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強度異方性を持つ粘土のせん断帯生成機構

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全文

(1)

強度異方性を持つ粘土のせん断帯生成機構

著者 森川 嘉之

発行年 1998‑03‑25

URL http://hdl.handle.net/2297/30584

(2)

       く.■ノ∵一,{.し一、

   /       一・.中・㌻・!、イ

      ・・一..・

一L    …。.J、.   ・

・{

 省

 一.  ■

    ・

  I

  ρ・、・、1一一

i  ,

一〜・.ノ.

、∫〜・ ㌦..

    .{  

(3)

強度異方性を持つ粘土の  せん断帯生成機構

森川嘉之

平成10年1月14日

(4)

博士論文

強度異方性を持つ粘土の  せん断帯生成機構

金沢大学大学院自然科学研究科

     地球環境科学専攻

     環境創成講座

学籍番号

氏    名

主任指導教官名

95−2317

森川 嘉之 太田 秀樹

(5)

第1章

 1. 1

 1.2

       目 序論

 本論文の目的…………・

 本論文の内容…………・

    次

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

@1

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

@1

第2章 弾塑性構成理論

 2.1 はじめに・……… ………・・………・………・… ………・… 3

 2.2 連続体力学の基礎理論………・………・………・……5

  2.2.1 物体の運動と変形の記述………・5

  2.2,2 応力と応力速度………・……・・・・…10

  2.2.3 保存貝■」・…・…・ . ... . . . ... . . . . .... ...13  2.3 構成式に関する諸原理・……・………・…………・・……・・・…18

  2.3.1 決定性の原理…・…………・・………・18

  2.3.2 局所作用の原理………・・…19

  2.3.3 客観性の原理…・…・……… . . . .. . . ..... 19

 2.4 弾塑性体の構成式……・………・・……24

  2.4.1 弾性変形特性……・…………・・………・24

  2.4.2 塑性理論…・… . . .. . .. . .. .. 26  2.5 応力空間論とひずみ空間論の比較………・・……・・55

  2.5.1 基本的仮定の比較………55

  2.5.2 負荷基準の比較………. ……・・…59

  2.5.3 直交則が成り立たない場合………・66

  2.5.4 有限変形場の基本的仮定と負荷基準………・・68

 2.6粘性土の構成式への適用………・・…71

  2.6.1 関口・太田モデルの概要………・…………71

  2.6.2 関口・太田モデルヘのひずみ空間論の適用………74

  2.6.3 関口・太田モデルを用いた応力空間論とひずみ空間論の比較…・・76   2.6.4 Hiu(1958)の仮定の確認………79

 2.7 おわりに………・………・・…・・………・…・………・81

 参考文献(第2章)………・………・………・83

(6)

第3章 構成式による異方性の表現

 3.ユ はじめに……・… …・・・・・… …・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 87

 3.2 単純体と物質対称性・…・・……… …・88

  3.2.1 単純体……… ……… …・……88

  3.2.2 等方性材料………・………・・………88

  3.2.3 異方性材料………89

 3.3 粘土の異方性とその要因…………・………・…・…91

  3.3.ユ 基準配置,初期配置,現配置……・….・ .… .. . 91

  3.3.2 粘性土の異方性構成式………・………・g2

  3.3.3 異方性の分類……… …・94

 3.4 粘土の異方性構成式の具体例(ダイレイタンシー特性を例として)…・98   3.4.1 ダイレイタンシーの特性式・………・・………・g8   3.4.2 初期異方性の具体例………・………99

  3.4.3 有限変形関口・太田モデル………・ ・ .. . .. .101

 3.5 おわりに……… …・…………・・・… ……・・…・103

 参考文献(第3章)…・………・…・・・… …………・…… ………・・104

第4章  4. ユ  4. 2   4.

  4.  4.3   4.   4.   4.   4,  4.4   4.

 はじめに…… ……… ……・・……・…・… ……・…・・106

粘性土の破壊基準………・……・107

2.1 Mohr−Cou1ombの破壊基準………・・……107

2.2 限界状態・………・・… ………・………..__.10g すべり面の発生条件……・・………・・………・・…110

3.1 すべり面(速度の不連続面)の表現………・・……・……・110

3.2 すべり面の生成条件………・・…………・……112

3.3 すべり面の生成条件と強楕円条件の関係・………・・…113

3.4 すべり面の方向…………・・…・………・…115

すべり面の発生予測に用いた弾塑性構成モデル………・・……・…116

4.1 Cam−c1ayモデル・………・・… …・…・・………・・116

 4.4.2 関口・太田モデル…・……・……・………・…・・…118

 4.4.3 非共軸Cam−c1ayモデル………・…………・…121

4.5 弾塑性構成モデノレを用いたすべり面の発生予測………126

4. 5. 1 4.5.2 4. 5.3 4. 5.4 4. 5. 5 すべり面発生時の各パラメータの定義…・………・・…・・…126

Cam−c1ayモデル……・……・・・・・… ………・・…127

関口・太田モデル………・………・・130

非共軸Cam−c1ayモデル………・・…・……・・…133

すべり面の発生予測のまとめ………・……・・……・……134

4.6 体積変化を考慮したせん断帯生成理論………・…・137

 4.6.1 体積変化を伴うせん断帯の生成条件・……・・………・137

 4.6.2 せん断帯の発生予測………・…・・………138

4.7 おわりに……… ……… …………・140

参考文献(第4章)………・………・・…………・・142

第5章 粘土の等体積一面せん断試験  5.1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… …・・・・・・・・・・・・・・・… …・145

 5.2 等体積一面せん断強さ………・…………・……・・…147

 5.3 等体積一面せん断強さの時間依存性………・………・…・・152

  5.3.ユ 試験条件………・…………・………. ……152

  5.3.2 せん断変位速度の影響………・………153

  5.3.3 圧密時間の影響………・・………・………・…155

  5. 3.4 φ パラメータ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 155   5.3.5 応力緩和試験………・……・…………・……156

  5.3.6 せん断変位速度と応力緩和時間の関係………・・…157

 5.4 時間効果の補正………・………159

 5.5 おわりに・・…… ……・…… ………・・・・… ………161

 参考文献(第5章)………・………・…・・…………・162

第6章 結論……… ………・…165

(7)

付録2.A………・……・・………168 付録2.B…・……・……・……・……・……・………174

付録4.A…………・・…・…………・……・…・………・・……・…178 謝辞・………・・………・………・………. .……181

第1章 序論

1.1 本論文の目的

 土は非常に弱い材料である.我々が地盤に対して何らかの作用を起こすとき,地盤 の構成材料である土の強度を推定することが非常に重要となる.破壊は変形の終局的 な現象であるから,土の変形や強度には,これまで土が受けてきた応力履歴に大きく 左右される.したがって,変形から破壊までを連続して取り扱える理論が必要となる.

このような理論には構成式が用いられる.

 また,土はせん断帯またはすべり面を生じて破壊することが多い.土の強度理論と は,すべり面(またはせん断帯)に作用するせん断応力から,供試体や地盤の強度を 求める理論である.したがって,土の強度を求めるには,すべり面上の応力やせん断 帯の方向を正しく予測しなければならない.土質力学では,よくMohr_Cou1ombの 破壊基準を土の強度の予測に用いる.この強度理論は釣り合い式と応力の破壊条件式 からすべり面を特定している.しかし,ある面の応力が破壊条件を満足するという現 象と,その面上ですべるという現象は必ずしも対応しない.釣り合い式と応力の破壊 条件式で得られるのは応力の不連続面であるからである.これに対して,すべり面や せん断帯は速度または速度勾配が不連続となる面である.したがって,すべり面を特 定するには,速度や速度勾配が不連続となる条件式が必要となる.

 以上のような観点から,本論文では,弾塑性構成式を用いてすべり面やせん断帯の 発生を予測することを目的としている.発生予測に用いる弾塑性構成式については,

ひずみ軟化挙動などに対応するため,その基本構造となる塑性理論の考察も行う.さ らに,すべり面の発生予測に影響を与えると思われる異方性についても言及している.

1.2 本論文の内容

 本論文は第1章の序論を含め6つの章からなる.以下に,本論文の構成を述べる.

 粘土はひずみ軟化など,古典的な塑性理論に基づいた弾塑性構成式では対応できな い力学特性を持つことが知られている.そこで,第2章では代表的な塑性理論を解説 し,理論の根幹となる基本仮定とそこから誘導される負荷基準に着目して,微小変形 場で各塑性理論の比較を行う.そして,ひずみ軟化挙動を示す粘土の弾塑性構成式が 準拠すべき塑性理論を指摘する.また,関口・太田モデル(Sekiguchi and Ohta,1977,

(8)

0hta and Sekiguchi,1979)に各塑性理論を適用して,各塑性理論の比較結果を確認

する.

 せん断帯の生成には異方性が影響する.第3章では,有限変形場で仮定した粘土の 異方性構成式を用いて有限変形場の異方性構成式を定性的に分類し,各異方性ごとに その関数形を求める.そして,これを基に有限変形場でのダイレイタンシー特性式を 仮定し,先の異方性の分類結果に適用して各異方性材料の具体例を示す.さらに,応 力誘導初期異方性のダイレイタンシー特性式の具体例を用いて,関口・太田モデルを 有限変形場へ拡張した.

 第4章では,異方性を示す粘土の弾塑性構成式を用いて,すべり面と体積変化を伴 うせん断帯の発生予測を行う.まず,せん断帯の表現式および生成条件からすべり面 の表現式,生成条件が求められ二とを示す.そして,この生成条件式が瞬間単純せん 断剛性用いて表されるもう一つのせん断帯の生成条件と必要十分な関係にあることを 導く.本論文では,これを考慮して瞬間単純せん断剛性を用いた生成条件からすべり 面の発生予測を行う.そして,異方性が予測結果に及ぼす影響を調べる.また,せん 断帯が吸水して発達することが明らかになってきたため,体積変化を伴うせん断帯の 生成予測に加えて支配方程式の特性変化を調べる.

 第4章で得られたすべり面の予測結果は実験結果と定量的に一致しなかった.そこ で,これをせん断速度の影響によるものと考え,せん断速度と圧密時間を変えた一連 の等体積一面せん断試験を行った.第5章では,この試験結果を用いて等体積一面せ ん断強さに及ぼすせん断変位速度と圧密時間の影響をまとめる.さらに,応力緩和試 験を行って,緩和時間とせん断速度の対応関係を求める.

 第6章は結論である.

第2章弾塑性構成理論

2.1 はじめに

 本章では,粘土の弾塑性材料の挙動を説明するための弾塑性理論の理論構造を調べ る.本論文では,連続体を取り扱うため,最初に連続体力学の基礎理論を説明する.

特に,本章以降で有限変形理論を用いる部分があることから,応力や変形の記述,諸 量の定義など重点的に説明する.そして弾性材料,弾塑性材料を問わず構成式が満足 すべき原理を説明する.原理には決定性の原理,局所作用の原理,客観性の原理があ

るが,特に客観性の原理は4章でも用いることから言羊しく説明した.

 次いで,弾塑性材料の構成理論を説明する.近年では亜弾性体の構成式を用いた塑 性理論も展開されている(徳岡,1980).亜弾性体の構成式を用いた期性理論では,

ひずみ速度の解の一意性の破綻を降伏条件として用いており,降伏後は降伏条件を満 足するようなストレッチングを塑性変形と定義する.この理論では,弾性状態,降伏 条件,および降伏後の塑性流動を一つの構成式で記述できる.

 これに対して,古典的な塑性理論では,弾性変形特性,降伏条件と負荷基準,塑性 流動則がそれぞれ別々に考察されまとめられている.仮定ができるだけ少ない,首尾 一貫した理論という観点から見れば好ましいことではないが,古典的塑性理論は,実 験結果に基づいて構成式を構築しやすい.このため古典的塑性理論は現在でも広く用 いられ,有限変形場へも拡張されている(例えば,Asaoka,Nakano and Noda,1995).

このようなことから,本論文では,古典的な弾塑性理論をとり扱う.

 前述したように,古典的な塑性理論では弾性変形特性と塑性変形特性を分解して考 える.そこでまず,弾性変形特性について説明し,次いで塑性理論の構造を説明する.

塑性理論の説明は,古典的塑性理論の中でも代表的な理論を選んで行う.これらの理 論については,オーソドックスな古典的塑性理論と区別して説明する.そしてこれら の理論が用いている仮定や理論構造を比較し,適用範囲を確認する.特に,強く過圧 密された粘土がひずみ軟化挙動を示すことから,負荷基準に注目する.

 最後に,これらの代表的な塑性理論を実際の粘土の構成式に適用して,比較結果を

確認する.

 なお,本論文で用いる応力やひずみは,引張りを正とする.ただし,平均応力ρ,

(9)

平均有効応力〆体積ひずみ仏弾性体積ひずみ0e・塑性体積ひずみ0p・間隙水圧ρω

のみ圧縮を正とする. 2.2 連続体力学の基礎理論

2.2.1 物体の運動と変形の記述

(1)物体の運動と配置

 物体は原子・分子より不連続に構成されている.原子や分子の問には何も存在せず,

したがって質量などは原子・分子の位置に集中している.この実際には不連続な物体 の運動をマクロ的に取り扱う場合,連続体という概念がよく用いられる.連続体とは 諸量が連続している物体である. 連続 とは物体内のいかなる点でも諸量が定義で

きる(微分不可能な点では定義できないものもある)という意味である.連続体を構 成する各点を物質点という.物質点は,3次元空間内の点と座標で」対一に対応づけ られる.空間内で物質点の集合が占める領域を物体の配置という.物体の運動は物質 点および配置の位置の変化で記述される.

 物体の運動は,ある時刻ご。における配置を基準に記述される.この基準となる配置 は基準配置と呼ばれる.基準配置内の各物質点の位置ベクトノレはXと表される.これ は物質点の名前のようなもので,物体の運動を記述する際に着目する物質点を特定す るものとなる.基準配置に対して現時亥■」εにおける配置は現配置と呼ばれ、各物質点 の位置ベクトノレはんと表される、物質点Xの運動は時刻ごを変数として,

      κ=κ(X,ε),      (2.1)

と表される.物質点は分裂したり消滅したりしないから,Xとκは一対一に対応する.

したがって,式(2.1)の逆関係

       X:X(κ,ご),    (2.2)

       が成り立つ.また,時刻ご。からごまでの物質       現時刻f

       点の変位は,

 基準時刻ε。

      認     ω=κiX,  (2・3)

  徹

       ω        と定義される.基準配置と現配置および式(2.1)

      κ      と(2.3)の関係を図2−1に示す.

 X

      物質点の速度は,式(2.1)より,

 O

       ._∂κ(X,之)

      U=κ一一      ,         (24)

 図2_1配置と物質点の移動       ∂之

(10)

となる.式中,変数上の 分することを意味している.

ヘ物質時間微分である.着目する物質点を固定して微

(2)物体の変形と変形速度

 物体の変形は,任意の物質点間の相対的な位置変化である.いま,物質点Xの近傍 の点X+dXを考える.各物質点の位置が,現配置においてそれぞれκ,κ十砒に変化

したとする.dXが微小であれば,砒とdXの関係は線形にあると考えられるから,

二つの物質点の相対的な位置の変化は次式のように線形変換で定義される.

。、一、(X。。X,之).、(川一∂κ(X・C)・X一・、a・、・X一州X

      ∂X

(2.5)

Fは変形勾配テンソルである.また,基準酉己置内で体積dγの微小体積素が現配置で dUに変化したとすると,dγとdUの関係は,

      d一、/=Jd.o,      (2.6)

と表される.JはFの第3不変量(detF)である.物体の体積はOや負にならない        一1から,J>Oである.このことは,Fには必ず逆テンソルF が存在することを示して いる.これはXとんが一対一に対応することと対応する.

 また,変形勾配は,

       F=Rσ=γ丑,      (2.7)

と対称テンソノレと直交テンソルに一意に分解される.この分解を極分解という.ここ で,R剛体回転を表す直交テンソノレである.σ,γは変形を表す正定値対称テンソル        で,それぞれ右ストレッチテンソル,左スト

       レッチテンソルと呼ばれる.F,R,σ,γは,

基準時刻ご。

  吐X★

     ω

X O

κ

現時刻む

図2−2 微小ベクトルの変化

       丁観測者の変換QによってそれぞれQF,QR,

    Tσ,QγQと観察される.したがってγのみ

が客観量である.

 式(2.7)からもわかるように,変形勾配Fは 物体が全く変形しない場合(σ=γ=∬)には F=Rとなる.このことから,変形σ(または γ)が一定でもFがRによって変化すること

がわかる.したがって,このまま変形の記述に用いることはできない.物体の運動を 記述するには,剛体回転に独立な量を用いる必要がある.このような量として,ひず みが用いられる.いま図2−2に示すように,基準配置内の二つの微小ベクトノレdX,

dX★が現配置において砒,砒☆に変化したとする.ひずみはdXとdX☆の内積の変化 率として次のように定義される.

または,

伽㈹ k1㌫)1㌣

=2edκ・dκ*       (2.8)

砒・砒共一肌・岨中TF一∫)帆・榊         ・け2一∫)岨・榊

=2亙岨.岨・       (2・9)

eは刈mansiひずみテンソル,またはEu1erひずみテンソノレとよばれる.これは,現 配置を変形を基準としたひずみである.亙はGreen_Lagrangeひずみテンソル,ま たは単にLagTangeひずみテンソルと呼ばれ,基準配置を変形の基準としたひずみで ある.eと〃は剛体回転のみの運動に対しては0となる.eは基準が時々刻々と変化 し,変形に伴う剛体回転の効果を含む.これに対し厄は基準が一定で剛体回転には依 存しない量であるため,取り扱いやすい.したがって通常は亙がよく用いられる.ま

       T       T

た,亙およびeは観測者の変換Qによって,それぞれ亙,QeQと観察される.し たがって,eは客観量であり,厄は客観量ではない.

 変形がごく小さい場合は微小変形理論が用いられる.微小変形理論では,

∬:Graω:F_∫《∫となるから,基準配置と現配置の区別がなくなる.したがって,

ひずみはe:皿となりεと表される.また,変形が小さくても剛体回転が無視できない 場合には,現配置の回転にあわせて基準配置も回転するものとされるσatOmi and Nishihara,1984).よって,εは客観量となる.

 現配置において物質点κの速度をUとすると,κ十砒の速度はU+dUと表される.dひ はκ十砒のκに対する相対速度である.砒からdUへの線形変換

。、一∂・(州。、一。、a。、。、一凪    ∂κ

(2.10)

(11)

より,速度勾配兀が定義される.上式から明らかなように,工は現配置を基準とした

変形速度である.式(2.5),(2.10)より,

      ・  一1

      几=〃 ,      (2.11)

であることがわかる.また,次のように工を対称成分と反対称成分に分解する.

       T         T

      九二1/2(九十工)十1/2(几_工)=D+W.       (2.12)

Dはストレッチング,Wはスピンと呼ばれる.D,Wは,共に現配置を基準として いる.Dはひずみ速度であり,変形に伴う剛体回転には依存しない量である.Wは       丁現配置からの剛体回転速度である.工,DおよびWは観測者の変換Qによって,そ れぞれQ几QT+φQT,QDQT,QWQT+φQTと観察される.したがって,Dは客観量 であり,工とWは客観量ではない.

 式(2.9),(2.12)より,

      左・FbF,        (2.13)

なる関係が導かれる.Dの前後にFが作用するのは,厄が基準配置を変形速度の基準 としているのに対して,Dが現配置を基準としているからである.厄は観測者の変換 に対して不変であり,客観量ではない 弾塑性材料のような非線型材料の応力 ひず み関係には,Dがよく用いられる.ただし微小変形理論を用いる場合には両者は一致

し,左と表される.εと同様に云も客観量となる.

(3)弾性変形と塑性変形

 弾塑性材料は可逆的な変形と非可逆的な変形を生じる.前者は弾性変形,後者は塑 性変形と呼ばれている.弾塑性理論では,数学的に取り扱いやすくするために,物体

の変形特性を弾性変形特性と塑性変形特性とに分けて記述できると考える.そこで,

弾塑性材料の変形勾配を以下のような積の形に分解する(北川,1987,Lee,1969).

      F=FeFp.         (2.14)

Feは弾性変形,Fpは塑性変形による変形勾配である.上式は,図2−3に示すように,

応力解放による弾性ひずみの回復後に塑性変形が残留することを示している

((Fe)一1F:FP).このことから,F=FPFeやF=FP+Feのような分解は妥当でない二 とがわかる.また式(2.14)より,Feが塑性変形Fpを受けた状態を基準とした変形勾

配であることがわかる.

塑性変形は微視的に不均一に発生するため,外力が除荷されても物体内部には不均一 な残留応力が残る.そこで,着目する物質点の近傍部分のみを取り出し,仮想的に応 力を解放した場合を考える.このときの物質点近傍の配置を応力解放配置と呼ぶ.図 2_3に示したように,残留応力の不均一性のため,応力解放配置は着目する物体点に よって異なる.本論文ではこのような結晶格子レベルの微視的な不均一性は考慮せず,

マクロ的に捉えることとする.また式(2.14)は,式(2.7)とともに物理的意味を持った

変形勾配Fの分解であるが,FeやFPが,σ,γおよびRとどのような関係にあるか 明らかではない.しかし上述したように,弾塑性材料の残留変形の表現に関して式

(2.14)が適当と考えられるため,本論文では式(2.14)を用いる.

       T

 GreenとNaghdi(1965)は,Lagrangeひずみ亙=1/2(F Fイ)に対して,その塑性 成分を亙P=1/2(FPTFP_∫)と考えた.また,弾性ひずみを亙_亙P≡亙eと定義し,弾性 構成式に用いた.しかし,

       亙e・1/2(FpTFeTFeFp−FpTFp),     (2.15)

であり,亙eの物理的意味がわかりにくい.亙,亙Pおよび亙eは,共に基準配置(τ=τ。)

を基準としたひずみである.

 弾塑性材料の速度勾配は,式(2.11),(2.14)より次のように求められる.

       几・左e(Fe)■ ・Fe左p(Fp)I (Fe)一 .     (2.16)

右辺第1項は速度勾配の弾性成分,右辺第2項は塑性成分である.塑性成分の前後に        e

      Fが作用しているのは,工が現配置(オ=ご)

      を基準としているためである.式(2.16)を      現配置

      (f=ご).、    ㌔   次のように書き換える.

       工・工e・Fe工p(Fe)■ . (2.17)

       e−1

      F    F・(F)   几pは応力解放配置(仮想的な配置である

    盤、ツ ζ∵寺㌶∴1トニ㍍

 基準配置     κ  応力解放

  (ε=之O)        配置   方解放配置と現配置を区別する必要がな      ○

      くなるから,工Pは現配置を基準としてい    図2_3 変形勾配の分解

(12)

ると考えて差し支えないであろう.このとき,上式は次のように書きかえることがで

きる.

      工=re+兀p.         (2.18)

したがって,ストレッチングについては以下の式が成り立つ.

      D=De+Dp.         (2.19)

reC几pともに現配置を基準としたひずみ速度と考えると,DeとDpは客観量となる・

 微小変形理論を用いる場合は,左eはDeと,左PはDPと一致する.弾性ひずみ速度 と塑性ひずみ速度はそれぞれ圭e,圭Pと表記され,客観量となる.

 弾塑性材料の変形挙動は,現在の状態だけではなく変形履歴にも依存する.このよ うな材料の応力一ひずみ関係にはよく速度型の構成式が用いられる.弾性応答につい ては,亜弾性体(Truesde11.1955)の構成汎関数より速度型構成氏丁〜Dが誘導できる

(徳岡,1980).Hi11とRice(1972)は,弾塑性材料の場合も同一の形でT〜(D−DP)

      eの関係が表現できるという考え方を示している.ここでは,ひずみ速度の弾性成分D は直接登場しない.この考え方は,現在最も広く用いられている考え方である(北川,

1987).ここで,TはCauchy応力のJaumann速度で,客観性を有する応力速度で ある.これについては本節で後述する.

2.2.2 応力と応力速度

(1)応力

物体に作用する外力は表面に作用する表面力と,物体内部に直接作用する物体力が        ある.二のうち表面力が作用することによっ

       て物体内には応力が発生する.現配置におい

   管    て,図・一・に示したような仮想表面上に面積

       d8の微小面積素を考える.肌はd8の単位法        線ベクトノレである.d8に作用する表面力をdブ、,

       ε、巳=d〃d8(応力ベクトル)とする・下添え字        〃はd8の方向πに依存することを示している.

       応力は,単位法線ベクトノレπの単位面積当た

図2_4 仮想表面に作用する表面力  りの表面力f、里への線形変換として次のように

       現配置  定義される.

基準配置ザ・・

Q軌(H)

@、ニケ、.(2.2。)

(f=㌔)

m l、∴/   几

      ここで,TはCauchy応ガテンソノレ       または真応力と呼ばれ,式(2.20)は       Cauchyの公式と呼ばれる.後述す       るが,Tは対称テンソノレてあろ.

       丁

     図2_5公称応力の概念      Cauchy応力テンソルは,Q回転        丁

      した観測者からはQTQと観察さ       れ,客観的な応力である.

 Cauchy応力テンソル丁以外に公称応力テンソルSもよく用いられる.Tは 、と πd8の関係から求められるが,肌d8は刻々と変化する.これに対して,公称応力テン

ソルはM、と基準配置のwdsの関係から求められる応力である.wとdsはそれぞ れ基準配置における微小面積素d8の単位法線ベクトルと面積である一公称応ガテン

ソノレは,現配置の微小面積素dsに作用する表面カd元ユを基準配置での微小面積素ds に作用させて(図2_5参照)求められる応力ベクトル(公称応力ベクトル)㌦=d〃d8 を用いて次のようにして定義される.

       T

       6 =S /V.      (2.21)

       N

公称応力テンソルSとCauchy応力テンソルTの関係は,Nansonの公式を用いて,

      1       −1

      T=一FS,S=〃T,       (2・22)

      J

となる.公称応力テンソルは第1Pio1a_膿rchhoff応力テンソルとも呼ばれる.公称 応力テンソルは,観測者の変換QTによってSQTと観察され,客観的な応力ではない.

      一丁

 式(2.22)からわかるように,公称応ガテンソノレSは対称テンソルではない.SにF を作用させて対称テンソノレとした応力が,第2Pio1a一膿rchho伍応力テンソルSであ る.sとT,sの関係は次のようになる.

       T。⊥施F・,3・〃一 〃■T,     (2.23)

      J

       S.3FT,3・SF−T.      (2−24)

      丁第2Pio1a_㎜rchhoff応力3は物体の剛体回転に無関係な応力である・また・Q回転

(13)

した観測者からもSと観察される.このようなテンソルは客観量ではないが1観測者 の違いに無関係な特別なテンソルであるから。bserver invariantであるといわれる・

 これらの応力下,S,3は微小変形理論では一致し,δと表記される.また,上述し たように微小変形理論では物体の剛体回転に対して基準配置も同じように回転させる ので,δは客観的なテンソルとなる.

(2)応力速度

 弾塑性材料の構成式には,応力速度一ひずみ速度関係が用いられる.上述したよう にひずみ速度にはDがよく用いられる.これに対して,応力速度は,TやS。がよく 用いられる.それぞれ,Cauchy応力のJaumam速度,公称応力速度と呼ばれる.

他にもさまざまな応力速度が用いられているが,本論文では扱わない.以下これら二 つの応力速度について述べる.

 Jaumann速度とは物体の剛体回転にあわせて回転する座標系から観察される変化 率という意味で,以下のようにして求められる.基準時刻f。には一致している二人の 観察者を考え,静止している観察者と物体とともに回転する観察者から観察される        T

Cauchy応力をそれぞれT,T☆とする一=ごにおいてTとT☆にはT☆:R TRなる 関係がある.この式の物質時間微分をとると,

       か。左TT丑。RT加・RT加,     (2.25)

となる.ここで,基準を基準配置から現配置に変更すると,R→R、=∬,R→Rt=W となる.下添え字tは現配置を基準としていることを意味している.これより上式は        T・:T+TW−WT,        (2.26)

となる.かがCauchy応力のJaumam速度でありナと表記する.ケは客観量である.

このため構成式に客観性を持たせるためによく用いられるが,弾性体の構成式にTを 用いると単純せん断において応力一ひずみ関係が正弦波を示し,ついには変形方向と せん断応力の方向とが逆になることが報告されている.しかし,これは非常に変形が 進行した状態で生じることであり,通常われわれが扱う変形の範囲を超えている(矢 富,1993).また,客観量であるだけでなく,物理的な意味が非常に明確な応力速度 であることから,構成式へ広く適用され,本論文でも用いることにする・

 公称応力速度ξ、とは現配置を基準とした公称応力の変化率である・S、の下添え字t

は現配置を基準としていることを意味している.S、は以下のようにして求めウつれる.

式(2.22)の第2式の物質時間微分をとると,

       .   .  山1      .一1       −1 ・

       S=〃T+〃T+〃T,      (2.27)

    .       .  一1

となる.J/J=trD,工=FFであることに注意すると,上式はさらに,

      ・      一1       −1         _1 ・

       S=(t・D)〃T一〃正丁十JFT,      (2.28)

となる.基準状態を基準配置から現配置へ変更すると,S→S、,J→4:1およびF

→4:∫となるから,公称応力速度stは,

      S。=ト正丁十(t・D)T,        (2.29)

となる.公称応力速度s、は増分境界値問題を解く際の支配方程式(増分釣り合い式)

に現れる・ただし,式(2.29)からも明らかなように客観量ではない.Tと8、との関係

は式(2.26),(2.29)より次のようになる.

       S、=T−DTイW+(t・D)T,       (2.30)

2.2.3 保存則

 物体の種類の関わらず,物体の運動に関して満足すべき五原理がある.(1)質量保存 則,(2)運動量保存則,(3)角運動量保存則,(4)エネルギー保存則,(5)熱力学第2法則 である.これら5原理のうちエネノレギ』保存則とエントロピー増大の法則には仕事と いう概念が必要となる.これら二つの原理は物質の特性,すなわち構成式に制約を加 えるものとなる(飯塚,1988).各原理を以下,順に説明する.ただし,本論文では 変化変化や化学変化による状態変化は考えない.

(1)質量保存則

 質量保存則とは質量一定,つまり 加=O という原理である.物体の質量肌は質 量密度をρ,物体の占める領域をUとして,

       m・工ρ…      (・…)

と与えられるから,質量保存の原理は以下のように書き換えられる.

       ∫/カ・ρ(・・D)畑・…     (・…)

(14)

また,質量保存の原理は物体内の任意の微小部分に対して成り立つから,次のような 局所的な表現が得られる.

      々・ρ(t・D)・0.       (2・33)

式(2.32),(2.33)は連続式とも呼ばれる.

(2)運動量保存則と釣り合い式

 運動量保存則とは 物体の運動量の変化率が外力の和に等しくなる という原理で ある.物体に作用する外力は表面に作用する表面力と物体内部に直接作用する物体力 があるから,運動量保存則は,

       //ρ叶!t…工ρ・…   (2・34)

と表される.ここで,前節のt,、をtと略記して,以後にも用いる.bは単位質量あた りの物体力である.式(2.20)とGaussの発散定理および質量保存則より,式(2.34)は 次のように書き換えることができる一

      工ρα…∫,(・i…ρ枇・    (2・35)

αは物体点の加速度である.運動量保存則は物体内の任意の微小部分に対して成り立 つから,局所的な表現

      ρα・di・T・ρb,       (2・36)

が得られる.式(2.34)はEu1erの第1運動法則,(2.36)はCauchyの第1運動法則ま たは釣り合い式とも呼ばれる.釣り合い式は公称応ガテンソノレSを用いて,

       ρ。α・Di・S・ρ。b・      (2・37)

とも表記される、微小変形理論では,式(2.36),(2.37)の区別はなくなり,

      ρα・di・σ斗ρb,       (2・38)

となる.

 増分境界値問題を解く場合には増分釣り合い式が用いられる・増分釣り合い式とし

ては,式(2.37)を物質時間微分した

       ρ。α・Di・S・ρ。b・      (2・39)

もしくは上式の基準を現配置とした(f。一→f)

       ρ。α・di・S。・ρ。b・       (2・40)

が用いられる.微小変形理論では,式(2.38)を物質時間微分すると,

       ρ。α二di・6・ρ。b・      (2・41)

となる.ただし,本論文で扱うのは準静的な問題で,物体力については重力のみを考

える.したがって,式(2.36)〜式(2.41)においてα二b=0である・

(3)角運動量保存則

 角運動量保存則とは 空間内の任意の点に関して物体の角運動量の変化率が外力に よるモーメントの和に等しくなる という原理である.空間内の一点を座標の原点と すると,角運動量保存則は

       /工κ・ρ叶!舳・工κ・ρ・…   (・…)

と表される.×はベクトルの外積を意味している.式(2.34)から(2−35)への書き換えと 同様の操作により,式(2.42)は次のように書き換えることができる.

      工κ・ρα…工←・(・i…ρ外・〃ル   (・…)

eルは正規直交基底ベクトル,㍗はe、,弓に関するCauchy応力Tの成分,eψは交代 記号である.Cauchyの第1運動法則より,上式は

      工沽ψ…      (2・44)

と書き換えられる.また局所的な表現として,

       ・む止㍗ル・0・       (2・45)

が得られる.式(2.45)が成り立っ条件として,

      T・TT,        (2.46)

が最終的に求められ,Cauchy応力テンソルが対称であることがわかる・式(2・42)は Eu1erの第2運動法則,(2.46)はCauchyの第2運動法則と呼ばれる・

(15)

(4)エネルギー保存則

 エネルギー保存則は,  孤立系のエネルギーは一定である という原理である・こ の原理は熱力学第1法則とも呼ばれる.いま孤立系内の物体を考える.物体のエネル ギー刃は運動エネルギーKと内部エネルギーσからなる.ただし,本論文では準静的 な場合のみ扱うので,K=0とする.弾性変形のみ生じる場合,物体の内部エネルギ ーは次のように与えられる.

      ∠σ=Q+W,         (2.47)

∠σは物体の内部エネルギーの変化量である.Qとwはそれぞれ孤立系内から物体に 与えられた熱量および仕事である.内部エネノレギーは外力の除荷などにより開放可能 なエネルギーである.Wを具体的に表すと次のようになる.

      ・・/l[!舳・工ρ・外ガ   (・…)

式(2.19),(2.20),(2.36),(2.46)およびGaussの発散定理より,上式は最終的に次の ようになる.

      ・・/l工・・(叫町工・佃巾・・町工・佃畑・ (・…)

上式最右辺第1項をWe,第2項をWPと記す.DPは不可逆な変形であるから,開放 可能なエネルギーとして物体に貯えられるのはWeのみである.したがって弾塑性体

の場合には式(2.47)は次のように書き換えられる.

      〃=We+Q・(W−Wp)十Q.      (2.50)

上式は,物体に与えられた仕事WのうちWeが内部エネルギーとして物体内に貯え られることを示している.WPは塑性変形を生じる際に主に熱量として物体から孤立 系内に放出されるから,孤立系内での物体との熱のやり取りはQ−Wpとなる.上式 においてQ_WPを新たにQと書き,孤立系から物体に与えられる熱量QをQ。と書 き換えると,上式は次のようになる.

       〃・W・Q・W・(Q。一Wp).      (2.51)

この式は孤立系全体のエネルギー保存を表している.

(5)熱力学第2法則

熱力学の第2法則は, 他に何ら変化を残さずに,熱を全部仕事に変えることはで きない という原理である この原理と等価な式を熱量を用いて表すと,

dQ

  ≦0,       (2.52)

 r

となる(國友・柴田,1984).ただし,等号は可逆仮定についてのみ成り立つ.式(2.51)

は,C1ausiusの定理と呼ばれる.

 物体を状態Aから状態Bまで不可逆的な過程によって変化させ,可逆的な経路で 再び状態Aに戻したとする.このA→B→Aという経路は全体として不可逆的な過

程であるから式(2.52)が成り立つ.よって,

      し苧・∬不可逆、苧・意可逆、苧・・,  (・…)

となる.本論文では,Q。=Oかつ温度丁が一定の場合を考える.可逆仮定ではWp=0 となるから上式より,

       Wp・O,         (2.54)

が得られる.微小な不可逆過程については上式を微分して,

       dWp・O,        (2.55)

となる.

(16)

2.3 構成式に関する諸原理 ることを示している.

 前節では,物体の運動や変形,応力について連続体力学に基づいた理論的な説明を 行った、その際に用いた仮定は連続体の概念と保存則のみである.しかし,物体の力 学的応答を記述する構成式は,実験結果に基づいた一種の経験式である.構成 理論

とはいえ,物体の力学的挙動に関する一般的な原理・原則から演線的に導かれた理論 式ではないのである.一般に固体の挙動は非常に複雑であるから,物体の違いによっ ても,同一の材料についても様々な構成式が存在する.したがって,構成式によって 導入される仮定もまた様々である.構成式を連続体力学という理論的な枠組みで用い

る場合,仮定の部分と理論的展開の部分を区別して理解しておく必要がある.

 上述したように,構成式には様々な仮定や理論的構造のものが存在するが,どのよ うなものでもよいわけではない.やはり,最低限の原理によって構成式の仮定や理論 的構造は制約を受ける.本節では,その最低限の原理によって,構成式の構造がどの ような制約を受けるのかを説明する.

 構成式の構造に制約を加える原理は,(1)決定性の原理,(2)局所作用の原理,(3)客 観性の原理の三つが知られている(Truesde11and No11.1965).以下順に説明する.

2.3.1 決定性の原理

 決定性の原理は 物体中の応力は物体の運動履歴によって決定される というもの である.具体的には,物体点Xの時刻fでの応力下(X,之)は,物体の現時刻εまでの

運動の履歴κ(X,オ_8的)で決定される.ただし,κ(X,之_のは基準配置K内σ)すべての

         0      0      0

物体点の,無限の過去から現在までの運動をまとめて示したものである.つまり,X

と8。。は

 O

       X∈1(, O≦8〈oo,       (2.56)

       ○

という意味である.0≦8<・・ととるのは,決定性の原理より,応力は物体の以後の運 動にも依存しないからである.以上のことから,一般に応力は以下のような汎関数で

表される.

      T(X,ε)=八[X,ご,κ(X,εイ)1.      (2.57)

       O      O

久。はテンソル値関数で・下添え字のK。はブの関数形が基準配置K。の選び方に依存す

2.3.2 局所作用の原理

 局所作用の原理は 物体点Xの応力は,Xの近傍の運動履歴に左右され,その外側 の物体点の運動履歴の影響は無視できる というものである.局所作用の原理より,

式(2.57)は次のように書き換えることができる.

      Nビ)

      T(X,1):八。[X,1,κ(X・1一・;)1・     (2・58)

    Nビ)

ただし,XはXの近傍の物体点の集合を示している.ここで,物体点Xの近傍の       Nビ)

運動が空間的に十分なめらかであるとすると,κ(X,C一のは次のように近似できる.

       0

         N(X)       N(X)

        κ(X,1一・;)=κ(X,1一・こ)・F(X,1一・;)(X−X)・   (2・59)

よって,式(2.58)は局所作用によって,次のように書き換えることができる.

      T(X・f)=八。[X・1,F(X,f一・;)1・     (2・60)

2.3.3 客観性の原理

 客観性の原理は, 構成式は,観測者の変換の下で不変でなければならない とい うものである.観測者が変われば,当然異なった応力が観測される.例えば,時刻之 において観測者がgT回転したとすると,応力は見かけ上丁からT★=QTQTへと変 化したように観察される.客観性の原理によれば,構成式は観測者の変換による応力 の見かけの変化を表現できなければならない.

 観測者はそれぞれ独自の時刻と座標により,物体の運動を観察する.この時刻と座 標のことを合わせて基準枠と呼び,以後観測者を基準枠と呼ぶことにする.客観性の 原理は,基準枠ごとの(1)時刻のずれ,(2)座標の逢い,(3)基準配置の違いについて構 成式に制約を加える.

(1)時間無差別性

 αだけ時刻のずれた二つの基準枠A,Bを考える.ただし,二つの基準枠は同じ座 標を持ち,同じ時点で基準配置を取るものとする(図2−6).物体点Xの運動と変形勾

(17)

基準枠A

、崇●一

ε=O  t=α

きj辛↑午^

1(      … 1(

0

κ(X,ご) T(X

→       一I.I ..一 一一一一一一

★(X,C★) 8。〈 @  T(X

⊥  、」_ ● I   ^

之=f。       ご=f

基準枠B

マ◆llll:1)

ご☆

図2_6

之★=O   f★:C8=ご。一α

構成式の時間不依存性

乏★=〆=t一α

配F(X,ご)は,これら二つに基準枠から等しく

        κ=κ(X,之)=が(X,〆),F=F(X,ご)=F★(X,〆),       (2−61)

と観察される.応力も同様に等しく

      T:T(X,f):T(X,f*),       (2・62)

と観察される.基準枠A,Bから観察される応力は式(2.58)より次のように表される.

      基準枠A:T(X,f):八。[X,ご,F(X, 一8こ)1,

         基準枠B:T(X,ε★)=八。[X,ご★,F★(X,fし8;)1.      (2.63)

式(2.61)の第2式,(2.62)および(2.63)と〆=乏一αより・

         久。[X,げ(X・f一・;)1・八。[X,1一α,F(X・1一・;)1・   (2・64)

となる.基準枠の時刻のずれαは任意だから,汎関数は第2変数fに独立でなければ ならない.よって,式(2.60)は次のように書き換えられる.

       T(X,1)・八。[X,F(X,f一・;)1・     (2・65)

上式のように,応力が変形勾配の履歴にのみ依存するような物体を単純体と呼ぶ・

         が(X f)        ろ現配置Kの物体点κ(X,f)と変形勾

       =Q(ご)κ(X,ご)十。(t)

   ε      配F(X,f)は,基準枠Bからは次の

         T☆(X,之)

1(       T

       :Q(之)T(X,f)Q(f)  ように観察される.

       ★

  .   κ  基準枠B

       が(X,之)=Q(ε)κ(X,ご)十。(亡),

       F☆(X,オ)=Q(ご)F(X,ご). (2.66)

      κ   Q(1),C(1)

リ       基準枠・・Bから観察されろ応力は・

      基準枠A       基準枠A:

    κ(X,ε),T(X,ご)

      T(X,乏)=八[X,F(X,6−8切)】,

       0      0

    図2−7 剛体運動不依存性     基準枠B:

       T★(X,f)=八[X,F☆(X,ご一8並)】,

       0       0

      (2.67)

となる.前節で述べたとおり,Cauchy応力は客観量で基準枠の変換に関しては,

      T

T★(X,f)=Q(f)T(X,ご)Q(¢)と変化して観察される。このことから,式(2.66)の第2

式を用いて構成汎関数が次の関係を満足すべきことがわかる.

       丁

      八。[X・Q(f一・;)F(X,1一・こ)1・Q(1)八。[X,F(X,f一・;)lQ(1)・ (2・68)

左辺のQ(ご)やC(ご)の変数が,f_8ζとなっているのは運動の履歴の変換だからである。

      右辺のQ(f)は現在の応力の       変換であるから変数はfで       ご:げ

      ある.

      K。*

       ●

(2)剛体運動無差別性       H。

 同じ時刻を持ち,互いに運動をする二つの基準枠A,Bを考える.いま,基準枠B から見て基準枠Aの座標の原点が。(オ)だけ離れ,座標軸がQ(エ)回転していたとする

(図2_7).ただし,基準枠A,Bは基準時刻f。には同じ位置から同じ基準配置K。を 観察した(つまり,Q(ご。)=I,c(ε。):o).このとき,時刻むに基準枠Aから観察され

F。。(1・☆

1(

X

X★

図2_8

F、(c)

κ

F。。・(1)

基準配置無差別制

1(

f:亡

(3)基準配置無差別性  .基準配置Kは,物体の運動

を記述する際の基準として 観測者(基準枠)が勝手に 設けるものである.したが

って,基準配置は任意に決 めることができ,物体の応 力決定や運動には何ら影響

(18)

を及ぼしてはならない.

 いま,時刻ε。において基準配置K。,時刻之8に基準酉己置K8をとった場合の二つを考 えてみる(図2−8).現配置Kにおける物体点の位置πは基準配置のとり方に依存し

ない力・ら,

      κ=κ(X,f)=κ(X☆,τ),       (2.69)

となる.X,X☆はそれぞれ基準配置K。,K8における物体点の位置ベクトルである.変

形勾配の間には,

       F。。(1)=F。。・(1)F。。(1・☆)1      (2・70)

なる関係がある.Fの下添え字は変形勾配の基準となる配置を示している.観察され る応力も基準配置のとり方に依存しないから,次の関係が成立する.

       T(X,1)・爪。[X・F。。(X,1一・;)1・八。。[X㍉F。。・(X・1一・二)1・  (2・71)

八。と八。士の下添え字が異なるのは,構成汎関数の基準配置依存性を表している.また,

式(2.70),(2.71)とX☆=κ(X,ε。☆)と表されることから,構成汎関数は次の関係を満足

する.

      八。[x,尺。(X,1一・;)1・八。。[κ(X州,4。(x+・こ)尺。(1ポ)■I1・ (2・72)

次節に述べる均一な物体を扱う場合,構成式は第1変数に独立となるから,上の結果 は次のように書き換えることができる.

        尺1F、(X,1一・的)1:八、[F、(X,1一・切)F、(18)■ 1.    (2.73)

         0   0       0     0    0      0   0

 上式からもわかるとおり,構成式は必ずしも客観量のみで構築する必要はない.構 成式が全体で客観性を満足すればよい.

2.3.4 一様性と均一性

 材料の力学的挙動の不均一性は応力のXへの依存性として表現される.このことは,

式(2.65)(単純体の構成式)が,物体内で等しい任意の変形履歴F(トのを与えた場       ○

合に

       T(X・1):八。[X・F(1一・;)1・      (2・74)

と応答することからもわかる.同じ履歴を受けても物体点Xによって応答が違うので

ある.これに対して,物体内で等しい任意の変形履歴F(ご一列に対して物体内σ)すべ        ○

ての物体点が同一の力学的応答を示す場合,なおかっこの挙動がすべての物体点に共 通の基準配置が選択できる場合,物体は均一であるという.いま,一つの基準配置内 から任意に二つの物体点X,X★を選ぶ.これら二点は互いの近傍になくてもよい.

物体が均一ならば,共通の(任意な)変形履歴に対して同一の応力が発生するから,

      叩):八。[X〃一・;)1・八。[X★・F(f一・こ)1・   (2.75)

となる。X,X*の任意性より,均一な物体の構成式は第1変数に独立となる.よって

式(2.65)より次の構成式が得られる.

       T(X・1)=八。[F(X・f一・;)1・     (2.76)

  均」 という状態に対して, 一様 という状態がある.一様とは,均一性から 共通の基準配置 の制約をとり除いたものである.物体内で等しい任意の変形履歴 F(ご_8ζ)に対して,物体点ごとにそれぞれ適当な基準配置を選択すれば物体内に同一 の応力が発生するような場合,物体は一様であるという.一様な物体の構成式は,X に依存するから式(2.65)となる.ただし,物体点Xの近傍内で同じ基準配置を選ぶこ

とができる場合,この近傍内部は均一であるといえる.したがって,物体点Xの近傍 部分にのみ着目する場合に限り,構成式として式(2.76)を用いることができる.

 2.2節で述べたように,弾塑性体の変形勾配の弾性成分はいくつかの物体点の近 傍ごとに基準配置(応力開放配置)が設け弓れているから,弾塑性体は一様な物体で ある.しかし,弾性変形が非常に小さい場合には応力開放配置と現配置の区別がなく なる.したがって,このような場合には基準配置は物体内に共通で現配置となるから,

物体を均一であるとしてよいであろう.

 本論文では,弾性変形が非常に小さく均一と見なすことのできる弾塑性体を取り扱 う.よって,弾塑性体の構成式は式(2.76)のような構造のものを用いる.

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