長野工業高等専門学校紀要第35号(2001) 33
HRO
流星電波観測 システムの構築 とアンテナ性能試験服 部 忍 大 西 浩 次 藤 澤 雄 章 宮 沢 明 子 石 川 寿 之 遠 藤 誠 柞 山 快 丸 山 俊 之 伊 藤 雄 作 川 邨 雅 貴 柳沢雅俊 徳永麻伊 山田真澄
HRO Meteor Radio Observations System and Antenna Performance Test
Shinobu HATTORI Kouji OHNISHI Takefumi FUJISAWA Akiko MIYAZAWA Toshiyuki ISHIKAWA Makoto ENDO Kai HOSAYAMA Toshiyuki MARUYAMA Yusaku ITO Masaki KAWAMURA Masatoshi YANAGISAWA Mai TOKUNAGA and Masumi YAMADA
Ham‑bandRadioObservation (HRO)isoneoftheobservationalteclm iquesoftheforward scatterobservationmeteors. Weconstructtheobservationsystem formeteorobservationusing ham‑bandradio(50.750MHz,50W from Fukui).Thissystem hastwo‑elementloopantennas(F/B ratio is 10 dB),communication receivers and personalcomputersystems.We convertradio frequencyechoesintotheaudiospectrum, Weareproceedingwithtileresearch ofthewayof revisingtheobservationdatawhichwasgottenfrom eachHROobservationpoint.
キー ワー ド :HRO,観測システム,ループアンテナ,指向性,F/ B比,補正
1. ま え が き
近年,流星観測において,光学観測に加えて電波 を利用 した流星電波観測が行われてい る.流星電波 統測は,電波を流星に向け送信 し,流星で反射 した 電波を受信 して,流星の存在を観測す るものである.
光学観測 とは違い天候 に左右されずに24時間連続 で流星現象をモニターすることがで きる.流星電波 観測の中でも,利用す る電波 としてアマチュア無線 (Ham)の 電 波 を利 用 したH RO (Ham‑band RadioObservation)と呼ばれ る観測方法が注 目さ れている.アマチュア無線の電波利用によ り,①ハ ムバ ン ド (アマチュア無線用周波数帯)には涜塁電 波観測に適 した周波数帯が複数存在 し,比較的容易 に電波を送受信することができる.また,アマチュ ア無線の愛好家が多いため,(診高精度の受信機等が 比較的安価に入手で き,③観測ネ ッ トワークを構築
★1電子制御 工学科助 教授
★2一般科助教授
★3元電子制御 工学科 学生
★4電子制御 工学科学 生
★5電子情報工学科学 生
★6機械 工学科 学生
★7環境都市工学科学 生
★8電気 工学科 学生
原稿 受付2001年9月28日
する際,多数の参加者が見込める.そのため,今後 HROによる流星電波観測がます ます活発 に行われ
るようになるもの と期待 され る.
しか し,現在の ところ電波統測による流星数の補 正法は確立されていない.各地域の観測データはア ンテナ形状 ,電界強度特性 ,受信感度特性 ,流星数 のカウン ト方法などの測定条件が統一 されてお らず , 測定された各統測点の数値 を比較するのは困難であ
る.これ を解消するためには,各グループの観測環 境の遠いによ り観測データを補正する必要がある.
現在,HROにとって最 も重要なことは,観測 さ れた各地のデータが科学的に有用なデータとして活 用で きるように標準の観測法を確立す ることであ り, それぞれの観測環境を考慮 した補正法 を見出すこと であると考えられ る.こう して標準観測法が整備 さ れた後には,宇宙空間にある雪塁ダス トや星間ダス トの不均一な分布等の検出が,地球上の広域 に渡っ たHRO観測の実施によ り得 られた観測データを比 較することで実現可能 となる.このように,観測環 境の違いが,観測データにどのように影響を与える かを定量的に検証する必要がある.
そこで,HRO統測デー タの比較 をどのように行 うべ きかを検討す るため,現在観測に用いているH RO流星電波観測 システムを紹介 し,アンテナの特 性実験結果 を踏 まえ,必要な検討を行 っている.
34 服部 ・大作 ・頗滞・常沢 ・石川 ・遠藤 ・仲山 ・丸山・伊藤 ・川部 ・柳沢 ・徳永・山州
w e S 1
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図1. 流 程に よ る馬渡反 射
2。HRO流星電波観測システム
HRO流星観測 (以 F,IIRO)とは,図1に示す ように流星 が大気 に突 入 した際 ,地上約 】00kmの 高度 にで きる流星 プラズマ に'lEL波が反射 す る性 質 を 利用 した流星観測法のひ とつであ る.使 用 してい る 電波は,ハムバ ン ドの つで あ る50MH之帯で ,福 井工業高等専門'羊校のアマチ ュア細線 局 が送信 して いる53.750MIlrLの LJ‑ コ ン1Ll波(SSB波)であ る.
HRO流程iTl波紋洲川 に構築 した シス テ ムは ,図 2の フローチャ‑ トr′示う ようなIl'G成 になってい る.
福井高専で送信 され た鴨池は流駁 プラ ズマで反射 さ れ ,長野高専に投網 されたア ンテナに到達 し,受信 機 で音声出力の形 に変換 され る.変換 された信 号は パ ソコンに取 り込 まれ ,流JFtl灸tliソフ トによ り流星 エ コー と して両像デー タに変換 され.氾録 されてい る.
さ らに,バ ックア ップ川 と して・1.2lr;機 の 旨FEE出力は ビデオテー プにも保/J・されて い る.次 に,各袈道に ついて述べ る.
2・1 ア ンテナ
HRO流星電波観測 システ ムの ア ンテナ と して , 53.750MHzの電波反射点微域 の拶肋 を他 日 Jるた めの2台の 自作 可動2嬉 子ルー プア ンテ ナ,LA.J波紋 測専用の 自作 可動2素 子ルー プアンチ .)・お よひ 31.
570MHz固定2素子ルー プア ンチT, H IM日,/.2
糸 7‑ルー プア ンテナ等 を製作 した.Fx13(tl).(t))に rl 作 した53.750MHz用アンテナ をJJ:,う .本システ ム の ア ンテナは,一片が1/4波 長の 正jJ一形の粋糾み に アンテナ線 を張 り付 けたラジエー タと,それ よ り数 パーセ ン ト長 くした リフレクターか ら成 る2糸 r‑の ル ー/ア ンテナであ る.ルー プアンテ ナ は,JTrtJlJ探 対日Hと して もmい られ るア ンテナで,ルー プ何 とでLL
I
/[ベ 'Jトルが、I'‑・行の ときに受信感度 が最大 とな る.
O))
図3 53.750MH?J川 ルー プア ンテ ナ
2・2 受信機 お よびデー タ処理
木システムでは,r'x14に示す ように受信機 と して Hl0M IC‑R7.r:)を仙 川 してい る.ICON ICIR75は, 受信略DFJが0.0.riMllrL〜6OMllzのオールモー ド受 I,;機 であ る.受Ll感度 は使用 してい る50Mltz・帯S
SBL‑ ドで,‑18dlう〟以下 とな ってい る.受信 は U SB L‑ ド,r';i.7・I9Mllzで行 い,流星は流星エ
HRO流妃'ltf波観測 システ ムの構築 と7ソテナ惟能 試験
図4 受信機 (JCOM IC・R75)
図5 パソコンによるデータ処理
35
コ‑ と して音声出力され る.そ して,図5の ように パ ソコンに取 り込んでデータ処理 している.デー タ 処理 は大宮工業高校の大川一彦氏制作 の流星検出 ソ フ ト"HROFFT"を使用 し,流星エコー を画像デー タとしてP(:に記録 してい る。図6に画像デー タ例 を示す 一
本 システムは,テ ス ト観測 を行い観測 システムの 安定性 を確認 してか ら観測 を始めた.2000年の 1] 日よ り合計6台の 自作 アンテナおよび受信機 を使 い, イーサネ ッ トでつないだ4台のPCでデータを収集 ,
3台のPCで解析す るHRO流星電波観測システム を構築 してい る.各ア ンテナで捕 らえた流星 を比較 す るため NTPサーバにア クセス して個 々の時刻の 誤差 を1/100秒以内に抑 えてい る.
これによ り,あ る流星 を複数のアンテナで捕 らえ, 流星の大まかな方向を決定す ることがで きる.
2.3 本 システムでの観測
定常観測lllの2娼 f自作 ルー プアンテナは,約1 ケ月間のテス ト観測 を行 った,2000年9月よ りテス ト観測か ら定常観測に入 り,約2ケ月間の観測 によ って 口々の流星所動の周期パター ンや昼間の流星群 (六分儀座流星群)の検出に成功 した.この間に流 星位置決定 システムの開発の実験 と して対の2素子 ルー プア ンテナ を東西 にむけて設置 し(福井高専方 向Wと 反福井高専方向 E),11月よ り反射点移動 検出用,偏波用な ど合計6台の 自作 アンテナによる
36 Jjb消(・大西 ・慮搾 ・宮沢 ・TT川 ・遠藤 ・掛 目・丸山 ・伊藤 ・川棚 ・柳沢 ・徳永 ・IIJ田
新 システムでの観測 を開始 した.これ までにベルセ ウス座流星群 , LL座流星群 ,ふたご座 流星群 ,四 分儀座 流星群などさまざまな流星群の柄動状況 を電 波観測でモニター している.
2。4 ア ンテナ製作 にお ける留意点
ア ンテナを設計す るにあた り,波長お よび インピ ーダ ンスのマ ッチ ング以外 に特 に留意う る点 と して , 外部か らの ノイズの影響 ,ア ンテナ設 毘面による幅 射角への影響が考えられ る.そ こで,アンテナには 外部か らの ノイズの影響 を極 力小さ くす るため,図 7に示すようにノイズを誘導 しない木材 を用いた.
そ して,接合部の金属部材 は,]/50波長以下の大 き さの金属 プレー トを加 lI,ボル トで固定 と し,アン テナ特性への影響が軽微にな るように してい る.さ らに,アンテナ設置面か らの反射波の影響 を少な く づ るため,で きるだけアンテナ設置高 さを高 くした 方が望ま しい. しか し,現実的には高 くア ンテナを 設関するのが困難な場合があ り,本ア ンテナは最低 部で約 1mの高さとなってい る.
また,アンテナ部は仰角が大 き く変え られ るよう に3600同位可能な構造 と し,軸の取付けを可動式 に している.この ような工夫によ り種 々の R的に合 わせた統洲が行 うことがで き,汎用性 を大 きくして い る.
図7 5:i.75MHz用2素子アンテナ
3. アンテナ性能試験 とアンテナの改良
現在,使用 している2素子ルー プアンテナは,H RO統測でよ く使われている2素子八木 アンテナに 比べてア ンテナのゲ インが高いこと, 自作 が容易な こと,指向性 に八木 ア ンテナの ようなサイ ドロー プ がないことな どの利点がある,一方,指向性 が悪い と言 う欠点があ り,流星の位置決定 に利用す ること は難 しい.以上の点 を踏 まえて,
(1)2素 子ルー プア ンテナの指向性の測定 (2)流星観測用ア ンテナの開発実験 この2点 をテーマに研究 を行 っている.
3.1 アンテナ性能試験
50MH‑L帯のア ンテナは 1波長が6mあ り,その 大 きさ故 に,特性実験 す ることはきわめて難 しい . そ こ で, 50Mllz帯 の 上 の ハ ム バ ン ドで あ る 144MH7.,433Ml121の各周波数の2素子ルー プア ン テナ を製作 し,指 向性 ,電波強度実験 を行 った.こ れ らの周波数帯での実験結果は,50MHz帯の特性 と相似形に近い とい う仮定の元,電界強度 シ ミュレ ー タの計算結果 と合わせて,50MHz帯のア ンテナ 特作 を串いた.
実験 と電界強度 シ ミュ レー タの結果か ら, 2果子 ルー プアンテナの指 向性 は前方 (給電点側 )で約 ± 60度の範 囲 ,そ して前方受信強度 対後方受信強度 (ド/B比)】OdB(電界強度約6倍)になることがわか った.この結果は,電波反射点領域の移動検出用に 置かれた二対のア ンテナによる観測結果 と無矛盾で あ る.これ らの実験 よ り,方向決定並びに流星位置 決定の精度 を上げるためには,よ りF/B比が高いア ンテナが有効であることが判明 した (流星位置決定 をす るためにはさらに指向性の高いア ンテナが必要 であ る).
図8 2素子シミュレー ト
HRO流星電 波観測 システ ムの構 築 と7ソテナ性能試験
図9 144MH2:帯用5素子ルーファンテナ
3。2 ア ンテナ開発試験
流星電波観測 に適 したアンテナは,前方 と後方 と の感度比 (F/B 比)の大 きいア ンテナであ る.アン テナの F/B比 を高めて指向性 を上げるためには,ア ンテナ形状 を変 える,素子数 を増やすな どさまざま な方法があ り,一概 には言い切れないが,方向決定 用には F/B比が20dB(受信強度 比が約1/36倍)程度 あれば充分であ ると考 えられ る..そ こで144MHz, LI33MH7.の5素子ルー プアンテナ を製作 し実験 を行 った.図9は実験で用 いた144MHz帯の5素子ルー プア ンテナである.図 10は,これ らの アンテナに よる実験結果である.周波数が低いほ ど F/B比が高 いので50MTIz5滋 子ループァ ンテナでは20dB以 上の F/B比が柑1待できる.
1・15RMHLArt(tlEidり〟nl
180●
B]10 2.5素 子指 向性 実 験 結 果
37
4.HRO流星観測用ア ンテナの提案
前章の実験結果 を見 ると,各グルー プが行 ってい るHRO観測のデータを比較するには,前述の とお りアンテナ特性 ,受信機感度特性の違 いを考慮す る 必要があるといえる.HR()流星観測 をす るにあた って,以 下の よ うな点が補正の要因となると考えら れ る.
。送
信 局 T
,受信局 R の
位置・流星が大気中へ進入する方向
・送信局側のアンテナパター ン
・受信局側のアンテナパターン
これ らの うち,前者2つの幾何学的な補正につい てはすでに発表 してい る1).そこで,後者のアンテ ナパター ンについて検討す る.
検討に隙 し,必要な課題 として,ア ンテナをは じ め とする観測 システ ムの特性の測定法 ,そ して感度 特性の補正法が挙げ られ る.これ らがで きれば天候 に左右されないHRO観測が,よ り広 く科学的デー タとして扱 えるはずであ る.同時 に,HRO流星電 波観測の標準的観測 システムを開発 し,幅広い観測 ネ ッ トワー クの構築 を目指すものであ る.そのため の重要な項 目と して,観測する側 は以下のような こ
とが必要な串柄であ ると考 え られ る.
・ア ンテナパター ンが一定である
・アンテナゲイ ンが了執 、
・簡単な構造のア ンテナ
・安価に魁作で きる
前述の項 口を考慮 に入れて,い くつかの有効な方 法を検討 している.
重要な課題の1つは,アンテナの地上高の問題で ある.ア ンテナが地上の影響 を受けな いようにす る には数波長高い位置 に上げる必要があ るが,50MHz 帯では数十m にな るので現実的に難 しい.シ ミュ レ ー シ ョンの結果 ,地面 を完全導体 に したほ うが一定 のア ンテナパ ター ンが得 られ ることがわかった.完 全導体の環境 を得 るためにはア ンテナ設置場所の地 面に数波長 に渡って,1/Ll波尾程度の間隔で導線 を 張 りめ くらせれば良い .そこで図 11のようなアン テナ系の設計を行 った .
まず,アンテナ を人/8の高さに して張 り,一辺の 中央に給怒点 をつける.地面に張 りめ (・らせた鋼線 は リフレクターの代わ りと して使 うことができる.
これによ り屯磁波的に完全導体 グラウン ドの環境 が つ くられ,ア ンテナの指 向性 は図 12のようにな り
38 服部 ・大西 ・藤津 ・宮沢 ・石川 ・遠藤 ・樺山 ・丸山 ・伊藤 ・川部 ・柳沢 ・徳永 ・山田
サイ ドロー プが全 くない.ゲインは干渉効果 によ り 半波長高 くする毎に強められ るが指向性 にサイ ドロ ー プが現れ る.しかもゲインの上昇 もわずかである ので設置高 さは53.750MHzで最低の約70cmとす れば簡単にアンテナの製作がで きる.
この ような ア ンテナ システ ムを各地域 に設置す れば,安定 した観測データが得 られ るとともにHRO 観測のデータ比較が行 えるようになってい くと思わ れ る
5. あ と が き
HRO流星電 波観測の標準的観測 システ ムの構 築に向け,大 き く分 けて3つの諸実験 を行った.
1,現在のアンテナ特性実験 .
2,よ り高性能なアンテナの開発基礎実験 . 3,HRO観測用のアンテナシステムの提案 .
アンテナ特性実験では,現在の2素子ループアン テナにはF/B比が約10dBある事が明 らかとな った.
さらに,流星位置を測定するためにはF/B比が約 20dB必要であるが,これには5素子ルー プアンテ ナな どによ り得 られ る事が判明 した.また,新 たな HRO観測用のアンテナシステムを考案 した.
これ らはあ くまで1つの提案であるが現在のHR O電波観測でよ り広範囲でのさまざまな実験 を行 う のであれば,システム を統一す る必要がある.我々 のこのような活動が1つの補正法 として実用され る ことを期待する.
参 考 文 献
1)宮浮明子,大西浩次 ,服部忍 :流星電波銃測 にお ける流星検出効率.日本天文学会 2001年春 季年 会,LOla,(2001.4)
図11 ア ンテナ模式図
図12 指 向性 シ ミュ レー ト