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湿度センサを用いた局所発汗量測定装置

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Academic year: 2021

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(1)

1. ま え が

発汗は,高 温環境または著 しい体熱産生をともな う生体活動時の有力な体熱放散手段 であ る.温熱性発汗は皮膚など未栴か らの暑熱感覚刺激ならびに中枢血液温上昇の両者が刺激 と なる.一方,手掌,脹宿などでは精神性緊張が動機 となる発汗 (精神性発汗)がみ られる(1)〜(8)

発汗機能は本来の体温調節的意義以外に も自律性反射機能の中枢および未栴神経機能を反 映する(4)〜(6). こうした生理学的事実を基に,われわれは局所発汗量を指標 とした簡便な自律 神経枚能検査装置を開発 した.

従来,局所発汗量の測定は皮膚に装着 したカプセルに供給 される発汗水分を塩化 カルアウ A,無水硫酸カルシウムあるいは波紋に吸着させ,その重量増加分を化学天秤 で測定す る不 連続的な測定方法(礼 (8)が行われてきた.一方,吸湿性素子の電気抵抗が気湿に よって変化す ることを利用 した抵抗湿度計(9)は連続的に発汗量を記録できるが吸湿物質の除湿速度が遅 く 発汗量減少に忠実に従わない. また, 通電法による 皮膚電気抵抗測定法による 連続的な測 定的 も行われているが,■出力電圧値が通電電流値あるいは電極抵抗の影響を受けるなど問題 点 も多い.最近,皮膚部分をおお うカプセルに低湿 のN2ガスを流 し,その部分か らの汗の 蒸発による湿度の増加をパイプを介 して高分子湿度計で 測定する方法が試み られている的.

この方法は,皮膚に装着 したカプセル と湿度計の間を連結するパイプの長 さや N2ガスの流 量が応答性や感度に影響を与える.そ こで,われわれは,最近空調機器などの湿度制御 シス テム用 として開発 されたセ ラ ミック湿度センサに注 目して湿度を指標 とした安価で取扱いの 簡便な局所発汗量連続測定装置を製作 した.本装置は小容積のカプセル内に湿度センサを設 置 し,カプセルを直接皮膚部分に装着 し発汗量を連続測定する. カプセルには乾燥 した N2 ガスを供給 してカプセル内が汗で飽和 しないようにすると共に皮膚接触部に温度センサを設 置 し,局所 の皮膚表面温度をも同時に把握できるように した.本稿では,装置の概要 と動作 特性な らびに ヒ トの手掌部にカプセルを装着 して得た2‑ 3の生理学的実験結果を示す.

2.

本装置は湿度センサ と皮膚温度センサが収納 されたカプセルならびにセンサ駆動 ・検出電 気回路か らな り,カプセルには乾燥 した N2ガスが定流量で供給 され る. カプセルの構造の 概要を図1に示す.湿度センサはアル ミナ基板上に形成 された くし型電極上にAIPOl系 の療

*昭和589 電子通信学会,医用電子 ・生体工学研究会において発表

** 電気工学科 助教授

原稿受付 昭和599月28日■

(2)

34 長野工業高等専門学校紀要 ・第15

humiditysensor lead

湿結晶を含んだ膜を塗布 した厚膜構造で,膜 の 電気抵抗が湿度の増減に対 し指数関数的に変化 PIPe

sMconrubber thermosensor

[==

20mm 図 1 カプセルの構造

シ リコンゴムで形成 した カプセル内に皮膚表面 と相対 して設置 され,さらに皮膚表面温度検出 用の トランジスタが カプセルの下縁にその表面 が皮膚に接す るように埋めこまれている(図 1).

カプセルの側面か ら内径2mmのポ リェチ レン パイプを通 して乾燥 した N2ガスが供給 され, 反対側の41.5の小孔から放出される.

湿度センサ駆動 ・検出電気回路な らびに動作 波形を図2に示す.湿度センサは,ブ リッジ回 路網内の一辺に約 1mのシール ド線を介 して挿

2 センサ駆動 ・検出電気回路(A) ならびに動作波形(B)

入 されている.ブ リッジ回路は自走マル チバイプ レr タ の 方形 波出力 (周波数 150Hz)によ り交流励振 される (2B, REF).ブ リッジ偏位電圧 は, 汎用オペ

ア.ンプで構成 した差動増幅器・交流増幅 器を経 て乗算器に導びかれ る.湿度セン サは水分量に依存する抵抗 と水分量に本 来無関係な静電容量の並列回路で表現で きる. したが って,ブ リッジ偏位電圧に は蒸発水分量の他に方形波の変化時に生 じるスパイ ク成分が 重畳する (図2B,

Ⅹ).卒回路ではスパイ ク成分を 除去す るために乗算器を用いて同期検波回路を 構成 し,スパイク電圧を 0ボル トに クラ ンプした.乗算器の参照信号は2つのモ ノマルチバイブ レータお よび差動増幅器 を利用 して作成 した (2B,Y).ブ リ

ッジ回路ならびに同期検波回路の採用は 装置出力特性の直線性の改善 とダイナ ミ

ックレンジの拡大化に役立 った.検波出 刀 (2B,ⅩY)は低域 フィルタ,直流 増幅器を経 てアナ ログ出力される.

カプセルの下縁に哩や こんだ皮膚温度 センサはマイ クロデ ィス クタイプの トラ ンジスタ (2SC469)のべ‑ス 電圧温度 依存性を利用 した. これにより皮膚表面

(3)

温度のモニターが可能である.

3.動 作

本装置の特性を試験するため, 3に示す試験回路を構成 した.

乾燥 N2ガス250

m

l/min の定

流量で 三方活1を 経 て 容量 約 70mlの アT)ルチ ェソ′,'に 供給 される.チ ェンバ内には蒸留水約 3mlの入 ったポ リエチ レン容器が 収納 されている.容器の蓋の一部 がス.リッ ト状に開 口してお り長方 形の波紋1部分 (面積1‑4 cm2) を表面に露出 した状態で挿 入されている.チ ェンバ内の露出 波紋か ら蒸発す る水分を吸収 した ガスは三方活2を経た後,ポ リ ェチ レンパイプを通 じてカプセル に導びかれ る.

特性試験は,2つの三方活栓を 同時に操作 し,バイパスチ ューブ を経 由してカプセルに乾燥 ガスを 供給 した 場合を 対照 として 行 っ た. カプセルの皮膚装着面は ゴム 板で蓋を し,空気等がカプセル内 に混入 しない よう.にす る と と も に,カプセル 全体の温度

3

6oC

〜37oCに保した.

4は特性実晩の結果を示す.

4Aはカプセルに乾燥 ガスを定

3 特性試験回路の概要

1rTlin

4 装置動作特性

A:蒸発水分ステ ップ応答 B :装置出力一失水分量関係 流量で供給 し安定出力を得た彼,

チ ェンバを経た 蒸発水分を含んN2ガスを 5分間 カプセルに供給 した際の装置応答である.

この時チ

ソJl'へのガス 供給前後における 渚紙を 含たポ リエレン容器の重量を 精密天 (E.M

E

TTERH15)で測定 し,乾燥スの奪い去 った水分量 (失水分量)を求め る 50mgであった.また,図4Aに示す よう本装置は湿度変化に対 し瞬時的な応答特性を 示 し,局所発汗量の測定に十分適用 し得る.4Bは,失水分量に対する装置出力の関係で ある.チ ェンバ内のポ リェチ レン容器に挿入 した滝紙の表出面積を増減,失水分量を変化 させ,A図 と同様にして装置出力電圧を測定 した.図に示す ように,4.4mV/long/5min‑ 感度でほぼ直線性が得 られ,直線性の範囲は最大 800mg/5min程度の失水分量 までであった.

(4)

長野工業高等専門学校紀要 ・第15

864333

(U,)nteJadE

トー一・一一一一1 10mln

5 温度変化に対する装置出力

T333(Uo)nIeJaduJ1(UZuJSfBE)SSOlJ)?

ト..一・1 mentatcatcutation 1mln

図6 ヒト手掌部局所発汗量ならびに皮膚表面温度 (暗算負荷時)

5はカプセルの温度変化に対する装置出力の関係である.図3に示 した試験回路でカプ セル全体を約30

o

Cか ら40

o

Cに変化 し,カプセルに設置 してある温度センサ出力 と装置出力 を同時記録 した.生体温度変化範囲内における ドリフ ト変化は失水分量に換算 して4‑5mg/

5minであった.温度センサは (35±5)oCの範囲内 において 良好な 直線性を示 し,感度は 1.3V/oCであった.

4. 生理学的応用例

カプセルを ヒ トの手掌部に装着 し,局所発汗量,局所皮膚表面温度を同時記録 しなが ら生 理学的実険を行 った.被験者は男子4名,女子2名いずれ も成人である.図640才男子に 暗算負荷 (2ケタの加算,20問)を施行 した際の典型的な反応記録である.暗算開始後約15 秒 の潜時を経 て手掌部発汗が始ま り,約15.秒で平衡に達 した.暗算を継続すると,時 々相動 的反応を示す ものの基線 レベルは一定値を保持 した.矢印で示 した ピークは答の誤 りに本人 が気ず き暗算の再試行を開始すると手掌部発汗量は急激に増加 した:暗算をやめるとF発汗量 はただちに減少 し,対照の基線 レベルに戻 った.手掌部表面の皮膚温度は一般に著変を認め なかったが,図6に示 した被験者の場合,暗算開始の手掌部発汗に対応 して一過性の皮膚表

面温度の低下が認め られた.

734才男子に振動刺激を負荷 した際の典型的な手掌部発汗量 と皮膚表面温度を記録 し た ものである. カプセルを被験者の左手手掌部に装着 し,反対側右手の手掌部に自作の振動 負荷装置的を用いて振動数60H2:,振幅0.22mm,加速度3Gの振動刺激を2分間負荷 した.

振動刺激のon‑o任に対応 して瞬時的な手掌部発汗が認め られた(7左側).皮膚表面温度は 発汗反応にやや遅れて低下す る傾向を示 した.一方,カプセル装着の左手に同一パラメ丁 タ の振動刺激を負荷す ると,振動刺激開始 と同時に顕著な手掌部発汗が律動的に発生 した ( ,7右側).発汗量 も前者 の実験に較べ, 有意に増加するのが認め られた. カプセルを振動器

(5)

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図7 ヒト手掌部局所発汗量ならびに皮膚表面温度 (授動刺激負荷時)

の振動端子に固定 し,機械的振動の影響 も検索 したが装置出力に全 くの変化 も認め られなか った.

5.

本稿に述べた局所発汗量測定装置の特徴は次のように要約される.

(1) 小容積のカプセル内に湿度センサを設置し,カプセルを皮膚表面に直接装着 して局所 の 発汗量を簡易かつ正確に連続的な測定ができる.

(2)カプセルの皮膚接触部に温度センサが設置 されてお り,局所の皮膚表面温度を も同時に 測定できる.

カプセルを ヒ ト手掌部に装着 し,暗算な らびに振動負荷時の局所発汗量を測定 した.暗算 負荷時において,1回 日の暗算を開始 した時には,1‑2秒の汚時できわめて急激なスパイ ク状の手掌部発汗が生 じた. さらに暗算試行を2, 3回 と繰 り返す と手掌部発汗の潜時が延 長 し,発汗量 も減少する傾向が全員 (n‑ 6)で確認された.すなわち,手掌部発汗反応に は頗著な順応反応が認め られた.

振動刺激に対する手掌部発汗増加現象は全員 (n‑6)に図7と同様の傾向が認め られた.

この結果は,振動刺激が中枢神経系を介さずに局所 の汗腺に直接作用 して発汗量を増加させ る作用を持つ ことを示唆する.

われわれは,マルチユニッ トの本装置を用いて局所発汗量の左右差 ,あるいは経時的変化 を比較することによって簡便な自律神経概能検査を試みている. これは神経再生の評価,脳 卒中の病態把捉, 各種発汗異常の診断など臨床各方面で広汎に 利用できる もの と予想 され る.

(6)

38 長野工業高等専門学校紀要 ・第15

稿を終 るにあた り,発汗量 の測定方法を含 めた温熱生理学全般にわた り,御教示,御指導 をいただいた順天堂大学東 健彦理事長 な らびに信州大学医学部大橋俊夫助教授に感謝 しま す.

参 考 文 献

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参照

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