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集団授業におけるアクティブ・ラーニングとその効果

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Academic year: 2021

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(1)

1 はじめに

 2008年、文部科学省は中央教育審議会の答申

「学士課程教育の構築に向けて」において、「今日、

大学教育の改革をめぐって「何を教えるか」より も「何ができるようにするのか」に力点を置き」

とある(1.文部科学省2008)。確かに高度な研究に は情報収集能力やそれをもとに新たな構築ができ る人材を輩出させるには必要である。しかし、現 在の高等教育機関に在籍する学生の少なくとも半 数は基礎的な学力すらままならないのが現状であ る。この隔たりを埋めていくには低度の能動的学 習方法を行うことでしかない(2.溝上慎一2014)。

その効果を比較、検討するには、介入群としての 講義内の前後に演習を実施したAグループ、実験 群の従来型の「教える」ことを中心とした講義を 受講したBグループ、統制群として講義を受けて いないCグループの資料が必要となった。

2-1 演習の効果に対しての調査

 東京都内の文系総合大学の2015年度1年生後期 キャリア科目履修者の4クラス(2グループ)の学 生及び未履修者の計935名に40分30問(回答方法 は多肢選択式、1問1点)の就職試験に多用され る文章題試験を2016年1月26日に実施した。

[Aグループ] 2クラス計234名

 講義開始後、3問の演習問題(前回の講義内容 及び計算力が必要で板書しやすい問題)を板書し、

伊藤 恵司a

a湘北短期大学非常勤講師

【抄録】

 大学におけるキャリア教育の一環として行われている基礎学力養成のための講義は、調査(アンケート)や 討論等の技法を導入しても効果は期待できない。さらにそれが 100 人規模の集団一斉授業の場合、学生個人の 基礎学力を高めるためには、従来からの宿題や演習といった低度の能動的学習を課すことになる。そのような 手法はどの程度の教育効果が期待できるかを検証し、さらに今後の学習指導に活用できるかを考察する。演習 や宿題も事後の管理を確実に実施することで、その効果は認められた。一方、講義時間には制約があり、演習 を行うことで、指導項目の一部を簡略化せざる得ない実情もあった。また、個人の学力や学習意欲の差を補う には、集団授業の限界も明らかになった。

【キーワード】

アクティブ・ラーニング  宿題  演習  学力

<連絡先>

 伊藤 恵司 [email protected]

(2)

湘北紀要 第 38 号 2017

学生にはノートにその問題を書写するよう指示、その後演習を実施した。講義担当者はその間に出席カー ド(コメントシート)を配布し、演習の進捗状況を確認した。約10分の演習後に解説を実施した。授業は 講義スタイルで行い、最後の10分に本日のポイントとなる1題板書して、学生に、配布した出席カードに、

その問題の解法(式と答え)を記入して提出するよう指示した。式がなく答のみの学生及び誤りがある 学生は解き直すよう指導した。なお、初回の講義だけは最初の演習は実施しなかった。これを繰り返し たことで、受講した学生には最大57問の問題を解く機会が与えられた。本グループの副次的な効果とし て、授業アンケートに、「前回の講義を休んでも演習でその内容が分かり、助かった」という回答を得た。

[Bグループ]2クラス計318名

 グループAと同じ指定テキストで授業を行った。テキスト以外に、類似問題プリントを配布して授業 を行った単元もあったが、演習時間は設定しなかった。授業回数はAグループより1回多かった。

[Cグループ]383名

 キャリア科目を履修しなかった学生で受験希望した学生。

- 94 - 2-2 試験結果

(1) 全体の得点構成

【グループ別得点構成表】

得点 0~ 3 4~ 6 7~ 9 10~ 12 13~ 15 16~ 18 19~ 21 22~ 24 25~ 27 28~ 30 Aグループ 1.7% 9.8% 20.5% 25.6% 19.2% 13.2% 6.0% 2.1% 0.9% 0.9%

Bグループ 2.5% 12.9% 27.7% 30.5% 15.1% 6.9% 2.5% 0.6% 0.9% 0.3%

Cグループ 11.2% 25.6% 30.3% 15.9% 9.4% 3.9% 2.3% 0.8% 0.5% 0.0%

Aグループ234名の平均正答率40.0%(平均正答問題数12.0題/ 30題中)

Bグループ318名の平均生徒率35.0%(平均正答問題数10.5題/ 30題中)

Cグループ383名の平均正答率28.1%(平均正答問題数 8.4題/ 30題中)

【グループ別得点構成グラフ】

[B

グ ル ー プ

] 2

ク ラ ス 計

318

グ ル ー プ

A

と 同 じ 指 定 テ キ ス ト で 授 業 を 行 っ た 。 テ キ ス ト 以 外 に 、 類 似 問 題 プ リ ン ト を 配 布 し て 授 業 を 行 っ た 単 元 も あ っ た が 、演 習 時 間 は 設 定 し な か っ た 。授 業 回 数 は

A

グ ル ー プ よ り

1

回 多 か っ た 。

[C

グ ル ー プ

] 383

キ ャ リ ア 科 目 を 履 修 し な か っ た 学 生 で 受 験 希 望 し た 学 生 。

2-2

試 験 結 果

(1)

全 体 の 得 点 構 成

【 グ ル ー プ 別 得 点 構 成 表 】

得 点

0 ~ 3 4 ~ 6 7 ~ 9 1 0 ~ 1 2 1 3 ~ 1 5 1 6 ~ 1 8 1 9 ~ 2 1 2 2 ~ 2 4 2 5 ~ 2 7 2 8 ~ 3 0

A グループ 1.7% 9.8% 20.5% 25.6% 19.2% 13.2% 6.0% 2.1% 0.9% 0.9%

B グループ 2.5% 12.9% 27.7% 30.5% 15.1% 6.9% 2.5% 0.6% 0.9% 0.3%

C グループ 11.2% 25.6% 30.3% 15.9% 9.4% 3.9% 2.3% 0.8% 0.5% 0.0%

A

グ ル ー プ

234

名 の 平 均 正 答 率

40.0%

( 平 均 正 答 問 題 数

12.0

題 /

30

題 中 )

B

グ ル ー プ

318

名 の 平 均 生 徒 率

35.0%

( 平 均 正 答 問 題 数

10.5

題 /

30

題 中 )

C

グ ル ー プ

383

名 の 平 均 正 答 率

28.1%

( 平 均 正 答 問 題 数

8.4

題 /

30

題 中 )

【 グ ル ー プ 別 得 点 構 成 グ ラ フ 】

最 頻 値 は 、

A

グ ル ー プ ・

B

グ ル ー プ と も

10

12

問 正 答 と 等 し い が 、

B

グ ル ー プ は

30.5%

と 最 も 集 中 し て い る 。 ま た 、

C

グ ル ー プ は グ ラ フ を x 軸 正 方 向 に

1

階 級 (

1

つ 右 に ) 移 す と 、 そ の 形 状 ( 度 数 分 布 ) が

B

グ ル ー プ と 酷 似 し て い る 。 例 え ば 、

C

グ ル ー プ の

0

3

点 の 集 団 は

11.2%

B

グ ル ー プ の

4

6

点 の 集 団

12.9%

2%

程 度 の 差 で し か な い 。す な わ ち 、 授 業 形 式 の

B

グ ル ー プ は

C

グ ル ー プ を そ の ま ま 約

7%(

2

問 分

)

の 得 点 力 を 向 上 さ せ た よ う に み え る 。 ま た 、

A

グ ル ー プ は

B

お よ び

C

グ ル ー プ と 異 な り 散 ら ば り が 大 き い

(

標 準 偏 差 で は

A

グ ル ー プ は

4.8

B

4.3

C

4.5)

A

グ ル ー プ に は さ ま ざ ま な 成 績 の 受 験 生 が 存 在 す る と い え る 。 さ ら に 、

A

お よ び

B

グ ル ー プ に は 最 頻 値 よ り 右 、 す な わ ち 成 績 優 秀 者 が 比 較 的 多 い こ と も 特 徴 で あ る 。

C

グ ル フ ー プ は

7

点 未 満 の 受 験 生 の 集 団 が 多 い こ と が 分

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

0

3 4

6 7

9 10

12 13

15 16

18 19

21 22

24 25

27 28

30 A

グループ

B

グループ

C

グループ

(3)

 最頻値は、Aグループ・Bグループとも10~ 12問正答と等しいが、Bグループは30.5%と最も集中し ている。また、Cグループはグラフをx軸正方向に1階級(1つ右に)移すと、その形状(度数分布)がBグルー プと酷似している。例えば、Cグループの0~ 3点の集団は11.2%でBグループの4~ 6点の集団12.9%

と2%程度の差でしかない。すなわち、授業形式のBグループはCグループをそのまま約7%(約2問分)

の得点力を向上させたようにみえる。また、AグループはBおよびCグループと異なり散らばりが大き い(標準偏差ではAグループは4.8、Bは4.3、Cは4.5)。Aグループにはさまざまな成績の受験生が存在 するといえる。さらに、AおよびBグループには最頻値より右、すなわち成績優秀者が比較的多いこと も特徴である。Cグループは7点未満の受験生の集団が多いことが分かる。

(2) 試験内容と正答率(単位:%)

問題番号 出題内容 Aグループ

(講義+演習) Bグループ

(講義) Cグループ

(試験のみ)

1 定価・仕入値・利益(1) 54.3★ 53.1  28.7  2 定価・仕入値・利益(2) 45.3★ 43.7  23.8  3 数字ができる場合の数(1) 73.9★ 73.9★ 69.5  4 数字が条件通りに並ぶ確率(2) 38.5  39.6★ 31.1  5 距離と時間から速さを求める(1) 83.3★ 72.3  59.5  6 出会うまでの時間を求める(2) 46.6★ 42.5  35.8  7 水を汲みだす能力と時間(1) 65.8★ 29.9  17.2  8 水を汲みだす能力と時間(2) 48.7★ 26.4  24.0  9 県の農産物生産額と割合の表(1) ◆ 65.4  68.9★ 55.9  10 県の農産物生産額と割合の表(2) ◆ 64.5★ 61.0  50.4  11 県の農産物生産額と割合の表(3) ◆ 47.9★ 40.6  32.4  12 2人の金銭のやり取り[清算](1)  62.4★ 61.9  56.4  13 2人の金銭のやり取り[清算](2)  15.4  18.9★ 18.3  14 約束記号による計算(1) 49.1  50.3★ 42.6  15 約束記号による計算(2) 25.9  29.9★ 28.7  16 集合[2要素](1) 49.6★ 46.9  37.1  17 集合[3要素](2) 30.8★ 24.2  20.4  18 集合[3要素](3) 20.9★ 18.6  10.4 

19 食塩水の濃度(1) 77.4★ 56.8  30.8 

20 食塩水の溶媒[水]の重さ(2) 26.9★ 11.6  8.9  21 食塩水Aと食塩水Bの混合濃度(3) 19.7★ 13.2  12.0  22 条件文による4つの大小関係(1) 19.7★ 15.4  15.7  23 条件文による4つの大小関係(2) 27.4★ 21.1  19.8 

(4)

湘北紀要 第 38 号 2017

2-3 演習問題と試験問題の項目が一致したことによる効果の考察

 ある洋品店では、どの商品にも仕入値の4割の利益を見込んで定価をつけた。以下の問いに答えよ。

問1 定価が3500円のとき、仕入値はいくらか。【選択肢略】

問2 仕入値が5000円のとき、値引きをして販売したとき、950円の利益があった。このとき、定価に 対する値引き率を歩合で表しなさい。【選択肢略】

問1 正答率A=54.3% B=53.1% C=28.7%

 演習時は、「仕入値1000円に3割の利益を見込んで定価をつけたが売れなかったので、定価の2割 引きで販売したところ何円の利益になったか」という仕入れ値明示問題に終始していた。なお、仕入 値や利益を見込んだ割合、割引率はその都度変更し、5問出題した。問1の設問では、仕入値を求め させるため、「1000×(1+0.3)=1300」という式でなく、仕入値をχ円とした「χ×(1+0.3)=1300 χ

=1000」となるため、演習の効果は大きくなかった。

24 グラフの領域と読み取り(1) ◇ 26.5  30.2★ 18.8  25 グラフの領域と読み取り(2) ◇ 30.8★ 26.7  22.7  26 グラフの領域と条件の追加(3) ◇ 21.8★ 18.6  17.8  27 条件文と位置関係(1) ◆ 21.4★ 15.1  17.8  28 条件文と位置関係(2) ◆ 9.0  8.8  9.1★

29 フローチャート[手順](1) ◆ 23.9★ 20.8  18.3  30 フローチャート[手順](2) ◆ 9.0  9.4★ 8.4  平均正答率(%) 40.0  35.0  28.1  Aグループの受験者:234名 Bグループの受験者:318名 Cグループの受験者:383名

★;各試験問題で最も正答率が高いグループ

◇;指定されたテキストに例題はあるものの練習問題がなかった試験項目

◆;指定されたテキストに掲載されていない試験項目

網掛け; 問1、問2、問5、問6、問7、問8、問19、問20、問21は、授業内で演習を実施した項目ではあるが、

講義担当者は講座最終日の実施される単位認定試験問題の内容を知らされていない。したがって、演習 では実施したが試験には出題されなかった項目もある。順列や組合せの演習以外のパターンの問題や相 当算と称される問題がそれである。例えば「商品Aを購入するのに購入金額の〇%を頭金で支払い、1回 目の支払いは頭金の〇%で支払い、さらに残りを〇回で均等に支払うと、その均等割りの1回分の金額 は購入金額のどれだけの割合になるか」という問題である。演習時は問題を板書で示すため、長く複雑 な文章題を練習する機会はなく、計算手法を習得するための問題に限っていた。

(5)

問2 正答率A=45.3% B=43.7% C=23.8%

 問 1 が正答していなければ仕入値が得られず、そこから売値を求めるため、問 1 より正答率が高 まることはあり得ない。それでも問 2 の正答率減少率(%)={1 -(問 2 の正答率÷問 1 の正答 率)}× 100 は、A=16.6%に対し、B=17.7%、C=17.1%で、金銭についての理解は若干ではあるが 認められた。

 Sから時計回りにT、U、そしてSに戻る道がある。ST間=3.5km、TU間=2.4km、US間=2.1kmの とき、以下の問いに答えよ。

問5 ST間を50分で歩いた時の速さは時速何kmか。【選択肢略】

問6 SをPは時計回りに80m/分、Qは反時計回りに70m/分で同時に出発すると何分何秒後に出会 うか。【選択肢略】

問5 正答率A=83.3% B=72.3% C=59.5%

 3.5(km)÷50/60(時間)=4.2(km/時)と求められる。速さの問題では長さが10進法であるのに対 し、時間は60進法であるため、多くの学生は50/60時間で割るという理解に至らない。そのため、演習 では計6問実施した。その効果はBと比較しても10%以上正答率が高かった。

問6 正答率A=46.6% B=42.5% C=35.8%

 出会う時間を求めるには、離れている距離を速さの和で割ると求めることができるが、この問題は 8000(m)÷150(m/分)=160/3(分)=53分20秒 と単位の換算を行った後に立式しなければ解け ない。したがって公式を知っていても、このような単位換算を練習をしていないと、筆算で、53.33…

とする。すると、「53分33秒」さらには筆算で53.3として、「53分30秒」、「53分3秒」という選択肢を選 ぶ学生も非常に多い。1/3分=20秒、という単位の換算を演習で計3問実施したにすぎなかったが、そ の効果は確認できた。

 水を汲みだす時、ポンプPでは15時間、PとQでは10時間かかる。問いに答えよ。

問7 ポンプQのみで汲みだすと何時間かかるか。【選択肢略】

問8 ポンプPとQで6時間汲みだし、残りをPで汲みだすと、最初から何時間かかるか。【選択肢略】

問7 正答率A=65.8% B=29.9% C=17.2%

 本問は、仕事算・水槽算といわれる仕事の効率に関する問題で、汲みだす水量を1と仮定し、ポンプ P、P+Qの能力を求め、その差がQの能力となることで問題を解いていく。演習では3回実施したが、

正答率に大きな差が出た。それは、講義では水量を1ではなく15(時間)と10(時間)の最小公倍数の 30ℓ(リットル)と仮定して考えさせたからである。さらに、演習では、答えが常に「〇〇時間」と整っ た値にならないように注意した問題を演習では行っていた。この問題では、Pの排水能力は30 ℓ ÷ 15時間=2(ℓ /時間)。PとQの合算した能力は、30 (ℓ)÷10(時間)=3(ℓ /時間)。よってQの能 力は3-2=1(ℓ /時間)。30(ℓ)÷1(ℓ /時間)=30(時間)。このように整数で考えられるが、テキス トでは、水量を1と仮定して解いて方法が紹介されている。Pの能力は1÷15時間=1/15(/時間)、P とQの合算した能力は1÷10(時間)=1/10(/時間)となり、さらにQの能力は1/10-1/15=1/30(/

(6)

湘北紀要 第 38 号 2017

時間)。となる。これでは計算全体が分数となり、受講生はいったい何を計算しているか非常に分かり にくい。講義での特殊な解き方とその演習の効果が最大限に発揮されたと考えられる。

問8 正答率A=48.7% B=26.4% C=24.0%

 問7の能力の値をそのまま利用するので、3(ℓ /時間)×6(時間)=18(ℓ) 残りは12 ℓ でこれを Pの能力の2 ℓ /時間で割ると、6時間となり、最初から12時間と求められる。ただし、演習ではこの ような複雑な問題は実施していない。問7の演習の効果として正答率が向上していることが示唆され た。

 500人を対象に3つのゲーム(P、Q、R)をしたことがあるかを調査したところ、PとQのどちらも したことがあると答えた人は80人、PとRのどちらもしたことがあると答えた人は60人、Pのみした ことがあると答えた人は60人であった。その3つのゲームを1つもしたことがない人は190人、さらに その3つともしたことがある人は20人であった。このとき、問に答えよ。

問16 1つまたは2つのゲームをしたことがあるグループは何種類あるか。【選択肢略】

問17 少なくとも1つゲームをしたことがあると答えた人は何人か。【選択肢略】

問18 Pのゲームをしたことがある人は何人か。【選択肢略】

問16 正答率A=49.6% B=46.9% C=37.1% 

問17 正答率A=30.8% B=24.2% C=20.4%

問18 正答率A=20.9% B=18.6% C=10.4%

 演習では2要素の集合について3回実施したが、

このような3要素の集合を演習問題としたことは ない。講義でもテキストに1題(設問は3問)しか

なかった。その際、集合の記号を用いて指導したのではなく、図のようにベン図に記号を書き込み、条件 をまとめてみるように指導した。問16では、図では、A、B、C、D、E、Fの6種類を答えさせる問題で あった。また、問17については、この指導方法では、A~ Gまでの値を求めることであり、A~ H=500で、

H=150であるので、A~ Gの合計は、500-150=350(人)と求めることができる。

 塩20gを水180gに加えた食塩水をAとする。濃度15%の食塩水Bにその25%の重さの水を加えた できた食塩水をCとする。このとき、問に答えよ。

問19 食塩水Aの濃度を求めよ。【選択肢略】

問20 食塩水Cを250g取り出し、その中に含まれる水の重さを求めよ。【選択肢略】

問21 食塩水AとBを1:2の割合で混ぜた時の塩分濃度は何%か。【選択肢略】

問19 正答率A=77.4% B=56.6% C=30.8%

 濃度に関して、その公式で、分子が溶質(塩)の重さと理解していても、分母が溶液(食塩+水)の 重さであることを失念している学生が多い。水に溶けた食塩は見えなくなるので、液体の重さが食塩 の分も増えて重くなることが感覚的にできない。そのため、演習で3回実施した。結果、演習の効果が 確実に得られた。

と し て 、「 53 分 30 秒 」、「 53 分 3 秒 」 と い う 選 択 肢 を 選 ぶ 学 生 も 非 常 に 多 い 。 1/3 分 = 20 秒 、と い う 単 位 の 換 算 を 演 習 で 計 3 問 実 施 し た に す ぎ な か っ た が 、そ の 効 果 は 確 認 で き た 。 水 を 汲 み だ す 時 、 ポ ン プ P で は 15 時 間 、 P と Q で は 10 時 間 か か る 。 問 い に 答 え よ 。 問 7 ポ ン プ Q の み で 汲 み だ す と 何 時 間 か か る か 。【 選 択 肢 略 】

問 8 ポ ン プ P と Q で 6 時 間 汲 み だ し 、残 り を P で 汲 み だ す と 、最 初 か ら 何 時 間 か か る か 。

【 選 択 肢 略 】

問 7 正 答 率 A=65.8% B=29.9% C=17.2%

本 問 は 、 仕 事 算 ・ 水 槽 算 水 と い わ れ る 仕 事 の 効 率 に 関 す る 問 題 で 、 汲 み だ す 水 量 を 1 と 仮 定 し 、 ポ ン プ P 、 P + Q の 能 力 を 求 め 、 そ の 差 が Q の 能 力 と な る こ と で 問 題 を 解 い て い く 。 演 習 で は 3 回 実 施 し た が 、 正 答 率 に 大 き な 差 が 出 た 。 そ れ は 、 講 義 で は 水 量 を 1 で は な く 15( 時 間 ) と 10( 時 間 ) の 最 小 公 倍 数 の 30 ℓ( リ ッ ト ル ) と 仮 定 し て 考 え さ せ た か ら で あ る 。 さ ら に 、 演 習 で は 、 答 え が 常 に 「 〇 〇 時 間 」 と 整 っ た 値 に な ら な い よ う に 注 意 し た 問 題 を 演 習 で は 行 っ て い た 。こ の 問 題 で は 、 P の 排 水 能 力 は 30 ℓ ÷ 15 時 間 = 2( ℓ / 時 間 ) 。 P と Q の 合 算 し た 能 力 は 、 30 ( ℓ)÷ 10 ( 時 間 )= 3( ℓ / 時 間 ) 。よ っ て Q の 能 力 は 3 - 2=1( ℓ / 時 間 ) 。 30 ( ℓ) ÷ 1 ( ℓ / 時 間 ) = 30( 時 間 ) 。 こ の よ う に 整 数 で 考 え ら れ る が 、 テ キ ス ト で は 、水 量 を 1 と 仮 定 し て 解 い て 方 法 が 紹 介 さ れ て い る 。 P の 能 力 は 1 ÷ 15 時 間 =1/15(/ 時 間 ) 、 P と Q の 合 算 し た 能 力 は 1 ÷ 10 ( 時 間 ) =1/10(/ 時 間 ) と な り 、さ ら に Q の 能 力 は 1/10 - 1/15

= 1/30(/ 時 間 ) 。 と な る 。 こ れ で は 計 算 全 体 が 分 数 と な り 、 受 講 生 は い っ た い 何 を 計 算 し て い る か 非 常 に 分 か り に く い 。 講 義 で の 特 殊 な 解 き 方 と そ の 演 習 の 効 果 が 最 大 限 に 発 揮 さ れ た と 考 え ら れ る 。

問 8 正 答 率 A=48.7% B=26.4% C=24.0%

問 7 の 能 力 の 値 を そ の ま ま 利 用 す る の で 、 3 ( ℓ / 時 間 )× 6 ( 時 間 ) =18 ( ℓ) 残 り は 12 ℓ で こ れ を P の 能 力 の 2 ℓ / 時 間 で 割 る と 、 6 時 間 と な り 、最 初 か ら 12 時 間 と 求 め ら れ る 。 た だ し 、 演 習 で は こ の よ う な 複 雑 な 問 題 は 実 施 し て い な い 。 問 7 の 演 習 の 効 果 と し て 正 答 率 が 向 上 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。

500 人 を 対 象 に 3 つ の ゲ ー ム (P 、 Q 、 R) を し た こ と が あ る か を 調 査 し た と こ ろ 、 P と Q の ど ち ら も し た こ と が あ る と 答 え た 人 は 80 人 、 P と R の ど ち ら も し た こ と が あ る と 答 え た 人 は 60 人 、 P の み し た こ と が あ る と 答 え た 人 は 60 人 で あ っ た 。 そ の 3 つ の ゲ ー ム を 1 つ も し た こ と が な い 人 は 190 人 、さ ら に そ の 3 つ と も し た こ と が あ る 人 は 20 人 で あ っ た 。 こ の と き 、 問 に 答 え よ 。

問 16 1 つ ま た は 2 つ の ゲ ー ム を し た こ と が あ る グ ル ー プ は 何 種 類 あ る か 。【 選 択 肢 略 】 問 17 少 な く と も 1 つ ゲ ー ム を し た こ と が あ る と 答 え た 人 は 何 人 か 。【 選 択 肢 略 】

問 18 P の ゲ ー ム を し た こ と が あ る 人 は 何 人 か 。【 選 択 肢 略 】 問 16 正 答 率 A=49.6% B=46.9% C=37.1%

問 17 正 答 率 A=30.8% B=24.2% C=20.4%

問 18 正 答 率 A=20.9% B=18.6% C=10.4%

演 習 で は 2 要 素 の 集 合 に つ い て 3 回 実 施 し た が 、 こ の よ う な 3 要 素 の 集 合 を 演 習 問 題 と し た こ と は な い 。講 義 で も テ キ ス ト に 1 題 ( 設 問 は 3

問 ) し か な か っ た 。そ の 際 、集 合 の 記 号 を 用 い て 指 導 し た の で は な く 、図 の よ う に ベ ン 図 に

(7)

問20 正答率A=26.9% B=11.6% C=8.9%

 演習では食塩水の重さを表記して3回実施したが、試験問題では食塩水の重さも加える水の重さも 割合であるため、「15%の食塩水を400gと仮定し、加える水を100g」と考えさせるこの問題はレベル が高かった。

問21 正答率A=19.7% B=13.2% C=12.0%

 異なる濃度の食塩水を混合させ、その濃度を求めさせる問題である。問19で食塩水Aの濃度が正し く得られてなければできないが、問20と問21では問21の方が解きやすい。それは、Bの濃度が明らか であるからである。また、BおよびCグループの正答率からも明らかである。しかし、演習を実施した Aグループの成績は、他のグループと異なり明らかに問21の正答率は問20よりも下回っている。残念 ながらその原因を解明することはできなかった。

2-4 演習の長所と短所

 演習項目と試験問題項目が一致した12問についての正答率の平均について、Aグループは49.3%、B グループの場合は38.2%と10%以上の正答率の差が見られた。また、演習をすることは演習問題と類似 な問題が解けるようになることもあるが、講義に取り入れてなかった問題の割合を用いた資料問題9~

11も正答率を高める効果があると思われる。

 しかし、Aグループの全員が演習の問題を解き、理解が継続できていたかも検証する必要があった。

そこで、Aグループ234人で特に演習と試験問題とが一致し、さらに正答率の高い上位3問(問題5の正 答率83.3%、問題19の正答率77.4%、問題7の正答率65.8%)について、正答人数を確認した。

高正答率問題(3問)についての正答人数とその割合

正答数 0 1 2 3 計

人数(人) 7 38 75 114 234

割合(%) 3.0 16.2 32.1 48.7 100

累積割合(%) 3.0 19.2 51.3 100

 その結果、高正答率の3問にも関わらず、1問も正答が得られなかった受験生が7人(3.0%)おり、同 様に1問しか正答できなかった受験生も38人(16.2%)いた。この正答数0問及び1問の正答者は45人

(19.2%)と受験生にとって演習による効果がない、または低いことが分かった。一方、正答率から3問が すべて正答となる確率は、83.3(%)×0.774×0.658=42.4(%)であることから、Aグループの受験生 48.7%は演習に積極的に参加していたといえる。では、この1問も正答が得られなかった受験生にはどう いう特徴があり、演習をどのように改善すればよいか、7人の正答問題から考察していく。

(8)

湘北紀要 第 38 号 2017 7人の正答問題の内訳

合計点 性別 3 8 10 11 12 14 15 16 17 21 23 25 27 29 30

1 男 〇

3 男 ● 〇 ●

3 男 〇 ● 〇

4 女 〇 〇 〇 〇

4 女 〇 ● ● 〇

5 男 ● ● 〇 〇 〇

5 女 〇 ● 〇 〇 〇

〇は正解 ●は正解だが、前問が解けない限り理論的に正解が得られない、すなわち「まぐれ当たり」

問3、問12、問14、問16、問23~ 29の8題において、問3は書き出して求める場合の数の問題。問12は金 銭のやり取りで清算する問題。問14は約束記号。問16は集合。問23は大小関係。問25はグラフの読み。

問27は位置関係。問29はフローチャート。このことから共通することは2つの数を比較するときは割合 を用いない点であり、主に差で考えていく問題である。演習では、割合や速さなどの単位時間当たりの 量の問題を重点的に進めたが、全く効果がなかったことが判明した。本来、演習では、公式のみで答が得 られる問題を繰り返すのではなく、発展的な考え方や注意が必要な問題にも対応できる能力を身に付け ることである。そのため演習の実施に先立ち、公式や考え方の基礎が確立して初めて成立する技法であ る。このような7人の学生を出さないためにも、各講義の最後の10分間では「その日の最重要項目」の確 認を徹底し、そのチェックを通り抜けられないようにせねばならない。また、演習においては、基礎的な 問題から出題し、復習や思い出しにもなるように進めていく必要があることが明らかになった。

2-5 性別からみた演習の効果

 資料から明らかなように、Aグループの女子の成績は男子の成績に近接しているだけでなく、標準偏 差も比較的大きく、様々な成績の学生が存在していたことになる。さらに、女子には0~ 3点という学生 はいなかった(男子は3.1%)。

【性別と試験結果】

Aグループ(講義+演習) Bグループ(講義) Cグループ(試験のみ)

正答率 標準偏差 正答率 標準偏差 正答率 標準偏差 男子 40.2% 5.0 36.5% 5.0 30.5% 4.9 女子 39.2% 4.7 33.6% 3,6 26.0% 4.0 計 40.0% 4.8 35.0% 4.3 28.1% 4.5  このような結果には、「講義、当日の最重要項目の確認、次回の演習、次回の講義…」といったパター ン化された講義の流れが女子には馴染み易かった可能性はあるが、明確な理由とは言い切れない。

(9)

集団授業におけるアクティブ・ラーニングとその効果 3-1 宿題の効果

 2016年後期授業の神奈川県内の短期大学のキャリア科目の2クラスに、9月17日(土)~ 12月17日(土)

までの12回の講義でA4両面の宿題(問題数は20~ 47題)の課した。宿題内容は、当日の授業内容及び 既習内容である。図は12/17の12回目の宿題である。この宿題は9回目の講義から、順列・組合せ、確率 を指導しているため、宿題全体のうち、それらの項目が全体の25%を占めている。また、残る75%は.既 習項目の解法を忘れてもらわないよう、毎回出題していた。

宿題の取り扱いの流れ図

 宿題は、次回の講義で全て を解説する時間が取れないた め、前回の内容を中心に解説を 行った。宿題は回収・添削し、

次回に返却した。このとき、学 生から問題を回収するため、同 じ宿題に手書きで解説を書き 加えたプリントを配布した。食 塩水の問題(おもて面の問8,9)

は宿題の3回目からこの12回目 の10回連続して出題していた。

 2017年1月7日( 土 )の 授 業 内で22問の実力テスト(25分)

を141人に実施した。そのうち 7問は比較的実力テストに類似 した問題であり、実力テスト結 果と比較することで、宿題の効 果を分析することとした。

い っ た パ タ ー ン 化 さ れ た 講 義 の 流 れ が 女 子 に は 馴 染 み 易 か っ た 可 能 性 は あ る が 、 明 確 な 理 由 と は 言 い 切 れ な い 。

3-1

宿 題 の 効 果

2016

年 後 期 授 業 の 神 奈 川 県 内 の 短 期 大 学 の キ ャ リ ア 科 目 の

2

ク ラ ス に 、

9

17

(

)

12

17

(

)

ま で の

12

回 の 講 義 で

A4

両 面 の 宿 題

(

問 題 数 は

20

47

)

の 課 し た 。宿 題 内 容 は 、 当 日 の 授 業 内 容 及 び 既 習 内 容 で あ る 。 図 は

12/17

12

回 目 の 宿 題 で あ る 。 こ の 宿 題 は

9

回 目 の 講 義 か ら 、 順 列 ・ 組 合 せ 、 確 率 を 指 導 し て い る た め 、 宿 題 全 体 の う ち 、 そ れ ら の 項 目 が 全 体 の

25%

を 占 め て い る 。 ま た 、 残 る

75%

.

既 習 項 目 の 解 法 を 忘 れ て も ら わ な い よ う 、 毎 回 出 題 し て い た 。

宿 題 は 、 次 回 の 講 義 で 全 て を 解 説 す る 時 間 が 取 れ な い た め 、 前 回 の 内 容 を 中 心 に 解 説 を 行 っ た 。 宿 題 は 回 収 し 添 削 し 、 次 回 に 返 却 し た 。 こ の と き 、 学 生 か ら 問 題 を 回 収 す る た め 、 同 じ 宿 題 に 手 書 き で 解 説 を 書 き 加 え た プ リ ン ト を 配 布 し た 。 食 塩 水 の 問 題

(

お も て 面 の 問

8,9)

は 宿 題 の

3

回 目 か ら こ の

12

回 目 の

10

回 連 続 し て 出 題 し て い た 。

2017

1

7

(

)

の 授 業 内 で

22

問 の 実 力 テ ス ト

(25

)

141

人 に 実 施 し た 。 そ の う ち

7

問 は 比 較 的 実 力 テ ス ト に 類 似 し た 問 題 で あ り 、 実 力 テ ス ト 結 果 と 比 較 す る こ と で 、 宿 題 の 効 果 を 分 析

い っ た パ タ ー ン 化 さ れ た 講 義 の 流 れ が 女 子 に は 馴 染 み 易 か っ た 可 能 性 は あ る が 、 明 確 な 理 由 と は 言 い 切 れ な い 。

3-1

宿 題 の 効 果

2016

年 後 期 授 業 の 神 奈 川 県 内 の 短 期 大 学 の キ ャ リ ア 科 目 の

2

ク ラ ス に 、

9

17

(

)

12

17

(

)

ま で の

12

回 の 講 義 で

A4

両 面 の 宿 題

(

問 題 数 は

20

47

)

の 課 し た 。宿 題 内 容 は 、 当 日 の 授 業 内 容 及 び 既 習 内 容 で あ る 。 図 は

12/17

12

回 目 の 宿 題 で あ る 。 こ の 宿 題 は

9

回 目 の 講 義 か ら 、 順 列 ・ 組 合 せ 、 確 率 を 指 導 し て い る た め 、 宿 題 全 体 の う ち 、 そ れ ら の 項 目 が 全 体 の

25%

を 占 め て い る 。 ま た 、 残 る

75%

.

既 習 項 目 の 解 法 を 忘 れ て も ら わ な い よ う 、 毎 回 出 題 し て い た 。

宿 題 は 、 次 回 の 講 義 で 全 て を 解 説 す る 時 間 が 取 れ な い た め 、 前 回 の 内 容 を 中 心 に 解 説 を 行 っ た 。 宿 題 は 回 収 し 添 削 し 、 次 回 に 返 却 し た 。 こ の と き 、 学 生 か ら 問 題 を 回 収 す る た め 、 同 じ 宿 題 に 手 書 き で 解 説 を 書 き 加 え た プ リ ン ト を 配 布 し た 。 食 塩 水 の 問 題

(

お も て 面 の 問

8,9)

は 宿 題 の

3

回 目 か ら こ の

12

回 目 の

10

回 連 続 し て 出 題 し て い た 。

2017

1

7

(

)

の 授 業 内 で

22

問 の 実 力 テ ス ト

(25

)

141

人 に 実 施 し た 。 そ の う ち

7

問 は 比 較 的 実 力 テ ス ト に 類 似 し た 問 題 で あ り 、 実 力 テ ス ト 結 果 と 比 較 す る こ と で 、 宿 題 の 効 果 を 分 析

(10)

湘北紀要 第 38 号 2017 3-2 試験結果

 正解なしが3人(2.1%)から最高は16問正解が1人(0.7%)、平均得点6.2問(正答率28.2%)であった。

特徴としては3問正解者16人(11.3%)と8問正解者19人(13.5%)の山ができたことである。受験者141 人には2つのグループが存在していたことになる。仮に8問正解者を軸に左右対称のグラフとなれば、算 数・数学の苦手な学生の集団は25人(18%)程度存在すると思われる。キャリアベーシックの講義を行 うに際し、苦手な学生が多いという認識はあり、そのために宿題では過去の既習項目の問題を継続して 出していたものの、それでも状況は解消されなかった。

【試験結果】

3-3 個別の問題についての考察

問題1 仕入れ値の4割の利益を見込んで、4900円という定価をつけた商品がある。この商品の仕入 れ値はいくらか。【選択肢略】

 「原価(仕入値)1000円に4割の利益を見込んで定価をつけたが売れなかったので定価の2割引きで売っ たら売れた。利益はいくらか」という宿題は5回出題した(数値はその都度変更)。しかし、今回のような 仕入れ値を求める計算方法での宿題は2回しか出しておらず、類似問題とはいえ、正解率は42.6%と期待 よりは低かった。

問題2 0~ 3の数字が書かれた4枚のカードで3桁の整数をつくると何通りできるか。ただし、百の 位には0の数字が使えないので注意のこと。【選択肢略】

 宿題では「0~ 4の5枚で3桁をつくると何通りできるか」と用いる数字が1つ多く、さらに但し書きも ない。宿題では3度しか出していなかったが、今回では最も正答率が高い61.7%であった。2量の関係よ りも理解度が高い。

- 102 -

3-2

試 験 結 果

正 解 な し が

3

(2.1%)

か ら 最 高 は

16

問 正 解 が

1

(0.7%)

、平 均 得 点

6.2

(

正 答 率

28.2%)

で あ っ た 。特 徴 と し て は

3

問 正 解 者

16

(11.3%)

8

問 正 解 者

19

(13.5%)

の 山 が で き た こ と で あ る 。受 験 者

141

人 に は

2

つ の グ ル ー プ が 存 在 し て い た こ と に な る 。仮 に

8

問 正 解 者 を 軸 に 左 右 対 称 の グ ラ フ と な れ ば 、算 数 ・ 数 学 の 苦 手 な 学 生 の 集 団 は

25

(18%)

程 度 存 在 す る と 思 わ れ る 。 キ ャ リ ア ベ ー シ ッ ク の 講 義 を 行 う に 際 し 、 苦 手 な 学 生 が 多 い と い う 認 識 は あ り 、 そ の た め に 宿 題 で は 過 去 の 既 習 項 目 の 問 題 を 継 続 し て 出 し て い た も の の 、 そ れ で も 状 況 は 解 消 さ れ な か っ た 。

【 試 験 結 果 】

3-3

個 別 の 問 題 に つ い て の 考 察

問 題

1

仕 入 れ 値 の

4

割 の 利 益 を 見 込 ん で 、

4900

円 と い う 定 価 を つ け た 商 品 が あ る 。こ の 商 品 の 仕 入 れ 値 は い く ら か 。【 選 択 肢 略 】

「 原 価

(

仕 入 値

)1000

円 に

4

割 の 利 益 を 見 込 ん で 定 価 を つ け た が 売 れ な か っ た の で 定 価 の

2

割 引 き で 売 っ た ら 売 れ た 。利 益 は い く ら か 」と い う 宿 題 は

5

回 出 題 し た

(

数 値 は そ の 都 度 変 更

)

。 し か し 、 今 回 の よ う な 仕 入 れ 値 を 求 め る 計 算 方 法 で の 宿 題 は

2

回 し か 出 し て お ら ず 、 類 似 問 題 と は い え 、 正 解 率 は

42.6%

と 期 待 よ り は 低 か っ た 。

問 題

2 0

3

の 数 字 が 書 か れ た

4

枚 の カ ー ド で

3

桁 の 整 数 を つ く る と 何 通 り で き る か 。 た だ し 、 百 の 位 に は

0

の 数 字 が 使 え な い の で 注 意 の こ と 。【 選 択 肢 略 】

宿 題 で は「

0

4

5

枚 で

3

桁 を つ く る と 何 通 り で き る か 」と 用 い る 数 字 が

1

つ 多 く 、さ ら に 但 し 書 き も な い 。 宿 題 で は

3

度 し か 出 し て い な か っ た が 、 今 回 で は 最 も 正 答 率 が 高 い

61.7%

で あ っ た 。

2

量 の 関 係 よ り も 理 解 度 が 高 い 。

問 題

5

2

本 の 給 水 管

P

Q

を 用 い て 水 槽 の 水 を 入 れ る と 給 水 管

P

だ け で は

20

分 、

Q

だ け で は

30

分 か か る 。 こ の 水 槽 に

1/4

の 水 が す で に 入 っ て い る と き 、 給 水 管

P

Q

を 同 時 に 使 っ て 水 を 入 れ る と 何 分 で 満 水 に な る か 。

宿 題 で は

4

回 出 題 し て い た が 、 常 に 空 の 水 槽 に 水 を 入 れ る 問 題 の み 課 し て し た た め 、 試 験 の よ う に 、あ と

3/4

を 給 水 す る と い う 問 題 は 難 易 度 が 高 か っ た 。そ の た め 、正 答 率 は

22%

と 振 る わ な か っ た 。 し か し 、 演 習 の 効 果 を 測 定 し た 都 内 中 堅 大 学 に お け る 先 の 演 習 の 結 果 と 比 較 す る と 、同 じ 試 験 項 目 に お い て 、講 義 だ け の

B

グ ル ー プ の 正 答 率

29.9%

に は 及 ば な い も の の 、講 義 を 受 け ず に 受 検 し た

C

グ ル ー プ よ り は 正 答 率 は 高 い 。大 学 と 短 期 大 学 と を

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

(11)

問題5 2本の給水管PとQを用いて水槽の水を入れると給水管Pだけでは20分、Qだけでは30分か かる。この水槽に1/4の水がすでに入っているとき、給水管PとQを同時に使って水を入れる と何分で満水になるか。【選択肢略】

 宿題では4回出題していたが、常に空の水槽に水を入れる問題のみ課してしたため、試験のように、あ と3/4を給水するという問題は難易度が高かった。そのため、正答率は22%と振るわなかった。しかし、

演習の効果を測定した都内中堅大学における先の演習の結果と比較すると、同じ試験項目において、講 義だけのBグループの正答率29.9%には及ばないものの、講義を受けずに受検したCグループよりは正 答率は高い。大学と短期大学とを単純には比較できないが、大学受験予備校の偏差値の差を考慮すれば、

宿題を実施することの効果は見られたといえる。

濃度16%の食塩水が750gある。これについて以下の2問に答えよ。

問9 この食塩水に含まれる食塩の重さを求めよ。【選択肢略】

問10 この食塩水に水を250g加えると何%の濃度の食塩水になるか。【選択肢略】

 宿題では、異なる濃度の食塩水を混ぜるため、食塩水の重さを求めなければならず、さらに濃度も求 めるため、計算の手順は同じであるが、10回宿題に出していることから考えると問9の正答率が61.2%、

問10の42.6%と期待した程の正答率ではなかった。

3-4 宿題の効果と欠点

 141人の提出率と成績について、平均提出率は12回中10.6回である。その数値は特筆すべきことだが、

講義の最初に宿題の前回学習項目や重要項目を解説してから宿題用紙を回収するため、本来宿題を自力 で解いてきたものか、講義の解説を宿題用紙に書いたものかは判別できない。もっとも、自力で解いた 学生が他の学生に宿題を写させてあげるということは毎回4グループあった。それは解き方や誤りが全 く同じだからであるが、そこから誰の宿題が本物かは判明できない。また、提出率と成績との相関性だが、

0~ 2題の正答者の平均提出回数は10.0回、3~ 4題は10.7回、5~ 6題は10.6回、7~ 8題は10.8回、9~

10題は10.7回、11題以上は10.0回と殆ど差異が認められない。では、宿題の質まで踏み込んで調査がで きるかといえば、他人の宿題を写すことを阻止することは困難であると考える。

 「宿題を実施→解説→解説→回収・添削(毎回5時間程度要する)・返却」という進行については、演習 同様に、「やむなく欠席しても前回の内容が分かるのでよかった」「一人一人丁寧に添削してくれて自分 のミスが分かった」と好意的な意見もある半面、そのやりとりが複雑であり、回収時と反対に添削済み の宿題を最前席の学生に手渡し、本人の宿題を抜いたあと後方の学生に手渡すようにした。さらに宿題 提出が出席カード代わりにもなり、「複雑で出欠確認に向いていない」という意見もあった。約100人ク ラスのため「指示にも厳格で高圧的」という意見も出た。

 「2-4演習の効果と欠点」の章と同様に、高正答率4問(演習では3問)についてその4問が全て解けなかっ た学生について確認したところ、19人が該当した(演習では7人)。その割合は13.5%(演習では3.0%)

(12)

湘北紀要 第 38 号 2017

と非常に高い出現率である。演習は講義時間内で実施しているのに対し、宿題ではその達成度、信頼度

(友人や解説を写す虚偽)に問題があるように思えた。このようなことが起こる背景には、宿題自体の問 題量にもあると考えられる。どの項目も忘れてもらいたくない、という担当者の意識が強く、宿題内容 が広過ぎたともいえる。A4両面の宿題であるので、表面は基礎編、裏面は応用編のように工夫すべきで あった。

 このように、宿題の効果はあるものの、それを多人数に実施することは様々な問題もあり、能動的学 習に前向きでない学生には意義の理解を得ねばならない。

4 まとめ

 このように少なくとも演習や宿題といった効果は認められたが、より学生主体の高度な能動的学習に なれば、個人が獲得できる技術や知識の差がより開くのではないのだろうか。

参考文献

1. 文部科学省 中央教育審議会(答申)『学士課程教育の構築に向けて』第三章 p12(2008)

2. 溝上慎一 『アクティブ・ラーニングと教授学習パラダイムの変換』東信堂 p71(2014)

(13)

The Effect of Active Learning for Large-class Lectures

Keiji ITOH

【abstract】

How to improve student’s basic academic skills becomes the major problem in universities and colleges. It is not effective that we give those low-level students research and discussion which have been typical in higher education institutions.

Instead of these method, we tried slight exercises and homework in large class composed of over 100 students. Students challenged introductory three questions at the beginning of the class, and concluded with solving last question.

The examining indicated that students who took active learning marked high-score at comprehension test in comparison with those who took lectures passively.

The research also showed further two points of improvement. One is how to secure sufficient time to teach necessary contents while doing exercises. The other is how to treat students in large class as individuals considering each academic achievement and willingness.

【key words】

active learning, homework, exercises, academic achievement

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