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(1)

問 題

富田・大原

(2015)

は,メーカの異なる6台のノー ト PC について評価言葉を用いた質問紙調査を行い,

キーボードのキースイッチのユーザビリティ(押し心 地)評価の特徴について解析した。タッチタイピング ができるエキスパート 35 名と,タッチタイピングが できないノービス 40 名,計 75 名の参加者の評価デー タの解析から,以下のような知見が得られた。

1 .いずれのPCにおいても,キーボードのキースイッ チの押し心地評価において抽出される因子はほぼ 共通しており,次の5因子であった。

  スムーズ感,ストローク感,クリック感,弾力感,

操作感

2 .エキスパートとノービスの2群間で,キースイッ チの押し心地評価がどのように異なっているかを 検証した。その結果,ストローク感やキーの柔ら かさ

(固さ*)

については,エキスパートの評定値が

高く,クリック感や操作感については,ノービス の方が評定値が高いことがわかった。

残された課題は,各ノート PC のキーボードのキー スイッチの物理特性

(物理パラメータ)

と,キースイッ チのユーザビリティ

(押し心地)

評価との関連性を探る ことであった。キースイッチの物理パラメータと押し 心地評価の関連を調べることができれば,キーボード のキースイッチ設計において有用な指針を得ることが できる。ただし,このような検証を行う前提として,

(1)PC キーボードのキースイッチの操作性に関連 していると思われる物理パラメータを特定しておくこ と,(2)PC キーボードのユーザビリティ

(押し心地)

評価の特徴を分析しておくこと

(ユーザビリティ(押し心 地)評価を支配していると思われる心理因子の特定など)

,が 必要となる。

(1)PC キーボードのキースイッチの物理パラメータ の特定

PC キーボードのキースイッチのユーザビリティ

(押 し心地)

は,キースイッチの内部にセットされたゴム の作動圧曲線の特性により規定されると考えられてい る。作動圧曲線とは,Figure 1 に示されたような,キー

PCキーボードのキースイッチの物理パラメータと ユーザビリティの関連分析

富 田   新 大 原 貴 弘** 東   哲 也*** 清 水 信 行****

人間工学的観点から見ると,PC キーボードのキースイッチの物理特性

(物理パラメータ)

と,キーのユー ザビリティ

(押し心地)

評価との関連性を探ることは,操作性の良いキーボードのキースイッチを開発し てゆく上で,非常に重要な課題である。本研究では,6台のノート PC のキースイッチの作動圧曲線か ら得られた幾つかの物理パラメータの値と各 PC のキーの押し心地評価との関連を,重回帰分析を用い て調べた。重回帰分析は,タッチタイピングができるエキスパート群とできないノービス群,別々に行 われた。重回帰分析の結果から,(1)エキスパート・ノービス両群において,ドロップ荷重の大きなキー ほどよりクリック感が強いと感じられること,(2)ノービスにおいては,ピーク荷重やクリック率の高 いキーがよりクリック感が強いと感じられること,(3)エキスパート・ノービス両群ともに,ピーク荷 重とドロップ荷重の高いキーほど,より弾力感が強いと感じられること,(4)エキスパート・ノービス 両群ともに,ドロップ勾配が大きいキーほどよりキーが固く感じられること等が示唆された。これらの 結果は,エキスパート群,ノービス群の好みに合ったキースイッチを設計してゆく上で,1つの指針を 提供してくれる。

キーワード: PCキーボードのキースイッチのユーザビリティ,押し心地の心理的因子,キースイッ チの物理的パラメータ,タッチタイピング

    明星大学心理学部

**

    医療創生大学教養学部

***

  (株)東商店

****

 (株)モーションラボ

(2)

スイッチを押した時のキーの移動量

(横軸:単位 mm)

とその時にかかる押圧

(縦軸:単位 gf)

との関係を描い た曲線

(関数)

である。Figure 1 に示したように,通 常は “ 行き ” と “ 戻り ” の2つの曲線が描かれる。こ れら “ 行き ” と “ 戻り ” の曲線の形状は同一ではなく,

ヒステリシスが生ずる。これら作動圧曲線の形状はデ バイスメーカや PC ごとに異なっており,どのような 作動圧曲線を有したゴムがセットされるかによって,

キースイッチの押し心地が異なってくると考えられて いる。

作動圧曲線の基本形状は多くのキーで共通している。

Figure 1 に見られるように,押し初めからしばらく の間は押圧が持続的に増加してゆくが,そのような状 態がしばらく続いた後,押圧は急減する

(ドロップする)

このように押圧が一時的にドロップする箇所がどの キースイッチにおいても必ず設けられている。最初の 最大

(ピーク)

荷重とドロップ時の最小荷重の差はド ロップ荷重と呼ばれる

(Figure 1 の f

D

。このドロップ 荷重が導入されたことにより,それまでユーザに多く 見られていた腱鞘炎が防止できるようになったことは よく知られた事実である。その後,押圧は再び持続的 に増加してゆき,移動の終点に達する

(キーが底付きす る)

。この底付き時の押圧が作動圧曲線における最大 の押圧となる

(Figure 1 の f

E

作動圧曲線の形状の違いは,上記のような基本形状 を共有しつつも,各キースイッチで微妙に異なった形

(関数)

が描かれるところに現れる。Figure 2 には,

今回の検証で用いられたメーカの異なる6台の PC の キーボードのキースイッチの作動圧曲線が描かれてい る。これら6つの作動圧曲線の形状を見比べてみると,

曲線の形状が微妙に異なっていることがわかるであろ う。問題は,作動圧曲線のこの微妙な形状の違いを,

幾つかのパラメータによって適切に記述できるか,と いうことである。

本研究では,各キースイッチの作動圧曲線の形状の 相違を記述するために,キースイッチメーカで使用さ れていた 16 種類

(V1 ~ V16)

のパラメータを用いるこ ととした

(Table 1)

。作動圧曲線の読み取りから直接 得られるパラメータが V1 ~ V12,また,これらのパ ラメータを組み合わせて新たに算出されたパラメータ

(2次パラメータ)

が V13 ~ V16 であった。2次パラメー タはいずれもキーボードの設計において重視されてい るパラメータで,その値如何でキースイッチの押し心 地評価が変わることが経験的に知られていた。それら のパラメータの詳細を Figure 1 に示す。

Figure 1 キーボードのキースイッチの作動圧曲線と物理パラメータの詳細

(3)

(2)PC キーボードのキースイッチのユーザビリティ

(押し心地)評価の特徴の分析

富田・大原

(2015)

は,6台のノート PC を用いて,キー スイッチのユーザビリティ

(押し心地)

評価の特徴につ いて解析した。タッチタイピングができるエキスパー ト 35 名と,タッチタイピングができないノービス 40 名,計 75 名の参加者のユーザビリティ

(押し心地)

価の因子分析結果から,次のような知見が得られた。

まず,キースイッチの押し心地評価を規定すると思 われる基本因子の抽出を試みたところ,以下の5因子 であることが明らかとなった。これら5因子は,ユー ザのキースイッチのユーザビリティ

(押し心地)

評価を 規定している基本評価軸であると解釈された

(左に挙 げた太字項目は抽出された因子名,右側に列挙された複数の項 目は各因子に因子負荷量の高かった評定項目。( )の中に示さ れているのは,使用した質問紙の中で項目に付された番号)(富 Figure 2 ユーザビリティ評定で使用された 6 台の PC の作動圧曲線

Table 1 6 台の PC のキースイッチの作動圧曲線から得られた物理パラメータ

V1 V2 V3 V4 V5 V6

初圧(gf) 最大荷重(gf) ドロップ荷重(gf) 終圧(gf) 復帰荷重(gf) 電気的ON点(gf)

PC1 0.80 54.02 23.95 108.04 21.02 30.07

PC2 0.64 65.84 35.52 131.68 22.05 30.32

PC3 0.77 65.75 21.43 131.50 33.86 44.32

PC4 0.91 59.07 28.43 118.14 23.68 30.64

PC5 0.91 71.05 31.78 142.10 31.80 39.27

PC6 0.67 49.27 22.16 98.54 23.25 27.11

V7 V8 V9 V10 V11 V12

初圧変位 (mm) 最大荷重時変位

(mm) ドロップ荷重時変位

(mm) 終圧変位

(mm) 復帰荷重時変位

(mm) 電気的ON点

(mm)

PC1 0.00 0.46 0.52 1.72 0.98 0.98

PC2 0.00 1.01 0.80 2.80 1.82 1.81

PC3 0.00 0.92 0.75 2.90 1.67 1.68

PC4 0.00 0.66 1.00 2.47 1.68 1.66

PC5 0.00 0.71 0.79 2.51 1.49 1.50

PC6 0.00 0.87 0.63 1.52 1.52 1.50

V13 V14 V15 V16

クリック率 ピーク勾配 ドロップ勾配 終圧勾配

PC1 0.44 115.19 46.24 63.03

PC2 0.54 64.30 44.51 50.03

PC3 0.33 70.32 28.50 24.24

PC4 0.48 88.12 28.54 47.07

PC5 0.45 98.50 40.33 52.10

PC6 0.45 55.99 35.06 42.62

* 網掛けは重回帰分析の説明変数として投入された9つの物理パラメータである。

(4)

田・大原 , 2015)

  スムーズ感・・・押し始めがスムーズ (問1)

,軽い

(問2)

,なめらか

(問3)

  ストローク感・・キーが深い (問4)

,キーが厚い

(問 7)

,キーに高さがある

(問14)

  クリック感・・・クリック感がある (問5)

,底付き 感がある

(問8)

,確認感がある

(問9)

,どこを押し ても引っかかりがなく確実にON

(問19)

  弾力感・・・・・反発性がある (問10)

,弾力がある

(問13)

  操作感・・・・・操作感が良い (問12)

,指にフィッ トする

(問15)

,楽

(問16)

,キーが固い

(問6)

,疲 れる*

(問17)

(*は評定における反転項目)

これらの項目の評定平均値はエキスパートとノービ スで微妙に異なっていた。t 検定と判別分析の結果か ら,エキスパートとノービスのキースイッチのユーザ ビリティ

(押し心地)

評価には以下のような違いがある ことが示唆された

(富田・大原 , 2015)

・ “ ストローク感 ” やキーの柔らかさ

(固さ *)

につい ては,タッチタイピングができるエキスパートの 方が高く評定する。

・ キースイッチの “ クリック感 ” や “ 操作感 ” につ いては,ノービスの方が高く評定する。

・ 有意差は見られなかったものの,“ 弾力感 ” はエ キスパートの方がより高く評定する。

富田・大原

(2015)

の結果を受けて,本研究では,

各 PC につき,因子ごと,評定項目ごとにエキスパー ト 35 名とノービス 40 名それぞれの評定平均値を算出 し,それらを各 PC におけるエキスパート,ノービス のキースイッチ押下時の心理的評定の代表値として用 いることとした

(Table 2)

(3)PC キーボードのキースイッチの物理パラメータ とキースイッチのユーザビリティ(押し心地)評 価の関連分析の必要性

先述したように,キースイッチにセットされたゴム の作動圧曲線の形状がキースイッチのユーザビリティ

(押し心地)

をある程度規定しているということは,少 なくとも経験的には十分予想されたことであった。し かし,作動圧曲線の形状とキースイッチのユーザビリ ティ

(押し心地)

評価の関連性について,組織的かつ実 証的な解析はあまり行われてこなかった。キースイッ チの味付けはメーカや PC ごとに異なっており,ユー ザは,味付けの異なるキースイッチを実際に押してみ て,自分の好みに合ったキーボードを選択する,とい うことが多かった。キースイッチ

(キーボード)

の選択 は,メーカの味付けとユーザの好みのマッチングに任 せられてきた,というのが実情であったと言える。

キースイッチのユーザビリティ

(押し心地)

評価は,

ユーザの指使い

(タッチタイピングができるかどうか)

や,

その都度のキーの押し方によって異なってくると予想 される

(富田 , 2017)

。そういう意味では,設計者の意 図したユーザビリティ

(押し心地)

評価が常に得られる とは限らない。また,ユーザの好みの相違

(個人差)

もかなり大きいと考えられる。このように,ユーザビ リティ

(押し心地)

評価の個人差や個人内変動が大きい ことが,キースイッチの作動圧曲線とユーザビリティ

(押し心地)

評価の組織的・系統的分析が,これまであ まり行われてこなかった要因の1つであったと考えら れる。

また,キースイッチメーカにとって,キースイッチ の味付けをどうするか,すなわち,どのような作動圧 曲線を有するキースイッチを設計するかは,商品開発 の根幹に関わる問題でもある。そのため,この問題は,

公の場での議論には乗りにくかった,ということも考 えられよう。

他方,人間工学的な観点から見れば,キーボードの キースイッチの物理特性とユーザのユーザビリティ

(押し心地)

評価の関連を組織的・系統的に解析し,よ り一般性のある知見を得ておくことは,ユーザビリ ティの高いキースイッチを開発する上で非常に重要な 課題である。

本研究では,上述した(1),(2)の前提に基づき,

キースイッチの作動圧曲線を構成する物理パラメータ とユーザのキースイッチのユーザビリティ

(押し心地)

評価の関連を探り,押し心地の良いキースイッチの物 理特性を探ろうと試みた。その際,ユーザを,タッチ

(5)

Table 2

 エキスパート群・ノービス群の各PCのユーザビリティ評価の評定平均値 (項目は因子ごとにまとめられている) エキスパート  問1問2問3スムーズ感問4問714ストローク感問5問8問919クリック感1013弾力感121516問6176(逆)17(逆)操作感  

押し初め スムーズ

軽いなめらか(因子平 均)キーが深 キーが厚

キーに高 さがある

(因子平 均)

クリック 感がある 底付き感 がある

確認感が ある

確実に ON

(因子平 均)反発性が ある弾力感が ある(因子平 均)操作感が 良いフィット するキーが固 疲れる柔らかい疲れない(因子平 均) PC13.69 3.66 3.51 3.62 1.46 1.74 1.69 1.63 2.80 3.20 2.86 3.66 3.13 2.49 2.60 2.55 3.23 3.03 3.43 3.00 2.51 3.00 3.49 3.24 PC23.91 3.66 3.80 3.79 2.77 2.86 3.03 2.89 4.20 3.60 3.91 3.86 3.89 3.23 3.40 3.32 3.80 3.43 3.54 3.00 2.71 3.00 3.29 3.41 PC33.69 3.74 3.51 3.65 2.43 2.26 2.14 2.28 3.43 3.23 3.23 3.71 3.40 3.09 2.97 3.03 3.23 3.06 3.20 2.60 2.54 3.40 3.46 3.27 PC43.91 3.86 4.00 3.92 2.49 2.37 2.89 2.58 3.66 3.34 3.26 3.91 3.54 3.20 3.29 3.25 3.69 3.46 3.77 2.29 2.46 3.71 3.54 3.63 PC53.26 2.69 3.26 3.07 3.29 3.17 3.17 3.21 3.77 3.14 3.54 3.43 3.47 3.51 3.74 3.63 2.91 3.00 2.63 3.29 3.34 2.71 2.66 2.78 PC63.43 3.84 3.13 3.47 3.18 3.12 3.36 3.22 3.12 3.03 2.75 3.23 3.03 2.87 2.94 2.91 2.29 2.43 2.80 2.68 3.30 3.32 2.70 2.71 ノービス  問1問2問3スムーズ感問4問714ストローク感問5問8問919クリック感1013弾力感121516問6176(逆)17(逆)操作感  

押し初め スムーズ

軽いなめらか(因子平 均)キーが深 キーが厚

キーに高 さがある

(因子平 均)

クリック 感がある 底付き感 がある

確認感が ある

確実に ON

(因子平 均)反発性が ある弾力感が ある(因子平 均)操作感が 良いフィット するキーが固 疲れる柔らかい疲れない(因子平 均) PC13.63 3.73 3.88 3.75 1.40 1.60 1.63 1.54 3.15 3.45 3.10 3.65 3.34 2.58 2.70 2.64 3.23 3.08 3.35 3.13 2.75 2.87 3.25 3.16 PC23.98 3.53 3.88 3.80 2.80 2.70 2.88 2.79 3.95 3.93 3.95 3.73 3.89 3.55 3.63 3.59 3.88 3.68 3.80 2.90 2.50 3.10 3.50 3.59 PC33.90 4.15 3.90 3.98 2.23 2.15 2.33 2.24 3.65 3.28 3.65 3.58 3.54 3.03 3.18 3.11 3.80 3.58 4.00 2.40 2.43 3.60 3.57 3.71 PC44.00 3.93 4.15 4.03 2.25 2.35 2.40 2.33 3.68 3.38 3.63 3.68 3.59 2.93 3.40 3.17 3.80 3.73 3.60 2.43 2.53 3.57 3.47 3.63 PC53.25 2.50 3.25 3.00 3.18 3.33 3.05 3.19 3.68 3.30 3.53 3.35 3.47 3.30 3.65 3.48 2.85 3.20 2.83 3.25 2.93 2.75 3.07 2.94 PC62.95 3.33 2.93 3.07 3.03 3.15 3.08 3.09 3.25 3.33 2.98 2.73 3.07 2.90 2.68 2.79 1.90 2.38 2.35 2.80 3.38 3.20 2.62 2.49 * 網掛けは重回帰分析において予測に有意な重回帰モデルが得られたユーザビリティ評定項目(目的変数)である。問6, 問17の逆転項目については補正された評定値も併せて記載した。

(6)

タイピングができるユーザ

(エキスパート)

とできない ユーザ

(ノービス)

に大別し,それぞれのユーザの特性 に合ったキースイッチの物理特性を明確にすることを 併せて企図した。

目 的

 6台のノート PC のキースイッチの物理特性

(作動 圧曲線から得られる幾つかの物理パラメータの値)(Table 1)

と,

エキスパート,ノービス各群の各 PC のキースイッチ のユーザビリティ

(押し心地)

評価

(心理評定値)(Table 2)

との関連を,重回帰分析を用いて調べた。重回帰分析 の結果に基づき,エキスパート,ノービスの各群にお いて,作動圧曲線のどの物理パラメータが,どのよう な押し心地評価につながっているのかを考察した。

方 法

 重回帰分析には富田・大原

(2015)

で測定されたデー タが使用された。

各 PC のキースイッチの物理パラメータの測定:作

動特性の異なる6台のノート PC

(PC1 ~ PC6)

が準備 され,各 PC のキーボード上の特定のキー

(スペースキー やエンターキーを除いた特殊キー以外のキー)

の作動圧曲線 が測定された

(Figure 2)

。作動圧曲線の特徴を表す 12 の物理パラメータも併せて測定された

(Table 1)

。ま た,これらのパラメータを組み合わせて,新たに4つ の2次パラメータ

(V13 ~ V16)

が算出された

(Table 1)

2次パラメータは,いずれもキーボードの設計におい て重視されていたパラメータで,その値如何でキース イッチの押し心地評価が変わることが経験的に知られ ていた。なお,物理パラメータの選定と算出に際して は,アルプス電気

(株)(現アルプスアルパイン(株))

りアドバイスをいただいた。

ユーザのキースイッチ押下時の心理評定値の測定:

キーボードのキースイッチのユーザビリティ

(押し心 地)

を評定するために質問紙が作成された。質問紙は 26 項目の形容詞対

(SD 法)

から成っていたが,今回の 分析で用いられたのは,そのうちのタクタイルな押し 心地に関する 17 項目であった

(質問紙の詳細については 富田・大原(2015)を参照されたい)

。参加者は,普段 PC を操作している状態になるべく近い状態になるように,

椅子の高さ等を調整し,その後与えられた PC を用い て,ワープロ検定で使用された3つの文章をできるだ け速く正確に打ち込むように指示された。文章入力に 使用されたソフトウェアは Windows に標準装備され たワードパットであった。その後参加者は,PC のキー

スイッチの押し心地について質問紙による評定を行っ た。評定の際には,PC のキーボードのキースイッチ に触れて操作を行って良いものとした。各参加者は,

まず練習用の PC

(PC0)

について,上記の手続きに沿っ て評定を行った。この練習用の PC

(PC0)

は,参加者 が評定手続きに慣れるためと,評価者のベースライン となる感覚の共通化を図るために導入されたものであ る。その後,参加者は,同様の手続きを6台の PC

(PC1

~ PC6)

について繰り返し評定を行った。6台の PC の評定順序は,参加者ごとにランダマイズされた。75 名の参加者が評定に参加した。35 名がエキスパート

(男 性 17 名(平均年齢 29.4 歳),女性 18 名(平均年齢 26.2 歳):PC 平均使用歴 4.4 年,PC 平均使用時間 4.8 時間 / 日)

,40 名がノー ビス

(男性 27 名(平均年齢 20.7 歳),女性 13 名(平均年齢 20.6 歳) : PC 平均使用歴 2.7 年,PC 平均使用時間 2.4 時間 / 日)

であっ た。エキスパートとノービスの区別の基準は,タッチ タイピングができるか否か

(手元を見ずにキー入力ができ るか否か)

であった。

結 果

説明変数:16の物理パラメータと各PCにおける各パ ラメータの値がTable 1に示されている。

まず,Table 1 に挙げた全ての物理パラメータ

(V1

~ V16)

の内部相関を調べた。重回帰分析では,相関 の高い説明変数を投入すると多重共線性が生じ,妥当 な解が得られない。この問題を回避するためには,事 前に物理パラメータ同士の相関を調べて,相関の低い 物理パラメータのみを投入する,という手続きが必要 となる。

算出された内部相関マトリクスを参考に,説明変数 の絞込みを行った。説明変数からの除外指針は,①説 明変数としての投入が明らかに不適切と思われる変数 は除外する

(例えば初圧の移動量(V7))

,②複数の変数 と高い相関を示した変数は除外する

(例えば終圧時の荷 重(V4))

,③設計において比較的操作しやすいと思わ れる変数を残し,設計上の操作が難しいと考えられる 変数は除外する

(例えば電気的 ON 点の荷重(V6)や電気 的 ON 点の移動量(V12))

,④作動圧曲線の “ 戻り ” の曲 線から得られるパラメータは除外する

(例えば復帰荷重

(V5)や復帰荷重時の移動量(V11))

,⑤ユーザの押し方 によって数値が変動すると思われる変数は除外する

(例えば終圧時移動量(V10))

等であった。

V13 ~ V16 のパラメータは V1 ~ V12 のパラメー タの幾つかを組み合わせて算出された2次パラメータ であり,V1 ~ V12 の幾つかと内部相関の高くなるも

(7)

のも含まれていた。しかし,これらの2次パラメータ はいずれも,キー設計の指針として重要視されている パラメータであったことから,今回の重回帰分析では 全てを投入することとした。内部相関の高い複数のパ ラメータが含まれることで,妥当性の低い重回帰モデ ルが採択される危険性も高まるが,重回帰分析では,

ステップワイズ法による変数選択を行い,多重共線性 診断も併せて行っているので,多重共線性の問題はあ る程度回避できているものと思われる。

結局,重回帰分析の説明変数として投入されたのは,

9つのパラメータであった

(Table 3)

目的変数:

富田・大原

(2015)

の結果に基づき,キーボードのキー スイッチのユーザビリティ

(押し心地)

評価を規定する と思われる5因子に因子負荷量の高かった複数の項目 の平均値

(因子平均値)

と,各因子に因子負荷の高かっ た個々の項目の平均値を,エキスパート群,ノービス 群ごとに,各 PC について算出し,それらを目的変数 とした。全ての目的変数が Table 2に示されている。

重回帰分析:

重回帰分析では,ステップワイズ法による変数選択 と多重共線性診断を行い,統計的に見て妥当と思われ る重回帰モデルのみを抽出した。物理パラメータの組 み合わせとユーザビリティ

(押し心地)

評価の関連をで きるだけ詳細に抽出することを目的として,ステップ ワイズの投入の基準を .10,除去の基準を .20 と定め,

重回帰式の近似 F 検定が有意傾向

(p<.10)

のモデルも 含めて抽出した。なお,統計解析は SPSS Ver,12.0J を用いて行った。

エキスパート,ノービスの両群において,統計的に 妥当かつ有意な重回帰モデルが得られたのは,“クリッ ク感 ” と “ 弾力感 ” に関連した評定項目,及び,キー の柔らかさ

(固さ

のみであった。

統計的に有意または有意傾向であった重回帰モデル の全てを Table 4,Table 5 に示す。各モデルにおけ

Table 3 説明変数として投入された 9 つの物理パラメータ

初圧(gf)・・・・・・・・・・・・・V1(Fig.1 の初圧(f

0

))

ピーク荷重(gf)・・・・・・・・・・・V2(Fig.1 のピーク荷重(f

P

))

ドロップ荷重(gf)・・・・・・・・・V3(Fig.1 のドロップ荷重(f

D

))

ピーク位置(mm)・・・・・・・・ V8(Fig.1 のピーク位置(S

P

))

ドロップ荷重位置(mm)・・・・・・ V9(Fig.1 の⊿S

1

) クリック率・・・・・・・・・・・・V13(Fig.1 のClick Ratio)

ピーク勾配・・・・・・・・・・・・V14(Fig.1 のtanθ

1

) ドロップ勾配・・・・・・・・・・・V15(Fig.1 のtanθ

2

) 終圧勾配・・・・・・・・・・・・・V16(Fig.1 のtanθ

3

Table 4 重回帰分析によって得られた有意な重回帰モデル(エキスパート)

エキスパート クリック感

・クリック感(因子平均)=.837V3*(ドロップ荷重:f

D

(R

2

=.626, F=9.373, P=.038)

・クリック感がある=.843V3*(ドロップ荷重:f

D

(R

2

=.638, F=9.829, P=.035)

・確認感がある=.881V3*(ドロップ荷重:f

D

(R

2

=.721, F=13.892, P=.020)

弾力感

・弾力感(因子平均)=.775V2

+

(ピーク荷重:f

P

(R

2

=.501, F=6.023, P=.070)

・反発性がある=.796V2

+

(ピーク荷重:f

P

(R

2

=.541, F=6.897, P=.058)

・弾力がある=.775V3

+

(ドロップ荷重:f

D

(R

2

=.500, F=5.998, P=.071)

操作感

・キーが固い*(柔らかい)= -.813V15*(ドロップ勾配:tanθ

2

(R

2

=.576, F=7.802, P=.049)

各変数の右肩に記された記号は標準偏回帰係数の有意水準(*p<.05、

+

p<.10)

(8)

る標準偏回帰係数の検定結果は全て有意

(p<.05)

,ま たは有意傾向

(p<.10)

であった。

考察

(1)キースイッチの物理パラメータと押し心地印象 の関連性について

キースイッチのユーザビリティ

(押し心地)

評価を規 定している物理パラメータ,及び,その組み合わせ をできるだけ詳しく特定することを企図して,Table 2 の全ての心理評定値を目的変数として重回帰分析を 行った。統計的に有意な重回帰モデルが得られたのは,

“ クリック感 ”,“ 弾力感 ”,“ 操作感 ”

(ただし,キーの 柔らかさ(固さ *)のみ)

の3因子に関連した項目のみで あった

(Table 4, Table 5)

。残りの2因子

(“ スムーズ感 ” と “ ストローク感 ”)

については,作動圧曲線の物理パラ メータとキースイッチのユーザビリティ

(押し心地)

価の関連について有益な知見を得ることはできなかっ た。PC の台数

(サンプル数)

が6台と少な過ぎたこと,

また,事前に行った物理パラメータの絞り込みによっ

(Table 3)

,“ スムーズ感 ” と “ ストローク感 ” に関 連した物理パラメータが説明変数から除外されてし まった可能性,などが,その理由として考えられよう。

一方で,“ クリック感 ”,“ 弾力感 ”,キーの柔らか

(固さ *)

については,エキスパート,ノービスの両 群において,物理パラメータがどのように作用し,そ れらの押し心地印象につながっているのかを,ある程 度推測することができた。エキスパートとノービスの 結果に多少の違いは認められるものの,ほぼ共通した 傾向が抽出された。それらをまとめると,以下のよう になる。

“クリック感”について

・ “ クリック感 ” については,エキスパート・ノービ スを問わず,ドロップ荷重

(f

D

が大きくなるほど その印象が強くなる。

・ ノービスではピーク荷重

(f

P

が大きいほど,“クリッ ク感 ” が強くなる傾向が見られる。これは押下初期 にかかる力が大きくなるので,その分,その後のド ロップ荷重

(f

D

の印象も強くなるため,とも考え られる。

・ ノービスではクリック率

(Click Ratio)

が大きいほど,

底付き感が強くなる傾向が見られる。このことは,

ピーク荷重

(f

P

に対するドロップ荷重

(f

D

の割合 が大きいほど,底付き感が増すことを意味している。

“ 弾力感 ” について

・ エキスパートでは,ピーク荷重

(f

P

・ドロップ荷重

(f

D

が大きいほど “ 弾力感 ”・反発性が強くなる。これ Table 5 重回帰分析によって得られた有意な重回帰モデル(ノービス)

ノービス クリック感

・クリック感(因子平均)=.734 V3

+

(ドロップ荷重:f

D

(R

2

=.423, F=4.670, P=.097)

・クリック感がある=.792 V2

+

(ピーク荷重:f

P

(R

2

=.534, F=6.738, P=.060)

・底付き感がある=.731V13

+

(クリック率:Click Ratio)

(R

2

=.418, F=4.589, P=.099)

・確認感がある=.786V2

+

(ピーク荷重:f

P

(R

2

=.523, F=6.486, P=.064)

弾力感

・弾力感(因子平均)=.869V2*(ピーク荷重:f

P

)+.430V13

+

(クリック率:Click Ratio)

(R

2

=.846, F=14.700, P=.028)

・反発性がある=.663V3*(ドロップ荷重:f

D

)+.582V8*(ピーク位置:S

P

(R

2

=.908, F=25.610, P=.013)

・弾力がある=.897V2*(ピーク荷重:f

P

)+.389V13

+

(クリック率:Click Ratio)

(R

2

=.875, F=18.497, P=.021)

操作感

・キーが固い*(柔らかい)= -.868V15*(ドロップ勾配:tanθ

2

(R

2

=.692, F=12.227, P=.025)

各変数の右肩に記された記号は標準偏回帰係数の有意水準(*p<.05、+p<.10)

(9)

らのパラメータは,それぞれ単独で “ 弾力感 ” に対 して正の影響力を有する。

・ ノービスにおいても,ピーク荷重

(f

P

・ドロップ荷

(f

D

が大きいほど,“ 弾力感 ” や反発性は強く感 じられるようになる。しかし,エキスパートとは異 なり,“ 弾力感 ” や反発性は,それぞれクリック率

(Click Ratio)

やピーク位置

(SP)

からも同時に影響を 受ける。いずれも,その値が大きくなるほど,“ 弾 力感 ” や反発性が強くなる。クリック率

(Click Ratio)

が大きいということは,ピーク荷重

(f

P

が一定の場 合,ドロップ荷重

(f

D

がより大きいことを意味し ている。それ故,ドロップ荷重

(f

D

のもつ正の影 響力とそれほど矛盾しない。しかし,ピーク位置

(SP)

が大きいことは,ピーク荷重

(f

P

に達するまでの 移動距離がより長くなっていることを意味してお り,解釈が難しい。ピーク位置

(S

P

が大きいこと は,たとえ押圧傾きが緩やかであったとしても,押 下初期に持続的に押圧を加え続ける必要があること を意味する。そのため,その後のドロップ荷重

(f

D

の印象が大きくなり,“ 弾力感 ” がより強く感じら れるようになった,という解釈も成り立つかもしれ ない。

キーの“柔らかさ

(固さ*)

”について

・ エキスパート・ノービスともに,ドロップ勾配

(tan θ

2

が小さいほど,キーが柔らかいと感じる

(逆に,

ドロップ勾配(tanθ

2

)が大きいほど,キーは固いと感じられ る)

。このことは,ドロップ荷重

(f

D

そのものが小 さいか,または,ドロップ荷重

(f

D

が一定であれば,

より長い距離で作動圧がドロップする方が,キーが 柔らかく感じられる,という可能性を示唆している。

(2)エキスパートとノービスの指使いの違いがユーザ ビリティ(押し心地)評価の違いに与える影響につい

今回の分析では,タッチタイピングができるか否 か,という指遣いの違いが,キースイッチのユーザビ リティ

(押し心地)

評価の違いにどのように影響してい るかを明らかにすることも企図されていた。ユーザを,

タッチタイピングができる群

(エキスパート)

とできな い群

(ノービス)

の2群に分け,各群のユーザビリティ

(押 し心地)

評価の違いに影響を与えている物理パラメー タ,及びそれらの組み合わせの相違を特定しようと試 みた。

前述した通り,富田・大原

(2015)

の先行研究からは,

少なくとも以下のような2群間のユーザビリティ評価

の相違が明らかになっていた。

・ “ ストローク感 ” やキーの柔らかさ

(固さ *)

については,

タッチタイピングができるエキスパートの方が高く 評定する。

・ キースイッチの “ クリック感 ” や “ 操作感 ” につい ては,ノービスの方が高く評定する。

・ 有意差は見られなかったものの,“ 弾力感 ” はエキ スパートの方がより高く評定する。

 今回の一連の重回帰分析で,エキスパート,ノービ ス両群で,“ クリック感 ”,“ 弾力感 ”,キーの柔らか

(固さ *)

に関連した幾つかの項目において,有意な 重回帰モデルが得られた。つまり,作動圧曲線の物理 パラメータを組み合わせて予測できるユーザビリティ

(押し心地)

評価の因子や項目は,エキスパート,ノー ビスの両群でほぼ共通していたと言える。また,それ ぞれの重回帰式

(予測式)

から示唆される物理パラメー タの組み合わせと,各物理パラメータのユーザビリ ティ評価に対する影響力も,以下の点を除き,ほぼ共 通していた。

① ノービスでは,ピーク荷重

(f

P

やクリック率

(Click Ratio)

が大きいほど,“ クリック感 ” が強くなる 傾向が見られるが,このような傾向はエキスパー トでは見られなかった。

② ノービスでは,“ 弾力感 ” や反発性が,ピーク荷

(f

P

・ドロップ荷重

(f

D

のみならず,クリッ ク率

(Click Ratio)

やピーク位置

(S

P

からも影響 を受けていた。これらのパラメータ値が大きいほ ど,“ 弾力感 ” や反発性は強く感じられるように なる。このような傾向はエキスパートでは見られ なかった

(いずれも考察

(1)

参照)

富田・大原

(2015)

の先行研究では,これら項目の 平均値の間に群間差が生じていたが,今回の分析から は,何故群間差が生じるのかについて,明確な答えを 得ることはできなかった。また,今回の重回帰分析に 投入された物理パラメータの組み合わせからは,“ ス ムーズ感 ” を有意に予測できる重回帰モデルを得るこ とはできなかった。そのため,富田・大原

(2015)

得られた “ スムーズ感 ” の評定平均値の群間差につい ても,原因を特定できるような知見を見出すことはで きなかった。

(3)分析の問題点と今後の課題について

今回の分析の問題点は,何といっても,ケース

(case)

に当たるノート PC の台数が少なすぎる

(6

台)

ということである。多変量解析などの相関分析

(10)

においては,最低でも 60 程度のケース数があった 方が望ましいと言われる。そのことを考えると,今 回の分析のケース数の少なさは大きな問題である と言える。それ故,今回抽出された重回帰モデル は,妥当性・信頼性において限界がある,ということ を,まず念頭に置いておく必要があるだろう。

また,物理パラメータの一部が,重回帰分析の説明 変数から除外されていたことも,予測に有意な重回帰 モデルが十分に抽出できなかった原因の1つとなって いた可能性がある。とりわけ,作動曲線の “ 戻り ” の 曲線に含まれている物理パラメータは全て除外されて いた。これら “ 戻り ” の曲線のパラメータの中に,エ キスパート,ノービスのキースイッチのユーザビリ ティ

(押し心地)

評価に影響を与える,重要なパラメー タが含まれていた,という可能性も捨てきれない。

他方,エキスパート 35 名,ノービス 40 名,計 75 名の参加者に,実験統制下で,ノート PC に触れなが ら評定を行わせたことで,測定で得られた評定値の信 頼性は,一般的な質問紙を用いた調査等に比べるとか なり高くなっていた可能性がある。一方で,エキスパー トとノービスの群分けの曖昧さ

(手元を見ずに文字入力が できるか否かの自己申告に基づいており,指使いなどは十分に 確認されていないこと)

については,依然として問題が 残されている

(富田・大原 , 2015)

今後の方向性としては,こういったサーベイをより 拡大してゆく,という方向が考えられる。例えば,今 回とは異なるノート PC を複数台

(できれば 30 台程度)

用意して,同様な評価実験を行い,分析の精度・信頼 度を上げてゆくのである。とは言え,30 台の異なる PC を用意し,それぞれに 75 名分の心理評定値を確 保してゆく,というのは,労力的・コスト的に見てか なり難しい問題を含んでいる。ひとまず,倍の台数(12 台)程度までケース数を増やし,同様な評価実験を行っ てみる,というのが,最も現実的な線かもしれない

(そ れでも,相応の時間的・労力的コストが必要になるであろう)

いま一つの方向性は,本研究等で得られた知見を ベースに,複数のパラメータを実験的に操作して,キー スイッチのユーザビリティ

(押し心地)

評価がどのよう に変わるのかを,よりシステマティックに追跡してゆ く,というやり方である。作動圧曲線の物理パラメー タをある程度システマティックに操作できる刺激装置 を開発し,その装置を用いて,精神物理学的手法等を 用いた評価実験を行ってゆくのである。準備面の困難 さは当然予想されるが,そのようにすることで,キー スイッチの物理パラメータの組み合わせとユーザビリ ティ

(押し心地)

評価の関係を,より組織的,系統的,

実証的に調べることができるようになると思われる。

引用文献

富田 新(2017).PC キーボードの階層的操作性評 価モデルの提案 いわき明星大学研究紀要 人文 学・社会科学・情報学篇,2(通巻

30),100-116.

富田 新・大原貴弘 (2015).PC キーボードのキース イッチの操作性に関する研究 -タッチタイピング による打鍵法の差異がもたらす操作性評価の相違に ついて-応用心理学研究,41 (1),87-97.

謝辞

本研究は,平成 18 年度~平成 20 年度に行われたア ルプス電気

(株)(現アルプスアルパイン(株))

による委 託研究

(「入力機器の操作性に関する研究」:研究代表者:いわ き明星大学(現医療創生大学)科学技術学部システムデザイン 工学科・教授 清水 信行:研究協力者:同大学人文学部心理 学科・准教授 富田 新:同学科・准教授 大原貴弘:同大学 理工学部 機械工学科・修士課程2年 東 哲也:所属・肩書 きはいずれも当時のもの)

の成果に基づくものである。研 究実施に当たっては,アルプス電気

(株)(現アルプスア ルパイン(株))

より多大なご支援・ご協力をいただいた。

ここに記し,深く感謝の意を表します。

(11)

Regression analyses of mechanical parameters of key switches on PC keyboards

to usability assessments of experts who can do touch typing and novic- es who can’t do it

A

RATA

T

OMIDA

(D

EPARTMENT OF

P

SYCHOLOGY

, F

ACULTY OF

P

SYCHOLOGY

, M

EISEI

U

NIVERSITY

) T

AKAHIRO

O

HARA

(F

ACULTY OF

L

IBERAL

A

RTS

, I

RYO

S

OSEI

U

NIVERSITY)

T

ETSUYA

H

IGASHI

(H

IGASHI

S

HOTEN

I

NC

.

)

N

OBUYUKI

S

HIMIZU

(M

OTIONLABO

I

NC

.

)

M

EISEI

U

NIVERSITY

A

NNUAL

R

EPORTON

P

SYCHOLOGICAL

R

ESEARCH

, 2020, 38, 15―25

Key Words : usability of key switches on PC keyboard, psychological factors of push feeling,

mechanical parameters of key switches, touch typing

Table 2 エキスパート群・ノービス群の各PCのユーザビリティ評価の評定平均値 (項目は因子ごとにまとめられている) エキスパート  問1問2問3スムーズ感問4問7問14ストローク感問5問8問9問19クリック感問10問13弾力感問12問15問16問6問17問6(逆)問17(逆)操作感  押し初め スムーズ軽いなめらか(因子平均)キーが深いキーが厚いキーに高 さがある(因子平均)クリック 感がある底付き感 がある確認感がある確実に ON(因子平均)反発性がある弾力感がある(因子平均)操作感が良いフィットす

参照

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