高齢化が急速に進み、在宅での看取りを含めた地域包括ケアシステムの構築が推進されている。
要 旨
住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしく生きることを支えるためには、高齢者の価値観を尊 重し、生活モデルの視点をもった人材の育成が欠かせない。高齢者看護には、社会資源の活用や、
多職種と連携する力も求められている。
2016 年度、これまで 2 年次後期に履修していた「高齢者とのふれあい実習」を 4 年次前期に 実施した。学生は 3 年次の老年看護学実習で対象の加齢変化をふまえたアセスメント力を習得 できており、看護学実習を 4 年次に履修することで、幅広い視野で高齢者ケアを理解すること ができた。今後の経過をモニタリングする必要はあるが、高齢者を統合的に理解し、高齢者看護 実践に必要な力を習得するためには、学生のレディネス、学習の積み上げと順序性を考慮すると、
3 年次に医療施設で高齢者看護学実習を履修した後、4 年次に高齢者福祉施設での実習を構成す ることは、学習効果を期待できる。
キーワード:老年看護学実習、高齢者福祉施設、看護実践能力
看護学科 4 年次に実施した「高齢者とのふれあい実習」
の取り組み
馬 場 保 子1) 中 島 史 子1) 山 口 智 美1)
Implementation of the 'Interactive Practice with Elderly' as a senior year nursing practicum shifted from the junior year subject
Yasuko Baba
1)Fumiko Nakashima
1)Satomi Yamaguchi
1)1)活水女子大学 看護学部
Ⅰ はじめに
高齢化が進み、平成 27 年度 65 歳以上人 口の割合は前年度の 25.1%から、26.0%と 上昇しており、団塊の世代が後期高齢者とな る 2025 年以降は、医療・介護の需要がさら に増加することが予測されている1)。内閣府 は、高齢社会対策の健康・介護・医療分野と して、介護予防の推進や、地域における包括 的かつ持続的な在宅医療・介護の提供、地域 の支え合いによる生活支援の推進などをあげ ている。急性期を脱した医療の場は病院から 地域へシフトしており、在宅での看取りを含 めた地域包括ケアシステムを支える医療等の
充実が求められている2)3)。平成 26 年度診 療報酬改定において、「地域包括ケア病棟入 院料」4)が新設されるなど、病床の機能分化、
在宅療養に向けた生活支援など医療・福祉の 連携が進んでいる。
高齢社会は、認知症の高齢者の増加・多死 社会をも意味しており、地域と共生し、住み 慣れた地域で人生の最期まで自分らしく生き ることを支えるためには、高齢者の価値観を 尊重し、生活モデルの視点をもった人材の育 成が欠かせない。
また、看護学士力として看護実践には、ケ ア環境とチーム体制整備に関する実践能力、
〈資 料〉
つまり、社会資源の活用や、多職種の機能を 理解して連携する力も求められている5)。
看護師課程の指定規則の教育内容6)によ ると、老年看護学実習は 4 単位 180 時間で ある。本学では 2 年次に 1 単位を高齢者福 祉施設、3 年次に 3 単位を医療施設で実習を 行ってきた。
2 年次に高齢者福祉施設で実習を履修した 学生は、学生の実習の学びとして加齢によっ て様々な場面で日常生活に支障をきたすこと を学ぶことができていた。しかし、履修して いない高齢者の健康障害についてアセスメン トが不十分であったことや、介護保険のしく みや高齢者福祉施設の機能などを既習知識と 結び付けることが難しかった。また、保健医 療福祉チーム間の連携・社会資源活用の理解
などは、充分に目標に到達できていないとい う課題があった。多様な生活の場における高 齢者看護の実践能力を習得することが社会に 求められており、学生のレベルと学習進度を 考慮して「高齢者とのふれあい実習」を 4 年 次に履修するように科目の配置を変更した。
その取り組みについて報告する。
Ⅱ 取り組みの実際 1.対象学生
看護学科 4 年生(旧カリキュラム) 65 名 2.「高齢者とのふれあい実習」を 2 年次か ら 4 年次に変更した経緯
1)老年看護学の科目の構成と概要
老年看護学科目における老年看護学実習の 位置づけを示す(図 1)。
図1 老年看護学科における老年看護学実習の位置づけ 2013 年度以前入学生(旧カリ)
4年生
3年生
2年生
1年生
2014 年度入学生(新カリ)
対象学生のカリキュラム
教養分野・看護学基礎分野の科目 老年看護学概論(1単位 15 時間)
統合看護実習
(緩和ケア・災害看護いずれか+保健医療チーム)
計2単位 90 時間
新カリキュラム
高齢者の健康を支える看護
〈2単位 30 時間〉
(新カリ)
高齢者看護学方法論演習
〈1単位 30 時間〉
(新カリ)高齢者看護学方法論
〈2単位 30 時間〉
(新カリ)
高齢者看護学実習Ⅰ
〈3単位 145 時間〉
(新カリ)高齢者看護学実習Ⅱ
〈1単位 45 時間〉
(新カリ)高齢者看護学方法論
〈1単位 15 時間〉
2014 年度 2015 年度
2014 年度 2016 年度 2017 年度
(新カリ)統合看護学実習 保健医療チーム連携
(高齢者看護系〈2単位 90 時間〉)
2017 年度
老年看護実習
〈3単位 145 時間〉
2015 年度
高齢者とのふれあい実習
〈1単位 45 時間〉
2016 年度
高齢者とのふれあい実習
〈1単位 45 時間〉
2016 年度
~2013 年度
高齢者の健康を支える看護
〈2単位 30 時間〉
健康障害を持つ高齢者の看護
〈1単位 30 時間〉 健康障害を持つ高齢者の看護
〈1単位 30 時間〉
老年看護実習
〈3単位 145 時間〉
2013 年以前の入学生(旧カリキュラム)
は、2 年次前期に「老年看護学概論(1 単位 15 時間)」、2 年次後期に「高齢者の健康を 支える看護(2 単位 30 時間)」を履修した のち、「高齢者とのふれあい実習(1 単位 45 時間)」、さらに 3 年次に「健康障害をもつ 高齢者との看護(1 単位 30 時間)」、「老年 看護学実習(3 単位 145 時間)」を履修して いた。旧カリキュラムの科目では、加齢によ る諸機能の低下に起因する高齢者の心身の変 化や日常生活への影響について学ぶ「高齢者 の健康を支える看護(2 年次後期)」と、高 齢者に生じやすい疾患や症状への援助を学ぶ
「健康障害をもつ高齢者の看護(3 年次前期)」
で講義・演習を組み合わせた授業構成であっ た。
2014 年度入学生から新カリキュラムとな り、老年看護学から高齢者看護学へ科目名 を変更した。新カリキュラムでは、2 年次に 3 単位の講義科目、3 年次前期に 1 単位の演 習科目を配置し、3 年次後期~ 4 年次前期の 実習で実践能力を身につけるように構成して いる。高齢者看護の理解、技術演習、実践と なるよう教授内容と科目の到達目標を整理し た。
2)老年看護学科目における実習の概要 本学では、2 年次後期に介護老人福祉施設 もしくは老人保健施設で、「高齢者とのふれ あい実習」(1 単位 45 時間)を履修した後、
3 年次後期に急性期病院で「老年看護学実習
(3 単位 145 時間)」を行ってきた。
学生は、2 年次に「高齢者とのふれあい実 習」で、初めて認知症の高齢者や施設で生活 している高齢者と出会い、コミュニケーショ ンで戸惑いながらも加齢変化を踏まえながら 対象を理解し、老年観を深める機会となって いた。
3 年次の「老年看護学実習」では、65 歳 以上の入院患者 1 名を受持ち、加齢に伴う 心身の変化と疾病・治療をふまえながら主に 看護過程の展開を行っている。
3)履修年次変更に伴う「高齢者とのふれあ い実習」の実習目的と実習目標の改正
「高齢者とのふれあい実習」の 2 年次と、
4 年次の実習目的と実習目標を表 1 に示し た。( は、4 年次に履修することを意識 して実習目標を修正した部分である)
実習目的は、「高齢期にある対象の身体的・
精神的・社会的特徴を統合して全体像をとら え、加齢や健康障害がもたらす心身への影響 や日常生活への影響を理解し、多様な生活の 場における高齢者看護の実践能力を習得す る。」である。高齢者施設の役割と機能を理 解しつつ、そこで生活する高齢者に対する看 護実践能力の習得を目的としている。
3 年次の急性期病院での実習では、加齢変 化を踏まえて高齢期にある患者の看護実践能 力を習得できるが、対象を地域で生活してい る高齢者としてとらえる視点を学ぶことが難 しい。高齢化が急速に進む中で、高齢者看護 に求められることは、対象の身体的・心理的 特徴をふまえた上で、その人らしさを支える 視点を育てることである。とりわけ認知症ケ アや家族ケアなど、住み慣れた地域で、最期 までその人らしい人生を歩むための援助を理 解し高齢者看護実践能力を高めることが必要 である。そのためには、高齢者の社会的側面 に目を向けること、福祉を含めたチーム医療 を理解することが必要と考えた。そのため、
4 年次に高齢者福祉施設で、家族看護や看取 りを含めた生活支援の在り方について理解を 深めてほしいという思いがあった。
3.4 年次に履修する「高齢者とのふれあい 実習」の内容と実際
1)学生への事前課題
3 年次の老年看護学実習で、すでに身体的 加齢変化について学んでいるため、実習の事 前学習として、高齢者の社会的側面や、社会 資源、高齢者施設の機能について課題を 4 年 次の初めに提示した。事前課題の内容と評価 の視点は、以下のとおりである(表 2)。実 習前に提出させた課題レポートを確認し、不 足している内容にコメントして返却した。実 習終了までに追加修正するよう促した。
表1 「高齢者とのふれあい実習」実習目的と実習目標の改正
改正後(4 年次前期履修 2016 年実施) 改正前(2 年次後期履修 2013 年度まで実施)
〔実習目的〕
高齢期にある対象の身体的・精神的・社会的特徴を統合して 全体像を捉え、加齢や健康障害がもたらす心身への影響や日常 生活への影響を理解し、多様な生活の場における高齢者看護の 実践能力を習得する。
〔実習目標〕
1.高齢者の生活機能を身体的・心理的・社会的側面からアセ スメントできる。
1)加齢や高齢者の健康状態が日常生活に及ぼす影響につい てアセスメントできる。
2)対象の生活環境、一日の生活リズムについて説明でき る。
3)高齢期にある対象の身体的・精神的・社会的特徴を統合 して全体像を捉えることができる。
2.様々な生活の場における高齢者の顕在的・潜在的能力を引 き出す援助方法を理解できる。
1)対象の個別性や生活習慣、価値観を尊重した日常生活援 助が理解できる。
2)高齢者の認知機能に応じたコミュニケーションを図るこ とができる。
3.高齢者に関わる保健・医療・福祉チームにおいて多職種と の望ましい協働のあり方について検討できる。
1)施設の役割と機能を理解し、高齢者を取り巻く環境(生 活環境・家族・社会制度・チームアプローチ)について 理解する。
2)高齢者医療福祉の施策を学修し、施設で生活している高 齢者に活用されている社会資源について説明できる。
3)高齢者に関わる保健・医療・福祉チームにおける看護師 の役割について理解できる。
4.高齢者のQOLの維持・向上を目指した看護について自己の 考えを表現できる。
1)高齢者の生きがい、家族関係、社会生活での役割をふま えて支援のあり方を検討できる。
2)高齢者との関わりや実習体験から高齢者観を表現するこ とができる。
※ は、4年次に履修することを意識して修正した。
〔実習目的〕
高齢期にある対象の身体的・精神的・社会的特徴を統合して 全体像を捉え、加齢や健康障害がもたらす心身への影響や日常 生活への影響を理解し、対象者のQOLの維持・向上のための看 護を実践的に学ぶ。
〔実習目標〕
1.加齢や健康障害がもたらす心身への影響や日常生活への影 響を理解する。
2.健康障害をもつ高齢者を取り巻く環境(家族・社会制度)
について理解する。
3.健康障害をもつ高齢者のQOLの維持・向上を目指した看護 とは何かを考究する
4.老年看護に対する考え方を理解し、自己の老年観を育成す る。
2)4 年次の「高齢者とのふれあい実習」プ ログラム
4 年次の「高齢者とのふれあい実習」実習 プログラムを表 3 に示す。
実習施設は、養護老人ホーム、盲養護老人 ホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健 施設、介護療養型老人保健施設が同じ敷地内 にある。それぞれの施設に学生を 2 ~ 6 名 配置した。施設の役割と機能を理解した上で 実習に臨めるように、実習 1 日目は、学生 は合同でそれぞれの施設のオリエンテーショ ンを受けた後、各施設の見学を行った。
実習 2 日~ 4 日目午前は、各施設で高齢 者の生活機能をアセスメントしながら、職員
と一緒にケアを実践した。
実習 4 日目午後は、実習施設別にグルー プワークと施設の実習指導者も参加し全体討 議をおこなった。実習 5 日目は学内で、ポ スターセッションを行った。
3)実習の実際
実習施設は、これまで 2 年次に履修する「高 齢者とのふれあい実習」を受け入れていた 施設である。今年度より、4 年次に実施する ため、実習施設に学生のレディネスや実習目 的・目標の改正について理解してもらう必要 があった。事前に実習施設の指導者と協議す る場を設け説明を行った。
教員は、学生の自主性を尊重しつつ既習 表2 事前学習内容と評価の視点
geriatric assessment
( 高齢者の総合機能評価 ) 1)老年期の社会的特徴 2)実習施設の役割と機能 3)認知症ケアについて 4)介護保険制度について 5)CGA:Comprehensive
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
老年看護学概論で学習した、老いによる社会的側面の変化、高齢社会の統計的輪郭、
保健医療福祉の動向について復習しているか
実習を行う施設だけでなく、他の施設についても施設基準や役割について学習して いるか
認知症の人とのコミュニケーションの原則、社会資源の活用(新オレンジプラン)、
家族支援について学習しているか
要介護度、介護保険制度の概要とサービスについて学習しているか
対象を理解するためのアセススメントツールを活用できるように整理してあるか
表3 2016 年度 4 年次の「高齢者とのふれあい実習」プログラム
1 日目
(施設実習)
2日目
(施設実習)
3日目
(施設実習)
4日目
(施設実習)
5日目
(学内)
午前:実習施設オリエンテーション
実習施設:養護老人ホーム 盲養護老人ホーム 特別養護老人ホーム 老人保健施設 介護療養型老人保健施設 5か所
午後:各実習施設見学
・見学にあたり、事前学習を活用し施設の役割と機能の理解を深めるよう助言する。
・2日目以降の行動目標を立てやすいように実習施設の日課等を確認させる。
9:00~15:30各施設で実習 15:30~カンファレンス
・行動計画に基づき、対象のアセスメントと生活援助を行う。
・教員は、学生の主体性を尊重してできるだけ見守る。
・場面をもとに援助の意味づけを行うように関わる。
午前:各施設で実習
午後:【施設別グループワークと全体討議】
13:30~14:30 施設別グループワーク 14:30~16:00 発表、全体討議 発表は、1グループ5分、質疑応答10分とし、進行は学生が行う。
・実習施設別のグループとし、学生の配置人数が多い施設は2つに分けて全部で6グループとする。
・実習目標2「様々な生活の場における高齢者の顕在的・潜在的能力を引き出す援助方法」、実習目標3「高齢 者に関わる保健・医療・福祉チームにおける多職種との望ましい協働のあり方」を入れながら模造紙1~2 枚程度にまとめて発表する。
・発表後に学生が、全体討議のテーマを決めて意見交換を行う。
・教員はファシリテーターとしてグループワークに参加する。
・施設別の発表・全体討議には、施設の指導者も参加して助言を得る。
【ポスターセッションとディスカッション】
午前:自分たちでテーマを設定し、発表準備を行う
午後:13:00~14:30ポスターラウンド、ディスカッション、まとめ 発表は、1グループ5分、質疑応答5分とし、進行は学生が行う。
・施設での実践を協議し合えるように施設を混合したグループ編成とし、5グループとする。
・事前課題を活用し、実習目標1「 3)高齢期にある対象の身体的・精神的・社会的特徴を統合して全体像を捉 える」、目標4「高齢者のQOLの維持・向上を目指した看護」という視点を入れながら、グループでテーマを 設定し模造紙1~2枚程度にまとめる。
実習内容と方法
学習と実習体験をつなげること、施設の特性 をふまえたうえで、多職種が連携しながら高 齢者の生活をどのように支えているかを学べ るように援助の意味づけをしながら学生に関 わった。
学生は、実習1日目から4日目は、配置さ れた施設毎のグループで実習を行った。実習 1日目の施設別オリエンテーションでは、そ れぞれの施設の役割と機能の理解を深めるこ とができるように質疑応答の時間を設けた。
また、実習施設の概要や日課を把握した上で、
援助計画を立案した。
実習2日目からは、各実習施設で対象のア セスメントと生活援助を行った。あらかじめ 受持ちを決めず、学生が関わりの中で対象を 1名決めて、対象の全体像をアセスメントす るようにした。日々のカンファレンスは、指 導者も参加して学生が関わりの中で疑問に 思ったことや、対象の QOL・セルフケアを 高める援助について各施設で行った。
実習4日目午後の施設別グループワークと 全体討議では、実習目標2「様々な生活の場 における高齢者の顕在的・潜在的能力を引き 出す援助方法」、実習目標 3「高齢者に関わ る保健・医療・福祉チームにおける多職種と の望ましい協働のあり方」を入れながら模造 紙 1 ~ 2 枚にまとめて発表し意見交換を行っ た。全体討議には、施設の実習指導者も参加 し助言を得た。教員は、ファシリテーターと してグループワークに参加した。
実習 5 日目のポスターセッションでは、実 習施設での実践を協議し合えるように、1 グ ループ学生 5 ~ 6 名とし、実習施設を混合 したグループ編成とした。各施設での学びを ふまえて実習目標1「3.高齢期にある対象 の身体的・精神的・社会的特徴を統合して全 体像を捉える」、実習目標4「高齢者の QOL の維持・向上を目指した看護」という視点を 入れながら、グループでテーマを設定し、ポ スター発表を行い全体討議とした。学生は、
評価票に基づいて発表態度やプレゼンテー ション内容についてお互いに評価を行った。
4.評価方法
1)実習評価項目に基づく到達度
目標到達度は、良く到達している評価 5 から、目標へは達成しない評価 1 までの 5 段階評価を得点化し、単純集計した。
2)高齢者とのふれあい実習終了後アンケート 実習終了後に、施設利用者の概要および、
実習環境・指導体制、実習の満足度の他に、
印象に残ったことについて学生にアンケート を行った。
3)施設側の意見
学生の実習への参加態度、カンファレンスで の発言や気づきについて実習終了後に実習報告 会を行い、施設側指導者の意見をまとめた。
5.倫理的配慮
実習終了後アンケートは、授業改善のため に使用し、不参加による学業上の不利益を生 じないこと、参加は自由意思であること、公 表の可能性について説明し、倫理的に配慮し た。
Ⅲ 結果
1.実習評価項目に基づく到達度
実習評価項目に基づく到達度について、実 習目標は到達できていた。対象となる学生は、
2 年次と異なる集団であることや、評価項目 が異なるため単純に比較しにくいが、すべて の項目で到達度は上がっていた。
・実習目標 1.「高齢者の生活機能を身体的・
心理的・社会的側面からアセスメントでき る(平均 4.23 ± 0.51 点)」について、生 活の場において対象の細かな変化への気づ きや、アセスメントを他職種と連携する必 要性を学んでいた。また、対象者の社会的 側面や家族への思いなど、深めることがで きた。
・実習目標 2.「様々な生活の場における高 齢者の顕在的・潜在的能力を引き出す援助 方法を理解できる(平均 4.40 ± 0.50 点)」
について、対象に対して援助を行う際に、
待つこと、持てる力を活用することなど、
実際の関わりの中から学ぶことができた。
施設によっては、口腔ケアや入浴介助など
卒業までに到達できることが望ましい技術 について体験することができていた。
・ 実習目標 3.「高齢者にかかわる保健・医療・
福祉チームにおいて他職種との望ましい協 働のあり方について検討できる(平均 4.56
± 0.57 点)」については、施設の機能を理 解した上で、多職種の役割や連携の大切さ について深めることができた。
・実習目標 4.「高齢者の QOL(quality of
life)の維持・向上を目指した看護につい て自己の考えを表現できる(平均 4.77 ± 0.40 点)」について、実習 5 日目のポスター セッションで、人生の最終ステージである 高齢期を生きること、暮らしをサポートす る専門職としての姿勢、他職種との連携と 看護の役割などのテーマで発表し、活発な 意見交換が見られた(図2:発表ポスター とポスターセッションの様子)。
図2 発表ポスターとポスターセッションの様子
2.学生による実習終了後アンケート 実習終了後に実習終了後アンケートを実施 した。これは、通常の無記名の授業評価であ り、学生の自由参加等、倫理的に配慮された ものである。学生のアンケートには、以下の ような意見があった。(一部抜粋)
・施設の職員同士が日頃からコミュニケー ションをとり、情報共有しやすい環境を 作っていたことが印象に残った。
・どのスタッフさんも、対象者さんのことを 良く知り、心から思って関わっているとい
うことが多くの場面から伝わってきた。
・生活を支援するということ・QOL を維持 向上する環境の工夫やかかわりの工夫を間 近で学ぶことができた。
・領域実習や在宅実習を終えてからだこそ理 解できる部分や行える技術があった。
・今までの知識や経験を生かすことができ た。病院から施設という流れを実感するこ とができた。
・福祉における看護の目的や役割についても 病棟と比較しながら考えることができた。
・病気をもつ高齢者ではなく、生活の中で人 の力が必要な高齢者を観るという視点で関 わりもつことができた。
・看護だけでなく社会で高齢者と共存してい くために必要なことを学ぶことができた。
・看護の広さを感じた。自分が支えたい方々 をサポートするには、他の職種の方たちの 関わりがいかに大切なものか、他の職種の 方がどれだけ素晴らしい関わりをしている のか知った。
学生の満足度は高く、実習施設の環境や 指導体制については、5 点中 4.7 ~ 4.8 点 と高評価であった。また、実習の満足度は、
95%の学生が 80 点以上と評価した。これま で学んだ内容を統合しながら学ぶことができ ていた。
3.施設側の意見
実習終了後に、実習評価をもとにして施設 側の指導者と実習報告会を行った。
実習を 2 年次から 4 年次に変更すること で、施設側も実習目標を意識してオリエン テーションの内容や施設紹介の順序を工夫し たとの意見があった。学生の学びについて施 設側からは、以下のような意見があった。
・4 年生は、いろいろなことを学びたいと積 極的に利用者や職員と関わりをもってい た。
・2 年生と比べると、目的意識の違いを感じ た。
・高齢者福祉施設に対して理解を深められた ようだ。高齢者に対してプラスのイメージ を持つことができたのではないか。
・試行錯誤しながら接して、認知症の方との コミュニケーションが図れた時の表情が印 象的であった。入所者も学生が来ることで 刺激になった。
・実習の締めくくりとしてとらえれば 4 年 生での実習は有意義である。
おおむね高評価であり、今年度実施した実 習スケジュールについて特に問題はなく、次 年度も同じように実習を行うことの了解を得 た。
Ⅳ 考察
「高齢者とのふれあい実習」を 4 年次に変 更したことで、施設側の意見にあったように 3 年次の老年看護学実習での学びをふまえた 上で、観察の視点を深めることができており 積極的に実習に取り組むことができた。4 年 次は、3 年次の各論実習を終えて学生自身の 学習課題が明確になっている。学生は、社会 資源の活用についての理解を不得手としてい る。これまでの実習においても到達得点が低 く、(到達度平均 3.30 / 5 点満点:2012 ~ 2013年度実施)実習到達の課題となっていた。
看護師国家試験で介護保険制度を含めた社会 資源や、保健医療福祉制度における看護の役 割について基本的な理解が問われている7)こ とや、在宅看護学実習を履修したことなどか ら、4 年次の実習は、高齢者福祉施設におけ る積極的な学習の動機づけにつながったと思 われる。
平成 24 年に改正された看護師等養成所の 運営に関する指導要領8)によると、看護師 教育の基本的な考え方として「保健・医療・
福祉システムにおける自らの役割及び他職種 の役割を理解し、他職種と連携・協働する基 礎的能力を養う。」とされ、多職種連携や地 域での終末期ケア・看取りを含む内容となっ ている。これまでのように 2 年次で「高齢 者とのふれあい実習」を履修することによっ て、加齢による様々な場面で日常生活に影響 を与えることを学び、限られた体験の中から 老年観を深めることはできていた。しかし、
2年次の老年看護学の学習進度で認知症や、
高齢者の健康障害の看護について学んでいな かったため、対象のアセスメントにつなげる ことまでを求めることが 2 年次では難しかっ たと思われる。
4年次に高齢者施設で実習を行うことは、
3年次で急性期病院での実習経験と比較しな がら施設で暮らす高齢者の QOL を高める援 助を理解し、福祉施設の役割と機能や多職種 と連携することについて深めることができ たと考える。急性期病院での実習を終えた 4 年次の学生にとって、高齢者施設での実習は、
退院後の暮らしを知る機会ともなった。小林 ら(2009)9)によると、学生の実習に対す るレディネスによって、「社会資源の活用」は、
「知識不足」と対象との関わりに終始する「視 野や行動の狭さ」が影響し到達できない場合 があると報告がある。これらのことからも、
履修の順序性として、3 年次に医療施設で 3 単位、4 年次に高齢者福祉施設 1 単位の実習 を構成することは有意義であった。
出井ら(2013)10)によると、老年看護学 実習において、複数の福祉施設で実習する際 に学びを共有する工夫としてグループディス カッションが効果的であると報告されてい る。2 年次のプログラムでは、実習最終日に 学内で実習施設毎に実習の学びを発表するグ ループワークを行っていたが、学生のレディ ネスとして活発なディスカッションとまでは 至らなかった。また、2 年次に履修した場合、
基礎実習Ⅰ、Ⅱを経験しているものの、充分 にコミュニケーション能力が身についている とは言い難く、認知症の高齢者に対して行わ れているケアについて広く目を向けることは 難しかったと思われる。
4 年次に実施した本プログラムでは、実習 4 日目に施設の指導者が参加した施設別グ ループワークを行ったこと、5 日目に多様な 生活の場での学びを共有するために高齢者の QOL の維持向上を目指した看護についてポ スターセッションとグループワークを取り入 れたことも高齢者看護の学びを深めるための 一助となったと思われる(表 3 参照)。
看護学科の新カリキュラムは、2018 年度 に 4 年目となる。学生アンケートの中には、
「ほかの施設も見学だけでなく実習してみた いと思った。1 週間では短いと思った。」と いう意見もあり、学びたい学生が新カリキュ ラムで「高齢者看護学実習Ⅱ」から「統合看 護学実習‐高齢者看護系」を選択することで、
さらに高齢者看護の学びを深めることが期待 できる(図1 参照)。
Ⅴ 結語
「高齢者とのふれあい実習」を 4 年次に履
修することで、幅広い視野で高齢者ケアを理 解することができた。今後の経過をモニタリ ングする必要はあるが、高齢者を統合的に理 解し、高齢者看護実践に必要な力を習得する ためには、学生のレディネス、学習の積み上 げと順序性を考慮すると、3 年次に医療施設 で高齢者看護学実習を履修した後、4 年次に 高齢者福祉施設での実習を構成することは、
学習効果を期待できる。
※個人が特定できる写真の掲載については、
全員の同意が得られている。
※利益相反は全てにおいて含まれない。
引用・参考文献
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http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper /w-2015/html/gaiyou/index.html 2)地域包括ケア研究会.“ 地域包括ケア研
究会報告書~今後の検討のための論点整 理 ”.2011.
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009 /05/h0522-1.html
3)地域医療構想.“ 地域医療構想策定ガ イドライン等に関する検討会報告書 ”.
2015.3.厚生労働省.
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite /bunya/0000080850.html
4)社会保障審議会医療保険部会.“ 平成 26 年度診療報酬改定の基本方針のポイン ト ”.2013.12.厚生労働省.
5)大学における看護系人材養成の在り方に 関する検討会.“ 大学における看護系人 材養成の在り方に関する検討会 最終報 告 ”.文部科学省.2010.
6)“ 看護師等養成所の運営に関する指導要 領 ”. 看護師教育の基本的考え方 別 表3.厚生労働省.(最終改正:平成 24 年 7 月 9 日医政発 0709 第 11 号)
7)“ 看護師国家試験出題基準 老年看護 学 目標 ” . 保健師助産師看護師国家試
験出題基準 平成 26 年度版について , p .43,厚生労働省.2014.
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/
2r9852000002ylby-att/2r985200000311lx.pdf (2016 年 12 月 5 日アクセス)
8) 前掲 6)
9)小林紀明、杉山洋介、黒臼恵子、堤千鶴 子.復習の保健・福祉施設における老年 看護学実習の学習効果.目白大学健康科 学研究.2009, 第 2 号 , p .65-72.
10)出井理恵子、川原畑尚美、平木尚美、
名古屋紘子、小野幸子.異なる施設での 実習体験を共有する「老年看護学実習の まとめ」の検討―学生による評価の分析 から―.北日本看護学会誌.2013,16(1), p .51-60.
・ 近藤潤子、小山眞理子訳.看護教育カリキュ ラム−その作成過程―.医学書院.2008.
・佐藤みつ子、宇佐美千恵子、青木康子.看 護教育における授業設計 第 4 版.医学書 院.2009.
連絡先 馬場 保子
〒 856-0835
長崎県大村市久原 2 丁目 1246-3 活水女子大学 看護学部
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