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タンザニア農産品生産者価格政策 1969/70年〜1979/80年

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(1)

タンザニアの価格管理の目的は次の三点に求められる。それは、(!)所 得分配の是正、(")流通部門にアフリカ人を参入させ、商業部門の過剰利 潤を防ぐ手段、(#)統一価格の施行、の三点である(1)。統一価格の施行が 1971〜75年の流通部門の構造改革以来行われていること、及び上記(")の目 的で流通部門の改変が行われたことは、すでに前稿で考察済みである。生産 者価格政策が、明示的に価格政策として打ち出されるのは1973〜75年の食糧 危機以来であり、それまで、農産品価格政策は流通組織網改変の副産物とし ての価格設定にすぎなかった。

本稿では、生産者価格政策の影響を、農産品の市場産出高及び外貨獲得能 力、所得分配、並びに農業余剰の農業から非農業産業への移転の三点から検 討する。

タンザニア農産品生産者価格政策 1969/70年〜1979/80年

中 島 章 子

福岡大学経済学部

$ &

(

本稿は筆者が神戸大学へ1981年に提出した同名の修士論文の第三、第四章を加筆 修正したものである。本論の完成にあたっては

Ellen Hanak

女史、末広菜穂子(広 島経済大学)、姚得林(福岡大学大学院生)、福岡印刷に感謝申し上げる。

% ' )

−21−

( 1 )

(2)

第一節 農産品生産者価格の決定とその推移

(1)生産者価格の決定

1972〜75年の流通組織の改革までの生産者価格の決定は、基本的には残差 方式と呼ばれる。即ち、それは政策的に生産者価格を設定するのではなく、

実現した輸出価格、あるいは国内消費向け作物の場合は

NAPB

の倉庫入れ 価格(買入れ価格)から、流通コスト、各流通組織の税金、単位当り輸出税、

各財を取り扱うマーケティングボードや協同組合の方針に応じての安定化資 金や余剰の留保分を控除した残差を生産者に支払うという方法である。この 場合、生産者価格は協同組合と協同組織の流通コスト、及び各々のマーケティ ングボードの買入れ価格の両者に大きく依存する。各協同組合及び協同組織 は、各作物の収穫期に先立って、その流通費用見積りを作成し、協同体コ ミッショナーに提出し、その承認を得る。一方、マーケティングボードの買 入れ価格の決定は多少不明瞭である。輸出作物の場合は、実現した輸出価格 から単位当り流通費用を差し引いたもの、と設定されているにすぎない(2)。 この当時、そのマーケティングボードの買入れ価格が内閣の経済委員会で管 理されていたのは、主食穀物(メイズ・米・小麦)、国内消費向けオイル シード(ピーナッツ・ごま・ひまわり・カスターシード)及びカシューナッ ツと綿であった。これらはすべて最後の綿を除き、NAPBで買入れられてお り、NAPBが各地域の協同組合に支払った価格が、閣議で設定されていたこ とになる(3)

1972〜75年の流通組織改革の直接的原因は73〜74年の食糧危機である。し かし、ウジャマー集村化の促進に伴い協同体は廃止され、運輸費用格差、地 域格差を問わず、全国で同一の生産者価格が支払われることになった。この 改革後の価格決定は以下の通りである。

まず、各農産物の経済レポートが流通開発局(Marketing Development Bu-

−22−

( 2 )

(3)

reau

、以下

MDB

と略す)で準備される。これは、生産費用生産者の収益、

生産趨勢、市場動向、流通費用及び各作物間の相対価格の推移を調査したも のでこの調査に基き、第一次価格原案が作製される。次に農林省において、

各作物オーソリティーの役人も参加し、彼らのコメントも踏まえて、第一次 原案の修正が行われる。この修正案は内閣の経済委員会に提出され、そこで 最終的に決定される(4)

輸出作物の生産者価格決定に関しては、サイザルとコーヒーを除いては、

来期実現するであろう予想輸出価格に基いて、生産者価格が決定されている。

コーヒーとサイザルの場合は、先払い価格と後払い価格があり、前者は輸出 の実現以前で、かつ農林省と作物オーソリティーの修正価格設定以前に支払 われ、後払い価格は、平均輸出価格から輸出税と流通コストを差し引いて支 払われる。即ち、両者に対しては、改革以後も残差方式で支払われているの である(5)。これによって、サイザルとコーヒーの生産者は輸出所得の高い比 率を受け取ることになっているが、同時に、その生産者価格は他の価格に比 べ不安定となっている。

(2)農産品間相対生産者価格の動き

各農産品の生産者価格は次表の通りである。本節で生産者価格を問題とす るのは、農業による外貨獲得と食糧供給という、輸出作物と国内消費向け作 物価格の生産量に対する価格の影響という観点からである。よって、両者の 加重平均価格を作成し、その相対価格の動きを見てみる。

各生産価額で加重平均した輸出作物価格と国内消費向け作物価格とでは 1972/73年まではゆるやかに輸出作物に有利化している。しかし、1973/74年 で、国内消費向け作物価格は輸出作物価格水準まで回復し、以降は国内消費 向け作物価格が輸出作物価格に比べ、継続的に有利化している。1976/77年 には、国内消費向け作物価格の相対価格が下落するが、これは、コーヒーの タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −23−

( 3 )

(4)

表〔301〕主要農産品生産者価格(単位:タンザニアシリング/キロ) 1978〜 1979 1.64 9.05 2.30 4.52 1.10 8.34 0.85 1.20 1.25 4.00 3.30 1.40 1.00 〔註〕購入量に基づく品級別価格の加重平均 〔出所〕Ellis(1980).p.49.AppendixBTable2.

1977〜 1978 1.12 11.30 2.17 4.01 1.10 8.03 0.85 1.20 1.25 4.00 3.00 1.38 1.00

1976〜 1977 1.07 16.50 1.91 4.03 0.70 7.91 0.80 1.00 1.20 2.50 2.50 0.95 0.75

1975〜 1976 1.03 10.80 1.90 4.03 0.65 7.20 0.78 1.00 1.00 2.00 2.50 0.88 0.75

1974〜 1975 1.03 5.60 1.45 4.21 0.55 7.06 0.50 0.65 0.77 1.50 2.00 0.73 0.70

1973〜 1974 0.91 6.29 1.10 2.75 0.55 5.60 0.33 0.57 0.57 1.15 1.60 0.55 0.55

1972〜 1973 0.91 6.04 1.09 2.75 0.48 5.28 0.26 0.56 0.57 1.03 1.20 0.49 0.53

1971〜 1972 0.91 5.26 1.06 2.85 0.48 5.24 0.24 0.52 0.57 1.00 1.13 0.38 0.49

1970〜 1971 0.91 5.05 1.02 2.77 0.46 4.89 0.26 0.58 0.57 0.94 1.01 0.39 0.55

1969〜 1970 0.91 5.00 1.06 3.00 0.46 4.02 0.28 0.52 0.57 0.89 1.00 0.38 0.61

輸出向作物 (生)カシューナッツ (クリーン)コーヒー 綿(シード) 除虫菊(乾花) 茶(緑葉) タバコ(湿葉) 国内消費向作物 メイズ 米 小麦 ピーナッツ ごま ひまわり カスターシード

−24−

( 4 )

(5)

世界的騰貴に伴うコーヒー生産者価格の高騰によるものであり、コーヒー生 産者価格が残差方式で未だ決定されていることの影響である。この短期的変 動を除外すると、政策的には、国内消費向け作物の生産者価格が食糧危機以 来、傾向的に引き上げられていたのである。

次に、各作物毎の生産者価格伸び率を比較してみる。まず、一様に1973/

74年以降の方がタバコ以外のどの作物も価格は大幅に上昇したこと、また、

1973/74年以前では、生産者価格の上昇に各作物毎で大きなばらつきの存在 したこと、1973/74年以後、そのばらつきは縮小したことが判る。国内消費 向け作物内で比較すると、穀物価格に比べオイルシード(ピーナッツ・ご ま・ひまわり・カスターシード)価格の上昇率は、各生産品間で差異が大き いながらも全体として高い。オイルシードの内ではカスターシードが全期間

表〔302〕 輸出作物と国内消費向け作物の加重平均価格とその相対価格

年 次 輸出作物

加重平均価格指数

国内消費向作物② 加重平均価格指数

国内消費向作物加重平均価格指数/③ 輸出作物加重平均価格指数 1969/70 100.0 100.0 1.000 1970/71 101.0 101.6 1.006

1971/72 105.2 98.9 0.940

1972/73 112.0 103.3 0.922 1973/74 116.2 116.4 1.002 1974/75 129.3 158.8 1.228 1975/76 193.4 240.6 1.244 1976/77 260.0 255.0 0.981 1977/78 209.8 281.4 1.341 1978/79 198.0 288.5 1.457

〔註〕①コーヒー・カシューナッツ・除虫菊・タバコ・綿及び茶を総生産額に占める比率で加重 平均した。

②メイズ・米・小麦・ピーナッツ・ごま・ひまわり・カスターシードを総生産額に占める 比率で加重平均した。

③第2列②を第1列①の値で割った。

〔出所〕Ellis (1980) p.52. Appendix Cより算出。

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −25−

( 5 )

(6)

を通じて不利化しており、穀物においては、メイズが小麦・米に比べ大きく 有利化している。輸出作物内では、全期間を通じて価格上昇率が高いのは コーヒーと茶である。タバコは1960年代後半より生産が奨励された事情で、

1973年までの上昇が著しい。除虫菊はサイザルと並んで伝統的輸出作物であ るが、生産縮小が計画されている産品であり、価格上昇率は最も低い。

さらに、生産量への影響としては、各農産品の生産者価格の下での収益性 の比較が必要である。次表は、平均的小農生産を前提として

MDB

が試算し た1976/77年度生産者価格、及び中間投入財価格の下での一人一日の労働投 入量当りの報酬(収益)の比較である。平均的小農生産を前提とすれば、茶 とコーヒー以外は一人一日の労働報酬は4〜7タンザニアシリングに平準化 している(6)。国内消費向け作物は1973/74年以降、輸出作物に対しその相対

表〔303〕 生産者価格の各期間年平均伸び率 期 間

作 物 1969/70〜1973/74 1973/74〜1978/79 1969/70〜1978/79 国内消費向け作物

加重平均価格 3.9 19.9 12.5

メイズ 4.2 20.8 13.1

米 2.3 16.1 9.7

小麦 0.0 17.0 9.1

ピーナッツ 6.6 28.3 18.2

ごま 12.5 15.6 14.2

ひまわり 9.7 20.5 15.6

カスターシード −2.5 12.7 5.6

輸出作物

加重平均価格 3.8 11.2 7.8

コーヒー 5.9 7.5(37.9) 6.8(18.6)

綿 0.9 15.9 9.0

カシューナッツ 0 12.5 6.8

除虫菊 −2.2 10.4 4.7

茶 4.6 14.9 10.2

タバコ 8.6 8.3 8.4

〔註〕( )内は期間末を1976/77として計算した値である。指数計算をした。

〔出所〕表〔301〕、表〔302〕より算出。

−26−

( 6 )

(7)

価格が好転して、その労働報酬が均等化しているのであるから、それ以前の 労働収益率は輸出作物に比べ不利であったことになる。また、この比較から は、コーヒーと茶の生産が他の農産品生産に比べ、著しく収益率が高いこと が理解できる。

第二節 市場産出高への影響

本節では、前節で述べた相対価格の変化が如何に市場産出高に影響を及ぼ したかを検討する。

非常に大雑把な指標ではあるが、国内消費向け作物と輸出作物の其々の生 産高の合計を求めてみる。まず、国内消費向け作物では74〜76年、輸出作物

表〔304〕 1976/77年度生産者価格による一人一日当りの労働報酬

作 物

労働報酬 一人一日当り タンザニアシリング

作 物

労働報酬 一人一日当り タンザニアシリング

国内消費向け穀物 輸出作物

メイズ 5.7 アラビカコーヒー 34.2

米(灌漑なし) 4.0 ロブスタコーヒー 46.3

米(灌漑あり) 7.9 茶 15.8

オイルシード タバコ 6.8

ごま 5.8 カシューナッツ 5.6

ひまわり 5.6 綿 4.8

ピーナッツ 6.3 除草菊 4.2

カスターシード 4.5 自給向け作物

キャッサバ 5.9 ミレット・ソーガム 5.6

〔註〕平均的小農生産で、技術改良のない生産方法を基に算出

〔出所〕Marketing Development Bureau, (1977) Summary Table 3, 4より

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −27−

( 7 )

(8)

表〔305〕主要農作物の市場産出高(単位:メートリックトン) 1978〜 1979 315,725 57,068 49,633 167,530 1,641 22,598 17,137 153,332 61,459 91,873 324,175 220,402 52,224 28,762 2,615 6,564 12,011 1,597 〔出所〕Ellis(1980)AppeudixBTable1.p.48.

1977〜 1978 314,689 68,383 51,888 150,470 2,547 24,264 18,352 169,031 64,306 104,725 319,533 213,128 53,957 35,011 1,448 6,596 7,167 2,226

1976〜 1977 377,000 97,645 48,853 194,012 3,335 14,803 18,352 163,204 58,186 105,018 194,028 129,241 23,278 27,352 417 5,941 5,921 1,887

1975〜 1976 295,474 83,734 55,359 122,928 3,946 10,363 19,144 180,112 52,272 127,840 150,737 91,102 18,344 25,802 510 5,891 6,894 2,194

1974〜 1975 406,232 118,947 52,084 206,490 4,741 9,758 14,212 198,932 56,827 142,105 80,232 24,908 23,603 14,988 509 5,820 7,032 3,372

1973〜 1974 405,722 145,080 42,355 188,417 3,282 8,314 18,274 205,932 50,525 155,407 185,972 73,620 59,702 32,775 1,363 6,641 6,252 5,619

1972〜 1973 423,355 125,523 47,516 225,709 4,016 7,939 12,652 212,708 55,858 156,850 268,899 114,050 73,094 51,258 3,454 7,336 9,464 10,243

1971〜 1972 394,919 125,995 52,426 193,465 4,276 5,688 13,069 231,158 50,054 181,104 199,270 42,987 68,585 57,100 3,295 8,170 6,199 12,934

1970〜 1971 401,761 112,459 46,776 223,835 2,731 3,989 11,971 242,265 40,085 202,180 352,051 184,996 93,495 42,868 3,133 5,385 7,770 14,404

1969〜 1970 378,633 110,342 44,586 205,765 2,416 3,480 12,044 246,585 37,282 209,303 157,633 54,081 59,789 20,950 3,464 7,499 5,822 6,028

小農輸出作物 (生)カシューナッツ (クリーン)コーヒー 綿(シード) 除虫菊(乾花) 茶(緑葉) タバコ(湿葉) エステート輸出作物 エステート茶(緑葉) サイザル 国内消費向作物 メイズ 米 小麦 ピーナッツ ごま ひまわり カスターシード

−28−

( 8 )

(9)

では75〜76年の期間は市場産出高が減少したことが判る。国内消費向け作物 の市場産出高はその変動が大きいが、73〜74年までは変動を繰り返し、翌二 年間は減少し、1976年以降の三年間はその成長が大きかったことが伺える。

1976/77年には1969/70年のレベルを回復しているが、1970/71年のピーク時 の水準には1976年以降は達していない。一方の輸出作物であるが、こちらは ゆるやかな成長を1974/75年までは遂げていたのが、75/76年には生産量の減 少があり、1976/77年度は輸出作物の生産量は比較的回復するが、再び綿生 産の低迷に伴い、生産高は縮小する。これは、1974〜76年の食糧危機を経て、

輸出作物生産から国内消費向け食糧生産へ生産が大きく転換したことを意味 する。

(1)輸出作物

さて、輸出作物は、大きくは小農生産作物とエステート作物に分けられる。

表〔306〕 国内消費向と、輸出作物の市場産出高 年 次

国内消費向作物 市場産出高

合計①

小農輸出作物 市場産出高

合計②

国内消費向 作物左記指数

小農輸出作物 左記指数 1969/70 157.6 378.6 100 100 1970/71 352.1 401.8 223.4 106.1 1971/72 199.3 394.9 126.5 104.3 1972/73 268.9 423.4 170.6 111.8 1973/74 186.0 405.7 118.0 107.2 1974/75 80.2 406.2 50.9 107.3 1975/76 150.7 295.5 95.6 78.1 1976/77 194.0 377.0 123.1 99.6 1977/78 319.5 314.7 202.7 83.1 1978/79 324.2 315.7 205.7 83.4 1969/70〜1978/79

平均年成長率 7.4% −1.8%

〔註〕①メイズ・小麦・米・ひまわり・ごま・ピーナッツ

②全コーヒー、全タバコ、小農生産の茶、綿シード、カシューナッツ、除虫菊

〔出所〕表〔305〕より算出。

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −29−

( 9 )

(10)

前者には、小農コーヒー、原綿、カシューナッツ、茶、タバコ、除虫菊が含 まれ、後者には、サイザル、エステート茶、エステートタバコ、エステート コーヒーが含まれる。最後の二産品を小農生産のタバコ・コーヒー生産高と 区別した資料がないため、全タバコ、コーヒーを小農作物とし、両者の推移 を見てみたのが次表である。

この表から、小農輸出作物に比べエステート輸出作物生産はすべて減少し たと理解するのは誤りである。なぜならば、エステート作物のマイナス成長 はサルザイの市況悪化に対する生産縮小のためであり、実際、エステート茶 の市場産出高は正の成長率を示しているのである。さらに、タバコ・コーヒー 生産におけるエステート生産は小農生産に含まれており、本論では言及しな いが、エステートによる砂糖生産も近年増加しつつある。

さて、小農輸出作物生産であるが、各作物毎の平均年成長率を比べると、

生産量が増加しているのは茶とタバコ、及びコーヒーである。一方、除虫菊、

カシューナッツ、綿(シード)はその生産が減少していることが判る。綿と カシューナッツの市場産出高の数量が多いので、その減少が小農輸出作物市 場産出高全体の減少を招いているのである。このような市場産出高の動きの 内、カシューナッツと除虫菊の生産が減少するのは、その生産者価格の上昇

表〔307〕 輸出作物の市場産出高

(単位:千トン、%)

エステート作物 小農輸出作物 全輸出作物 1969/70〜1971/72

平均市場産出高 240 392 632

1976/77〜1978/79

平均市場産出高 162 336 498

平均年成長率 −3.9% −1.5% −2.4%

〔註〕エステート作物には、サイザルとエステート生産の茶を含む

小農輸出作物には、全コーヒー、全タバコ、小農生産の茶、原綿、カシューナッ ツ、除虫菊が含まれる。

〔出所〕Ellis (1980) p.13より算出。

−30−

( 10 )

(11)

率が輸出作物平均の7.8%を下廻ることに由来する価格への反応と、カシュー ナッツと除虫菊生産には主なる生産拡大へ向けての政策的介入のなかったこ と、カシューナッツ生産地でのウジャマー化の急進展等で説明しうると思わ れる(表303を参照のこと)。

コーヒーは前述の残差方式で生産者価格が設定されており、それが他の産 品に比べて価格変動の原因となっている。コーヒー価格が1976年に騰貴した ことにより、当該年の生産者価格はそれ以前よりも高く、18.6は1976/77年 までの7年平均価格成長率、6.8は1978/79年までの平均価格成長率である。

生産者は1976年の価格高騰を短期的な現象ととらえ、むしろ、低めの6.8%

をその価格成長率ととらえていたとするならば、生産量成長率の0.5%とい う数値は、収益率が高いために生産を縮小はさせなかったが、将来の価格動 向を低めに想定し、生産拡大を図らなかったと考えられよう。ちなみに、70 年代のコーヒー生産はエステート生産が縮小し、コーヒー拡大計画に基き、

ルブマ州等での新規生産が始まる他は、各州の小農生産量はほぼ不変であ る(8)

茶とタバコに関しては、この両産品には拡大政策がとられていたこと、輸 出作物の内では高い生産者価格の伸び率を与えられていたこと、茶の収益率 の高さ等が生産量増大の要因である。綿生産の低迷の原因は、その価格上昇

表〔308〕 小農輸出作物の市場産出高

(単位:千トン、%)

コーヒー 綿 茶 タバコ カシュー

ナッツ 除虫菊 1969/70〜1971/72

平均市場産出高 48.0 207.7 4.3 12.3 116.0 3.0 1976/77〜1978/79

平均市場産出高 50.3 170.7 20.7 17.3 74.3 2.7 平均年成長率 0.5% −1.9% 17.0% 3.5% −4.4% −1.2%

〔出所〕表〔305〕より算出。

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −31−

( 11 )

(12)

率が10年間平均で9.0%と高いにもかかわらず、その収益性が一人当り4.8タ ンザニアシリングと低く、綿生産地域はメイズ及びソーガムの生産地域でも あり、後者の収益性が綿生産のそれを上回るので、それとの競合が生産の低 迷を招いたと考えられる。ただし、ウジャマー化の進展やマーケティングボー ドやオーソリティーの生産管理方針等も検討されねばならない。

(2)国内消費向け作物

まず、国内消費向け作物は主食穀物と国内向けオイルシードに大別される。

その市場産出高の推移は次表の通りであり、穀物の生産増がオイルシードの 生産減少を相殺していたことが分かる。

さて、穀物生産についてであるが、その市場産出高推移を各産品毎に見て みると、穀物生産の増加といっても、それはメイズの市場産出高増が他の小 麦・米の産出減を相殺していたのであり、すべての穀物生産が回復したので はないことが判る。この三産品の成長趨勢の相違と価格動向との関連である が、各産品の平均価格伸び率は、メイズ、小麦、米の順にそれぞれ13.1%、

9.1%、9.7%であり、確かに小麦、米の価格動向は、国内消費向け作物の加 重平均価格の伸び率12.5%にも及ばない。輸出作物市場産出高の増減と比べ

表〔309〕 国内消費向作物の市場産出高(9)

(単位:千トン、%)

穀 物 オイルシード 総国内消費向作物 1969/70〜1971/72

平均市場産出高 208.3 28.0 236.3 1976/77〜1978/79

平均市場産出高 261.1 18.1 279.2 年平均成長率 2.2% −4.3% 1.6%

〔註〕穀物はメイズ、小麦、米。オイルシードは、ごま、ひまわり、ピーナッツ、カス ターシード。

〔出所〕Ellis (1980) p.13第4表より算出。

−32−

( 12 )

(13)

ると、価格上昇率が其々10.2%、8.4%、7.8%である茶、タバコ、コーヒー のみが市場産出高が増加し、他の産品は減少していることを考え合わせると、

他に特別な政策介入がない限り、7〜9%が産出増減の分岐点となっていた と言い得よう。

以上の穀物の市場産出増が生産量の増減を伴っているのかを考慮しておこ う。メイズの市場産出高の増加率(7.1%)はその生産量の増加率(4.3%)

表〔310〕 穀物の市場産出高

(単位:千トン、%)

メイズ 小 麦 米

1969/70〜1971/72

平均市場産出高 94 40 74

1976/77〜1978/79

平均市場産出高 184 30 43

1969/70〜1978/79

期間の平均年成長率 7.1% −2.8% −5.3%

1976/78〜1978/79

平均市場産出高 217 32 53

1969/70〜1978/79 上記平均に基く

平均年成長率

8.7% −2.3% −3.3%

〔出所〕表〔305〕より算出。

表〔311〕 穀物の生産高

(単位:千トン、%)

メイズ 小麦 米

1969〜1971

平均生産高 633.7 61.3 170.3 1977〜1979

平均生産高 967.7 60.7 218.0 平均年成長率 4.3% −0.1% 2.5%

〔出所〕FAO, Production Yearbook各年

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −33−

( 13 )

(14)

より大きい。小麦はほとんど生産量が変化しないにもかかわらず、市場産出 高はマイナス成長(−2.8%)であり、米は生産は増加している(2.5%)に もかかわらず、市場産出高は減じている(−5.8%)のである。このことは、

メイズにおいては生産高に占める市場産出高の比率が上昇し、他の小麦、米 においては逆に低下したことを示唆する。

FAO

の生産統計と

MDB

の市場産 出高統計を比較すると、この事実はメイズと米の場合は特に顕著に確認でき る。

食糧危機の前後より、従来自家消費向けに生産されており、自給作物で あったキャッサバ、ソーガム及びミレットの買付けが開始され、その市場産 出高は高い成長を遂げている(10)。しかし、これらの産品に関してもその生 産量成長率はそれぞれ平均で3.3%、6.7%、2.1%にとどまる(11)。即ち、こ れらの産品についても、自家消費分あるいは農家内在庫量の市場販売化とい う傾向を伴っていたのである。

生産統計からは、穀物と自給作物(キャッサバ、ソーガム、ミレット)と もにゆるやかな生産の増加があり、食糧危機以降農業生産が回復したことが

表〔312〕 穀物の市場産出高の生産高に対する比率

年次 メイズ 米 小 麦

1969 10.1 44.1 53.8 1970 28.3 51.1 70.5 1971 6.0 35.7 67.9 1972 13.2 42.7 52.0 1973 12.3 29.4 42.3 1974 14.1 14.9 38.5 1975 11.0 12.0 56.5 1976 14.4 13.4 46.6 1977 22.0 20.8 63.6 1978 24.4 26.0 44.6

〔註〕市場産出高の1969/70年度と、1969年度の生産高との比率 を求めた。

〔出所〕表〔305〕及びFAO, Production Yearbook各年より算出。

−34−

( 14 )

(15)

判る。一方、市場生産出高では、メイズや従来の自給作物がその生産増加を 上廻る増加を示しており、これがメイズや自給作物の自家消費あるいは農家 内在庫を減じ、一方で小麦と米という従来の換金作物の自家消費が増加する という農家の生産物処分の構造変化を生み出している。従来の自給作物が市 場に販売されている現状は、非農業雇用労働力への食糧供給確保という面か らは評価できても、農村部での在庫減は、食糧不足という事態の発生に対し ては農村部での飢饉を招く可能性があると警告を発する論者もいる(12)

オイルシードの市場産出高は、ひまわりを除いてすべて減少している。こ の内カスターシードの市場産出高減は、その価格伸び率が1969〜79年の全期 間平均で5.1%と低いことで説明しうる。ところが、他の作物は高い価格の 引き上げがなされており、またその収益率も他の産品に比べ劣るということ もなく、その生産減少は価格動向からだけでは説明できない。

(3)外貨獲得と食糧供給という観点からの評価

食糧供給の面からであるが、まず、国内消費向けの穀物生産増との関連で とらえれば、その増加が人口成長率(3.4%)、被雇用者数成長率(1966〜77 年平均3.5%)(13)を上廻るのはメイズとソーガムだけである。確かに、メイ ズはその生産量が大きく他の穀物生産不振を相殺しているが、小麦の生産減

表〔313〕 オイルシードの市場産出高

(単位:トン、%)

ピーナッツ ごま ひまわり カスターシード

1969/70〜1971/72

平均市場産出高 3,297 7,018 6,573 11,122 1976/77〜1978/79

平均市場産出高 1,493 6,367 8,363 1,903 平均年成長率 −7.6% −1.0% +2.4% −16.2%

〔出所〕表〔305〕より算出。

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −35−

( 15 )

(16)

(−0. 1%)など、今後その増大が検討されねばならない。一方、市場産出高 はメイズ、小麦、米の合計の平均成長率が2. 2%と、これも人口成長率ある いは被雇用者数成長率には及ばない。都市人口増加率が近年被雇用者数増加 率を上廻っていること

(14)

を考えると、小麦・米をも重視したさらなる生産 拡大が必要であろう。オイルシードに関しては、価格インセンティブが与え られているにもかかわらずその生産高・市場産出高ともに低迷を続けている。

低迷原因の検討とともに、これらの産品の生産増も必要な課題である。

さて、一方の外貨獲得能力であるが、輸出作物の生産・市場産出高不振は その輸出能力減少を招いている。農産物一次産品輸出推移を輸出量と輸出価 額別に検討すると、輸出数量が増大しているのはクローブ、茶及びタバコの みである。輸出価額は1978年のクローブ以外は価格の上昇に伴われており、

表〔314〕 輸出作物による輸出数量と輸出価額

輸出数量 (単位:千トン)

1973 1974 1975 1976 1977 1978

コーヒー 60 41 55 58 47 51

綿 61 50 40 58 40 47

サイザル 142 120 117 126 109 106

カシューナッツ 114 118 102 72 79 48

クローブ 11 4 7 7 6 12

タバコ 7 12 9 16 12 11

茶 9 10 10 12 12 15

輸出価額 (単位:百万タンザニアシリング)

1973 1974 1975 1976 1977 1978 コーヒー 495 375 489 1,288 1,857 1,303

綿 342 495 312 636 541 420

サイザル 285 609 390 346 351 333

カシューナッツ 174 243 221 207 273 229

クローブ 233 88 321 261 244 60

タバコ 68 133 124 266 216 233

茶 54 69 81 135 178 168

合計 1,651 2,012 1,938 3,139 3,660 2,746

〔出所〕Marketing Development Bureau ; (1979) p.1225より

−36−

( 16 )

(17)

特に茶、タバコの輸出価額増大は顕著である。輸出価額が、1978年を除いて 増加傾向を示しているのは、1976、77年の価格高騰によるコーヒー輸出価額 増に依るものである。即ち、この過去5年間の輸出所得の増大はコーヒーブー ムに支えられ、専ら価格上昇に支えられていたのである。しかし、この期間 は輸入品価格も著しく増大しており、外貨獲得能力自体は輸出作物生産の低 迷により、相対的には低下してしまっているのである。

第三節 所得分配への影響

(1)所得格差の存在

1969年の家計調査によると、タンザニアの家計を農村と都市に二分した場 合、その家計数は、前者が全所帯の94.4%、後者が5.6%を占める。ところ が、所得は前者が総所得の78.1%を占めるにすぎず、後者が21.9%を占め る(15)。家計調査によると、家計当り所得額で比較すると都市家計は農村家 計に比べ平均6.1倍の所得を獲得しており、一方、一人当り所得額では6.78 倍の格差が存在した(16)

一方、農業と非農業の区分に従い、就業人口と

GDP

を比較すると、総経 済活動人口の92%を占める農業は粗付加価値の41.3%を(17)を占めるにすぎ

表〔315〕 1969年における農村地域と都市との所得格差

(単位:タンザニアシリング)

地域 項目

タンザニア

全土 農 村 都 市

一人当り所得額 231 175 1,187 一家計当り所得額 1,271 982 6,036 一家計当り消費額 1,947 1,700(a) 6,108(a)

〔註〕(a)実物消費を含む

〔出所〕Tanzania, United Republic of, (1972),1969 Household Budget Surveyp.26 6.1

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −37−

( 17 )

(18)

ず、経済活動人口一人当りで、非農業部門は農業の13.6倍の付加価値を生み 出している。農業における付加価値はそのほとんどが農民の所得に帰属する と考えられるが、非農業部門ではその付加価値の中に利子支払いや利潤を含 むので、この比率がそのまま農業と非農業の所得格差を表わすものではない が、その格差の一端を表わすものとは考えられる。

さて、このような所得格差の存在に対する所得政策としては、①農産品生 産者価格の管理、②消費者物価の管理、③貸金・給与の管理、④課税・再分 配政策が挙げられる。フアンはその論文の中で、生産者価格は農村(農業)

に不利・悪化しているが、しかし、租税体系は都市に重い負担を強いており、

所得分配状況を示すジニ係数は課税前の0.431から課税後は0.377へ改善した ことを示している(18)。所得分配を考察する場合、租税と再分配政策も併せ て考察されねばならないであろう。しかし、本節では①、②の所得への影響 をのみ考察する。

(2)消費者物価の動き

工業品物価に対しては、1973年に物価令(

Prices Act

)が定められ、国家 物価委員会(National Price Commission)が設立され、必要とあれば流通の あらゆる段階において、財の販売に伴う最高物価を指定することが可能と なった。統制品とは、財及びサービスの内、1974年3月時点で、国内生産品 の602品目及び輸入品の464種に及ぶ。このような工業品の統制の目的は、国 内産業の競争促進、効率的生産に基づく規模拡大、秩序ある国内交易の発展 政府の経営並びに開発予算への資金供給、及び所得の公平が挙げられている。

その第一目的が国内産業や公営企業の超過利潤の抑制にあるため、価格統制 は輸入資本財や中間投入財には比較的及んではおらず、比較的最終消費財の 価格管理を行っている(19)。消費者物価はすべて統制・管理されている訳で はないので以下の消費者物価指数の動きは必ずしも政策的帰結とは考えられ

−38−

( 18 )

(19)

ないことをまず断っておく。

さて、消費財を12品目に分類した各分類毎の物価動向を1970年より表わし たのが表〔316〕である。同表より、農村では殆んど消費項目に含まれない 地代や家賃、あるいは低所得者層ほど消費比率の小さい保険医療費、洗濯、

家庭内サービスといった品目の価格上昇率が低いことが伺える。一方で、食 糧、衣料という低所得者層の消費比率の高い財の物価上昇率は高い。このこ とは、所得者層により物価上昇率が異なり、それがより低所得者層ほど不利 となっている可能性を示す。家計調査より各所得階層別の消費構成を求め、

農村と都市別の、各所得階層別の消費者物指数を求めてみた。

物価上昇が著しくなるのは、まず1974年以降である。農村平均の物価上昇 率は平均で年率13.5%であり、一般物価上昇率の12.1%を上廻る。農村の物 価上昇率が一般物価上昇率を上廻り始めるのは1974年以降である。都市平均 の物価上昇率は12.0%であり、また、その毎年の物価指数もほぼ一般物価指 数に近い。即ち、農村平均と都市平均の物価上昇率は、農村にとってその上 昇がより大幅であり、両者に格差が生じ始めるのは1974年以降である。

次に、所得階層別には農村・都市ともに、1973年までは所得水準による傾 向的な差異は生じていない。ところが、1974年以降は農村では年支出が 8.000〜9.999と24.999タンザニアシリング以上の階層を除いて、都市部では 6.000〜24.999タンザニアシリングの階層を除くと、いずれも所得が上昇す るに従ってその物価指数は低くなる傾向を有する(20)。都市では最も所得の 低い0−999の支出階層が最も高い物価上昇に直面している。

以上の物価指数の動きは、1973年以降の工業品価格管理が都市と農村間及 び各所得階層間の所得格差を是正するという所得政策の観点からは、効を奏 していないことを意味する。

食料品の価格の上昇が顕しいのが特徴であるが1974年以降の消費者物価の 上昇には複数の原因が考えられる。供給側の要因としては、オイルショック タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −39−

( 19 )

(20)

表〔316〕一般物価指数ならびに消費財グループ毎の物価指数(Baso:1970=100) PeriodGeneral Index GROUPINDICES FoodDrinks and TobaccoRentsFuel, Light, &Water

Clothing &Foot ware Furniture & Utensils

House- hold Opera- tions

Personal Care& Health Recrea- tion& Entertain- ments

Trans- portationEducationMiscella- neous NumberofItems186485163427171781571 Weights10047.07.38.66.610.82.83.54.51.66.40.80.1 1970100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0 1971104.7105.7101.4103.9103.8104.6104.1100.6101.1110.4108.3100.0105.0 1972112.7115.3102.9103.9104.5116.2111.6110.8111.7120.8122.4100.0105.0 1973124.5128.7115.8104.9117.6132.5126.4122.4119.6128.3135.5100.0105.0 1974148.4173.7140.236.4115.4147.4163.6123.0142.4144.7184.299.8104.4 1975187.7226.9174.537.6156.3175.7209.1148.9137.1180.5220.699.6104.3 1976200.6251.4188.538.2172.1212.0269.5195.9141.1231.3258.199.8104.3 1977223.8257.8200.238.8231.9231.6281.9178.6142.0243.3283.199.8104.3 1978249.3297.5223.941.5244.6258.6301.0190.4154.6256.7298.899.8104.3 〔出所〕BankofTanzania,(1979)27(a)p.87

−40−

( 20 )

(21)

表〔317〕支出階層別消費者物価指数 (1)農村

支出 階層

年次0−9991000−19992000−39994000−59996000−79998000−999910000− 2499924999以上農村平均 1970100.00100.00100.00100.00100.00100.00100.00100.00100.00 1971104.92104.97104.58104.64104.88105.09105.24105.18104.88 1972113.41113.51113.15113.40113.71114.31114.15114.68113.47 1973126.78126.86126.37126.55126.94127.91126.63128.49126.76 1974161.67161.21159.80160.79159.89164.01159.58165.27160.95 1975207.48206.16202.94204.36202.32208.78201.43206.87205.21 1976232.15231.37228.30230.28229.15235.44228.51245.01230.62 1977244.54243.59240.04241.59240.34247.34239.82260.33242.66 1978277.55276.05271.55273.14271.20279.82269.10283.69274.68 (2)都市

支出 階層

年次0−9991000−19992000−39994000−59996000−79998000−999910000− 2499924999以上都市平均 1970100.00100.00100.00100.00100.00100.00100.00100.00100.00 1971104.54104.61104.77101.44104.65104.46104.68104.87104.55 1972112.24112.54112.66108.99112.59111.88112.11113.28112.31 1973125.20124.87125.01121.14124.88123.84123.53125.29124.29 1974155.81152.67150.96147.33151.68144.73142.38148.76147.67 1975199.30193.74190.95185.86190.57182.03177.62185.97185.46 1976222.13216.77214.18208.88214.48205.54201.60211.63209.25 1977233.80227.95225.52220.19226.42217.59213.51223.73220.94 1978265.09257.53254.50248.01254.20244.04237.57248.87247.62 〔出所〕前表及びTanzania,TheUnitedRepublicof,1969HouseholdBudgetSurveyより算出。

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −41−

( 21 )

(22)

以降の輸入インフレ、食糧輸入による食料価格の高騰、流通機構の改変以降 の物品税・販売税の増額の消費者物価への転嫁等が考えられる。一方、需要 側の要因としては、1974年以降の政府の赤字幅の拡大、その資金調達として の1974年12月より増大の一途を辿る中央銀行の政府債権増が考えられる(21)

(3)農業・非農業間交易条件

第一節で考察した農産品生産者価格の動きと、すでに説明した消費者物価 指数の動きから、両者の相対価格の動きを見てみる。消費者物価指数につい て、以下の考察では前項の農村平均物価指数を用いるのが妥当ではあるが、

1969/70年度の指数が得られないという資料の制約上、代理のエリスが用い ているデフレーターを用いる。このデフレーターは1970〜1978年間の平均上 昇率が12.7%であり筆者の求めた農村平均物価指数よりも0.8%低いので、実 質化した数値は平均的には過大評価になる。一般物価指数(8年平均で上昇率 12.1%)で割るという選択肢もあるが、このデフレーターの選択による問題は

ないと仮定する。農村平均物価指数で割った交易条件はもうすこし悪くなる。

表〔318〕 農作物生産者価格の交易条件の推移 小農輸出作物

加重平均価格の 交易条件

国内消費向作物 加重平均価格の

交易条件

全作物加重 平均価格の 交易条件

デフレーター

1969/70 100.0 100.0 100.0 100.0 1970/71 96.9 97.5 97.0 104.2 1971/72 95.3 89.6 94.6 110.4 1972/73 88.5 81.6 87.5 126.6 1973/74 76.0 76.1 76.1 152.9 1974/75 63.5 78.0 64.5 203.5 1975/76 90.7 112.9 93.2 213.2 1976/77 110.0 107.9 109.7 236.4 1977/78 79.5 106.6 85.4 264.0 1978/79 67.4 98.2 74.5 293.9

〔出所〕表〔302〕及びEllis (1980) p.46 ; p.52

−42−

( 22 )

(23)

農産物価格の消費者物価指数に対する商品交易条件(以後、簡略化し、交 易条件と称する)の動きからは、1974/75年以前と以後とでその動きに変化 があることが判る。まず、1974/75年以前は国内消費向け作物、輸出作物の いずれもその交易条件は傾向的に下落している。それが、1974/75年以降輸 出作物においては1975/76〜1976/77年の二ヶ年はコーヒー輸出価格が高騰し、

それが国内コーヒー生産者価格を引き上げたために、加重平均の輸出作物交 易条件を一時的に改善させている。その後の実質価格の急激な低下は、輸出 作物の価格増加がないままに、消費者物価のみが上昇を続けた結果である。

一方の国内消費向け作物は食糧危機以来高い価格上昇を与えられ、その価 格上昇率は消費者物価上昇率を上廻り、交易条件は有利化する。しかし、消 費者価格が継続的に上昇し続けるのに対し、生産者価格はメイズの市場産出 高の回復とともに1978/79年度はごまとひまわり以外の生産者価格は据え置 かれ、その結果、1978/79年度はその交易条件は一層悪化する。この両者の 動きを反映して、全作物の対デフレーター交易条件は1974/75年までは悪化 の一途を辿り、以後、一時改善し、また不利化する。これらの経緯は、交易 条件の動きを期間毎に区切って示すとより明瞭になろう。

さらに、1969/70〜1974/75年の期間に輸入中間投入財(肥料など)は年率 32.5%、輸入資本財(トラックなど)は年率27.3%で上昇している。即ち輸 出作物生産は、海外部門に対しては大幅に不利化し、その購買力を失ってい るのである(22)

表〔319〕 生産者価格交易条件の各期間パーセント変化

1969/70〜1973/74 1973/74〜1978/79 1969/70〜1978/79

国内消費向け作物 −6.6 5.2 −0.2

輸出作物 −6.6 −2.4 −4.3

全 作 物 −6.6 −0.4 −3.2

〔出所〕表〔318〕

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −43−

( 23 )

(24)

(4)実質農家所得

さて、次には農作物所得の変化を調べる。以下で、実質所得と称している のは所得交易条件のことを指しているが、前項で商品交易条件を交易条件と 称したのと区別するために用いる。輸出作物生産による名目所得は、1976〜

78年のコーヒー価格高騰による短期的増大を経て順調に増加傾向にある。と ころが、実質所得は同変動期を除いては傾向的に減少している。これは、そ の生産量に大幅な増減がなく、一方の価格は実質的に継続的に不利化したた めである。

国内消費向け作物の名目所得実質所得の変化は三期に区分できよう。即ち 1973/74年までの変動を繰り返す時期と、74〜76年の急落期と、それ以後の 所得の回復期である。第一期においては実質価格の引き上げの影響、及びメ イズの市場産出高の増大により、所得はこの期間実質的にも回復している。

生産量のところで気付かれたかと思うが、1969/70年度は国内消費向けの市 場産出高が低く、翌年は本稿の扱う10年間中最も高かった。この1970/71年 の生産のピークがその実質所得の高い原因であり、また実質所得指数が食糧 危機期以外すべて100を超える原因は1969/70年の生産の低水準にある。以上 の両者の合計としての全作物所得は、輸出作物所得が国内消費向け作物所得 に比べ価額的に大きいので、前者の変化をより受けている。これらの実質所 得は、期間毎にその変化を求めてみると、より変化が明瞭となる。

総じては、農作物実質所得は輸出価格という外生的要因で短期的に高騰し た時期以外は傾向的に悪化している。同時に、交易条件(消費者物価に対す る商品交易条件)の操作により、輸出作物所得の減少、国内消費向け作物所 得の増大という所得源の転換が生じている。また、国内消費向け作物の内で は、アルーシャ等を中心とした従来の換金作物の小麦実質所得の低下は著し く、一方でメイズの実質所得が増大している。このことは、前稿で述べたウ ジャマー化や1967年以来の国内資源活用という自力更生(self reliance)路線

−44−

( 24 )

(25)

表〔320〕農作物名目所得及び実質所得の推移 (単位:百万タンザニアシリング、指数) 輸出作物国内消費向作物全作物 名目所得名目所得 指数実質所得 指数名目所得名目所得 指数実質所得 指数名目所得名目所得 指数実質所得 指数 1969/70598.8100.0100.074.6100.0100.0673.4100.0100.0 1970/71635.5106.1101.8146.1195.1187.8781.6116.1111.4 1971/72679.7113.5102.899.8183.7121.1779.5115.7104.8 1972/73729.8121.996.3122.3163.8129.4852.1126.599.9 1973/74721.7120.578.895.7128.2119.3817.4121.479.4 1974/75838.9140.168.859.279.339.0898.1133.465.6 1975/761,078.2180.184.5138.7185.887.11,216.9180.784.8 1976/771,450.2242.2102.5182.4244.4103.41,632.6242.4102.5 1977/781,164.5194.573.7328.2439.7166.61,492.7221.784.0 1978/791,103.9184.462.7336.5450.8153.41,440.4213.972.8 〔出所〕Ellis(1980)p.50,p.51. 〔註〕全作物に含んでいるのは、輸出作物と、メイズ・小麦・米・ピーナッツ・ひまわり・ごま・カスターシードのみ。

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −45−

( 25 )

(26)

の提唱、前稿で述べた協同組織や組合の停止といった経緯に示される従来の 換金作物輸出作物中心の農業から、より国内消費向け生産に力点を置く方向 を示すものと解釈されよう。

(5)非農業部門の所得との比較

農作物所得の他の非農業部門の所得との比較を行うためには、一家計当り、

あるいは一人当りの農作物所得を推定しなければならない。前稿でも述べた 通り、土地の占有面積に格差は存在し、各農家毎の生産規模の差異に基づく 所得格差、及び各地域で生産可能な作物が異なることによる地域所得格差が 農業内にも生じている。一方の非農業部門においては、賃金・給料が政府の 管理下にあるものの、業種間の労働生産性の差異は大きく、個人間所得格差 は農業間のそれを上回ることが予想される。このような個人間所得分配は無 視できないが、各年の所得分配の資料が存在しないため、以下では平均所得 の比較を行う。

エリスの求めた一家計当りの農作物所得をさらに推計して、農業就業者一 人当り総現金所得を求めたのが表〔322〕である。この推計に際しては、農 作物所得は総所得の37%を占め、農家の所得構成が1969年以来変化がなく、

また、就業者一人当り所得は家計所得の65.4%で、一家計当りの経済活動人 表〔321〕 実質所得の期間別パーセント変化 (単位:%)

1969/70〜1973/74 1969/70〜1974/75 1969/70〜1978/79

国内消費向け作物 2.0 −17.2 4.9

輸出作物 −2.7 −7.2 −5.1

全 作 物 −2.5 −8.1 −3.5

〔出所〕表〔320〕

−46−

( 26 )

(27)

口が不変であるという仮定が置かれている(23)

この推計に基づくと、農業就業所得は1969/70年度で法定最低賃金に比べ てその33%、非農業雇用者所得に比べるとその14.8%であったことになり、

これは本節第1項で説明した所得格差に近い。この比率は1977/78年度では 最低賃金の34.1%、平均非農業雇用所得の18.3%と僅かばかり改善する。同 表に従い、農業就業所得から右へ、各所得の成長率は1969/70年度から1977/

78年度までで平均10.9%、10.6%、9.9%、8.1%となっており、若干ではあ るが、名目所得格差は一応縮小していることが分かる。しかし、当然名目所 得の増大とともに名目所得価額の差は拡大しているのであり、また、これら の所得成長率の差は、直面する消費物価指数の上昇率の差異で相殺される部

表〔322〕 農業所得の他の所得との比較 年 次 総農作物

所得①

推定農家 家計数②

一農家 当たり 農作物所得

一就業者 当たり 農業者所得

法定最低 賃金

平均被雇用 者所得

平均非農業 雇用者所得 1969/70 891.8 2,325 384 679 2,040 3,764 4,573 1970/71 1,003.5 2,355 426 753 2,040 3,998 4,771 1971/72 1,004.7 2,386 421 744 2,040 4,048 4,816 1972/73 1,089.6 2,417 451 797 2,880 4,165 4,989 1973/74 1,098.6 2,449 449 793 2,880 4,562 5,179 1974/75 1,371.7 2,481 553 977 4,080 6,638 7,633 1975/76 1,711.0 2,514 681 1,203 4,560 6,855 7,903 1976/77 2,176.4 2,547 854 1,510 4,560 6,913 8,065 1977/78 2,265.2 2,581 878 1,552 4,560 8,017 8,500 1978/79 2,330.2 2,614 891 1,575 n.a. n.a. 8,526

〔単位〕①百万タンザニアシリング ②1,000世帯 その他は年額タンザニアシリング。

〔註〕①総農作物所得は、小農輸出作物所得、国内消費向作物所得自給作物所得にエステート賃 金(エステート作物所得の代理)を加算。

②1972年の1969年の家計調査より農村家計の89.6%が農家と推定。

③一農家当たり農作物所得を2.7倍し、一農家当たり総現金収入を求め、それを0.654で除 して、ひとり当たり総現金収入を求めた。

〔出所〕Ellis (1980) p.30.9表。

Jackson (1979) p.224, p.2483表、第6表。

③の推計の比率はTanzania, The United Republic of (1972) Household Budget Survey p.26.

及びp.30.

タンザニア農産品生産者価格政策1969/70年〜1979/80年(中島) −47−

( 27 )

(28)

分を考え合わせると、その所得分配改善への効果は非常に小さいと考えら れる。

低い生産者価格は農業内所得格差の是正という観点からは望ましいかもし れない。なぜならば、生産規模が異なれば、高い生産者価格の下では農業内 所得格差が拡大し、一方で農業所得は課税が困難であるために、生産者価格 を通じて徴税が行われていると考えられるからである。確かに農業内所得分 配は検討されるべき課題である。タンザニアの場合、地域毎所得格差の方が より著しいと言われており、その是正にはマーケティングボード廃止以来の 統一価格の施行や、相対価格の操作が重要であろう。農業と非農業に所得格 差が存在する時、低い生産者価格水準は非農業部門に対する徴税及びその農 業への再分配を伴って始めて、所得政策として意味を持ち得るのである。両 者の総合的な検討は本稿では取り扱える範囲ではないので、ここでは、低い 生産者価格水準により農業所得が他部門の所得に比べて低いことをのみ指摘 しておく。

一方、表〔322〕の各所得成長率は消費者物価成長率(1970〜1978年平均 の一般物価上昇率12.1%、農業平均物価上昇率13.5%、都市平均物価上昇率 12.0%)をそれぞれ下回る。即ち、どの所得もその実質所得は下落している のである。一方、労働生産性のマクロ的指標として一人当り国内総生産は 1966年から76年までの10年間平均で実質1%成長している。被雇用者数の成 長率は年率3.5%であり、実質国内総生産成長率(4.3%)よりも低い(24)。 利潤分配率の中にはエリスの挙げている公式ルート以外の商取引きに基く所 得の派生なども含まれ(25)、利潤からの消費は見逃されてはならない。しか し、利潤が投資されているならば、資本形成は加速しているはずである。次 節では、生産者価格を資本形成への影響という観点から考察したい。

−48−

( 28 )

参照

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