長崎 大学留 学生 セ ンター紀 要 第
1 0
号2002
年中国人学生 を対象 とす る漢字教育
‑ 漢字 の何 を教 えるか ‑
41
藤山 智子
キー ワー ド :中国人学生、漢字教育、字形の違 い、音読み、語嚢教育
1 .は じめ に
漢字圏の学生に漢字教育 を行 っている 日本語教育機関はあま り多 くないようだ。
しか し日本 の漢字 は字形 も読み も日本独 自の ものであ り、 た とえ漢字 圏であっ て も正 しく書 き、読むための教育が必要なのではないだろうか。
特 に中国人学生は書 くことにも読む ことにも問題が多 い。 日本語 を書 くとき にも簡体字 を使 った り、漢字、特 に字音語 を読む ときに中国語 の発音 の影響 を 引きず った りす る。大河 内( 1997) は中国人が 日本語で 日中同形語 1 )を使用す る 際の誤用 に関 して 「 字音語 にお いて中国人は外国語 としての 日本語への注意が 甘 くなる」 と述べて いるが、漢字 を読む、字形その ものを書 くとい うことに関 して も同 じことが言 えると思 う。 つ ま り、漢字である ということに安心 し、何 とな く意味が分か るか らと字形の違 いや、読み に注意 を払わない とい うことで ある。 しか し言葉は理解す るだけでな く、 自ら発信 しなければ な らない。 自分 白身は漢字で意味が分か って いる として も、相手 に分か る字形で書 き、正 しい 読みで発音 しなければ言 いた い ことは伝わ らない。 この場合 の読み とは書かれ た ものを読む場合だけでな く、頭 の中にある漢字 のイ メー ジを会話で発音す る 場合にも当てはまる。
筆者は長崎総合科学大学 の別科 日本語研修課程で中国人学生対象の漢字 クラ ス を担 当 しているが、そ こでは上のよ うな理 由で正確 に書 き、読む ことを目標 にしている。
本稿では、 中国人学生 に漢字 を教える際 にどんな字形 に注意 を払 うべ きか、
読み については どんな ことを教え られるのか ということを中心 に述べてみたい。
4 2 中国人学生 を対象 とす る漢字教育
2. 字形の教育
2‑ 1 日中の字形の違 い
目本 の漢字 と中国の漢字で字形が違 うものは い くつあるのだ ろ うか0 『中国 人のための漢字 の読み方ハ ン ドブ ック』 に掲載 されている漢字2 , 674 字 ( 常用漢 字 1, 945 字、人名漢字 123 字、常用漢字以外 の漢字 606 字) を調べてみると国字 を含 めて 1 , 018 字が違 って いる (日本の旧字体 を含む)。残 りの 1 , 656 字は全 く 同 じ字形である。
日中字形の違 いの程度 は非常 に小 さいものか ら全 く違 うと感 じるものまで様々 であるが、大き く四つに分け られる。以下はその例である。
A : 違 いが非常 に小さいもの ( ) 内は 日本の漢字 増 ( 増) 圧 ( 圧) 骨 ( 骨) 涼 ( 涼) 角 ( 角) 庁 ( 庁) 浅 ( 漢) 友 ( 灰) 画 ( 画) 真 ( 真) 別 ( 別) 臭 ( 臭)
B :違 うが、 どの 日本漢字 に対応す るか推測が容易な もの 扶 ( 秩) 凋 ( 調) 紙 ( 舵) 金 ( 験)
炊 ( 飲) 顔 ( 顔) 卑 ( 鳥) 兄 ( 見) 場 ( 場) 愛 ( 愛) 勢 ( 勢) 陰 ( 隠)
C: どの 日本漢字 に対応す るか推測が難 しいもの 秤 ( 種) 余 ( 衆) 共 ( 顔) 亜 ( 莱) 実 ( 買) 旧 ( 帰) 坐 ( 糸) 沸 ( 払) 牙 ( 開) 沸 ( 請) 遭 ( 進) 娼 ( 婦)
費 ( 辛) 輸 ( 輸) 盟 ( 監) 岡 ( 岡) 泳 ( 氷) 島 ( 島)
辛 ( 豊) 真 ( 売) 塞 ( 復) 床 ( 楽) 寺 ( 専) 枚 ( 権)
D :同 じ漢字はあるが対応す るものが違 うもの
采 ( 揺) 吃 ( 喫) 干 ( 幹) 干 ( 乾) 谷 ( 戟) 里 ( 秦) 娘 ( 嬢) 系 ( 係) 叶 ( 莱) 云 ( 雲) 制 ( 製) 志 ( 誌) 暗 ( 闇) 准 ( 準) 机 ( 機) 据 ( 拠) 筑 ( 築) 升 ( 昇)
A に該当するものは 1 41 字、 B に該 当するもの 419 字、 C に該当するもの 400 字、
D に該当す るもの 42 字である。
長崎 大 学留 学生 セ ン ター紀 要 第
1 0
号2002
年43
2‑2 字形教育の留意点
これ らの 日中で異な る漢字 の 日本 の字形 を、差違 の大小 に関わ らず、 中国人 学生はだいた い認識できて いる
。 2)例 えば 日本語 の 「 楽」 を中国の漢字で どう 書 くのか とい う問いに対 して、正 しく 「 床」 と書 けるのだ。だか ら授業で 「日 本人は このよ うな漢字 は解 らない」 と言 うと、意外だ とい う反応が返 って くる ことが多 い。 これが中国人学生が 日本 と中国の字形の違 いに注意 を払わない理 由の一つだ と考え られ る. したがって、 中国人学生に対する字形教育の第一歩は、
日本人 には理解で きない中国の漢字 を指摘 し、それ らを 日本語で書 くときは必 ず 日本の漢字 を使わなければな らないと伝えることである。
中国人学生は 日本 の漢字が認識できると述べたが、それは 日本 の漢字が書 け る ということではな い。 日中の違 いが大 き くて も小 さ くて も、正 しく書 けるよ うにす るには、それぞれの字形 を並記 して違 いを説明す る必要がある。
また、上の Cに分類 したよ うな 日中で全 く字形が異な り、 中国で著 しく簡略 化 されて いる漢字 には書 き方 の指導が必要な もの もある。 ただ違 いを説明 した だ けでは 日本 の漢字が書 けるよ うにはな らない。例 えば 「 衆」や 「 進」 がそ う である。
2‑3 特 に注意 して指導す る必要があるもの
上の D に例 を挙げた漢字は中国の漢字簡略化 の過程で偏や秀 を省略 した り、
同 じ音 の違 う漢字で代用す るよ うになったために、本来複数 あった漢字が一つ の形に集約 されて しまった ものである。以下 に日中の漢字の対応 を一部例示する。
中国の漢字 日本の漢字 中国の漢字 日本の漢字
采 て こ 二二 芸
干 く ≡ 喜
舎
てこ ここ
系< ≡
A E コ 捨
系 係
繋
4 4
谷
中国人学生 を対象 とす る漢字教育
iiii d
制 て こ こ こ 谷 戟
刺 製
叶
ii i i E 欝
芦岩 ・ 」、 「 ‑ ‥ ‑
葉 叶
誌 志
また次 に挙げ るものは元 々一つの漢字 の正字体 と異字体 だったが、 日本で意 味の違 いによって書 き分 け られ るよ うになった ものである。
中国の漢字 日本の漢字 中国の漢字 日本の漢字
( ) 内は繁体字
机 ( 機)て こ こ
凡 ( 幾)て こ こ 機 机
幾 凡
据 ( 接)て こここ
これ らの中国では使われな くなった字形、例 えば 「 葉」や 「 乾」 を挙げて中 国の漢字ではどう書 くか というテス トをした ところ
3)、受験者 10 名全員が 「 叶」
「 干」 と正 しく回答す る ことがで きた。 中国では簡体字 を採用す る前の字形で 書かれた もの を目にす る機会が多 い らしく、筆者が教えている二十歳 前後 の若 い世代で も字形 の認識 とい う点では問題な い。 しか し書 き分 けるという習慣が ないか らか、書取テス トではよ く間違 える。意 味の違 いを明確 に把握 している か どうか も疑 問である。学生 には意味の違 い と漢字 の違 いを明確 に説明 し、使 い分 けるように指導 しなければな らない。
さ らに次のような漢字 も日本語では複数あるのに対 して中国語では一つである。
日本の字形 と共 に、それぞれの意味の違 いと使 い分 けにつ いて教える必要がある。
長崎 大学留 学生 セ ンター紀 要 第
1
0号20 0 2
年荻てこ こ こ芸
友 て こ ここ
45
3. 漢字の読みの教育 3‑ 1 漢字の読みの特徴
日本語 の漢字 の読みは非常 に複雑で、それが全ての 日本語学習者 を苦 しめて いる ことは言 うまで もな い。伊藤 ( 1989) は 日本語 の読みについて 「 漢字 をい わ ゆる音読み、それ も原則 として一字一昔で まかなっている人々にとっては、
日本 の漢字は異様 に写 るか もしれな い」 と述べ、その複雑 さを次 のよ うにまと めている
。 4)( ∋音読みの外 に訓読みがあること。
② 同 じ漢字が音読みにして も訓読みにして も幾通 りにも読 まれ る。
③常用漢字 1, 945 字 の4, 000 い くつかの音訓 と付表 の語 の読み を全部覚えた と して もなお、字音熟語 は濁音化や促音化
5)が色 々起 こるか ら確信 を持 って 読めないこと。 ( 注は筆者)
④連濁現象が起 こるものと起 こらないものがあること
⑤母音交換が起 こるものと起 こらないものがあること
は た ち
さ らに 「 お母 さん 」 や 「 二十歳」 な どのよ うに漢字本来 の音訓 を離れ、意味 に漢字 を結びつけて和語 を書き表す熟字訓について も触れている。
3‑2 漢字のクラスでできること
このよ うに見 る と基本的 には一つ一つ教 えてい くほか方法がな い。そ こで漢 字 のクラスでは、一つの漢字 を取 り上げた ときそ の漢字 を使 う全ての既習語柔
を例示 し読み方 を整理確認す ることが大切な役割の一つ となる。
しか し、漢字 の読みの中に規則的な ものを兄 いだす ことも可能である。全て
に適用できる規則ではな いが、それ を教 えてお くことは無駄 な ことではない と
思 う。
46 中国人学生 を対 象 とす る漢字教育
3‑2‑1 音訓の使 い分け
音訓 の基本的な読み分 けのルール は漢字一字、 または一つの漢字 とひ らがな の組み合わせでできた語桑は訓読み、複数の漢字の組み合わせの語嚢 ( 漢字熟語) は音読みである。 日本人 には常識的な ことであるが外国人 に このよ うな知識が な いのは当然で ある。 で きるだけ早 い時期 に音読み訓読 み とい う概念 を教え上 のよ うなルール を与える ことによって、多少は 日本語 の漢字 の読み に対す るモ ヤモヤが解消 されるのではないだろうか。
3‑2‑2 訓読みにつ いて
訓読み につ いては規則的な ものは兄 いだせな いが、 中国人学生 に とっては音 読み の語嚢 よ りも易 しい とい う指摘 もある。
6)中国語 とは全 く異な って いるの で外 国語 の単語 として読 み方、意味、使 い方 を理解 し記憶 しなければな らない とい う意識が働 くか らだ。その上、送 りがな によって漢字 の読み を推測す る こ ともできる。書取では難 しい送 りがな も、読みでは有効な手がか りとなる。
3‑2‑3 音読みについて
常用漢字 1 , 945 字 中およそ 250 字が二つ以上の音 を持 っている。数か らいえば そんな に多 くないが、基本的な漢字 に集 中 して いるため重要な教育項 目となる。
一方 中国の漢字 は先 にも述べた とお り、基本的 に一字一昔である。 また、音読 み には訓読みのよ うに読みの手がか りとなる送 りがながな い。そ のため学生は 大変苦労す るよ うである。そ こで、音読みの規則 となる ものはで きるだけた く
さん与えたい。
3‑2‑3‑ 1 意味によって音を使 い分ける漢字
複数 の音 を持 つ漢字 の うち、下 に挙げ るよ うな ものは意味 によって使 う音が 違 う。 これ に関 しては伊藤 ( 1 987) もい くつか例 を挙げているが、 ここではそ れ以外のものを取 り上げ る。
音読み 意味
楽 ガク 音楽 に関す る場合 ラク たの しい、易 しい
器 楽 楽 安
団 楽 楽 快
楽 楽 例 昔 娯
長崎大学留学生 セ ンター紀要 第
1 0
号2 0 0 2
年象 ゾ ウ ショウ
動物 を指す
すがた、かたち、
イ ン ド象 象牙 印象 対象 象徴 しる し、かた どる
(有象無形、象眼な どはゾ ウ と読 むが、例外 としてよいのではな いか。)
月 ガツ ゲツ
中
ジ ュ ウチュウ
歩 ホ ブ
1‑ 12 までの暦 夜空 の月、曜 日
その中の全部
上以外 の全ての意味で
歩 く、 人間社会 の歩み 1%
一 月
正 月 生 年
月 日満 月 月光 月曜 日
年 中 世界 中
中央 中立 中止 中学
歩行 散歩 進歩 歩合
47
3‑ 2‑ 3‑ 2 複 数 の音 を持 つが、 そ の 中の一 つ は使 う場合 が限 られて いる もの
例 えば 「 然」 は 「 ゼ ン」 と 「 ネ ン」 の二 つ の音 を持 つが 「 天 然」 以外 で は全 て 「 ゼ ン」 と読 む。 このよ うな場合 は読 みが限 られ て いる もの を教 え、 それ以 外 は全部 この読 み方 だ と言 うことをは っき りと言 ってお く。 この よ うな ものは かな り多 く読みの負担 を軽 くす るの に有効 な情報で ある
。 7)土 ト
ド
ロ ク コウ
子 ス
シ
気 ケ キ
土地
そ の他全て :国土 土壌 土俗
口 調、異 口同音
そ の他全て :口頭 人 口 経 口
椅子、様子、扇子
そ の他全て :子孫 子息 利子 原子 女子
気配
そ の他全て :気体 天気 気 品 元気 気分
48 中国人学生 を対象 とす る漢字教育
早 サ ッ 早急 早速
ソウ その他全て :早朝 早退 早 々
分 フ ン 分 別、 5 分 ( 時間)
ブ ン その他全て :分解 分離 部分 水 分 自分
ゲ ン
間 ケ ン 世間、眉間、人間
カ ン そ の他全て :中間 時間 民間 間諜
3‑2‑3‑3 形声文字の音読み
形声文字は意味 を表す ( 形)字 と、音 ・読み方 を表す ( 声)字 を二つ合わせ て作 った字で ある。 同 じ勇 を持 った漢字は同 じ音 を持つ場合が多 いので非常 に 有益 な情報で ある。 中国語で ももちろん同 じ寿 を持つ形声文字 は同 じ昔 を持つ ことが多 い。 しか し、 日中共 に例外 が存在 し、その例外 が一致す るわけではな いので、 日本語で同 じ音 になるもの、違 う昔 にな るもの をきちん と教 える必要 がある。下 にその例 を示す。
*は 日本語で音が異なるもの 右 は ピ ンイ ン
8)精 血 g 生 s heng
静 j i ng 牲 s hさng 膏 血 g 姓 Xi ng 清 qi ng 星 Ⅹi ng 請 ql ng *産 c han 晴 qi ng
*情 qi ng
車
S ,a
Jg講 構 溝 購
J'yJ+yl一.yl﹀.yl一.礼義 議 儀 蟻 犠
4 語曇教育 としての側面
漢字 を教える ときにそ の漢字 を使 った語嚢 を提 出す るので、漢字教育 と語柔 教育 は切 り離せないものである。そ して、 中国人学生たちが一番望 んで いる部 分で もある。 なぜ な らば、 日本語 と中国語 には共通す る漢語がた くさんあるが、
意味や使 い方が異なって いるもの も多 く日本語 を学習 して いる中国人学生の大
きな悩み とな って いるか らだ。学生たちはよ く、 日本 の漢字 と中国の漢字はだ
いたい同 じ、で も使 い方 はだ いぶ違 うとい うが、 ここで い う漢字 とはそ のよ う
長崎大学留学生 セ ンター紀 要 第
1
0号2002
年49
な 日中で形の同 じ、 いわゆる 日中同形語 の ことである。 しか し、 このよ うな学 生の要望 にも関わ らず、筆者は漢字 クラス を語柔教育 に偏 った ものにしよ うと は思わない。漢字はそれ を読む人に理解できる形で書 くことができ、正確 に読め、
そ して、正 しく使 える というバ ランスが大切だ と思 うか らだ。学生たちの意識 は言葉の意味がわか る とい うことに集 中 しがちだが、 日常生活でのアウ トプ ッ
トができなければ意味がないのではな いだ ろうか。 したが って、筆者は提 出す る語柔 を、既習の語嚢 と、未習だが教えてお いた方がよいと思われ る読みの語 糞 に限定す る ことに して いる。そ して、提 出 した ものにつ いてはで きるだけ意 味 と使 い方 を確認す る。
漢語は授業 に入 る前 に 日中同形語か どうか、意味は同 じか どうか を調べてお くと指導が しやす い。学生たちは 日中の漢語 に意味の差違がある ことを知 りな が らも、瞬間的 には注意が甘 くなる傾向がある。 こち らが 日中の違 いを知 らな いで学生 に この言葉 は中国語 にもあるか と尋ね る と、 同 じだ と答えるので例文 を作 らせた ら意味がわか らなか った ということも少な くない。未習既習 に関わ らず漢字 クラスの場で このよ うな確認作業 をす る ことはメイ ンテキス トの授業 の フォロー にもなる し、学生に 日本 の漢語 に対 して注意 を払 う習慣 を身につけ させ ることにもなる。
授業で漢字 を提 出 した際 に、それ を使 った漢字熟語 を学生 に挙げ させ るの も 有効 な方法である。 日本 にはな いものや、 あま り使わないものを挙げ る ことが よ くある。それは中国語では一般的な ものである ことが多 いので、 日中の語嚢 の違 いを知るのに大変役立つ。
漢字教育 の場で大量の漢字語桑 を提 出 して読 ませ、括弧埋めの問題 を解かせ た りす る方法があるが、筆者はそのよ うなや り方は中国人学生 には向かな いと 思 っている。漢字 の持つ表意性か ら意味は何 とな くわか るので問題 の数 を こな す ことに集 中 し、正確 な読み方や書 き方、言葉 の使 い方 に対す る注意がお ろそ か になるか らだ。授業では数は少な くて も提出 した語費 を正 しく読み、書 き、
使えるようにすることが大切だ と思 う。
5 おわ Uに
この授業 を通 して得 られ る何 よ りの成果は、学生たちが 日本 と中国の漢字 の
違 いを認識 し、注意深 くなる ことである。毎年受講 生に対 して行 うア ンケー ト
でほぼ 全員の学生が 日本 と中国の漢字 の違 いに触れ、 「 難 しさを実感 した」 と
50 中国人学生 を対 象 とす る漢字教育
か 「 違いが面 白いと思 った」な どの意見 を寄せて くれ る。授業で教え られ る こ とは本 当に少ないが、違 いに対す る認識 と注意深 さが備われば異なった字形 を 見 た ときに、 どこが違 うか に気づき、読みや語嚢 の使 い方 を自分で確認す るよ
うになるのでは と期待 している。
今後の課題 として、本稿で述べた事柄 をよ り効果的に提示す る方法 を考 えて いきたい。 また、今 回字形の違 いは簡体字 との比較 のみ を行 ったが、台湾で使 われている繁体字 とではどうかについて も調べてみたいと思っている。
最後 に、 日本 の漢字 につ いての認識 を調べ るためのテス ト作成 に協 力 して い ただいた長崎大学留学生セ ンターの永井智香子助教授 と、 中国人が 日本の漢字 を習得す るときの問題点 について筆者 の質問に丁寧 に答えて くれた任春江 さん にこの場 を借 りてお礼 を申し上げたい。
注
1 ) 日本 と中国双方で同 じ漢字で表記 され る字音語。例 えば、経済、文化 のよ うな もの。
2) 今年度 のクラス開始 に先立って行 ったテス トの結果 による。 日中で字形の 異なる漢字 30 字 を挙げ、中国の漢字では どう善 くか問 うた。
受験者 1 0 名 うち 日本語末習者 5 名。平均正解率は 80% 以上だった。
3) 同上のテス ト
4) 伊藤芳照 ( 1 989)pp. 1 25 ‑ 1 26
5) 田中真一 ・藤山智子 ・酒井亮子 ( 2002) 『 別科 ・初級漢字』長崎総合科学大 学別科 日本語研修課程 巻末付録で田中が留学生向きの詳 しい説明を施 し ている。
6) 伊藤芳照 ( 1 989 ) な ど 7 )例は 『 大辞林』 を参照
8) ピンイ ンは 『 中国人のための漢字の読み方ハ ン ドブ ック』 によった
参考文献
伊藤芳照 ( 1 989) 「 漢字 の音訓」 『 講座 日本語 と日本語教育第 8 巻 日本語 の 文字 ・表記 ( 上) 』 明治書院 pp.1 25 ‑ 1 58
伊藤芳照 ( 1 988) 「 第 3 章 外国人学習者 に対す る表記 の指導 」 『 文字 ・表
長崎大学留学生 セ ンター紀要 第