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教員現職教育における日本語入力実習に関する調査

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教員現職教育における日本語入力実習に関する調査

西  川     純*

 (平成4年10月22日受理)

要     旨

 本研究では,学校教育ヘコンピュータが導入する際,最大の障害となる教師の意識を改革する ための情報を得ることを目的とした。そのため,教師のコンピュータ不安の原因である日本語入 力に対する予想と実態を明らかにし,そのギャップを実証する調査を行った。

 本研究では現場教師の日本語入力修得に関する3つの調査を行った。第一は,現場教師が日本 語入力修得にどれだけの時間がかかると考えているかを明らかにする調査。第二は,実際に現場 教師が日本語入力を修得するのにかかる時間。第三は,1年後の日本語入力がどれだけ向上する かを明らかにする調査。

 その結果,現場教師は日本語入力の修得にはかなりの時間がかかると思っていた。しかし,適 切な学習環境をそろえれば,彼らは予想以上の短期間に日本語入力を修得できた。さらに,修得

した日本語入力によって,.コンピュータを利用することにより,1年後には十分実用に耐える能 力を得ることができた。この結果は,教師がコンピュータを実用的に活用できる可能性を示すも のである。

KEY WOR1)S

Japanese Typing  日本語入力 In−service Training 現職教育

Computer Literacy コンピュータ能力

1.はじめに

 最近,学校現場へのコンピュータ導入が盛んに進められている。高等学校の場合,全ての学 校に40台程度のコンピュータが設置される計画が,全国的に進められている。さらにこの傾向 は,小学校・中学校の指導要領の改訂でコンピュータが盛り込まれたことから,義務教育段階 に波及することが予想される。

 しかし,学校にコンピュータを本格的に導入されるとき,教職員組織には根強い抵抗が生じ る。これは,導入にともなう負担増と,その負担が想像できないことから生じる。さらに導入 された場合でも,その利用は一部の教師に義務的に行われており,学校の教員組織全体の力を 生かしきっていない。これは,教師のコンピュータリテラシー(COmputer Literacy)の問題 に由来する。この様な,コンピュータ導入及び,導入後の問題は今後いっそう深刻な問題にな ると思われる。

‡自然系教育講座

(2)

 しかし,学校教育へのコンピュータ導入に関する研究のほとんどは,児童・生徒を対象とす るものが中心であった。そのため,現在までのところ教師のコンピュータリテラシーの育成を めざした,実証的な研究は殆どなされていない。これは,比較的長時間拘束する調査に,教師 の協力が得られにくいことに由来する。しかし,上越教育大学では現職教師が毎年多数派遣さ れている。さらに,その中には大学への派遣を,コンピュータ修得の絶好の機会と考えている ものも多い。そのため,現職教員のコンピュータリテラシー修得の研究を行うに必要な協力を 得やすい状況にある。

 現場で行われている様々な研修会では,コンピュータの紹介が行われている。しかし,その 研修会でコンピュータがいかに便利かといわれていても,指一本でキーボード上を左右に動か

している状態ではその便利さは実感されない。現在のコンピュータでは,キーボードが入力の 大きな部分を占めている。キーボードから素早くデータを入力することによって初めて,コン ピュータの能力を引き出すことができる。この様な状態から書店には多くの日本語入力修得に 関する書籍がみられる(例えば,岩佐 1987,増田 1987,田口 1990,富永 1986など)。そ れらはさまざまな方法を示して,短期間に修得できることを示している。しかし,実際に何人 の人がどれだけの時間で修得できたという実証的なデータに欠けている。

 心理学における,日本語入力の基礎となるタッチメソッドに関する実証的な研究としては,

反応速度に注目した研究(Hayes eオαZ.1977)や,速記者の認知処理過程に着目した研究

(Sa1thouse1984)や,視覚空間との関わりに着目した研究(飯島ほか 1985.1987)などが あげられる。これらの調査は,いずれも修得に関わる過程をミクロな面からの実証的な手法で 分析している。しかし,修得にどれだけの時間がかかるかというマクロな面のデータに欠けて いる。これは,以上の研究が,心理学的な問題意識の上に研究されており,コンピュータリテ ラシーという面からの問題意識を欠いていることに由来すると思われる。

 それに対して,舟橋らの一連の研究では,日本語入力修得のための訓練用自習システムを構 築するとともに,その教育効果を実証的に明らかにしている(舟橋争まか 1984)。そこでは,彼

らり開発したシステムによって,大学学部学生はマンツーマン形式で教育したときと同程度,

あるいはそれ以上の能力向上がみられることを示している。このこと一は,日本語入力のような 技能習得においては,コンピュータを利用した教授が効果的であることを示している。しかし,

彼らの研究で開発されたシステムでは,メインフレームを利用しており,一般の教師が利用で きる環境とは言い難い。

 現場の教師にとって興味があるのは,「結局,自分は日本語入力を修得できるか」という間い である。そして,その判断基準は「自分のおかれた環境でどれだけの時間で修得できるか」と いうデータである。つまり,現在までの研究で出された結果は,必ずしも現場教師の疑問に直 接答えるものではないと思われる。

 それに対して,最近の大隅(大隅 1988),野口(野口 1989),原田(原田 1989),森はか

(森ほか 1989)の研究では,現場教師でも実現できる環境での修得過程を分析している。彼 らの研究では,情報教育の中でのキー入力能力の意義を指摘し,実証的な研究によってその能 力を育成するための方策を探っている。しかし,彼らの研究はいずれも学生(原田 1989,森 ほか 1989),児童(野口 1989)を対象としている。そのため,その結果を直ちに現場教師に 当てはめることは困難である。

 そのような中で,坂元(坂元 1987.1988.1989a,1989b),大隅(大隅 1988)はワープロ

(3)

操作全般にわたって,広範にかつ実証的な研究を行っている。これらの研究では,アンケート 調査による実態,ワープロ操作に関わるカリキュラムの開発,ワープロ修得過程などを実証的 かつ組織的に扱かっている点で高く評価されよう。その中で,現場教師のキー入力能力にも着 目している点で,きわめて特異な研究であるといえる。この研究の特徴は,ワープロ操作に着 目している。さらに,ワープロ修得のためのカリキュラム,標準仕様なども含む総合的な研究 である。しかしそのために,これらの研究によって得られた結果を,直ちに一般の状況に当て はめることは困難である。例えば,結果の中に含まれるワープロ操作と,日本語入力などのキー 入力操作を分離することが出来ない。ワープロ操作自体は機種に依存しているので,ワープロ 操作能力の結果は,特定の機種に依存せざるを得ない。また,示されたカリキュラムはまだ研 究段階であり,一般の教師が利用できる段階であるとは言い難い。

 そこで本研究では,パソコン利用の基礎条件である日本語入力能力,特に日本語入力修得に 注目し,現職教師がその能力をどのような過程で,また,どれくらいの労力で修得するかを実 証的に明らかにする。また,その修得環境を一般の教師でも直ちに実現できる環境で行うよう にする。そのデータをもとに,学校へのコンピュータ導入の基礎条件を確立するための,方策 を探ることを目的とする。

2.方   法

 本研究は3つの部分から構成される。

第一に,日本語入力修得に対して現場教師の意識を明らかにするアンケートを行った。第二に,

日本語入力修得にどれぐらいかかるかを明らかにする実験を行った。さらに,今までの研究で は行われていなかった,修得後一定期間後のキー入力能力の向上に着目した。そこで第三の調 査では,日本語入力を修得してから,約1年後にどれぐらい日本語入力能力を得られるかをア

ンケートした。すなわち,本研究は現場教師が日本語入力の修得前,修得,修得後の3つの段 階に着目して調査した。

 ただし,ここでいう日本語入力が出来るか,否かの基準は,求められる職種によって著しく 異なる。例えば,秘書や専門のオペレータの場合には,入力速度と正確さに高い水準が求めら れる。しかし,この水準は明らかに現職教師に求められる水準ではない。また,児童・生徒に 求められる水準でもない。本研究では求められる日本語入力の水準を,キーボードを見ずに入 力することとした。従って,入力速度は問題にしなかった。また,本研究での実習はローマ字 入力を基本としている。そのため,日本語入力ができる最低限のキーとして,aからZのアル ファベットがキーボードを見ずに入力することを求めた。そのため,数字や特殊記号の入力は 求めなかった。また,同様の珪由からシフトキーを用いた大文字・小文字混じった文章を打つ

ことを求めなかった。この基準は,本研究で行った3つの実験で一貫して用いた。

 なお,比較的長期の協力を必要とする第二及び第三の実験・アンケートでは本学の大学院生

を中心に協力を得た。本学の大学院生は年齢的には30代から40代前半の現場中堅教師がほとん

どである。そこで,全ての調査での調査対象をできるだけ等質にするため,第一調査でもこの

年代の教師を調査対象とした。従って,本研究の第一の調査の対象は現場中堅教師を中心とし

ている。この年代の教師は,学校にコンピュータを導入するときの中心となり,現実に働く教

(4)

師である。このことからも,本研究の調査対象として最も適当と考えた。調査対象は,本学へ の現職派遣大学院生,OBを通して,広い範囲から協力を得た。

1) アンケート調査

以下の3点に注目したアンケート調査を行った。(別紙参照)

1.コンピュータ利用の有無 2.1 日本語入力が出来るか

2.2 日本語入力が出来ない場合,その修得にかかる時間の予想 2.3 日本語入力が出来る場合,その修得にかかった時間 3.小学生が日本語入力を修得するにかかる時間の予想 4.中学生が日本語入力を修得するにかかる時間の予想

 2) 日本語入力修得に関する実験

 さきに述べた大隅の研究(大隅 1988)では平常の学習活動として成立するように,無理な 実験的な手続きを組むことを避けた。本研究でも大隅の立場にたち,現場教師が実現できる学 習環境を考慮して,パーソナルコンピュータを利用した市販教育用ソフトウェアを利用する方 法をとった。

 利用したソフトウェアは,日本語入力修得用ソフトウェアとして世界的に定評のある「TYPE QUICKJ6」と,技術評論社の「パソコン・ワープロのキー入力を10倍速くする練習プログラム」

を用いた。この練習プログラムを被験者に貸与して,その後,先のアンケートで質問した「A からZまでの文字をキーボードを見ずに打てる」ようになるまでかかった時間を報告しても

らった。

 なお,練習プログラムで日本語入力を練習する際は,ローマ字入力による日本語入力を練習 するように求めた。本調査は,大学院での教育工学に関する実習での一貫として,受講者に協 力を得た。ただし,修得するまでの時間の長短によって,なんら損失がないことを事前に確認 した。しかし,能力測定はソフトウェアの貸与から2ヵ月後に行われた。従って,練習期間の 最大値は2ヵ月である。また,報告の際に,実際にキーボrドをうたせ,本当にその能力があ

ることを確認した。なお,コンピュータを6台以上常時利用できる部屋を用意して,コンピュー タを打たない被験者のために学習環境を整えた。従って,以上の学習環境は,現場の教師であっ ても実現できる学習環境である。

 3)約1年後の日本語入力能力

 この調査では,日本語入力を修得した教師が,平常に近い環境で1年後にはどれだけの日本 語入力能力を得るかを明らかにすることを目的としている。従って,基本的な学習環境はでき

るだけ整えるが,コンピュータ利用の形態には特に指示は与えなかった。

 本調査では,先の日本語入力修得に関する調査に協力を得た被験者のうち,その後の1年間 の期間,コンピュータを自由に利用できる環境にあった大学院生を調査対象とした。筆者の属 する理科教育では,コンピュータを7台常置した部屋を開放している。また,理科教育に所属

していない大学院生の中にも,実習後に個人的にコンピュータを購入した大学院生がいる。こ

れらの大学院生の協力も得た。

(5)

 さきに述べたように,本研究では日常生活での日本語入力の向上に着目している。そのため,

できるだけ条件をコントロールする事はさけた。具体的には,実習以後に日本語入力実習に関 する指示はまったく行わなかった。更に,実習終了後に1年後に能力向上の再調査をすること はまったく大学院生に伝えなかった。また,測定は前後2週間以内の期間で行った。従って,

この1年間の能力向上に関して筆者らの影響は無視できる。ただし,ソフトウェアの貸与や利 用方法の説明を大学院生が自主的に求めたときには,求められた範囲内で筆者が対応した。

 先に述べたように,大学院生はローマ字入力による日本語入力を実習で学んだ。そこで,本 調査での測定でもローマ字入力による日本語入力の結果を測定した。従って,入力結果は変換 に関わる入力も含めたものである。測定で用レ・た機種及びソフトウェアは特に指定しなかった が,2人はEGワード,一人は「新松」,その他は一太郎V.3を用いて入力した。なお,いずれ

もハードディスクや増設RAMは使用していない環境である。

3.結果及び考察

 1)アンケート調査の結果

 最初はワープロやパソコンの使用経験の有無を質問した。この質問に対する結果は,様々な 調査でも報告されている。本調査でも以下に示すように,ほとんどの教師はワープロまたはパ

ソコンを使用していた。

質問 ワープロまたはパソコンを使用していますか。

  使用している  66人(89.2%)

  使用していない 8人(10.8%)

 次に,その教師に日本語入力が出来るかを質問した。結果は,以下に示すようにほとんどの 教師は日本語入力が出来なかった。つまり,ワープロやパソコンを利用している教師のほとん

どは,我流もしくは人差指だけでの効率の低いキー入力を行っていた。

質問遅くてもいいですから,キーボードを見ずに打つことが出来ますか。

  出来る    10人(!3.5%)

  出来ない    64人(86.5%)

 次に,その教師が何故日本語入力を修得しないのか,その背景を探る質問を行った。つまり,

日本語入力を修得するのにかかる時間の予想を聞いた。その結果,大多数の教師は20時間以上 かかると考えていた。また,」結果の中には100時間以上という,事実上不可能と考えている教師 も少なくなかった。この様な予想のもとでは,日本語入力を修得せずに,現在の我流でワープ ロ等を利用と考えられる。

質問:出来ない方は,キーボードを見ずに打てるようになるにはどれだけ時間がかかると思

いますか

(6)

5時間未満       2人(3.1%)

5時間以上,10時間未満 2人(3,1%)

10時間以上,20時間未満 13人(20.3%)

20時間以上      47人(73.4%)

 日本語入力修得を自分達の児童・生徒に行わせたときに必要な時間を聞いた結果を以下に示 す。結果に示されるように,児童・生徒の修得速度の方が,自分達の修得速度より速いと考え ていた。しかし,それにも関わらず,約半数の教師は,児童・生徒が日本語入力を修得するに は20時間以上かかると考えていた。日本語入力修得のために20時間という時間を,平常のカリ キュラムに位置づけることはきわめて困難である。従って,この様な意識が教師集団の中で一 般的であるという状況は,学校教育にコンピュータ導入に関して著しい障害であると考えられ

る。

 質問:小学校5,6年生の子供達がキーボードを見ずに打てるようになるにはどれだけ時間 がかかると思いますか

 5時間未満       4人(5.4%)

 5時間以上,10時間未満 11人(14.9%)

 10時間以上,20時間未満 12人(16.2%)

 20時間以上      47人(63.5%)

質問1中学校の生徒たちがキーボードを見ずに打てるようになるにはどれだけ時間がかかる と思いますか

 5時間未満       9人(12.2%)

 5時間以上,10時間未満 8人(10.8%)

10時間以上,20時間未満 21人(28,4%)

20時間以上      36人(48.6%)

 次に,自分達教師の日本語入力修得にかかると予想する時間と児童・生徒の日本語入力修得 にかかる時間との相関を求めた。もし,両者の間に相関があるならば,教師自身が短時間に日 本語入力を修得した経験があれば,児童・生徒の日本語入力修得にかかる時間の予想を軽減す ることが出来ることが示唆される。もし,児童・生徒の日本語入力修得にかかる時間の予想を 軽減することが出来るならば,学校教育の中に日本語入力修得を位置づけることが出来る環境 が整うと考えられる。

 結果は,日本語入力未修得の教師のもつ,自分の修得予想時間と小学生の取得予想時間の相 関係数はO.620であった。また,日本語入力未修得の教師をもつ,自分の修得予想時間と中学生 の取得予想時間の相関係数はO.693であった。いずれも高い相関係数を示し,1%水準で有意な 相関係数であった。

2)現職教員を対象とした日本語入力修得の実際

現職教員を調査対象とする,比較的長期の協力を必要とする研究を企画することはきわめて

(7)

困難である。本研究では,全国から現職派遣の教師を受け入れている大学であるという本学の 特徴をいかすことによって,その問題を解決した。しかし,今回の被験者の数から数量的な扱 いをすることは困難である。そこで,以下の結果の分析では大体の傾向を求めることを目的と

した。

 ①日本語入力修得にかかる時間

 先に述べた方法で,実習を行ったときの,日本語入力修得にかかった時間の結果を以下に示 す。イ旦し,本実習を受講する以前に日本語入力を修得していた現職派遣大学院生のデータは,

以下の結果のなかに含めなかった。

 結果では,一般の教師の予想よりかなり短期間で修得できたことを示している。先の調査で は20時間以上を予想する教師が殆とあった。その約4分の1以下の5時間未満で修得できるら ば,練習を実行する教師はかなりいると考えられる。

 練習の負担には,このデータに示される総練習時間の他に練習頻度及び練習期間が考えられ る。先に述べた「方法」で示したように練習期間は2ヵ月以内である。また,練習頻度に関し ては一回の練習時間や,各々の練習間隔など変数が多く,今回のような調査人数では不適当と 考え測定しなかった。しかし,過半数の大学院生が総練習時間5時間未満で達成されたことか

ら,練習頻度も極端に多くはないことは示唆される。

5時間未満       18人 5時間以上,10時間未満 14人 10時間以上,20時間未満 1人 20時間以上       O人

 ②一年後の日本語入力能力の向上

 先の方法で述べた環境で1年間,ワープロやパーソナルコンピュータを利用したときの日本 語入力を測定した。調査対象は,日本語入力修得の実習を受けた大学院生の内,先に述べた練 習環境を得ている現職派遣犬学院生に関して協力を得た。但し,この分析においても,実習を 受ける以前に日本語入力を修得していた現職派遣大学院生の結果は含めなかった。

 結果は5分間の間に,自分の普段使っているワープロ,またはワープロソフトウェアでの入 力結果である。但し,この時は文字数は平常と同様に,漢字かなまじり文に変換した状態での 文字数である。また,ここでの所要時間にはワープロの変換時間を含んだものである。

150文字未満      O人

150文字以上200文字未満 5人

200文字以上300文字未満 8人

300文字以上400文字未満 6人

400文字以上      0人

(8)

4.結   論

以上の結果をまとめると,現場教師は日本語入力の修得にはかなりの時間がかかると思って いる。しかし,適切な学習環境をそろえれば,彼らの予想以上の短期間に日本語入力は修得で きる。さらに,修得した日本語入力によって,コシピュータを利用することにより,1年後に は十分実用に耐える能力を得ることができた。そして,この認識を現場教師に持たせることに よって,学校教育へのコンピュータ導入に関する環境整備がはかられる。

5.おわりに

 学校にコンピュータが導入されて,最も役に立つのはワープロであろう。しかし,そのワー プロを本当に役立てるためには,ある程度の速度以上で入力が出来なくてはならない。我流で

もある程度の速度にはなるが,決して組織的な練習を行った日本語入力で到達できる速度には ならない。

 ワープロを有効に使いこなすためには,MS−DOSなどのOS操作が必要になる。本学の大学 院生を見ていると,講義の中でOS操作を説明してもなかなか理解してもらえない。しかし,修 士論文作成のために本格的にワープロを利用すると,短期間でOS操作の基本を修得する。中に は,相当高度なバッチファイルを作成でき,高級言語やハードウェアに興味を持つ大学院生も でてきた。これも,ワープロ等のアプリケーションを使いこなすために,それらの知識が必要 となったためと思われる。

 つまり,ワープロ修得は決してワープロ修得にとどまらず,コンピュータ利用の全体の人口 となると思われる。そのためにも,日本語入力修得はぜひ必要であり,学校にコンピュータを 導入する初期にキー入力の修得をはかるのは有効であると考える。

 今回の調査は大学院での実習の中で,どれだけの時間で修得できるかを明らかにしたもので ある。調査で用いた学習条件は,現場でも実現できる環境である。さらに,.事例が少数である ことを考慮して結果には含めなかったが,複数のOB大学院生の勤務校に練習ソフトウェアを 貸与した場合も,本学での結果とほぼ同様の結果を得ている。これらの結果は,キー入力練習

ソフト等を利用することによって,現場で日本語入力修得…こ関する研究を実施することは決し て過度な負担ではないことを示すものである。さらに,最近,中野らはパーソナルコンピュー タでの日本語入力における誤操作に注目した基礎研究を行っている(中野 1989.1990)。この 様な基礎研究の蓄積によって,より優れたソフトウェアの開発が進むならば,現場教師がコン

ピュータを学習する基礎条件は整うのではないかと期待している。

謝     辞

本研究は,平成2年度電気通信普及財団研究助成(研究代表:西川純,現職再教育における

タッチメソッド修得過程の研究,学校へのコンピュータ導入のための基礎条件の確立を目指し

て)の全面的な援助のもとに行われた。ここに謹んで感謝の意を表します。

(9)

文     献

舟橋祥子,羽賀隆洋,大田義勝1日本語入力訓練用自習システムNSTUDYについて,大型計   算機による日本文入力処理教育実践報告,日本教育工学雑誌,V.9,PP.23−30.1984 原田昭子:ワープロによる情報処理教育,日本教育工学会第5回大会講演論集,PP.85−86.1989 Hayes,Y、,Wi1son,G.D.andSchafer,R.L.,Typewritingrate asafunctionofreactiont㎞e,

  Pmcφ伽〃伽a Mo才。γS肋J∫,V.45,PP.1179一ユ!84.1977

飯島正博,成瀬悟策1文字位置の記憶に及ぼすモダリティの効果,九州犬学教育学部紀要(教   育心理学部門),V130,PP.229−240.1985

飯島正博,成瀬1吾策1タイプライティングにおける準拠パターンの形成,九州大学教育学部紀   要(教育心理学部門),V.32,PP.129−139.1987

岩佐京子:ワープロは10本指で打ちましょう,東京経済,1987

増田.忠1キーボードを3時間でマスターする法,日本経済新聞社,1987

森  基,大隅紀和,竹下礼生,脇田浩子:小学生を対象とした日本語入力学習の展開の試行,

  日本教育工学会第5回大会講演論集,PP.87−88,ユ989

中野靖夫1ワードプロ七ツサーの操作過程の分析,日本教育工学会第5回大会講演論集,PP.89   −90.1989

中野靖夫:コンピュータの操作過程の解明(1〕,ワードプロセッサの学習過程の分析,上越教育   大学研究紀要,V.9,(第一分冊),PP.37−47.1990

野口輝雄:児童の文章入力行動の分析,日本教育工学会第5回大会講演論集,PP.83−84.1989 大隅紀和:大学生の日本語入力に関する初期操作の検討(1〕,教育工学関連協会連合第2回全国   大会講演論文集,PP.245−248.1988

大隅紀和1乾 和雄,林 和志:ワープロから始めるコンピュータ教育の試み,小・中学校で   の実践を中心に,教育情報研究,V.4(1),PP.14−22.1988

坂元 昴(研究代表)1オフィース・オトメーション用機器(OA機器)の標準化促進のための   標準教育用機器(学校用日本語ワープロセッサ)の開発調査研究報告書(第1年度),日本   事務機械工業会,1987

坂元 昴(研究代表)1オフィース・オトメーション用機器(OA機器)の標準化促進のための   標準教育機器(学校用日本語ワープロセッサ)の開発調査研究報告書(第2年度),学習活   動へのワープロ活用の研究,日本事務機械工業会,1988

坂元 昴(研究代表)1オフィース・オトメーション用機器(OA機器)一の標準化促進のための標   準教育用機器(学校用日本語ワープロセッサ)の開発調査研究報告書(第3年度),I小中   学校の学習活動にふさわしいワープロの基本機能,日本事務機械工業会,1989

坂元 昴(研究代表):オフイース・オトメーション用機器(OA機器)の標準化促進のための標   準教育用機器(学校用日本語ワープロセッサ)の開発調査研究報告書(第3年度),II小中   学校におけるワープロ活用の現状と展望,日本事務機械工業会,1989

Salthouse.T.A一,The skill of typing,Sc圭m左砺。λme庇αm,V.250,PP.128−135.1984 田口みすず:ワープロタイピング入門,西東社,1990

富永直久:ワープロは10本指で,日本実業出版社,1986

別紙(アンケート調査問題)

(10)

 この調査は,現場にワープロ・パソコンを導入するための基礎資料を得るための調査です。

当てはまる方をまるで囲んで下さい。.

 なお,質間中の「キーボードを見ずに打つ」とは,速度は関係なく,アルファベット「a」

から「Z」までを打てることをさします。ただしカナ入力を常用している場合は,「あ」から「ん」

までの50音を入力する場合と解釈されても結構です。

 また,時間に関する質問に関しては大体の見当,または予想で結構です。児童・生徒に関す る予想は,現在担当している学校興階に関わらず・小学校・中学校の両方に回答して下さい。

1 現在ワープロまたはパソコンを利用していますか。    (使っている 使っていない)

2 遅くてもいいですから,キーボードを見ずに打つことが出来ますか。

      (できる できない)

出来ない方

  キーボードを見ずに打てるようになるには,どれだけ時間がかかると思いますか。

      (総計   時間)

出来る方

  キーボードを見ずに打てるようになるには,どれだけ時間がかかりましたか。

      (総計   時間)

また,何をつかって練習しましたか。(         )

3 小学校5,6年生の子供たちがキーボードを見ずに打てるようになるにはどれだけ時間が   かかると思いますか。

      (総計   時間)

4 中学校の生徒たちがキーボードを見ずに打てるようになるにはどれだけ時間がかかると思   いますか。

      (総計   時間)

(11)

1nVeStigatiOn

on Japaneξe Typing Training in Teacher

     In−service Training

Jun NIsHIKAwA*

ABSTRACT

   In the study,three kind of investigations were carried out.First investigation make c1ear times in which teachers wi11get Japanese typing.Second investingation make c1ear actual times in which teachers can get Japanese typing.Third investigation make c1ear their typing abi1ity a year after second investigation.

   Teachers thought that studying Japanese typing is very hard.But,if they study it in proper environment,they Iearn it in short period.They can get enough typing ability tiH a year after second investigation.

ヰ Division of Science: Department of Science Education

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