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水生植物 を用 いた水域浄化効率 に関す る一考察

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長崎大学工学部研究報告 32 59 平成147 167

水生植物 を用 いた水域浄化効率 に関す る一考察

野 口 正人* ・吉田 光**

白川 純子***・牟田 耕平**

StudyonthePurificationEfficiencyofWater byAquaticPlants

by

MasatoNOGUCHI*,Hikam YOSHIDA** JunkoSHIRAKAWA***andKoheiMUTA**

Inordertoattainthesoundandsustainablewaterenvironment,itbecomesimportanttoreducethepollutantrunoff rates,especiallyfrom thenonpolntsources.Ofcourse,accomplishmentofseweragesystem helpstoattaintheabove purpose.At血esametime,itiswellbowれthattherearesomeproblems,suchasCSO thatis血eCombinedSewer Overnow,financial restrictionfortreatmentofstormwater,andsoon.From thesereasons,removalofpollutantsby constmctedwetlandbecomestobeinterested,recently.

Inthispaper,treatmentefficiencyofpollutantssuchasnutrientsbyconstructedwetlandhasfirstbeendiscussed refemingtothesomeexamples.Next,thevelocityconstantoftreatmenthasbeeninvestlgated,correlatedtotheflow rateofwastewaterintothewetlandandthehydraulicretentiontimeinthefacility.Finally,purificationefficiencyof waterbytheconstructedwetlandhasbeenevaluated,carrylngOutthefieldobservationbyafacilitylntheNagasaki Universlty.

1. は じめに

最近,流域 における自然的 ・社会的活動 に伴い水域 での水質汚濁が顕著 になって きた.そのため,公共下 水道や流域下水道 の整備が進め られている. しか しな が ら,合流式下水道では合流式下水の越流問題,いわ ゆ るCSO (Combined SewerOverflow)の問題 が , ま た,分流式下水道では財政的制約 により雨水 に対 して 十分 な水処理がで きない といった間鴬等が存在 してい る.そのため,水域での水質 を真 に良 くするためには, 降雨時 に流域か ら水域 に未処理で放出 される汚濁物質 に適切 に対処す る必要がある.

上述 されたことは, よ り上質の水環境整備 を目指す

際 に避 けて通 ることがで きない問題 になってい る.そ のため,合流式下水道が敷設 されている大都市では,

t合流改善対策''の実施が早急 に求 め られてい る. ま た,分流式下水道が敷設 された世界の先進的諸都市 に おいては,降雨時の非点源汚濁負荷流出 を如何 に して 削減す るかが大 きな課選 になっている.

以上の ことか ら,本論 では,水生植物 を用いて汚濁 負荷流出抑制 を行お うとの観点か ら,水生植物 の水域 浄化機能 について定量的評価 を試みた.

2.水生植物 を用 いた水域浄化

以前か ら,水生植物の水域浄化作用 については良 く

平成144月18日受理

* 社会開発工学科 (DepartmentofCivilEngineering)

**大学院生産科学研究科博士前期課程環境 システム工学専攻

(Graduatestudent,DepartmentofEnvironmental SystemsEngineering)

***宇部市役所 (ubeCity)

(2)

168 野口 正人 ・吉田

知 られていたが, と くに最近で は,人工湿地 (con‑

stmcted wetland)をも含めた湿地の有用性が言われ始 めた.そのため,非点源汚濁負荷流出抑制 を進める上 で も,水生植物の水域浄化作用 を定量的に評価 し,今 後の人工湿地の設計指針 に役立 てることが求め られて いる.

上述 されたことか ら本論で〉は,水生植物丘 用 いて水 域浄化が試み られた事例 を参考 に して,後述 される分 解速度定数の定量的評価 を行 った.ここでは,二三の 事例 を取 り上げて,水生植物 により水域浄化 を試みた 実際例 について紹介する.

(1)水元公園 (東京都葛飾区)

東京都葛飾区にある水元公園では,大場川,中川の 水質浄化 を目指 して小合酒で水生植物 を用いた水域浄 化 を行 っている')(写真 1).本論 で資料整理 に用 い られたデー タは,参考論文か らの引用であるが,それ が契機で著者の一人は二度 にわた り現地視察 を行 った.

その際に提供 された資料 の詳 しい検討 は,今後引 き続 き行 われるが,いずれに して も小合溜の外溜めに植栽 されたヨシ,スイ レン, コウホネ,ハス,ホテイアオ イ等が 自然 と調和 した良好 な水環境 を形成 している.

バー ドサ ンクチュアリーでの鳥たちの営みや,外溜め や内溜めの水辺で憩 う都民の姿 を目のあた りにすれば, 理化学的水 質指標 だけでは評価することがで きない効 果があることは明 らかである.今後は,この種の水環 境整備 の事例が増加するであろうが,それ とともによ

り清澄な水質の形成が望 まれている.

光 ・白川 純子 ・牟田 耕平

よる水域浄化が試み られている. もっとも, このよう な計画変更は200112月の時点で決め られたことであ り,実際的な施行 は未だ されていない.本論で資料整 理 に用いたデータは,長崎県衛生公害研究所 で実施 さ れた水質浄化実験 によ り得 られた ものである.

(3)その他の事例

茨城県土浦市は霞 ケ浦の畔に立地 してお り,流域か らの汚濁負荷流出抑制に取 り組 んでいる.また,建設 省 (現在の国土交通省)ではビオパーク事業 を進めて いる.これ らについては,今後資料 を入手 して,水生 植物の水質浄化作用の定量的評価 に役立ててい きたい.

ところで,河川管理 において も環境整備の重要性 は 比重 を増 してお り,今年度 (2000年度)か らは自然再 生事業にも取 り組 まれだ した.九州では五 ヶ瀬川水系 北川の支川である友内川等が対象 になっているが,一 方では北川のオグラコウホネの保護が話題 になるな ど している2) (写真2).貴重 な水生植物 の存在 を脅 か すことな く,良好 な水域の達成が望 まれる.写真3は, 地域住民 に親 しまれていることか ら,現地での保存が 検討 されている長崎県佐世保市の池でのホテイアオイ

写真 1 水元公園の小合溜 (外溜め)

(2)諌早湾干拓地 (長崎県諌早市)

種 々の理由で,諌早湾干拓事業は試練 に曝 されてい る. とりわけ,自然環境への配慮か ら干拓地の計画変 更 を余儀 な くされ,東工区の干拓が取 り止め られる状 況 になった.そのため,従来の干拓地では ヨシ植栽 に

写真2 オグラコウホネの群生 (宮崎県北川)

写真3 ホテイアオイの開花状況 (長崎県相浦川)

写真4 フェンスで隔絶 された水辺

(3)

水生植物 を用いた水域浄化効率 に関す る一考察

の開花状況 を示 してい る.

いずれ に して も,湿地の役割 は単 に水質浄化 に貢献 す るだけではな く, とくに都市部では,残 された数少 ない 自然 との触 れ合いの場で もある.その ようなこと か ら,水城 を‖危険個所一として隔離す ることは常 々, 議論 になる ところである.写真4は大阪の衛星都市で 撮影 された ものである.水域 ならびにそ こに棲 む生態 系の保護 と,水辺の親水利用 は時 として両立が難 しい が,その ようなことが問題 にな らない社会 を作 ってい

くことが重要であることは言 うまで もない.

3.分解速度定数の検討

人工湿地 には,表面流れ方式,浸透流 れ方式 とい う 2つの方式があ る.水生植物が水質浄化 にどの程度作 用す るかは,それ らの方式や植生密度等 の違いによ り 異 なって くることは明 らかである.そ こで,水生植物 の水質浄化効率 を評価す るために,以下の ような分解 速度定数:kを用い ることに した.

湿地での汚濁物質の分解除去が,一次反応 に従 うも の として,湿地内の流 れが押 し出 し流 れ (plugflow) によ り支配 される とすれば,

dt=‑k'C

より,C‑ C.ne‑k'tとな り,湿地での滞留時間 : t。et‑hm LR を使 って,次式が求め られる1).

coul‑ C.ne‑k'Edet‑ C,ne‑kHLR

(1)

(2)

ここに, Coul, C,nはそれぞれ,流 出水 ,流入水 の 濃度であ り,hは滞水部の平均水深,HLRは面積負荷 速度 で ある.(2)式 か ら,流 入水濃度 と流 出水濃度 の 比,な らびに,滞留時間を用いて各湿地での分解速度 定数 :kを計算す ることがで きる.

k‑

H L R ・ l n ( 告) ( 3 ,

また,面積負荷速度 は以下の ようにも計算で きる.

HLR

‑ ! ( 4 )

ここに,Qは流量,Aは表面積 である.

分解速度定数はその場の浄化能力 を表すパ ラメー タ であ り,面積負荷速度はかけ られている負荷 を表 して いる.流入永 の汚濁濃度が流 出側で どの程度低下 して いるかは, これ らの二つの値 に関係 していることは明

らかである.

4.ヨシ植栽水路 での水質浄化実験

長崎大学構 内の平面水槽 にヨシ植栽水路 を設置 し,

169

20011112日か ら水質浄化実験 を行 った (写真 5, 参照).使用 した ヨシは,本 明川 (長崎県諌早市 )の 下流の ヨシ原 より,10月1日,9El2日間に渡 って 採取 した ものである. ヨシは順調 に育 ち,新 しく発芽 もした.実験 では,湿地 とい うことを前提 として,流 量 を0.6(I/mi n)とした.流 入水 は水道水 に肥料 を混ぜ た もの を使用 し,ポ ンプで 自動的 に循環 させ た.採水 は,1112日か ら20日までは12時 と18時 に,21日と22

日は3時 間毎 に,流入側 と流出側 で行 い,T‑PBOD の計測 を行 った.

写真5 ヨシを用いた植栽実験

前述 された ように,植物 の水質浄化能力 を活用 した 水域浄化手法 は各地で採 られ始めている. とくに, ヨ シについては様 々な要因により多 くの研究が されてい る.本論 では,その中か ら,茨城県八郷町3),茨城県 土浦市3),長崎県諌早湾干拓地4),東京都水元公 園5) データを取 り上げ,横軸 に面積負荷速度,縦軸 に流入 水濃度 と流出水濃度の比の対数 を取 り,分解速度定数

をパ ラメー タにとって検討 を行 った.

図‑1に,全 デー タに対す るT‑Pの分解速度定数 を示 す.土浦市では,土壌渡床,川砂漉床 について実験 を 行 ってお り,その結果,土壌渡床 の方が良い除去効率

分解 遼 東 定 数(T‑P)

00

0

000000JJ'」321012(.(yt○(di)]di))tl

I ● 土 ! I T F

‑‑I‑ ‑.......k=徽ikk==000義義*...0121I (lrn文難儀)/a

1

1L' ..叫t .J.. liar̲̲.‑ 一 一 ̲̲̲̲̲̲/壬」̲ ̲ ー

J

0 水元公1 0.20 0. 0.80 ,80 1.

1 T‑Pの分解速度定数

(4)

170 野口 正人 ・青 田 光 ・白川 純子 ・牟田 耕平

が得 られてい る. これは,BODにつ いて も同様 の結 果が得 られてお り,土壌渡床 は川砂渡床 よ り渡過効果 が強いため,この ような違いが生 じた と思われる.図‑

1にお ける諌早湾 のデー タでは,夏季の シュロガヤ ツ リが良い除去効率 を示 している. また,図‑2には, キシ ョウブに対す る分解速度定数の季節的変化が示 さ れている.2000 (H12)の値が夏季 と冬季 とで異なっ ていることは,分解速度定数の特性 を考 えれば容易 に 理解 で きる.一万,1999 (Hll)の夏季の値 は2000

午 (H12)の値 に比較 して大 き くないが, これは両者 の植生密度が違 っているためである.上述 されたこと は,水域の浄化能力 を表す分解速度定数が種 々の因子 に支配 されていることを示 している.

‑3には,長崎大学 での ヨシ植 栽水路 での実験結 果が,T‑Pについて示 されている.流入水 と流 出水 と の比較 を容易 にす るために,同図中には水路内での遅 れ時間を考慮 して求め られた汚濁除去率 も併記 されて いる.1512時の分解速度定数が負の値 になった理 由 としては,14日に降雨があったことが上げ られる. こ れ らの分解速度定数の値 は図‑1に示 されているが, 他の観測値 と類似 の値が得 られている.実際 に分解速 度定数の値 を定量的に評価す るためには, ヨシの活性 度や植栽密度 な どが考慮 されねばな らないことは当然 の ことである.

分解濃度責畿(キショウブ:T‑I)

1.0 30.8 至 0.

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00 0.20 0.4 ○.lo o.80 1.

2 T‑Pの分解速度定数 (キシ ョウブ)

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3 ヨシ植栽水路 での実験結果

5.おわ りに

流域か らの汚濁負荷流出抑制方策 として,今後益 々, 湿地の役割が見直 されることが予想 される.そのため, 効果的な人工湿地 を設計す るために も,水生植物の水 域浄化効率 を定量的に評価 してお くことが必要である.

上述 されたことか ら実際の事例 を取 り上げ,分解速度 定数 を求めることによ り,水生植物の水域浄化効率 を 定量的に評価 した. これ よ り,水生植物の種類や植栽 密度,活性度の違 い等 によ り,結果が大 きく異 なるこ

とが示 された.

今回は,11月中旬 に水質浄化実験 を開始 したため, 気温 も低 く,必ず しも好 ましい実験結果は得 られなかっ た.今後 は,対象 とする汚濁物質の質量保存式 におけ る生成項 を,水生植物の植栽密度や活性度 と関連 させ て評価することを考 えている.

最後 に,資料収集等では東京都葛飾区役所や土浦市 の職員の方々に, また, ヨシの採取 では国土交通省長 崎工事事務所の職員の方々に多大 なるご支援 を頂戴 し た.ここに記 して,関係各位 に深甚の謝意 を表 します.

参考 文献

1) 葛飾区環境部環境課 (2002):葛飾区環境 自書.

2) 南谷忠志 (2002):北川町の小川 コウホネ群生 日 本一,宮崎 日日新聞の記事 (2002327日付). 3) 稲森悠平編著 (1998):生活排水対策,産業用水調

査会,pp.303‑310.

4) 農林水 産省 (200 1):8回諌早湾干拓調整池等 水質調査委貞会資料.

5) 田畑真佐子,他 (1996):ヨシ植 栽水路 にお ける 河川水 中の窒素 ・リンの除去効果,水環境 学会誌, 第19巻,4,pp.331338.

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