白ねずみの成長試験による飼料の栄養価評価法の検 討 (第1報) : 飼育期間の違いによる評価結果への 影響について
著者 荻原 和夫, 箱山 年子
雑誌名 紀要
巻 26
ページ 10‑15
発行年 1972
URL http://id.nii.ac.jp/1118/00000895/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止
http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
白ねずみの成長試験 に よる飼料 の
栄養価評価法 の検討 ( 第一報)
‑ 飼 育 期 間 の 違 い に よ る 評 価 結 果 ‑ の 影 響 に つ い て .二
飼料 ( 食餌)の光義m] i を評価す る方法には古 くよ り目 的の飼料を試験食 として動物 を飼育 し,その成長状態を
1 )
此校することに よって判定する方法があ り,報告 されて 来 ているOそれは成長期 の幼動物 に訳等 灸食を与えて適当 期間飼育 し,飼育終了時点での成長状態( 体重増加率等) を求めてその値を比較 し,評価す るのであるが,それ ら の報告をみると,自ねずみを用いての場合一つ とって も 経験的に適当な期間を考慮 して採用 しているもの とは思 うが,ある報告は一週間飼育であ った り,二週間,三週 間 ,一 ケ月な どかな りまちまちであ り,長い方の限界に ついては成長曲線が直線状を示す1
00日くらい まで に 試
2 )
験 を終 らせ るのが よい ことが示 されてい るが.短い方に ついては適切な飼育期間に対する検討が綿密にはな され ていない様に思える。
3),4).5
)
動物はその成長状態が種 々の要因に彫響 されてかな り 複雑な様相 を呈するので,画一的に規定 し難い もの と考
えられ るし, また成長の度合 も成長の段階 で異な って一 定速度ですすむ ものではな く,更に成長率の よい 日と悪
6 ) 7 )
い 日が周期的に来 るともいわれ るし, また
Scammonの成長の塾で示 される様に同じ個体中で考えた場合には部 位に よって成長速度や成長曲線に差があ り,飼育期間の どの時点で評価するかに よってその もた らされ る結果に かな りの差興の起 ることが予想 される。
従来 これ らの点,特 に飼育期間の短い間における飼育 期間に よる評価への影響を検討 した報告は少な く,現実 に動物の飼育実験の計画をたてる場合に も常に問題にな る寄i 項であ った。更に飼育期間の長短に関係な く一定の 結果が得 られ るとすれば,試験期間の短縮 をすることが でき,実験の能率化をはかれ ることになる。
そ こで古 くよ り多 くの人に よって壊われた基本的な事 項であるが.反面 明確な検討の足跡 もない ままにいる問 題 として,自ねずみを用いた成長法に よる飼料の栄養価 の評価について
2‑ 3検討を加 えてみた。
その第一報 として今回は飼育期間の影響についての検 討結果を報告する。
荻 原 和 夫 箱 山 年 子
勿論 この間題について も試験 目的に応 じて, また採用 するml j 定項 目に応 じて適切な飼育期間は異な った ものが あると思われ るが,本報告では体重増加盈 ( 率)並 びに 飼料効率及びタン白質効率のみについてみ る こ と に す る。
実験方法及び検討資料
近親交配に よって得た離乳後1
0日位を経た体重50g 前
後の
Wister系白ねずみを用い, 栄養素の組成 が 異 なる種 々の試験飼料を与えて約
1ケ月間飼育実験を した場 合の
9日臥
18日
臥 27日目の時点でのそれぞれの評価 の結果につ き,同季節に年度並 びに試験内容を変えて行
った二回の実験 をと りあげ検討 した。
実験飼料は種 々用いたが,その具体的な内容は この際 消去 され る要素 と思われるので,飼料の違いに よ り
A飼 料群
, B飼料群・ ・ 州 と符号で表現することにす る。即ち 求め るものはそれぞれの時点での個 々の白ねずみの成長 傾向や飼料効率並びに評価 した結果が飼育期間の長短に
よって どう変化するかを知 りたいのである。
飼育方法は室
温22oC前後,湿度50‑6
0%の室内で白ねずみを一匹ずつ金網髄に入れ, 各試験食を一 日1
0gず つ 毎 日一定時間に与え,水は水道水を 自由に摂取 させた。
毎 日食下血を計 り.また
3日転に体重をmr J 足 した。そ して測定突数値に よ り体重増加率,飼料効率, タン白質 効率を算出したO
体重増加率‑
飼料効率 ‑
評価時の体重一開始時の体盃 開始時の体重 評価諾 莞 霊下畳
(窒要撃聖聖書富監 空室蓋壷開始時の体重) タン白質効率‑ 体重増加量
全摂取 タン白質量
×100
( 全摂取 タン白質盈‑全食下量 ×各試験食の タン白 質含有率)
なお訳玖年度の遣いを試験
1並びに試験
2として区別 し
た。
実験結果及び考察
先ず体重値 (体重増加率)につ いて夫々9日目,18日 臥 27日目の時点 で測定 した値 の結果の相関を見たのが
図1‑ 1‑ 図1‑ 3(試験1)並 びに図2‑ 1‑ 図2‑ 3
図1 測定 日の違 いに よる体重値 の相関 図 (試験 1)
図ト ' 15。[ 図ト 2
(試験2)である。図3‑ 1‑図 3‑ 3は同様な ことを 体重増加率につ いてみた ものを試験2の分のみかかげた ものである。
独立 して行 った二回の試験 につ いていずれ も相関 々係
15。[ 図ト 3
●●●
●● ●● ● ● ●■ ■ ●
関
目帽
川川は
.、11‑7日目
測定
値㈱87れ川0.ニr
ヽ● ●
●●
●ar・J4︻・Tハ1‑7日目測定値㈱
0.、1ll88日測定値引
●
●●
●r‑0.833
50 100
9
日 目 測 定 値
(g) 9日 Eli n J J 定 値
(ど)
図2 測定 日の違 いに よる体 重値の相関 図 (試験2)=T爪.lエ
18 日
刺目
定 植
(g)
●●● ●
●
■●●. . I
‑ + P.
r‑0.928
50 100
.ll
nW山o
亡J127日日測定 値
㈱図2‑2
●●
..
1
‑4.+●●
●
●●
1 0 0
∫‑0.932
皿拙1即日甘測
定
値㈲r‑0.982
100
18
日 目 測 定
借 (g) .I∫‑0.999 図2‑3
メ ..
50 100
9
日 目 測 定 値
(g) 9E日日 測 定 値
(g) 188日 測 定 値
(ど) に有意性を示 してい る.即ち体重値 (又は増加率) よ り栄幾価の評価をす る場合飼育期 間が9日間 で も,27日間 で も同様な結果 の導 かれ ることが示竣 されている。
従来 自ねずみの成長は離乳後4週 目まではその成 長が 不安定 で変動が激 しい ともいわ れたが, この試験時期 は それを過 ぎていることもあ り今回検討 した二例 にみ る限 り体重増加率の比較に よる飼料の栄養価評価については 離乳後i6打目r り試験食を与え,10日間程度の飼育で大 体の懐 向がつかめ る結果 にな っている。
初体重は大体一定 であ り,試験食で飼育後の体重は種 第26号 1971
々の値を とっているので,当然の ことなが ら両者間には 相関がみ られない ことか ら試験食飼育後の体重値並 びに 体重増加率の差 は この場合飼料の栄窮価の違いか らもた らされた もの と考 えて差 し支 えな く,それはす でに9日 目で見 られ,以後一 ケ月近 い飼育におけ る成長 も同 じ傾 向を示す とすれば ,試料 の栄養価の判定 には10日程度の 飼育試験 で長期間飼育 の場合 と殆んで同じ結果 が得 られ ることにな る。
但 し相関の強 さは9日日と18日目の結果の間 よ り18日 目と27日目の間の方が強い ことか ら20日程度飼育すれば
11
図3
測定 日の違いに よる体重増加率の相関図 ( 試験
2)一
●● ..廿山.nA..ht山JT。ー・27日日測定値%
一. .
.八九E<Ⅴ凡け1127日目測
定
値別 ●● ●
100 1
18日 目測 定 イ直(% )
0 50 100
Mt凡■Ll>UJA=T
山
..Ht山Tt⁚ll8日目
測定
値%0 50 100
9日 日測 定 値 (%) 9日 E=則定 植 (%)
表 1
各飼料別の体重増加率の平均値 と判定順位 ‑ Ⅰ ( 試験
1)9 日 目
18日 日
27日 日
体重増加率 判 定 順 位 体重増加率 判 定 順 位 体重増加率 判 定 順 位
試 験飼 料 別
79628341501
419003259379064521139516642111111121
7 8 6 2 9 3 5 1 4 01
89007467761729647038
7
48459859116 9 3 1 8 4 4 2 7 01
053975506019571224624257355732
秤
〃 〃
〃〃 〃 〃 〃 〃 〃
食K L M N 0 P Q R s T
表
2‑1 各飼料別の体重増加率の平均値 と判定順位‑ Ⅰ ( 試験
2)9 日 目
18日 目
27日 日
体重増加率 判 定 順 位 体重増加率 判 定 順 位 体重増加率 判 定 順 位
試 験 飼料 別
672581439
297869717076582685436729851111
8 6 2 5 7 1 4 3 9
15282575859987548522152360111
873561429
1303827395133367811521726
秤
食 ″ ″ ″ ″ ″ ″ ″ ″
A B C D E F G 班 I
精度は一層高 まるもの と思われる. をみると
衰 1,表
2に示 した様に
9日El
,18日E
l,27日
また具体的に各飼料群問の体重増加率の平均値の順位 目で幾分の遵いがみ られるo然 しこれは各飼料群の試験
12表2‑2
各飼料別の飼料効率の平均値 と判定順位 ( 試験
2)9 日 目
18日 日
27日 日
飼 料 効 率 判 定 順 位 飼 料 効 率 判 定 順 位 飼 料 効 率 判 定 順 位 試
験 飼 料 別秤食″″″″
″ ″ ″
〟A B C D E F G H I
620961307373593931PO31041400000000008 7 3 5 6 1 4 2 9
352975719905776011013103230000000000 76 2 5 8 1 4 3 9
9491146477298286420031031200000000006
72
58
14
39
衰 2‑3
各飼料別の タン白質効率の平均値 と判定順位 ( 試験
2)9 日 日
18日 日
27日 日
試
験飼 料
別タソ白質効率 判定順位 タソ白質効率 判定順位 クソ白質効率 判定順位
秤食″〝
″
″″ 〟 ″ 〝
A B C D E F G H I
1069553519209409360020020306 9 2 4 8 3 5 1 7
2265202147740060162021011202
73 5 8
46 1 9
47737778535903583へ8201101020 27 3 5 8 4 6 1 9
動物の頭数が二‑四匹と少な く,標準偏差 も大 き くて平 均の絶対値その ものの信病性が低いため と思 わ れ る の で, これを もって栄糞価の絶対的順位 とす るには危険が 図
4体重増加率 と飼料効率の相関図
‑Ⅰ27
日目の測定値 のみ ( 試験
1)△
∠1チ
‑・TlI・‑ △作並増加牢
㌔
△
i l ■
第26号 1971
あ り,ここでは省略 したが充分な統計処理の もとに判断 しない と其の順位は求め られない と思 う。然 しその こと と.全体的な傾向として飼育期間の適いに よって差がな
図5体重増加率 と飼料効率の相関図‑ Ⅰ
9日目,18
日日,27 日目について ( 試験
2)J! ' /: . ;
化 .
FJ.:
J3'●●
L l l aa ム d
△ ×
A
ご
膏
血 、
X メ△
一
9・A
世・メ
Xふ x '
A Xく
X さ
.′●
13
い結果がみ られ ることとは,切 りはな して考 えて差 しつ かえない もの と思 うO次に飼料効率について検討 してみ ると,これは経 日変化をみた実験結果が一例 しかな く断 定的な ことをい うには資料不足 も懸念 され るが,図
4並 びに図
5にみ られ る如 く体重増加率 と飼料効率の間には 相関があることが二例共にみ られることから,飼料効率 について も体畳増加率の場合 と同様
9日目.
18日目
,27日目の値の間に相関 々係が示 され ることが充分予想 され 図
6体重増加率 とタソ白質効率の相関図 ( 試験
2図)
図6‑2 27日目測定値
体重
増
加率別タ ン 白 質 効 率
る。即ち飼料効率の測定に当 って も
10日間程度の飼育で 求めた値が充分評価の資料に使える結果 とな っていると 判断 してよい様に思 う。
この場合 も具体的な実験結果即ち各飼料群の平均値に よる判定順位は測定時に よって幾分の くい違いがみ られ るのは体重増加率の場合 と同じ理 由が考えられ るが,体 重増加率 とは殆 ん ど同じ順位 とな り, この面か らも体重 増加率 と飼料効率は相関性の強い ことが認め られ る。
図6‑3 9日目測定値
●■●
●
● ●
●
(・/
・
'10体重
増
加年別タ ン 白 質 効 率
次に タソ白質効率であるが, これは図
6‑ 1. ‑図
6‑3
に示 される様に今回用いた試験飼料中の タン白質含有 率が まち まちであ った こともあ り,体重 増 加率や飼料効 率 とかな らず Lも相関 しない結果 とな っているが, タソ 白質効率その ものの飼育期間の長短に よる適いはやは り 少ない ようにみえる。
以上体重増加率については二例 について,飼料効率 と タソ白質効率については一例 について検討 した全てにわ た って飼育期間の長短に よって もた らされる結果には大 差のない ことが示 された。
このことは成長法に よって飼料の栄養評価を行 う場合 の試験期間の設定にあた って適当に行われていた飼育 日 数を可及的短期間にす るヒン トを与えている。即ち これ
らの番頭の判定に当 っては試験食で
10日間程度の飼育で 長期間飼育に よって もた らされ る値 と殆ん ど異な らない 結果を得 ることが可能 と思われ る。それは実験期間の短 縮即ち能率化に貢献す るもの と思われるし,飼育期間が まち まちに扱われている多 くの報告結果 もそれな りの意 味を もつ ものであることが知れた。
但 し相関の強 さとい う点を考慮す ると
,18日飼育後の 結果 と
27日飼育後の結果の間が最 も相関が強い傾向がみ られ,値が安定 しているとい う意味からも
20日間程度の
14
1. 0 2. 0 3. 0
タ ン 白 質 効 率
飼育後の結果で判断すれば一層精度が高 まるといえる。
摘 要
白ねずみを用いての成長法に よる飼料の米塩価評価法 における飼育期間の違いに よる評価結果への影響につい て体重増加率,飼料効乳 タソ白質効率の値を検討 し, 次の様な結果を得た。
体重増加率,飼料効率の値は強い相関 々係にある。
そして体重増加率,飼料効率共に
9EIE l
,18日E
l,27日日で求めた結果がそれぞれ強い相関を示 し
,10日間位 試験飼料で飼育すれば,飼料の栄養価の評価について大 体誤 りのない結果を出せることが知れた。
次に タソ白質効率については今回の試験 では各試験飼 料中の タソ白質含有率が異なることもあ って,前二者 と の相関は少な く, またば らつ きも大 きいが,飼育期間の 長短に よる判定結果への形轡は少な く, これについて も
10日間程度の飼育で大体の懐向はつかめ る様である。
然 しいづれの場合 も
18日目と
27日目の相関が環 も強い ことから
20間程度の時点で評価すると測定値 も安定 し, 一層精度の よい結果が得 られることが知れた。
但 し今回の報告はあ くまで も成長法に よって飼料の栄 弓 削跡の評価を行 うとい う範眺内において検討 した もので
長野県短期大学紀要
. ある。‑方 陣重の増加即ちむやみに大 き くな ることと真 に栄養が よい とい うこととは まった く別な ことであると
8),9),10)ll)
い う最近の考 えは,成長法のみに よる栄養価評価法その ものの適用の限界について述べ られた ものであ り,今回 の結果がすべての栄養試験に適用 され るものでない こと
はい うまで もない。
終 りに臨み動物の飼育に協 力いただいた本学食物専攻 第
20回生,第
21回生の諸妹に感謝いた します。
ll) 森本宏 ;動物栄糞試験法 (養賢堂)125文 (1971年) 2) 安東洪次.田嶋茅堆繍 ;動物拭政法157.‑158文 (1956)
# 26% 1971
3)後藤信男.生せ猛犬 ;会津垣期大学学報2̲ 9(8 1971) 4)清水三雄 ;動物の成長 (北陛虎)23‑30貢 (1957) 5) 中川一郎 ;小児の発育 と栄兼所要丑 (朝倉書店)77‑111貢
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10)中)H一郎 :栄養 と食桂 L8397(1
9 6 6 )
ll) 荻原和夫 ;長野清泉論集旦 44‑49く1970)
15