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技術科教育分科会

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技術科教育分科会

 1.はじめに

 われわれが「技術科教育のあり方」について研究を始めてから2年が過ぎようとしてい る。前年度は「技術科教育の本質。目的・領域」を明らかにしょうとして,幾つかの研究 課題を設け,検討を重ねたが,容易に結論の出る問題ではないので,今年もそれを引継い で研究を進めることにした。

 今回は,新指導要領が発表されたので,その内容を検討しながら,「技術科教育の本質

。目的・領域」を追求しようと試みた。具体的にその内容を検討していくことにより,

「技術科教育のあり方」を探ったわけである。その結果,新指導要領の検討が一通りは終 ったが,残された問題は多く,教育の場での実践的な研究も必要である。「技術科教育の 本質・目的・領域」を明らかにし,「技術科教育のあり方」を導き出そうという当初の目 的から見れば,まだまだ先は長く,これからの研究に期待するところが大きい。

 以下,主として新指導要領の検討結果を中心に,「技術科教育のあり方」について研究 し合った経過報告をかねて述べることにする。

 2.新指導要領の検討

 (1)技術・家庭科の目標  技術・家庭科には

「生活に必要な技術を習得させ,それを通して生活を明るく豊かにするためのくふう創造 の能力および実践的な態度を養う」

という総括的目標と,それをさらに具体化した次のような目標3つが示されている。

[ 計画,製作,整備などに関する基礎的な技術を習得させ,その科学的な根拠を理解  させるとともに,技術を実際に活用する能力を養う。

 2 家庭や社会における技術と生活との密接な関連を理解させ生活を技術的な面からく  ふう改善し,明るく豊かにする能力と態度を養う。

 3 仕事を合理的,創造的に進める能力や協同,責任および安全を重んじる態度を養う。」

 ここで問題にしたいのは「生活」という言葉であるし,「生活を明るく豊かにする」と いう表現である。

 「生活を明るく豊かにする」という表現は,よく考えてみると,つかみようのない内容

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なのである。「生活を明るく豊かにする」ということは,物心両面から100人lQO様のと らえ方ができるのである。これが指導目標の中の重要な地位を占めているのだから問題で あり,少なくとも大多数の者が共通に理解し合える内容を目標にすべきであろう。

 さらに一歩ゆずって,この目標を是認するとしても,「生活を明るく豊かにする」ため には,政治,経済,文化,教育など,あらゆる生活環境が影響するであろうし,また,「生 活を明るく豊かにする」ことが中学校教育で必要ならば,技術的な面からばかりでなく,

他の教科でも重要な指導目標となるべきなのに,技術・家庭科内でしか考えられていな い。技術。家庭科の指導だけで,「生活を明るく豊かにする」ことができると思っている のであろうか。

  「生活」の意味をもう少し考えてみよう。

 われわれ人頭の「生活」は,生産を基底とし,さまざまな構成要素が相互に影響しあっ て成立っていると考えられる。生産の原動力である「技術」の発展は,直接的に人間生活 の充実向上を規定する重要な要因とみられる。このように「生活」を広く解釈してみると

「生活に必要な技術」とは,たんに目先の「生活技術」を意味するものではなく,広範囲 な人工生活に関係する技術という意味になる。このように「生活」を広い意味にとらえる のはよいし,いろいろな手引書などでも,広い意味で説明されているようである。ところ が,指導要領の内容にまで立入って「生活」を調べてみると,どうしても「日常生活」,

「消費生活」の意味が非常に強くなってきて,「生活」を広く解釈せよということが無理 になってきてしまう。「生活の知恵」的内容が指導項目としてあげられているため,どう しても前に述べた「生活」の意味が,狭い目先の「日常生活」という意味になってしまっ

ている。

 いずれにしても「生活」という言葉の意味が,解釈のしようで何とでも変るのであるか ら,その言葉が目標の主要部分を占めるということは,この教科の性格をあいまいなもの にしてしまうことになる。

 (2)技術・家庭科(男子向き)の内容

① 木工機械,工作機械使用の問題

 新指導要領の内容を検討してみて,木工機械,工作機械の使用が消極的になったのが目 立つ。はっきりした見通しもなく,相当の予算を使って木工機械,工作機械を買わせてお きながら,事故が相次ぐとあわてて通達を出して使わせないようにし,今度の改訂では,

「木工機械や工作機械については,その指導を欠くことができる」としてある。もし現場

で,そのような機械を使って事故が起きたとすれば,それは「題材の選び方がまずかった

から」「安全指導がまずかったから」ということになりかねない。現場では責任問題で損

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技術科.教育分科会

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をしないように,このような機械を使わない方が良いという気持になり,せっかくの施設,

設備を遊ばせるということになるだろう。安全装置をつければほとんどの事故が防げるこ とは明らかなのに,そのような措置をこうじないで,使わせないようにしてしまうという 姿勢には問題がある。木材加工でも金属加工でも,前時代的な手工作だけでは,技術教育 の意義が薄:れてしまうことになる。

② 施設,設備の問題

 前にも述べたように,木工機械,工作機械に安全装置をつけることは,緊急を要する問 題である。

 それと同時に,栽培関係の施設,設備も考えられなくてはならない。栽培の指導目標と して「作物の環境調節や化学調節を加味した栽培」とある。そして「栽培に必要な施設,

用具および資材の使用法ならびに管理作業について指導する」となっている。ここで言っ ている施設,用具とは,植木鉢一つ,こて一つを意味しているわけではなかろう。まして 環境調節や化学調節を加味するとなると,自然環境の中での栽培とは,だいぶ趣きを異に する。このような条件で作物栽培をやるためには,どのような施設,設備が必要なのか考 えられているのだろうか。大規模な学校や都市の学校では,今までによほどそのような施 設,設備が整っていない限り,お手上げといった感じである。その他の学校でも,この内 容をまともに受止めて実施するには,それ相当の施設,設備が必要なため,その対策には 頭を痛めよう。今まででも,技術科の栽培学習はおざなりでいどで,学校園や学級園など でその場をつくろってきたという実情をどう考えているのだろうか。

③ 日常生活と機器,製品,家具などの選択問題

 木材加工,金属加工,機械,電気の学習内容には,(6)項目に「日常生活における機器の 選択について指導する」としてある。これが最も技術・家庭科の性格を綾小化している項

目で,「生活」の意味を「消費生活」にウェイトを置いた内容にしてしまっている。技術 的学習をしたからといって,すぐに「日常生活」での機器の選択ができるはずのものでは なく,洪水のようにあふれている製晶が理解できるものでもない。仕上ってしまっている 製品について,技術的面からどのていど検討できるか問題であるし,選択となると耐久性,

デザイン,材質,価格など,あらゆる面から検討しなければならない。そのため一般には,

知りあいの専門家や使用した経験のある友人などに聞いて選択しているのが実情であろ う。さらに技術的には同じであると思われる同じ会社の製品でも幾種類もある時代なのに,

技術的学習だけでそれが判断できるであろうか。無理に「技術学習」を「日常生活」に結

びつけたとしか考えられない項目であり,技術教育の性格をねじまげてしまう恐れのある

項目である。ここで念を押しておきたいことは,中学校で学習したことが「日常生活」に

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役に立って悪いと言っているのではない。このような「生活の知恵」は必要であろうが,

これはすべての教科を学習する時に,さらには家庭生活,学校生活全体を通して,自然に 養われるものであり,技術。家庭科の学習だけでそれを身につけさせようというところ に無理があるし,この教科の性格をあいまいなものにしてしまうことにもなる。

④使用言語の問題

○ 「生活」

 この言葉は,とらえどころがはっきりしないため,この教科の性格をあいまいなものに している,ということは今までに何回も指摘してきたので,ここでは改めて問題にはしな

い。

○ 「設計」

 どのていどの意味で使っているのかはっきりしないが,生徒達に「設計」をさせる場合 には,よほどの予備知識や経験がない限り,無理であろう。「設計」はむずかしい仕事な のだが,「模倣」ていどまで含めて考えているように思おれ,安易に「設計」という言葉 が使われている感じである。

○ 「公差」

 同様なことがここでも言える。機械工作などで使われている「公差」は,そうとう精密 な加工をする時に使われる言葉なのに,たんなる「誤差」ていどの意味で使っているので はないのだろうか。中学校に設備されているような機械で,どうして「公差」を教えるこ

とができようか。あまりに現実とかけ離れた言葉を使っているように思われる。

⑤その他の閥題

 新指導要領をこまかに検討してみると,なお幾多の問題が出てくるが,最初のねらいで ある「技術科教育の本質」の追求とはかけ離れてくるので,2・3の指摘に止めておく。

○ 「製図」に関する問題

 図学的色彩を濃くしたことは肯定できるが,JIS規格については,今まで位に扱って もよいのではないか。木材加工,金属加工への発展だけではなく,機械学習への発展も考 えて機械要素の略画法としてのボルト,ナット,ばね,歯車は取り入れるべきであろう。

○ 「機械」に関する問題

「動く模型または生活用品の設計と製作を通して,機械のしくみについて指導する」とあ り,その内容として「(7>運動の方向や速さを変えるしくみ,(イ〉回転運動を往復運動に変え るしくみ,(ウ)平行運動のしくみ,をもつものを設計し,製作することができること」とし ている。

 「動く模型」とは,紙や木材などを利用した「おもちゃ」ていどであろうが,この「お

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技術科教育分科会 103

もちゃ」ていどでも「設計jとなると容易ではなく,「模倣」ていどになってしまうであ ろうし,それからさらに「機械のしくみ」にまで発展させるには飛躍があり過ぎるようだ。

○ 「電気」に関する問題

 r増幅回路を用いた装置の設計について指導する」,「電気回路要素のはたらきと使用 法について指導する」,「増幅回路を用いた装置の組み立てと調整の方法について指導す

る」などとあり,一方では「電気回路要素のはたらき」については,それぞれの特徴を理 解させる程度にとどめ,定:鼠的に取り扱わないことを原則とするとしてある。

 「電気回路要素のはたらき」をある程度定量的に扱わないで,どうして「設計」までで きるのだろうか。さらに「電気的な雑音の防止について」まで指導するとあるが,「電気 的な雑音」は多種多様であるし,そんなことよりも「電気回路要素のはたらき」をある程 度定量的に扱い,その原理を理解させることの方が,他への応用もきいてよいのではなか

ろうか。

 3.「技術科教育のあり方」への指向

① 技術・家庭科の目標と男女共学

 今まで述べてきたことからわかるように,「技術の習得」を第一次の目標にするのはよ いが,「生活に必要な技術」という場合の「生活」は,解釈がいろいろで問題が多いし,

「生活を明るく豊かにする」ことが終局の目標というのでは,なおさらこの教科の性格を あいまいにしてしまっている。他の教科の目標に目を通してみても,もっと明確な表現に なっているし,指導内容との結びつぎも密接である。

 技術・家庭科にこのような問題が生ずるのは,「技術学」を中心とすべき「技術科教育」

と,「家政学」を中心とすべき「家庭科教育」とを,「生活技術」というあいまいな形で,

無理に結びつけているからである。

 さらに指導内容を「男子向き」「女子向き」と区別しているのは,「女子は家庭へ」と いう・一・一一一時代署の思想が,その底にあるように思われる。体育のように,どうしても男女の

肉体的な差を考慮しなければならないような場合を除いては,少なくとも義務教育段階で は,男女の差別を無くすべきである。

 一般教育として基礎的技術を学習させるところの「技術科教育」は,もっと目標を明確 にし,男女共学にしなければならない。

② 小学校での技術科教育

 小学校の理科教育で,生物についての学習はするが,栽培についての学習は,技術的な

面からみると,はなはだおそまつと言わざるを得ない。また,図工教育で木材加工,金属

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加工も扱うが,やはり技術的な意味で物足りない,教科のねらいが違っているのだから,

技術的な面が不足していても当然なのかも知れない。しかし児童は,草花などの栽培につ いても,木材などの加工についても,早くから見よう見まねで親しむことが多い。また,

機械や器具を操作したり製作したり,さらには無線技士の免許を取ったりもする。児童の そのような意欲とは食い違って,技術に関する本格的な学習は,中学校へ移ってからでな ければ行われない。教育が効果をあげるのは,児童生徒が最も欲している時に与えた場合 であろう。このような考えから「技術科教育」は,少なくとも小学校の高学年から始めら れなければならない。

③技術科教育の領域

 新指導要領では,「製図」 「木材加工」「金属加工」 「機械」 「電気」 「栽培」の6領

:域が設けられた

 この6領域をもう少し拡張して,「非金属加工」と「技術史」を含ませたいと思う。

○今日,われわれのまわりには,「木材」や「金属」以外の材料が,いろいろなところ に使われているのが目につく。新建材やプラスチックなどの「非金属材料」を使った器具 が数多く造られているし,「木材」や「金属」と組合わされた製晶も数多い。このような 時代であるから「木材加工」「金属加工」だけではなく「非金属加工」も加えるべきであ ろう。それらを別々に指導する場合もあろうが,それらが融合した腫物の製作を通して,

より新らしい形の技術科教育をねらうべきではなかろうか。技術科教育は,「物理的技術」

が中心であることに異論はないが,それ以外に「生物的技術」が含まれているように,

「非金属加工」を通して,「化学的技術」を学ばせることも可能になるであろう。

○ 人類の歴史とともに歩んできた技術の流れをたどり,今日の技術の発展を考え,技術 と人問の関係,技術の持つ性格などを学ばせることは,技術科教育の背骨として,ぜひ必 要であろう。それがひいては,将来の社会の形成,人間の形成に重要な役割を果すことに なるからである。それだからこそ「日常生活の技術」というような屡小化した技術のとら え方は,技術科教育の本質を見失わせることになってしまうということを,もう一度つけ 加えておきたい。このような意味の「技術史」を,どのような形で生徒に与えていくのか は,さらに検討を必要とするが,ついでに指導するていどではなく,技術科教育のまとめ の段階で,はっきりした項目として扱うことにしたいと思う。

 4. お わ り に

 われわれは,今年度は,「技術科教育のあり方」を新指導要領の検討から見出そうと努

力してきたが,指導要領の検討に大部分の日数が費され,われわれの目的である「技術科

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技術科教育分科会 105

教育の本質・目的・領域」を明確にさせることはできなかった。しかし今回は,何とかその 足がかりがっくれたようで,これからはそれをもとに,それぞれの課題を分担して研究し,

一日も早く初期の目的を達成したいと思う。助言と批判を期待する。

       (技術科研究室   新妻陸利)

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