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新潟医療福祉大学 健康栄養学科・川上心也

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Academic year: 2021

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35

運動と視床下部 Sirt1 との関連性について

新潟医療福祉大学 健康栄養学科・川上心也

【背景】

NAD 依存性脱アセチル化酵素(Sirt1)は,全身の細胞に存在 しており, 老化に伴う疾病(Ⅱ型糖尿病, 動脈硬化等)を防ぎ,

寿命延長効果を持つとされ,近年大きな注目を集めている.

近年の研究では,視床下部で発現する Sirt1 が,カロリー制 限時の適応調節因子として働く (Satoh et al.J Neurosci.

2010)と共に,高脂肪食摂取による肥満時のエネルギー消費の 増大にも関わることが示唆されている(Ramadori et al.Cell Metab.2010).従って,視床下部の Sirt1 は,カロリー制限 や肥満といった栄養状態の変化に対し,生体の生理的な頑健 性を維持・発揮する役割を担うと考えられている.

一方,運動には,摂食抑制効果があるとされ,肥満防止効 果を持つと言われているが,その詳しい機序は不明である.

そこで本研究では,運動により視床下部 Sirt1 の活性が誘起 され,摂食量が制御される可能性について調べ,運動が視床 下部の Sirt1 を介し生体に与える影響を検討するものとした.

【方法】

供試動物には,3 週齢の Wistar 系雄ラットを用いた.ラッ トは,普通食群,高脂肪食群,普通食+週 1 日運動群,高脂肪 食+週 1 日運動群の 4 群に分け,8 週間飼育した.運動群は回 転ケージで飼育し,自発走行運動を課した.また,各群の摂 食量についても記録した.

飼育期間終了後, 深麻酔下で断頭し, 視床下部を摘出した.

さらに,内臓脂肪量についても測定した.摘出した視床下部 には可溶化処理を施し,その後ウェスタンブロッティング (WB)法を用いて各種のタンパク質発現量を測定した.測定し たタンパク質は,Sirt1,Acetyl-Stat3(脱アセチル化により 摂食を抑制する因子),および Acetyl-FoxO1(脱アセチル化に より摂食を促進する因子)である.また,可溶化処理後,Sirt1 の活性能を専用キットならびにマイクロプレートリーダーに より測定した.

【結果】

WB 法で Sirt1 発現量,さらに Sirt1 活性能をそれぞれ測定 した結果,各群間に統計学的な有意差は検出されなかった.

発現量に変化が見られたのは,Acetyl-FoxO1 のみであった (図 1).二元配置分散分析では,運動の効果により発現量が 有意に変化する(P<0.01)との結果であったが, 「運動の効果」

と「食餌の効果」について交互作用が存在(P<0.01)した.そ こで,多重比較を Tukey-Kramer 検定により実施したところ,

Acetyl-FoxO1 発現量は普通食(非運動)群に比べ高脂肪食(非 運動)群で有意に減少(P<0.05)し,さらに,普通食(非運動) 群に比べ,普通食+週 1 日運動群,および高脂肪食+週 1 日運

動群でもそれぞれ有意に減少(P<0.01)していた.

また,WB 法で測定した視床下部 Sirt1 発現量と内臓脂肪量 を使用し,ピアソンの相関係数の検定を実施すると,高脂肪 食+週 1 日運動群以外の群で強い負の相関が検出された(表 1).

【考察】

本実験条件では,Acetyl-FoxO1 でのみ発現量が変化した (図 1).これは,普通食を摂取している場合に,Sirt1 による Acetyl-FoxO1 の脱アセチル化が運動により亢進することを 示し,さらに,非運動の場合,普通食に比べ高脂肪食で Sirt1 による働きが亢進することを示している.発現量や活性に変 化がなかったにも関わらず,Sirt1 の働きが亢進したことか ら,Sirt1 の活性化に必要な NAD

+

や,NAD

+

の生成に関わるニ コチンアミドや NAMPT 等といった物質が,運動や高脂肪食摂 取により調節を受けていると示唆される.

また,FoxO1 は視床下部において摂食促進の効果を持つが,

各群の摂取エネルギー量に有意な差はなく,本実験からは,

運動が視床下部の Sirt1 を介し摂食量の調節に関わる,との 知見は得られなかった.

一方,表 1 より,高脂肪食+週 1 日運動群を除いて,視床下 部 Sirt1 の発現量が多いほど,内臓脂肪量が減少する強い傾 向が見られた.内臓脂肪は,交感神経の活動亢進により減少 すると知られていることから,視床下部 Sirt1 の発現量によ り,内臓脂肪量が調節される可能性が示唆された.また,表 1 から, 高脂肪食摂取は, 運動を介した場合に, 視床下部 Sirt1 の内臓脂肪量調節機能を消失させるとも考えられるが,これ は推測の域を出ず,今後の検討課題とした.

【結論】

視床下部に発現する Sirt1 は, 週 1 日の自発運動で Acetyl- FoxO1 の脱アセチル化を促進し,さらに,Sirt1 の発現量は,

内臓脂肪量の調節に関与することがそれぞれ示唆された.

図 1.視床下部での Acetyl-FoxO1 発現量.

#

P<0.05 v.s 普 通食(非運動)群 ,

**

P<0.01 v.s 普通食(非運動)群.

表 1.視床下部 Sirt1 発現量と内臓脂肪量の相関(

*

P<0.05).

非運動 運動(週 1 日) 普通食群 -0.76

*

-0.83

*

高脂肪食群 -0.73

*

0.32

P-17

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