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隣幽育奇繍

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隣幽育奇繍

大学における自校教育の現況とその意義 一全国国立大学実施状況調査をふまえて一

秋田大学 評価センター

  大川一毅

A Study on Contemporary Trend of    Own−University Education

    in Japanese University Kazuki OHKAWA

1 大学における自校教育 1 教養教育改革の方向性

 大学教育の変革が進行する今日の潮流にあっ て,各大学それぞれの教育理念に応じたカリキュ ラム構築や教育内容・方法の工夫が積極的に推進 されている。なかでも「教養教育」については,

大学設置基準の大綱化(1991)以来,カリキュラ ム改革が急速に進んでいった。1990年代以降の大 学審議会や中央教育審議会の答申においても,大 学における教養教育重視の方向性を鮮明にしてお り①,そこでは従来の枠組みにとらわれない多様 な試みを推奨している。1998年の大学審議会答申 では,教養教育のあり方について「(1)基本的知 識と技能の取得」「(2)多面的・総合的に判断し 対処する能力の養成」「(3)学問分野を超えた複 合的視点・豊かな人間性の酒養」「(4)専門教育 において幅広い視野に立ち学際的に取り組む力の 育成」を例示し,「基本的知識・技能」として

「文章作成・口頭発表の技法,情報処理,数量的 思考,専門基礎教育,心身の健康に関する教育」

などの要素を列挙した②。こうした背景に後押し されて,多くの大学の全学共通教育,あるいは教 養教育は,「専門体系的な授業科目編成」から,

次第に「主題別の授業科目編成」へと移行するこ ととなった③。

 これに応じるかのように「教養教育」をはじめ

とする学士課程カリキュラムに「自校教育」授業 を導入するケースが増えている。

2 自校教育導入の背景

 「自校教育」という言葉は,必ずしも聞き慣れ たものではないが,今日すでに,多くの大学で実 践されている。大学における自校教育は,広義に 解釈されているが,あえていえば「大学の理念,

目的,制度,沿革,人物,教育・研究等の現況,

社会的使命など,自校(自学)に関わる特性や現 状,課題等を中心的な教育題材として実施する一 連の教育・学習活動」となろうか。授業科目とし ては,各大学名を冠する「OO大学論」をはじめ,

自校に関わる内容も含めた「高等教育・大学論」,

あるいは「新入生適応支援授業(オリエンテーシ ョン・ゼミ)」,「キャリア・プランニング」など の授業も,広い意味で自校教育に該当するものと して理解されている。自校教育の特質は,むしろ その実施形態の多様性にあるといってよい。

 こうした自校教育が積極的に展開され始めた背 景としては,前述した①大学設置基準の大綱化に 伴う教養教育の多様化のみならず,②大学理念・

目的の明確化・周知の必要性,③「評価者」とし ての学生の資質向上,もあげられる。

 ①について,「主題別の授業科目編成」を趨勢

とする大学の教養教育においては,学生の興味関

心を喚起し,また具体的・学際的領域をテーマと

(2)

した授業科目の設定が要求される。自らの大学を 題材とすることは,すべての学生にとって,とも に共有しうるテーマであり,かつ,大学とはすぐ れて「学際的存在」であり,主題別科目として格 好の授業テーマ題材となっている。

 ②について,現代の大学を取り巻く状況の下に あって,各大学はそれぞれ自学の理念・目的を明 確にしたうえでの「多様化・個性化」の推進を求 められている。さらに,学校教育法の改正(2003)

によって義務づけられた大学機関別認証評価にお いては,それぞれの大学の理念・目的を,大学構 成員や社会・一般に周知することを要求してい る。初年度・導入教育における自校教育の実施は

「授業という実質」によって大学目的や特性の周 知を実現する効果的な手段であり,授業を運営す る教員や職員への目的周知の効果も期待しうる。

 ③について,教育活動に高い比重をかけた大学 評価活動が求められる状況にあって,学生の視点 による評価(たとえば授業評価や満足度調査など)

は不可欠である。学生は,大学教育における最上 位の受益権者であり,大学教育や授業に関しての 主要な「評価者」である。彼ら彼女らに「正当な 評価者」としての「資質」を育成することは,大 学にとっても重要な責務である。自校教育の実施 は,大学評価者たる学生に,大学の目的や理念を 正しく認識してもらい,かつ,大学についての問 題意識や改善意欲を主体的に形成することへの期 待も託されている。

3 本稿の課題

 本研究は,これら背景を有しながら展開されて いる自校教育について,全国国立大学を中心とし た状況調査を行ない,その現況を明らかにしたう えで,自校教育授業の可能性と今後の課題を検討 することにある。本稿では,まず調査結果にもと づいて,大学における自校教育の具体的実施状況 を明らかにし,その上で自校教育の意義を考察し

たい。

皿 全国国立大学における自校教育授業の実施状況 1 自校教育授業実施調査アンケートについて  本稿の検討基礎資料とする調査アンケートは,

2005年度現在における全国国立大学の自校教育授 業実施状況の把握を意図したものである。調査は

2005年8月に,国立大学83校(学士課程を有する 全大学),及び公立大学4校,私立大学21校,計 108大学に,筆者の研究意図のもとにアンケート 回答依頼書を送付して行なった。そのうち,80大 学(国立63大学:回収率77%,公立3大学:同 75%,私立14大学:同64%,全体として74%)か

ら回答協力を得ている(巻末参照)。アンケート は,国立大学を主な調査対象としているが,これ については調査対象実数の限定性が主要な理由で ある。しかし,同時に,国立大学は2004年の法人 化に伴い,大学理念・目的の明確化と教育カリキ ュラムの改革を積極的に推進し,自校教育の導入 にも積極的であることにもよる。公私立大学への アンケート発送は,自校教育に実績のある大学や

「伝統校」に限定しており,その回答結果は,個 別事例の検討,あるいは国立大学との参考比較と いう範囲で活用する。

 アンケートは,選択回答方式(一部自由記述)

によって,以下の内容で回答を求めている。

 設問1 自校教育授業の実施有無  設問2 自校教育授業の実施目的  設問3 自校教育授業の実施形態

 (1)自校教育授業科目名  (2)対象学生  (3)履修指定(学部,必修・選択,授業区分)

 (4)授業形態  (5)実施時期,配当単位  (6)担当者

 設問4 自校教育授業の内容

 (1)授業の内容  (2)教材  (3)成績評価  設問5 学士課程以外の自校教育実施状況  設問6 大学の理念・目標・社会的使命の周知    方法

 設間7 自校教育に関する自由記述

 以上,本稿で示すデータ資料は,これらアンケ ートの回答に依拠し,主に設問1から設問4,及 び設問7の回答内容を中心に論を進めていく。

図1 国立大学における自校教育授業実施比率

(3)

表1−1 大学における自校教育授業実施状況(国立大学)

大学

立穴 綬業名 授業類型 実施

態 実範

期 配当

位 学犀

定 学部

定 授薬区分 握当教黄

小樽商科穴学 学岡原譲 学闘論 講義 前期 2 全 全 鋳適 学幾専鶴敏員

総合科目K キャリア・ 予ンニング教膏 講義 後期 2 全 全 嚢通 卒業生 北見工桑大学 総合苫学Σ 専朔導入教育 講義 前・後 1 全 全 黄適 学畏、大学役員

窺海遂穴学 特割講磯 r牝海遷大学の

と学 (縦) 農絞理癩敏青 講義 爾期 2 全 全 教養 専任載員,卒叢甕,学外者 特鋼講義r北海遭犬学の人

学 く鋤) 慶校理解教斉 講義 前期 2 教養 専任教員

躍 特割鶴義r大学と社金コ キャ型ア・ ランニング数膏 講義 後期 2 1 全 教養 学長,大学般員,専托教員 北犬ヱ黙キヤンパスの

然と歴史 自絞理,解教育 演習 蔚期 2 全 轍養 学長,大学役員、専柾教員

北犬発見のススメ 自校理解敏膏 演習 前期 2

専任教員

北大総合博物弼マ学ぼう奎

然と人間 臼校理解教育 渥習 後期 融養 専任敏員

自分のキヤ》アについて考 よう

キャリア・

ラン轟ング敏育 濃習 後期 2

専任敏員

濃撃概譲 自校理解敏育 演習 前期 2 専陶 専任教員

岩手犬攣 轡手六学ミ孟一ジアム学 霞校理解教育 演習 薗期 2 塗 鋳通 専任教員

轡手大掌譲 蔭狡理郷敏育 講義 後期 2 2 全 麹通 学畏.大学役員,露局鎚。施般饅,

任教員

秩綴六学 秋田犬掌論1 匿狡趣解敏育 講義 醗期 1 1〜呂 敏饗 学外者僻f励般、数育無,財昇人,

遣駕係霜噺 秋細大学論E 霞狡理解教育 講義 煎瑚 1 1〜3 教養 専任敏員,非常鱗講節 梧島六学 総合科目r大学隷 大学史・大学鍮敏育 講義 蔚期 翌 裏 全 轍饗 専任敏員、非常勘講師 山形弐攣

由大マインド

先輩の話を聞いてみよ

自校理解教育 講義 離期 自 全 全

郎周長,専任数員,率叢生,学舛毒 書機農桑の現場で

塗然と人閥の共生」を奪 る

自己探求敏膏 演晋 醜期 1 全 全 教養 学長、卒業生,学外者 地域から学ぶ 地域理癩敏膏 演習 蔚期 2 2〜4 農 数養 掌長,卒業生,学外者 先輩から学ぶ キャリア・

ランニング鍛育 演習 後期 2 窪〜4 農 教饗 蔀局畏,専鑑教員,準叢生,学外鍛 筑波大学 フレッシュマンセミナー オリ濡ンテーショ ・ガイダンス歎育 演習 繭期 1 全 教菱 導任籔員

策京海洋失学 海の科学 専鰻導入教資 講義 酸期 1 全 教農 専任教員

海の文化 奪麹導入教育 講義 繭期 1 1 全 敏養 響任教員

束京学螢大学 現代敏宵案践の課題 オリエンテーシコ ・ガイダンス歎育 演習 前・後 2 棲士 慧通 専任敏員

儘州大学 学簡の世界 学駕論 講義 後期 2 金 繋通 曝任教員

4

新入生ゼミナール オリエンテーショ

・ガイダンス数育 演習 藩期 2 1 全 教農 郎局長,奪任教員 新潟弐学 新潟大学め情んだ私の世

・私の夢

キャリア・プランニ

グ敏膏 講義 後期 2 1〜3 全 教農 卒叢生,名誉敏授

わが学聞・教窟 学闇鏑 講義 後期 駐 全 金 教獲 学長、部尉長,専任散員 岐阜大掌 大撃の鍛育・獅寛と還営 自校理解教育 講義 後期 2 全 全 教幾 学長

岐皐大学の教宵・研寛と運 窮校理解教育 講義 後期 敏養 穴学役員,部総長,奪任敏員 名吝屋夫掌 名大の歴史をたど急 大学史・大学論教膏 講義 鹸期 2 2〜4 全 敏養 学長、専任教員

穴阪教密穴学 大阪教育大学の歴史 大孕史・大学論数育 講魏 後期 2 教養 学長,大掌役員,専任敏貫,

粟生,隣窓脅溺係者,03・OG歎員 鳥取大学 教養特釧諭義 キャジア・ ランニング教育 講義 後期 2 金 無通 学長,大掌役員,静局畏,

常勘講師 広島大掌 拡島大学の歴艶 大学史・大学論敏育 講義 後期 2 全 魯通 導任教員

山ロ穴学 知の広場 自校理解教育 演習 薗期 2 全 叢通 学長,大学役員、部局艮、弁鐘士

嵩知大学 弐学学 甘リ;ンテーショ

・ガイダンス教育 演晋 鹸期 1 1 教獲 大学役員,瓠局長,専任教員 長崎大学 医学は畏靖から 学器論 講義 離期 1 初年次 掌長,大学役員,鶴局長,

任教員

教養特釧講装 地域理解教育 演習 劾・後 2 全 全 教幾 掌長,大学役員,専任教員.

常勤講師 宮晦大学 ライフデザイン・キヤ夢ア

ザイン入門

キャリア・

ランニング教育 講義 構期 2 全 初隼次 掌長,六学役員,専任教員 鹿歴体密穴学 オ匪ノヱンテーションセミ

ーいH

オリニンテーショ

・ガイダンス教青 演習 麟期 2 三 全 初隼次 専任敏員 施児島弐学 鹿児島大学を知る 自枝理解教育 演習 前期 2 教養 専任教員

大撃では飼を学ぶか キャリア・

テンニング教育 演習 葡期 1 i 全 教養 専任敏員

1

大掌の来し方 行く業 大掌史・大掌論敏肴 講義 後期 2 全 全 教養 専任教員

本表(1畦,及び1−2)は,学士課鶴を有ずる全岡立大学83校,及び公立大学4校,私立大学21校に送付したアンケート調:査をもとに作威した。

(4)

表1−2 大学における自校教育授業実施状況(公・私立大学)

o

穴公立大

授業名 授桑類型 撫擁

態 突施

譲遇学奪 位指逡

学部

髭 授業落分 摂当教員 大阪管位大学 大阪市大でどう学ぶか 自鮫理鱗教育 講義 前期 2 藁通 学長。部局鑓

【私立大学馨

山学院大学 鰹史と人聞(総含秘自) 良己探求教管 講義 前・後 2

搾常動講帥

上智大学

キリスト教とユーマ蕊ズム 上智大学のルーツとアイ ンテイテイ)

霞絞理解教霧 講義 後期 2

専任教員,卒禁鷺

私にとって仕拳と纏 ソフ アンが る》

キャ墾ア・

ラン轟ング教育 講義 後期 2

専任教員,奉藁生

学習院大学 学習院大学虫 大栄史・大掌諭教育 講義 前・後 2 全 文 紮通 非常勤講師 立鍬メ:学 大学とミッション 大学史・大学諭敏育 講義 前期 2 巽通 專任教員

〃 β本の大学燈界の穴掌 大学吏・大挙鍮教賓 講義 前期 2 鋳通 非常勤講鋪

〃 大学と現幾社会 大学史・大学諭教育 講義 前・後 2 全 全 粟通 專任教撮 立敏大学の澄史 麹校理解教育 講義 繭期 2 全 全 黄通 専任教員

皐稲繊大学 畢稲厨を知る 脅絞理解教育 講義 葡期 2 全 全 教獲 総長,締局長,専任教員,校蜜会員

〃 大学文化史1 大学吏・大学諭教腎 講義 2 全 敏養 弊常勤講師

〃 大学文化吏繭 大学史・大学諭歎育 講義 蔚期 2

非常勤講纐

南凶大学 人愁の導厳 窃…5探求敏育 講義 前・後 2 2〜4 全 教農 大学大学役員,鶴局喪,導儀敏員,

常勤講麟 面志歓大掌

の    馨ス

新島裏・同憲社・キ1ノス 良狡理鱒教膏 講義 蔚期 2 全 金 教餐 専任教員

象教学(キリスト教と同志

) 歴史学・塞教学敏賓 講義 前期 2 專角 専様教員

〃 日本の逝代化と同憲数馨 騰史学・寮教学鞍育 講義 麟期 2 全 全 専閃 導任教員

〃 キリスト教吏(新島砺究入 歴史学・宗教学教育 講義 後期 2 全 全 導陽 専任敏員

疹ス

燭志社史に饒する穂蘭 歴史学・寒教学教賓 講義

2 専胸 帯任教員

キザスト教史7(新島褻6り

友》 慶史学・宗教学教育 講義 後期 2 専醗 琢任教員

キリスト教史

闘志社人物魂伝) 壁吏学・;蓑教学教育 講義 前期 2 全 全 奪附 専任教員

〃 譲敏学(新島嚢とキりスト

》 蟹史学・塞教掌教資 講義 後期 2 金 全 奪賜 導任教員

〃 察教学(問志社とキリスト

) 懸史学・宗教鎖歎育 講義 後期 2 専醗 專儀教員

関蓉学院大学 劇学学 良絞理郷数湾 講義 前期 2 教獲 学長,大学大学役員,蕊簡長、

教員

申爾大学 撃潮大学と平生鋲三郎①. 貞校理篶教育 講義 前・後 2 数菱・初 学長,大掌大学役員,専耗教員,

藁生

沖縄大学 沖縄大学諭 地域理解教育 講義 前期 2 論通 掌長,大学役鍛、部局畏,卒樂鷹,

誉数授

【資料煽査による国立大学}

斎広畜産大学 †勝と帯鉱憲崖穴学 地域理鰹教育 講義 前期 2

学長,導托教員,卒業生,外部講麟 一橋大学 敏養ゼミナール 大学史・大学論教育 演習 後期 2 教餐 導任教艮

〃 大学教管諭 キャジア・

ランニング教 演習 萬期 2 全 敏養 審任敏負

金沢大学 大学諭 オジエンテーショ

・ガイダンス教奢 講義 前期 2 全 全 教饗・笏 次 導蕪教員

学闘への誘い 貞狡理舷教育 講義 前期 2 敏菱 学長,大学役員,舘騰疑,専儀敏員 召川票高簿教實と硯究への

大学史・大学論教育 講義 後期 2 教養 学畏,導騰教員,県膚大学学長 九州大学 大学とはなにか 大学史・大学諭教育 講義 蔚期 1 1〜2

専圧教員,井常勘講麟

大分大学 大分大学の人と学閥 良校理解勲育 講義 後期 2 初隼次 学長,大学役員。部局長

概略的に示したのが表1−1,1−2である。

(2)自校教育授業の目的

 アンケートでは,自校教育授業を導入する大学 に,その実施目的について質間した。回答項目と して提示したのは「①愛校心・帰属意識の酒養

②自校史・沿革の理解③自学の目的・理念・使 命の周知 ④自学の特性や現況の理解 ⑤大学に おける学習意欲の促進や学習方法の指導 ⑥大学 2 自校教育の実施状況とその内容

(1)自校教育の実施状況

  図1に示すように,アンケートに回答のあっ

た国立大学63大学のうち,自校教育授業を実施し

ているのは,22大学(33%)であり,また2006年

度に実施予定をしている大学は3大学,合わせて

約40%の国立大学が,自校教育を実施・もしくは

実施準備を行っている。これら国立大学をはじめ

とする自校教育実施大学とその授業科目の特性を

(5)

が立地する「地域」の理解 ⑦学生の自己探求を 深める機会の提供⑧キャリア(プランニング)

教育の一環 ⑨教養・基礎教育の一環 ⑩専門教 育の…環⑪日本や世界の大学・高等教育状況の 学習・研究 ⑫卒業生・地域社会への教育サービ ス ⑬その他(自由回答)」である(複数回答可)。

 この設問において,国立・私立(公立は回答大 学1校のため,以下本稿の検討対象から除外する 4)ともに,約60%の大学が自校教育実施の目的 を「自学の目的・理念・使命の周知」及び「教 養・基礎教育の一環」と回答している(図2)。

同時に,40%以上の大学が「愛校心・帰属意識の 酒養」,「自校史・沿革の理解」,「自学の特性や現 況の理解」も実施目的にあげている。

 一方,「学習意欲の促進や学習方法の指導」,

「キャリア(プランニング)教育の一環」という目 的を自校教育授業に付与している回答も目立った。

 自校教育授業は「大学適応支援活動」の一部と して,あるいは今後の学習や進路決定に向け,自 学の教育・研究を理解し,自らの学びを探求させ る「キャリア・プランニング教育」の一環として

も重要な役割を与えられていた。

図2 自校教育授業の目的

 自校教育授業の実施目的については,国立大学,

私立大学の回答に差異が出る回答項目があった。

両者の差が大きく,私立大学に高い回答比率が示 される項目には「愛校心・帰属意識の酒養 (回 答比率差範囲:Range=45)」「自校史・沿革の理 解(R=27)」「日本や世界の大学・高等教育状況 の学習・研究(R=23)」があり,また国立大学に 高い回答比率が示されるものに「大学における学

習意欲の促進や学習方法の指導(R=32)」「キャ リア(プランニング)教育の一環(R=18)」「学 生の自己探求を深める機会の提供(R=14)」があ げられる。建学の精神に立脚する私立大学が,愛 校心・帰属意識の滴養や自学沿革史の理解を自校 教育授業の目的として重要視するのに対し,国立 大学では,それよりもむしろ「大学適応支援教育」,

あるいは「自己探求教育」「キャリア・プランニ ング教育」を自校教育授業に期待するという傾向 が浮かび上がった。

(3)自校教育授業の内容

 アンケートでは自校教育授業のなかで取り上げ られる学習内容項目について,図3に示した10項 目から,選択回答方式で質問した(複数回答可)。

このうちで多いのが「大学の歴史・沿革(全体回 答中比率:73%)」「大学の現状(同:64%)」「大 学の将来像(同:61%)」「大学と地域社会(同:

58%)」「大学に係わる人物(同:52%)」であっ た。私立大学の回答では「大学の歴史・沿革

(78%)」と「大学に係わる人物(67%)」の回答 比率が高く,自校の歴史や伝統,輩出した人物に 関する教育を重視する特性がここにも現れてい る。国立大学においても「大学の歴史・沿革(68%)」

を授業内容項目として取り上げる傾向は高いが,

私立大学よりもことに高い回答比率を示すのが

「大学の現状(73%)」「大学の将来像(64%)」「大 学と地域社会(64%)」である。法人化に伴い,中 期目標・計画に基づいて独自性を打ち出そうとす る国立大学の意思が授業内容にも反映されている ようだ。また,国立大学では「大学における学習法

(73%)」「キャリア・プランニング(36%)」を授 図3 自校教育授業の内容

   人物

大学と地域社会

 大学の理状  大掌の将来像 笛際社金への役割  大掌への期待  大学学習法  キャりア教賓

  その他

(6)

業内容に組み込むという回答が,私立大学に比べ て圧倒的に高く,自校教育授業を「大学適応支援 教育」や「キャリア・プランニング教育」の一環 として活用する傾向がやはりここでも読み取れる。

  (4)授業類型と授業内容

 各大学のアンケート回答とシラバスから,それ  ぞれの授業目的と授業内容(主題)を抽出し,自 σ校教育授業の類型化を試みたところ「①自校理解 教育」「②大学史・大学論教育」「③キャリア・プ ランニング教育」「④歴史・宗教学教育」「⑤オリ エンテーション・ガイダンス教育」「⑥学問論」

「⑦地域理解教育」「⑧自己発見・探求教育」「⑨ 専門導入教育」という9類型区分に行き着いた

 (具体的授業との対応は表1参照)。

  これら各授業類型の授業内容要素として含まれ  る項目を実施比率にもとづいて単純図表化したの が表2である。「①自校理解教育」は,自学の理 念や目的の周知を主目的としており,その授業内 容には,大学の沿革史や現況・将来像,人物研究 が含まれる。「②大学史・大学論教育」では,自 学の歴史的理解を主題として,大学・学部の沿革 史を授業内容とする「大学史」,日本や世界の大 学・高等教育の状況把握を基礎として,自校をこ れに対比させながら検証する「大学論」があり,

授業内容もこれらに関する項目について焦点があ てられる。「③キャリア・プランニング教育」は,

学生が自らの将来像を主体的に検討することを主 題とした授業であり,自学の教育・研究状況を理 解した上で,学生自身が「何をどう学び,これか  らの人生でいかに生かすか」という「学びの場」

を提供する。「④歴史・宗教学教育」は,私立大 学のみにみられ,近現代史教育の一環として自校 史を取り上げるもの,あるいは自学の理念(ミッ

ション)を宗教学の視点から理解・解釈させるも ので,内容項目も専門領域に限定される。「⑤オ リエンテーション・ガイダンス教育」は,大学適 応支援教育の位置づけで,まず自校状況を理解さ せたうえで,今後の学習にむけた学習技法の習得 訓練等が行なわれる。「⑥学問論」では,自校の 学術的状況・特性の理解をふまえつつ,学問の意 味やこれに取り組む姿勢の酒養を主題とする教育 であり,学長や学部長,卒業生が「オムニバス形 式」で授業を展開することが多い。「⑦地域理解

教育」は,大学が立地する地域を様々な視点より 理解し,そこから大学や卒業生が果たしてきた役 割を伝え,さらに地域と大学とのあり方を考える

ことを主題とする。地域で活躍する人材や卒業生 等を招いて授業が展開され,実地教育やキャリ ア・プランニング学習も併用される。「⑧自己発 見・探求教育」は,大学の理念や機能を明らかに しつつ,そのなかで学生自らがいかに生きるか,

あるべきかを探求させることを主題とする授業で ある。この類型の授業では「人間」をテーマとし,

そこに大学の理念や使命を関わらせながら,人の 生き方を模索させる授業もある。「⑨専門導入教 育」は,単科大学や特定学部で採用され,専門教 育の入門基礎領域学習として,自校や自学部の目 的,教育・研究機能の特性を理解させる授業内容 を組み込んでいる。

表2 自校教育授業の類型とその授業内容

 自校教育授桑の内容に    含まれる項目

校教育授梁の類型

授準教︵薗宴私喜︶ 大学A掌郁︶の沿藁︐鰹更 犬掌と嬰係する人窃 大学と埴壊数懐の賦藻 大学の鞭状 大学の将集像 箇線社会への役割 大掌への期祷 歯掌における学讐法 キヤリγ◎ブラン墨ング その蝕

自鮫理鰐教育 33 O O

大学史・大掌論 14 ○ O △ △ キャリア・プランニング教育

璽0

O △ △ △ ◎ @ ◎

歴史学・宗教掌教育 9 ◎ ◎

才リエンテーション・ガイダンス教育 6 O O Q

学問論 4 ◎ O O △ △ Q

地域理解教育 4 O ◎ ◎ ○ ◎ ム 良己探求教育 3 △ △ O △ △ ○

導門導入教育 3 ◎ ○ ◎ △

に つて,   の 地 方100〜70%で の  、69鮮50%

を0.49酎20%を△で承す◎

本表は。表1に示ず白絞教宵実施大掌,及び別途調査による実施割明5大学の状況をふまえて作 威した。

3 自校教育授業の実施形態

(1)授業配当(学部・学年)

 自校教育授業の履修指定(学部・学年)につい て,アンケート,及びシラバスによる調査の結果,

国私立38大学75授業のうちの93%にあたる70授業 において全学部配当(単科大学も含む)となって いる。履修に学部等を特定指示するのは6授業で あり,そのうちの2授業は遠隔地キャンパスにお ける「自学部」教育(山形大学農学部),!授業 は大学院授業(東京学芸大学大学院)である。自 校教育授業は基本的に全学生を対象としているこ

とが通常である。

 学年配当についても,42授業(57%)が学年指

定をしていない。なお,1年生指定とするのは23

授業(31%)であり,これらの多くが,オリエン

(7)

テーション教育や初年次導入教育授業である。1 年生は,学年指定のない授業も含め68授業(92%)

で履修可能とされ,自校教育授業が導入教育とし て重要視されていることもうかがえる。

(2)実施形態(課程区分,必修・選択,授業形態)

 自校教育授業の課程区分について,専門科目と して位置づけられているのは調査中9授業(12%)

のみであり,そのうち8授業は宗教学と自校の使 命(ミッション)を関連づけた科目(同志社大学 神学部),残る1授業は農学部専門導入科目(北 海道大学農学部)である。これ以外の授業は教養 科目(45授業60%),もしくは共通科目(22授業 29%)として区分されている。

 必修・選択については,57授業(76%)が選択 授業に位置づけられ,必修は9授業(12%),必 修選択は5授業(7%)である。必修に位置づけ

られているうちの4授業は,初年次のオリエンテ ーション・ガイダンス授業である。

 授業形態については,55授業(73%)が講義形 式,20授業(27%)が演習形式を採用している。

演習を採用する20授業はすべて国立大学であり,

自校教育授業51科目中の40%が演習形態であるこ とは特筆できよう。国立大学における自校教育授 業では,自らの大学を「学習素材」とする演習形 態の授業が多く展開され,これがまた,大学にお ける学習技能の習得をはかる導入教育を兼ねてい る場合も多い。

 OOOOO︽UハU

4654321

図授業数

自校教育授業担当教員

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…戴…叢 灘、1

その地 非常勤講節

卒業生 学外者

奪柾教員 部局長

役員 学長

(3)担当教員

 自校教育の特徴は,多くの教員や学外者が参画 してこれを展開することにもある。アンケート回 答75授業のうち,教員1名のみで担当するのは27 授業(36%)であり,他は学外者も含めた複数教

員体制,もしくは「オムニバス形式」によって運 営される。また,自校教育授業には学長が関わる ことも特徴的傾向であり,回答中の25授業(33%)

において,学長が授業を担当参加している(図4)。

同様に副学長や役員,部局長も積極的な関わりを 持っている。大半の授業に専任教員が関わってい るが,これらは自ら授業を単独主催する場合以外 は,学外者との調整も含め,複数教員体制授業の

「コーディネーター」役を務めることが多い。

 授業類型ごとに,配置される授業担当者の概況 を示したのが表3である。シラバスの記述から,

学長は「自校理解教育」や「大学史・大学論」類 型の授業においては自校の現況と将来像を語り,

あるいはまた「学問論」や「地域理解教育」にお いて,自らの学問観や大学観を披渥し,さらには

「大学と地域」等の授業で,地域から大学に託さ れた使命と学生への期待を伝えている。自校教育 授業では,学外講師も積極的に招聰され,ことに

「地域理解教育」や「キャリア・プランニング教 育」「自己発見・探求教育」では,卒業生を中心 にして,自らの体験や学生への期待を「生の声」

「実際の姿」で伝えている。

表3 自校教育授業担当教員

本衷は,類型授業総数のうち,該当賓が100〜フ0%に参團するものには◎.69〜5096のものには○,49

〜2096のものには△を記した。なお,「学外者」には,『卒桑生』.『その他」を含めている。

(4)実施時期と配当単位

 自校教育授業の開講時期,期間,及び配当単位

(授業時数)については,授業の開講時期は調査 75授業のうち54授業(59%)が前期開講,37授業

(41%)が後期開講である。また,6授業が,同 一内容授業科目として前期・後期開講している。

自校教育授業については,初年次の後期開講が時 宜に適するとも言われるが⑤,これをある程度裏 付けている。なお,前期開講54授業のうちの5授 業が初年次生配当の「オリエンテーション・ガイ ダンス教育」類型である。

 授業期間・単位配当については,通年授業はな

く,すべて半期2単位(15〜11回授業:3学期制

大学の1期ll回を含む),もしくは半期1単位(7

回)授業である。半期1単位授業は全体の10%で

(8)

あるが,そのうちの4授業(2大学)も,前期前 半1単位,前期後半1単位と連続して構成され,

実質上,半期2単位となる授業配置となっている。

皿 自校教育授業の工夫

 自校教育授業は,大学ごとそれぞれの教育理念 や方針のもとに工夫されている。アンケート回答 にもとづいて,自校教育への工夫・特徴をまとめ てみよう。

1 学生参画による授業づくり,大学づくり,居  場所づくりへの誘導

 国立大学における自校教育授業の特徴の一つ は,演習形態による学生参画型授業が多いことに ある。このことは,基本的知識・技能の取得を実 現し,かつ学生の主体的学びとその活用を促すこ とを意図した現況の教養教育の潮流を具現したも のといえよう。「大学」という題材は,すべての 学生に共有しうる問題設定の場であり,これを活 用して学生が参画した授業作り,大学づくりへの 誘導が「演習型授業」を通じて展開されている。

 たとえば,北海道大学では,全学共通一年次科 目として「北大エコキャンパスの自然と歴史」

「北大発見のススメ」「北大総合博物館で学ぼう1 自然と人間」といった諸授業が実施されている。

ここでは,初年次生に「上から与える自校教育」

ではなく,学生が主体的に大学に関する情報収集 を進め,これをふまえた問題設定を行い,学生同 士による議論・検討を重ねて,最終的には「学長 への提言書」を作成したり,公開プレゼンテーシ ョンを開催するなど自校の建設的な発展に向けた 提言を行っている。鹿児島大学における「鹿児島 大学を知る」「大学では何を学ぶか」,一橋大学で の「大学教育論」などにおいてもこうした授業が 展開されている。また,キャンパスッアーの企 画・担当という課題を提示(あるいは学生が主体 的に設定)することによって,自覚的な「自校学 習」が展開されている事例(東京大学,早稲田大 学など)もある。

 自校教育に積極的に関わっている寺崎昌男は,

立教大学や九州大学における自らの実践や講義の 印象からこう語る。「(自校教育授業の)反響の中 から分ったことは何かといいますと,それは,学 生達は(授業によって)知識欲を満足させられた

のではないという事実です。知りたかったわけで はないのです。けれども聞いていくうちに何を得 たか。知的欲求の満足感ではないのです。むしろ 自己発見,自分の居場所の発見です。満足感とい うより,安堵感です。⑥」

2 学生・教職員・卒業生との共有・協働作業  寺崎は自校教育授業についてこうも語る。「自

校教育のベースにあるのは,大学のコミュニティ としての力なんです。実は大学がすでに持ってい るにも関わらず,我々がよく気がつかない,しか し,そこを探り当てれば,非常に大きなエネルギ ーになっていく,コミュニティとしての,共同体 としての力です。⑦」ここに述べられるように,自 校教育とは,学生と教職員が,時には地域市民や 卒業生も参加して,同じ大学と授業を「共有」し,

「協働」して考え,「創造」していく中で,大いな る効果を発揮する。アンケート調査にも明らかな ように,そもそも自校教育授業の多くが,複数教 員の担当による「協働」授業である。

 山形大学の「山大マインド(先輩の話を聞いて みよう)」では,自学出身の「職員」が授業運営 にあたっている。職員が授業の運営に関わること によって,教育や学生の存在を意識するようにな り,そのことが大学構成員として,教育に関する 自覚を高めていくことにもなる。

 卒業生も,「キャリア・プランニング類型」の 授業をはじめ,多くの自校教育授業に参画してい る。また,早稲田大学のオープン科目「早稲田を 知る」は,校友会寄付講座として実施され,学生 のみならず,卒業生や市民にも授業開放されてい る。名古屋大学では,条件がそろえば,教職員へ の自校(史)教育を実施したいと考えているよう だ。甲南大学では,在学生への自校教育と併行さ せて,卒業生には「ホームカミングデー」,保護 者には「教育懇談会」の開催もすべて自校教育の 一環として位置づけている。自校教育は,学生,

教職員,卒業生,市民が一体となって,これに関 わり,ともに創り,学ぶ契機としての可能性も持

っている。

3 市民公開授業としての展開

 地域共生,情報公開,大学理念の周知,社会貢

献などの視点もふまえ,市民に開放される自校教

(9)

育授業もある。納税や授業料納入の観点において

「ステーク・ホルダー(利害関係者)」である市民 や保護者に対する「説明責任」や「利益分与」は,

大学にとって重要課題である。自校教育授業が,

市民や保護者に公開されることは,なにより自校 の理念や事業計画,あるいは実態を明確に伝える 手段となりうる。さらに,同じ教室に市民と学生 がともに学ぶことの緊張感と親睦感を伴う教育効 果は,しばしば語られるところである。市民にと って,学生の学びを直接見ることは,なによりの 大学理解ともなる。私立大学では,保護者や卒業 生に授業を積極的に公開提供することによって,

同窓会組織の強化,寄付金募集への反映を期待す る。これも,いまや重要な経営戦略である。

 自校教育授業の市民公開の事例は,信州大学

「学問の世界」,鳥取大学「教養特別講義一人生を いかに生きるか一」,早稲田大学「早稲田を知る」,

南山大学「人間の尊厳」などがあり,また金沢大 学では,高大連携事業の一環として「石川県の高 等教育と研究の誘い」を開設し,大学生とともに 高校生のための「キャリア・プランニング教育」

も図っていることは興味深い。

4 施設の有効活用による実地教育

 大学には,既存の施設が効果的に活用されない ままであることが少なくない。ここに着目して,

大学施設を自校教育で積極的に活用する取り組み も行われている。北海道大学「北大エコキャンパ ス,植物,昆虫,遺跡,建築」では,大学校舎も 含め,野外調査と大学環境全体を活用した実地教 育が展開される。また,同じ北海道大学の「北大 総合博物館で学ぼう1自然と人間」や,岩手大学

「岩手大学ミュージアム学」では,博物館を有効 活用し,自学の歴史と大学から生まれた研究成果,

地域の生活や自然環境を実地的に学ぼうとする試 みである。また,自校の記念室やアーカイヴス

(文書資料館)を活用する授業も実施されている

(甲南大学「甲南大学と平生鉦三郎」,九州大学

「大学とは何か一九州大学を通じて考える一」など)。

5 カリキュラム全体での有機的展開

 自校教育授業を,その科目自体で完結させるの ではなく,大学・学部全体のカリキュラムの中で 有機的に他の教養科目や専門科目と連携・展開さ

せる試みも見られる。たとえば立教大学では,建 学理念に関連するテーマに沿った特長ある科目群 を「立教科目」として編成し,ここで「立教大学 で学ぶ意義は何か」「大学とは何か」を考える機 会を学生に与えるとともに「建学の精神」という 大学の理念に遡って「人間としての基本的なあり 方」を考える機会を提供している。これら「立教 科目」は、「宗教」「都市」「大学」「人権」の4テ ーマにより構成され,教養教育プログラム「全学 共通カリキュラム」の一環として展開されてい る⑦。また,キリス.ト教主義の建学理念に立脚す る同志社大学でも「同志社科目」を設定しており,

これを神学部や文学部の専門教育科目,あるいは 全学の共通科目と連携・発展性を持たせたカリキ ュラム編成を行っている。これら取り組みは,カ リキュラム全体構成そのものによって展開される 自校教育といえよう。

6 大学理念実現科目

 国立大学の法人化に伴い,各大学はその理念・

目標を明確にし,これを教育活動に反映させ,そ の成果を立証することが求められている。こうし た実情もふまえて,大学の理念・モットーを授業 において実現しようとする自校教育授業も実践さ れている。この試みとして,たとえば山形大学の 全学科目「有機農業の現場で『自然と人間の共生』

を考える(学長担当,演習・集中型授業)」があ げられる。この授業については,シラバスの授業 計画を見ても「山形大学」自体に関する内容を見 いだすことはできない。しかしながら,同校の理 念である「『自然と人間の共生』とは何かについ て,有機農業に参加することによって自らの今後 の具体的課題として把握することを一つのねら い」⑨として,自学理念を実質化するこの授業を,

大学が「自校教育」として位置づけていることは 評価したい。

 私立大学においても,南山大学では「人間の尊 厳」科目を開講⑩し「自学のモットーである『人 間の尊厳のために』の意味を理解し,修得するこ と」を目的として,自学の建学精神や理念,歴史 を含めつつ,キリスト教学,法学,倫理学,哲学,

文学,教育学の視点からテーマ検証を進めていく

授業を「自校教育」とし,さらにこれを市民公開

授業ともしている。

(10)

W 大学における自校教育実施にあたっての今後  の課題(むすびにかえて)

 以上見てきたように,自校教育授業はその実施 意義が認識されるようになり,これを導入する大 学も次第に増加してきた。また,現在導入準備中 の大学も少なくないようだ⑪。

 そもそも自校教育(授業)は,その実施目的や 形態が確立したものではなく,むしろ多様な取り 組みにこそ,その特性が見いだせる。自校教育の 実施にあたって重要なのは,それぞれの大学が,

自らの教育理念を反映させたいかなるカリキュラ ムを構築するか,そして自校教育授業をそこにど う位置づけ,それに応じたいかなる内容と形態を もって展開していくか,である。

 自校教育授業は,その多様性ゆえに,授業内容 や方法,あるいは成績評価の適正について,いま だ十分な検証を得るには概して至ってない。学生 による授業評価をもとにした教育成果の検証も本 格化していない。自校教育授業でしばしば採用さ れる「オムニバス形式」の授業展開にしても,と もすれば授業の体系性の欠如に陥り,教育責任所 在も曖昧となるなどの危惧もある。自校教育授業 での学びを,カリキュラムの中でいか発展・継承 させるかという検討,施策も不十分である。

 自校教育授業は,なにより学生の学習意欲の促 進や学習能力の伸張,あるいは人間性の酒養に益 して,はじめてその意義が認められるものであり,

大学や教員の自己満足に終わるものであってはな らない。自校教育授業は,新たな大学教育実践を 促進する可能性を秘めている。しかし,自校教育 授業を開設すれば,それで完結するものでもない。

自校教育授業が開講実施された,むしろその後に こそ,自校の教育理念やカリキュラム編成の基本 的考え方と照らし合わせながら,多面的な視点に よる不断の検証と改善努力が必要である。

【謝辞】

 本稿の基礎となったアンケートは,下記の大学

(回答箇所様)よりご回答いただきました。画答 に併せて,貴重な示唆・助言を頂戴するとともに,

大学概要,シラバス,授業一覧表や教材などの資 料もご恵贈たまわりました。ここにあらためて深 謝申し上げます。

アンケート回答大学

【国立大学】

旭川医科大学(事務局教務部),小樽商科大学

(学務部学務課),北見工業大学(教務課),北海 道大学(高等教育機能開発総合センター),北海 道教育大学(教務課教務企画グループ),室蘭工 業大学(教務課),弘前大学(21世紀教育センタ ー),秋田大学(教育開発推進センター),岩手大 学(大学教育センター),東北大学(高等教育開 発推進センター),福島大学(教務課),宮城教育 大学(学務課),山形大学(高等教育研究企画セ ンター),筑波大学(学務部学務課),茨城大学

(大学教育研究開発センター),宇都宮大学(学務 部修学支援課),群馬大学(学務部教務課),埼玉 大学(全学教育企画室),東京海洋大学(学務部 教務課教務係),電気通信大学(大学教育センタ ー教育改善部),東京医科歯科大学(教養部教務 掛),東京外国語大学(教務課教務係),東京学芸 大学(学務部学務課),東京大学(大学総合教育 研究センター),信州大学(高等教育システムセ ンター),上越教育大学(学務部教育支援課),富 山大学(学務部教務課教養教育係),富山医科薬 科大学(教務部学生課),長岡技術科学大学(学 務部学務課教務係),新潟大学(学務部教務課),

岐阜大学(学務部教務課全学共通教育事務室),

静岡大学(大学教育センター),豊橋技術科学大 学(教務部学務課),名古屋大学(文書資料室),

名古屋工業大学(学務課),浜松医科大学(学務 部学務課),三重大学(高等教育創造開発センタ ー),滋賀大学(教学課),滋賀医科大学(教務部 学生課),京都大学(共通教育推進部共通教育推 進課),大阪大学(大学教育実践センター教務掛),

大阪教育大学(学務部教務課),大阪外国語大学

(学生部教務課),奈良教育大学(教務課),岡山 大学(学務部学務企画課),鳥取大学(学生部教 育支援課共通教育係),広島大学(学生総合支援 センター修学支援グループ),山口大学(大学教 育センター),島根大学(教務修学課教養教育係),

愛媛大学(教育開発センター),高知大学(大学

教育創造センター),徳島大学(全学共通教育セ

ンター),鳴門教育大学(教務部教務課),福岡教

育大学(教務課教務企画係),熊本大学(大学教

育機能開発総合研究センター),佐賀大学(高等

教育開発センター),長崎大学(大学教育機能開

(11)

発センター),宮崎大学(大学教育研究企画セン ター),九州工業大学(学生部教務課総務係),鹿 児島大学(教育センター),鹿屋体育大学(教務

課)

【公立大学】

首都大学東京(基礎教育センター事務室教務課),

大阪府立大学(学生センター教務課),大阪市立 大学(大学教育センター)

【私立大学】

東北学院大学(教育研究所),青山学院大学(学 務部教務課,相模原事務局学生支援ユニット学務 グループ),上智大学(学事局学事センター),立 教大学(全学カリキュラム運営センター),早稲 田大学(オープン教育センター,教務部教務課),

学習院大学(教務部教務課),成険大学(学務部 授業課),成城大学(教務部教務課),東京女子大 学(学務課),南山大学(教育研究支援事務室),

同志社大学(教務課),関西学院大学(教務部教 務課),甲南大学(教務部),西南学院大学(企画 広報課),沖縄大学(教務部)

脚注

①大学における教養教育の方針を示したものとして,

 大学審議会,1998『21世紀の大学像と今後の改革方  策について一競争的環境の中で個性が輝く大学(答  申)』,中央教育審議会,2002「新しい時代における  教養教育の在り方について(答申)』,中央教育審議  会,2005『我が国の高等教育の将来像(答申)』が  あげられる。

②杉谷祐美子『日本における学士学位プログラムの現

 況』(「高等教育研究」第8集,特集・学士学位プロ  グラム,日本高等教育学会編,2005)。1ggo年代以  降の教養教育をはじめ,学士課程教育プログラムや  その内容の趨勢については同論文に詳しい。

③坂井昭宏『人文系教養教育の評価(学部専門教育の  創造的復権をめざして)』(大学教育学会誌 第26巻  第1号通巻第49号,21頁,2004年5月,大学教育学  会)

④大阪市立大学(公立)からのアンケート回答を受け  たのは,本稿校了後であった。この理由も含め本稿  では,公立大学については,表1での掲載にとどめ,

 それ以外は,検討対象,およびデータ分析対象から  除外している。

⑤寺嫡昌男「自校教育という新しい実践 3」(教育  学術新聞,平成17年7月13日 (水曜日)第2196号)

⑥同上寺崎「自校教育という新しい実践 2」(教育  学術新聞,平成17年7月6日(水曜日)第2195号)

⑦前掲寺崎「自校教育という新しい実践 3」(教育  学術新聞,第2196号)

⑧立教大学は,自校教育に関して先進的な取り組みを  進めており,「平成17年度 特色ある教育支援プロ  グラム」にも「全学共通カリキュラム『立教科  目』一建学の精神から学ぶ科目展開一」が採択され  ている。なお,立教の全学共通カリキュラムについ  ては「立教大学く全カリ〉のすべて」立教大学全カ  リの記録編集委員会編著,東信堂,2001.に詳しい。

⑨山形大学シラバス,及びアンケートの自由記述によ  る。

⑩南山大学シラバス(http://www.nanzan−u.ac.

 jp/Menu/news/2005/dignitati/)

⑪アンケートでは,群馬大学,埼玉大学,滋賀大学,

 成城大学から2006年度以降実施に向けた具体的準備

 進行中の回答が示された。

参照

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