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今 財政金融政策の統計的分析(一)

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(1)

い︒労働者階級に耐え難い犠牲を要求し︑社会不安と国際的対立を激化する最大の原因と  

の経済問題であったのではないけれども︑社会的疾患の根底に横たわっていたという意味  

の一つであった︒この苦しい経験から多くの国において完全雇用が財政金融政策の目標と  

った︒   る︒当時の長期にわたる深刻な不況においてほ生産贋源の浪費︑生産曳の減少︑利潤の   ーはしがき 財政金融政策と景気変動の予測   二 景気変動の予測方法 単純な補外法紅よるもの︑ハーバート大学の指標︑ナショナル・ピエローの指標︑拡散によるもの︑  

国民所得勘定によるもの  

三 国民所得勘定の概要 経済活動と国民所得勘定︑各勘定の説明︑貯蓄投資の均等  

由 モデル・ビルディング 経済モデルの特性について︑内生変数と外生変数︑内生変数を説明する式   ︵以上本号︶  

一 は し.が き   

財政金融政策と景気変動の予測  

完全雇用が財政金融政策の目標として重要視されるようになったのは山九三〇年代に苦しい経験をしたからであ   

財政金融政策の統計的分析︵一︶   財政金融政策の統計的分析︵一︶  

今  

︵∵三九︶   減少を生んだだけでほな   して掲げられるようにな    った︒失業問題が唯一   それは最も重要な問題  

正  

(2)

︵仙四〇︶  こ    第三十三巻第二号  

それまでほ財政政策が産出嵐︑雇用鼻に与える影響は重視されなかった︒一九二九年の大不況を経験するまでは  

不況や失業な克服するにほ金融政策で十分であると考えられていた︒しかし利子率をさげても有利な投蟄機会がな  

いときには事菜ほ借入れを増そうとしないであろう︒また仮りに借入れを増しても貨幣の保戯を増加する軋とどま  

るであろう︒金融政策ほ﹁馬な水ぎわまでひっばってゆくことはできるが︑水を飲ますことはできない︒﹂この弱点  

を補うため財政政策が重要視されるよう紅なった︒こうして財政収支の規模構成ならびにその政策が国民所得や雇  

用に与える影響を強調し︑完全雇用の実現をもっとも重要な目標とすべきだと主張されるようになった︒   

この考えが戦争がほじまるまで支配的であった︒戦争になると生産物を戦争に投入するために生ずるインフレを  

防止するという問題が生じてきた︒また戦後は平和経済への転換にともなう失業を防いだり︑解放された購買力の  

たかまりによって生じたインフレをおさえるという課題を解決しなければならなかった︒ところが戦後の財政政策  

は∵たとえば国債管理政策において国債価格の維持という課題のみに注目し︑インフレを押えるという目的を見失  

うことがあった︒キのため物価水準の安定という目標が強調されるとともに︑それを実現するための手段として金  

融政策の重資性が強調されるようになった︒これほ∵九三〇年代以降軽視されてきた金融政策の復活として重要で  

ある︒﹁金融政美正二本のヒモである︒それでもって押すことほできないがそれで引きしめることほできる﹂と山  

般にいわれるようになった︒   

物価の安定を自的紅することについて説明する必要はないであろう︒物価がいくぶん上昇することが事業家の気  

分を楽観的にして望ましい環境にするときもある︒またたとえば国際市場に適応するためにほ物価が下ることが有  

用であることもある︒このように特殊な場合を別にすれぼ物価は安定していることが望ましい︒   

この物価の安定と前肛述べた完全雇用を両立させるごとは簡単なことでほない︒しかしわれわれはその双方の達   

(3)

成を望む︒物価の安定と完全雇用という二重の目的は通常経済安定とよほれている︒経済は完全雇用や物価の安定  

から離れて不安定に陥ることがある︒それで財政金融政策によっでこれを防がなけれはならない︒   

また資本鼠︑労働力が増え技術が進歩しているところでは経済は適当に成長してゆかなければならない︒この経  

済成長が経済の安定を助長することもある︒しかし三つ目の目的としての経済成長はもっと難かしい問題をひきお  

上すことがある︒物価の安定と完全雇用を維持す\るための財政金融政策は経済成長にも影響しそれをさまたげるか  

もしれない︒したがって目的間の相互関係についでも考慮しなければならない︒けれどもここでほ山応政府の課題  

が経済安定にあるものとして財政金融政策の問題をとりあげること濫する︒   

このような課題を果すためには財政金融政策の当局はどうしたらよいか︒失業が増大してゆくか︑あるいはイン  

フレが進行するとき︑議会ほ敏速にその情勢を評価してその失業あるいほインフレを阻止する対策をとらねばなら  

ない︒ところが法律を立案し︑制定し︑それを実施し︑それが効果を発揮するまでにほ非常に長い時間が経過しな  

ければならない︒そのためにこのような方策が効果を発挿するようになるまでに︑その方策ほ十分でなくなったり︑  

無駄になることがある︒あるいは計画を立てたときには適当な方策であったとして庵それが効果を発揮するまでに  

ほ経済情勢が変化し不適当なものになることもある︒法律の立案や実施に要する時間は︑経済安定にとって強力な  

影響を与えることができる財政政策の場合にとりわけ長い︒︵これに射し金融政策ほ敏速に行うことができるが効  

果が疑わしいという短所がある︒︶ 政府が予算を準備した後で︑議会が審議するために長い時間がかかる︒しかも  

議会において反対党のカが強い場合にはこノの時瀾は二層長くなる︒   

このため時間が長くかかりすぎ︑そのために経済安定を実現できないことがある︒そして時期的に遅れたために  

失業あるいはインフレが慈循環的に進行し問題が手におえなくなるかもしれない︒また時にはもっと悪い情況にな  

財政金融政策の統計的分析︵こ   ︵劇四こ  三   

(4)

第三十三巻第二号  ︵岬四二︶  四  

るかもしれない︒というのほこのように時間をかけて方策を決めても︑その方策が効果を発揮するときにほ経済情  

勢が逆転しているかもしれない︒戦争藩後︑∴景気後退を予想して政府支出を拡大したが︑その農気後退は起らず︑  

インフレの力が強いとき政府支出ほそれを助長することにな一った︑という経験がある︒   

立法や行政の過程において必要な時間を短縮するためには実施を敏速にしなければならない︒このためにほ日動  

安定装置ビルト・イン・スタビライザ﹁が非常に有望である︒これほ事実上いつそも作用している︒そして景気の  

段階に応して効果を発揮している︒失巣保険・累進所得税などがこの典型的な例である︒   

けれともこれ鱒景気変動をある程度やわらげるだけでそれを防止したり︑それを打ち消してしまうことほできな  

い︒そこで考えられることほ失菜あるいは物価上昇の度合がある程度よりひどくなったときに︑それか打ち消すよ  

うな政策措置を自動的にとるような機構にしておくことである?これは定式︵フォーミヱフ︶安定装置といわれて  

いる︒たとえば日本銀行は︑貸出がふえそれがある定められた額をこえると高い貸出し利子率を自動的に適用して  

貸出しを引きしめるようにしている︒︵高率適用制度︶この例をもっとあげることほ容易である︒経済の安定を増  

すためにはこうすることが必要であろう︒しかしこれほ議会のもっている特権を失うことになるが︑現状でほこれ  

は失うべきものでほないであろ一つ︒この恵めこの方策がとられるかどうかほ非常に疑わしい︒そのため将来の経済  

情勢を予測して好ましくない変化が起るときにほ余り遅れ庵いうらに議会が対策をとることができるようにしなけ  

れぼならない︒もしこれが可能であれば議会ほその特権を失うことなしに効果的な手をうつことができるであろう︒  

文   献   

財政金融政策と経済安定についてはつぎの文献を参照されたい︒  

Hansen﹀A⁚買已㌣ざ斉:苫嘗旨眉Å官許−誤−・ハンセン著 都留訳﹃財政々策と以琉気循環転 山九五〇   

(5)

SmitEesゝ.B誌e声1.声.夢註厨二戸房吉=ぜぎー誤ひ・の解五部﹁財政金融政策と安定﹂︑とくに  

NatiO宕−P−anningAs00OCiati呂.Fe計邑E眉2nditur2and Re諾nuePO−icyFOrEcOnOmicS︻abi−ity一−芝P  

The COmmittee昌Pub−ic Issue00Of American EcOnOmic AssOCiatiOn.TFe PrOb−em Of EcOnOmic Hnstabiごtyu ゝ義3C§   

巨≦§乱∵謬乱琶一−誤〇.   

MusgraくeuRけA.A君rnatiくe Budget PO−icy fOr Fu−−Emp−Oyment・旨蔓昇聖こぎ真裏首き乳寒 JCne−思∽・  

Mu品ra諾ゆR.A.and M≡er.厨ui−d⊥n句訂已bi−ity・ゝ鳶獣へ§哲Q雪S冷評e計等−思00.  

木下藤田橋本共著﹃現代財政政策の理論﹄ 山九五八  

Mu品ra諾.R.′A.ヨ6ヨ瞥ミeござ買こぎ蔓焉∵ゝ姿見二ざさ監草加す害卓−浩声  

またカルドアのモテルについてはつぎのものを参娘されたい︒  

只a−dOr.芦 The Quantitati諾Aspects Of tFe FuH Emp−OymentPrOb−emγin Appe已i舛C t〇.評ミhぎ史ざ責箪ご遷Q句首  

哲c註きby Beくeridge﹀W.−思∽け 井手正訳 ピグァリッデ﹃自由社会における完全版用﹄上下 劇九五三  

StO計気.and JacksOn︶E.Fり EcOnケmicMOde−wきSpecial ReferenceざMr・Ka−dOr︸s Syste声哲Q璧S町c︑Q§邑D2・  

cember−盟声  

山田久武共編経済分析シンポジクム五 ﹃経済計画とモ   塩野谷裕一財政政策的計画モデル ー カルドアを中心として一  

デルビルディング﹄ ヤ九五七  

こ 景気変動の予測方法  

では将来を見透すにはどうしたらよいか︒現在景気変動のどの段階にあり︑今後どちらにむかうかを示す信号  

あるいほ据標をもとめ冴ためにいろいろの試みがなされた︒それについて展望しておこう︒  

財政金融政策の統計的分析︵一︶   ︵劇四三︶  五   

(6)

︵一四四︶  六    第三十三巻第二号  

もっともその前に過去の統計資料をながめても﹁なま﹂の資料ほ景気変働を示すのでないことを注意しておこう︒  

それから季節変動︑景気変動︑経済成長などを分離しなければならない︒仮りにある年に百貨店の売上げ高が十一  

月から十二月にかけて増えても︑このことから不況が終ったと結論することほできない︒百貨店の売上げ高ほ十二  

月ごとに上昇している︒統計学者ほ山年一年の塑を綿密に研究して季節的変動を取除くよう試みている︒もしどの  

年の十二月もその年の取引の月平均の十五%増となる傾向があり︑一月は九〇パーセントであるとわかると︑統計  

学者は現実の﹁なま﹂の月汎資料をとりあげ︑十二月の数値はどの年のものも一・二九で判り︑また一月の数値ほ  

どれも〇・九〇で割る︒各月についてこうする︒こうすると季節について調整した百貨店売上高の月次シリーズを  

うることになる︒   

また百貨店売上げ高ほ戦後どの年にも急速に成長している︒それは不況期においてもひどくほ減退していない︒  

しかしそれにもかかわらずそのシリーズに好況不況をみと潜ることができる︒それほ長期のトレンドの示す平均的  

な成長率に比べてその年の成長率の大あるいほ小という形でその頭をもたげる︒もし百貨店売上げの歴史的経路を  

示す図に目測あるいは統計の式を用いて計算して成長を示す線を描くならこの成長線をぬうようになっている景気  

変動を見出すことができる︒成良の緩から上あるいほ下に垂直に偏差を測ってそれを別の真にえがくなら景気変動  

を示す図がもとめられる︒︵この技術的な問題についてほ統計のテキスト︑たとえばアレン著大石︑大沢共訳﹃経  

済学研究者のための統計学﹄第八登時系列を参照されたい︶   

これと同じように生産活動も数年の周期の景気変勤を示す曲線が長期の経済成長を示す傾向線にそって動いてい  

る︒その他に∵年周期の季節変動やランダムな変動がある︒経済安定を目標にする財政金融政策が効果をあげるた  

めには現在景気変動のどの局面にあるか︑平均的成長率がいくらであるかを知る必要がある︒そのために経済成長   

(7)

や景気変動についての理論や統計を頼りぬしている︒それをどのよう紅用いているか︒まずほじめにつぎの二つの  

方法について述べておこう︒単純な補外法によるもの︑先行拇礫によるもの︵この後者はさらに三つに分ける︒︶そ  

うして国局所得勘定妃もとづく方法について述べる準備をしておこう︒   

単組な補外法によるもの   

景気変動が完全に規則的に循環運動をするときには予測ほ簡単にできる︒ある山定期間拡張がつづくと︑その後  

ある∵定期間収縮がつづくといえるであろう︒そのときには過去の変動の形を調べそれを現在およびほ将来にひき  

延ばすことによって︑いま景気変動の上昇の局面のどこにあるか︑下降の局面のとこにあるかな知ることができる︒  

そして将来どのようになるかについてはっきりした見透しをたてることができ︑政策作成当局に対してはっきりし  

た勧告を与えることができる︒経済学老の中には好況がつづいたから︑過去の経験から判断すれほ不況がくるはず  

だと見透すものがいた︒しかし過去の景気変動はこのように規則的にほ変動していない︒こういう考え方ほ批判し  

なければならない︒しかしこれを批判するに当って景気変動そのものがなくなってしまうと考える人があるがこれ  

は受け入れられない︒   

たとえば貨幣的恩気理論の主張者として有名なホートレイが︑常山次大戦後金融制度が変ったために景気変動が  

なくなったと主張したことがある︒また第二次大戦後英米においてほ引きつづき完全雇用であったという経験か  

ら︑ほげしい景気変動ほ晋藷になったと信じているフリードマンのような経済学者もいる︒彼らほ経済構造︑経済  

制度︑経済行動︑経済政策が大きく変ったために︑経痛が不況に対して免疫になったと信じている︒これほ楽観的  

すぎる︒どのような経済組臓であっても︑経済にほ時々調整の期間がおと︑つれる︒機械への投資の多かった時機の  

っぎには︑それの少い膵親が来るであろう︒テレビなどの耐久財が沢山買われ允時期のつぎにほそれの新規農入れ  

財政金融政策の統計的分析︵一︶   ハ血四五︶  七   

(8)

︵仙四六︶  八   第三十三巻滞二号  

が少い時期が来る︒産業にほ伸び悩んだり収縮するものがあるであろう︒その結果他の産米がこの不振を即座にぬ  

ぐい去るように拡張しない限ノり失業が生ずる︒生産の収縮が産巣から産業へと悪循環的にひろがれば二般的不況に  

進展するであろう︒このような調整が将来においては過去より数において少く︑程度においてゆるくなると考えて  

よい根拠はない︒せの調整は過去におけるものよりもっときびしいかもしれない︒   

しかしながら経済構造の変化は生産の減退が山つの産業から他の産業へ移ってゆく途を変える︒財政規模の拡大︑  

財政金融政策の変化︑/事業家の態度の変化などが景気変動の形を変えている︒経済構造が変化しているために将来  

の景気変動の姿は過去のそれと似ていないであろう︒その性格ほ根本から変っているかもしれない︒このように考  

えてくると過去の形をそのままひきのばせほ︵補外すれば︶景気変動における現状をあきらかにすることができる︑   ヽ  

将来を見透すことができる︑という考えには疑いがもたれる︒  

ハーバート大学の指標  

今日まで専門家の間で最も普通に用いられている方法は先行指標による方法である︒たとえば株式・物価・生産  

・金利など多くのシリーズを図にかいてみるなら生産活動の上り下りよりも少し前に上下する不思議な先きがけを  

する指標があることに気がつく︒そしてその動きによって近い将来の出来事の傾向をみつけようとする試みがこれ  

である︒すなわちこれは過去の経済情勢を研究しこ景気変動より少しほや目に上ったり下ったりするシリーズを作  

成する試みである︒種々のシリーズを庵らペてえがき景気変動に先行するシリーズが発見されたらその理論的根拠  

について考える︒そしてその根拠があると思われるときにほそれを採用して指標として用いる︒   

このような先行指標の面白い例ほスタブップの価格である︒好況時にほ事業が拡張され︑それとともに設備の罠   

(9)

入れや建設活動の水準が上昇する︒それにほ鉄鋼が用いられるが建設計画がたてられるとすぐに鉄鋼に対する注文  

が増える︒鉄鋼に対する需要が増えるとスクラップに対する需要が増える︒そのためスクラップ価格が上月する︒  

これほ鉄鋼生産が相加するより前に上昇する︒したがってスクラップ価格の上昇は経済活動の水準の上昇の前兆と  

考えることができる︒同じようにスクラップ価格の下落は事業活動の低下を警告する︒この推論ほあまり無理でな  

いであろう︒けれども不車なことほスクラップの価格に影響する事情がこの他にも沢山あるということである︒そ  

のためかんじんなときにこれを指標と用いてひどいまちがいをすることもある︒   

もう一つの先行指標は株価である︒事業活動の予測に専心し︑それが最もうまい人々が株式市場において活動し  

ていると考えられる︒そして大部分の株価がそのために上昇あるいは下降すると︑それは賢明な一般的な見解のあ  

らわれであり︑それほおそらく正しいであろう︒こういう考えにもとずいている︒   

この古典的な例はハーバート大学で作成された指標である︒これほ投機活動を示す拇数が生産活動の指数に先行  

するという過去の観察にもとずいている︒   

ハー.ハート大学は一九〇三年一月から二九一四年七月までにわたって非常に多くのシリーズについて研究した結  

果︑景気変動を示す種々の統計シリーズをつぎの三つ紅分けた︒A投機︑B事業︑C貨幣?山般紅この三つのシリ  

ーズほ順にAほBに四カ月から二〇カ月はど先行しており︑BはCに二カ月から八カ月はど先行していた︒   

しかしこのハー.ハート方式は一九三〇年の大不況を予想できなかったためにその命を断った︒先行拇標による方  

法が信頼できないということはしばしば語られている︒この方法が成功した場合もあるが︑それが失敗することが  

多かった︒しかし安定政策のために予想ほひきつづき試みなければならない︒用心して使用すればこの指標も役に  

たつであろう︒  

財政金融政策の統計的分析︵一︶   四七︶  九   

(10)

ハーバー寸方式が失敗したからといって︑この先行指標によるものがすべて役にた・たないとはいえない︒最近米  

国のナショナル・ピふロ﹂はつぎのような拇標を作成し︑生産活動の変化に先行して上昇したり下降する指数を発  

見しょうと努めている︒︵これと同じ系統に属するものに日本銀行試算のわが国戦後の景気動向指標がある︶   

これは・︑︑ツチェルやバーンズの研究をひきついだものである︒これほ約五〇〇の月次あるいは四半期毎のシリー  

ズから景気変動を敏感に示す七一のシリーズが選ばれた︒それを更に厳密にふるいにかけて二山のシリーズが残っ  

た︒これほある経済理論にもとづいて選んたのでなく︑ある期間にわたって数百の統計シリーズをならべてその中  

から選んだのである︒   

これら二一のシリLズは三つのグループ︑先行するグループ︑同行するグループ︑遅行するグループに分けられ  

る︒そして先行のグループにはつぎの八つが含まれている︒  

一︑企業の破産数︑二︑株価︑三︑耐久財に対する新規注文︑四︑住宅建設契約高︑五︑商工業建設契約高︑六︑  

工業における平均労働時間︑七︑会社の新設︑八︑基礎商品の卸売物価   

これほ三つに分頬することができるであろう︒常山は株式市況の指数および主要商品の卸売物価指数である︒こ  

れらほある程度投機の動きを反映している︒もし投機業者が将来につい.てほっきりした見透しをもっており︑その  

他のものによってほ影啓をうけないと考えることができるなら︑これは経済情勢に先行するであろう︒しかしなが  

ら株式市場ほ財政金融政策の影鮮をうけるであろう︒また投資信託の隆盛や資本市場における構造の変化ほ経済拇  

標としての株式市場の意義な変えている︒    第三十三巻第二号   ナショナル・ピエローの指標   ︵州四八︶  山○  

(11)

第二ノのグループは耐久財の新規注文︑住宅用事業用建築の契約である︒これは経済活動の徴候というよりその原  

因である︒経済分析者は多くの指数の中でもこの八つを重要視している︒しかしながらこの八つの先行シリーズで  

も一貫して先行しているものはない︒循環の頂点︵ピーク︶あるいは底︵ボトム︶のいザれかにおいてで賢して先  

行したものほ一つもない︒  

拡散指標によるもの   

また最近合衆国のナショナル・ビ言−やわが国の経済企画庁でほ拡散指数︵ディフユーミン︒インデックス︶  

を作成した︒これほつぎのような景気観にもとずく︒   

景気変動というのほ拡張が多くの産業で平行的に進行し︑またそれにつづいて縮少が多くの産業で平行的に進行  

するという状態をいうのではない︒拡張がかなり全般的に行きわたってはいるがなお収縮している産業もかなりあ  

る︒ま尭収縮がかなり行きわたっているが拡張をつづけている産業もか凍りある︒こういった状態のくりかえしが  

景気変動である︒すなわち景気変動にともなって波動をえがく経済シリーズは沢山あるが︑それほ必ずしも景気変  

動と時間的に厳密に山致しているのではなく︑個々のシリーズはちらばっている︒しかしでたらめにちらほってい  

るのではない?各シリーズのピークは景気変動のピークのところに集中している︒そのため景気変動を反映してい  

るレターズをとり出tて︑その総数の中に拡張を示すシリーズがいくつあるかの割合︵これが拡散指標︑ディフュ  

ージョン・インデックスとよばれる︶をもとめる︒   

そしてたとえば景気の上昇過程においてははとんどすべてのシリーズが上昇を示しているであろう︒このときデ  

イフュージョン●インデックスは二〇〇パーセントに近い︑またピークに近づくと種々のシリーズの中には景気変  

︵一四九︶ 一一    財政金融政策の統計的分析︵こ  

(12)

︵叫五〇︶ 一二   第三十三巻第二号  

動に先がけするものも含まれているからインデックスの値はさがりはじめる︒そして実際にピークになると多くの  

シリーズは横ばいをつづけるか︑中にほさが?てゆくものもできる︒そして下降過程に入るとはとんどのシリーズ  

が下降しているであろうからこの指標は○パ﹂セントに近くなる︒この指標の波をえがくと景気変動がピークにな  

る前に最大値になり︑景気の谷底に到達する前に最少備になる︒このようにこの指標は景気変動に先行する性質を  

もっている︒  

ナレヨナル・ピエローでは約仙000のシリーズを収集整理してその中から二二五のシリーズを選び出して指標  

を作成しておる︒︑わが国においてほ昭和二十六年から一二十二年までの期間についてほ経済企画庁による試算があ  

る︒また日本銀行︑住友銀行の試算もある︒また戦前については馬場︑杉浦両助教授の試算がある︒   

この拡散の指標はいわば経済の各分野に対する景気の浸透度をあらわすもめと考えられる︒このような拡散の指  

標は絶対額あるいほ平均値では得られないような情報を提供するので︑景気変動の性格を診断するに当って有用な  

用具である︒   

しかしこの指数が最高であるということは︑すべてのシ㌢−ズが景気の﹁上昇過程﹂にあることを示すものであ  

って︑それ以上のものでほない︑これを景気の転換点の予測に用いる切ほいま患気が上昇しているからそのうちに  

転換点がくるであろうという予測方法と基本的にほ同じである︒   

ここに各種の先行指標についてのべたがそれにもとづいて景気変動を予測する方法においては︑それを算出した  

ときに存在していたと想定される関係が存続しっづけるであろうという仮定が底にある︒山般的にいってこのよう  

な指標による方法は︑経済構造が大きく変化しない期間には有望である︒そのような期間においてほ︑同じような  

経済情勢の変化に対してほ︑事業家︑消出者が大体同じように反応するであろう︒けれども最近これらの反応の仕   

(13)

方ははげしく変ってきている︒個人も事業も経験によって学びその反応の仕方を変える︒このような反応の仕方が  

変わるため指礫による機械的方法ほせまい範囲で︑しかも極度に用心したうえで用いることができるだけである︒   

経済構造︑経済制度︑経済行為︑経済政策がほげしく変化しているためこのような方法︑単純な補外法による予  

測︑あるいほ先行指標による予測が有望なものとほ思われない︒たとい過去払おいて景気変動を予測するに役立っ  

た信号であっても将来その役割を果すとほ必ずしもいえない︒  

国民所得勘定によるもの  

また他方で景気変動の基本的原因が次第に理解されるようになってきて︑先行指標をさがしそれによって予測を  

試みるよりも︑その底にある原因を分析しそれにもとづいて予測を試みるようになった︒   

最近経済構造が変化している期間にも用いることが出来きる方法が発展してきた︒それほ国民所得勘定による方  

法である︒指標による分析と国民所得勘定による分析との相違の主な点を会社を用いて説明しよう︒ある会社の社  

長が事務所にやってきて︑会社の状態をてっとり早く見たいと思ったとする︒彼は煙突からどれだけの煙がのぼっ  

ているか︑どれだけの貸寒が引込線紅入っているか︑どれだけの自転車が自転車置場にあるかを見る︒こうして彼  

ほ事業がどんな具合であるか見てとる︒これらを指標として彼は事業活動の水準について山つの印象をうる︒しか  

へV  

しそれは構造に変化が起っていないときの話である︒たとえば労働者がバスを利用するようになり︑自転車で通勤  

しなくなれほ自転車の数ほ労働者の数をあらわさなくなる︒また会社は以前よりも製品に近い原料を用いるように  

なっ︑たため︑引込線の貨車が以前より少なくなるかも知れない︒横道が変るときは指標ほ信瀕し難くなる︒そのと  

き軋は社長ほ徽候の観察をやめて︑その会社の活動を決定する要素を系統的に分析した方が役にたつことに次第に  

財政金融政策の統計的分析︵一︶   ︵仙五こ 一三   

(14)

︵仙五二︶ 山四   第三十三巻第二号  

気づくであろう︒そのときに注目する要素にほ受注数︑販売高︑原料費などがある︒事業活動の水準を決定してい  

各要素を分析し︑それにもとづいてつぎにどうなるかをえがいてみるであろう︒同じように経済構造が変化してい  

る期間には牲産活動の水準を決定している要素を分析して指標の観察を補なわなければならない︒国民所得勘定ほ  

このような考察をするための枠を提供する︒  

景気変動の予測について概観したものにほつぎのものがある︒   

P︼m︶G.EcOnOmic許rOmeterSan中EcOnOmicMOde−s㌧ Lぎ象塁フミ∵眉竜ぶ愚計二芸風∽訂鼓簸ぎ一句eb岩ary−誤∽.杉浦訳  

経済バロメーターと経済モデル﹃アメリカーナ﹄一九五六年二月第巻第二号   

HagenE・E・TFe RO−e OfEc昌Omic句︒reCaStingin HncO牒e Stabi−izati芦 ぎQ鳶S註VS邑ぎヽqヽ鶏b莞︑思首g   

b§QC⊇Cや Edited by Miikan一M・﹃・−誤∽・   

Hanse5﹀A.Statist首andicatOrS and Business句OreCa象ng.Hn昏温勇二官吏⁝邑三ぎ旨邑よ≡蓋−誤−.   

G.DiscretiOnary Stabi−iNatiOn PO−icy and﹃OreCaStin甲 Hn麦藁ぢ9蛍よ蓋こぎ真裏首巨諒思さ ‖nd ed.−誤心.    Hart﹀A.  

R00S﹀C.FSur諾y OfEcOnOmic句OreCaSting TecFniques● ﹂浮至さ薫き訂き OctOber−鰐申︐﹂訂−● N∽り 20■ぬ●   

第一次大戦彼の景気変動に関するホートレイの見解は   

Hawtray﹀R.G.T訂Trade Cyc−e.L冒こ浮雲§獣訟−浩戸 Reprinted inき旨等嘆:ざ転学ぎ営∴ゞ旨∴言墨ゞ−盟潜   

金森訳 ホートレイ ﹁景気循環﹈ 大田後藤編﹃景気変動の理論﹄下 脚九五一   

Hawtray︶R.G● The MOnetary TbeOry Of tFe Trade Cyc−e and lts Statistica−Test● 昏§忌且∴首§芸︑ミ.浮豆§乳ぢ  

May−結べ.Reprinted in野鼠厨ヲざお邑貢竺官尊:諷こ旨旨畏こぎ薫−票∽.    献  

(15)

lニ国民所得勘定の概要  

経済活動と国民所得勘定  

国民所得勘定は比較的完成に近ずいてきているが︑これは最近二三十年にわたっで米英の経済学者が努力して得  

た成果である︒この点についてはシャワプ﹁国民所得資料の発達と利用﹂にくわしく述べてある︒わが国において  

は戦後いちはやく導入され急速に発展した︒   

国民所得ほはじめは国内のすぺての人々の所得の合計と考えられて小た︒そして年々の国民所得の動きを見ると  

その国の厚生の変化をみることができると信じられている︒それはまた経済における政府の役・割について判断する  

に当って用いられている︒すなわち租税あるいは政府支出が国民所得に対する割合をもとめ︑政府が経済に.おいて  

演ずる役割について考える材料にしている︒   

この国民所得を計算するのにいろいろの方法があるが︑このことが国民所得勘定の発展に大きな影響を与えた︒  

これを計算するのに基本的にほ二つの方法があげられる︒  

壷ほ個人の受取る所得額すなわち賃金︑配当︑利子などを加えることである︒第二ほ個人や政府などの支出額  

と投資を加えることであるご﹂れら二つの途から同じ大きさのものをうるようにするために︑その計算の過程にお  

︵一重ニ︶一五    財政金融政策の統討的分析︵一︶   風見られる︒また第二次大戦後の景気変動に関するフリードマンの見解はつぎの文献にほっきりみられる︒   冒edman去.WすtFe AmericanEc呂Omyis D2preSSiOn Pr邑茅野ま訂害§註白き童貞害句守ぎ邑ぎgヌ   April N00L苫料.Repri已ed in診ぎ監よぎ毎嘆こ苧評言卓すー¢ひ00・  

(16)

︵劇五四︶ ハ   第三十三巻軍二号  

いて種々の項目の取扱いや調整について問題が起った︒減価償却︑租税︑政府支出︑移転支払などについての問題  

を解決しなければならなかった︒この二つの方法によって測ったものは普通次のような勘定で示されている︒まず  

事業の費用の側からみた賃金Ⅳ︑利潤Q︵ただし配当R十社内留保5+法人税むおよび間接税Tを左側に示す︒  

︵間接税を除いたものを普通へ 要素価格での国民所得とよぶ︒︶ また事業の収入として  

表  一・   

支 出   収  

将来の予測に用いることが試みられた︒進んではうえのように分割された項目の間にある関係を考え経済モデルを  

構成することが経済理論に影響した︒その後第二次大戦に入ると︑戦争遂行のための生産目標を定めたり︑生産物  

を戦争目的に転用するために起るインフレ・ギャップを計算するために統計値が必要となり︑国民所得の研究は異  

常な進展をした︒   

消  費 C   投  資 ∫ − か   政府支出 G   出  超 ∬ − 〃   賃  金   Ⅳ  

利  潤   Q   間接税   r  

みた個人︑政府等への売上げ︑消費C︑総投資1減価償却∫・1か︑政府需要G︑輸出1  

輸入Ⅹ1肘を勘定の右肘に記しておいた︒この勘定の左右それぞれの合計が等しいか  

ら︑   

司十の十↓1!C十︵〜1旦+G十︵如・1竃︶  ︵P−︶   

となる︒この式の左辺は市場価格での国民所得あるいほ国民生産とよぶ︒また左辺にD  

を加えたものを国民総生産と呼ぷ︒∫で純投資でなく総投資をあらわしていること︑お  

よび以下の議論においては利潤Qを︑配当屈+社内留保5+法人税れに分けて考えるこ  

とを注意しておこう︒   

また一九一エ○年代以降における経済理論特にケインズ派の巨視的理論の発達ほ国民所  

得の研究に大きな衝撃を与えた︒はじめは巨視的な経済モデルに統計資料をあてはめ︑  

(17)

また戦争中にほ資本の消耗を補填することさえさしひかえて︑すべての生産物を戦争に投入する努力をしなけれ  

ばならなかった︒そのため戦費の源泉は国民所得でほなく資本消耗を補填する前の国民総生産であると考えられる  

ようになり︑国民総生産の側面が強調眉れるようになったりまた戦後平和経済への転換に際して予想される不況の  

深刻さ︑失巣の大きさを測るためにこの資料が利用された︒このように巨視的経済理論との交渉︑戦争中の経済政  

策との交渉において国民所得分析は次第に発達してきた︒そうしてそれが経済政策なかでも財政金融政策にとって  

不可欠のものとなった︒それほ国民所得を構成しているある脚つの要素の変化が他の要素の変化をひきおこすから  

である︒このような問題の解決に役立つように国民所得の資料を整備するという課題を果すために国民所得勘定の  

局面が出現してきた︒   

この点を仮設的数値を用いて説明しよう︒いま経憐情勢を展望⊥た後で来年の国民総生産がつぎの通りに予測さ  

れたとする︒ここで転国民総生産ほ二五六と予測されている︒しかしくわtく計算してみる  

消、費   設備投資   在庫投資   政府需要   輸出超過    国民総生産  

7  73  1  ︒讐乙忘  

膵がゼロから〇・七 

ため消喝したがってふたたび国民総生凝が引きあげられる︒   

総需要の予想水準がこのように高いときには∵これまで予想もしなかった物価上昇が起るかもしれない︒それが  

消費投資にどのような影響を与え薄か紅ついても考えねはならない︒もしこれらの数隠を改訂すれぼもういちどす  

︵山五五︶ 仙七    財政金融政策の統計的分析︵こ   と︑この水準の国民生磨からほ︑最近の経験から判断すると消費需要が仙七七でなく山七九   文となることがわかったとする︒このように消費を訂正すれば総生産ほ増加し消費ほもっと   引きあげられるであろう︒こうして消智正二八一︑国民総生産ほ二六〇となるかもしれない︒   このように消費の水準が高いときにほ在庫がうえの数字でほ不十分かもしれない︒そして在  

(18)

へ︼五六︶ 一八   第三十三巻第二骨  

ぺて伊項目にわたって調整しなければなら庵い︒このようにどの項目を変えてみてもそれほすべての項目に波及を  

及ぼすであろう︒ここで勘定腹式を用いるととの長所ほ︑調整をくりかえしてゆく過埠において︑すべての頓臼︑  

総生産︑消費投資などの項目相互の間に矛盾のない予測をたてることができるということである︒︵なおここでは  

国民経済勘定と小う言葉を使用することほ湧けた︒それほ中間生産物の流れ︑資金の循環︑資産の存在鼠を示すも  

のを一括してよぶときに国民経済勘定とよぶ方がよいと考え渇からである︒また社会会計という言其ほそれよりも  

っと広範囲にわたる勘定体系を表わすのに用いるのが適当であろう︒︶   

こうして英米をほじめとして多くの由に.おいて国民所得の資料を整理するための勘定体系が発達した︒それほ経  

済を構成している個人︑事業などについてそれぞれ勘定を設け︑その経済部門相互の間における所得の流れを︑そ  

種々の経済部門についてそれぞれ勘定を設けるとどのような便利があるであろうか︒種々の項目をうえのように  

一つの勘定に配列しておくと経済全体の動きをつかまえるのにほ便利である︒しかし経済を構成している各部門す  

なわち個人︑事業︑政府︑海外のそれぞれの動きについてみることはできない︒これらほそれぞれ独自の目標をも  

って汚勤している︒たとえば財政ほ均衡財政を念願とするであろうし︑国際収支は赤字とならないことを望むであ  

ろう︒そのうえ各部門相互にほある関係がある︒たとえば事業の生産物が個人︑政府に売られているがこの様子に  

っいてみたり︑﹁政府勘定﹂の瀧率の引下げが﹁事業勘定﹂の投資活動を活発にし︑それが﹁個人勘定﹂の消費を増  

し︑﹁政府勘定﹂の租税収入額を増す様子についてみるためにほ勘定を分けておくのが便利である︒特にここで考  

える財政金融政策においてはとのような問題から離れることほできない︒そのため経済の各部門においてその収支  

の状態やバランスの様子がわかるように配列しなおしておくのがよい︒このためには経済全体を種々の部門に分け    の間に取引が行われているとみてその統計値を統一ある勘定体系にまとめるものである︒  

(19)

それぞれについて勘定を設け︑その勘定の各個の動きはもとよりお互の関係がはっきり示されるような形で示さな  

ければならない︒このようにしておけばどの部門も全体の二部にすぎないことがわかり︑各部分が他の部分を無視  

して独自の政策をとることはさけられるであろう︒  

各勘定の説明  

われわれほここで︑つぎの四つの勘定からなる国民所得勘定について考える︒すなわち個人︑事業︑政府︑海外  

についてそれぞれ血つの勘定をもつものである︒これほおそらく考えうる最も簡単な国民所得勘定であろうが︑こ  

の程度の分割によっても非常に有益な結論がえられる︒問題によ?てほ個人勘定を更に労働者︑個人業主など紅分  

割して考える方がよいこともある︒また事業勘定を消費財産業と生産財産業あるいは大企業︑中小企業に分けた  

り︑政府勘定を中央政府と地方自治体などに分けて考える方が都合のよいこともある︒けれどもここでは山応経済  

を上記の四つの部門に分けて考える︒   

この四つの経済部門の間にはつぎの活動が営まれている︒個人の基本的活動ほ労働力を提供し︑財貨用役を消費  

することである︒企業は家計の労働を雇い財貨を生産する︒その生産物ほ家計︑他の企業︑政府︑海外へ売られ  

る︒政府は家計から労働吏履い︑家計と企業に用役を提供し税金を徴収する︒海外は輸出品を受取り︑輸入品を供  

給する︒これは経済活動の極めて大ざっばな記述であるが﹂ これに関連のある統計資料を整理するためにつぎのよ  

うな国民所得勘定を用いる︒すなわち収入側︑支出側の二?の欄をもった働定を個人︑事業︑政府︑海外について  

それぞれ副つづつ設ける︒それぞれの勘定の右側に収入をハ左側に支出を示す︒をうして各部門の間につぎの取引  

が行われたように考えて資料を整理する︒  

財政金融政策の統計的分析︵一︶   ︵一五七︶ 一九   

(20)

表  二   政   府   個  

第三十三巻第二号  

支 出   収 入  

支 出  

︵〟五八︶ 二〇   

㈲個人への生産物の売りあげC ②政府への生産物の売りあ  

げGlV 闇海外への純売り上げズー肘 ㈲事業の所得支払  

い奮余Ⅳ−γおよび配当金︑個人業主所得斤を含む︶ ㈲政府  

の俸給支払γ ㈲間接税r︑法人税㌔ m個人税㍍︵ここでほ  

賃金額合計をⅣ︑財用役に対する政府支出合計をGと表ゎして  

いる︒︶  

ほじめに部門間の関係がはっきりしている項目︑すなわち二  

つの勘定の左側記入と︑他の勘定の右側記入とがちょうど対応  

している項目について説明しよう︒たとえば最初の個人への消  

費財売りあげは︑個人の支出であるから個人の勘定の左側に記  

入すると同時に事業の勘定の収入であるからその右側に記入す  

る︒破線の上方紅ある項日付から潤までほすべて同じように取  

扱う︒これだけが経常取引である︒これらほすべて左側の記入  

と右側の記入とが均り合っている︒つぎに資本取引ほ事業につ  

いてだけ考える︒それは事業勘定の右側にある㈲給資本形成マ  

イナス減価償却rて−乃である︒最後に個人の勘定には右側に㈲  

個人貯蓄を記入して均り合わす︒また事業勘定には左側に皿社  

内留保を記入し︑政府勘定には左側に仙引き扱げ題を記入して   

(21)

表   海   外  

支 出   収 入  

事   業  

支 出   収 入  

財政金融政策の統計的分析︵一︶   均り合わす︒㈹海外の勘定でほ海外投資を記入して均り合わす︒   

この個々の勘定について簡単に説明しよう︒   

個人勘定︒この勘定の右側にほ個人の収入喜金配当Ⅳ+点︶  

を記入する︒左側紅記入してある個人税㍍を納めた後に残るも  

のが個人可処分所得である︒個人ほこれを消費支出にあてる︒  

個人可処分所得から消費支出を差引いたものが個人貯蓄であ  

る︒この貯蓄はまた収入と支出の差すなわちこの勘定の右側と  

左側との差である︒この個人貯蓄は所得を全部消費につかって  

しまわなかったことをあらわしている︒この貯蓄は点線の下に  

記しておいた︒なお個人の受取る移転支払︵恩給など︶ はマイ  

ナス符号の租税と考えて個人税の㊥に含んでいる︒   

つぎに政府勘定について説明しよう︒政府は種々の︑租税を徴  

収する︒それを右側に記入する︒妄こには個人税㍍︑法人税㌔  

および間接税アがある︒この収入のところに借入れにょるもの  

ほ含めていない︒他方で事業から生産物を買入れG−Ⅴ個人へ  

賃金Ⅴを支払う︒もっともこのはかに個人に恩給︑︑事業に補助  

金などの移転支払なする︒これらほすべてそれに対応する租税  

か.ら差引いておいた︒  

︵妄九︶ニ   

(22)

︵二ハ○︶ 二二    第三十三巻第二号 

こうしておい七右側の合計の方が大きいとき経常余剰︵財政の・黒字︶があるという︒左側の合計の方が大きく︑  

政府支出の方がその収入より大きいときには財政紅赤字があるという︒なおここでは地方自治体ほもとより公社も  

政府の一部と考ゝ忽ている︒   

つづいて事業勘定について説明する︒そこに現われている項目はすでに説明を終ったものが多い︒海外への売上  

げ︵輸出超過︶が追加されている点に注意しておけばよい︒哀れ破線の下にある項目についてほ特別に説明してお  

かねばならない︒その右側には.総投資マイナス減価償却を記入しである︒総投資ほ新しい工場設備︑在庫を増すた  

めの支出である︒後者は消耗した資本設備を取りかえるために積立てたものである︒従ってその差は資本設備の純  

増をあらわす︒また左側には社内留保した利潤を記入する︒これは事業の純貯蓄をあらわす︒   

つづいて海外勘定について考えよう︒その勘定の左側すなわち支出側には輸出超過額が記入されている︒これは  

事業勘定の右側に相応するものであるが︑これほ外国から受取った財用役より海外へ供給したものの方が大きいこ  

とを表わす︒これほ海外から見ると吏払超過であるから海外勘定の支出の側へ記入してある︒これだけが点線より  

上にある経常取引である︒   

この輸出超過ほつぎのようにも説明できる︒すなわちそれに相当する財ほ国内のどの綴済部門もそれを買ってい  

ない︒それを買った海外の事業はその資金を借入れるかあるいほ過去の蓄積をつかってこの支払をしなければなら  

ない︒これほ海外から見ると支払超過であるから海外勘定の支出の側へ記入する︒   

この勘定の左側と右側の差を点線の下方に記入しておいた︒これほ海外と取引したために今年生産した財用役の  

うち国内で消費︑投資につかわなかった部分をあらわす︒それだけ海外投資をしたわけである︒これだけわが国は  

海外に対して債権を獲得している︒わが国の海外諸国に対して債権国であるか債務国であるかという財務上の地位   

(23)

の変化をあらわすものがこの海外勘定である︒この変化が極めて重要であるためにこの項目を切り離して別個の勘  

定で.示すのである︒  

貯蓄投資の均等  

貯蓄の合計 表二に分けてある四つの勘定において破線の下にあるものに注目しまう︒まずはじめの二つの勘定  

この二つの関係についてほすでに説明しておいた︒またっぎの関係ほ串其の利潤Qから法人税TQと配当虎とを差  

引いたものが社内留保︵事業貯蓄︶されるという︵定義的︶関係を示すものであるにすぎない︒  

螢糖蜜抑  制継萄咄−−や上㌘1ふ   ︵P全  

うえの三つの貯苺を合計したものが経済全体の貯苗である︒  

萄  琳=司十①十↓IC−G   

事業貯蓄についても個人︑政府勘定と同じように寧巣勘定における収入側合計マイナス支出額合計と定義し︑   

朝敵語哨=︹C土C15+︵ヽ−b︶±筒1竜︶︺−︹︵琶卜5十和十↓十㌔︺  

とおいてもよい︒けれども条件︵P−︶の成立しているところでほ︑このどちらの定義を用いても同じになる︒すなわ  

ちこの定義の第一項のところへ声−︶の右辺を代入し︑それから筍二項を差引くとや∴ご1知 となる︒このように  

︵柑●ニの条件の成立しているもとでほ︑ここで述べたように左側︑右側の差としての事業貯蓄の定義と前に述べたよ  

財政金融政策の統計的分析︵こ   ︵二ハ一︶ 二三    の残高をもとめて魂よう︒   

壷>蟄和  義>巧拙=司+知−・↓弓1C   

浄再審租  界葡萄嚇=−づ十づ司十↓Q−C  

(24)

︵二ハ二︶ 二四   第三十三巻第一ノ亭  

う貯社内留保利潤として定義しても同じである︒従ってそのどちらか山方について考えておけほ十分である︒   

投資の合計‖∴これた対応して経済全体の投資を合計しておこう︒投資であるためにほ今年生産された財に対する  

支出でしかも今年つかってしまわない部分でなけねぼならないて今年つかってしまうものは含めてはならない︒投  

資は大部分事業がなずが︑∴ここでは個人の行う投資は癖祝し.ている︶事業が資本支出と考えるものでなけねばな  

らない︒・すなわも将来にわたってつかうためのものでなけねばならない︒このように投資であるためにほ売手から  

みると今年の売上げであるが︑見事からみると経常支出でないもの︑資本支出であるものでなけねばならない︒   

うえと逆に売手ほ資本取引と考えているのに︑買手は経常取引と考えるものがあればそれほマイナスの投資であ  

る︒これはそれまで経済に在存し・ていた資産を今年消費するからである︒双方の当事者が資本取引と考えるもの  

は︑経済にこれまでに存在していた資産の交換にすぎない︒こ∨のような今年生産されたものでない財用役の取引ほ  

国民所得勘定にほあらわれない︒たとえばある事業が以前からもっている機械を他の事巣に売るときには投資は起  

らない︒機械の所有権が移転しただけである︑︒投資のうち最もはっきりしているものほ生産者の建物︑機械︑設備  

その他の耐久的生産財の買入れである︒  

事業の耐久財に対する支出のうち山部分は使用しっくされた原材料︑あるいほ老朽化した生産設備の取りかえの  

ために用いられる︒この歌りかえをしなければ経済の生産能力ほ減退する︒このような取りかえの部分を含めた総  

投資だけ経済に資本騒が増加するのではない︒それは今年消耗した部分について考慮していない︒資本量の正味の  

増加︵純投資︶をもとめるためにほ総投資から取りかえの大きさだけ差引かねばならない︒事業の行う正味の投資  

ほ′・−∂である︒  

髄継浴場−−ヽ−り   

(25)

したがって投資合計ほ   

簿 ′掩=︵ナ1b︶十︵唇−竜︶  

である︒このように財用役に対する支出でしかも︑その年に消費されてしまわないものが投資である︒これが事業  

の生産用耐久財への支出と海外への輸出超過からなるのである︒ここで重要な関係が成立する︒すなわちこのよう  

にしてもとめた投資合計と前にもとめた貯蓄合計とが等しい︒  

司十Q十↓1CIG=−1b十涙∵⊥忘   

この二つが等しくなる理由ほ簡単である︒というわけほこの関係は前に表われた関係申この項目の配列を変えた  

だけであるから︒   

この国民所得勘定の利用については次節で述べるが︑予めここで二三の点を注意しておこう︒この勘定体系が示  

すことがでせることほ精々のところ種々の数値がお互に会計的にどのような関係にあるかということである︒この  

ように項目を配列しておくと︑予測にあたってそこにかくれている矛盾を暴露するに役立つ︒財政金融政策の効果  

を国民所得勘定の形で表現することによって数最上の不合理が含まれるかどうかを調べることができる︒けれども  

この勘定体系を利用すれば予測にともなう過ちほ必ず発見できるとか︑あるいは正しい予測ができるというのでは  

ない︒種々の統計資料をこのように勘定形式に配列するだけで︑因果的関連が明らかにされるというのでほない︒  

従ってつぎの課題ほここに▼配列される種々の項目の動ぎを記述するかうなモデルを構成することである︒これにつ  

いては次の節でとりあげることにする︒このように国民所得勘定の体系はそれ自身では正しい予測ができるという  

︵二ハ三︶ 二五    財政金融政策の統計的分析︵こ   また輸出超過︵ズ1〃︶のあるとき︑それだけが海外投資であることは前に述べた︒  

前半簿源1−壇−竃   ︵沌.ひ︶  

(26)

第三十三巻第二号   ︵一六四︶ 二六  

ところに価値があるのでほなく︑誤・った結論を追い出すことに価値があるのである︒しかしそれだけでも財政金融  

政策にとっては大きな進歩である︒更に各項目の因果的関連を明らかにすることができれば正しい予測に役立つよ  

うになるが︑これはその土台でもある︒   

また次の点粧も気をつけねばならない︒財政金融政策の目棟をあらわすのに︑この勘定に現われているものだけ  

で十分だと考えてはならない︒たとえば国民所得ほその年の市場価格でもって測られている︒記入されている項目  

はすペて共通の単位のもの紅するために貨幣額であらわされている︒これらの項目はすべてたとえば何億円と表わ  

されている︒しかしながら︑この何億円という金額は二っの成分︑価格と数壷からなっている︒多くの経済分析尤  

とっては物価の変動と数鼻の変動とを区別することが望ましいことがある︒そのためには実質的な︵リヤル︶国民  

所得勘定をつくるよう努めねばならないであろう︒財政金融政策の目標はそれに対応する物署︵実質国民生産︶に  

︑関係があるかもしれない︒しかし物価水準の変化を調べておれば貨幣で表わした国民所得から生産藍の変化をもと  

めることが出来るであろう︒また政策の目標が雇用量にあるかもしれない︒しかしこの場合にも生産量がわかって  

おれば︑雇用量を導出することほ比較的容易にできる︒またこれを土台にしてこの方面の分析をくわしくサること・  

ができる︒  

このように勘定に表われている項目だけを用いて︑財政金融政策の目標のすぺてを表わすことほできない︒それ  

だげでなく︑この目標を実現するための手段をあらわしたり︑あるいはここに表われている項目の動きを説明する  

ことが︑この勘定にあらわれているものだけを用いてできるとは限らない︒たとえば目標を実現するのに大企業の  

独占的活動を規制しなければならないかもしれない︒また投資の動きを説明するのにこの勘定にあらわれている項  

目のはかに資舎軋や利子率を用いなければならないということもある︒また前年末に存在している設備量を用いな   

(27)

財政金融政策の統計的分析︵こ  

差の列の合計がゼロになっているのはつぎの関係濫.もとづく。  

L岬+点}7ⅣトC]十 

[劫卜十Ⅹ]=0  

これが(2.1)を変形したものであるごとほ容易に理解できるであろう。  

ければならないかもしれない︒これらほ資金につい  

ての分析︑市場の分析︑国富調査によって補わねな  

いかもしればならないものである︒このような限界  

の克服については後で述べることにしよう︒   

︵この国民所得勘定においてほ国民所得すなわち  

ある年に生産された財用役の流れに視野を限定して  

いる︒そのためつぎの三つほとりあげられていな  

い︒′第一は吋間生産物の流れであり︑第二ほ資産畳  

の変化であり︑第三ほ資金の流れである︒この第一  

のものは産業連関分析でとりあげられており第二の  

ものは国富勘定第三のものは資金循環分析でとりあ 

げられている︒︶   

なおここでの配列の仕方ほギルバートおよびヤス  

イーの考えに従っている︒これよりもー層簡潔な国  

展所得勘定としては全米企画協会のコルムのものが  

ある︒そこでは上のようになっている︒︵数字ほい  

うまでもなく仮説例である︶  

文   献  

︵一六五︶ 二七   

(28)

︵一六六︶ 二八   第三十三巻第二号  

CO−m﹀G● T訂GO諾rnment Budget呂d tbe2atiOn㌦EcOnOmic Budget●−澄㊥● Reprinted in昏Q札叫薦わ賢句冴c已℃註Q・  

Edited by SmitEes.A.and厨utters−1.戸  

CO−m﹀G・Nati昌a−EcOnOmic B亡dgets.−誤L Budget P−anning⁝TFe GO諾rロment溺udget.the Financ−a︻P−anけ and tbe  

NatiOn小s EcOnOmic B已get−−誤N.Reprin訂d in 昏家宅旨こざ呑こぎ§焉恥邑ふざざこざ茸−諾∽・木村大川佐藤  

共訳﹃財政と景気政策し一九五七  

Gi−be羊 M.and lasz−﹀ G.NatiOコa−PrOduct and IncOme Stati註cs as an♭id in EcOnOmic PrOb訂ms.−思弁Reprinted  

in抄ざ註庶・?首已訂月評薫℃ミ⊥ぎ至急b旨烹ぎ蔓草−空中 Edited by Fe−1n習−Wl.and Ha訂y一B㌧F 

Hansen.A.TFe2atiOnS EcOnOmic B仁dget︸in穿旨夢二官吏:温こを音邑こきき.−授L  

Hicks﹀1.R● 哲乱臣ごで至莞至当F しぎ﹂ざき昏墨許声⁚nd ed.︼−訝N.酒井訳﹃経済の社会構造﹄一九五四  

R点g−esu R:きb替邑邑百三こ寿誉芸ござ喜竺芸ござ旨竺き風音−−盟芦  

ShO已p︺C.De諾︻Opmentand⊂seOf20﹇iOnancOme Datauゝ幹⊇章 QヽC邑官署≦ヾ哲等温阜二宣.−こ芝∞.  

St昌e﹀ R︐and GrOft・Murray−G−哲c訂︑AへへQミ︑叫鳶§軋哲Q璧温c害詠︑わー−浩声  

樋口午郎  

市村真一  

市村︑鎌倉  

鎌倉  昇  

経済企画庁  

経済企画庁  

山田雄三編  

授のアメヅカ︑   ¶戦後財政政策と国民経済勘定﹄一九五〇   国民所得研究への社会会計論的接近 ﹃経済評論﹄ 山九五〇 脚一月   ﹃国民所得と資源﹄一九五一   我国国民経済表の分析−社会会計の適用とその限界 ﹃季刊理論経済学﹄   調査部︑国民所得諜 国民経済計算の連関分析 ﹃国民所得資料月報﹄    経済研究所︑国民所得課訳 ﹃米国における国民経済計算﹄ 上下一九五九 二月   ﹃経済計画し 経済学大系 筋六巻一九五二 筋四章国民所得バランス論︵森田︑高橋︑馬場︑山田︑安平各教  

イギリス︑オランダ︑ノールクエ1  山九五二 四月  

山九五五 二じ月  

(29)

四 モデル・ビルディング  

経済モデルの特性について  

国民所得勘定ほ重要な経済活動に関する統計資料の系統的整理という点から︑財政金融政策の樹立紅役立ってい  

る︒これは事業会社における会計の役割とよくにている︒事業会社の賢明な運営のためには会計が必要である︒す  

なわち会社の売上高や費用について知らなけれほ経営者は会社を立派に運営してゆくことはできない︒しかしなが  

ら適切な勘定を設けセ数字を整理するだけで会社が必ず成功できるのではない︒会社が成功するためには勘定に記  

されている項目が過去にどのような経過をたど−つたか︑なぜそのような経過をたどったかを完全に知り︑それが将  

来どのように変るかについて見透しをたてておかなければならない︒そのうえに経営者は想像力判断力を発拝しな  

ければならない︒   

国民所得勘定の利用もこれと同じである︒この点についてヒックスほつぎのように述べている︒﹁経済紙放.につ  

いて人々が問おうと欲する最も重要な疑問の多くは︑もしかくかくのことがなされるなら︑その起りうる帰鰭はど  

んなものであろうか︑というような型の疑問である︒さてこのよう 

勘定の知識のみからは答えられるものではない︒経済組織がいかに動くかという知識をもたないでほ経済的改革の  

起りうべき効果を予見することはできない︒﹂そのため.ここでこの勘定にあらわれている種々の項目が過去におい  

てたどった経路について説明し︑しかも将来どのような値になるかを告げてくれるような関係式をつくらねばなら  

ない︒このような式の集りを経済モデルとよび︑それを作成するこ虻をモデル・ビルディングとよぷ︒   

このようにして仮りに完全なモデルが出来上ったとすると財政金融政策泳これをつぎのように利用できる︒すな  

財政金融政策の統釘的分析︵こ   ︵二ハ七︶ 二九   

表  二   政   府   個   第三十三巻第二号   支 出   収 入   支 出   ︵〟五八︶ 二〇   ㈲個人への生産物の売りあげC ②政府への生産物の売りあ  げGlV 闇海外への純売り上げズー肘 ㈲事業の所得支払  い奮余Ⅳ−γおよび配当金︑個人業主所得斤を含む︶ ㈲政府  の俸給支払γ ㈲間接税r︑法人税㌔ m個人税㍍︵ここでほ  賃金額合計をⅣ︑財用役に対する政府支出合計をGと表ゎして  いる︒︶  ほじめに部門間の関係がはっきりしている項目︑すなわち二  つの勘定の左側記入と︑他の勘
表   海   外   支 出   収 入   事   業  支 出   収 入  財政金融政策の統計的分析︵一︶   均り合わす︒㈹海外の勘定でほ海外投資を記入して均り合わす︒    この個々の勘定について簡単に説明しよう︒   個人勘定︒この勘定の右側にほ個人の収入喜金配当Ⅳ+点︶  を記入する︒左側紅記入してある個人税㍍を納めた後に残るも  のが個人可処分所得である︒個人ほこれを消費支出にあてる︒  個人可処分所得から消費支出を差引いたものが個人貯蓄であ  る︒この貯蓄はまた収入と支出の差すなわちこの

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