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原著 :秋 田大学医学部保健学科紀要1
2(2):129‑137,2004秋 田大学医学部附属病院における棒癒外来の現状 と治療 ・ケアの実際
小 玉 光 子* 伊 藤 登茂子目 安 粛 真 一…
浅 沼 義 博‥
普 ヒ 日 ユ
本院裾癒外来を開設 して以来
1年
3ケ月間に受診 した144名の患者 を,手術 の有無や裾癒発生 の背景 因子 の観点 か ら検討 した.
非手術例9
3名の診療科別内訳 は,呼吸器内科が1
7名
(18%)と最多であ った. しか し, 消化器 内科 と消化器外科 ( 肝胆謄外科, 胃腸外科、食道外科)を合せ ると
29名
(31%)に達 した.手術例51 名の診療科別内訳 は, 心臓血 管外 科が1
2名
(24%)と最多であ った. しか し,消化器外科 ( 肝胆牌外科,胃腸外科,食道外科)全体で は1
7名
(33%)に達 した.平均手術時問 は,心臓血管外科5 . 4時間,肝胆障外科5.
0時間,胃腸外科4.
5時間であ った. また,患者 の栄 養状態 および術後 の身体装着物 による体動制限 も裾癒発生の一因 と考え られた.
裾癒対策 チームの関わ りが奏効 した消化器外科術後症例を呈示 した.7
5歳,男性,下部胆管癌 に対 し,障頭十二指 腸切除術施行後 に仙骨部 に
5×3.6cm,
NPUAPステージⅢ,
DesiGN12点の裾癌が発生 し裾癒外来 に紹介 された. 圧 切替型 エアーマ ッ トレスの使用,ずれ防止,栄養状態 を改善す ることにより約
1ケ月で治癒 した.
今後 は,癌終末期 の患者や術後 の碍癒発生率の高 い診療科 には,体圧分散 マ ッ トレスなどの予防環境 を特 に徹底 し たい. また,手術時間が 4時間以上 となることが予測 される患者では,術中の体圧分散 に留意 してい く必要がある.
Ⅰ. は じめに
平成
14年 度 の診療報酬 改定 によ り, 入院基本料 に
「裾癒対 策未実施減算」 が導入 された. 各 施 設 に は
「裾癒対策 チーム」 の設置が要件 づ け られ, 在 院患者 の裾癒発生状況 の把握 や予防活動がなされているとこ ろである.
秋 田大学医学部附属病院で は平成
14年
1月に裾癒外 来 を開設 し,平成
15年
3月 までに同外来受診患者数 は
144名であ った. これ らの患者全 てが入院時か ら裾癒 危険要因保有者であ った とは考えに くい.大浦 は 「 裾 癖 の うち危険要因保有者 に発症 した裾癖 を起因性裾癒 とし,危険要因を保有 しない自立 している健康人 に発 症 した裾癒 を,偶発性裾癖 と
2つの タイプに分 けて評 価す るべ きである
」1)と述べてい る. これ らの うち偶 発性裾癒 の原因 として は,意識消失 や麻酔等があげ ら
れ る.
そ こで,高度医療 を行 う大学病院 における裾癒発生 の背景 として,手術 の有無 に着 目 した.
この研究 の目的 は,当院 における裾癒発生 の特徴 を 明 らかにす ることと,当院裾癒対策 チームでの関わ り が奏効 した術後 の 1症例 を振 り返 ることで,今後 の裾 癒患者治療 な らびにケアへの示唆を得 ることである.
Ⅱ.対象 と方法
1.対象
秋 田大学医学部附属病院で平成
14年
1月 よ り平成
15年
3月までに裾癒外来 を受診 した患者数 は
144名 で あ
る.内訳 は,手術 と関連 しない症例 ( 以下,非手術例) が
93名,手術後 に発生 した症例 ( 以下,手術例)が
51名であ った ( 表 1 ).
*秋 田大学医学部附属病院 看護部
**秋 田大学医学部保健学科 看護学専攻
***秋 田大学医学部附属病院 皮膚科
秋田大学医学部保健学科紀要 第1
2巻 第
2号
KeyWords:
裾癒
裾癒 の状態評価 術後 の裾癒 裾癒治癒過程
129
(26)
小玉光子/秋田大学医学部附属病院における裾癒外来の現状 と治療 ・ケアの実際
表 1.非手術例 ・手術例の診療科別裾癒発生人数
非手術例 手術例
肝胆揮外科
胃腸外科 食道外科 消化器 内科 心臓血 管外科 循環器 内科 呼吸器外科 呼吸器 内科 脳外科 泌尿器科 乳 甲外科 耳鼻科 婦人科 整形外科 歯科 口腔外科 小児外科 眼科 皮膚科 神経 内科 血液内科 代謝科 小児科 放射線科 精神科 麻酔科
救急部腎臓 内科
合計
2.
調査項 目
非手術例
93名および手術例
51名 について,それぞれ 以下 の項 目を検討 した.
1)性別
2
)裾癒外来初診時年齢
3)所属診療科4)手術例 における平均手術時間
5)裾癒外来治療が奏効 した消化器外科術後症例
の治癒過程
130
なお, これ らのデー タは,裾癒外来への依頼用紙 と, 裾癒往診患者 の記録 として保管 され る 「 裾癒 に関す る 診療計画書」か ら,研究者 らが収集 ・整理 を行 った.
3.
データ分析方法
有意差検定 には,
Studentの
t検定 お よび
Fisherの直接法を用 い
p<0.05を有意差 あ りとした.
4.
裾唐の状態の評価
裾癖の分類 とその経過 は, 日本裾癒学会 によって作 成 された
「DESIGN」に準拠 した2 ) 3 ) 4 )
裾癒の状態の評価 には,重症度分類用 ( 表
2)と経 過評価用 ( 表
3)がある.重症度分類 用 は,
DESIGNの項 目を軽度 と重度 に区分 し,軽度 の場合 はアルファ ベ ッ トの小文字,重度 の場合 は大文字 で表す.経過評 価用 は,各項 目を細分化 ・点数化 し,重度な ものほど 高得点 とな り,改善傾向が見 られれば点数が減少する.
最高点 は
28点,治癒 は 0点 となる.
2002年 か ら導入 さ れた裾癒対策未実施減算 において も
「DESIGN」が採 用 されている.
5.
倫理的配慮
患者情報保護 につ いては,氏名,職業 および治療 の 日付 も記載 しない等,十分 に配慮 した. また,裾癖 の 治癒過程の写真撮影 は,患者本人の許可 の もとに行 っ た.
Ⅲ. 結 果 1.年齢 ・性別
非手術例
93名の内訳 は,男
66名,女
27名であ り,初 回受診時の平均年齢 は
65歳
±18歳 で あ った. 一方, 手術例
51名の内訳 は,男
35名,女
16名,初回受診時の 年齢 は
61歳
±21歳で あ った. 非手術例 と手術例 との 間に性別,年齢 につ いて有意差 は認 め られなか った.
2.
診療科別裾癒発生率
1)非手術例
93名
裾癒外来受診例 の うち非手術例
93名の診療科別内訳 を表
1に示す.多 い順 に,呼吸器 内科
17名 (
18%), 胃腸外科
8名
(9%),消化器内科
8名
(9%),神経内 科
8名
(9%),肝胆牌外科
7名
(8%),食道外科
6名
(7%)等であ った.すなわち,呼吸器内科 が
17名 と最 多であ ったが,消化器内科 と消化器外科 ( 肝胆勝外科, 胃腸外科,食道外科) を合計す ると
29名 に達 し,非手 術例 の うち
31% (29/93)を占めていた.
なお,呼吸器内科患者 の うち, レス ピレーターを装 着 していた患者 は
17名中
6名であ った. また,非手術
秋田大学医学部保健学科紀要 第
12巻 第
2号
蓑 2. 「 裾癌 の状態 の評価
」DES IGN : 裾癒重症度分類用
\Jノ
囲 詩 仙 \ 巽 EB 汁 焼 開 場 崇 茸 潮 罫 罰 LC 堅 } か 葡 科 学 米
o蓮 荒 t 赤 熱 ・ 寸 7 0) 湘 霜
カルテ番号 ( )
患者氏名 ( '
巨時 / / / / / /Dept h 深さ ( 創内の一番深 い ところで評価 する)
EXudat e 浸 出液 (ドレッシング交換の回数)
㌔ 1 日1回以下 E
1 日 2回以上
Si ze 大きさ 【 長径 (cm) ×短径 (cm)】
I nf l ammat i on/l nf ect i on 炎症/感染
I 局所の感染徴候 な し l 局所の感染徴候 あり
Gr anul at i ont i ssue 肉芽組織 ( 良性肉芽の割合)
g 50
% 以上 ( 真皮 までの損傷時 も含 む) G
50%未満
Nec「 Ot i ct i ssue 壊死組織 ( 壊死組織の有無)
∩ なし
̲Nあり
Pocket ポケット ( ポケ ッ トの有無)
‑Pあり
部位 [ 仙骨部.坐骨部.大転子部.旺 部 , その他 ( ) ] 巽 EB 汁 亜 圃 場 崇 蔀 南 職 掌 琵 糖 湖 )2 鹿 部
2dilW
◎l I 本
将桁 学 会//2002闇昭刑
、Jノ 囲 jt 項 \ 巽 EE] 汁 亜 圃 場 票 苛 諭 罫 罰
LC堅
j・か 葡 敢 宰 米 8 薗 荒 t 赤 熱 ・ 寸 7 8 湘 霜
表 3. 「 裾癌 の状態 の評価
」DES IGN : 裾癒経過評価 用
カル テ番 号 (
)
患者氏名 ( ) 日
時 / / / / / /Depth
深 さ ‑創 内の一番深 い部分 で評価 し、改善 に伴 い創底 が浅 くなった場合 、これ と相応の深 さとして評価 する
d 0
皮膚損傷 .発赤 な し
D3 皮下組織 までの損傷
1
持続 す る発赤 4 5 皮下組織 を越 える損傷
2
真皮 までの損傷 関節腔 、体腔 に至 る損傷 または、深 さ判定 が不能の場合
EXudate
浸出液
e 0
1 少量 :毎 日の ドレッシング交換 を要 しない な し
E3 多量 :1日
2回以上の ドレッシング交換 を要する
2中等量 :1日1回の ドレッシング交換 を要 す る
Size
大 き さ 皮膚 損傷範囲 を測定 : [ 長径
(cm)×短径
(crn)]S0
皮膚 損傷 な し
S6 1 00以上
1 4未満
24以上 1 6未満 3 16以上36未満 4 36以上64未満 5.64以上 100未満
ーnftammation/lnfection
炎 症 / 感 染
・1
0 局所の炎症徴候 な し 1 局所の炎症徴 候 あ り ( 創周囲の発赤 、腫脹 、熱感 、序痛 ) I
.23 全身的影響 あ り ( 局所の明 らかな感染徴候 あ り ( 発熱 など) 炎症徴候 、膿 ‑悪臭 など)
Granulationtissue
肉芽 組 織
冒
01 良性 肉芽 が創 面 の90%以上 を占める 治癒 あるい は創 が浅 い ため肉芽形成の評価 がで きない
G̲ 3 良性肉芽 が創面の10%以上50%未満 を占める 4 良性 肉芽 が創面 の10%未満 を占める
2良性 肉芽 が創面 の50%以上90%未満 を占める 5 良性肉芽 が全 く形成 されていない
Nec「Otictissue
壊 死 組 織 混在 してい る場 合 は全体的 に多 い病 態 をもって評価 する
∩ 0
壊死組織 な し
N1 柔 らかい壊死組織 あり
2 硬 く厚 い密着 した壊死組織 あ り
ポケ ッ ト 毎回同 じ体位で、ポケ ッ ト全周 ( 潰癌面 も含 め)[ 直径
(cm)×短径
(cm)]から漬寝の大 きさを差 し引いたもの
なし 記載 せ ず
‑P21 4未満 4以上16未満
3 1 6以上36未満 4 361 : J上
◎
Ll本掃桁 学 会/2 00 2
)
3
2栗 田 汁 購 圃 場 曽 蔀 商 職 掌 琵 柵 湖 ) 2 勝 報
2胡小玉光子/秋田大学医学部附属病院における裾癒外来の現状 と治療 ・ケアの実際
例患者 の うち,裾癒外来受診後
1ケ月以 内 に当院 にて 死亡 した患者 は
93名中
26名
(28%)で あ った.
2
)手術例
51名
手術例
51名 の診療科別 内訳 も表
1に示す.多い服 に, 心臓血管外科
12名
(24%),肝胆牌外科
8名
(16%), 胃腸外科
7名
(14%),脳外科
5名
(10%),泌尿器科
5名 (
10%)等 で あ った. 消化器外科 ( 肝胆牌 外 科, 胃腸外科,食道外科)全体 で は
17名 に達 し,手術例 の うち
33%(
17/51 ) を 占めて いた. また, 平 均手 術 時 問 は,心臓血管外科
5. 4時間,肝胆牌 外科
5.0時 間, 冒 腸外科
4.5時間,泌尿器科
4.5時 間 で あ り, いず れ も
4時 間以上 であ った.
3.
裾癒外来 での治療が奏効 した消化器外科術後症例 の治癒過程 ( 図
1)裾癒対策 チームでの関わ りが奏効 した消化器外科術 後症例 を図
1に呈示す る.
症例 :
75歳,男性,下部胆管癌
1)手術 と術後経過
平成
14年
8月某 日 膝頭十二指腸切除術施行,手術 時問 は
6時 間
24分 ( 麻酔導入 ・麻酔覚醒 な どを含 む入 室 か ら退室 までは
8時間
32分) ,出血量 は
1138mlであっ
た.術後身体装着物 は, 中心、 静脈 カテーテル (白 ・青 のル ー ト
2本),末梢点滴
2本, 硬 膜 外 カ テー テル, ウイ ンス ロー孔 にマルチ ドレー ン
1本,勝空腸吻合部 前面 にマルチ ドレー ン
1本,胆管 ドレナー ジチ ュー ブ
(RTBD),謄管 ドレナ ー ジチ ュー ブ
(RTPD), 経 鼻 胃管,勝朕留 置 カテーテル,酸素 マ ス ク,
SpO2モ ニ ター等 で あ った.
第
16病 日に
RTPDよ り出血 を認 め,再開腹術を行 っ た ところ,胆管空腸吻合部後面 に凝血魂 と膿汁 の貯留 が認 め られた. ア クテ ィブな出血 がない ことを確認 し た後,膿療腔 内 に ドレー ンを
3本挿入 し閉腹 した. そ の後 I C U に
3日間入室 した後,一般病棟 に帰室 した.
2)
裾癒 の発生 とその後 の経過
I C U か ら病 棟 に帰室 後 2 日目に仙 骨 部 に裾癌 が発 見 された.病棟 で は体圧分散 のために ウ レタンマ ッ ト
レスを用 い,局所 には創傷被覆材 ( ‑イ ドロコロイ ド) を貼付す るな どの ケアがな されていた. その後 に裾癒 外来 ( 裾癒対策 チーム) へ の依頼 があ った.初診時, 図
1aの ごと く仙骨部 に
5×3.6cmの裾癒 が認め られた.
黄 色壊死組織 が付着 し,
NPUAP( 米国裾創諮 問委 員 会) の分類 で はステー ジⅢであ り,裾癒経過評価 は
12点 で あ った. 栄 養状 態 は
Alb2.8g/dl ,
TP5.7g/dl,
Hb9.0g/dlであ り,
ⅠVH管 理 で あ った. 安静 度 は, ベ ッ ド上 ギ ャッジア ップ機能 を利用 しての坐位可であっ
秋 田大学医学部保健学科紀要 第
12巻 第
2号
(29)
た.
実施 ・指導 と して は,裾癖 の危険因子 で あ る① 日常 生活 自立度 ②基本的動作能力 ③病 的骨突 出 ④ 関 節拘縮 ⑤栄養状態低下 ⑥皮膚湿潤 ⑦浮腫 に基 づ
いて評価 した.
本症例 は日常生活 自立度 が寝 た きりの 「ラ ンク
C」であ り,基本的動作能力 も 「で きな い」, 栄 養 状 態 低 下 が 「あ り」,皮膚湿潤 は術後 の発 熱 や発 汗 が あ る こ とか ら 「あ り」 と した. 関節拘縮 と浮腫 は 「な し」 と 評価 した.
以上 の ことか ら,各種 ドレー ン類 の安全 に配慮 した 医療者介助 による定期的な体位変換の計画 と実施を行 っ た. しか し体位変換 のみで体圧 を分散 で きる状態 で は な く,圧切替型 エアーマ ッ トレスへの変更 を行 な うこ とで体圧分散 を図 った. また,上体挙上 時 に身体 がず り落 ちて きて も, 自力で は体位 を整 え ることが不可能 で あ ることか ら,ずれ予 防のため, は じめに下肢 を挙 上 し, その後約
30度 まで上体 を挙上 す る体位 を指導 し
た.栄養状態 は,経 口摂 取 とと もに
Alb2.8g/dlか ら
3.
1‑3.3g/dlと増加 し改善 が認 め られた.皮膚 の湿 潤 に対 して は速 やか に清拭 ・寝衣交換 を行 うよ う指導 し た.
局所 ケア と して は,創周囲 の皮膚 を弱酸性石鹸で洗 浄す ることと創部 の湿潤環境維持 に努 めた. 湿潤環境 を保 っためには,指示軟膏 +ガーゼの後 や‑ イ ドロコ ロイ ド材貼付 の後 に, ポ リウ レタンフイルム ドレッシ ングで覆 うよ う指導 を行 な った.裾癒対策 チーム と し て は
1週間 に
1回の往診 を行 った.
局所 の状態 と して は,裾癒外来受診 時 には黄色壊死 組織 が付着 し良性 肉芽 が創面 の
10%未満 であ ったが,
1週 間後 には良性 肉芽が創面 の
10%以上
50%未 満 を 占 め るに至 った ( 図
1b).2週 間後 には良性 肉芽 が創面 の
90%以上 を占め るよ うにな り (図
1C), そ の後 創 辺縁 か ら上皮化 が開始 した (
囲 ld).そ して
4週 間 後 には完全 に上皮化 して治癒 と認 めた ( 図
1e).なお,可動性 や活動性 の拡大 に伴 い
20日後 には体圧 分散 マ ッ トレスを安定感 のあ るウ レタ ンマ ッ トレスへ
と変更 した.
Ⅳ.考 察
特定機能病院 を中心 と した急性期病院 において,診 療報酬 の面 か らみて,患者在 院 日数 の減少 な らびに主 病以外への投薬 ・処置 の軽減 は病 院存続 に関 わ る重要 事項 とな っている.入院期間が長期 に亘 ることの多 い 裾癖 をいか に早 く治癒 させ るか とい うことは,患者 自 身 の利益 にな ることは もちろんであ るが,各病院が健 全 な医療 を提供す るとい う意 味で も重要 な課題 とな っ
133
閲巳、Jノ
出 括 項 \ 巽 EB 汁 購 圃 場 崇 葦 潮 蔀 罰 cL 計 耳 か 蔀 蒔 半 袖 a) 曲 荒 t 茸 瀞 ・ 寸 7 8 湘 謂
月日 術後
27日目 術後
34日目 1術後
40日目 術後
47日日 術後
55日目 ( 再開腹後
11日) ( 再開腹後
18日日) ( 再開腹後
24日目) ( 再開腹後
31日日) ( 再開腹後
39日) 創サイズ
5cmX3.6cm 4cm 未
満 4cm未満
2cmXO.5cm治癒
DESIGN
.合計点
DesiGN 12点
DesiGN 9点
desigN 6点
desigN 6点
治療材料
グーベ ンクリーム ゲ」ベ ンクリーム ハイ ドロサイ ト ブロスタンデイン軟膏 検査データ
Alb:2.8 TP:5.7H
b:9.0 Alb:3.2 TP:6.5I
A:9.0 Alb:3.1 TP:6.2H
b:10.0 Alb:3.3 TP:6̲5H
b:9.8栄養状態 r V
tI rVTI
.3分粥 全粥食 全粥食
安静度 ベ ッ ド上坐位可能 車椅子移乗可能 車椅子 棟内歩行可能
体圧分散マットレス ウレタンマ ットレス‑圧切 替型エアーマットレス 圧切替型エアーマ ッ トレス 圧切替型エアーマ ッ トレス ウレタンマ ッ トレス 排池 月 効光留置カテーテル+おむつ ベッドサイドポータブル トイレ 日中 トイ レ歩行 .夜間尿器 トイ レ歩行
その他
何 部光留置カテーテル抜去 月 射空ドレーン、胆管 ドレナ 入浴可、本 日退院 となる 裾 密外来 ( 皮膚科外来内)
図 1.消化器外科術後症例の治癒過程
il
E
E!巽 EB 汁 硝 圃 場 幾 菊 商 職 掌 ]芹 柵 湖 )2 併 湖
2滴
小玉光子/秋田大学医学部附属病院における裾癒外来の現状 と治療 ・ケアの実際
ている.
当院の裾療発生の特徴
平成
14年
1月か ら平成
15年
3月 までの
1年
3ケ月間 に本院の裾癒外来 を受診 した患者数 は
144名で あ り, その うち非手術例 は
93名
(64.6%)であ った. この非 手術例
93名 の診療科別 内訳 をみると,呼吸器内科が
17名 (
18%)と最多であ った.
呼吸器内科の患者 は,慢性呼吸不全で レスピレータ‑
を装着 している患者や肺癌などの癌終末期患者が多かっ た.呼吸器内科患者 に裾痕の発生が多か った理由 とし て は,東 口が 「呼吸器障害を有す る症例で は,動脈血 液中の酸素分圧が低下 し,組織への酸素運搬量が減少 して虚血 に陥 る
」5)と述べてい る ことが該 当す ると考 え られ る.裾癒 はさまざまな要因か ら発生す るが,低 酸素症 に陥 った場合 は組織耐久性が著 しく障害 される.
また,終末期 において は積極的な裾癒治療が必ず しも 患者 に有益 とはいえず,呼吸状態や循環動態が不安定 な患者 を処置のため長時間側臥位 にす ることは危険で あ るとい うことについて は諸家 によって述べ られてい るところであ り6 ) 7 ) ,現状 を悪化 させず に患者の安楽を 優先 した処置方法を選択す る必要があると考える.
また, 消化器 内科 と消化器外科 を合計 す る と 2 9 名
(31%)
とな り,消化器疾患 の症例数が最 も多か った.
消化器疾患 の患者では胃癌,肝臓癌,食道癌など癌終 末期患者が多か った.癌終末期患者に裾癒発生が多かっ た理 由 としては,癌悪液質が全身倦怠感 を増強す るこ とが示唆 されてお り8 ) ,全身の衰 弱 に伴 って活動性 が 低下す るため,裾癒発生 につなが ると考え られた.
一方,手術例
51名
(35%)の診療科別内訳をみると, 心臓血管外科が
12名
(24%)と最多であ った. しか し 消化器外科 ( 肝胆勝外科,胃腸外科,食道外科)全体 で は
17名
(33%)を占めていた. また,平均手術時間 をみ ると,心臓血管外科
5. 4時間,肝胆勝外科
5.0時間, 胃腸外科
4.5時間,泌尿器科
4.5時間で あ り, いず れ も
4時間以上であ った.倉橋 らは,外科手術後 の裾癒発 生危険因子 と予防の検証 を行 った結果, 「手術 時間
4時間以上 も危険因子 と して考慮 に入れ るべ きである
」9)と報告 している.患者 の臥床時間 は,前述 の手術時間 にとどま らず,麻酔導入時間,麻酔覚醒時間,病棟帰 室後 の安静臥床時間などが引 き続 き加わ り, さ らに術 後 も長時間の臥床 を強 い られ る状況 にあると考える.
また,基礎疾患 の重篤 さや手術 による生体への侵襲, 循環血液動態の不安定 などが,他疾患の術後 に比べて 裾癒発生 が高率 とな った要因であると考え られ る.覗 荏,当院 は,術後引継 ぎ用紙 に皮膚の状態のチェック 欄 を設 け,手術体位 による圧迫部位をチェックす るシ
秋田大学医学部保健学科紀要 第
12巻 第
2号
(3
1 )
ステムを とっている. しか し,術直後 には皮膚の変化 を認 めな くて も,病棟帰室後 も圧迫部位 の観察 を継続
してい くことが必須であると考える.
消化器外科手術後 に発生 した裾唐の治癒経過程 裾癒外来 にて加療 し治療が奏効 した
1症例 を呈示 し たが, この症例 の治療 ポイ ン トは,体圧分散,ずれの 予防,栄養状態の改善であ った.大浦 は, 「裾癖 の予 防 ・治療 において基本 とな るものは体位変換 と体圧分 散 マ ッ トレスと栄養である」1 0 )と述べている.
一般 に消化器外科手術例 においては,術前か ら経 口 摂取不良で低栄養状態 にあること,手術時間が長 い こ と,術後の経 口摂取 も遅 れがちであること,体液の喪 失 に伴 う倦怠感や身体 に装着 された ドレー ン類や周辺 機器へ, の配慮か ら術後 の体動 を制限 し,早期離床が遅 れ ることなどが術後 の裾癒発生率 を高 めていると考 え
られる.
術後 の早期離床 について井上 は, 「術後 の患者 は身 体 の苦痛や装着物のため, どのようにあるいはどの程 度 まで動 いてよいのかなどの目安がわか らな い
」11)と 述べている.今回の症例 も自力体位変換可能 の指示が あるとはいえ, ひとりで体位変換 を行 うには危険が伴 う状態であ った ことか ら,医療者 の介助 による安全 に 配慮 した定期的な体位変換が必要 とされた. また,す でに裾癌が発生 している患者へのウ レタンマ ッ トレス の除圧効果 は低 い. 消化器癌術後患者 や I C U 入室患 者などに適切 な体圧分散 マ ッ トレスを使用す ることに よ り,裾癒発生率が低下す る1 2 )と報告 されていること か ら,本症例 には体圧分散効果の高 いマ ッ トレスを選 択す る必要があ り,圧切替型 エアーマ ッ トレスを使用
したことは適切であ った といえる.
ベ ッ ドのギ ャッジア ップ機能 を利用 して,患者 は上 体挙上可能であるが,ず り落 ちた体位 をひとりで直す ことはまだ困難 な状況であるため,仙尾骨付近 に ̀ ず れ,力が生 じやすい.人 は 「 加齢 によ り皮膚組織 の繊 維性が硬直す るため,わずかな機械的応力 によって も 容易 に繊維の切断や崩壊が起 こる
」5).すで に裾癒があ る本症例の場合 は,裾癖 の悪化 のみな らず ポケ ッ トの 形成を助長す る要因 に もなる. したが って大腿後面で 体重 を支えることによって,摩擦やずれを減少 させ る 必要があった.
低栄養 になると組織耐久性が低下 し創傷治癒が遅延 す る. また,肝 の蛋 白合成低下 は創傷治癒 や生体防御 に不可欠 な蛋 白, 血 液凝 固因子 な どが不足 につ なが る1 3 ) . しか し経 口摂取が進むにつれ栄養状態 の改善 が み られた. また身体 を拘束 していた ドレー ン類の抜去 が進み,体動が容易 とな り裾癌 の危険因子 は取 り除か
135
(32)
小玉光子/秋田大学医学部附属病院における裾癒外来の現状 と治療 ・ケアの実際
れ て い った.
以 上 の よ うに本 症 例 で は, 術 後 , 多数 装 着 され た ド レー ン類 の安 全 に配 慮 した定 期 的体 位 変 換 と体 圧 分 散 効 果 の高 い マ ッ トレスの使用 によ る圧分散, また, ベ ッ
ド上 で のず れ 防止 , さ らに栄 養 状 態 の改 善 が み られ た 結 果 , 裾 癖 が順 調 に治 癒 した もの と考 え られ る.
V.
結 論
本 院 裾 癒 外 来 を開設 して以 来
1年
3ケ月 間 に受 診 し た
144名 の患 者 を, 手 術 の有 無 や 裾 癒 発 生 の 背 景 因 子 の観 点 か ら検 討 した.
非 手 術 例 で は呼 吸器 内科 や消 化 器 内科 ・外 科 の癌 終 末 期 患 者 に裾 癒 の発 生 が多 くみ られ た. ま た, 手 術 例 で は心 臓 血 管 外 科 や消 化 器 外 科 の術 後 に裾 癌 の発 生 が 多 くみ られ た.
今 回呈 示 した消 化 器 外 科 術 後 症 例 にお い て は, 体 圧 分 散 効 果 の高 い マ ッ トレスの使 用 やず れ 防止 , 栄 養 状 態 を 改 善 す る こ と に よ り,
NPUAPス テ ‑ ジ Ⅲ ,
DesiGN12点 の裾 癒 が約
1ケ月 で治 癒 に至 った.
おわ リに
今 後 は, 癌 終 末 期 の患 者 や術 後 の裾 癒 発 生 率 の高 い 診 療 科 に は, 体 圧 分 散 マ ッ トレスな どの予 防環 境 を特
に徹 底 す る必 要 が あ る.
文 献
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秋田大学医学部保健学科紀要 第
12巻 第
2号
小玉光子/秋田大学医学部附属病院における裾癒外来の現状 と治療 ・ケアの実際
Pa t i e nt sCha r a c t e r i s t i c so fOut pa t i e ntCl i ni co fPr e s s ur eUl c e r s a ndt heCo nt e nto fNur s i ngCa r ei nAki t aUni ve r s i t yHo s pi t a l
MitsukoKodama
*
TomokoltoH ShinichiAnsai***
YoshihiroAsanuma**
*
DepartmentofNursing,AkitaUniversityHospital* *
CourseofNursing,SchoolofHealthSciences,AkitaUniversity***DepartmentofDermatology,AkitaUniversitySchoolofMedicine
(33)
Inthese15months,atotalof144patientsvisitedtheoutpatientclinicofpressureulcersinAkitaUniver‑ sityHospita
l
.Amongthese144patients,93werenon‑surgicalpatientsand51werepatientswhohadunder‑ gonesurgerybeforehand.Of93non‑surgicalpatients,17
(
18%)belongedtotheDepartmentofRespiratoryOrgans,andasmanyas 29(31%)belongedtotheDepartmentofDigestiveOrgansandDepartmentofGastroenterologicalSurgery (hepato‑pancreato‑biliarysurgery,gastro‑intestinalsurgery,esophagealsurgery).Of51patientswhosepressureulcersdevelopedpostoperatively,12(24%)belongedtoDepartmentofCar‑ diovascularSurgery,andasmanyas17(33%)belongedtotheDepartmentofGastroenterologicalSurgery.
Themeanoperativetimewas5
.
4hoursforpatientsofDepartmentofCardiovascularSurgery,5.0hoursforpa‑tientsofDepartmentofHepato‑Pancreato‑BiliarySurgery,4.5hoursforpatientsofDepartmentofGastrointes‑ tinalSurgery.
Theriskfactorsforpostoperativepressureulcersincludethemalnutritionandpatients'disabilitytofunc‑ tionduetobodyrestrictionbyvariousdrainagetubesetc.
Acaseof75y/omalewhosufferedfrom lowerbileductcancerandunderwentpancreatoduodenectomy waspresented. Deeppressureulcer(5×3.6cm insize,NPUAP stage
Ⅲ
,DesiGN 12 points) developed postoperativelyatthesacralareaandhewasreferredtotheoutpatientclinicofpressureulcers.Thepressure‑ dispersingmattresswasadopted,therubwaspreventedandnutritionalconditionwasimproved,thenthe pressureulcerwascuredwithinalmost1month.Apressure‑disperslngmattressShouldbepreparedsufficientlybrtheDepartmentsthattakecareofpa‑
tientswithcancerintheterminalstageandfortheDepartmentswithhighincidenceofpostoperativepressure ulcers.Furthermore,forpatientswhoseoperativetimemightexceed4hours,pressuredispersionduringop‑
erationshouldbeintended.