教. 2001-. 学級型. 163 校. 43. 17 校. 4. 52 校. 13. 30 校. 9. 64 校. 17. 88.6% 51.5%. 94.5%. 100.0% 97.0%. 23.4% 12.1% 23.6% 30.0% 25.8%. 学年型 隣接 136. 73.9%. 12 41 23 60. 36.4% 74.5% 76.7% 90.9%. 独立 72. 39.1%. 6 21 16 29. 18.2% 38.2% 53.3% 43.9%. 該当なし. 合計. 21 校. 184 校. 16 校. 33 校. 3校. 55 校. 11.4% 48.5%. 0校 2校. 5.5% 0.0% 3.0%. 100.0% 100.0%. 100.0%. 30 校. 100.0%. 66 校. 100.0%. 室の提案がなされており、今後学級教室の新たな空間. ランを把握した。その上で、学級教室内に活動スペー. 計画の重要性はさらに高まることが予想される。. スを持つ 14 校に対してアンケート調査を行い(有効. そこで本研究では、先進的な小学校を対象に学級教. 回答数 84 学級、回収率 47.7%)、学級教室の利用実. 室の空間計画をその規模や配置、設備等の面から総括. 態を把握し、特に、特徴的な 4 校に対して実測調査及. した上で、特にその機能的側面に着目し、利用実態を. び学校長へのヒアリング調査を行った。. 比較・分析することで、固定化・定型化する学級教室. 3. 先進的な小学校における学級教室の計画動向. の空間計画に関する制度上の問題と今後の計画課題に. 多様な学習形態に対応した空間のうち、学級教室内. 関する知見を得ることを目的とする。. の活動スペース(以下 ES)を学級型、学年活動に対応. 2. 研究方法. する多目的スペース(以下 MS)を学年型とした(図 1)。. 本研究の調査概要を表 1 に示す。資料調査では、ま. さらに、学級型を拡張部の形状に応じて<整形>、<部. ず各建築系雑誌(表 2)より 1970 年以降の先進的な小. 分整形>、<不整形>に分け、学年型をクラススペー. 学校の平面プランを収集し、学級教室の計画動向を捉. スと MS の関係から<隣接>と<独立>に分けた。こ. えた。さらに、その中から全学年で学級教室を拡張し. の結果、1970 年以降の先進的な小学校を分析したと. ている 22 校を抽出し、教育委員会または小学校当局. ころ、学級型は全体の 23.4%を占めた(表 3)。. より提供された資料をもとに、教室内の詳細な平面プ. 次に、MS 補助制度の制定及び改定時期を基準に、. 35-1.

(2) 1970 年以降を(1)1983 年以前(2)1984 ∼ 1996 年. 全. 体 12. (3)1997 ∼ 2000 年(4)2001 年 以 降 に 分 け て 分 析. -1983. したところ、1983 年以前は 1)ES や MS を持たない小. 1984-1996. 学校が全体の 48.5%、次いで学年型(隣接)が 36.4%. 1997-2000. を 占 め て い る こ と が 明 ら か に な っ た( 表 3)。1984. 2001-. 3 3. 20. 47. 1. 7. 7 6. 50. 4. 3. 40. 学級型のみ. 12. 3. 2 N=66. 21. 60. 80. 学級型+学年型(隣接). N=55 N=30. 13. 23. 20. N=33. 6. 8. 1 4. N=184. 21. 16. 21. 1 2. 0. 11. 2. 21. 12. ∼ 1996 年には、学年型(隣接)が全体の 74.5%を占. 59. 100%. 学級型+学年型(独立). め、さらに、年代とともに 76.7%、90.9%と増加して. 学級型+学年型(隣接+独立). 学年型(隣接)のみ. いることから、2)MS 補助制度の制定後は学年型(隣. 学年型(独立)のみ. 該当なし. 図 2. 活動スペース保有校の年代別分析. 接)が積極的に設置されていることがわかる。また学 年型(独立)も 1984 年以降増加傾向にあり、特に、3) 1997 ∼ 2000 年には学年型(隣接+独立)が急増して いる(図 2)。複数タイプの併設は年々増加し、2001. 学年型(隣接+独立). 計 24 画 ク ラ 18 ス 数 12 ︾. Ag小. Kh小A. 基準面積の増加とともに、多様な学習空間の設置が可. 0. 能となっていることがわかる。一方、5)学級型の割. Hj小. Ks小 Ym小C. Kh小B. Ym小D. Ym小A. Mg小. St小. Kk小. 公立校 私立校. Md小 Sj小 It小D. 6. 年以降には過半数を占めていることから、4)MS 補助. Tr小. Om小A, B Ym小B. It小B. 50. It小A Ia小 It小E It小C. 60 63㎡ 70 74㎡ 80 90 100 110 (一般的な面積)(設置基準の上限) 《 ESを持つ学級教室の規模(㎡). 図 3. 活動スペースを持つ学級教室の規模. 合は年代にかかわらず 20 ∼ 30%で推移している。ま. 概ね一般的な規模(約 63㎡)で計画されている(図 3)。. た 2001 年以降は学級型のみに代わり、学級型と学年. これには、Ia 小のように 1)小規模の ES が一斉学習ス. 型(隣接)の併設が急増しているが、6)大半はオープ. ペースの付属的に計画されているものと、その一方で、. ンスペースを主な活動スペースとしている。. Sj 小のように想定学級規模が小さい学校において、2). 本研究の調査対象校のうち、1970 年以降最初に登. 一斉学習スペースを小さく設定することで、広い ES. 場する学級型は、部分整形で特定機能を持たない Hj. を確保しているものがみられる。また 12 学級以上の. 小(1970 年)であり、その後は部分整形で水道が設置. 学校では、設置基準の範囲を超えた規模での計画が顕. された Ks 小(1982 年)や不整形で固定机や水道が設. 著であり、特に、学校規模の増大に応じて学級教室の. 置された It 小(2004 年)等、特徴的な学級型がいくつ. 規模も増加している。これらは、3)学校規模の増大. かみられるが、大半は学年型(隣接)と教師コーナー. に伴い増加する共用部の面積や MS 補助基準面積の一. 等の学級型が併設されたものであった。. 部を充てて計画されたと考えられる。. 4. 活動スペースを持つ学級教室の規模と利用実態. 4-2. 特定機能を持つ学級教室の利用実態 アンケート調査を実施した学級教室を機能的側面、. 4-1. 活動スペースを持つ学級教室の規模 ES を持つ学級教室のうち、計画クラス数が 11 学級 以下の小規模校では、学級教室の規模はその設置基. 特に学級教室内の<教師コーナー>及び<固定机>、 <水道>に着目し、a ∼ f に分類した(表 4、図 4)。 <教師コーナー>の使われ方は、その配置や教師机. 準の範囲内(74㎡以下)で計画されており、学年に応. じて多様な学級教室の計画がなされている It 小を除き、 の有無に応じて変化する。Sj 小では 1)黒板前に教師 表 4. アンケート調査 対象プラン データ一覧 タイプ. 特 定 機 能 あ り. 教 師 コ ー ナ ー あ り. 教 師 コ ー ナ ー な し. 特定機能 なし. 固定設備. a. 固定机・水道 併設. b. 固定机 設置. c. 設備なし. d. 固定机 設置. e. 水道 設置. f. 設備なし. プラン名 It小 A It小 B Kh小 A It小 C It小 D It小 E Tr小 Sj小 Ym小 A Ym小 B Ym小 C Kh小 B Ia小 Ks小 Om小 A Om小 B Md小 Ag小 Hj小 Ym小 D Kk小 Mg小 St小. 竣工年 2004 2004 1999 2004 2004 2004 2006 1993 1998 1998 1998 2004 1998 1982 1992 1992 2003 2007 1970 1998 2001 2000 2002. 想定 学級規模. (人) 30 30 40 30 30 30 40 22 40 40 40 40 40 40 40 40 40 32 45 40 40 36 40. 教室 床面積. (㎡) 61.6 55.1 62.0 71.9 64.4 67.1 74.9 62.1 82.4 77.8 90.9 70.4 64.0 91.5 75.5 75.5 60.8 70.7 76.6 91.5 86.3 75.0 103.0. 教室面積(㎡) /児童(人) 2.05 1.84 1.55 2.40 2.15 2.24 1.87 2.82 2.06 1.94 2.27 1.76 1.60 2.29 1.89 1.89 1.52 2.21 1.70 2.29 2.16 2.08 2.57. 拡張部の形状. 床仕上げ. 固定机. 水道. ロッカー注). 靴箱 (玄関). 不整形 不整形 部分整形 不整形 部分整形 部分整形 部分整形 不整形 不整形 部分整形 部分整形 部分整形 部分整形 部分整形 部分整形 部分整形 部分整形 部分整形 部分整形 整形 整形 不整形 整形. フローリング+リノリウム フローリング+リノリウム 塩ビシート フローリング フローリング フローリング フローリング フローリング フローリング+畳 フローリング フローリング フローリング フローリング フローリング コルクタイル+畳 コルクタイル+畳 フローリング フローリング+カーペット PVCタイル フローリング フローリング フローリング フローリング. ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × ○ × × × × × × × × × ×. ○ ○ × × × × × × × × × × × ○ ○ ○ ○ ○ × × × × ×. ◎ ◎ ○ ◎ × × ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○. × × × × × × ○ × × × × × × × × × × × × × × × ○. 注 ) ○:設置あり , ◎:教室内の後方以外に設置 , ×:設置なし. 35-2.

(3) 机が配置され、教師コーナーは教材置き場となってい る。また、Ym 小 A・B・C では 2)教師コーナーと黒板 前の両方に教師机があり、授業中の学習指導は黒板前. 80. で行われ、放課後の事務作業は教師コーナーで行われ. 60. る等の使い分けがなされている。Tr 小では教師コー. 40. ナーのみに教師机が設置されているが、3)児童へ背. 20. を向けた配置が指導に不適切であるという意見が多く. 0. みられた。さらに、Kh 小 A では 4)教室後方に設置さ. ペースに包括されていた教師コーナーが分離したこと で、5)学習指導と事務作業という 2 つの機能が顕在化. 次に、特定機能を持つ a ∼ e を固定机のある a、b、d. N=22 2. 12. 4. N=37 2. 収納. N=22 2 1 1 2. 14. N=37 2 2 2. N=22 2 4 2 2. 10. 2. 6. 2. 4. 31. 16. 12. 15. 11. 5. 固定机 あり. 固定机 なし. 固定机 あり. 週に 2.3 回. 週に 1 回. 固定机 なし. 固定机 あり. 固定机 なし. 利用していない. 無回答. 図 5. 固定机の有無における各活動での利用頻度 0. 25.3. ES 固 定 机 あ り の 0 性 水 道 あ り 質 教師コーナーあり 1.3 3.3 ︾ 設 備 な し. し、使いこなしの中でそれぞれが適切な場所へ再配置 されていると考えられる。. 生活活動. N=37 2. 5. 毎日. れた教師コーナーで個別指導による取り出し学習等が 行われている。以上 1)∼ 4)より、従来は一斉学習ス. 学習活動. %. 100. 19.8 11.2 37.2 11.3. 特 定 機 能 な し 0. 34.4. 10. 20. 注)固定机と水道が併設されたESは 固定机あり に含む。. 40 100 30 《 学級教室に占めるESの割合(%). 図 6. 学級教室に占める活動スペースの割合. と、固定机のない c、e に分け、活動内容及び利用頻度. る場合には高い頻度で利用されるが、収納として占有. を比較・分析した(図 5)。これによると、<固定机>. されることで学習活動での利用が阻害されている。こ. は 1)一斉学習スペースで個別・グループ別指導での. れは生活活動においても同様であり、特に固定机を教. 制作や調べ学習、ドリル学習等を行う際に、材料や資. 師コーナーと兼用している Tr 小で顕著にみられた。. 料、解答等の置き場として利用されている。一方、固. <水道>は手洗いや掃除等の生活活動で頻繁に利用. 定机のない学級教室では、2)グループ別指導での模. されるため、1)学級教室内への設置は低学年に限ら. 造紙へのまとめ作業等の際に、一斉学習スペースと広. れることが多い。しかし、全学年の学級教室内に水道. い ES が同時に利用されており、ES が個人机では困難. が設置されている Md 小では、書写等の授業中の利用. な作業の代替スペースとして機能していることがわか. もみられることから、2)低学年のみならず全学年の. る。またどちらの学級教室でも、3)取り出し学習等. 学級教室内設備として検討されるべき課題である。ま. の個別指導は ES で行われており、一斉学習スペース. た、Ks 小では学級の独立性を重視する計画から、学. から分離した空間としても利用されている。次に学習. 級教室の 19.8%を占める ES が設けられ、その一部に. 活動での利用頻度は、4)固定机のある学級教室では. 水道が設置されている(図 6)。しかし現在では、3). 固定机のない学級教室と比較して「毎日」と「利用して. ES の大半を教師机や教材等が占め、水道を活用した. いない」という回答が多い。小学校における学級教室. ES の利用はされていない。. の利用方法は、学級担任の個性や学級運営の方針によ. また、固定設備のないcタイプでは<教師コーナー>. り多様であり、5)宿題の確認や丸付け等で利用され. が独立して確保されているため、1)その他の ES は主. aタイプ(固定机・水道 併設). It小 A It小 B cタイプ(設備なし). bタイプ(固定机 設置). Kh小 A. It小 C. It小 D. 一斉学習スペース. 固定机. 教師コーナー. 水道. その他. 観察台. 玄関. It小 E Tr小 dタイプ(固定机 設置). 畳. Sj小 Ym小 A eタイプ(水道 設置). Ym小 B. Ym小 C. Kh小 B. Ia小 fタイプ(特定機能なし). 黒板. 上足/内部出入口. 固定収納. 上足/外部出入口. 可動間仕切り. 下足/外部出入口. 注)プランはすべて竣工当時のもの。なお、方位が2つ表示され   ているものは、同じプランで配置が異なるもの。S=1:800. ベンチ. ベンチ. 畳. Ks小. Om小 A. 畳. Om小 B. Md小. Ag小. Hj小. Ym小 D. 図 4. アンケート調査 対象プラン一覧. 35-3. Kk小. Mg小. 玄関. St小.

(4) に児童用のスペースとなる。大半の ES には可動机が. ① Ym小 D. ② St小. 配置されているが、特に私立校である Sj 小は少人数学. プランタイプ:f(特定機能なし) 教 室 面 積:91.5㎡. プランタイプ:f(特定機能なし) 教 室 面 積:103.0㎡. 級のため、2)学級教室後方の ES で全員が同時に作業 できることから、グループ別指導でのまとめ作業や個 別指導での工作等で利用されている。一方、学級教室 側方に奥行き約 2m の ES を持つ Ym 小 B・C では、3) 教室全体が一体的に利用され、可動机は主に収納や展 示として利用されている。 4-3. 特定機能を持たない学級教室の利用実態 特定機能を持たない f タイプでは、1)ES の一部が. デン. 教師用スペースとして利用されることが多い(図 7)。. 収納棚 テレビ. ES の黒板側が教師用スペースとされている Ym 小 D で. 一方、St 小では 3)ES と一斉学習スペースとの境に教. 学 習 系. 師用スペースが設置され、空間分離がなされている。. 等が行われている。Ym 小 D 及び St 小ともに、5)学級 教室全体を一体的に利用することは稀であり、一斉学 習スペースと ES が異なる空間として機能しているこ とがわかる。これらの ES は学年のオープンスペース として設置されたが、通過動線として廊下が別に確保. 教師机 靴箱. 教卓 暖房器具. 教師用棚. 図 7. 特定機能を持たない学級教室の事例. し合い、個別指導での丸付け作業等が行われている。. プ別指導でのまとめ作業や個別指導での取り出し学習. 可動黒板 オルガン. 注)教室平面図はS=1:300. は、2)可動机でグループ別指導でのまとめ作業や話. ES には可動机や可動黒板が配置されており、4)グルー. 可動机 本棚. 個人机以外の広い作業スペースが必要 グループ活動や話し合いの場として. 給食の配膳の場として 生 活 系. 着替えの場として 生活指導・相談の場として 係活動などの自由活動の場として 児童の交流、遊び場として. 収 納 ・ 展 示 系 そ の 他. 1. 丸付けなどの個別指導の場として 0 0 0. 制作途中の作品の保管場所として. 近くに手洗い場が必要 その他. 2. 1. 0 0. 20. 特定機能あり(N=64) 特定機能なし(N=29). 1 1 5. 2. 6 11. 3. 1 1 1 1. 作品展示の場として. 教師の事務スペースとして. 2. 0. 収納が不足しているため. 15. 5. 8. 1 2. 3. されているため、6)学級教室間の可動間仕切りはほ. 図 8. 学級教室内の活動スペースの必要性. ぼ常時閉じられ、実態は学級専用空間となっている。. ES を持つ 14 校の機能的側面に着目し、2)教師机には. 5. 活動スペースを持つ学級教室の計画課題. 学習指導と事務作業という 2 つの機能があり、一斉学. 次に、特定機能の有無にかかわらず ES の規模に着. 習スペースでは学習指導、教師コーナーでは事務作業. 目すると、1)c タイプの Sj 小及び Ym 小 C と f タイプ. が行われる傾向にあること、3)固定机が収納として. の Ym 小 D 及び St 小は、ES が学級教室に占める割合が. 利用されることで、学習・生活活動での利用が阻害さ. 30%以上と高い(図 6)。このうち、Sj 小及び Ym 小 D、 れていることを明らかにした。また特定機能を持たな St 小では、他の学級教室に比べてより多様な活動が行. い学級教室では、4)教師用スペースが優先的に形成. われる傾向にあるが、一方、Ym 小 C では活動の展開. される傾向にあり、一斉学習スペースと ES は異なる. が少ないことから、2)使われ方には面積だけではな. 空間として機能していることが明らかになった。さら. く ES の配置が大きく関係することがわかる。. に ES を持つ学級教室の計画では、5)面積とともにそ. また ES に求められる機能は、3)個人机以外の広い. の配置も重要であり、特定機能の有無にかかわらず学. 作業スペースが最も多く、特に特定機能を持たない学. 級教室全体の機能配置を想定することが必要であるこ. 級教室ではその傾向が強い(図 8)。さらに収納及び教. とを明らかにした。. 師の事務スペースが次に多いことから、4)教師用の. 今後は、より詳細な利用実態の分析から学級教室の. スペースが優先的に形成されることがわかる。また. 適切な規模及び機能配置を捉え、新たな学級教室の空. MS とは異なり、5)特定機能のない ES では使いこなし. 間計画についての考察を行う。. により固定的な機能が設定されやすいことから、学級. 謝辞 調査にあたり各市町村の関係者の方々、並びに各小学校の先生方には多大なご協力 を戴きました。記して心より感謝いたします。  注釈 1)青木正夫 , 竹下輝和他:学級教室に関する建築計画的研究(第 1 ∼ 7 報), 日本建築 学会大会学術講演梗概集 , 1984 ∼ 1986 2)柳谷太紀 , 柳澤要他:学年・教科別にみた教室の家具配置・設え方に関する分析・ 考察 - ぐんま国際アカデミーの空間・場の使われ方に関する調査研究 その 5-, 日本建 築学会大会学術講演梗概集 , 2008. 教室全体の機能配置を想定することが必要である。 6. まとめ 本研究では、先進的な小学校を対象に 1)1970 年以 降の学級教室計画の変遷と傾向を明らかにした。次に. 35-4.

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