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専 攻 名 材 料 科 学 専 攻 氏 名

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Academic year: 2021

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(1)

(様式6号)「課程博士用」

学 位 論 文 の 要 旨

専 攻 名 材 料 科 学 専 攻 氏 名

おお

つかさ

学位論文題目 トリー劣化の抑制に関する研究

(英訳又は和訳

Restraint Effect on Treeing Degradation )

電気絶縁材料は、電力ケーブル、機器絶縁のほかエレクトロニクス分野においても幅広く使用さ れ、様々な要求特性に答えながら発展を遂げてきた。近年、電気エネルギーの効率的利用に対する 要請などから電力機器の高性能化や小型化が推し進められ、従来にもまして過酷な条件で絶縁機器 および材料を使用する機会が多くなっている。様々な高分子電気絶縁材料の中で、エポキシ樹脂は 特に優れた電気絶縁性を有し、幅広い特性改善のために無機充填剤が配合され活用されており、将 来も貢献できる材料である。

また一方、より「安全」で「環境に優しい」材料が求められており、有害ガスを出さないノンハロ ゲン系の無機系難燃剤である金属水酸化物が電線に添加された事例もみられる。金属水酸化物の難 燃化機構は、高温時に脱水・吸熱反応し、周囲から潜熱を奪いその温度を低下させることである。

高分子絶縁体が高電圧下で使用された場合、高分子絶縁材料中にボイドやクラックが存在すると、

電界が集中し局部的な放電が発生し、その結果材料中にトリー(Tree)状の破壊路を生じ寿命が著 しく低下する現象がある。水酸化アルミニウムは代表的な金属水酸化物であるが、絶縁体表面での トラッキング現象などの放電から母材の高分子の劣化を軽減するために多く用いられてきたが、絶 縁体内部で発生する放電現象(トリーイング破壊)に対してその効果を検討した例は報告されてい ない。金属水酸化物が熱エネルギーを吸収するように、放電エネルギーを奪い取れば部分放電の広 がりを抑えられ、絶縁体の耐電圧寿命を延ばすことが可能であり、ひいては機器自体の信頼性も向 上させられる。このような観点から、金属水酸化物の脱水・吸熱反応や吸熱性粒子に着目し、耐電 圧寿命に与える効果を検証することを目的に研究を進めた結果、トリー抑制剤として働くことを確 認した。金属水酸化物としては、① 水酸化マグネシウム ②アルミナ水和物(水酸化アルミニウ ム、ベーマイト)更に、水酸基を有せず脱水反応しない吸熱性粒子としては、③ 炭酸塩(炭酸カ ルシウム、炭酸マグネシウム)を取り上げ、課電後のトリー長計測、耐電圧寿命試験を実施し、

SEM

や電子線回折により、それぞれの吸熱反応を確認した。

以下に順を追って主要な結果をまとめる。

1、水酸化マグネシウム(Mg(OH)

2

)の検討

1) 水酸化マグネシウム充填試料のトリーは、0.2mm 程度から伸びが抑制される傾向を示した。水 酸化マグネシウム

15

重量部(高分子樹脂重量

100

に対する充填剤重量の割合)充填試料は、エポ キシ単独試料よりも大幅に枝分かれが多い特徴が見られた。

2) 印加電圧

15kV~22.5kV

の範囲において、エポキシ単独試料に比べ、15~30 重量部試料は

10

~100 倍程度耐電圧寿命が延びることが確認できた。これは枝分かれの多いトリーの特徴による効

続紙 有□ 無□

(2)

(様式6号-続紙) 「課程博士用」

氏 名

おお

つかさ

果が反映しているが、形状の違う粒子3種類を用いたがいずれの粒子も同じような効果がみられた。

3) トリー中にある水酸化マグネシウムは一部分解や多数の穴が発生するなど、初期状態から大きく 変形していた。電子線回折より酸化マグネシウムが検出され、脱水・吸熱反応は部分放電部(トリ

ー)から

0.2μm

程度のごく表面層で起きていることが確認できた。

2、アルミナ水和物(Al(OH)

3 , AlO(OH))の検討

1) 水酸化アルミニウム

5

重量部試料のトリーは、水酸化マグネシウム充填試料同様に、0.2mm 程 度から伸びが抑制された。水酸化アルミニウム充填試料のトリーは、エポキシ単独試料よりも大幅 に枝分かれが多く、まりもと称されるものであった。

2) 水酸化アルミニウム

15

重量部試料の絶縁寿命は、エポキシ単独試料に比べ、印加電圧

17.5kV

10

倍程度延びることが確認できた。ベーマイトは水酸基を一個しか保持しておらず吸熱量が水 酸化アルミニウムより小さいため、耐電圧寿命が水酸化アルミニウム充填試料よりも短くなったと 考えられる。水酸化アルミニウムの吸熱量は、水酸化マグネシウムとほぼ同じであるが、水酸化ア ルミニウムの方が寿命は短くなった。トリーを抑制する因子としては、金属水酸化物の吸熱量のほ か、吸熱反応温度域も関係することが判った。

3) トリー中にある水酸化アルミニウムは溶融したような丸みを帯びた形状に大きく変化してい た。ベーマイトは、分解温度が水酸化アルミニウムより

200℃以上高いため、変形は少なく一部分

解している状態である。両試料の電子線回折では、酸化アルミニウムに起因する回折像が得られず 非晶質を示す回折像であった。これは形状変化から、水酸化アルミニウムやベーマイトの結晶性が 崩れ非晶質に変化したものと考えられ、吸熱反応の発生が確認できた。脱水・吸熱反応は部分放電 部(トリー)から

0.2μm

程度のごく表面層で起きていることは、水酸化マグネシウムと同様の結 果である。

以上、金属水酸化物の結果から、総合的に考えると、トリー細管内で生じる部分放電のエネルギ ーは金属水酸化物粒子の形態変化を伴う脱水・吸熱反応に消費され、エポキシの劣化が抑えられる 分トリーの伸展が抑えられる。伸展が抑えられている間にさらに枝分かれが生じ、放電エネルぎー が分散することやトリー先端での電界が弱くなり、更にトリーの伸展が遅くなり、エポキシ単独試 料に比べて破壊までの時間が

100

倍程度も延びたものと考えられる。以上のように、金属水酸化物 はトリー劣化抑制剤としての機能を持つことが確認できた。

3、炭酸塩(炭酸カルシウム(CaCO

3

), 炭酸マグネシウム(MgCO

3

), 塩基性炭酸マグネシウム

(4MgCO

3

・Mg(OH)

2

・4H

20)

)の検討

1) 炭酸カルシウム

5

重量部試料および炭酸マグネシウム

1

重部試料のトリーは、エポキシ単独試 料に比べ伸展が抑制された。また、エポキシ単独試料よりも枝分かれが多い特徴が見られた。

2) 印加電圧

17.5kV

において、エポキシ単独試料に比べ、15 重量部試料は

10~100

倍程度耐電圧

寿命が延びることが確認できた。炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムは金属水酸化物に劣らな

い長寿命を示した。

(3)

塩基性炭酸マグネシウムの吸熱量は炭酸マグネシウムより

190J/g

程度小さく、また、吸熱ピー クが二つに分かれ分解温度が低いため、炭酸マグネシウムに比べ寿命が短くなったと考えられる。

充填剤の分解温度は、高温である方がトリー抑制効果は大きいことが考察された。

3) トリー中にある炭酸カルシウムは、一次粒子が繋がったような繊維状にまで、初期状態から大 きく変形していた。この電子線回折では、酸化カルシウムの回折像は得られず、アルミナ水和物と 同様に、炭酸カルシウムの結晶が崩れたためと推察できた。また、トリー中にある炭酸マグネシウ ムおよび塩基性炭酸マグネシウムは、粒子が細かく分解されている状態であった。これらの電子線 回折では、酸化マグネシウムの回折像が得られた。これら炭酸塩の吸熱反応は、金属水酸化物より も分解温度が高い分金属水酸化物よりももっと薄い表面層(0.1μm 以下)で起きていた。炭酸カ ルシウムの分解現象から、トリー内の温度は

600℃以上であることが判明した。

以上のように、水酸基を有せず脱水反応しない吸熱性粒子についても金属水酸化物と同様に吸熱 反応の効果で、トリー伸展を抑え、耐電圧寿命を延ばしたものと考えられる。このように、脱水せ ず吸熱性を示す炭酸塩充填剤においても金属水酸化物に劣らないトリー劣化抑制剤としての機能を 持つことが確認できた。

これまでトリーの抑制効果としては、粒子を貫通しないバリア効果だけが報告されているが、金

属水酸化物のように熱分解し吸熱特性を示す充填剤を用いた場合、充填剤が分解し吸熱する現象も

トリー劣化抑制の一因であることが証明された。

参照

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