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浜名湖の生い立ち

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(1)

浜名湖の生い立ち

著者 池谷 仙之

雑誌名 静岡地学

81

ページ 1‑12

発行年 2000‑06‑18

出版者 静岡県地学会

URL http://doi.org/10.14945/00025126

(2)

静 岡 地 学 第

8 1

( 2 0 0 0 )

浜名湖の生い立ち*

池 谷 他 之 村 lまじめに

浜名湖は古くから「湖

J

と呼ばれているが、確かに過去には淡水の内陸湖だ、った時代があった。し かし、現在の浜名湖は遠州灘から外洋水が流入する典型的な内湾の様相を呈しているO この「潟」は どのようにして、いつごろ生まれたのだろうか。そして、どのような変濯を経て今日に歪ったのだろ うか。この

f

生い立ち jの原風景を復元してみたい。

I

原風景の復元

J

とは、われわれが「その時

J I

こに j 居合わせたとしたら、どのような風景を見ながらどのような事変を体験したのか、過去にタイ ムスリップしてみることであるO

.浜名湖周辺の自然史

中生代の頃 (1‑ 2億年前):浜名湖の北部に m の 1~ い w 地が連なっている O この山地

の堆積物からなるO 付加帯の堆積物に からはじまるといえるO

んだ晩壮年一老年期を示す標高

3 0 0 4 0 0  

としてジュラ紀に形成された「付加帯

J

も散在するが、この地域の地史はジュラ紀 られるほか、

録は残されていない。これらの地躍は海の北岸まで分布し、湖岸に沿って に没し、浜名湖の基盤となっている(ボーリング地点日ずの湖底下約

50m

を形成しながら された)。

後期更新世の頃

( 6‑12

万年前):浜名湖の東部に広がる台地の

1 0 1 

a)  した

も海浜の砂様、 シルト、?可JlI (

1 0 1 5  

に対比されるこ ジミの化石が含ま いるn この

して、

終:

m

も低下し (ヴュノレム

扇状地と

20m

以上) G

1

80m

以上)

水辺

3m

ものワニ

るシ

して

1 0  

あっ されるO この 現在の浜名滞付近にはいくつ が流れてい

な形をした浜名湖とその5本の指に

えられるO ちょうど右手を開いたよう まさに

f

古浜名}r[Jの名残といえるO

(3)

, 

'A 

、 、

務 品 …

1

.浜名湖周辺の古地理と

a

':::1..)レム間氷期(約

6‑12

万年前頃)ヲ

:ヴュルム氷期(約

2

万年前噴), :後水期 (

5

千年前頃),

:浜名湖地識の東語地形模式断蕗

(1

:西浜名丘陵ヲ

:新所原段丘ヲ

3:

気賀段丘ヲ 4::三方原台地, 5 東鴨江台地, '尾野口段丘ヲ A:渥奨累層.:浜松累層.C : 

D'=

方原警護麗噌

E  : 

で少 に時

〉かけていた。オオ でい八ゅO

I I J

はそれら に却しユ

I I J  

には[三ヶ日人jや「浜北人jが 住みつき、ナウマン像に代わってあらわれたアオモリ像やオオツノジカ

カミやトラも生息していたことが化石記録から知られているO

後氷期になっては万年前以降)::最終氷期が終わり地球全体が温暖化に向かうと、海水準は急激に しはじめ(図7)、それまでに浸食された谷筋に向かつて海が侵入してきた。その頃の浜名瀬はま だ、いくつかの谷の合流部にあたり、その河口部に海水が進入していた程度であった。

1 )   1 0

0 0 0

年前頃:海はさらに谷の上流部まで侵入し、現在の浜名瀬の中心部あたりまで達した。

この培、浜名湖は小さな湾として誕生した(国

2A)o

この湾は湾口が広く、外洋水が豊富に流入した と思われるが、

40m

という当時の海水準と堆積面高度から捻定して、水深は湾奥で

2 3m

、湾口部

1 2

13m

と浅かった。そのために、湾奥部にはすでに内湾的な環境が形成されていたと考えられ

o 9

0 0 0

年前頃になると、外洋水の流入が増加して湾域が奥部まで拡大していった。この持期には、

現在の湖北や支湖はまだ陸域にあって、湾内に流入する河川の河底であったと考えられるO

)

0 0 0

年前頃:海水準の急速な上昇に伴って浜名湖は一層拡大し、流入河川沿いに海岸線は内 陸部深く(標高

5m

付近)まで侵入した。湾の形状は捜雑となり、湾口も広く大平洋沿いに開いてい た。その結果、湾内に外洋水が大量に流入し、同時に沿岸より多量の粗粒堆積物が湾内に運搬され、

海生の生物も湾内の奥深くまで侵入してきた。この時期の後半、約

7 . 0 0 0

年前頃には湾央付近まで砂 質堆積物が厚く堆積した。そのため海水準が上昇したにもかかわらず¥湾奥部では低塩分性の生物群 が卓越する内湾環境が作られた。

(4)

静岡地学

8 1

( 2 0 0 0 )

られる句

C: 

3)  6

0 0 0   3

5 0 0   6 . 0 0 0  

作用は

1  2υ/0 

〉でいた砂のパリ えられるO まり、

ーによっ

¥ / . : ' : .  0 

¥..

/、 1 ‑ ' ̲ ノ ゴ ノ ノU / 1Jト →WI...JVノ j/J..I亡l:::::‑IU/v I':1..11 . . . / ノ ‑ 'V : ノ ノ /'‑

ヰ) 3

0 0 0   :  5 !

いつ1'‑

の包下ととも した

c) この

いる

の原因とし

きていたこと えられるO

5)  1

8 0 0  

(

2m) 

し、淡

(

2

これら

(5)

浜名湖を外洋から孤立させ、湖水は狭い河J

1 1

を通じて外海に流出していたと考えられるO

6)  1

0 0 0

年前一現在:海水面は再び上昇しはじめ、現在とほぼ同じ水準に達した。本格的に海水 が流入するようになったのは

1 4 9 8

年の津波とその翌年の暴風によって「今切口

J

が決壊してからであ O 一方浜名湖周辺ではマツ林が卓越するようになるが、これは人工的な植林によるものと えられ O

34km

ヘ湖岸線の総延長

1 4 1km

という数字は、広くて浅い複雑 は盆状で平均水深

7 . 2

(最大水深 16.1n1)、南半部は浅 の!揺は

200m

しかない。このような形状では外洋との水 えないのに、湖水は外洋水に近い りして、人工的に外洋水を湖奥 じる湖

しかも 74 kn1

2

2. 

地 形 :

な形状の湖であること 瀬で平均水深

2.5m

の交換

これは湖

O

めであるO まで流入させる している

湖底 に延びる

3

列の舟底型盆地や

(波曲運動)も大きく関与し (比高約

5

m)が連続し、湖を大

もっ (

3

)にあらわれる

ら見て、浜名湖の形成

宇 品 一 湖のほ

られるO ていると

く、第四紀以降、継続

1.5m

の湖棚と

1 . 5

も潮流による

9

L

きく

3.5m 

によっ

3  5 0 0   ( 3

0 0 0  

:

P

<‑

し ~o

‑ 4  

リング地点、

h門 的自 ﹁

3.

浜名湖底の等深線と

εnhu‑nada

ωh

的 一

F

Sndbnk

Bぴ言

1 9 s i t e  

‑1αn‑

. . . 7

.5

m ‑

34'40'N 

&ηa嶋 岬

,.,・

2

.5m…

3ヰ。ヰ容'N

(6)

静 岡 地 学 第

8 1

( 2 0 0 0 )

底質:湖底の表層部には図

4

に示されるような堆積物が分布しているO 湖内に突き出た岬の延長部 と湖北の沿岸部に し、この付近の湖概から緩斜面にかけての浅瀬には「小氷期jの海 水準の低下によって堆積したと推定される基盤岩から由来した擦が表層数

cm

の泥層下に堆積してい O タト洋水の流入する湖南および湖東沿岸部の浅瀬には淘汰の良い砂(中央粒径値

2‑3 c t )が広く分

布するO これに対して、海の北半部と支湖には河川により供給された比較的淘汰の良いシルト(中央 粒 径 値

5‑6 c t )

が堆積しているO これらのシルトの分布の中心部では、比較的水深が深く盆状構造を しているため、夏季には湖水の成層による停滞水域が発生し、底躍には無酸素層が広がり、広範囲に 還元環境が形成されるO また、ここでは底性生物による堆積物の撹持もJ乏しいため、底質は表層

1 0 cm

が黒色軟泥になっているO

:浩司口から供給される の高塩分水と沿岸水、後背地から河川によってもたらされる淡 水、これらが混じり合って日 は最大の汽水域を形成しているO淡水の供給は

1 4

の中小 河川によるほか、湖面に

i

寄る雨も加わり、そ

1 . 6

倍に達するO海水はi

200m

されるO その塩分は外洋の

3 3 . 5PSU 

( して湖奥では

3 1PSU

となるO 水の交 した外洋水(湖容積の約

5.6%)

は潟水と ユ「今切口

J

からのみ流入し、

分の単位で

1kg 

とし しながら 3

水 温 氏 持と 水の

5  6m 

生物相:湖内

C a p i t e l l a  c a p i t a t a

O

3.  5

; : ' v

0) 

るように

、どのよう

によって湖内

O さらに、

O

し いることに

Theora l u b r i c a  

るま ( ときから

ちよいの ろうカ〉。

O きい。

は少ない。こ

8 1 0

0

C

よる

るため、

いること

るため

O どこから のようにし

(7)

ボーリ されているので、音波探査を

まで推定できるかも :海内に増積物がどのくらいの摩さ堆積しているのか。

れる前の基盤があるO この基盤の深さがわかればよいの ング資料から求めることは不可能で、あった。

行えばその地形や分布深度がわかるはずで い。船底から湖底に音波を発信し、

知機と同じ)だが、水深の浅いところ

5m

以上の湖北において部線の総延長

3 2 . 5

にわたって実施した。ところ

測線の

4

分の

l

で、しかも

つルO

い介。肝心の湖央部で

かったこと が地

れより しないこと

るほかなかっι O

がかかる

o 1 0 0  

は何本も掘 削するわけにはいか

くてはならない。 で掘削地点

て掘削船を導入することができ とし

ション

4) 

mの柱状コア らのコ

るが、 からなる。湖央深部 (H‑l) と薄い

( 1 3  mm)

(H‑4)

(

8

b )

しているO

は上方細粒化 に粗粒化する堆 を示す

2

つの堆積サイクノレからなり、

積サイクルが

2

度が見られるO これら はこれらの葉理のない層準に散在し、

イクノレのシノレト

は、下部より淘

汰のよい砂からシルトに上方細粒化し、貝殻片はこのシルト

は上方組粒化サイクルが

2

度見られ、シノレト層中に O はj 汰のよい細粒砂が最上部まで続いているO

対 比 .

1 4 C

年代は主として貝殻片と木片を用いて各柱状コアの

3 1

麗 準 に 対 し て タ ン デ ト ロ ン 加 速 器質量分析計で測定された。その結果、最も古い年代は

H‑3

コア

( 4 7 . 2 3

m層 準 ) の 呉 化 石 が 示 す

1 0

0 0 0

1 6 0yBP

であった。すなわち、浜名湖ほ約

I

万年前に堆積しはじめたことになるO 湖奥から

‑ 6 ‑

(8)

40 

L-~--~--""-::""~ 置 ‑ ‑ ‑ ‑

住認逗須さ鴻

E 1  

7760

190

50 ベ

vE 醐 聞 岡 田 叫 帽 向 山 喝

院言語三塁

50

.4

5Et

・;.;.;.;.;.;.;.;. ・骨平匂軍

3

10 

20 

30 

静 岡 地 学 第

8 1

( 2 0 0 0 )

85H‑3  85H

38 85H‑2  85H‑1  85H

18 86H‑4  86

討日

48

790

100 3980

120 5240

100 6600

160 6190

110 6780

120

4790

120

hu

nu

u

nu

w

M

4g の 品

︒ 凶 向

︒ 時 ぷ 向

445GUW

2 4 B 4

士十一十一十一十一十一

w nv nw nv nu

nv

UV

g

u 司d 令 M45S

M 災 W 4 2 4 E A

?g災

u w

ヲg

g

m

r

L

G

7140

140

7470

130

60 

5.

浜名湖のボー

1 )

ング柱状国

1

粘土

2

シルトヲ

3

砂質シルト,ヰ:シルト

:中粒砂

8

組粒玖

:jレト@

:翻粒砂,

の年代錯も、

7

1 4 0

に、ほ段南北方向の谷地 しているO また湖央の

H‑2

3

コア 湖 口 に 向 か つ て 、 ,

2

3

と各コアの基底は深くなり、

9

7 2 0

1 0

0 0 0

yBPと古くなっているO このことは、

形に谷の下流域から膜次上流域に向かつて堆績が進んだ、こと

それぞれ

3

9 8 0

4

1 0 0

yBP

4

0 0 0

この時代ですでに終了していたか、そ

1 . 9 0

0.20m

物が欠如しているO これら また

にあったこと かるO 従つ」、 られるような湖口部が浅く

すでに

6

0 0 0 7

0 0 0  

yB.P.頃に形成されていたと考えられるO また、こ という逆額斜の湖底地形

(9)

(m)  O 

10 

員宮e (x103y

. B . p . )  

7 ?  

~

 :'

~

A一一一一一一一品一一一一一‑

~I

Aj .~

~I 9  8 

この年代値に挟まれた厚い砂質堆積物

10 

隠岐火山灰

(Ok

i)

H‑3

の下部

( 4 4 . 5 8m 

灰白色の微粒砂 カホヤ火山灰

( A h )

(

6

3 0 0

のオリーブがかっ けられるO

テフラ(火山灰)は、 1)

から

3cm

のことは、

によっても

(

9

3 0 0

として、

2 )

@

y

20 

30 

1 . 5cm 

H‑4

の下部

( 1 5 . 7 5

1cm

厚の灰白色の細粒火山灰として、

また、

3 )

カワコ令平パミス

(Kgp)..大沢スコリア

(Os)  (

6

3 0 0

年前) (

8c )  

( 6 . 5 6

6.52m の

H‑1

の下部

( 1 4 . 2 5m 

H‑2

の上部

( 8 . 9 8m 

年前)は

7

3mm

の上部

( 4 . 9 7

4 . 8 8

ll1 

ミス から、灰

れ ぞ れ

2

3mm

における各地点、の1

4 C

年代測定値

6.

および黒褐色細粒のスコリアがペア され

この対をなす火山噴出物はいずれも細かな葉

シノレト

1 0   4cm

まれるシノレトの

らわしているO

H‑4

地点で

35‑63

このことは、

O

cm

また現時点では、

O

2 0  

ことに 地点で

1 6

6 3  

より約

2 0

された

うことによって浜名瀬の を入れ、層棺の対比

O

コアーに

(

6) 

まで くコアの対比から

のに対し わち、湖央深部

( H ‑ 1 )

し、庄内湖

( H ‑ 4 )

ではカワゴ平ノfミス@大沢スコリ

( 0 . 2 8  

:  1 4 C

およびテブラの年代値に めら

きく変化し

0 . 2 5  c m / y )  

H‑1

に比べてやや速し

Aa

にドeti‑‑J8JJJiiiiij 

J e

J

J A  

︐ ' /  

AJ 

︐ F /  

/

J J

ぷ 唱 / d r

︐ 

d

/  

︐ 晶噛

となり、カワゴ平パミスは大沢スコリ 本地域がこれらの噴出物の西限と

これらの年代値に 自然を復元し

( 0 . 2 0  

0 . 3 7  c m / y )

であるが、

湖央部

( H ‑ 2

3 )

では、約

7

5 0 0

それ以降から約

6 . 3 0 0

年前のアカホヤ火山灰の降下年代 までは共にやや れ以浅では

H‑1

に比べて

( 0 . 1 6  c m / y )

を示しているO

( 0 . 2 8  

0 . 3 7  c m / y )

であるが、

の砂が短期間に大量に供給されたことを物語っているO そして

4 . 0 0 0 6 . 0 0 0

年前頃には砂の供給も 減少して堆積速度が急速に遅くなり、その後の堆積物はほとんど存在せずに現在の湖底に続く。この 間の堆積作用は極端に遅い堆積速度

( 0 . 5m l n / y )

であったか、または無堆積状態にあった。このよう な堆積状況は堆積物の粒度組成からみても考えにくしおそらく

4 . 0 0 0

年前以降は砂の堆積と削剥作

により このことは、

(1

. 8 ‑ 1 1 . 1  c m / y )

となるO

にかけてはきわめて速し

(10)

静 岡 地 学

8 1

( 2 0 0 0 )

1 0   9  8 

(x103

y . 怒

.P.)

j

綾 部 怒閉 と

1

2 F 3

量 畿 勢 綴 名

J x v d

s

vd g

晶 噛 静 電

ss ss ff

りげMW

11 1

! 5 p

i l j j

U

mW 75

り返さ い?ものと

δ 1 3 C  

../:

と陸域の両方から まれる

(C/N

比)およ いるO 海洋性およ 水 化 物 、 タ ン パ ク

C/N

比は低く、

て供給されるが、

C/N

比は高く、

3  2 

( m 5 )  

6.50m

¥ 田 町 出 / O 

建警

曜 襲 撃語

‑20 

慈雲量

O

うまでもなく海水と河川水とが流入し

O

るもの、あるいは湖の

(1

3 C j l2 C

比)

30

6 . 70 r n  

‑働省事

40 E

60m

8.

‑ 1

コアの断面

a

X

c

大沢スコ

1 )

いるので、 に岬'7'  もの

ることが明らかにされ ンクトン

(アミノ基)を含むの るカ人タンノf

くなるO によっ

いるの

(1

2 C

1 3 C )

は小さくなるO

同一地点、における

もち

れ ソ 念品

︒大﹂

AV

LV

O

O

H‑2

の コ ア に つ い て が と

比 が 分 析 さ れ 、 約

1

比は低下し、

O 13 C

の 値

(11)

れた。その結果、

δ13C

と 比 の 負 の 相 関 が き れ い に あ ら わ れ 、 約

6

5 0 0

年前頃の に最高に達し、その後

4 . 0 0 0

6 . 0 ∞ 0 0

年前まで海進が続き、

3 . 0 0 0 ‑

‑巴叩也叩句

て「川

4

小¥氷期

J

となるO そして

1 . 0 0 0

年前あたりから再び海水準が上昇し、現在に至っている(閣

7)0

きことは、約

7 . 0 0 0

年前を中心に一時的な「寒冷化

J

が現れていることであるO

:湖央深部と支湖のコアー

( H ‑

1

4 )

は全体に泥質で、シルト

90% 

を越え、その中に薄い平行葉理の発達する層準があるO この部分のコアーを縦割りして厚さ

1cm

の板 にし、それに軟

X

線をあてると平行葉理は白黒の縞模様として一躍鮮明になる(関

8

a) 0 縞の厚さは

1 3mm

と非常に薄いのが特徴であるO このような縞模様は、内陸の火山性酸性湖を別とすれば、他 の汽水湖では見たことがない。調査した当時は、浜名湖の泥質堆積物に特徴的なものとして、その成 因をめぐって熱い議論が交わされた。

この白と黒としてあらわれる葉理が、どの季節に、どのよう したかはまだ十分に言語 べられていない。底生生物がいれば泥は撹持されて均質化され、 となるO また泥が撹持され なければ、泥の粒子は順次堆積したままの状態で残されるO したがって、 はそれぞれ堆積 物の性質が異なっていることを示しているO 湖水は冬季の循環期と夏季の停滞期をもつので、これら ごとの水域環境の違いが堆積物の性質に反映されたのではないかと推定されるO また、縞模様 に厚い部分と薄い部分があるのは、年ごとの気候条件を反映していると考えられるO この推定によれ ば、白黒一組の模様は 1年間の堆積物で、個々の縞模様は樹木の年輪にあたるかも知れない。いずれ にしても、この縞模様が、年間を通じて底生生物の生良しない無酸素環境下で形成されていることは

ユ丈P:l

o

おわりに

まれ、東京で育った私にとって、浜名湖の存在は遠いものであった。浜名湖については小 中学校の社会科で習った程度のことしか知らなかった。浜名湖との本格的な出会いは静間大学に赴任 した昭和

4 5

( 1 9 7 0 )

からであるO 身近なフィールドのーっとして、足しげく通いはじめてから早

3 0

年になるが、この間にも浜名湖の風景はめまぐるしく変貌していった。勿論、この風景の変化は自然

によるものではなし人間活動による自然改造であった。湖内に船を出して底質採集をはじめ

7 0

年代の初めには、まだ葦の繁る湖岸は多く残されていた。しかし、すでに湖水は汚され、スク リューで掻き混ぜられた水はミルクコーヒ一色で硫化水素臭が強く、縮製ω)Jd,損衣摺首位は呉つ盟なヘ

ドロが

2 0

cm

も堆積しているところがあった。最近の舗装道路で臨まれた湖岸はドライブには快 適であるが、護岸コンクリートで固められ、葦の繁る風景はほとんど見られなくなってしまった。し かし、湖水に関してはかなり浄化され、本来の湖水を取り戻す努力が実りつつあるのは好ましいこと であるO これは人々が家庭排水の垂れ流しにやっと気づいた結果でもあるO

浜名湖は「海跡、湖

J

として生まれ、さまざまな変遷を経て、いま「海としての一生

J

を終わろうと しているO これが本来の浜名湖なのであるO 自然の営みの中では、海跡湖は砂鳴によって外洋から 離され、淡水化と埋め立てが進み、やがては湿原となって消滅するはずで、あった。ところが

5 0 0

年前

に、これまた自然の営み(暴風による今切口の決壊)によって浜名湖は一時生きかえった。このよう

1 0  

(12)

静岡地学

8 1

( 2 0 0 0 )

な湖の局辺に人が住みはじめて以来、人は加速度的に人口を増加させ、海とその馬辺を多面的に利用 してきた。人はひとたび自然の恩恵に浴すと、この自然がいつまでも変わらないことを望む。人間の 営みが続くかぎり、浜名湖は改造されながら生き長らえていくことだろうO 浜名湖の研究にはこれま でに学生をはじめ、多くの同僚、先輩諸氏より多くのご教示とご協力をいただいたO この紙面をかり てこれらの方々に深く感謝するO

参考文献

Ikeya

, 

N .  

&託

anda

T .   ( 1 9 7 2 )   :  S u r f a c e  s e d i m e n t s  i n  Hamana Lake

, 

t h e  P a c i f i c  c o a s t  o f  C e n t r a l   J  a p a n .  R e p .  F a c .  S c i .

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7

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Ikeya

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N.  ( 1 9 7 7 )   :  Ecology o f  F o r a m i n i f e r a  i n  t h e  Hamana Lake Region on t h e  P a c i f i c  c o a s t  o f   J  a p a n .  R e p .  F a c .  S c i .

, 

Shizuoka U n i v .

, 

1 1

, 

1 3 1 ‑ 1 5 9 .  

Ikey

N .  and Hanai

, 

T .  

(1

9 8 2 )   :  Ecology o f  R e c e n t  O s t r a c o d a  i n  t h e

amana‑1

or e g i o n

, 

t h e   P a c i f i c  c o a s t  o f  J  a p a n .  U n i v .  Mus.

, 

U n i v .  Tokyo

, 

B u l l .

, 

2 0

, 

1 5 ‑ 5

池谷伯之ラ大浦毅曹

i

可久津浩曹和田秀樹(1

9 8 5 ): 

池谷イ由之9

67‑111 

( 1 9 8 7 )  

:浜名湖のボーリン ついて@ , 

1 3

and Ueda  ( 1 9 8 8 )   :  M o r p h o l o g i c a l  v a r i a t i o n s  o f   a c . u

u n c t a t a( B r a d y )   i n  c o n t i n u o u s  p o p u l a t i o n s  a t  Hamana‑1 。 至 Bay

J  a p a n .  I n .  Hanai

, 

e t  a

l. 

( e d s . )  

, 

E v o l u t i o n a r y   B i o l o g y  o f   O s t r a c o d a

, 

i t s   Fundamentals and A p p l i c a t i o n s .   The K . o d a n s h a  S c i e n t i f i c   C o .

, 

319‑340

, 

Tokyo

, 

J  a p a n .  

池 谷

1 L U

之ヲ和田秀樹雪阿久津浩警高橋実(1

9 9 0 ):浜名湖の起源と地史的変遷

e地質学論集予

3 6

1 2 9 ‑ 1 5 0 .  

池谷伯之曹

3 9 , 

池 谷 他 之

( 1 9 9 3 ): 

海跡湖の地史2

( 1 9 8 8 )   : 

J  apan

, 

5

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9 5 ‑ 1 0 7 .   ( 1 9 7 9 )  

:第

1 2

(1

9 8 1 )   :  115

1 2 7 p p .  

町田 洋@新井房夫(1

9 7 8 ): 

研究雪

1 7( 3 )

1 4 3 ‑ 1 6 3 .

( 1 9 9 9 )   : 

し吋ー

2 6 ‑ 2 9

, 

I n .   URBAN KUBOT  A

, 

3 2 .  

ける

J o u r .  R e s .   C l a s .  

と火 ついて

における 1, 

ノレデラから アラーアカホヤ火

自黙と

1 5 5 p p .  

Matsushita

, 

M. and Sanukida

, 

S .  

(1

9 8 6 )  :  HolocenεVegetation 

roundLake Hamana on 

(13)

t h e  P a c i f i c  C o a s t  o f  C e n t r a l   J  a p a n .  Q u a t e r n a r y  R e s .   (Tokyo)

, 

2 6  

()

3 9 3 ‑ 3 9 9 .  

秀樹@加藤義久@和田秀樹@岡部史郎

( 1 9 9 5 ):浜名瀬の堆積物コア中の元素の分布と過去 l

万 年 地球化学,

2 9

, 

8 5 ‑ 9 7 .  

Nakai

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N .

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O h i s h i

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S .  and Kuriyama

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佐々

and c l i n 1 a t o l o g y  :  Sea and c l i m a t e  change d u r i n g  t h e   N u c .  I n s t r .  M e t h .

,話

2 9

2 2 8 ‑ 2 3

1. 

( 1 9 8 7 )   : 

より見た浜名湖の堆積過程と古環境e 静大地研報ラ

1 3

1 1 3 ‑ 1 4 5 .

地球型

7

(2)

4 0 ‑ 4 4 .

( 1 9 2 7 )   : 

( 1 9 8 8 )   : 

ける浜名湖の堆積環境…完新世海岸砂州の復元上の

J  ou

r. 

R e s .  G

r. 

C l a s .  S e d .   J  apan

, 

5

, 

1 0 9 ‑ 1 3 2 .   ( 1 9 8 2 )  

:今切はどうして出来たか?

対策資料ヲ

( 1 9 7 8 )  

:浜名湖の概要.

3 2   p p .  

2 8 8   p p .   ( 1 9 8 7 )   : 

について

(ボーリン (西).

9 3  

(6)

,  4 1 9 ‑ 4 2 9 .  

ム 4 9 ‑ 7 8 .

渡辺和敏

( 1 9 7 6 ): 

あゆみ

2 0 3   p p .  

1 2  

参照

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