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一喘息児本人の主体的管理を中心に一 中村 朋子*・田中 智子**

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(1)

茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)213−232       213

喘息児の健康管理に関する研究 一喘息児本人の主体的管理を中心に一

中村 朋子*・田中 智子**

(1990年9月14日受理)

AInterview Survey of the Sel卜care of Athmatic Children

Tomoko NAKAMuRA and Tomoko TANAKA

(Received September 14,1990)

1 は じ め に

気管支喘息の罹患率は,昭和63年度「学校保健統計調査」によると小学校1.05%,中学校0.77%

でこれは年々増加の傾向を示している。特に小学校に関しては,3倍近い増え方である。学校で養 護教諭が経験した喘息児は昭和56年は44%,62年は67%と有意に増加している1)。また,近年では 思春期喘息の急増も見逃せない問題となってきている。以前は「喘息では死なない」といわれてき た疾患であるが,こういった増加に伴い,死亡患児の問題も重視されるようになってきた。喘息の 治療に関しては日常の健康管理が大切であり,喘息治療の3大基本方針は,①病院での治療(薬物 療法),②環境整備,食事療法,③精神・身体の鍛練療法にあるといわれている。しかし,実際の 健康管理の実態は薬を頼りにするものが多く,上記の事項を理解し,実行,継続していくには,家 族,学級担任,養護教諭など学校関係者,主治医など周りの人々のより一層の理解と,連携が必要 になってくると思われる。

飯倉は2)「気管支喘息は,現在,アレルギー疾患の1つとして位置づけられているものの,その 全てがアレルギーで説明されるわけではない。精神,心理,神経因子の強い関与のあることは周知 の通りである。小児の喘息は,それが活発な発育過程の中で起こる点が大きな問題である。したが って,喘息児の治療にあたっては全人的な立場,すなわち喘息児をwhole childとみて,治療にあた らねばならない。喘息児の家庭生活,学校生活など,子どもの生活のなかであらゆる機会が,すべ て治療の一部であることを忘れてはならない。」と述べている。従って,喘息児が小学生,中学生の 場合,病気を生活の中心に考える考え方には問題があるといえる。喘息は少数の重症例を除けば,

非発作時には,健常児とほとんど異なることがなく正常の日常生活が可能である。喘息児も通常は,

健常児と同様に一般の学校に通学することができるが,喘息をもっているために,学校生活に支障

*茨城大学教育学部教育保健学科学校保健研究室.

纏茨城大学教育学部教育保健学科.

(2)

214       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

をきたす場合もあり,これによって,生じる悩みも軽視できない問題である。

喘息児本人を対象とした調査では,早川3)や,杉本4)の文献があったがこれらは,学校生活に おける問題点についてであり,日常管理や発作時の処置についての調査はほとんど見当たらなかっ た。そこで,今回の調査ではこれらの文献等を参考に,喘息児の健康管理の実態として,環境整備

・鍛錬療法・薬の管理などの状況や学校生活における不安や悩みを調査した。さらに,これらの喘 息の管理は,周りの人々の協力はもちろん必要であるが喘息児本人の積極的に喘息に取り組む態 度が重要であるので,喘息の原因・誘因や発作時の処置について喘息児本人がどの程度理解してい るかを明かにし,健康管理の在り方を検討したい。

H 調査対象と方法

1)調査対象       表1 調査対象 水戸市内の小・中学校の喘息を持つ児童・生徒を対象とし

学年別人数

た。

予備調査として,水戸市内の小学校17校・中学校11校の養     校種 小学校 中学校 護i教諭あてに,調査依頼の文書と調査用紙を送り,後日,調   学年

n=59 n=52

査に協力できるかどうかを電話で聞いた。その結果,本調査    1年 12 21 では,小学校7校(59名)中学校8校(52)の計15校(111名)   2年 8 12 より協力が得られた。 (表1参照)      3年 4 19

4年

9

2)調査方法       5年 14 保健室において,小学校・低学年では調査者が面接しなが    6年 12 ら記入し,高学年以上は本人に記入させた。その後聞き取り

面接調査をおこなった。

なお,時間的都合などにより学校に訪問できなかった場合は,養護教諭に調査を依頼した。

調査内容

(1)喘息児の現状として,発症年齢,発作の起きやすい時間帯と時期,欠席状況,薬の使用状況,

通院状況。(2)日常管理の実態として,環境整備など日常生活で気をつけていること,食事療法,

鍛錬療法について。(3)喘息児の喘息に対する理解として,喘息の原因・誘因と,発作時の処置の 仕方について。㈲学校生活において,制限されていること,それによって生じる悩みや困難点に ついて。制限はないが喘息児をもっているために生ずる悩みや困難点について回答してもらった。

調査期間 平成元年10月中旬から11月中旬

皿 結果と考察

1.喘息児の現況

(3)

中村・田中:喘息児の健康管理に関する研究       215

喘息児の現況として,発症年齢,発作の起きやすい時間帯と時期,欠席状況,薬の使用状況,通 院状況を調査しまとめた。

1)発症年齢について

表2 発症年令 一般に小児の喘息は,0才から

4−6才が発症のピークで,6才 (〉内は%

以降は発病しにくい年齢層に入る      校種 小学校 中学校 合 計

といわれているが本調査では,   年令 n=40 n=39 n=79

表2のように「2−3才」(31.6%>       0〜1歳

ェ最も多く,「4〜5才」(21.5%),

5(12.5) 6(15.4)

11(13.9)

       2〜3歳「8〜12才」(17.7%〉,「0〜1才」

14(35.0) 11(28.2) 25(31.6)

・「6〜7才」(13.9%)の順であっ    4〜5歳

11(27.5)

6(15.4)

17(21.5)

た。これによると,8才以上が全    6〜7歳

6(15.0) 5(12.8)

11(13.9>

体の19.0%を占めており,中学生       8〜12歳

4(10.0>

10(25.6) 命14(17.7)

になってから発症する事例もみら

1(2。6) 1(1.3)

喘息は,6才までにその90%が 発病するといわれているが,この

年齢層は,浸出性体質,胸腺リンパ体質といわれる年齢で,副腎や,自律神経のパターンの変動期 ともいえ,体のバランスが不安定になりやすい。さらに,しつけ面からいうと,甘え・わがままな どの未熟な自我が強くなり,育児が難しく,しかも大切な時期にも入って,しつけのまずさが,小 児に大きな影響を与えやすい時期であるといわれている。従って,この時期に,喘息が発病しない ように育児も気をつけなければならないと考えられる。小児の喘息の経過については,早川5)は次 のように述べている。「こどもの喘息は15歳までに,%は発作が完全にみられなくなり(寛解),

%はまだ発作をみるものの,以前よりよほど軽くなり(軽快),残り%は相変わらずよくなってお らず(不変または悪化)およそ1〜2%のこどもが死亡するとみてよい。つまり,%はほぼよくな るが,残りは大人まで持ち越すということである。また,こどもの喘息治りやすい年齢がある。以 前は小学校に入る頃には治ると言われたが,よほど軽い子以外は無理で,いちばん治りやすいのは 12〜13歳の思春期にさしかかった頃である。反対にこの時期に,かえって発作が増えて悪化した場 合には治りにくいので注意しなければならない。」

一般に2年間発作が起きなければ治療したとしている医師が多いようであるが,実際には,2年 以上たってからも発作が起きるケースはしばしばみられ,中には,5,6年くらいずっと発作がな かったのに,宿泊学習で発作を起こしてあわててしまったという事例もあった6}。このように,喘 息が治癒したかどうかというのは,断定しにくく,症状が落ち着いていても治癒という表現でなく,

寛解という表現をもちいる医師もいる。いずれにしろ,再発傾向の強い疾患であるため,常に注意 する必要があると思われる。

2)発作の起きやすい時間帯と時期について      ,

発作の起きやすい時間帯としては,「夜寝てから」が59.7%で最も多く,次いで「明け方」41。8

%であった。発作が就寝後に最も多いという傾向は,気管支喘息の種々の調査でも認められてお

9

(4)

216       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

り,夜間に発作の多い理由としては,次ぎの諸説が挙げられている7)。①床面近くの室内の塵の最 も多い時間帯は,小児の夜の睡眠中である。②気管支拡張作用をもつエピネフリンの副腎髄質から の産出量が夜間は減る。③夜になると交感神

経の緊張が弱まり,肺活量は減少する。         %o

50        100

発作の起きやすい時期としては「9−11月」

      小学校

i46。3%)が最も多く,一般にいわれている    n_58

20.7       4L3       i:iiii 37.g iiiii

「9〜10月」と一致している。これは秋にな るとブタクサ等の花粉が多くなるだけでなく,

7−8月に輔したダ城9月になると増  宥靴 32.7       51       .16.3i      :・:・:・:・:・:・:   一一 ,一一一 一一一 _   _

えるためといわれている。

本調査では一般に多いと言われている「梅       [コたいてい休む

雨時」という回答は14.8%と少ない結果であ       匡垂1休んだり休まながつたり 図1 欠席状況

3)欠席状況について

全体の44.5%が「休んだり休まなかったり

する」と回答しており,発作の程度だけでなく,その時の気分や家族の対応等も,欠席の要因にな っているようである。「ほとんど休まない」(27.3%)と,「たいてい休む」(25.5%)では大きな 差はみられなかった。回答の中には,自分ではあまり気乗りしないが,家族に説得されて登校する

という事例や,逆に自分では登校したいが,家族が大事をとって休ませることが多いという事例も

あった。

また,小・中別に欠席状況をみてみると(図1参照),中学生ほど喘息のために欠席する傾向が あり,その差は有意であった(P〈0.05)。中学生になっても,喘息発作が続いているのは程度が 比較的重いものが多いからではないだろうか。その他として, 「ピークフロメーター(PFM)で 肺活量を計測しその値がある程度に達すれば登校する」という回答もあった。PFMは瞬間最大吸 速度の測定をするときに用い,現在,生活管理の指標として一般的になっている8)。これによって,

肺機能の状態を知ることができるので自己の肺機能の許すかぎりの日常生活を安心して送れるよう になった。また,PFMにより,時々刻々と変化する発作の状態を的確に把握することができるの で,これらを利用することもよいと思われる。

喘息児の場合,発作との関係で,学校に行かせるべきかどうか迷うことがしばしばあると思われ るが,極端な睡眠不足や疲れ,発熱などの症状のある場合を除けば,学校に登校させる方針を持つ べきだという文献が多かった。担任や養護教諭は登校前の発作の様子や身体の状態を把握しておく 必要がある。

4)薬の使用状況について

現在,薬を使用しているかどうか表3に示した。88.3%が使用していた。「発作時に使用してい る」(76.5%),「毎日使用している」(40.8%),「運動前に使用している」(3.1%)だった。運動 前に使うと回答したのはわずか3名であるが,運動が発作誘因になっているという回答は,43名も あった。(運動誘発性喘息参照)運動が発作誘因になっているとわかっていても,あらかじめ発作 止めを服用するのはごくわずかであるという結果である。また,運動が発作誘因になっているが,

(5)

中村・田中:喘息児の健康管理に関する研究      217

運動前に薬を使用しないと回答した40名のうち,13名が体育の授業で,運動制限があると回答して

いる。

(1)使用している薬の名前を

       表3 薬の使用状況知っているものは,111名中24

(21.6)名のみであった。薬の

(複数回答)( )内は%

名前を知っているものは,ほと

       校種んどが小学校4年以上で,低学

小学校 中学校 合 計

年はほとんどがわかっていなか   使用状況

n=55 n=43 n=98

った。しかし,低学年のなかに 発作時に使用

38(69.1) 37(86.0) 75(76.5)

も,名前は知らないが薬の色や

      毎日使用形(カプセル,錠剤など)は知 28(50.9) 12(27.9) 40(40.8)

っているというものが何名かあ 運動前に使用 0

3(7.1) 3(3.1)

った。喘息の治療には多くの種 類の薬を使い,また副作用もあ

るので,間違った使い方をすると,危険である。そこで,家族だけでなく,喘息児本人も薬の名前 や使用量,作用などは理解しておく必要があるが,医師が薬の説明をしてくれないと,本人や家族 がわからない場合もあるので,必要な場合は積極的に医師に質問する態度も大切である。

また,学校や宿泊先で,養護教諭が薬を使用する場合もあると思われる。そのような場合は,ど のような薬を使用しているかについて家族や主治医と連絡をとる必要がある。回答している24名の うち,14名が「抗アレルギー薬」を使用していた。また,「キサンチン系薬」12名,「交感神経刺 激薬」9名,「ステロイド」1名という結果であった。なお,ステロイド薬については回答に挙が

らなかったが,養護教諭からの情報により,何名か使用していることがわかったが,本人はわかっ ていなかった。また,中にはムーンフェイスなどの副作用のみられる事例もあった。その他として は,漢方薬が多かった。

(2)薬依存について

「あなたは,薬を使っているだけで喘息は治ると思いますか」という質問に対して,薬を使用し ている98名のうち,97

名より回答があった。

       表4 薬の使用状況と薬依存の関連このうち,全体の約半

数が「思わない」と回

答しており・「思う」      依存状況 薬だけで治ると思うか 薬が手元にないと不安か

・  と回答したのは約15%

であった。また,「あ 思う 思わない 思う 思わない

なたは・薬を持ち歩い   使用状況

n=15 n=48 n=28 n=41

ていないと不安に思い

ますか」という質問に   毎日使用 9(60.0)

17(35.4) 15(53.6)

ユ2(29.3)

対しては・回答のあっ   発作時のみ使用 6(40.0)

31(64.6) 13(46.4) 29(70.3)

た81名のうち,半数の

(6)

218       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

41名は,「思うことはない」と回答しており, 「思うことがある」と回答したのは28名であった。

この結果からは,薬に依存している喘息児が多いとはいいきれないようである。

薬の使用状況と薬の依存の関連については表4に示した。これによると,毎日薬を使用している ものは発作時のみの使用するものより,薬に期待する傾向が強かった。また,薬が手元にないとき に不安に思うのも,毎日使用しているもののほうが多かった。薬を毎日使用しているものほど,薬 が精神面に与える影響が大きいのではないだろうか。

5)通院状況について

発作時以外には,37名が通院しており,23名が「月1〜2回通院している」と回答し最も多かっ た。これは,1カ月に1回くらい薬をもらいにいくためという回答が多かったためである。

「月5回以上通院している」と回答があったのは3名で,その他としては,病院より登校してい

る(中3)という事例があった。       L

2.日常生活の実態について

喘息の治療は,発作時と非発作時に大別される。一般に喘息の治療というと,前者の治療が主に 論じられるが,非発作時を如何に管理するかで,発作頻度も異なってくる。

そこでここでは,

喘息児が大部分を       表5 日常生活における留意事項

過ごすことになる

家庭,学校などに (複数回答) ( )内は%

おける留意事項

校種 小学校 中学校 合計

(環境整備など),

留意事項

n=55 n=45 n=100

食事療法,鍛錬療

手洗いをきちんと行なう

32(58.2) 20(44.4) 52(52.0)

法について調査し,      本

うがいをきちんと行なう

29(52.7) 20(44.4) 49(49.0)

結果を表5にまと   人

゚た。    奎1)日常生活にお   体 規則正しい生活をする

Tマーキャンプに参加している

13(23.6)

R(5.5)

6(13.3)

P(2.2)

19(19.0)

S(4.0)

ける留意事項(環 その他 6(10.9)

2(4.4) 8(8.0)

境など)について 動物を飼わない

27(49.1) 18(40.0) 45(45.0)

100名より回答

家族は喫煙しない

20(36.4) 20(44.4) 40(40.0)

があり,回答率は,   環 カーテンや家具の掃除をまめにする

12(21.8) 17(37.8) 29(29.0>

小学校93.2%,中      境

ぬいぐるみを置かない

12(12.8)

9(20.0)

21(21.0)

学校86.5%であっ

@       整た。また,一人平

マ3項目ほど回答    備

じゅうたんやカーペットを敷かない z団の丸洗いをまめにする

11(20.0)

W(14.5)

7(15.6)

U(13.3)

18(18.0)

P4(14.0)

が挙げられた。本 そばがらやお茶がらの枕を使用しない 6(10.9)

4(8.9) 10(10.0)

人が主体的に行う 羽布団を使用しない

3(5.5)

7(15.6)

10(10.0)

ものとして,「手

一人当たりの回答数

3.3 3.0 3.2

(7)

中村・田中:喘息児の健康管理に関する研究       219

う」が52.0%で最も多く,次いで「うがいをきちんと行う」が49.0%と半数近かった。この二つが ほかと比べて多かったのは,基本的生活習慣としてに励行させていることも含まれているものと思 われる。次に多かったのが,「動物を飼わない」(45.0%)「家の人はたばこを吸わない(たばこを 吸っている人には近づかない」(40.0%)であった。喘息児によくないのは,動物の毛で,毛につい たフケにほこりやダニが集まりやすいからだといわれている。たばこの煙は,3,喘息の原因・誘 因で後述するように,喘息児にとっては有害である。回答の中には,「父親がこどものいない部屋 で,たばこを吸う」という事例があったが,気密度の高い現代の住宅では,禁煙したほうがよいと する文献が多かった。

喘息のアレルギーの原因になる抗原として,最も頻度の高いものはハウスダストであると言われ ているが,このハウスダスト対策として,考えられる「じゅうたんやカーペットを敷かない」(18.0

%), 「カーテンや家具の掃除をまめにする」(29.0%),「布団の丸洗い」(14.0%)といった項目 の回答は,文献等でも必ず取り上げられ,重視されているが今回の調査では少なかった。これは,

日中,子ども達が学校に行っている間に,家族が行うことになっていると思われ,子どもの目にふ れないことがあるのかもしれない。また,「布団のあげおろしの際は,そばにいない」という事例 があった。これはなかなか見落とされがちであるが,大切なことだと思われる。

「ぬいぐるみを置かない」,「羽布団を使用しない」を挙げたのは全体の1〜2割であったが,

特に羽布団などは丸洗いが難しく,そのためほこりも吸いやすいので避けたほうがよいとされてい る。「規則正しい生活をする」というのは,緊張感のある生活が発作を起こりにくくする効果があ る。本人の意見も十分に取り入れて,日課を決め,それを実行させることも喘息の治療になるとい われている。その他としては,「布団をかぶって寝ない」「ほこりをたてないようにする」「体を 冷やさないようにする」 「疲れないようにする」 「ちょっとでも具合の悪いときは無理をしない」

「風邪をひかないように気をつける」などが挙げられた。どれも自己管理が大切なものばかりで,

本人の積極性が問われるところである。また,「喘息は,気持ちの持ちようでよくなると思う」と いう回答もあり,これは,精神的因子が喘息に影響していることを理解している例である。

なお,環境整備に関しては,家族の協力が大きなウエイトをしめているが,家族に任せきりでな

く,本人が主体的に取り組む姿勢が大切であろう。      L

2)食事療法について

小児気管支喘息における食物アレルギー喘息の頻度は,5〜70%と報告者によりかなりの差がある。

111名中,食物アレルギー性喘息のため何らかの食事療法を行っているものは14名(12.6%)であ った。内訳は,牛乳,卵,肉,魚などのなまもの等の回答があった。その他に米アレルギーのため,

学校に昼食を持参するという事例があった。食物アレルギーの特徴として,体の諸条件が複雑に絡 み合ってアレルギー症状が現れるため,疑わしい食品を摂取した場合,ある時は症状がでたり,で なかったりする。そのため,見落とされがちであるが,強く疑われる食物があれば,少なくとも3 カ月はその食物を食べないようにするといわれている。食事療法の場合はとくに家族の協力が重要 になってくる。

3)鍛錬療法について       ,

鍛錬療法は,皮膚の鍛錬(自律神経の鍛錬),呼吸の鍛錬,身体の鍛錬の3つにわけ表6にまと めた。精神の鍛錬はこれら3つの鍛錬を継続していくうえで,同時に鍛えられていくものであると

(8)

220       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

思われるので,本調査では独立した項目を設けなかった。

111名中,何らかの鍛錬を行っているものは,79名中で,全体の約7割が行っていた。また,一 人平均1.8種類ほど行っているという結果がでた。

①皮膚の鍛錬       ,

薄着,乾布摩擦,冷水浴があげられた。また,その他として, 「冷水摩擦」や「日光浴」などが 挙げられた。皮膚の鍛錬というのは自律神経の鍛錬であり,皮膚の自律神経が冷たい環境に敏速に 反応できるよう鍛えることである。喘息児は風邪をひきやすく,風邪をひくと発作を起こしやすい

と,いわれており皮膚の鍛錬と風邪にかかりにくくすることが目的である。

②呼吸の鍛錬

回答があったのは

表6 鍛練療法について

「腹式呼吸」18名の

みであった。呼吸の      (複数回答)( )内は%

鍛錬としては,「腹       校種

小学校 中学校 式呼吸」の他に「コ 合計

@      鍛練

n=46 nニ33 n=79

一ラス・声楽」や「楽

器演奏」なども非常     皮膚の鍛練

12(26.1) 17(51.5) 29(36,7)

に効果があるといわ

      薄着れているが,今回の

2 7

9

.調査では挙げられな     乾布摩擦

5 2 7

かった。喘息児自身     冷水浴 4

2 6

が歌をうたうことや      その他

1 6 7

フルートやトランペ

ットなどを吹くこと    身体の鍛練

63(136.0) 30(90.9) 93(117.7)

が喘息の治療になる

ことを理解していな     水泳 23

7

30

いために回答にのぼ     サッカー

7

4 11

らなかったことも考      ランニング

8

2

10

えられる。市教育委

      バスケットボール員会主催で喘息音楽

6 1 7

による腹式呼吸の講     なわとび

5 2 7

習会を行い効果をあ     野球

5 2 7

げている報告もある9)。      体操

4

1 5

歌をうたうことも

楽器(吹奏楽器)を     その他

5

11 16

演奏することも腹式       腹式呼吸

9(19.6) 9(27.3)

18(22.8)

呼吸を必要とするた

め,呼吸の鍛錬とし    一人当たりの回答数

1.8 1.7 1.8

ては効果的であり,

(9)

中村・田中:喘息児の健康管理に関する研究       221

気分的にもすっきりして良いといわれている。また,座禅や正座なども呼吸の調整に有効であると いわれている。喘息発作の時は,呼気性呼吸困難になりやすい。呼気性呼吸困難とは,息をる程度 吸うことはできるが,吐き出しにくくなりガス交換の効率が悪くなる。従って,息を吐き出す呼出 力の改善を図る必要がある。

③身体の鍛錬

「水泳」が30名で最も多く,「サッカー」11名,「ランニング」10名などが主だったものであっ た。「水泳」は,陸上での運動と比較して,運動誘発性喘息のおこりにくい運動であると評価され,

鍛錬に広く用いられているといわれているが,今回の結果からも,「水泳」喘息の鍛錬療法として 一般に浸透していることがうかがえる。

「ランニング」は,手軽な運動療法として広くすすめられているが,運動誘発性喘息を起こしや すいので,前述したように,走る距離,速度を制限するなどの配慮が必要であろう。特に,インタ 一バルをおくことがランニングにかぎらず他の運動療法を行ううえで大切であるといわれている。

また,その他として挙げられたのは,「柔道」や「剣道」がほとんどであったが,これらは,身 体の鍛錬のみならず,精神の鍛錬にも大きな役割を果たすとされている。ここでは,道場や装具の カビとホコリに気をつけなければならない。

一般的に,気管支喘息は,温度が急に3℃下がると発作の引き金になるといわれている。そこで,

急激な温度の低下が予想されるような気象条件,場所,時間での運動は,どのような運動を行う場 合にも,慎重に対応していくべきだと考えられる。以上,3つの鍛錬療法について述べてきたが,

これらの鍛錬はどれか1つを行えばよいというのではなく,例えば,冷水浴,ランニング,腹式呼 吸というような組合せで,皮膚,身体,呼吸の鍛錬と,いずれも1つずつ行うのが効果的とされて いる。そこで,今回の調査で,3種類にわたって鍛錬を行っているものを調べたところ,これに該 当したのは,5名のみであった。このうち2名が小学生で,3名が中学生であった。中には入退院 を繰り返している生徒もいたが,発作が重いものほど3種類,きちんと行っているというわけでは なかった。まだまだ,一般的には前述のような考えが,行き渡っていないと思われる。

また,鍛錬療法は,継続して行なったほうが効果があり,風邪の後や,冬期には中断する恐れが かなりあるため,本人の決心と周囲の励ましが必要であると思われる。たとえ失敗しても自信を失 わず,再度試みるとともに,自分自身が喘息を治すという,心構えが大切であろう。

(2)改善点について

喘息児が自分の生活でなにか改善できることはないか聞いたものである。

「少しでもいいから自分なりに走っていきたい」,「なるべく体を動かしていきたい」など,運動 を恐れない,積極的な喘息児の意見が挙げられた。他の児等・生徒と同じようにやろうとしないで,

、  自分のペースで続けていくことが大切であると思われる。また,「うがい・手洗いをきちんとす る」,「規則正しい生活をする」なども挙げられ,家族や,主治医などによく言われていることで も,なかなか毎日実行できないでいる喘息児もいることがわかった。

「今までやってきたことを続ければ自然に治ると思う」という回答も挙げられたが,この生徒の 場合は,日常管理もしっかりと行っているので,こういった回答があったのだと思われる。やらな       ●

ッればならないことをやって,健康管理もしっかりと行っていれば,必要以上に不安に思ったり,

消極的になることはないであろうし,そのことを本人に納得させるべきだと思われる。

(10)

¢22       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

3.喘息に対する理解について

喘息児は,自分の病気について,程度の差こそあれ,それぞれに理解をしているのではないだろ うか。そこで,喘息の原因・誘因と発作時の対処の仕方の2点に絞って調査をし,以下にまとめた。

なお,喘息の原因と誘因については,文献等ではっきりと分けられていなかったので,今回は2つ をあわせて調査し,表7にまとめた。

1)喘息発作のメカニズム

喘息を起こす刺激は特異的刺激,(アレルギー型・外因性)と,非特異的刺激(非アレルギー型

・内因性)の二つに大別される。

アレルギー型の刺激はアレルゲンと呼ばれ,ハウスダストが代表的なものである。非アレルギー 型のものは,天候,大気汚染,精神的因子などが刺激となる。

喘息の原因・誘因について「あなたは自分のぜんそくがどうして,(どのような時)起こると思い ますか。ぜんそくの起

こるもとを知っている      表7 喘息の原因・誘因について

だけ書いてください。」

という質問に対して, (複数回答)( )内は%

小学校53名(89.8%),

\  校種

中学校38名(73.1%) 原因・誘因

n=53 n=38 n=91

の計91名(82.0%)よ    ア

ほこり

17(32.1) 15(39.5) 32(35.2)

り回答があった・原因 κ ダニ

3(5.7)

6(15.8)

9(9.9)

・誘因の把握について    ゲ       ン

動物の毛

5(9.4) 2(5.3) 7(7.7)

は,学年の差はみられ   の 花粉

1(1.9) 3(7.9) 4(4.4)

なかった・搬的な喘 葵 その他

1(1。9) 1(2.6) 2(2.2)

息の原因・誘因につい

トも調査したが,回答    運

ェあったのは,28名    動

i25.2%)のみであり,

激しい運動をしたとき 宸「だり,暴れたとき サの他

29(54.7)

R(5.7)

O

17(44.7)

O1(2.6)

46(50.5)

R(3.3)

P(1.1)

自分の原因・誘因以外 嚢はわからないものが多    ・

天気が悪いとき

瘠C圧(台風)が近づいてきたとき

9(17.0)

S(7.5)

3(7.9)

P(2.6)

12(13.2)

T(5.5)

       温かった。         度

強い風(冷たい風)にあたったとき 3(5.7) 1(2.6) 4(4.4)

(1)運動    澄「走ったり,激しい   度 気温差が激しいとき シ度が多いとき

2(3.8)

P(1。9)

00

2(2.2)

P(1.1)

運動をした時」が46名    疲れ ・睡眠不足 9(17.0) 6(15.8)

15(16.5)

と多く,「騒いだり,      感染

(風邪をひいたとき) 7(13.2) 7(18.4)

14(15.4)

暴れたりした時」が3

@       煙り名,「風邪をひいてい

・空気の汚れ 7(13.2)

3(7.9) 10(11.0)

る時に運動して」が1 精神的因子

3(5.7)

4(10.5)

7(7.7)

名で計50名(54.1%)

その他

2(3.8)

4(10.5)

6(6.6)

(11)

中村・田中:喘息児の健康管理に関する研究      223

与える影響は大きく,とくに,学校体育との関係で問題となることがある。

①運動誘発性喘息の特徴

運動誘発性喘息(EIA)は喘息児が運動をした後で喘息や呼吸困難を起こす現象をいう。EI Aは小児科領域では学校体育の問題とあわせて,古くから研究されてきた。従来は,EIAは運動

後早期(5分〜15分〉に起きるもののみについて述べられてきたが,運動6時間から12時間後に起 きるEILARが明らかにされた1°)。一般に,喘息児に運動負荷を行った時の肺機能は一過性に呼 吸困難を呈する。運動直後より,運動後5〜10分にかけて肺機能が著明に低下し,15分後ごろから は改善が著しく,30分後ぐらいになると,外見上発作が消失しているようにみられるのが,EIA

の特…徴である。一方EILARは,運動負荷6−12時間後に再び肺機能の低下や呼吸困難,喘息を

きたすものである。EIAは気道の過敏性が充進しているものほど起こりやすい傾向がみられ,重 症なほど高頻度に出現するといわれている。一般に,自転車,階段昇降,ランニングなどはEIA

を起こしやすく,逆に,水泳などは,起こしにくいといわれている。

②運動の指導や発作がおきた時の処置

体育等で運動を開始する場合,主治医の指示や喘息児の年齢,体力,重症度等を考慮して行われ る。軽く運動させてから走らせるような指導によって,EAIを予防できることがある。また,喘 息児には短い距離を走らせるか,患児が,苦しいと感じた時点で走るのを止めさせることで,EI

Aを予防できたり,軽くすませることができる場合がある。

喘息児が重症な場合,走ると必ず発作を起こし,他人に迷惑をかけると思い込んだり,あるいは,

発作は自分の欠点と思い,体育を嫌ることがある。このような場合には運動前に薬剤を用いてEI Aを予防することも一方法であろう。運動誘発性喘息の防止薬は運動する1〜5時間前に吸入する と効果的であるといわれている。必要に応じて,主治医に処方してもらい,使い方の指導を受けて おくのがよいとされている。ところが,薬剤を用いてまで運動をさせる必要があるか否かについて 疑問をもつ教師も少なくないという。運動前に使用する薬剤の量は,きわめて少量であるし,たと え薬剤を使用しながらでも,運動を続ければ,次第にEIAが起きにくくなってくる場合があるた め,なるべく運動はやらせる方針の方が喘息児の予後にも,よい影響を与えるといわれている。発 作が起きた場合は次のように対処するのがよいとされている。

・安静にさせ,しばらく休憩させる。・さらにゆっくり腹式呼吸を行わせる。・冷水を飲ませる。

・しばらく休んでいれば必ず良くなることを指導し,患児の不安を取り除く等。また,安静にして 30分以上も経過するのに呼吸困難が続く時や,あるいは増悪する傾向がある時は,薬の服用,吸入 等の処置を行い,場合によっては,感染等の増悪因子が合併していることも考えられるため,早め に医師に受診させる。

アレルゲンの吸入については,ほこり,ダニ,動物の毛,花粉の順だった。一般にアレルゲンの うち頻度の高いものとしてあげられているものと一致している。ほこりは32名(35.2%)と多かっ た。ほこりにもいろいろ種類があるが喘息の原因になりやすいのはハウスダスト(家屋塵)である。

今回の調査でハウスダストと回答があったのは中学生1人だった。花粉のうち2例はセイタカァワ      ■

ダチソウと回答している。

2の日常生活管理との関連でみると次のようだった。

(12)

224       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

「ほこり」が発作誘因になっていると回答した32名のうち,「カーテンや家具の掃除をまめにする」

は8名「ぬいぐるみを置かない」は10名だった。また, 「ダニ」を回答した9名のうち「じゅうた んやカーペットを敷かない」は4名,「布団の丸洗いをよくする」は4名だった。発作誘因を把握 していても,原因除去のための環境整備を行っているのはそれほど多くなかった。「動物の毛」を 回答した7名のうち5名は動物を飼うのをやめている。

(3)喘息発作と気象との関係

天候・気温の変化としてあげられたのは「天気が悪い時」12名,「低気圧(台風)が近づいた時」

5名, 「強い風にあたった時」4名, 「気温差が激しい時」2名, 「湿度が高い時」1名だった。

喘息発作は同じ日に集中する傾向があり,その発作のピークの一つは9〜10月であるといわれてい る。この時期は夏から秋への移行期で,気温は変動しやすく,前線の通過,雨の日も多いためと考 えられている。また,梅雨時も同じような理由から発作がおきやすい。笠井の小児を対象とした調 査では12)喘息発作は低気圧の前線通過に伴う気象の急変の時が最多としている。また;石崎は成人 を対象としたものであるが,雨の日,天候不定の日に発作が増加しやすく,気温との関係では気温 上昇時には発作の増加はみられず,気温低下,とくに1日3度以上の低下と雨が重なると発作がて

きめんに増加すると報告している。

(4)疲労

15名(16.5%)が疲れや睡眠不足が誘因となって喘息が起きると回答している。疲労は精神面に 与える影響もあり,発作を起こしやすくしていると思われる。15名のうち,日常の生活管理との関 わりで,規則正しい生活を心がけていると回答したものは5名だった。なるべく,次の日に疲れを 持ち越さないような自己コントロールが大切である。

(5)感染症

風邪をはじめとして,多くの感染症は喘息発作を引き起こしやすいといわれている。14名(15.4

%)が風邪をひいた時,発作がおきやすいと回答している。軽い喘息の発作では咳に似た咳払いや 喘鳴はおこるが,呼吸困難がほとんどないため,風邪と間違えやすいこともある。

(6)空気の汚れ

10名(11.0%)より回答があった。たき火や花火をしている時,たばこの煙,空気が汚い時等が あげられた。喘息児は気管支の粘膜が敏感になっているので,化学的,物理的刺激が加わるとその 刺激で発作がおきやすくなるといわれている。

(7)精神的因子について

心配事があった時,嫌なことがあった時,笑いすぎ等7名(7.7%)が回答している。精神的・心 理的に問題があったり,興奮して精神的バランスが崩れ,発作を起こす喘息児は飯倉13>の調査では 20〜30%,また,他の調査では75%と調査によって差があるが,飯倉は重症度にはあまり関係が無 いと述べている。学校では心身症としてかなり高い頻度であげられている14)が今回に調査では子ど

も達は精神的,心理的な誘因で起こることをそれ程経験していないようである。

(8)その他

その他は「父からの遺伝」「アトピー性の皮膚炎がひどくなった時」「一人で旅行している時」

などがあげられた。

以上主な回答をあげた。中には受診しても原因がはっきりしなかったり,複数の誘因が重なり,

(13)

中村・田中:喘息児の健康管理に関する研究       225

把握が困難な事例もあった。

3)発作時の処置について

喘息児は,発作時にどのように対処すべきかを理解し,また,自分なりに発作を鎮める処置をし ているだろうという仮説をもとに調査した。今回は,発作の処置を①自分で行う処置,②家族,養 護教諭が行う③病院で行う治療の3つに分け調査し,その結果を図2にまとめた。

(1)自分で行う処置

自分で何らかの処置をすると回答したものは,111名中,小学校48名,中学校47名の計95名であり,

回答率は,小学校81.4%,中学校90.4%で,やはり,小学生よりも中学生のほうが自分で処置をす る者の割合が高くなっている。

また,処置の内容を大きく,「薬の使用」, 「水分摂取」, 「呼吸運動」, 「体位・姿勢など」,

「その他」の5つに分類してみると「薬の使用」が62名で圧倒的に多く,次いで,「体位・姿勢」

29名, 「水分摂取」24名の順であった。

発作時の処置は,初めが大切で,発作の起こり初めにうまく対処すればあまり大事に到らないで 済むことがしばしばあるという。そこで,まず始めに行わなければならないことは,水分を取ると いうことであり,さらに呼吸の調整を行い,薬を使わずに努力しても,発作が止まらない,軽快し ない場合は薬を使用するのが望ましいとする意見もある。薬を使用する以前の,基本的な処置(水 分摂取・呼吸運動など)も非常に大切であることがわかる。次に,それぞれの項目の内容について,

検討してみた。

薬の使用では 「内服薬の服用」が38名「吸入器の使用」が23名であった。また,その他として,

「薬を胸にはる」という回答も挙げられた。

水分摂取は「水を飲む」 (22名)と「氷をなめる」 (2名)という回答が挙げられた。水分を取 ることは,気管

支から疾を出し

0       100      200%

薬の使用 653

やすくするとい

145.7

う効果がある。       体位・姿勢 30.5

35.0

特に,発作中は 2.『

脱水状態になり       水分摂取 3

  25.3    口自分でする処置 n=95        霞塁当家族・SNがする処置 n暑80

やすく,水分の      呼吸運動 0        匡垂ヨ病院での治療 n=80

@ 18.9

補給は大切であ 8

るといわれてい      休養の準備

17.5

る。 8

.    呼畷藝助は「腹      病院に連れていく

@ 式呼吸」(6名),

 7,5

O1.1

「深呼吸」(6名)        聴診 ,::,:亀8 で,その他とし       その他 .1:1

ては,「ゆっく

3.7

り息をはく」,

       図2 発作時の処置について「はく息の量を

(14)

226       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

多くし,吸う息の量を少なくする」,「息を鼻からすって口から出す」,「たくさん呼吸する」な どがあげられ,中には,腹式呼吸に通じるようなものもあった。

体位・姿勢は「座って静かにしている」 (14名),「楽な姿勢になる」 (8名),「頭を高くし て寝る」 (5名), 「起座位」 「背中をたたく」 C1名)という結果であった。基本的には,本人 が楽な本位にするのがいちばん良いが喘息発作の場合は,横になるとかえって苦しいので,座る か,上半身を高くして休むのがよいとされている。

その他としてあげられたのは,「換気をよくする」,「疾をだす」,「水枕で冷やす」,「うが いをする」,「気合いをいれる」などである。「聴診を行う」という回答があった。これは,小学 校2年の男子で,自分で聴診器をもっており,発作が始まったら音を聴いてみて,その程度によっ て,比較的軽い場合は自分で処置をし,ひどくなりだしたら,家族に知らせたり,病院に行って,

治療を受けるという事例であった。自分の病気をある程度は,自分で管理するという点で,参考に なる事例であると思われる。

(2)家族や養護教諭が行う処置

80名より回答があった。家族や養護教諭が行う処置としては,「背中をさする・背中をたたく」

(24名), 「吸入器の使用」 (20名), 「内服薬の服用」 (15名)が主だったものだった。

「背中をさする・たたく」というのは,咳を出させて疾をきれやすくする効果がある。掌を丸く して,軽く背中や胸をたたくのがよいとされている。

また, 「吸入器の使用」では,小学校18名,中学校2名で,自分で行う処置のときは(吸入器 の使用は,小学校5名,中学校18名〉,小・中逆の結果となった。小学生のうちは,吸入器を使う のも,親の手を必要とする場合が多いということがわかる。これは,「内服薬の服用」に関しても 同じことが言える。そのほかには,「病院に連れていく」という回答が14名あったが,発作が起き た子供を車や自転車の後に乗せて,病院に連れてくる途中で,発作が軽くなってしまったという事 例や溌作の最中でも,楽しい話やテレ吻ことなどで気を紛らしていると溌イ乍が軽くなったり・

消えてしまったという文献もあった。このように,発作の起こった場所から別のところに移し,少 し環境を変えるのもよいし,気分転換をはかるのもよいといわれている。

「その他」としては,「体を温める」「熱いタオルを額にのせる」「水枕」「うちわであおぐ」

「かりんやレモンを煮たのを飲ませてくれる」などがあげられた。

家族や養護教諭などが処置をする場合気をつけなければならないことは,まず第1に,あわてた り,苦しそうだけど,大丈夫かしらとか,患児に不安を与える態度は絶対にとるべきではないとさ れている。また,なかなか水などを飲めなくても,イライラしたり,子どもにあわてさせないこと

も大切なことである。

第2に患児を力づけ,励ましてやることも大切である。気分的なことであるカ㍉喘息の発作は精神 的なことも大いに関与しているので,気を付けなければならないことである。

(3)病院での治療について

病院ではどんな治療をするのか質問したものである。82名より回答があった。吸入器の使用,点 滴を行う,内服薬の使用,注射をする,その他として吸引,酸素吸入があげられた。

以上,発作時の処置を3つに分けて述べてきたカ㍉自分で行う処置で前途したように,水分摂取 や呼吸運動も薬の使用と同様大切であるカ㍉自分で行なう処置でも,家族・養護教諭が行う処置で

(15)

中村・田中:喘息児の健康管理に関する研究       227

も「薬の使用」とだけ回答したものは22名あった。薬の有効性のみに目を向けないで,基本的な処 置の大切さも,本人はじめ,家族や養護教諭等が広く理解する必要があり,そのことが,薬依存の 傾向にも歯止めをかけるのではないかと思われる。

4)喘息について知りたいこと

「喘息について,わからないことや知りたいことがあれば書いてください」という質問に対して,

24名より回答があり,回答率は,21.6%であった。8割近くが,喘息に関して特に知りたいと思う ことはないと答えているが,これは特に,日常生活にさしさわりのない程度に,喘息については知 っているので,それ以上深く知ろうという気が起きないのではないかと思われる。具体的な回答に ついては,表8に示した。

「どうして喘息は起きるのか」という,喘息の原因(発症のメカニズム)についての回答が最も 多かった。その他に,「なぜ,水を飲めば治るのか」,「水泳をすればいいといわれるのはなぜか,

それで,本当に治るのか」,「ほこりはどうして喘息につながるのか」などがあげられた。これら は,普段母親等に聞かされていることだと思われるが,「これはいけない」「こうするのがよい」

ということを言われて実行していてもなかなか思うように治らないため,このような疑問が挙げら れたのではないか。

また,「どうして自       表8 喘息について知りたいこと・わからないこと

分だけ喘息になるのか」

という回答が2例挙げ       (複数回答)

とることができる・    ・どうして喘息は起きるのか(原因・発症のメカニズム)  8

このように喘息児が       ・どうすれば喘息が治るのか(完治するには?)     5

持っている疑問等につ

いて述べてきたがこ    発作が起きたときどうすればいいか(発作時の処置)  4

れについては,家族だ    ・一度治ってもまた起きるのか(再発・完治状況)    3

けの力ではどうにもな   ・どうして自分だけ喘息になるのか      2

らない面があり,やは       ・どうして水を飲めば治るのか      1 り,主治医の協力が必

      ・どうして夜起きやすいのか       1要になってくると思わ

れる。主治医からのわ    ・どうしてほこりが喘息につながるのか         1 かりやすい説明が大切   ・水泳をすればいいといわれているのはなぜか

であり,本人や家族が,       本当にそれで治るのか   1

何でも聞いたり,相談

      ・発作時の肺の様子を知りたい       1できる雰囲気というの

は,喘息などのように,   ・どのくらいの人が喘息にかかっているのか       1 治療が長期化する場合    ・喘息は死につながるのか      ・ 1 は特に重要だと思われ    .インフルエンザは喘息に影響するか      1 る。また,養護教諭が

(16)

228       茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1991)

学校で管理をする場合も,必要なときには直接,主治医と連絡を取り合うことも大切なことであろ う。さらに,何か鍛錬を行ったり,環境面を気をつけたりしても,それですぐに喘息が治るという ものではないということも本人に知らせておいたほうがよいと思われる。

4.喘息児と学校生活について

児童・生徒の活動の中心となる学校生活などは,喘息児にとって必ずしもよい状態にあるとは言 えないのではないかという仮説から本調査では,喘息児が抱いている不安や悩みを中心に調査した。

1)学校生活における制限について

喘息をもっているため,学校において制限されていることがあると回答したものは,小学校13名

(22%),中学校18名(34。6%)の計31名(27.9%)であった。

31名中23名までが「体育の授業」と回答しており,運動誘発作性喘息については,3.喘息の原 因・誘因についてで述べたので,ここで詳しくは触れないことにする。また,本調査では,体育の 授業における制限はあげられたが,一般の授業は挙げられなかった。一般の授業に衡しては,発作 が起きない限り,他の児童・生徒と同様に扱っていることがわかる。 「遠足」という回答は2例挙 げられた。旅行については,養護教諭による事前の調査や発作が起きた時のための対策(準備)が 各学校でなされており,基本的には,なるべく全員参加の方針をとっているところが多かった。特 に発作を起こしていなければ,学校側から制限されるということはほとんどなかった。旅行に行く と決って発作を起こしてしまうという事例が何例かあったが,旅行と喘息の関係は無視できないと 思われる。西川の報告15)では,学校での制限などの特別扱いがあると回答したのは,16.2%で本調 査と比較すると低くなっている。また,その内容として,体育の授業,マラソン大会,運動会,遠 足,修学旅行,一般の授業,が挙げられている。

旅行の於ける発作誘因について西川16)は過労,天候の変化,暴れすぎ,風邪,戸外の環境,宿が湿 っぽい,汚い,等を報告している。このように,旅行中は,普段と環境がかわり,発作の誘因とな るものも種々あるので事前の万全の準備が大切である。

制限されていることがあるために,喘息児がもっている悩み,嫌なことについては10名から回答 があった。「体育の授業をみんなと一緒にやりたかった。見ているだけではつまらない」(4名)

「体育で自分のやりたいことができなかった」(2名)体育を見学することが多いため走るのが遅 くなったりした」「遠足に行けなくてつまらなかった」等だった。ここでも,体育の授業の見学に 関連した悩みが多く,運動誘発性との関係も考慮しなければならないと思われる。特に,運動の指 導に携わる教師が,正しく理解してくれるよう,医療サイドから,もっと積極的に働きかけていく 必要があるということもいわれている。

個々の症例によってもちろん違いはあるが,原則として学校生活のなかで特別してはいけないと いうことは,ないというのが大方の意見である。喘息児が,制限されていることがあるために悩み を抱いくというのは,本人と教師,家族,主治医との納得のいく話し合いで,少しでも軽減できる のではないだろうか。

2)喘息をもっているために生じる悩みについて

特に制限されていることはなくても,喘息をもっているために困ること,嫌なことがあるかどう かについては,小学校35名,中学校23名の計58名(52.3%)があると回答している。悩みの内容に ついては,表9に示した。「体育の授業中発作がおきて嫌だった」と回答しているものが,15名で

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