酪農学園大学大学院 獣医学研究科
獣医保健看護学専攻修士課程
中村美里
動物行動生態学
指導教員 准教授 佐野忠士
2017 年度
頁
緒論
1
1 章 飼育下鰭脚類における眼科疾患の実態調査
1. 序文
3
2. 材料と方法
4
3. 結果
7
4. 考察
17
2 章 日本国内の動物園・水族館における
飼育下鰭脚類の眼科疾患の意識調査
1. 序文
27
2. 材料と方法
28
3. 結果
29
4. 考察
37
総括
40
謝辞
41
引用文献
42
研究報告
46
1. 緒 論
鰭 脚 類 は 、 ア ザ ラ シ 科 、 ア シ カ 科 、 セ イ ウ チ 科 か ら 成 り 、 そ の 動 物 種 は
30
種 以 上 に わ た る 。彼 ら は 水 中 と 陸 の 両 方 で 生 活 し 、水 中 で は 主 に 採 餌 、 陸 上 で は 主 に 睡 眠 や 休 息 を し て い る 。 鰭 脚 類 は 種 に よ り そ の 潜 水 深 度 が 異 な り 、 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て メ ス で 記 録 さ れ た 潜 水 深 度 は245
フ ィ ー ト (75m
)、 同 じ ア シ カ 科 の ト ド で は 平 均 潜 水 深 度 は70
フ ィ ー ト (21m
) で あ る[23]
。 こ の 潜 水 深 度 か ら わ か る よ う に 、 鰭 脚 類 は 暗 い 海 中 で 採 餌 を 行 う 。 そ の 際 、 視 覚 と 洞 毛 に よ る 触 覚 を 用 い る 。鰭 脚 類 の 眼 は 、 暗 い 海 中 で の 採 餌 に 適 応 し た 構 造 を し て い る 。 眼 球 の 大 き さ は 人 の 眼 球 の 約
3
倍 で あ る 。 一 方 、 陸 生 哺 乳 類 の 眼 は 水 中 に お け る 視 界 に 適 応 し て い な い 。 角 膜 と 水 の 光 の 屈 折 率 が ほ ぼ 同 じ で あ る こ と か ら 、 球 状 で 密 な 水 晶 体 で な け れ ば 、 水 中 に お け る 正 常 視 を 有 す る こ と は で き な い[9, 12, 18]
。 そ の 反 面 、 水 中 で 正 常 視 と な る よ う な 球 状 の 水 晶 体 で は 、 陸 上 に お い て は 角 膜 で 光 が 屈 折 し た 後 、 水 晶 体 で も 大 き く 屈 折 し て し ま い 、 近 視 と な る と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 視 覚 の 問 題 が 生 じ ぬ よ う に 、 鰭 脚 類 の 眼 表 面 は 特 殊 な 構 造 と な っ て い る 。 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ の 眼 球 で は 、 角 膜 の や や 鼻 側 に 平 ら な 部 位 が あ り 、 陸 上 と 海 中 に お い て 眼 表 面 で の 屈 折 率 を 類 似 さ せ る よ う な 構 造 を と っ て い る こ と が 知 ら れ て い る[21]
。ま た 、鰭 脚 類 は 冷 水 に よ る 光 感 受 性 の 低 下 を 防 ぐ 為 に 、 眼 球 を 温 め る シ ス テ ム も 有 し て い る[22]
。 こ の こ と か ら 、 彼 ら は 陸 上 に お い て も 水 中 に お い て も 良 好 な 視 界 を 保 つ こ と が で き る[9, 12, 18]
。鰭 脚 類 に お い て 、 白 内 障 や 水 晶 体 変 位 等 の 水 晶 体 疾 患 や 、 角 膜 潰 瘍 等 の 角 膜 疾 患 は よ く 見 ら れ る 。野 生 個 体 に お い て は 、約
4
千 頭 の う ち4.3%
が 何 ら か の 眼 の 異 常 を 持 っ て い る こ と が 報 告 さ れ て い る
[17]
。 飼 育 下 鰭脚 類 に お い て は ア メ リ カ ・ バ ハ マ で の 水 晶 体 疾 患 に 関 す る 研 究
[4]
や 、 北 ア メ リ カ ・ バ ハ マ ・ ド イ ツ で の 飼 育 個 体 に お け るOtariid Keratitis
( 進 行 性 ア シ カ 科 角 膜 炎 ) に 関 す る 研 究[3]
が 行 わ れ て お り 、 そ の 罹 患 率 等 が 報 告 さ れ て い る 。 し か し 、 国 内 に お け る 飼 育 下 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 の 実 態 は 知 ら れ て い な い 。そ こ で 、本 研 究 で は 国 内 の 動 物 園・水 族 館 を 対 象 に 、 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 に 関 す る 大 規 模 調 査 を 行 っ た 。第 一 章 飼 育 下 鰭 脚 類 に お け る 眼 科 疾 患 の 実 態 調 査
1. 序 文
こ れ ま で に 海 外 で は 、 飼 育 下 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 に 関 す る 調 査 が い く つ か 行 わ れ て き た 。 飼 育 下 鰭 脚 類 に お け る ア メ リ カ ・ バ ハ マ で の 水 晶 体 疾 患 に 関 す る 研 究 で は 、
111
頭 に お け る222
眼 中104
眼 が 罹 患 し て い た こ と が 報 告 さ れ て い る[4]
。 ま た 、 北 ア メ リ カ ・ バ ハ マ ・ ド イ ツ で の 飼 育 個 体 に お け るOtariid Keratitis
( 進 行 性 ア シ カ 科 角 膜 炎 )に 関 す る 研 究 で は 、113
頭 に お け る226
眼 中142
眼 が 罹 患 し て い た[3]
。鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 の 要 因 と し て 、 主 に 大 き く 発 達 し た 眼 球 や 、 個 体 同 士 で の 闘 争 等 が 挙 げ ら れ る が 、 飼 育 下 に お い て は 特 に 年 齢 、 日 陰 の 有 無 、 個 体 同 士 で の 闘 争 、 眼 病 歴 、 プ ー ル や 施 設 の 塗 装 色 、 水 質 や 塩 分 濃 度 等 が 考 え ら れ る[3, 4]
。国 内 の 動 物 園 や 水 族 館 で 飼 育 さ れ て い る 鰭 脚 類 に お い て 、 白 内 障 や 角 膜 炎 等 の 眼 科 疾 患 は よ く 認 め ら れ る 。 飼 育 施 設 に お け る 眼 科 疾 患 の 環 境 要 因 と し て 、 水 質 や 紫 外 線 、 プ ー ル の 構 造 等 が 挙 げ ら れ る 。 ま た 、 飼 育 個 体 に お け る 要 因 と し て 、 個 体 同 士 の 闘 争 、 個 体 の 親 の 眼 病 歴 等 が 考 え ら れ て い る 。 ア メ リ カ ・ バ ハ マ に お い て 、 飼 育 下 鰭 脚 類 の 白 内 障 お よ び 水 晶 体 脱 臼 の リ ス ク に 関 す る 調 査 を 行 っ た 報 告 で は 、 年 齢 、 闘 争 歴 、 眼 病 歴 、 そ し て 日 陰 の 存 在 の 有 無 が 要 因 と し て 明 ら か と な っ て い る
[4]
。 ま た 、飼 育 下 鰭 脚 類 に 見 ら れ たOtariid Keratitis
の 評 価 に 関 す る 調 査 で は 施 設 の 塗 装 色 や 飼 育 水 質 等 が 要 因 と し て 推 測 さ れ て い る[3]
。本 章 で は 、 日 本 の 動 物 園 ・ 水 族 館 に お け る 眼 科 疾 患 の 実 態 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に 、
32
園 館 を 対 象 と し て ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し た 。2. 材 料 と 方 法
2.1,
ア ン ケ ー ト 調 査公 益 社 団 法 人 日 本 動 物 園 水 族 館 協 会(
JAZA)に 所 属 し 、鰭 脚 類 を 飼 育
し て い る 動 物 園 ・ 水 族 館 を 対 象 に 、 眼 科 疾 患 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。JAZA
が 全 て の 動 物 園 水 族 館 に 対 し て ア ン ケ ー ト の 依 頼 を 代 行 し た 。32
園 館 か ら の 回 答 が あ り 、 そ の 中 に は ア シ カ 科 、 セ イ ウ チ 科 、 ア ザ ラ シ 科 の 鰭 脚 類 に つ い て 回 答 が あ っ た 。 ア シ カ 科 に お い て 、 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ(Zalophus californianus
)、ト ド(Eumetopias jubatus
)、オ タ リ ア (
Otaria flavescens
)、 ミ ナ ミ ア メ リ カ オ ッ ト セ イ(
Arctocephalus australis
) を 対 象 と し た 。 ア ザ ラ シ 科 に お い て は ゴ マ フ ア ザ ラ シ (Phoca largha
)、 ゼ ニ ガ タ ア ザ ラ シ (Phoca vitulina
)、 バ イ カ ル ア ザ ラ シ(Phoca sibirica
)、カ ス ピ カ イ ア ザ ラ シ(Phoca caspica
)、ワ モ ン ア ザ ラ (
Pusa hispida
) を 対 象 と し た 。 セ イ ウ チ 科 に お い て は セ イ ウ チ (Odobenus rosmarus
) を 対 象 と し た 。 全23
項 目 の ア ン ケ ー ト 内 容 は 表1
に 示 す 通 り で あ る 。表 1 眼 科 疾 患 の 実 態 調 査 に 関 す る ア ン ケ ー ト 内 容
Q1.
個 体No Q2.
種 名Q3.
プ ー ルNo Q4.
飼 育 水Q5.
眼 の 症 状Q6.
罹 患 眼Q7.
視 力( 回 答 者 の 主 観 的 な 判 断 に よ る )Q8.
治 療 の 有 無Q9.
治 療 の 効 果Q10.
闘 争 歴Q11.
親 の 眼 疾 患Q12.
関 連 疾 患Q13.
予 測 原 因Q14.
性 別Q15.
年 齢Q16.
体 重Q17.
出 生 場 所Q18.
シ ョ ー 参 加 有 無Q19.
餌Q20.
餌 獲 得 競 争 歴Q21
飼 育 場 所Q22.
日 陰 の 有 無Q23.
ビ タ ミ ン 剤 投 与 の 有 無2.2,
ア ン ケ ー ト の 分 析カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ と ゴ マ フ ア ザ ラ シ は 飼 育 頭 数 が 多 く 、 動 物 種 と 眼 科 疾 患 の 項 目 に お い て も こ の
2
種 で 多 数 の デ ー タ が 得 ら れ た た め 、 こ の 2 種 に つ い て は 要 因 と の 関 連 性 を 分 析 し た 。 ア ン ケ ー ト の 集 計 に お い て 、 未 回 答 や 判 断 し 難 い 回 答 に つ い て は 除 外 し た 。2.3,
統 計 学 的 分 析個 体 数 が 最 も 多 か っ た ゴ マ フ ア ザ ラ シ (
n=51)、 お よ び 次 い で 多 か っ
た カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ (n=34
) の2
種 に お い て 分 析 を 行 っ た 。 こ の2
種 に お い て 、 罹 患 率 上 位 の 水 晶 体 疾 患 と 角 膜 疾 患 に つ い て 、 各 要 因 と の 関 連 性 を 分 析 し た 。 年 齢 と 眼 科 疾 患 の 罹 患 数 に 関 し て は ス ピ ア マ ン 順 位 相 関 係 数 検 定 を 用 い 、 相 関 関 係 を 調 べ た 。 そ の 他 の 要 因 と そ れ ぞ れ の 眼 科 疾 患 と の 間 の 関 係 は 、 カ イ 二 乗 検 定 を 用 い て 分 析 し た 。 い ず れ もp <0.05
を 統 計 学 的 有 意 差 有 り と し た 。統 計 分 析 に は 、統 計 ソ フ トStatcel
4( オ ー エ ム エ ス 出 版 、 埼 玉 ) を 用 い た 。
3. 結 果
本 研 究 で は 、
JAZA
に 加 盟 す る 動 物 園 や 水 族 館 に 対 し て 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 い 、32 施 設 か ら 得 ら れ た 回 答 を 分 析 し た 。3.1,
眼 科 疾 患 の 種 類 と 罹 患 個 体 の 視 力 ( 表2
)今 回 集 め ら れ た 鰭 脚 類 全
295
頭 の 情 報 の 内 、 眼 科 疾 患 に 罹 患 し た 個 体 は127
頭 (43.1%
) で あ っ た 。 そ の う ち 両 側 性 に 罹 患 し て い る 個 体 が97
頭 で 、片 側 性 の 罹 患 個 体 が27
頭 で 、両 側 性 が 多 く 見 ら れ た 。眼 科 疾 患 に は 水 晶 体 疾 患( 白 内 障 や 水 晶 体 脱 臼 等 )、角 膜 疾 患( 角 膜 炎 や 角 膜 膿 瘍 等 )、緑 内 障 、 眼 瞼 炎 、 ぶ ど う 膜 炎 、 前 眼 房 炎 、 結 膜 炎 の
7
種 類 が 認 め ら れ 、 罹 患 個 体 の う ち93
頭 (73.2%
) が 水 晶 体 疾 患 に 罹 患 し て い た 。 次 い で 角 膜 疾 患 に 罹 患 し て い る 個 体 が 多 く 見 ら れ 、40
頭 (31.5%
) で あ っ た 。 ま た 、 水 晶 体 疾 患 お よ び 角 膜 疾 患 が 他 の 疾 患 よ り も 多 く 見 ら れ た が 、 そ れ ら を 併 発 し て い る 個 体 は 全 鰭 脚 類127
頭 中13
頭(10.2%
)で あ っ た 。そ の 他 、 緑 内 障 に 罹 患 し た 個 体 は7
頭 で 、 結 膜 炎 が5
頭 、 ぶ ど う 膜 炎 が3
頭 で あ っ た 。 眼 瞼 炎 お よ び 前 眼 房 炎 の 個 体 は 、 共 に1
頭 で あ っ た 。 そ の 他 の 所 見 と し て 、 し ょ ぼ つ き 、 対 光 反 射 の 低 下 等 の 回 答 が 見 ら れ た 。 視 力 の 強 さ に 関 し て 、”
普 通”
の 回 答 は127
頭 中40
頭 (31.5%
) で 、”
弱 い”
あ る い は”
無 し”
の 回 答 は76
頭(59.8%
)で あ っ た 。こ の 中 で 、水 晶 体 疾 患 に の み 罹 患 し て い る 個 体73
頭 中 、 視 力 が”
普 通”
の 個 体 は14
頭(
19.2%
) で あ り 、”弱 ”は 35
頭 (47.9%
)、”無”
は24
頭 (32.9%
) で あ っ た( 図1
左 )。さ ら に 、角 膜 疾 患 に の み 罹 患 し て い る 個 体25
頭 中 、”
普 通”
の 個 体 は18
頭 (72.0%
)、”
弱”
ま た は”
無”
の 個 体 は7
頭 (28.0%
) 見 ら れた ( 図
1
右 )。表
2.
鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 ア ン ケ ー ト 結 果 (32
園 館 に お け る 計295
頭 )*1 : 34
頭 中4
頭 体 重 不 明*2 : 51
頭 中5
頭 体 重 不 明*3
: 海 水 、* 4
* 3
* 1 * 2
人 工 海 水 、 塩 水 と 淡 水 、 塩 水 ( 海 水 ) の 回 答 を 含 む
*4
: 井 戸 水 の 回 答 を 含 む図
1.
全 鰭 脚 類 に お け る 水 晶 体 疾 患 ( 左 )、 角 膜 疾 患 ( 右 ) の 罹 患 と 視 力 の 関 連 性 横 軸 が 視 力 ( 普 通/弱 い /無 し )、 縦 軸 が 個 体 数 を 示 す 。 水 晶 体
疾 患 に の み 罹 患 し て い る 個 体73
頭 中 、視 力 が ”普 通 ”の 個 体 よ り も ”弱 ” ま た は ”無 ”の 個 体 の 方 が 多 か っ た( 左 )。角 膜 疾 患 に の み 罹 患 し て い る 個 体25
頭 中 、”普 通 ”の 個 体 が 最 も 多 く 見 ら れ 、”弱 ”ま た は ”無 ”の 個 体 が そ れ ぞ れ 少 数 見 ら れ た ( 右 )。3.2,
性 別 、 年 齢 、 体 重 と 眼 科 疾 患 と の 関 連罹 患 個 体 の う ち オ ス は
53
頭 (41.7%
)、 メ ス は74
頭 (58.3%
) で あ っ た 。 水 晶 体 疾 患 お よ び 角 膜 疾 患 の 罹 患 と 性 別 と の 関 連 性 は 認 め ら れ な か っ た 。 ま た 、 平 均 年 齢 は 全 鰭 脚 類 に お い て18.9
才 齢 (S.D.=8.6
) で あ っ た 。 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て 、 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 個 体 数 と 年 齢 の 相 関 を 求 め た と こ ろ 、r=0.65(p =0.006
)で 正 の 相 関 を 示 し 、加 齢 に 伴 い 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 く な る こ と が わ か っ た ( 図1
)。 ま た 、 ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て も 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 個 体 数 と 年 齢 と の 相 関 を 求 め た と こ ろ 、r=0.39
(p =0.05
) で 弱 い 正 の 相 関 を 示 し 、 加 齢 に 伴 い 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 増 え る 傾 向 が 認 め ら れ た ( 図2
)。カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て 、 角 膜 疾 患 罹 患 個 体 数 と 年 齢 と の 相 関 を 求 め た と こ ろ 、
r =
-0.52
(p =0.03
) で 負 の 相 関 を 示 し 、 若 齢 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た ( 図3
)。0 10 20 30 40
普 弱 無
0 10 20 30 40
普 弱 無
図
1.
カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お け る 水 晶 体 疾 患 個 体 数 と 年 齢 の 相 関 年 齢 と 罹 患 個 体 数 の 間 に 、 相 関 係 数r=0.65
と 正 の 相 関 が あ っ た (p = 0.006
)。図
2.
ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お け る 水 晶 体 疾 患 個 体 数 と 年 齢 と の 相 関年 齢 と 罹 患 個 体 数 の 間 に 、相 関 係 数
r=0.39
で 弱 い 正 の 相 関 が あ る こ と が わ か っ た (p = 0.05
)。0 1 2 3 4 5
0 10 20 30 40
罹患個体数
年齢
0 1 2 3 4 5
0 20 40 60
罹患個体数
年齢
図
3.
カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お け る 角 膜 疾 患 個 体 数 と 年 齢 の 相 関 年 齢 と 罹 患 個 体 数 の 間 に 、 相 関 係 数r =
-0.52
で 負 の 相 関 が あ る こ と が わ か っ た (p = 0.03
)。3.3,
遺 伝 性・続 発 性 眼 科 疾 患 要 因( 親 の 眼 科 疾 患 、出 生 場 所 、関 連 疾 患 )127
頭 中 、野 生 由 来 の 個 体 が50
頭 含 ま れ て お り 、親 に 関 す る 情 報 は 得 ら れ な か っ た が 、77
頭 の 飼 育 下 繁 殖 個 体 に 関 し て も 親 の 眼 科 疾 患 に 関 す る 情 報 は 得 ら れ な か っ た 。親 の 眼 科 疾 患 に 関 し て は”
不 明”
の 回 答 が 多 く 、 記 録 が 残 さ れ て い な い 現 状 が 理 解 で き た 。 ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 水 晶 体 疾 患 罹 患 数 と 出 生 場 所 ( 野 生 か 飼 育 下 か ) と の 間 に 差 が 認 め ら れ 、 野 生 由 来 の 個 体 に 水 晶 体 疾 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (p =0.0002,
図4
)。 ま た 、 同 種 に お い て 角 膜 疾 患 罹 患 数 と 出 生 場 所 と の 間 に 差 が 認 め ら れ 、 野 生 由 来 の 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た(
p =0.04,
図5
)。ま た 、関 連 疾 患 は ほ と ん ど の 園 館 が
“
無”
と 回 答 し た が 、”
有 り”
と 回 答 し た 園 館 で は 、 白 内 障 や 角 膜 炎 、 部 分 的 な 脱 毛 や マ ラ セ チ ア 等 の 回 答 が 見 ら れ た 。0 1 2 3 4 5
0 20 40
罹患個体数
年齢
図
4.
出 生 場 所 と 水 晶 体 疾 患 と の 関 係( 左 : カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、右 : ゴ マ フ ア ザ ラ シ )ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 野 生 由 来 の 個 体 に 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (
p =0.0002
)。図
5.
出 生 場 所 と 角 膜 疾 患 と の 関 係( 左 : カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、右 : ゴ マ フ ア ザ ラ シ )ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 野 生 由 来 の 個 体 で 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (
p =0.04
)。3.4,
予 防 対 策 の 効 果 ( ビ タ ミ ン 剤 の 投 与 )全 体 の う ち
107
頭 (84.3%
) が ビ タ ミ ン 剤 を 投 与 さ れ て い た 。 ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 水 晶 体 疾 患 罹 患 数 と ビ タ ミ ン 剤 投 与 の 有 無 と の 間 に 差 が 認 め ら れ 、 ビ タ ミ ン 剤 を 投 与 さ れ て い な い 個 体 に 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (p =0.002,
図6)。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
野生 飼育下 野生 飼育下
罹患率
pos neg
0%
20%
40%
60%
80%
100%
野生 飼育下 野生 飼育下
罹患率
pos neg
**
*
図
6.
ビ タ ミ ン 剤 投 与 の 有 無 と 水 晶 体 疾 患 と の 関 係( 左:カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、 右 : ゴ マ フ ア ザ ラ シ )ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 ビ タ ミ ン 剤 を 投 与 し て い な い 個 体 に 水 晶 体 疾 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (
p =0.002)。
3.5,
栄 養 性 眼 科 疾 患 ( 餌 )餌 に 関 し て 、 全 て の 個 体 が 冷 凍 魚 を 解 凍 し て 給 餌 さ れ て お り 、 ご く 一 部 の 個 体 は 冷 凍 魚 に 加 え 生 魚 も 給 餌 さ れ て い た 。
3.6,
紫 外 線 に よ る 眼 科 疾 患 ( 飼 育 場 所 、 日 陰 の 有 無 )飼 育 場 所 に つ い て 、屋 外 飼 育 の 個 体 が
127
頭 中80
頭(63.0%
)と 多 く 見 ら れ 、 飼 育 領 域 に 日 陰 の あ る 個 体 も87
頭 (68.5%
) と 多 く 見 ら れ た 。 眼 科 疾 患 罹 患 数 と こ れ ら の 要 因 と の 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。3.7,
外 傷 性 眼 科 疾 患 ( 闘 争 歴 、 餌 獲 得 競 争 、 シ ョ ー へ の 参 加 状 況 ) 闘 争 経 験 が あ る 個 体 は127
頭 中40
頭(31.5%
)で あ っ た 。こ の う ち オ ス は14
頭 (35.0%
)、 メ ス は26
頭 (65.0%
) で あ っ た 。 ま た 、 餌 獲 得 競0%
20%
40%
60%
80%
100%
投与あり 投与なし 投与あり 投与なし
罹患率
pos neg
*
争 に 関 し て 、
”
有 り”
の 個 体 は19
頭 (15.0%
) で あ っ た 。 そ の 他 は 、”
無”
あ る い は”
不 明”
の 回 答 で あ っ た 。 ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 水 晶 体 疾 患 罹 患 数 と 餌 獲 得 競 争 の 有 無 と の 間 に 差 が 認 め ら れ 、 餌 獲 得 競 争 の 経 験 を 有 す る 個 体 に 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (p =0.01,
図7
)。ま た 、 シ ョ ー に 参 加 し て い る 、 あ る い は し た こ と が あ る 個 体 は
127
頭 中45
頭(35.4%)
で あ っ た 。 両 種 に お い て 両 疾 患 罹 患 数 と シ ョ ー へ の 参 加 状 況 と の 間 に 差 が 認 め ら れ 、 ゴ マ フ ア ザ ラ シ で は シ ョ ー 参 加 個 体 に 水 晶 体 疾 患 が 多 く (p =0.03,
図8
)、 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ で は シ ョ ー 参 加 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 少 な い こ と が 明 ら か と な っ た (p =0.003,
図9
)。図
7.
餌 獲 得 競 争 の 有 無 と 水 晶 体 疾 患 と の 関 係( 左:カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、 右 : ゴ マ フ ア ザ ラ シ )ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 餌 獲 得 競 争 の 経 験 を 有 す る 個 体 に 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (
p =0.01
)。0%
20%
40%
60%
80%
100%
競争あり 競争なし 競争あり 競争なし
罹患率
pos neg
*
図
8.
シ ョ ー の 参 加 状 況 と 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 と の 関 係( 左:カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、 右 : ゴ マ フ ア ザ ラ シ )ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 シ ョ ー 参 加 個 体 に 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が わ か っ た (
p =0.03
)。図
9.
シ ョ ー の 参 加 状 況 と 角 膜 疾 患 の 罹 患 と の 関 係( 左:カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、 右 : ゴ マ フ ア ザ ラ シ )カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て 、 シ ョ ー 参 加 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 少 な い こ と が 明 ら か と な っ た (
p =0.003
)。3.8,
水 質 に よ る 眼 科 疾 患 ( 飼 育 水 の 種 類 )飼 育 水 に 関 し て 、“ 塩 水 ”、“ 真 水 ”、“ 汽 水 ”、“ そ の 他 真 水( 随 時 海 水 )”、
“ 汽 水 ~ 海 水 ” と
5
つ の 種 類 に 分 類 し た 。 海 水 、 人 工 海 水 、 塩 水 と 淡 水 等 の 回 答 を 含 む”塩 水 ”
の 回 答 が 最 も 多 く 見 ら れ 、 全 体 の う ち102
頭0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
参加 不参加 参加 不参加
罹患率
pos neg
0%
20%
40%
60%
80%
100%
参加 不参加 参加 不参加
罹患率
pos neg
*
*
(
80.3%
) で あ っ た 。 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ で は 、 真 水 で 飼 育 さ れ て い た 個 体 は34
頭 中12
頭 (35.3%
) と 比 較 的 多 く の 個 体 が 該 当 し た 。 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て 、 角 膜 疾 患 罹 患 数 と 飼 育 水 ( 塩 水 と 真 水 ) と の 間 に 差 が 認 め ら れ 、 真 水 で 飼 育 す る 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (p =0.04,
図10
)。図
10.
飼 育 水 と 角 膜 疾 患 の 罹 患 と の 関 係 ( 左 : カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、 右 : ゴ マ フ ア ザ ラ シ )カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て 、 真 水 で 飼 育 す る 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た (
p=0.04
)3.9,
治 療 経 験罹 患 個 体 の う ち 、 治 療 経 験 を 有 す る の は
82
頭 (64.6%
) で 、 そ の う ち 治 療 効 果 が 認 め ら れ た の は31
頭 (37.8%
)、 残 り の51
頭 (62.2%
) は 効 果 が な い 、 あ る い は 不 明 と 回 答 し た 。0%
20%
40%
60%
80%
100%
塩水 真水
罹患率
pos neg
*
4. 考 察
32
の 動 物 園 や 水 族 館 か ら 得 ら れ た「 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 」に 関 す る 情 報 か ら 、 飼 育 下 に お け る 眼 科 疾 患 の 要 因 を 明 ら か に す る た め に 、 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ お よ び ゴ マ フ ア ザ ラ シ の 二 種 に お い て 、 眼 科 疾 患 と 各 要 因 の 関 係 性 を 分 析 し た 。4.1,
飼 育 下 鰭 脚 類 に お け る 眼 科 疾 患 と 罹 患 個 体 の 特 徴人 や 犬 の 水 晶 体 疾 患 の 中 で 代 表 的 な 白 内 障 の 原 因 と し て 、 遺 伝 性 、 栄 養 性 、中 毒 性 、放 射 線 性 、感 染 性 、寄 生 虫 性 、老 年 性 等 が 挙 げ ら れ る
[14]
。 こ れ ら の 原 因 に よ っ て 、 水 晶 体 の 栄 養 、 エ ネ ル ギ ー 代 謝 、 タ ン パ ク 質 代 謝 、 浸 透 圧 バ ラ ン ス 等 の 機 能 に 異 常 を 引 き 起 こ し 、 水 晶 体 疾 患 が 発 症 す る と 考 え ら れ て い る 。 ま た 、 水 晶 体 脱 臼 は 先 天 性 、 外 傷 性 、 続 発 性 、 遺 伝 性 等 が 原 因 と し て 考 え ら れ て い る[5, 15]
。角 膜 炎 は 一 般 的 に 、 伝 染 性 、 ア レ ル ギ ー 性 、 刺 激 や 乾 燥 性 等 に 分 類 さ れ る
[5]
。 ア シ カ 科 動 物 種 で は 、 進 行 性 角 膜 炎”Otariid Keratitis”と 呼 ば
れ る 、 特 徴 的 な 角 膜 炎 が 知 ら れ て い る 。Otariid keratitis
は 、 こ れ ま で に カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ 、 ト ド 、 ミ ナ ミ ア フ リ カ オ ッ ト セ イ 等 の 動 物 に お い て 若 齢 個 体 か ら 高 齢 個 体 ま で 幅 広 く 報 告 さ れ て い る[3]
。こ の 疾 患 に 関 し て 飼 育 下 の 個 体 に 特 徴 的 な 要 因 と し て 、 飼 育 に 使 わ れ て い る 水 の 水 質 の 変 化 、 真 水 で の 飼 育 、 紫 外 線 、 ウ イ ル ス や 細 菌 感 染 、 ぶ ど う 膜 炎 、 外 傷 等 が 考 え ら れ て い る[2, 3]
。今 回 、 水 晶 体 疾 患 お よ び 角 膜 疾 患 と そ の 他
5
つ の 疾 患 に 加 え 、 眼 球 腫 大 や 対 光 反 射 低 下 な ど い く つ か 症 状 が 挙 げ ら れ た 。 鰭 脚 類 の 眼 球 は 暗 い 水 中 で の 採 餌 の た め に 大 き く 発 達 し て い る こ と か ら 、 飼 育 施 設 に 特 有 で あ る プ ー ル 壁 や 擬 岩 等 で 角 膜 損 傷 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 プー ル 壁 に 反 射 し た 日 光 の 紫 外 線 の 影 響 も 関 与 し て い る と 考 え ら れ る 。 眼 科 疾 患 は 、 治 療 せ ず に 放 っ て お く と 併 発 す る 恐 れ が あ り 、 例 え ば 角 膜 疾 患 は ぶ ど う 膜 炎 の 原 因 と な り 、ぶ ど う 膜 炎 は 白 内 障 の 原 因 と な る 。ま た 、 脱 臼 を 起 こ し た 水 晶 体 は い ず れ 白 内 障 と な る こ と も 報 告 さ れ て い る
[15]
。 今 回 見 ら れ た 眼 科 疾 患 が 、 ど の よ う な 要 因 で 発 症 し た の か を 確 定 す る こ と は 難 し く 、 今 回 は 調 べ て い な い が 、 併 発 し て い る 眼 科 疾 患 が な い か 検 査 を す る こ と や 、 内 分 泌 性 疾 患 や 腫 瘍 性 疾 患 な ど の 眼 科 症 状 が 現 れ る 全 身 性 疾 患 も 知 っ て お く こ と が 重 要 で あ る 。4.2,
性 別 、 年 齢 、 体 重 要 因代 表 的 な 水 晶 体 疾 患 で あ る 白 内 障 は 、 発 症 年 齢 に よ り 、 先 天 性 、 新 生 子 性 、若 齢 性( 犬 で
5-6
才 齢 )、老 齢 性( 犬 で7
才 齢 以 上 )に 分 類 さ れ る[15]
。 人 で は 早 く て40
才 か ら 発 症 す る 場 合 も あ る 上 、80
才 以 上 で は ほ ぼ100%
の 確 率 で 発 症 す る と い わ れ て い る 。 こ れ ら の 報 告 か ら も わ か る よ う に 、 老 齢 性 白 内 障 は 犬 に お い て も そ の 他 の 動 物 種 に お い て も 、 ほ ぼ 同 様 の ラ イ フ ス テ ー ジ で 発 症 す る 。 白 内 障 と は 、 水 晶 体 皮 質 や 核 の 混 濁 に よ り 起 こ る 。 ま た 、 水 晶 体 内 の 蛋 白 質 が 酸 化 し 、 水 溶 性 ク リ ス タ リ ン が 水 不 溶 性 蛋 白 質 と な り 、 凝 集 や 沈 着 を 引 き 起 こ す 。 こ の 白 内 障 と 間 違 わ れ や す い 症 状 と し て 、 核 硬 化 が あ る 。 こ れ は 正 常 な 生 理 学 的 過 程 に よ っ て 起 こ り 、 犬 で は お よ そ7
才 齢 か ら 始 ま る 。 こ れ は 、 新 し い 水 晶 体 線 維 形 成 に よ っ て 水 晶 体 核 内 の 古 い 水 晶 体 繊 維 が 圧 縮 さ れ る こ と に よ り 水 晶 体 が 青 白 く 濁 る と い う も の で 、 加 齢 性 変 化 で あ る た め 一 般 的 に 治 療 は 施 さ れ な い[5、 15]。Colitz
ら(2010
)の 報 告 に よ れ ば 、ア メ リ カ の 飼 育 下 鰭 脚 類 に お い て 加 齢 に 伴 い 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 増 加 す る こ と を 報 告 し て お り 、26
才 齢 以 上 の 個 体 に お い て100%
の 罹 患 率 で あ っ た[4]
。 ま た 、鰭 脚 類 の 寿 命 は ア シ カ 科 で
14
-30
才 齢 、 セ イ ウ チ 科 で40
才 齢 、 ア ザ ラ シ 科 で12
-35
才 齢 で あ る 。 本 研 究 に お い て ア ン ケ ー ト に 記 載 さ れ た 罹 患 個 体 の 多 く は 、10
才 齢 以 上 で あ り 、多 く の 個 体 が 成 獣 で あ る と 考 え ら れ る[23]
。 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ と ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 加 齢 に 伴 い 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 く な る こ と が わ か っ た が 、 こ れ は 、 ヒ ト や 犬 、 そ の 他 の 哺 乳 類 に お い て 見 ら れ る 加 齢 性 水 晶 体 変 性 に よ る も の と 考 え ら れ る 。カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て 、 角 膜 疾 患 と 年 齢 と の 差 が 見 ら れ た 。 ア シ カ 科 の 動 物 種 に 見 ら れ る 進 行 性 角 膜 炎 で あ る
Otariid Keratitis
は 、 重 症 度 に よ り3
つ のStage
に 分 類 さ れ 、 最 も 症 状 が 軽 いStage1
は 、Stage2
・3
と 比 較 し て 明 ら か に 若 齢 の 個 体 で 発 症 す る こ と が 報 告 さ れ て い る[3]
。 ま た 、 若 齢 個 体 は 老 齢 個 体 に 比 べ 好 奇 心 旺 盛 で 行 動 が 活 発 で あ り 、 飼 育 プ ー ル の 壁 等 で 眼 を 損 傷 す る 可 能 性 が あ る 。 つ ま り 、 若 齢 個 体 で は 、 加 齢 性 で よ く 見 ら れ た 水 晶 体 疾 患 よ り も む し ろ 角 膜 疾 患 の 方 が 多 く 見 ら れ た 理 由 と 考 え ら れ る 。性 別 が 眼 科 疾 患 の 要 因 と し て 挙 げ ら れ る 理 由 の ひ と つ は 、 攻 撃 性 の 違 い で あ ろ う 。 メ ス 、 未 去 勢 オ ス 、 お よ び 去 勢 オ ス に お い て 、 個 体 同 士 で の 闘 争 歴 の 有 無 に 明 ら か な 違 い が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る
[4]
。本 研 究 に お い て は 避 妊 去 勢 を 施 さ れ た 個 体 が い な か っ た こ と や 、 そ も そ も 飼 育 個 体 に メ ス が 多 い 可 能 性 が あ り 、 メ ス と オ ス で 個 体 数 に 差 が 出 た こ と に よ り 、 正 確 な 分 析 が で き な か っ た 可 能 性 が あ る 。鰭 脚 類 は 海 中 で 採 餌 を す る 際 、 暗 い 海 中 で 素 早 い 獲 物 を 捕 ら え る た め に 発 達 し た 眼 球 の 視 覚 を 駆 使 し て い る 。 そ の た め 、 視 覚 に 障 害 が あ る 場 合 、 採 餌 が 困 難 に な る と 考 え ら れ る 。 今 回 の 結 果 に お い て 、 罹 患 個 体 と 罹 患 し て い な い 個 体 で 体 重 に 大 き な 差 が 見 ら れ な か っ た 。 そ の 理 由 と し
て 、 ま ず 、 飼 育 下 個 体 は 一 般 的 に 人 が 給 餌 を 行 っ て お り 、 餌 獲 得 競 争 が な い こ と 、 さ ら に 眼 が 見 え な く て も 洞 毛 を 使 え る こ と が 挙 げ ら れ る 。 こ れ に よ っ て 、 栄 養 不 足 に は 陥 ら な か っ た の で あ ろ う 。
4.3,
遺 伝 性・続 発 性 眼 科 疾 患 要 因( 親 の 眼 科 疾 患 、出 生 場 所 、関 連 疾 患 ) 今 回 、 ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 、 飼 育 下 繁 殖 個 体 に 比 べ 野 生 由 来 の 個 体 に 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 か っ た 。 野 生 由 来 と 飼 育 下 繁 殖 個 体 の 年 齢 を 比 較 し た と こ ろ 、 ワ シ ン ト ン 条 約 な ど の 規 制 前 に 導 入 し た 野 生 由 来 個 体 が 多 く 、 年 齢 の 平 均 が 高 か っ た こ と か ら 、 や は り 加 齢 性 の 水 晶 体 疾 患 が 関 与 し て い る 可 能 性 が あ る 。ま た 、ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て 飼 育 下 で は 、 飼 育 空 間 が 狭 か っ た り 、 人 工 物 が 多 用 さ れ て い た り す る た め 、 外 傷 が 影 響 し 、 飼 育 下 繁 殖 個 体 に よ り 角 膜 疾 患 が 多 く 見 ら れ た 可 能 性 が あ る 。 ま た 、Colitz
ら (2010b
) の 報 告 で は 、 飼 育 環 境 に お け る 光 の 反 射 も 角 膜 疾 患 の リ ス ク と し て 推 測 さ れ て お り 、 プ ー ル 壁 の 塗 装 色 等 に よ る 強 い 光 の 反 射 が 関 与 し て い る 可 能 性 が あ る 。先 行 研 究 に お い て 、 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 率 と 、 個 体 が こ れ ま で に 罹 患 し た 眼 科 疾 患 の 関 連 性 が 報 告 さ れ て い る
[2, 4]
。水 晶 体 疾 患 は 続 発 性 で 発 症 す る 場 合 も あ り 、 さ ら に 他 の 疾 患 を 引 き 起 こ す き っ か け に も な り う る 。 例 え ば 、 白 内 障 を 放 置 す る と 白 内 障 化 し た 水 晶 体 か ら 水 溶 性 の 変 性 蛋 白 質 が 溶 出 し 、 水 晶 体 起 因 性 ぶ ど う 膜 炎 を 引 き 起 こ し 、 緑 内 障 も 最 終 的 に 眼 球 萎 縮 を 引 き 起 こ す こ と が あ る[5]
。 ま た 、 ア シ カ 科 動 物 種 の 間 で 発 症 し て い るOtariid Keratitis
は 、一 般 的 に 若 齢 期 か ら 発 症 し て 季 節 的 に 再 発 す る も の で 、 角 膜 混 濁 、 線 維 症 お よ び 二 次 的 な 細 菌 感 染 や 真 菌 感 染 な ど を 引 き 起 こ す こ と が 知 ら れ て い る[3, 6]
。角 膜 炎 は 個 体 同 士 の 闘 争 に よ る 外 傷 で 生 じ る が 、 紫 外 線 、 水 質 悪 化 、 闘 争 以 外 に よ る 外 傷 、 ヘ ル ペ スウ イ ル ス 等 の ウ イ ル ス 感 染 に よ り 発 症 す る 場 合 が あ る こ と か ら 、 若 齢 動 物 で 見 ら れ る こ と も 珍 し く な い 。 発 症 し て し ま う と 疼 痛 を 伴 い 、 二 次 性 ブ ド ウ 膜 炎 、 潰 瘍 お よ び 線 維 症 が 生 じ る た め 、 水 質 が 悪 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る 。 今 回 、 眼 科 疾 患 の 関 連 疾 患 に つ い て 、 白 内 障 や 角 膜 炎 等 の 少 数 の 回 答 を 得 る こ と が で き た 。 該 当 す る 個 体 は 、 続 発 性 に 眼 科 疾 患 を 発 症 し た 可 能 性 が あ る 。 こ の よ う な 続 発 性 の 眼 科 疾 患 を 防 ぐ た め に も 、 疾 患 の 早 期 発 見 お よ び 早 期 治 療 が 重 要 だ と 考 え ら れ る 。
親 の 眼 科 疾 患 と の 関 連 性 に つ い て は 、 不 明 の 回 答 が 多 く 、 分 析 に は 至 ら な か っ た 。
4.4,
予 防 対 策 の 効 果 ( ビ タ ミ ン 剤 の 投 与 )本 来 、 飼 育 下 鰭 脚 類 に 与 え る 餌 と し て 、 魚 の 栄 養 分 を そ の ま ま 摂 取 さ せ た い た め 生 き 餌 を 給 餌 し た い と こ ろ で あ る が 、 保 存 の 問 題 と 寄 生 虫 感 染 の 危 険 性 が あ る た め 、 多 く の 水 族 館 で は 使 用 さ れ て い な い
[4, 13]
。 し か し 、 長 期 冷 凍 保 存 さ れ た 魚 で は 、 解 凍 時 に ビ タ ミ ンB1
等 の 水 溶 性 ビ タ ミ ン が 流 出 し た り 、 ビ タ ミ ンE
が 多 く 枯 渇 す る[10]
。 こ う い っ た こ と へ の 対 策 と し て 行 な っ て い る か 定 か で は な い が 、 多 く の 水 族 館 で は サ プ リ メ ン ト を 経 口 投 与 し 不 足 し た 栄 養 を 補 っ て い た[7,8]
。 ビ タ ミ ン に は 抗 酸 化 作 用 が あ り 、 人 に お い て ビ タ ミ ンC
を 摂 取 す る こ と で 加 齢 に よ る 水 晶 体 の 濁 り を 予 防 で き る た め 、 効 果 の 程 度 は わ か ら な い が 飼 育 下 鰭 脚 類 へ の 投 与 に は 一 定 の 価 値 が あ る と 考 え ら れ る[28]
。 一 方 、 ビ タ ミ ンA
を 多 く 含 ん だ サ プ リ メ ン ト の 摂 取 が ビ タ ミ ンE
の 活 性 を 阻 害 す る と い う 報 告 が あ る[19]。 今 回 、 ほ と ん ど の 個 体 で ビ タ ミ ン 剤 投 与 が 行 わ れ て い
た た め 、 差 が 出 な か っ た が 、 少 な く と も 、 ゴ マ フ ア ザ ラ シ に お い て は ビ タ ミ ン 剤 投 与 が 水 晶 体 疾 患 を 予 防 し て い る 可 能 性 が あ る 。 し か し 、 ビ タミ ン の 相 互 作 用 を よ く 理 解 し 、適 切 に ビ タ ミ ン 剤 を 選 択 す る 必 要 が あ る 。
4.5,
栄 養 性 眼 科 疾 患 ( 餌 )眼 の 網 膜 に 含 ま れ る カ ロ チ ノ イ ド の 一 種 で あ る ル テ イ ン や ゼ ア キ サ ン チ ン 等 は 眼 組 織 を 保 護 す る こ と が 知 ら れ て お り 、 こ れ ら は 眼 球 内 に 入 っ た 光 の う ち 有 害 な 光 線 を 吸 収 す る 役 割 を 持 つ
[1, 14]
。 カ ロ チ ノ イ ド は ビ タ ミ ンA
の 前 駆 体 と し て も 知 ら れ て お り 、 不 足 す る こ と で 夜 盲 症 等 の 視 覚 障 害 を 引 き 起 こ す 恐 れ が あ る 。餌 は 、 全 て の 個 体 が 冷 凍 魚 を 解 凍 し て 給 餌 さ れ て い た 。 魚 に は ビ タ ミ ン
A
、ビ タ ミ ンD3
、ビ タ ミ ンE
等 の 豊 富 な 脂 溶 性 ビ タ ミ ン お よ び ビ タ ミ ンB1
等 の 水 溶 性 ビ タ ミ ン が 含 ま れ て い る[10]
。冷 凍 保 存 し た 魚 の 給 餌 は 、 流 水 解 凍 等 に よ る 水 溶 性 ビ タ ミ ン の 流 出 や 、 抗 酸 化 作 用 の あ る ビ タ ミ ンE
の 枯 渇 が 起 こ る 可 能 性 が あ り 、欠 乏 症 に 注 意 す る 必 要 が あ る だ ろ う[19]
。今 回 、 餌 の 要 因 に つ い て 分 析 を 行 う こ と は で き な か っ た が 、 ビ タ ミ ン 不 足 は 網 膜 疾 患 等 の 眼 科 疾 患 の 原 因 と な る 可 能 性 が あ る た め 、 保 存 時 に 定 期 的 に 餌 を 回 転 さ せ 、 ビ タ ミ ン 劣 化 を 軽 減 す る こ と や 、 ビ タ ミ ン 剤 と 併 用 す る こ と が 望 ま し い か も し れ な い 。
4.6,
紫 外 線 に よ る 眼 科 疾 患 ( 飼 育 場 所 、 日 陰 の 有 無 、 シ ョ ー )UV-A
お よ びUV-B
へ の 曝 露 は 、累 積 的 に 白 内 障 を 誘 発 す る と 考 え ら れ て い る[4, 16, 24]
。UV-A
お よ びUV-B
は 、 近 紫 外 線 の 中 で も 地 表 に 到 達 す る も の と し て 知 ら れ て い る 。UV-B
照 射 の 主 要 な 標 的 細 胞 はLEC
で 、UV-B
にLEC
を 曝 露 す る こ と は 、DNA
損 傷 、 予 期 せ ぬDNA
合 成 、 お よ び グ ル タ チ オ ン 濃 度 の 低 下 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が あ る 。 ま た 、LEC
はUV-A
に よ っ て 損 傷 を 受 け る 可 能 性 が あ り 、 そ の メ カ ニ ズ ム は 、 活 性 酸素 の ひ と つ で あ る 一 重 項 酸 素 種 に よ る 抗 酸 化 酵 素 カ タ ラ ー ゼ の 酸 化 で あ る 。一 方 、
UV-A
の 影 響 と し て 、細 胞 増 殖 の 遅 延 や ア ポ ト ー シ ス の 増 強 、ATP
濃 度 の 低 下 等 を 起 こ す 。今 回 、 飼 育 場 所 と 日 陰 の 有 無 と の 関 連 性 は 認 め ら れ な か っ た 。 屋 外 で 展 示 さ れ て い る 個 体 は よ り 紫 外 線 に 暴 露 さ れ て い る 時 間 帯 が 多 く 、 累 積 的 な 水 晶 体 疾 患 を 引 き 起 こ す と 考 え ら れ た が 、 プ ー ル の 塗 装 色 等 に よ っ て も 光 の 反 射 量 等 は 変 化 す る た め 、 今 後 飼 育 環 境 に つ い て 細 か く 調 べ る 必 要 が あ る 。 ま た 、
Colitz
ら (2010a
) の 研 究 で は 飼 育 領 域 に お け る 日 陰 の 有 無 が 水 晶 体 疾 患 の 要 因 と し て 明 ら か と な っ て い る[4]
。日 陰 の 有 無 や 大 き さ は 時 間 帯 に よ り 変 化 す る た め 、 今 回 正 確 な デ ー タ を 得 ら れ て い な か っ た 可 能 性 が あ る 。 今 後 は 日 陰 の 程 度 や 日 中 屋 外 に と ど ま る 時 間 等 を 調 べ 、 詳 細 に 分 析 す る 必 要 が あ る 。シ ョ ー へ の 参 加 が 眼 科 疾 患 に 繋 が る 理 由 と し て 、 紫 外 線 や 個 別 飼 育 が 挙 げ ら れ る 。 シ ョ ー を 屋 内 で 行 う 場 合 、 紫 外 線 に 関 し て そ こ ま で 心 配 す る 必 要 は な い か も し れ な い 。 し か し 、 シ ョ ー を 屋 外 で 行 う 際 は 、 多 く の 場 合 動 物 が 目 を 開 き ト レ ー ナ ー の 手 の 動 き を 見 る 必 要 が あ る 。 野 生 に お い て は 、 陸 上 で は 眼 を 開 い た ま ま で あ る こ と は 少 な く 、 多 く の 時 間 を 睡 眠 や 休 息 に 費 や し て い る 。 そ の た め 、 陸 上 に て 長 い 間 眼 を 開 い た 状 態 で い る こ と は 、 飼 育 下 個 体 に 特 有 で あ る 可 能 性 が あ り 、 野 生 と 比 べ 紫 外 線 に よ る 眼 科 疾 患 の リ ス ク が 高 ま る 可 能 性 が あ る
[7]
。ま た 、 シ ョ ー に 参 加 す る 個 体 は そ の 個 体 の 識 別 や 、 迅 速 に シ ョ ー の 準 備 を 行 う 目 的 で 、 個 別 飼 育 さ れ て い る 場 合 が あ る 。 今 回 、 シ ョ ー 参 加 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 少 な い こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ は 、 シ ョ ー 参 加 個 体 を 個 別 で 飼 育 し て い る 場 合 、 例 え ば 給 餌 の 時 間 に は ト レ ー ナ ー の 手 か ら 直 接 餌 を と る こ と が で き 、 他 個 体 と 争 う 必 要 が な い 。 こ の こ と か
ら 、 個 体 間 で の 闘 争 や プ ー ル 壁 で の 擦 れ に よ る 外 傷 で 角 膜 疾 患 を 発 症 す る 機 会 が 減 る 可 能 性 が あ る 。
さ ら に 、 シ ョ ー 参 加 個 体 に 水 晶 体 疾 患 へ の 罹 患 が 多 い こ と が 明 ら か と な っ た が 、 こ れ は シ ョ ー で は ト レ ー ニ ン グ に 時 間 が か か る た め 熟 練 の 個 体 が 参 加 す る 場 合 が 多 く 、結 果 年 齢 が 上 が っ た せ い か も し れ な い 。実 際 、 本 研 究 で 関 連 の 見 ら れ た ゴ マ フ ア ザ ラ シ の シ ョ ー 参 加 個 体 の 年 齢 を 調 べ た と こ ろ 、 不 参 加 個 体 の 平 均 年 齢
17.8
才 齢 よ り も 参 加 個 体 の 平 均 年 齢21.6
才 齢 の 方 が 高 か っ た 。4.7,
外 傷 性 眼 科 疾 患 ( 闘 争 歴 、 餌 獲 得 競 争 )Colitz
ら (2010a
) の 報 告 で は 、 メ ス 、 未 去 勢 オ ス 、 お よ び 去 勢 オ ス に お い て 、 個 体 同 士 で の 闘 争 歴 の 有 無 に 明 ら か な 違 い が 見 ら れ た 上 に 、 水 晶 体 疾 患 罹 患 数 と 闘 争 歴 と の 間 に 差 が 認 め ら れ た[4]
。 ま た 、 個 体 間 に お け る 闘 争 は 、 角 膜 に 直 接 的 な 外 傷 を 負 う 可 能 性 が あ り 、 二 次 感 染 等 を 引 き 起 こ す 場 合 が あ り 、 特 に 細 菌 感 染 に よ り 角 膜 炎 が 悪 化 し て 角 膜 穿 孔 を 引 き 起 こ し 、 失 明 す る 恐 れ も あ る[6]
。 ま た 、 闘 争 は 眼 に 損 傷 を 負 う き っ か け に な り や す く 、 他 の 論 文 に お い て も 眼 科 疾 患 の 要 因 と し て 多 く 挙 げ ら れ て い る[2, 3, 4]
。本 研 究 に お い て は 、個 体 間 で の 闘 争 歴 の あ る 個 体 は 比 較 的 少 な く 、 ま た 、 闘 争 を 起 こ し て い る 個 体 は オ ス よ り も メ ス が 多 か っ た 。 メ ス の 方 が 多 か っ た こ と は 、 そ も そ も 飼 育 さ れ て い る 個 体 に メ ス が 多 か っ た こ と が 理 由 か も し く は 人 と 同 じ よ う に メ ス の 方 が 長 生 き か も し れ な い 。餌 を め ぐ る 競 争 で は 、 爪 や 牙 に よ る 損 傷 の 危 険 性 が あ り 、 外 傷 性 の 眼 科 疾 患 に 罹 患 す る こ と が 示 唆 さ れ る 。 本 研 究 に お い て 、 競 争 経 験 の あ る 個 体 に 水 晶 体 疾 患 の 罹 患 が 多 い こ と が わ か っ た 。 競 争 に よ る 鈍 性 の 外 傷
を 負 っ た 場 合 、 時 間 が た っ て か ら 水 晶 体 変 位 等 を 発 症 す る こ と が あ る と い う 報 告 が あ る
[5]
。 今 回 も 同 様 に 、 鈍 性 ま た は 穿 孔 性 外 傷 に よ る 水 晶 体 疾 患 で あ る 可 能 性 が あ る 。4.8,
水 質 に よ る 眼 科 疾 患 ( 飼 育 水 の 種 類 )飼 育 下 鰭 脚 類 に お い て 、 真 水 で の 継 続 的 な 飼 育 に よ り 、 眼 の 損 傷 が 頻 繁 に 起 こ る こ と は 既 に 報 告 さ れ て い る
[3, 7, 8]
。し か し 、バ イ カ ル ア ザ ラ シ の よ う に 真 水 に 棲 息 す る 種 も い く つ か 知 ら れ て お り 、 そ の よ う な 種 に お け る 飼 育 下 で の 眼 病 変 は 、 多 因 子 性 に 起 こ る 可 能 性 が あ る 。 一 方 で 、 化 学 物 質 を 添 加 し て い な い 真 水 で 飼 育 し て い る 園 館 で は 、 鰭 脚 類 の 眼 病 変 が 認 め ら れ な か っ た と い う[8]
。 こ の こ と か ら 、 真 水 か 塩 水 か が 問 題 で は な く 塩 素 等 の 消 毒 薬 の 添 加 が 飼 育 水 に よ る 眼 科 疾 患 の 大 き な 要 因 か も し れ な い 。飼 育 水 は 、水 中 で 暮 ら す 動 物 に と っ て 、角 膜 に 直 接 触 れ る 媒 体 で あ る 。 例 え ば 個 体 間 に お け る 闘 争 な ど に よ り 角 膜 表 層 に 外 傷 が あ る 場 合 、 飼 育 水 中 の 菌 に 感 染 す る な ど し て 角 膜 損 傷 の 治 癒 が 遅 延 す る 可 能 性 や 、 損 傷 の 悪 化 を 引 き 起 こ す 可 能 性 が 考 え ら れ る 。
Colitz
ら(2010a
)に よ る と 、 水 晶 体 疾 患 罹 患 数 と 真 水 飼 育 と の 間 の 差 は 認 め ら れ て い な い が 、 も と も と 海 水 に 棲 息 す る 種 の 場 合 、 浸 透 圧 や 消 毒 薬 の 添 加 量 の 違 い が 眼 に 何 ら か の 影 響 を 及 ぼ す で あ ろ う[4]
。今 回 、 カ リ フ ォ ル ニ ア ア シ カ に お い て 真 水 で 飼 育 さ れ た 個 体 に 角 膜 疾 患 の 罹 患 が 増 え る こ と が わ か っ た 。 消 毒 薬 等 の 化 学 物 質 添 加 が 影 響 し て い る と 考 え ら れ る が 、 今 回 は 消 毒 薬 の 添 加 や 濃 度 、 あ る い は 飼 育 水 の 循 環 方 法 等 を 尋 ね て い な い こ と か ら 要 因 を 特 定 す る こ と は 難 し い 。 今 後 、 消 毒 薬 の 種 類 、 添 加 頻 度 を 調 べ る と 共 に 、 添 加 に よ る 水 中 細 菌 の 分 布 お
よ び 眼 科 疾 患 と の 関 連 性 に つ い て 調 べ る 必 要 が あ る 。
4.9,
治 療 の 効 果 と 予 防 ( 治 療 経 験 、 治 療 効 果 )眼 科 疾 患 に 対 し 、何 ら か の 治 療 を 施 し た 個 体 が
81
頭 で あ っ た に も か か わ ら ず 、そ の う ち の52
頭 は 効 果 が 無 い 、あ る い は 不 明 で あ っ た こ と か ら 、 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 の 治 療 が 確 立 さ れ て い な い こ と が わ か っ た 。 鰭 脚 類 の 瞳 孔 は し ず く 型 を 呈 し 狭 い こ と か ら 、 水 晶 体 や 網 膜 等 の 内 部 構 造 の 眼 科 検 査 が 困 難 で あ る[21]。 結 膜 下 の ア ト ロ ピ ン お よ び エ ピ カ テ キ ン 希 釈 液
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) 添 加 は 、 ア ザ ラ シ で 瞳 孔 を5-6mm
に 拡 張 さ せ る こ と が 知 ら れ て い る が 、 こ の わ ず か な 散 瞳 は コ リ ン 作 動 性 受 容 体 お よ び ア ド レ ナ リ ン 作 動 性 受 容 体 が 少 な い こ と を 示 唆 し て い る 。 こ れ は 、 鰭 脚 類 の 瞳 孔 周 辺 の 筋 肉 が 散 瞳 よ り も 縮 瞳 の た め に 発 達 し て い る と 考 え ら れ て い る[21]
。 さ ら に 、 眼 科 検 査 を 行 う 際 に は 頭 部 を 固 定 で き る こ と が 望 ま し い た め 、 日 ご ろ か ら 十 分 な ハ ズ バ ン ダ リ ー ト レ ー ニ ン グ が 行 わ れ て い る 必 要 が あ る だ ろ う 。第 二 章 日 本 国 内 の 動 物 園 ・ 水 族 館 に お け る 飼 育 下 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 の 意 識 調 査
1. 序 文
国 内 の 動 物 園 や 水 族 館 で 飼 育 さ れ て い る 鰭 脚 類 に お い て 、 白 内 障 や 角 膜 炎 等 の 眼 科 疾 患 は よ く 見 ら れ る 。 飼 育 施 設 に お け る 眼 科 疾 患 の 環 境 要 因 と し て 、 水 質 や 紫 外 線 、 プ ー ル の 構 造 等 が 挙 げ ら れ る 。 ま た 、 飼 育 個 体 に お け る 要 因 と し て 、 個 体 同 士 の 闘 争 、 個 体 の 親 の 眼 病 歴 等 が 考 え ら れ て い る 。 ア メ リ カ ・ バ ハ マ に お い て 、 飼 育 下 鰭 脚 類 の 白 内 障 お よ び 水 晶 体 脱 臼 の リ ス ク に 関 す る 調 査 を 行 っ た 報 告 で は 、 年 齢 、 闘 争 歴 、 眼 病 歴 、 そ し て 日 陰 の 存 在 の 有 無 が 要 因 と し て 明 ら か と な っ た
[4]
。今 回 、 飼 育 下 鰭 脚 類 の 眼 科 疾 患 の 実 態 調 査 を 行 う 上 で 、 動 物 園 ・ 水 族 館 職 員 の 眼 科 疾 患 へ の 意 識 を 明 ら か に す る た め に 、 日 本 国 内 の 動 物 園 ・ 水 族 館 を 対 象 に 、 海 棲 哺 乳 類 の 眼 科 疾 患 に 対 す る 意 識 調 査 を 行 っ た 。
2. 材 料 と 方 法
2.1
、 ア ン ケ ー ト 調 査公 益 社 団 法 人 日 本 動 物 園 水 族 館 協 会(
JAZA)に 所 属 し 、鰭 脚 類 を 飼 育
し て い る 動 物 園 ・ 水 族 館 を 対 象 に 、 海 棲 哺 乳 類 の 眼 科 疾 患 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。 全13
項 目 の ア ン ケ ー ト 内 容 は 表3
の 通 り で あ る 。表